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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1347543
審判番号 不服2017-14541  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-02 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2015-172745「有機発光ダイオード表示装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年4月14日出願公開,特開2016-54144,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-172745号は,平成27年9月2日(優先権主張 2014年9月3日 韓国)を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成28年 7月27日付け:拒絶理由通知書
平成28年12月14日差出:意見書
平成28年12月14日差出:手続補正書
平成29年 5月25日付け:拒絶査定
平成29年10月 2日差出:審判請求書
平成30年 7月25日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月24日差出:意見書
平成30年10月24日差出:手続補正書

2 原査定の内容
平成29年5月25日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の拒絶の理由は,概略,本件出願の請求項1?9に係る発明は,その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2007-335403号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2014/0131682号明細書
引用文献3:米国特許出願公開第2013/0334959号明細書
引用文献4:特開2012-155987号公報
なお,主引用例は引用文献1であり,引用文献2?引用文献4は,周知技術を示す文献として引用されたものである。

3 当合議体の拒絶の理由
平成30年7月25日付けで通知した拒絶の理由(以下「当合議体の拒絶の理由」という。)は,本件出願の請求項1?請求項9に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるということができないから,本件出願の特許請求の範囲の記載は,特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない,というものである。

4 本願発明
本件出願の請求項1?請求項9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は,平成30年10月24日に補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項9に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
複数個のサブ画素を含む表示領域及び前記表示領域の周辺の非表示領域を含む基板と,
前記サブ画素毎に形成された薄膜トランジスタ,及び前記薄膜トランジスタと接続された有機発光ダイオードと,
前記有機発光ダイオードを完全に覆う第1無機膜と,前記第1無機膜上に形成される有機膜と,前記第1無機膜の少なくとも一部分上及び前記有機膜上に形成される第2無機膜とを含む保護部材と,
前記有機膜は,前記有機発光ダイオードを完全に覆う第1有機パターンと,前記第1有機パターンから離隔され,前記第1有機パターンを取り囲む少なくとも2つ以上の第2有機パターンとを含み,
前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンは部分的に開いた領域を有し,
最外郭の前記第2有機パターンは遮蔽構造であることを特徴とする有機発光ダイオード表示装置。

【請求項2】
前記第2有機パターンのそれぞれは,前記第1有機パターンの上面と同じ高さの上面を有する,請求項1に記載の有機発光ダイオード表示装置。

【請求項3】
前記第1有機パターンと,前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンとが離隔した領域において前記第1無機膜と前記第2無機膜とが接しており,前記第1有機パターンは,前記第1無機膜及び前記第2無機膜によって完全に取り囲まれていることを特徴とする,請求項1又は2に記載の有機発光ダイオード表示装置。

【請求項4】
前記第1無機膜の縁部と前記第2無機膜の縁部とが接しており,前記第2有機パターンのそれぞれは,前記第1無機膜及び前記第2無機膜によって完全に取り囲まれていることを特徴とする,請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機発光ダイオード表示装置。

【請求項5】
接着剤層を介して前記保護部材の上部面に付着されて前記基板と貼り合わされたエンキャプシュレーションを更に含み,
前記接着剤層は,前記エンキャプシュレーションと前記基板とを貼り合わせるように,前記エンキャプシュレーションと前記保護部材との間に形成され,前記第1有機パターンと,前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンとが離隔した領域にも形成されていることを特徴とする,請求項1乃至4のいずれか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置。

【請求項6】
前記第1有機パターン及び前記第2有機パターンのそれぞれの厚さは,15μm?25μmの範囲内であることを特徴とする,請求項1乃至5のいずれか1項に記載の有機発光ダイオード表示装置。

【請求項7】
基板の表示領域に定義された複数個のサブ画素毎に薄膜トランジスタを形成するステップと,
前記薄膜トランジスタと接続される有機発光ダイオードを形成するステップと,
前記有機発光ダイオードを完全に覆う第1無機膜を形成するステップと,
前記有機発光ダイオードを完全に覆う第1有機パターンと,前記第1有機パターンと離隔され,前記第1有機パターンの周辺を取り囲む少なくとも2つ以上の第2有機パターンとを含む有機膜を前記第1無機膜上に形成するステップと,
前記第1無機膜の少なくとも一部分上及び前記有機膜上に第2無機膜を形成するステップと,
を含み,
前記有機膜を形成するステップは,
前記第1無機膜上に有機物質を塗布するステップと,
溝を有するモールドを前記有機物質に接触させるステップとを含み,
最外郭の前記第2有機パターンを遮蔽構造で形成し,前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンを,部分的に開いた領域を有して形成することを特徴とする有機発光ダイオード表示装置の製造方法。

【請求項8】
接着剤層を介して前記第2無機膜の上部面にエンキャプシュレーションを付着するステップを含む,請求項7に記載の有機発光ダイオード表示装置の製造方法。

【請求項9】
前記有機膜を形成するステップは,
前記有機物質に前記第1有機パターン及び前記第2有機パターンのそれぞれを形成する領域に,前記溝が形成された前記モールドを位置させるステップと,
前記有機物質に前記モールドを密着及び加圧させるステップと,
前記有機物質を硬化させるステップと,
前記モールドを分離させるステップと,をさらに含むことを特徴とする,請求項7又は8に記載の有機発光ダイオード表示装置の製造方法。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用され,本件出願の優先日前に頒布された刊行物である前記引用文献1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や,判断に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置とその製造方法とに関し,特に,表示素子の封止手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,平板表示装置の中でもOLED(Organic Light Emitting Diode:有機EL素子)が脚光を浴びている。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
…(省略)…
本発明の目的は,酸素及び水分の表示素子への浸入を確実に阻止できる表示装置を提供することにある。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下,添付された図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《第1実施形態》
図1に,本発明の第1実施形態による表示装置の断面図を示す。図2は,図1に示されている部分Aの拡大図である。」
(当合議体注:図1及び図2は,以下のとおりである。
【図1】

【図2】

)

ウ 「【0009】
本発明の第1実施形態によるOLED1では,図1に示されているように,絶縁基板100に表示素子110が画素ごとに備えられている。各表示素子110は樹脂層120で覆われている。樹脂層120は更に封止層130で覆われている。樹脂層120には,絶縁基板100の端に沿って陥没部125が形成されている。封止層130は陥没部125の内側も覆っている。
…(省略)…
【0011】
表示素子110は,図2に示されているように,ゲート絶縁膜118,薄膜トランジスタT,保護膜119,画素電極114,隔壁115,有機発光層116,及び,共通電極117を含む。…(省略)…画素電極114は保護膜118の孔を通して薄膜トランジスタTのドレイン電極113に接続されている。
…(省略)…
【0013】
樹脂層120は絶縁基板100の上で,表示素子110の全体を覆っている。樹脂層120は主に外部の塵や埃,更に衝撃から表示素子110を保護する。ここで,樹脂層120は外部の水分及び酸素をある程度は遮断できるので,それらから有機発光層116をある程度は保護できる。しかし,その保護機能を更に高めるには,樹脂層120の表面を封止層130で覆う必要がある。そのとき,樹脂層120は,封止層130を表面に接着させる役割を果たす。」

エ 「【0024】
《第2実施形態》
以下,図4A?図4Eを参照しながら,本発明の第2実施形態による表示装置の製造方法について説明する。ここで,以下の説明では樹脂層をシーラントで形成する場合を想定する。尚,以下の説明においては,上述の第1実施形態による製造方法とは異なる部分だけを抜粋する。説明が省略され,または簡略化された部分については,上述の製造方法についての説明を援用する。
【0025】
第1工程では,図4Aに示されているように,絶縁基板100の上に表示素子110を形成する。
第2工程では,図4Bに示されているように,絶縁基板100と表示素子110とを樹脂層120で覆う。ここで,樹脂層120はシーラントである。シーラントは露光や加熱によりその硬さが変化する。特に,光の照射量と照射時間,及び,加熱の時間と強度を制御することにより,シーラントを半硬化状態にも完全な硬化状態にも変化させることができる。シーラントを含む樹脂層120は,まず,スクリーン印刷,コーティング,ディスペンシング(滴下)などの方法によって絶縁基板100と表示素子110との上に形成される。次に,その樹脂層120に熱または光Rを適切に当てて樹脂層120を半硬化状態に変化させる。」
(当合議体注:図4A及び図4Bは,以下の図である。
【図4A】

【図4B】

)

オ 「【0026】
第3工程では,まず,図4Cに示されているように,加圧部材200を樹脂層120の上に配置する。次に,加圧部材200で樹脂層120を絶縁基板100に向かって加圧する(図4Cに示されている矢印参照)。
第4工程では,図4Dに示されているように,スパッタリングまたは蒸着で,上記の金属または無機物質の少なくともいずれかM(すなわち,アルミニウム,銅,ブロンズ,銀,黄銅,ステンレススチール,チタン,SiOx,SiNx,SiONx,AlOx,AlONx,及びAlNx)を樹脂層120の上に堆積させる。特に,その物質Mを陥没部125の内部に,均一に堆積させる。
こうして,図4Eに示されているように,その物質Mから成る封止層130で,陥没部125を含む樹脂層120の全体を覆う。
最後に,樹脂層120を完全に硬化させてOLED1を完成させる。
【0027】
この製造方法でも第1実施形態による製造方法と同様に,封止層130で表示素子110の上側だけでなく,周りを囲むことができる。従って,外部から樹脂層120に浸入する水分及び酸素から表示素子110を効果的に保護できる。
(当合議体注:図4C?図4Eは,以下の図である。
【図4C】

【図4D】

【図4E】

)

カ 「【0030】
《第4実施形態》
図6に,本発明の第4実施形態による表示装置の断面図を示す。図6に示されているように,複数の陥没部125が同心状に備えられている。具体的には,外側に位置する第1陥没部125aと,内側に位置する第2陥没部125bとが二重に表示素子110の周りを囲んでいる。更に,封止層130が複数の層から構成されている。具体的には,下側に位置する第1封止層130aと,上側に位置する第2封止層130bとの二重層から成る。第1封止層130aと第2封止層130bとの各材質は同一であっても,異なっていても良い。それらの多重構造により,樹脂層120の側面から内部に浸入する酸素及び水分が更に遮断されるので,表示素子110の有機発光層が更に効果的に保護される。」
(当合議体注:図6は以下の図である。

)

(2) 引用発明
引用文献1の【0030】には,図6とともに,第4実施形態による表示装置が記載されている。ここで,引用文献1の記載ぶりからみて,第4実施形態は,第1実施形態(【0007】?【0017】)のOLED1の構成を援用して記載されたものであり,また,第2実施形態(【0024】?【0027】)の製造方法により製造されて良いものといえる。
そうしてみると,引用文献1には,以下に示す,表示装置の発明(以下「引用発明1」という。),及び表示装置の製造方法の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
ア 引用発明1
「 絶縁基板100に表示素子110が画素ごとに備えられ,各表示素子110は樹脂層120で覆われ,樹脂層120は更に封止層130で覆われ,樹脂層120には,絶縁基板100の端に沿って陥没部125が形成され,封止層130は陥没部125の内側も覆っている表示装置であって,
陥没部125は,外側に位置する第1陥没部125aと,内側に位置する第2陥没部125bとが二重に表示素子110の周りを囲んでいて,
封止層130は,下側に位置する第1封止層130aと,上側に位置する第2封止層130bとの二重層から成り,封止層130は,金属または無機物質からなり,
それらの多重構造により,樹脂層120の側面から内部に浸入する酸素及び水分が更に遮断されるので,表示素子110の有機発光層が更に効果的に保護され,
表示素子110は,ゲート絶縁膜118,薄膜トランジスタT,保護膜119,画素電極114,隔壁115,有機発光層116,及び,共通電極117を含み,画素電極114は薄膜トランジスタTに接続されている,
表示装置。」

イ 引用発明2
「 引用発明1の表示装置の製造方法であって,
絶縁基板100の上に表示素子110を形成する第1工程,
樹脂層120を,スクリーン印刷,コーティング,ディスペンシング(滴下)などの方法によって絶縁基板100と表示素子110との上に形成し,次に,その樹脂層120に熱または光Rを適切に当てて樹脂層120を半硬化状態に変化させて,絶縁基板100と表示素子110とを樹脂層120で覆う第2工程,
加圧部材200で樹脂層120を絶縁基板100に向かって加圧する第3工程,
金属または無機物質を樹脂層120の上に堆積させ,封止層130で,陥没部125を含む樹脂層120の全体を覆う第4工程を含み,
最後に,樹脂層120を完全に硬化させて完成させる,
表示装置の製造方法。」

2 対比及び判断
(1) 対比
本願発明1と引用発明1を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 基板
まず,引用発明1の「表示装置」は,「表示素子110が画素ごとに備えられ」という構成を具備する。そうしてみると,引用発明1の「画素」は,複数個のものであり,また,サブ画素といえる(当合議体注:技術水準からみて,引用発明1の「表示装置」が単色の表示装置であるとは考えがたい。)。そして,引用発明1の「画素」は,その文言が意味するとおり,「画素」として機能する。
次に,引用発明1の「表示装置」は,「絶縁基板100に表示素子110が画素ごとに備えられ」という構成を具備するところ,この領域は,表示領域ということができる。そして,引用発明1の「絶縁基板100」は,表示領域を含むものといえる。また,引用発明1の「絶縁基板100」は,その文言が意味するとおり,「基板」として機能する。
さらに,引用発明1の「表示装置」は,「絶縁基板100の端に沿って陥没部125が形成され」という構成を具備する。そうしてみると,引用発明1の「絶縁基板100」は,「陥没部125」が形成された領域を含むといえる。
加えて,引用発明1の「陥没部125」は,「外側に位置する第1陥没部125aと,内側に位置する第2陥没部125bとが二重に表示素子110の周りを囲んで」という構成を具備する。そうしてみると,引用発明1の「陥没部125」が形成された領域は,表示領域が形成されていない領域,すなわち非表示領域ということができる。

以上勘案すると,引用発明1の「画素」,「絶縁基板100に表示素子110が画素ごとに備えられ」た領域,「陥没部125」が形成された領域,及び「絶縁基板100」は,それぞれ,本願発明1の「サブ画素」,「表示領域」,「非表示領域」及び「基板」に相当する。また,引用発明の「絶縁基板100」は,本願発明1の「基板」の「複数個のサブ画素を含む表示領域及び前記表示領域の周辺の非表示領域を含む」という要件を満たす。

イ 薄膜トランジスタ,有機発光ダイオード
引用発明1の「表示装置」は,「表示素子110が画素ごとに備えられ」という構成を具備する。そして,引用発明1の「表示素子110」は,「ゲート絶縁膜118,薄膜トランジスタT,保護膜119,画素電極114,隔壁115,有機発光層116,及び,共通電極117を含み,画素電極114は薄膜トランジスタTに接続されている」。
ここで,引用発明1の「画素電極114,隔壁115,有機発光層116,及び,共通電極117」は,技術的にみて,有機発光ダイオードを構成している。また,引用発明1の「薄膜トランジスタT」は,その文言が意味するとおり,「薄膜トランジスタ」として機能する。
そうしてみると,引用発明1の「薄膜トランジスタT」は,本願発明1の,「前記サブ画素毎に形成された」という要件を満たす「薄膜トランジスタ」に相当する。また,引用発明1の「画素電極114,隔壁115,有機発光層116,及び,共通電極117」からなる構造は,本願発明1の,「前記薄膜トランジスタと接続された」という要件を満たす「有機発光ダイオード」に相当する。

ウ 保護部材
引用発明1は,「絶縁基板100に表示素子110が画素ごとに備えられ,各表示素子110は樹脂層120で覆われ,樹脂層120は更に封止層130で覆われ」という構成,及び「封止層130は,金属または無機物質からなり」という構成を具備する。ここで,「金属又は無機物質」は,無機物といえる。また,引用発明1の「封止層130」が,「膜」と称しうる程度に薄い層であることは,技術的にみて明らかである。そうしてみると,引用発明1の「封止層130」は,無機物からなる膜といえる。同様に,引用発明1の「樹脂層120」は,有機物からなる膜といえる。
そして,引用発明1の「各表示素子110」,「樹脂層120」及び「封止層130」の積層構造からみて,引用発明1の「樹脂層120」は,本願発明1の「有機膜」に相当する。また,引用発明1の「封止層130」と本願発明1の「第2無機膜」は,「前記有機膜上に形成される」「無機膜」である点で共通する。
加えて,引用発明1の「樹脂層120」及び「封止層130」は,技術的にみて,「各表示素子110」を保護する機能を具備する部材ということができる(引用文献1の【0013】の下線部を付した記載からも理解できる事項である。)。そうしてみると,引用発明1の「樹脂層120」及び「封止層130」から構成される部材と,本願発明1の「保護部材」とは,「有機膜と」,「前記有機膜上に形成される第2無機膜とを含む保護部材」の点で共通する。

エ 第1有機パターン,第2有機パターン
引用発明1の「樹脂層120には,絶縁基板100の端に沿って陥没部125が形成され」,「陥没部125は,外側に位置する第1陥没部125aと,内側に位置する第2陥没部125bとが二重に表示素子110の周りを囲んで」いる。そうしてみると,引用発明1の「樹脂層120」は,「第1陥没部125a」よりも外側の部分(以下「外側樹脂層」という。)と,「外側に位置する第1陥没部125a」と「内側に位置する第2陥没部125b」の間に位置する部分(以下「中間樹脂層」という。)と,「第2陥没部125b」よりも内側の部分(以下「内側樹脂層」という。)に分かれた構造を具備するといえる(引用文献1の図6からも看取される事項である。)。また,引用発明1の「第1陥没部125a」及び「第2陥没部125b」は,「二重に表示素子110の周りを囲んで」いるものであるから,引用発明1の「外側樹脂層」及び「中間樹脂層」は,表示素子110の周りを囲むものといえる。加えて,引用発明1の「各表示素子110は樹脂層120で覆われ」ているところ,引用発明1の「各表示素子110」を覆うものは,位置関係からみて,「内側樹脂層」である。
そうしてみると,引用発明1の「内側樹脂層」,「中間樹脂層」及び「外側樹脂層」は,その位置関係からみて,それぞれ,本願発明1の「第1有機パターン」,(第1有機パターンに隣接する)「第2有機パターン」及び(最外郭の)「第2有機パターン」に相当する。
また,引用発明1の「樹脂層120」と本願発明1の「有機膜」は,「前記有機膜は,前記有機発光ダイオードを」「覆う第1有機パターンと」,「前記第1有機パターンを取り囲む」「第2有機パターンとを含み」という構成において共通する。


オ 有機発光ダイオード装置
以上ア?エを勘案すると,引用発明1の「表示装置」は,本願発明1の「有機発光ダイオード表示装置」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明1は,次の構成で一致する。
「 複数個のサブ画素を含む表示領域及び前記表示領域の周辺の非表示領域を含む基板と,
前記サブ画素毎に形成された薄膜トランジスタ,及び前記薄膜トランジスタと接続された有機発光ダイオードと,
有機膜と,前記有機膜上に形成される第2無機膜とを含む保護部材と,
前記有機膜は,前記有機発光ダイオードを覆う第1有機パターンと,前記第1有機パターンを取り囲む第2有機パターンとを含む,
有機発光ダイオード表示装置。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明1は,以下の点で相違する。なお,説明の便宜上,本来ならば,一体不可分とすべき相違点についても,形式的に分けて記載している。
(相違点1)
本願発明1は,「前記有機発光ダイオードを完全に覆う第1無機膜」を具備するのに対して,引用発明1は,これを具備するとはいえない点。

(相違点2)
上記相違点1に関連して,本願発明1の「有機膜」及び「第2無機膜」は,「前記第1無機膜上に形成される」有機膜,及び「前記第1無機膜の少なくとも一部分上」及び前記有機膜上に形成される第2無機膜であるのに対して,引用発明1は,これを具備するとはいえない点(当合議体注:かぎ括弧で囲まれた部分において相違する。)。

(相違点3)
「第1有機パターン」について,本願発明1は,前記有機発光ダイオードを「完全に」覆うものであるのに対して,引用発明1は,「完全に」といえるか,一応,明らかではない点。

(相違点4)
「第2有機パターン」について,本願発明1は,「前記第1有機パターンから離隔され」,前記第1有機パターンを取り囲む「少なくとも2つ以上の」ものであるのに対して,引用発明1は,この構成を具備するか,一応,明らかではない点。

(相違点5)
「第2有機パターン」について,本願発明1は,「前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンは部分的に開いた領域を有し」,「最外郭の前記第2有機パターンは遮蔽構造である」という構成を具備するのに対し,引用発明1は,この構成を具備するとはいえない点。

(3) 判断
事案に鑑みて,相違点5について検討する。
引用文献1には,引用発明1の「中間樹脂層」が,本願発明でいう「部分的に開いた領域」を具備することについて,記載されていない。

また,引用文献1には,これを示唆する記載もない。
すなわち,引用発明1の「第1陥没部125a」と「第2陥没部125b」は,「二重に表示素子110の周りを囲」むためのものである。そして,「二重に表示素子110の周りを囲」むに際しては,両者を連結する陥没部を設ける必要はない。そうしてみると,引用発明1の「中間樹脂層」に,本願発明1でいう「部分的に開いた領域」を設ける必要もない。
加えて,仮に,引用発明1の「中間樹脂層」が,本願発明1でいう「部分的に開いた領域」を有する場合には,そのぶん,「樹脂層120の側面から内部に浸入する酸素及び水分が更に遮断される」という効果が損なわれることになる。
そうしてみると,引用発明1の「中間樹脂層」に,本願発明でいう「部分的に開いた領域」を設けることには阻害要因があるといえる。

ところで,本願発明1の「部分的に開いた領域」は,「例えば樹脂系の材料から第2有機パターン165bを形成する際に生じ得る余分な材料を,オープンされた領域を介して表示領域の外へ排出すること」を考慮したものである(本件出願の明細書の【0036】)。
そこで,念のため,「樹脂系の材料から第2有機パターン165bを形成する際に生じ得る余分な材料を,オープンされた領域を介して表示領域の外へ排出すること」が,本件出願の優先日前の当業者における自明な課題であると仮定して検討すると,以下のとおりである。
引用発明1の「第1陥没部125a」と「第2陥没部125b」は,半硬化状態に変化させた後の樹脂層120を,加圧部材200で加圧することによって,形成される(引用文献1の【0024】?【0026】を参照。)。すなわち,引用文献1に記載された方法によると,「第1陥没部125a」と「第2陥没部125b」を形成する際の「樹脂層120」は,既に半硬化状態にある。また,その硬さは,圧力をかければ変形可能であるとしても,その圧力を除去した後,その形状を維持できる程度と理解される(引用文献1の【図4C】及び【図4D】を参照。)。そうしてみると,引用発明1の半硬化状態にある「樹脂層120」が,「オープンされた領域を介して表示領域の外へ排出すること」が可能であるとは,考えがたい。
したがって,仮に,「樹脂系の材料から第2有機パターン165bを形成する際に生じ得る余分な材料を,オープンされた領域を介して表示領域の外へ排出すること」が,本件出願の優先日前の当業者における自明な課題であると仮定しても,この課題は,引用発明1において,本願発明1でいう「部分的に開いた領域」を設ける動機付けにはならないといえる。
なお,加圧部材200で加圧されると,樹脂層120が,加圧部材200の突起部210(引用文献1の【図4C】を参照。)によって変形し,そのぶん,盛り上がると考えられる。しかしながら,仮に,この盛り上がりを考慮するとしても,そのぶん突起部210を長く設計しておけば,引用文献1の【図4D】から看取される構成が得られ,かつ,酸素や水分を遮断する効果も損なわれることはない。

以上のとおりであるから,たとえ当業者といえども,引用発明1において,上記相違点5に係る本願発明1の構成を採用することはないといえる。
また,引用文献2?引用文献4にも,上記相違点5に係る本願発明1の構成は,記載も示唆もされていない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,引用文献1に記載された発明(及び引用文献2?引用文献4に記載された事項)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

(4) 本願発明2?本願発明6について
本願発明2?本願発明6の「有機発光ダイオード表示装置」も,上記相違点5に係る本願発明1の構成を具備する。
したがって,本願発明2?6も,本願発明1と同じ理由により,引用文献1に記載された発明(及び引用文献2?引用文献4に記載された事項)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(5) 本願発明7及び本願発明8について
引用文献1には,前記1(2)イに記載したとおりの,引用発明2が記載されている。
しかしながら,本願発明7及び本願発明8の「有機発光ダイオード表示装置の製造方法」は,いずれも,「最外郭の前記第2有機パターンを遮蔽構造で形成し,前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンを,部分的に開いた領域を有して形成する」工程を具備する。そして,引用発明2は,「引用発明1の表示装置の製造方法」であるところ,上記(5)で述べたとおりであるから,たとえ当業者といえども,引用発明2において,上記工程を設けることはないといえる。
したがって,本願発明7及び本願発明8も,引用文献1に記載された発明(及び引用文献2?引用文献4に記載された事項)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 原査定についての判断
本願発明1?本願発明6は,いずれも,前記相違点5で挙げた「前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンは部分的に開いた領域を有し」,「最外郭の前記第2有機パターンは遮蔽構造である」という構成を具備する。
また,本願発明7及び本願発明8は,いずれも,「最外郭の前記第2有機パターンを遮蔽構造で形成し,前記第1有機パターンに隣接する前記第2有機パターンを,部分的に開いた領域を有して形成する」工程を具備する。
そうしてみると,上記1で述べた理由により,本願発明1?本願発明8は,引用文献1に記載された発明(及び引用文献2?引用文献4に記載された事項)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。
したがって,原査定を維持することはできない。

4 当合議体の拒絶の理由について
当合議体の拒絶の理由は,平成30年10月24日差出の手続補正書による補正により,解消した。

第3 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶の理由,及び当合議体の拒絶の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-08 
出願番号 特願2015-172745(P2015-172745)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
P 1 8・ 537- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱野 隆  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
発明の名称 有機発光ダイオード表示装置及びその製造方法  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  
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