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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1347611
審判番号 不服2018-4313  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-30 
確定日 2019-01-04 
事件の表示 特願2014- 87525「ディスクドライブ装置、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-207166〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月29日付け:拒絶理由通知書
平成29年11月24日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年12月26日付け:拒絶査定
平成30年 3月30日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 平成30年3月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月30日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「通常時動作とバックアップ動作とを行うディスクドライブ装置であって、
第1種ディスクドライブと、第2種ディスクドライブとを具備し、
各ディスクドライブに電源を供給する電源供給部と、
通常時動作中は、前記第2種ディスクドライブに電源を供給する電源供給線をNC(No Contact)とし、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する電源供給制御部と、
前記電源供給制御部を制御する制御部と、
を有するディスクドライブ装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年11月24日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「第1種ディスクドライブと、第2種ディスクドライブとを具備し、
各ディスクドライブに電源を供給する電源供給部と、
前記第2種ディスクドライブに電源を供給する電源供給線をNC(No Contact)とし、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する電源供給制御部と、
前記電源供給制御部を制御する制御部と、
を有するディスクドライブ装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「電源供給制御部」、及び「ディスクドライブ装置」の動作内容について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2004-326244号公報(平成16年11月18日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「【0008】本発明の目的は、運用ボリューム用のディスクアレイ装置とレプリケーションボリューム用のディスクアレイ装置とを有するディスクアレイシステムにおいて、通常運用時は、レプリケーション用のディスクアレイ装置の全てのディスクドライブの電源をオフとし、ホストコンピュータからリストアコマンドを受信したとき、第二ディスクアレイ装置の中のアクセスされるディスクドライブの電源をオンにし、リストア処理を実行し、ホストコンピュータからアクセスがないとき、第二ディスクアレイ装置のディスクドライブの電源を一定時間間隔でオンにし、ディスクドライブのパトロールシークを行い、パトロールシーク終了後、レプリケーション処理を実行することにより、ディスクアレイシステムの消費電力を低減したディスクアレイシステムを提供することにある。」

「【0023】図1、図2を参照すると、ディスクアレイシステム30は、ホストコンピュータ1と、ホストコンピュータ1と接続されるディスクアレイコントローラ2と、ディスクアレイコントローラ2に接続される運用ボリューム用の第一ディスクアレイ装置9およびレプリケーション用の第二ディスクアレイ装置10とで構成され、ディスクアレイコントローラ2は、ホストコンピュータ1との間でコマンドを送受信するホストインタフェース制御部3と、第一ディスクアレイ装置9と第二ディスクアレイ装置10とのライトデータの差分を管理する差分マップテーブル6と、差分マップテーブル6に登録されたデータを第一ディスクアレイ装置9から第二ディスクアレイ装置10へ複写するレプリケーション処理を行うレプリケーション制御部5と、第一ディスクアレイ装置9および第二ディスクアレイ装置10との間でコマンドの送受信を行うディスクインタフェース制御部8とで構成され、ディスクインタフェース制御部8は、第一ディスクアレイ装置9を構成するディスクドライブ9ー1?9ーnの電源11と第二ディスクアレイ装置10を構成するディスクドライブ10ー1?10ーnの電源12とのオン/オフを制御し、ディスクドライブ10ー1?10ーnに対応して設けられたタイマ82ー1?82ーnを制御するタイマ制御部82を有する電源制御部81と、第二ディスクアレイ装置10のディスクドライブ10ー1?10ーnに対して定期的にパトロールシーク動作を実行させるパトロールシーク制御部83とから構成される。」

「【0024】なお、電源11、電源12は、各々、ディスクドライブ9ー1?9ーn、ディスクドライブ10ー1?10ーnの台数に対応する数(n個)の個別電源を内部に格納してもよいし、一つの電源から2台、或いは、4台のディスクドライブに電源を供給する構成としてもよい(図1では、電源11、電源12は、内部に格納される個別電源を省略して表示している)。」

「【0029】ホストコンピュータ1は、通常運用時には第一ディスクアレイ装置9との間でデータ転送を行い、第二ディスクアレイ装置10との間ではデータ転送を行わず、電源制御部81は、第二ディスクアレイ装置10のディスクドライブ10ー1?10ーnの全ての電源12をオフにしておく。」

「【0036】パトロールシーク動作終了後(S14)、第一ディスクアレイ装置9のデータを第二ディスクアレイ装置10へ複写するレプリケーション処理が実行可能となるが(S15)、レプリケーション処理を実行しないときは、(S7)に戻り、レプリケーション処理を実行するときは、差分マップテーブル6を参照して、第二ディスクアレイ装置10の中のアクセスされるディスクドライブ10ー1?10ーnの電源12以外の電源12をオフにして(S16)、レプリケーション処理を実行する(S17)。」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献1に記載された技術は、ディスクアレイシステムにおける、消費電力の低減を目的とした電力供給に関する技術である(【0008】)。

b ディスクアレイシステムは、運用ボリューム用の第一ディスクアレイ装置と、レプリケーション用の第二ディスクアレイ装置を有するものであり(【0023】、図1)、また、通常運用時の処理とレプリケーション処理を行うものである(【0029】、【0036】)。

c 電源は、〔ディスクアレイ装置を構成するものであり(【0023】、図1)、当該〕ディスクアレイ装置のディスクドライブに電源を供給するものである(【0024】)。

d 電源制御部は、通常運用時には、第二ディスクアレイ装置のディスクドライブの全ての電源をオフにしておくものである(【0029】)。

e ディスクアレイコントローラは、ホストインタフェース制御部、レプリケーション制御部、及びディスクインタフェース制御部で構成され、当該ディスクインタフェース制御部は、電源制御部を有するものである(【0023】、図1)

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「通常運用時の処理とレプリケーション処理を行うディスクアレイシステムであって、
運用ボリューム用の第一ディスクアレイ装置と、レプリケーション用の第二ディスクアレイ装置とを有し、
前記各ディスクアレイ装置のディスクドライブに電源を供給する電源と、
通常運用時には、第二ディスクアレイ装置のディスクドライブの全ての電源をオフにするように制御する電源制御部と、
ホストインタフェース制御部、レプリケーション制御部、及び前記電源制御部を有するディスクインタフェース制御部で構成されるディスクアレイコントローラと、
を有するディスクアレイシステム。」

イ 引用文献4
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平2-98276号公報(平成2年4月10日出願公開。以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「 第1図に本発明を採用したファクシミリ装置の全体的な構成を示す。第1図において符号11はマイクロプロセッサなどから構成されるCPUで、このCPU11がその周囲に示したファクシミリ装置を構成する各部を制御する。(第2頁右上欄第6?10行)(【引用記載1】)」

「 本実施例では、主として送受信画像データのバッファおよびCPU11のワークエリア、あるいはシステムプログラムなどの格納用としてハードディスクドライブ(以下HDDという)19が設けられている。
HDD19は公知のものと同様の構造を有し、ハードディスク制御部110を介してデータアクセスが行なわれる。HDD19の容量は通常数?数10Mb程度である。(第2頁左下欄第14行?同頁右下欄第2行)(【引用記載2】)」

「 第1図のようなハードウェアの基本構成は補助記憶装置としてハードディスク装置を用いるファクシミリ装置に一般的なものであるが、従来ではHDD19は装置が通信中か否かに関わらず常に通電されており、メディアが回転駆動され続けているのが普通である。
しかし、HDD19が送受信する画像データのバッファとしてのみ使用されるとすれば、HDD19が動作していなければならないのは、最低画像データの入出力中のみであり、画像読取、画像記録、あるいは通信中における画像データ入出力時以外は停止していても何ら不都合はない。
従って、本実施例では画像送受信、原稿のコピーあるいは通信に先立つ画像データのハードディスク装置への格納、あるいは画像通信後のハードディスク装置内に記憶された画像データの記録出力を除く待機時、すなわち一般的には操作部12の操作入力待ち、あるいは回線を介しての呼出待ちの動作時においてはHDD19の電源を遮断し、HDD19を停止させる。(第2頁右下欄第3行?第3頁左上欄第2行)(【引用記載3】)」

「 ここで、以上の動作を行なうためのHDD19およびHDD制御部110の詳細な構成を第2図を参照して説明する。
CPU11はHDD19に対して制御信号線11a(データ線および用いられるインターフェース方式に応じた各種の制御線から成る)を用いてデータアクセスを行なうが、本実施例では、HDD19の電源を制御するためHDD制御部110が設けられている。HDD制御部110はHDDコントローラ31に対する電源供給を行なう電源線110aを制御するリレー37とその制御回路36から成る。制御回路36はCPU11から信号線11bを介して所定論理の信号を入力されることによりリレー37をON/OFFし、HDD19に対する給電を制御する。(第3頁左上欄第9行?同頁右上欄第3行)(【引用記載4】)」

「 一方、HDD19の停止はCPU11がHDDコントローラ31を介してヘッド3をシッピングゾーンへ移動し、保護した後リレー37をオフにし、HDD19の動作電流を切ることによって行なわれる。(第3頁右上欄第18行?同頁左下欄第2行)(【引用記載5】)」

(イ)上記記載から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a ファクシミリ装置に設けられたHDDは、待機時に電源が遮断され、停止されるものである(【引用記載1】、【引用記載2】、【引用記載3】)。

b HDDには、電源を制御するためのHDD制御部が設けられており、当該HDD制御部は、電源部からHDDコントローラに対して電源供給を行う電源線を制御するリレーとその制御回路からなるものであり、また、リレーは、当該電源線上に設けられたものである(【引用記載4】、図2)。

c 前記aにおけるHDDへの電源の遮断(及びHDDの停止)は、前記リレーをオフにすることによって行われる。(【引用記載5】)

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献4には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「HDDに対して電源供給を行う電源線上に設けられたリレーをオフすることにより、HDDへの電源を遮断すること。」

ウ 引用文献5
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2009/0322346号明細書(2009年12月31日出願公開。以下、「引用文献5」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

「[0008] Referring to FIG. 1 , a motherboard test system in accordance with an embodiment of the disclosure includes an HDD module 10 , an HDD connector module 20 , a relay module 30 comprising relays as electrical switches, a power supply 40 , a computer 50, and a microcontroller 60 .」
(当審訳:[0008] 図1を参照すると、開示内容の一実施例に沿ったマザーボード試験システムは、HDDモジュール10、HDDコネクタモジュール20、電気的スイッチとしてのリレーを含むリレーモジュール30、電源供給部40、コンピュータ50、マイクロコントローラ60を含む。)

「[0009] The HDD module 10 includes first-fourth HDDs 11 - 14 which, here, are SATA HDDs. The HDD connector module 20 includes first-fourth HDD connectors 21 - 24 which, here, are serial ATA (SATA) interface HDD connectors. The first-fourth HDD connectors 21 - 24 each include an HDD interface 211 - 241, a signal terminal 212 - 242, and a power terminal 213 - 243. The relay module 30 includes first-fourth relays 31 - 34. The first-fourth relays 31 - 34 each include a control terminal 311 - 341. The HDD connector module 20 and the relay module 30 can be mounted on a circuit board 80 .」
(当審訳:[0009] HDDモジュール10は、ここではSATA HDDである第1-第4HDD11-14を含む。HDDコネクタモジュール20は、ここではシリアルATA(SATA)インターフェースHDDコネクタである第1-第4HDDコネクタ21-24を含む。第1-第4HDDコネクタ21-24のそれぞれは、HDDインターフェース211-241、信号ターミナル212-242、電源ターミナル213-243を含む。リレーモジュール30は、第1-第4リレー31-34を含む。第1-第4リレー31-34のそれぞれは、コントロールターミナル311-341を含む。HDDコネクタモジュール20及びリレーモジュール30は、回路基板80に取り付けることができる。)

「[0010] The first-fourth HDDs 11 - 14 are received in the first-fourth HDD connectors 21 - 24 via the first-fourth HDD interfaces 211 - 241 respectively. The first-fourth signal terminals of the first-fourth connector 21 - 24 are connected to corresponding signal terminals of a motherboard 70 to communicate with the motherboard 70. The first relay 31 is connected to the first HDD connector 21 and the power supply 40. The second relay 32 is connected to the second HDD connector 22 and the power supply 40. The third relay 33 is connected to the third HDD connector 23 and power supply 40. The fourth relay 34 is connected to the fourth HDD connector 24 and the power supply 40. The microcontroller 60 is connected to the control terminals 313 - 343 of the first-fourth relays 31 - 34 to turn the first-fourth relays 31 - 34 on or off to switch the power supply 40 to one of the first-fourth HDDs 11 - 14 . The microcontroller 60 is connected to an on/off pin 72 of the motherboard 70 to start and stop the motherboard 70. The computer 50 is connected to the microcontroller 60 to direct the microcontroller 60 to send commands. The computer 50 is connected to the motherboard 70 to display status information of the motherboard 30 .」
(当審訳:[0010] 第1-第4HDD11-14は、第1-第4HDDインターフェース211-241を介して第1-第4HDDコネクタ21-24においてそれぞれ受けられている。第1-第4コネクタ21-24の第1-第4信号ターミナルは、マザーボード70と通信するために、対応するマザーボード70の信号ターミナルに接続されている。第1リレー31は、第1HDDコネクタ21及び電源供給部40に接続されている。第2リレー32は、第2HDDコネクタ22及び電源供給部40に接続されている。第3リレー33は、第3HDDコネクタ23及び電源供給部40に接続されている。第4リレー34は、第4HDDコネクタ24及び電源供給部40に接続されている。マイクロコントローラ60は、第1-第4HDD11-14の一つへ電源供給を切り換えるべく第1-第4リレー31-34をオンまたはオフするために、第1-第4リレー31-34のコントロールターミナル311-341に接続されている。マイクロコントローラ60は、マザーボード70を起動及び停止するために、マザーボード70のオン/オフピン72に接続されている。コンピュータ50は、コマンドを送信するようマイクロコントローラ60に指示するために、マイクロコントローラ60に接続されている。コンピュータ50は、マザーボード30の状態情報を表示するために、マザーボード70に接続されている。)

「[0014] In Step 2 , the microcontroller 60 turns the first relay 31 on, and the second, third, and fourth relays 32-34 off according to the first command, such that the power supply 40 supplies power to only the first HDD 11 via the first relay 31 .」
(当審訳:[0014] ステップ2において、マイクロコントローラ60は、電源供給部40が第1リレー31を介して第1HDD11のみに電源を供給するように、第1リレー31をオンに、第2、第3及び第4リレー32-34をオフにする。)

「[0019] In Step 7 , the microcontroller 60 turns the second relay 32 on, and the first, third, and fourth relays 31 , 33 , and 34 off according to the second command, such that the power supply 40 supplies power to only the second HDD 12 via the second relay 32 .」
(当審訳:[0019] ステップ7において、マイクロコントローラ60は、電源供給部40が第2リレー32を介して第2HDD12のみに電源を供給するように、第2リレー32をオンに、第1、第3及び第4リレー31、33及び34をオフにする。)


「[0024] In Step 12 , the microcontroller 60 turns the third relay 33 on, and the first, second, and fourth relays 31 , 32 , and 34 off according to the third command, such that power supply 40 supplies power to only the third HDD 13 via the third relay 33 .」
(当審訳:[0024] ステップ12において、マイクロコントローラ60は、電源供給部40が第3リレー33を介して第3HDD13のみに電源を供給するように、第3リレー33をオンに、第1、第2及び第4リレー31、32及び34をオフにする。)

「[0029] In Step 17 , the microcontroller 60 turns the fourth relay 34 on, and the first, second, and third relays 31 , 32 , and 33 off according to the fourth command, such that power supply 40 supplies power to only the fourth HDD 14 via the fourth relay 34 .」
(当審訳:[0029] ステップ17において、マイクロコントローラ60は、電源供給部40が第4リレー34を介して第4HDD14のみに電源を供給するように、第4リレー34をオンに、第1、第2及び第3リレー31、32及び33をオフにする。)

(イ)上記記載から、引用文献5には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

a マザーボード試験システム(mother board test system)は、HDD、リレー(relays)、電源供給部(power supply)、及びマイクロコントローラ(microcontroller)を有するものである([0008]-[0009]、図1)。

b リレーは、電源供給部からHDDへの電源供給線上に設けられ、マイクロコントローラにオン/オフを制御されることにより、HDDへの電源供給の切り換えが行われるものである([0008]-[0010]、図1)。

c マイクロコントローラは、リレーをオフにすることによりHDDへの電源供給が行われないようにする([0014]、[0019]、[0024]、[0029]、図2)。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献5には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「電源供給部からHDDへ電源を供給する電源供給線上に設けられたリレーをオフすることにより、HDDへの電源供給が行われないようにすること。」

エ 周知技術
上記イ(ウ)及びウ(ウ)での認定事項から、「HDDへの電力供給に関する技術として、電源からHDDへ電源を供給する電源供給線上に設けられたリレーをオフすることにより、HDDへの電源供給が行われないようにする」手法は、本願の出願前において当該技術分野における周知技術であったといえる。

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明は、ディスクアレイシステムにおける電源供給の技術に関するものであり、また、通常運用時にはレプリケーション用の第二ディスクアレイ装置への電源供給を行わないものであり、本件補正発明と、技術分野及び機能が共通する。

(イ)引用発明では、「通常運用時の処理」時に「第一ディスク装置」を使用し、「レプリケーション処理」時に「第二ディスクアレイ装置」を使用すると解されることから、引用発明の「通常運用時の処理」、「レプリケーション処理」、「第一ディスクアレイ装置」、及び「第二ディスクアレイ装置」は、それぞれ本件補正発明の「通常時動作」、「バックアップ動作」、「第1種ディスクドライブ」、及び「第2種ディスクドライブ」に相当する。

(ウ)引用発明の「電源」は、各ディスクアレイ装置のディスクドライブに電源を供給するものであり、よって、当該各ディスクアレイ装置に電源を供給するものであるとみることができるから、本件補正発明の「電源供給部」に相当するといえる。

(エ)引用発明の「電源制御部」は、通常運用時には、第二ディスクアレイ装置のディスクドライブの全ての電源をオフにするように制御するものであり、また、本願出願前の技術常識に鑑みると、当該電源の供給を行う際には第二ディスクアレイ装置に設けられた何らかの回路基板を通じて行われるのが通常である。
よって、引用発明の「電源制御部」と本件補正発明の「電源供給制御部」とは、後記の点で相違するものの、「通常時動作中は、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する」ものである点において、共通する。

(オ)引用発明の「ディスクアレイコントローラ」は、ホストインタフェース制御部、レプリケーション制御部、及び電源制御部を有するディスクインタフェース制御部で構成されるものであり、これらの各制御部を通じて、ホストコンピュータからのコマンドに応じてディスクアレイ装置に対して「通常運用時の処理」や「レプリケーション処理」を実行させるよう制御を行うものであるといえるが、当該処理を行う際に、前記電源制御部によりディスクアレイ装置への電源の供給が制御されているところ、当然に当該電源制御部に対し直接または間接に何らかの制御を行っているものと認められ、この点において、引用発明の「ディスクアレイコントローラ」と本件補正発明の「制御部」とに実質的な差異はない。

(カ)引用発明の「ディスクアレイシステム」は、通常運用時の処理とレプリケーション処理を行うものであり、また、第一ディスクアレイ装置、第二ディスクアレイ装置、電源、電源制御部、及びディスクアレイコントローラを有するものである点において、本件補正発明の「ディスクドライブ装置」に対応する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「通常時動作とバックアップ動作とを行うディスクドライブ装置であって、
第1種ディスクドライブと、第2種ディスクドライブとを具備し、
各ディスクドライブに電源を供給する電源供給部と、
通常時動作中は、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する電源供給制御部と、
前記電源供給制御部を制御する制御部と、
を有するディスクドライブ装置。」

【相違点1】
本件補正発明は、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する際に、「前記第2種ディスクドライブに電源を供給する電源供給線をNC(No Contact)と」するものであるのに対し、引用発明には、当該構成が特定されていない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
引用発明では、「電源制御部」は「通常時動作中は、第2種ディスクドライブの回路基板に電源を供給しないよう制御する」ところ、前記(2)エで認定したとおり、「HDDへの電力供給に関する技術として、電源からHDDへ電源を供給する電源供給線上に設けられたリレーをオフすることにより、HDDへの電源供給が行われないようにする」手法は、本願の出願前に当該技術分野における周知技術であった。そして、当該周知技術における「電源供給線上に設けられたリレーをオフする」ことが、本件補正発明の「電源供給線をNC(No Contact)と」することに対応する。
引用発明は、ディスクアレイシステムにおける電源供給の技術に関するものであり、通常運用時には、第二ディスクアレイシステムに電源を供給しないように制御するものであるが、電源を供給しないよう制御する手法として如何なる周知技術を用いるかは、必要に応じて選択し得た設計的事項である。
そうすると、引用発明において、前記電源を供給しないように制御するための具体的な手法として上記周知技術を採用することにより、電源から第二ディスクアレイ装置のディスクドライブへ電源を供給する電源供給線上に設けたリレーをオフする、即ち、当該電源供給線をNC(No Contact)とすることで、当該第二ディスクアレイ装置に電源を供給しないように制御するように構成することは、当業者であれば容易になし得たものである。

イ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献4-5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年3月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年11月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし5に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2ないし5に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2004-326244号公報
引用文献2:特開2009-282993号公報
引用文献3:特開2008-217634号公報
引用文献4:特開平2-98276号公報
引用文献5:米国特許出願公開第2009/0322346号明細書

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1並びに4ないし5及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「電源供給制御部」、及び「ディスクドライブ装置」の動作内容に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献4-5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び本願出願前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-02 
結審通知日 2018-11-06 
審決日 2018-11-20 
出願番号 特願2014-87525(P2014-87525)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田名網 忠雄  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲はま▼中 信行
須田 勝巳
発明の名称 ディスクドライブ装置、及びプログラム  
代理人 竹居 信利  

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