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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
管理番号 1347627
異議申立番号 異議2017-700852  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-07 
確定日 2018-11-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6092446号発明「部分駆動型光源装置及びそれを用いた画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6092446号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第6092446号の請求項1?15に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6092446号の請求項1?15に係る特許についての出願は、平成28年5月19日(優先権主張平成27年10月23日)に出願され、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月8日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、同年9月7日に特許異議申立人特許業務法人朝日奈特許事務所(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年12月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月19日に意見書が提出され、同年4月9日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年6月12日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月4日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年8月6日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年10月25日付けで手続補正指令(方式)が通知され、 同年10月30日に訂正請求書に添付された特許請求の範囲の手続補正(方式)がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年6月12日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?15について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜と、を有する部分駆動型光源装置であって、
前記蛍光体シートは、前記蛍光体を含有する樹脂組成物からなる蛍光体層と、該蛍光体層を保護する保護フィルムとを有し、」
とあるのを、
「前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜をさらに有し、」
に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2?15も同様に訂正する)。

(2)一群の請求項
訂正事項1に係る訂正前の請求項1?15について、請求項2?15は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?15に対応する訂正後の請求項1?15は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「励起光源」、「蛍光体シート」及び「波長選択性反射膜」の配置関係について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに図面を併せて「本件明細書等」という。)の段落【0007】?【0017】(「後方回帰光」に関する記載等)、段落【0041】(「励起光源をシャーシ内部に配置」という記載等)、段落【0049】、段落【0066】及び図1?5等の記載を根拠に、「前記複数の発光素子を格納するシャーシ」という発明特定事項、「前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、」という発明特定事項、及び、「前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、」という発明特定事項を追加して限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「励起光源」、「蛍光体シート」及び「波長選択性反射膜」の配置関係を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の本件訂正請求により訂正さた請求項1?15に係る発明(以下「本件発明1?15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜をさらに有し、
前記蛍光体シートは、前記蛍光体を含有する樹脂組成物からなる蛍光体層と、該蛍光体層を保護する保護フィルムとを有し、
前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが一体化して一体化シートを構成し、該一体化シートにおいて、前記蛍光体層の片面側に前記保護フィルムが設けられ、前記蛍光体層の他方の面側で、前記蛍光体層および前記波長選択性反射膜が直接接合していることを特徴とする部分駆動型光源装置。
【請求項2】
前記励起光源における前記複数の発光素子が格子状に配列する、請求項1に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項3】
前記励起光源と前記波長選択性反射膜との間に拡散板を更に有する、請求項1または2に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項4】
前記発光素子が青色LEDである、請求項1?3のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項5】
前記波長選択性反射膜は、前記青色LEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色から赤色にかけての波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項4に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項6】
前記発光素子がマゼンタLEDである、請求項1?3のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項7】
前記マゼンタLEDは、青色LEDと、該青色LEDのチップ上方面に配置された赤色蛍光体から構成される、請求項6に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項8】
前記赤色蛍光体はフッ化物赤色発光蛍光体である、請求項7に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項9】
前記フッ化物赤色発光蛍光体は、K_(2)SiF_(6)である、請求項8に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項10】
前記波長選択性反射膜は、前記マゼンタLEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色の波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項6?9のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項11】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、硫化物系蛍光体である、請求項1?10のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項12】
前記硫化物系蛍光体は、赤色硫化物蛍光体及び緑色硫化物蛍光体のうちの少なくともいずれかを含む、請求項11に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項13】
前記赤色硫化物蛍光体は、硫化カルシウム蛍光体であり、前記緑色硫化物蛍光体は、チオガレート蛍光体である、請求項12に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項14】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、イットリウムセリウムアルミニウムガーネット蛍光体である、請求項1?5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?15に係る特許に対して、平成30年4月9日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
[取消理由]
訂正前の請求項1?15に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[刊行物等]
1.国際公開第2006/007109号
2.特開2015-65158号公報
3.国際公開第2012/128323号
4.特開2007-81234号公報
5.特開2015-32373号公報
6.特開2005-277127号公報
7.特開2013-68728号公報
8.特開2010-19958号公報
上記刊行物等1ないし8は、それぞれ、特許異議申立人が提出した甲第1ないし8号証(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲8」という。)である。

2 判断
(1)甲号証について
(1-1)甲1について
ア 甲1に記載された事項
甲1には、図とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下、同様である。)
(1a)
1頁下から1行?5頁16行
「However, PCLEDs can be less efficient than direct emission LEDs, due in part to inefficiencies in the process of light absorption and re-emission by the phosphor.
・・・
Brief Description of the Drawings
FlG. 1 schematically illustrates one embodiment of an illumination system having a short pass interference reflector.
FlG. 2 schematically illustrates one embodiment of an illumination system having a short pass interference reflector and a long pass interference reflector.
FIG. 3 schematically illustrates one embodiment of an illumination system having a short pass interference reflector and one or more optical elements.
FIG. 4 schematically illustrates one embodiment of an illumination system having a long pass interference reflector. FIG. 5 schematically illustrates one embodiment of an illumination system having a short pass interference reflector, a long pass interference reflector, and an optical cavity.
・・・
FIG. 14 is a schematic cross-section view of one embodiment of an illumination system having one or more light guides.
FIG. 15 schematically illustrates another embodiment of an illumination system having one or more light guides.」
「しかしPCLEDは、一部には蛍光体による光吸収および再発光のプロセスにおける非効率性のため、直接発光LEDより効率が低い恐れがある。
・・・
図面の簡単な説明
図1 ショートパス干渉反射体を有する照明システムの一実施形態を概略的に図示する。
図2 ショートパス干渉反射体とロングパス干渉反射体とを有する照明システムの一実施形態を概略的に図示する。
図3 ショートパス干渉反射体と1つまたは複数の光学素子とを有する照明システムの一実施形態を概略的に図示する。
図4 ロングパス干渉反射体を有する照明システムの一実施形態を概略的に図示する。
・・・
図14 1つまたは複数の光導波路を有する照明システムの一実施形態の概略断面図である。
図15 1つまたは複数の光導波路を有する照明システムの他の実施形態を概略的に図示する。」
(1b)
6頁7?15行
「For example, the first optical characteristic may include a first wavelength region, and the second optical characteristic may include a second wavelength region that is different than the first wavelength region. In one exemplary embodiment, the light source may emit light having a first optical characteristic, where the first optical characteristic includes a first wavelength region including UV light. In this illustrative embodiment, the UV light emitted by the light source illuminates emissive material, which cause such material to emit light having a second optical characteristic, where the second optical characteristic includes a second wavelength region including visible light.」
「例えば第1の光学特性は第1の波長域を含み得るとともに、第2の光学特性は第1の波長域とは異なる第2の波長域を含み得る。例示的一実施形態において光源は第1の光学特性を含む光を放出し、第1の光学特性はUV光を含む第1の波長域を含む。この例示的実施形態において光源により放出されたUV光は電子放出性物質を照明し、それによりこのような物質は第2の光学特性を含む光を放出し、第2の光学特性は可視光を含む第2の波長域を含む。」
(1c)
9頁3?10行
「In general, the interference reflectors described herein include reflectors that are formed of organic, inorganic, or a combination of organic and inorganic materials. The interference reflector can be a multilayer interference reflector. The interference reflector can be a flexible interference reflector. A flexible interference reflector can be formed from polymeric, non-polymeric materials, or polymeric and non-polymeric materials. Exemplary films including a polymeric and non-polymeric material are disclosed in U.S. Patent Nos. 6,010,751 (Shaw et al.); 6,172,810 (Fleming et al.); and EP 733,919A2 (Shaw et al.).」
「一般に本明細書に説明する干渉反射体は、有機、無機、または有機および無機材料の組合せで形成された反射体を含む。干渉反射体は多層干渉反射体であってもよい。干渉反射体は可撓性干渉反射体であってもよい。可撓性干渉反射体はポリマー、非ポリマー材料、またはポリマーおよび非ポリマー材料で形成することができる。ポリマーおよび非ポリマー材料を含む例示的フィルムは、米国特許第6,010,751号明細書(ショウ(Shaw)ら)、同第6,172,810号明細書(フレミング(Fleming)ら)、および欧州特許出願公開第733,919A2号明細書(ショウ(Shaw)ら)に開示されている。」
(1d)
13頁1?2行
「In some embodiments, the light source 20 includes one or more LEDs. For example, the one or more LEDs can emit UV light and/or blue light.」
「いくつかの実施形態において光源20は1つまたは複数のLEDを含む。例えば1つまたは複数のLEDはUV光および/または青色光を放出することができる。」
(1e)
13頁28?31行
「In other embodiments, the emissive material 40 may emit infrared light when illuminated with light from the light source 20. In such embodiments, the first interference reflector 30 may be selected such that it substantially transmits light from the light source 20 and substantially reflects infrared light.」
「他の実施形態において電子放出性物質40は、光源20からの光で照明されると赤外光を放出しうる。このような実施形態において第1の干渉反射体30を、光源20からの光を実質的に透過するとともに赤外光を実質的に反射するように選択し得る。」
(1f)
15頁1?10行
「In general, the embodiments disclosed herein are operative with a variety of emissive materials, hi some embodiments, suitable phosphor materials may be used. Such phosphor materials are typically inorganic in composition, having excitation wavelengths in the 150-1100 nm range. A phosphor blend can comprise phosphor particles in the 1-25 μm size range dispersed in a binder such as silicone, fluoropolymer, epoxy, adhesive, or another polymeric matrix, which can then be applied to a substrate, such as an LED or a film. Phosphors include rare-earth doped garnets, silicates, and other ceramics. In other embodiments, the emissive materials can also include organic fluorescent materials, including fluorescent dyes and pigments, sulfides, aluminates, phosphates, nitrides. See, e.g., Shionoya et al., Phosphor Handbook, CRC Press, Boca Raton, FL (1998).」
「一般に本明細書に開示した実施形態は多様な電子放出性物質により作用する。いくつかの実施形態において適当な蛍光物質を用い得る。このような蛍光物質は通例150?1100nm範囲の励起波長を有する組成内の無機質である。蛍光混合物はシリコーン、フルオロポリマー、エポキシ、接着剤、または他のポリマーマトリクスなどの結合剤内に分散された1?25μmサイズ範囲の蛍光粒子を含み得る。そしてこれをLEDなどの基板またはフィルムに塗布することができる。蛍光体には希土類ドーピングガーネット、ケイ酸塩、および他のセラミクスがある。他の実施形態において電子放出性物質は、蛍光染料および顔料、硫化物、アルミ酸塩、リン酸塩、窒化物を始めとする有機蛍光物質も含むことができる。例えば塩谷(Shionoya)らの「蛍光体ハンドブック(Phoshor Handbook)」CRC出版、フロリダ州ボカレイトン(Boca Raton,FL)1998年を参照されたい。」
(1g)
15頁28?29行
「In addition, emissive material 40 can be in a co-extruded skin layer of a multilayer optical film.」
「加えて電子放出性物質40は多層光学フィルムの共押出し表面薄層内に存在可能である。」
(1h)
17頁4?12行
「Any suitable technique may be used to position the emissive material 40 on the first interference reflector 30, e.g., those techniques described in co-owned and co-pending U.S. Patent Application Publication No. 2004-0116033 (Ouderkirk et al.). For example, the emissive material 40 can be disposed or coated on the first interference reflector 30. The emissive material 40 can be laminated, as a solid layer, adjacent the first interference reflector 30. In addition, the emissive material 40 and the first interference reflector 30 can be thermoformed sequentially or simultaneously. The emissive material 40 can be compressible, elastomeric, and can even be contained in a foamed structure. 」
「任意の適当な技術、例えば同一出願人所有且つ同時係属中の米国特許出願公開第2004/0116033号明細書(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)に記載されたような技術を用いて、電子放出性物質40を第1の干渉反射体30上に配置し得る。例えば電子放出性物質40を第1の干渉反射体30上に配置または塗布することができる。電子放出性物質40を固体層として第1の干渉反射体30に隣接して積層することができる。加えて電子放出性物質40および第1の干渉反射体30を順次または同時に熱成形することができる。電子放出性物質40は圧縮性、弾性であり且つ発泡構造内に含有することさえ可能である。」
(1i)
17頁13?25行
「In some embodiments, the system 10 can also include a TIR promoting layer positioned on the emissive material 40 between the emissive material 40 and the first interference reflector 30. The TIR promoting layer may include any suitable material or materials that provide a refractive index that is lower than the refractive index of the binder in the emissive material 40. The TIR promoting layer may, in some embodiments, be an air gap. Such an air gap enables total internal reflection of light traversing at high incidence angles in the emissive material 40. In other embodiments, the TIR promoting layer may be a microstructured layer having a microstructured surface. The microstructured surface can be characterized by a single set of linear v-shaped grooves or prisms, multiple intersecting sets of v-shaped grooves that define arrays of tiny pyramids, one or more sets of narrow ridges, and so forth. When the microstructured surface of such a film is placed against another flat film, air gaps are formed between the uppermost portions of the microstructured surface and the flat film.」
「いくつかの実施形態においてシステム10は、電子放出性物質40と第1の干渉反射体30との間で電子放出性物質40上に位置するTIR促進層を含むこともできる。TIR促進層は電子放出性物質40内の結合剤の屈折率より低い屈折率を提供する任意の適当な物質を含み得る。TIR促進層はいくつかの実施形態において空隙であり得る。このような空隙は電子放出性物質40内を高い入射角で横断する光の全反射を可能にする。他の実施形態においてTIR促進層は微細構造化表面を有する微細構造化層であり得る。微細構造表面は一組の直線v形状溝または角柱、極小角錐のアレイを規定する複数の交差する組のv形状溝、一組または複数組の狭い突起部等により特徴付けることができる。このようなフィルムの微細構造化表面を他の平坦フィルムに対して配置すると、微細構造化表面の最上部分と平坦フィルムとの間に空隙が形成される。」
(1j)
17頁26?29行
「Certain types of emissive materials can produce heat, for example, when converting light from a first wavelength region to a second wavelength. The presence of an air gap near the emissive material 40 may significantly reduce heat transmission from the emissive material 40 to surrounding materials. 」
「あるタイプの電子放出性物質は、例えば光を第1の波長域から第2の波長域に変換する際に熱を発生することがある。電子放出性物質40付近に空隙が存在することにより、電子放出性物質40から周囲物質への熱伝達を大幅に低減し得る。」
(1k)
17頁29?31行
「The reduced heat transfer can be compensated for in other ways, such as by providing a layer of glass or transparent ceramic near the emissive material 40 that can remove heat laterally.」
「熱伝達の低減は他の方法、例えば横方向に熱を除去可能なガラスまたは透明セラミック層を電子放出性物質40付近に設けることにより補償することができる。」
(1l)
39頁9?21行
「In some embodiments, the emissive material 1140 includes one or more dots that emit one or more emitted wavelengths of visible light, e.g., a dot emitting red, a dot emitting blue, and a dot emitting green. For example, phosphor dot 1142R may emit red light when illuminated with light from the light source 1 120, phosphor dot 1142G may emit green light, and phosphor dot 1142B may emit blue light.
・・・
In general, structured phosphor layers, e.g., dots, can be configured in several ways to provide benefits in performance as described herein. When various types of emissive materials are used (e.g., red emitters, green emitters, etc.), light emitted from shorter wavelength emissive materials can be re-absorbed by other emissive materials.」
「いくつかの実施形態において電子放出性物質1140は、1つまたは複数の可視光の発光波長を発光する1つまたは複数のドット、例えば赤色を発光するドット、青色を発光するドット、および緑色を発光するドットを含む。例えば蛍光体ドット1142Rは光源1120からの光で照明されると赤色光を放出し、蛍光体ドット1142Gは緑色光を放出し、蛍光体ドット1142Bは青色光を放出し得る。
・・・
一般に構造化蛍光体層、例えばドットをいくつかの方法で本明細書に記載する性能の利点を提供するように構成することができる。様々なタイプの電子放出性物質を用いる場合(例えば赤色エミッタ、緑色エミッタ等)、より短い波長電子放出性物質から放出された光は他の電子放出性物質により再吸収され得る。」
(1m)
41頁28行?44頁13行
「For example, FIG. 14 schematically illustrates one embodiment of an illumination system 1300 that includes light guides 1312 each having an input surface 1316 and an output surface 1314, and a light source 1320.
・・・
The illumination system 1300 may also include one or more optical elements 1360. The one or more optical elements 1360 may be positioned to receive light from the emissive material 1340, between the emissive material 1340 and the first interference reflector 1330, and/or between the output surfaces 1314 of the light guides 1312 and the first interference reflector 1330. The one or more optical elements 1360 may include collimating optics for directing light within a predetermined angle toward a display or other device. For example, the one or more optical elements 1360 may include brightness enhancement films, turning films, lenses, diffusers, gain diffusers, contrast-enhancing materials, reflective elements, etc. In some embodiments, the one or more optical elements 1360 may include a walk-off plate or crystal to provide a more uniform light distribution.」
「例えば図14は、各々入力面1316と出力面1314と有する光導波路1312と、光源1320とを含む照明システム1300の一実施形態を概略的に図示する。
・・・
また照明システム1300は1つまたは複数の光学素子1360を含み得る。1つまたは複数の光学素子1360を、電子放出性物質1340からの光を受光するように電子放出性物質1340と第1の干渉反射体1330との間、および/または光導波路1312の出力面1314と第1の干渉反射体1330との間に配置し得る。1つまたは複数の光学素子1360は、所定角度内の光をディスプレイまたは他のデバイスに向けるコリメーティング光学系を含み得る。例えば1つまたは複数の光学素子1360は輝度強化フィルム、旋回フィルム、レンズ、拡散板、利得拡散板、コントラスト増強物質、反射素子等を含み得る。いくつかの実施形態において1つまたは複数の光学素子1360は、より均一な光分散を提供するウォークオフプレートまたは結晶を含み得る。」
(1n)
45頁13?25行
「As previously mentioned herein, any suitable technique may be used to couple light from the light source 1320 into the light guides 1312. For example, FlG. 15 schematically illustrates another embodiment of an illumination system 1400 that includes light guides 1412 including optical fibers 1413. See, e.g., co-owned and copending U.S. Patent Application Publication No. 2004-0149998 (Henson et al.). The system 1400 includes a light source 1420, emissive material 1440 positioned to receive light from the light source 1420, and a first interference reflector 1430 positioned between the light guides 1412 and the emissive material 1440. All of the design considerations and possibilities in regard to the light guide 1312, the light source 1320, the first interference reflector 1330, and the emissive material 1340 of the embodiment illustrated in FIG. 14 apply equally to the light guide 1412, the light source 1420, the first interference reflector 1430, and the emissive material 1440 of the embodiment illustrated in FIG. 15. The system 1400 may also include a second interference reflector (not shown) as is further described herein.」
「本明細書に前述したように、任意の適当な技術を用いて光源1320からの光を光導波路1312に結合し得る。例えば図15は光ファイバ1413を含む光導波路1412を含む照明システム1400の他の実施形態を概略的に図示する。例えば同一出願人所有且つ同時係属中の米国特許出願公開第2004/0149998号明細書(ヘンソン(Henson)ら)を参照されたい。システム1400は光源1420と、光源1420からの光を受光するように配置された電子放出性物質1440と、光導波路1412と電子放出性物質1440との間に配置された第1の干渉反射体1430とを含む。図14に図示された実施形態の光導波路1312、光源1320、第1の干渉反射体1330、および電子放出性物質1340に対して本明細書に記載された設計上の考察および可能性のすべては、図15に図示された実施形態の光導波路1412、光源1420、第1の干渉反射体1430、および電子放出性物質1440に同等に適用される。またシステム1400は本明細書にさらに説明するように第2の干渉反射体(図示せず)を含み得る。」
(1o)
45頁26行?46頁7行
「Light source 1420 includes an array 1422 of LED dies 1424 that are positioned in optical alignment with an array of optical elements 1428, which can include passive optical elements, such as focusing lenses 1429 or optical concentrating elements, such as reflectors. The array of optical elements 1428 are in turn optically aligned to an array of optical fibers 1413. The array of optical fibers 1413 can be connectorized, where the connectorization can include a connector 1417 to support and/or house input surfaces 1416 of fibers 1413. The connectorization can also include a connector 1415 to support and/or house output surfaces 1414 of fibers 1413. Any suitable connector or connectors may be used at either the input surfaces 1416 or output surfaces 1414 of the optical fibers 1413, e.g., those described in U.S. Patent No. 10/726,222 (Henson et al.). As would be apparent to one of ordinary skill in the art given the present description, the output surfaces 1414 of the fibers 1413 may be bundled to form a point-like source or a shaped-array, such as a linear array, circular array, hexagonal array, or other shaped-array.」
「光源1420は光学素子1428のアレイと光学的に位置合わせして配置されたLEDダイ1424のアレイ1422を含み、光学素子1428は焦点合わせレンズ1429などの受動光学素子または反射体などの光学集光素子を含み得る。また光学素子1428のアレイは光ファイバ1413のアレイと光学的に位置合わせされている。光ファイバ1413のアレイをコネクタ化することが可能であり、コネクタ化はコネクタ1417を含むことによりファイバ1413の入力面1416を支持および/または収容することができる。またコネクタ化はコネクタ1415を含むことによりファイバ1413の出力面1414を支持および/または収容することができる。任意の適当なコネクタ、例えば米国特許出願第10/726,222号明細書(ヘンソン(Henson)ら)に記載されたものを、光ファイバ1413の入力面1416または出力面1414のいずれかにおいて用い得る。本明細書の対象とする当業者には明らかであるように、ファイバ1413の出力面1414を束ねて点状光源もしくは直線アレイ、円形アレイ、六角形アレイ、または他の形状化アレイなどの形状化アレイを形成し得る。」
(1p)
47頁22?29行
「In some embodiments, the LED dies 1424 may be independently controllable such that one or more LEDs 1424 can be selectively activated. For example, the system 1400 may include a controller (not shown) that is in electrical communication with each LED 1424. The controller is operable to selectively activate one or more LEDs 1424. Any suitable controller or controllers may be used, e.g., those described in co-owned and copending U.S. Patent Application Publication No. 2004-0149998 (Henson et al.). Such controllable output of the LEDs 1424 may be used in various types of applications, e.g., steerable headlamps for motor vehicles, pixilated displays, projection systems, signs, etc. 」
「いくつかの実施形態において複数のLEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能であり得る。例えばシステム1400は各LED1424と電気通信しているコントローラ(図示せず)を含み得る。コントローラは1つまたは複数のLED1424を選択的に起動するように動作可能である。任意の適当なコントローラ、例えば同一出願人所有且つ同時係属中の米国特許出願公開第2004/0149998号明細書(ヘンソン(Henson)ら)に記載されているものを用い得る。このようなLED1424の制御可能出力を様々なタイプの用途、例えば自動車用可動ヘッドランプ、画素化ディスプレイ、投射システム、標識等で用い得る。」
(1q)
47頁30行?48頁15行
「In general, light having a first optical characteristic is emitted by one or more LEDs 1424 of the light source 1420, such light is directed into one or more optical fibers 1413 through their input surfaces 1416 by optical elements 1428. The light is directed by the optical fibers 1413 through their output surfaces 1414 and illuminates the first interference reflector 1430. The first interference reflector 1430 substantially transmits the light such that it illuminates emissive material 1440. The emissive material 1440 converts at least a portion of the light from the light source 1420 into light having a second optical characteristic. Light emitted by the emissive material 1440 that is directed toward the first interference reflector 1430 is substantially reflected by the first interference reflector 1430. If a LP interference reflector (e.g., second interference reflector 150 of FIG. 2) is included in system 1400, then the light emitted by the emissive material 1440 is substantially transmitted by the LP interference reflector. Any light from the light source 1420 that illuminates the LP interference reflector is substantially reflected back toward the emissive material 1440 where it may then be converted into light having the second optical characteristic. Light emitted by the emissive material 1440 and/or transmitted by the optional LP interference reflector can then be directed to a desired location using any suitable technique.」
「一般に第1の光学特性を有する光が光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され、このような光は光学素子1428により入力面1416を介して1つまたは複数の光ファイバ1413内に向けられる。光は光ファイバ1413によりそれらの出力面1414を介して向けられるとともに第1の干渉反射体1430を照明する。第1の干渉反射体1430はその光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過する。電子放出性物質1440は光源1420からの光の少なくとも一部分を第2の光学特性を有する光に変換する。第1の干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光は第1の干渉反射体1430により実質的に反射される。LP干渉反射体(例えば図2の第2の干渉反射体150)がシステム1400に含まれている場合には、電子放出性物質1440により放出された光はLP干渉反射体により実質的に透過される。LP干渉反射体を照明する光源1420からの任意の光は電子放出性物質1440に向けて後方に実質的に反射され、そこで第2の光学特性を有する光に変換され得る。電子放出性物質1440により放出および/または随意のLP干渉反射体により透過された光はその後任意の適当な技術を用いて所望の場所に向けることができる。」
(1r)
52頁1行
「8. The system of claim 1 , wherein the emissive material comprises phosphor material.」
「8.前記電子放出性物質が蛍光体材料を含む、請求項1に記載の照明システム。」
(1s)
FIG.14及びFIG.15は、以下のとおりである。


イ 甲1に記載された発明
摘記(1r)の「前記電子放出性物質が蛍光体材料を含む」ことは、摘記(1s)のFIG.15と摘記(1q)に記載の「電子放出性物質1440」についても該当することが明らかであること、及び、摘記(1a)?(1s)、特に、摘記(1b)、(1n)、(1p)、(1q)、(1r)及び(1s)のFIG.15から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「複数のLEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能であり、第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光が光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され、
このような光は、光学素子1428により入力面1416を介して1つまたは複数の光ファイバ1413内に向けられ、光ファイバ1413によりそれらの出力面1414を介して向けられるとともに干渉反射体1430を照明し、
干渉反射体1430はその光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過し、
電子放出性物質1440が蛍光体材料を含み、
電子放出性物質1440は光源1420からの光の少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し、
干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光は干渉反射体1430により実質的に反射される、
光源1420と、光源1420からの光を受光するように配置された電子放出性物質1440と、光導波路1412と電子放出性物質1440との間に配置された干渉反射体1430とを含む、システム1400。」

(1-2)甲2について
甲2には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0003】
フラットパネルディスプレイ市場では、LCD性能改善として、色再現性の向上が進行している。この点に関し、近年、発光材料として、量子ドット(Quantum Dot、QD、量子点とも呼ばれる。)が注目を集めている(特許文献1参照)。・・・
・・・
【0005】
量子ドットには、酸素に接触すると光酸化反応により発光強度が低下する(耐光性が低い)という課題がある。この点に関し、特許文献1には、量子ドットを酸素等から保護するために、量子ドットを含むフィルムにバリア層を積層することが提案されている。」
(2b)
「【0028】
・・・これに対し本発明の一態様にかかる光変換部材では、光変換層に、密着改良剤を含む。この密着改良剤により、光変換層と隣接無機層との密着が強固なものとなる・・・
・・・
【0032】
<光変換層>
光変換部材は、少なくとも、入射する励起光により励起され蛍光を発光する量子ドットを含む光変換層を有する。その他の層として、本発明の一態様にかかる光変換部材には、光変換層に直接接する無機層が含まれる。その詳細は、後述する。」
(2c)
「【0078】
(光変換層の形成方法)
本発明の光変換部材の製造方法の一態様は、無機層を少なくとも含む第一のバリアフィルムの上記無機層の表面、または上記無機層の表面に任意に設けられてもよい密着改良層の表面に、量子ドットおよび重合性化合物を含む光変換層形成用の重合性組成物を設ける工程と、
上記第一のバリアフィルムの上記無機層の表面または上記密着改良層の表面に設けられた上記光変換層形成用の重合性組成物を重合させることにより上記光変換層を形成する工程を含む。」
(2d)
「【0132】
バックライトユニットは、少なくとも、上記光変換部材とともに、光源を含む。一態様では、光源として、430nm?480nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色光を発光するもの、例えば、青色光を発光する青色発光ダイオードを用いることができる。青色光を発光する光源を用いる場合、光変換層には、少なくとも、励起光により励起され赤色光を発光する量子ドット(A)と、緑色光を発光する量子ドット(B)が含まれることが好ましい。これにより、光源から発光され光変換部材を透過した青色光と、光変換部材から発光される赤色光および緑色光により、白色光を具現化することができる。・・・
また他の態様では、青色光を発光する青色レーザー、緑色光を発光する緑色レーザー、赤色光を発光する赤色レーザーからなる群から選ばれる光源の二種を用い、この光源が出射する光とは異なる発光波長を有する蛍光を発光する量子ドットを、光変換層に存在させることにより、光源から発光される二種の光と、光変換層の量子ドットから発光される光により、白色光を具現化することもできる。・・・」

(1-3)甲3について
甲3には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(3a)
「[0250] 保護膜617は、蛍光膜615の表面を被覆している。保護膜617は、耐水性および撥水性の少なくとも一方を有することができる。保護膜617は、液体の浸透を抑制するとともに、空気や水蒸気から下層の膜を保護する機能を有する。」

(1-4)甲4について
甲4には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(4a)
「【請求項2】
前記発光ダイオードランプは、前記発光ダイオード素子を搭載する素子搭載基板をさらに有し、同一平面内で縦横方向に複数個並列して配置されている請求項1に記載の照明装置。」
(4b)
「【0011】
従って、本発明の目的は、蛍光体(蛍光体層)の励起効率及び封止部材(封止部)の透明度の低下を防止することができ、もって長期間にわたって高輝度の照明光を得ることができる照明装置を提供することにある。」
(4c)
「【0090】
図12(a)に示すように、第10の実施の形態に示す照明装置1は、YAG蛍光体を含有したアクリルからなる蓋部9と、蓋部9の発光ダイオードランプ2B側に青色光を透過し、黄色光を反射するダイクロイックミラー96とを有する。なお、第10の実施の形態では、発光ダイオードランプ2Bの回路パターン5Bを本体部8の回路パターン11Bに半田接合部100を介して接合している。」
(4d)
図1(b)は、以下のとおりである。


(1-5)甲5について
甲5には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(5a)
「【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置された複数の光源と、
前記複数の光源に対向配置された波長変換部材と、
前記波長変換部材と前記複数の光源との間に配置され、入射した光の角度分布を均一化する拡散部材と
を備えた光源装置。」
(5b)
「【0013】
この光源装置は、光源基板1と、複数の光源2と、波長変換部材としての波長変換シート3と、拡散部材4と、光学シート5と、反射部材としての反射シート6と、レジスト層7と、背面筐体(バックシャーシ)101と、中間筐体(ミドルシャーシ)102とを備えている。」

(1-6)甲6について
甲6には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(6a)
「【0002】
近年、青色LEDにYAG:Ce等黄色蛍光体を組合せ、単一のチップで白色光を発する、いわゆる白色LEDに注目が集まっている(特許第2927279号)。従来、LEDは単色で発光するものであり、白色又は中間色を発するためには、単色の波長を発する複数のLEDを用いてそれぞれ駆動しなければならなかったが、蛍光体との組合せによりこのような煩わしさを排し、簡便な構造によって白色光を得られるようになったためである。」
(6b)
「【0017】
図1は、本発明による発光デバイスの構成例の一つを示したものである。図1は、励起光源として青色LEDチップ(3)を用い、ここから発する青色光を吸収し緑色光を発する蛍光体(7)と、青色光を吸収し赤色光を発する蛍光体(6)とを用いた場合である。」
(6c)
「【0030】
なお、励起光源周辺に赤色蛍光体(6)を予め配置し、その後、緑色蛍光体(7)を含む層を配置した透明シートをキャビティー開口部に接着しても同様の効果が得られる(図4)。」
(6d)
「【0034】
ガラスエポキシ基板と高反射率樹脂とで形成されたキャビティー部に、バインダー樹脂であるエポキシ樹脂にチオガレート系緑色蛍光体(中位径:17μm)と、硫化カルシウム系赤色蛍光体(中位径:21μm)とを混合したものを樹脂表面がキャビティ開口部と水平となるまで充填した。その後、30分放置して蛍光体粒子を沈降させた後、硬化させた(実施例1)。」

(1-7)甲7について
甲7には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(7a)
「【0007】
本発明は、波長変換部材を用いた光源を高輝度化し得る波長変換部材及びそれに用いる発光体封入用毛細管を提供することを主な目的とする。」
(7b)
「【0026】
なお、無機蛍光体は、光源から出射させようとする光の波長や、発光体から出射される励起光の波長などに応じて適宜選択することができる。・・・」
(7c)
「【0009】
本発明の発光体封入用毛細管において、第1の主壁部の厚みは、第2の主壁部の厚みの2倍以上であることが好ましい。
・・・
【0026】
なお、無機蛍光体は、光源から出射させようとする光の波長や、発光体から出射される励起光の波長などに応じて適宜選択することができる。
・・・
【0029】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると緑色の可視光(波長が500nm?540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、・・・SrGa_(2)S_(4):Eu^(2+)、・・・などが挙げられる。」
(7d)
「【0031】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると黄色の可視光(波長が540nm?595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、Y_(3)(Al,Gd)_(5)O_(12):Ce^(2+)、・・・が挙げられる。」
(7e)
「【0033】
波長440?480nmの青色の励起光を照射すると赤色の可視光(波長が600nm?700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末としては、・・・K_(2)SiF_(6):Mn^(4+)、・・・CaS:Eu^(2+)、・・・などが挙げられる。」

(1-8)甲8について
甲8には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(8a)
「【0031】
・・・
図4は比較例の複合カラーフィルタ200を表すものである。この複合カラーフィルタ200では、赤色の顔料分散型カラーフィルタ201の光入射側に、マゼンタを透過し緑色を反射するコレステリックカラーフィルタ204が配置され、緑色の顔料分散型カラーフィルタ202の光入射側に、黄色を透過し青色を反射するコレステリックカラーフィルタ205が配置され、青色の顔料分散型カラーフィルタ203の光入射側に、シアンを透過し赤色を反射するコレステリックカラーフィルタ206が配置されている。」

(2)対比・判断
(2-1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)
a
LEDダイは、LEDチップを意味していることが技術常識であること、及び、甲1発明において、「LEDダイ1424」と「LED1424」とは、符号が同じであることを踏まえると、甲1発明において、1つの「LEDダイ1424」と1つの「LED1424」とは、実質的に同じ構成のもの、すなわち、1つのLEDを意味しているといえる。
そして、甲1発明の「複数のLEDダイ1424は、1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能であり、第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光が光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され」る構成(以下「構成A」という。)を踏まえると、「複数のLEDダイ1424」は、「光源1420」が備える全ての「LED1424」を総称しているものといえる。
したがって、甲1発明の構成Aの「複数のLEDダイ1424」は、本件発明1の「複数の発光素子」に相当し、甲1発明の構成Aの「光源1420」は、実質的に「複数のLEDダイ1424」すなわち「複数の発光素子」からなるものといえる。
b
また、構成Aの「1つまたは複数のLED1424が選択的に起動できるように独立して制御可能であ」ることは、「光源1420」が備える全ての「LED1424」を総称している「複数のLEDダイ1424」のそれぞれが、独立して制御可能であることで、選択的に起動できること、すなわち、起動させる「LED1424」と起動させない「LED1424」を選択できることを意味しているといえることから、甲1発明の構成Aの「複数のLEDダイ1424」からなる「光源1420」は、部分駆動可能であり、本件発明1の「部分駆動可能な励起光源」に相当する。
したがって、上記aを踏まえると、甲1発明の構成Aは、本件発明1の「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源」の構成に相当する。
(イ)
a
甲1発明の「光」に関して、「このような光」、「その光」及び「光源1420からの光」は、いずれも「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」を示しているといえる。
b
甲1発明の「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光が光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され、このような光は、光学素子1428により入力面1416を介して1つまたは複数の光ファイバ1413内に向けられ、光ファイバ1413によりそれらの出力面1414を介して向けられるとともに干渉反射体1430を照明し、干渉反射体1430はその光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過し、電子放出性物質1440が蛍光体材料を含み、電子放出性物質1440は光源1420からの光の少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し、干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光は干渉反射体1430により実質的に反射される」構成(以下「構成B」という。)では、「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」が「光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され」、「このような光」は、「干渉反射体1430を照明し」、「干渉反射体1430」は「その光」を「電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過」するものである。
このことと、上記aを踏まえると、甲1発明の上記構成Bの「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」、「このような光」、「その光」及び「光源1420からの光」は、いずれも、「光源1420」から「電子放出性物質1440」に入射する光であるといえる。
したがって、上記(ア)bを踏まえると、甲1発明の上記構成Bの「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」、「このような光」、「その光」及び「光源1420からの光」は、いずれも、本件発明1の「励起光源からの入射光」に相当する。
c
甲1発明の上記構成Bにおいて、「電子放出性物質1440が蛍光体材料を含み、電子放出性物質1440は光源1420からの光の少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し」、「電子放出性物質1440」は、「光」を「放出」すること、及び、上記aを踏まえると、甲1発明の上記構成Bの「電子放出性物質1440」は、「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」の「少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し」、「放出」するといえる。
d
上記a?c及び摘記(1b)を踏まえると、甲1発明の上記構成Bの「電子放出性物質1440」による「変換」は、「第1の波長域」を「第1の波長域とは異なる第2の波長域」に変換することを意味しているといえる。
したがって、甲1発明の上記構成Bの「第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光」は、本件発明1の「入射光とは異なる波長領域の出射光」に相当する。
e
甲1発明の上記構成Bの「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」、「このような光」、「その光」及び「光源1420からの光」は、いずれも、本件発明1の「励起光源からの入射光」に相当すること(上記b)、甲1発明の上記構成Bの「第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光」は、本件発明1の「入射光とは異なる波長領域の出射光」に相当すること(上記d)、及び、甲1発明の上記構成Bの「電子放出性物質1440」は、「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光」の「少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し」、「放出」するといえること(上記c)を踏まえると、甲1発明の上記構成Bの、「その光」が「照射」され、「光源1420からの光」の「少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し」、「光」を「放出」する「電子放出性物質1440」は、励起光源からの入射光の少なくとも一部分を入射光とは異なる波長領域の出射光に変換し、放出するといえる。
f
甲1発明は、「第1の波長域を含む第1の光学特性を有する光が光源1420の1つまたは複数のLED1424により放出され、このような光は、光学素子1428により入力面1416を介して1つまたは複数の光ファイバ1413内に向けられ、光ファイバ1413によりそれらの出力面1414を介して向けられるとともに干渉反射体1430を照明し、干渉反射体1430はその光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過し、電子放出性物質1440が蛍光体材料を含み、電子放出性物質1440は光源1420からの光の少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し、干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光は干渉反射体1430により実質的に反射される」構成(構成B)と、「光源1420と、光源1420からの光を受光するように配置された電子放出性物質1440と、光導波路1412と電子放出性物質1440との間に配置された干渉反射体1430とを含む」構成(以下「構成C」という。)とを備えている。
このことに併せて、甲1のFIG.15及び「各々入力面1316と出力面1314と有する光導波路1312」(摘記(1m))を参照すると、甲1発明において、上記構成Cの「光導波路1412」は、実質的に、上記構成Bの「入力面1416」と、「1つまたは複数の光ファイバ1413」と、「出力面1414」とを備えるものであるといえるところ、上記構成Bにおいて、「入力面1416」、「1つまたは複数の光ファイバ1413」及び「出力面1414」は、「光源1420」と「電子放出性物質1440」との間にあるといえることから、これらの要素を備える上記構成Cの「光導波路1412」も、「光源1420」と「電子放出性物質1440」との間にあるといえる。
したがって、甲1発明では、「光源1420」と「電子放出性物質1440」との間には、「光導波路1412」と「干渉反射体1430」とが介在し(上記構成Cも参照)、甲1発明の「電子放出性物質1440」は、「光源1420」と離隔(なれへだたること。また、はなしへだてること。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])して配置されているといえる。
g
甲1発明の構成Bの「蛍光体材料」は、本件発明1の「蛍光体」に相当することから、甲1発明の構成Bの「蛍光体材料を含」む「電子放出性物質1440」は、蛍光体を含む「電子放出性物質1440」であり、蛍光体を含む蛍光材であるといえる。
本件発明1の「蛍光体を含む蛍光体シート」も、「蛍光体を含む」ことから、「蛍光体を含む」蛍光材であるといえる。
したがって、甲1発明の構成Bの「蛍光体材料を含」む「電子放出性物質1440」と、本件発明1の「蛍光体を含む蛍光体シート」とは、「蛍光体を含む蛍光材」の限りで共通する。
h
上記e?gを踏まえると、甲1発明の、「その光」が「照射」され、「光源1420からの光の少なくとも一部分を第1の波長域とは異なる第2の波長域を含む第2の光学特性を有する光に変換し」、「放出」する、「蛍光体材料を含」む「電子放出性物質1440」を備える、構成B及び構成Cと、本件発明1の「前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シート」の構成とは、「前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光材」の構成の限りで共通する。
(ウ)
a
甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、「その光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過」するから、上記(イ)a?bを踏まえると、励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するといえる。
b
甲1発明の構成Bにおいて、「干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光は干渉反射体1430により実質的に反射され」ることから、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、「干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光」を「実質的に反射」するものである。
甲1発明の構成Bにおいて、「光」を「放出」する「電子放出性物質1440」は、励起光源からの入射光の少なくとも一部分を入射光とは異なる波長領域の出射光に変換し、放出するといえることから(上記(イ)e)、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光」は、「電子放出性物質1440」からの出射光であるといえる。
したがって、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、「干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光」を「実質的に反射」するものであり、「電子放出性物質1440」からの出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射するといえる。
c
甲1発明の構成Bにおいて、「干渉反射体1430はその光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過」すること、「その光」は、本件発明1の「励起光源からの入射光」に相当すること(上記(イ)b)、及び、上記(イ)fをも踏まえると、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、「光源1420」と「電子放出性物質1440」との間に配置されているといえる。
d
本件発明1の「波長選択性反射膜」は、「前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する」ものであるところ、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過し(上記a)、「電子放出性物質1440」からの出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する(上記b)ことから、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」は、本件発明1の「波長選択性反射膜」と同様に「波長選択性」の機能を備えているといえる。
したがって、甲1発明の構成Bの「干渉反射体1430」と、本件発明1の「波長選択性反射膜」とは、「波長選択性反射材」の限りで共通するといえる。
これらのことと、上記a?c及び上記(イ)gを踏まえると、甲1発明の構成Bの「その光を電子放出性物質1440を照明するように実質的に透過し」、「干渉反射体1430に向けられる電子放出性物質1440により放出された光」を「実質的に反射」する、「干渉反射体1430」と、本件発明1の「前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜」とは、「前記励起光源及び前記蛍光材との間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光材からの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射材」の限りで共通する。
(エ)
上記(ア)を踏まえると、甲1発明の「光源1420と、光源1420からの光を受光するように配置された電子放出性物質1440と、光導波路1412と電子放出性物質1440との間に配置された干渉反射体1430とを含む、システム1400」は、本件発明1の「部分駆動型光源装置」に相当する。

以上から、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光材と、
を有する、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光材との間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光材からの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射材をさらに有する部分駆動型光源装置。」
<相違点>
本件発明1では、
「前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間があり、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜をさらに有し、
前記蛍光体シートは、前記蛍光体を含有する樹脂組成物からなる蛍光体層と、該蛍光体層を保護する保護フィルムとを有し、
前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが一体化して一体化シートを構成し、該一体化シートにおいて、前記蛍光体層の片面側に前記保護フィルムが設けられ、前記蛍光体層の他方の面側で、前記蛍光体層および前記波長選択性反射膜が直接接合している」のに対して、
甲1発明では、
そのように特定されていない点。

イ 判断
相違点について、以下、検討する。
(ア)
上記相違点に係る本件発明1の構成について、以下のことがいえる。
a
本件発明1において、「空間」は、「前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に」あり、「前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する」ものであることから、「蛍光体シート」、「空間」、「励起光源の部分駆動の制御単位」の順に配置されているといえる。
b
本件発明1において、「波長選択性反射膜」は、「前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射」し、「前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され」、「前記蛍光体シート」が有している「前記蛍光体層」の「他方の面側で、前記蛍光体層および前記波長選択性反射膜が直接接合している」ものであることから、「蛍光体シート」、「蛍光体シート」に「直接接合している」「波長選択性反射膜」、「励起光源」の順に配置されているといえる。
c
上記相違点に係る本件発明1の構成は、上記aかつ上記bの構成を含むといえるところ、「前記蛍光体層および前記波長選択性反射膜が直接接合している」ことから(上記b)、上記bの配置において、上記aの「空間」が、「蛍光体シート」の「蛍光体層」と「波長選択性反射膜」との間に位置することは想定できず、上記相違点に係る本件発明1の構成は、必然的に、「蛍光体シート」、「蛍光体シート」に「直接接合している」「波長選択性反射膜」、「空間」、「励起光源」の順に配置される構成を備えるものである。
d
上記cを踏まえると、上記相違点に係る本件発明1の構成は、「空間」が、実質的に「波長選択性反射膜」と「励起光源」との間に配置されている構成を含み、具体的には、上記相違点に係る本件発明1の構成は、「シャーシ内」にある、「前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間」が、実質的に、「前記波長選択性反射膜」と「前記励起光源の部分駆動の制御単位」との間に位置している構成(以下、「波長選択性反射膜と励起光源との間に位置し、シャーシ内にあり、蛍光体シートからの後方回帰光が進入する空間の構成」という。)を備えるものといえる。
(イ)
甲1?8のいずれの文献も、「波長選択性反射膜」、「励起光源」及び「シャーシ」の構成を全て備えているものではなく、「波長選択性反射膜と励起光源との間に位置し、シャーシ内にあり、蛍光体シートからの後方回帰光が進入する空間の構成」は、甲1?8のいずれの文献にも、記載も示唆もされていない。
また、甲1発明において、当該空間の構成を設けようとする動機付けも、甲1?8のいずれの文献にも、記載も示唆もされていない。
したがって、当該空間の構成を想到することは、当業者であっても格別な創意工夫を必要とするものであるから、「波長選択性反射膜と励起光源との間に位置し、シャーシ内にあり、蛍光体シートからの後方回帰光が進入する空間の構成」を備える、上記相違点に係る本件発明1の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではないとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張
(ア)
特許異議申立人は、甲1のFIG.1?4、FIG.14及びFIG.15について、「図1として」「光源20、干渉反射体30、電子放出性物質40がこの順に、かつ、それぞれ空間を設けて配置されていることが開示されている」、「図2?図4に関しても同様に、光源、干渉反射体、電子放出性物質がそれぞれ空間を設けて配置されている」、「図15と同じような配置関係にある図14においても」「光源1320および光導波路1312を有するユニットと干渉反射体1330との間に空間が形成されている」と主張しているので(平成30年8月6日の意見書の5頁11行?6頁下から6行)、以下、検討する。
(イ)
甲1の「図面の簡単な説明」には、FIG.1?4について、「一実施形態を概略的に図示する」と記載され、FIG.14について、「一実施形態の概略断面図である」と記載され、FIG.15について、「他の実施形態を概略的に図示する」と記載されている(摘記(1a))。
しかしながら、発明の詳細な説明等におけるこれら各図面についての記載を参照しても、これらの図面が、完成品を示す図面であるのか、組み立て前の各部品を示す図面であるのか、どのような状態の図面であるのか、具体的に説明されておらず、これらの図面において、部品と部品との間の空白が何を意味しているのかは判然としない。
そして、甲1のFIG.1?4、FIG.14及びFIG.15において、部品と部品との間に空白部分があるからといって、その空白部分が空間であるといえる合理的な根拠は存在しない。
なお、仮に、上記空白部分が空間であるといえたとしても、当該空間の構成と、本件発明1が、実質的に備えている、「波長選択性反射膜と励起光源との間に位置し、シャーシ内にあり、蛍光体シートからの後方回帰光が進入する空間の構成」とは、膜やシャーシ等に関して構成が異なるものであり、上記イ(イ)のとおりである。
したがって、上記(ア)の主張は採用できない。

エ まとめ
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲1ないし8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)本件発明2?15について
本件発明2?15は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明及び甲1ないし8に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、本件発明1?15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたとはいえないから、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。

第5 取消理由通知(審決の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が主張する特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
[申立ての理由1]
訂正前の請求項1?5及び15に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(特許異議申立書2頁3?5行、16頁2?5行、16頁10行?41頁24行の新規性に関する記載、57頁1?13行)。

2 検討
訂正後の本件発明1と甲1発明との対比は、上記第4 2(2)(2-1)アのとおりであり、相違点が存在するから、本件発明1は甲1発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
また、本件発明2?15は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。

3 小括
以上のとおり、本件発明1?15は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえないから、本件発明1?15に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(審決の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子からなり、部分駆動可能な励起光源と、
前記励起光源と離隔して配置され、前記励起光源からの入射光の波長領域の少なくとも一部を変換して、前記入射光とは異なる波長領域の出射光を放出する蛍光体を含む蛍光体シートと、
前記複数の発光素子を格納するシャーシと、
を有し、前記励起光源における前記複数の発光素子が前記シャーシの面上に配列されて前記シャーシ内に格納され、前記複数の発光素子が配列された前記シャーシの面は、前記蛍光体シートと平行に配置されており、
前記励起光源の部分駆動の制御単位と前記蛍光体シートとの間の前記シャーシ内に、前記蛍光体シートからの前記出射光のうちの前記シャーシ側に向かう後方回帰光が進入する空間がある、部分駆動型光源装置であって、
前記励起光源及び前記蛍光体シートとの間に配置され、前記励起光源からの前記入射光の波長領域の少なくとも一部の光を透過するとともに、前記蛍光体シートからの前記出射光の波長領域の少なくとも一部の光を反射する波長選択性反射膜をさらに有し、
前記蛍光体シートは、前記蛍光体を含有する樹脂組成物からなる蛍光体層と、該蛍光体層を保護する保護フィルムとを有し、
前記蛍光体シートと前記波長選択性反射膜とが一体化して一体化シートを構成し、該一体化シートにおいて、前記蛍光体層の片面側に前記保護フィルムが設けられ、前記蛍光体層の他方の面側で、前記蛍光体層および前記波長選択性反射膜が直接接合していることを特徴とする部分駆動型光源装置。
【請求項2】
前記励起光源における前記複数の発光素子が格子状に配列する、請求項1に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項3】
前記励起光源と前記波長選択性反射膜との間に拡散板を更に有する、請求項1または2に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項4】
前記発光素子が青色LEDである、請求項1?3のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項5】
前記波長選択性反射膜は、前記青色LEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色から赤色にかけての波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項4に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項6】
前記発光素子がマゼンタLEDである、請求項1?3のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項7】
前記マゼンタLEDは、青色LEDと、該青色LEDのチップ上方面に配置された赤色蛍光体から構成される、請求項6に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項8】
前記赤色蛍光体はフッ化物赤色発光蛍光体である、請求項7に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項9】
前記フッ化物赤色発光蛍光体は、K_(2)SiF_(6)である、請求項8に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項10】
前記波長選択性反射膜は、前記マゼンタLEDの発光波長領域の少なくとも一部を透過するとともに、緑色の波長領域の少なくとも一部の光を反射する、請求項6?9のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項11】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、硫化物系蛍光体である、請求項1?10のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項12】
前記硫化物系蛍光体は、赤色硫化物蛍光体及び緑色硫化物蛍光体のうちの少なくともいずれかを含む、請求項11に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項13】
前記赤色硫化物蛍光体は、硫化カルシウム蛍光体であり、前記緑色硫化物蛍光体は、チオガレート蛍光体である、請求項12に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項14】
前記蛍光体シートの前記蛍光体は、イットリウムセリウムアルミニウムガーネット蛍光体である、請求項1?5のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置。
【請求項15】
請求項1?14のいずれか1項に記載の部分駆動型光源装置を備えることを特徴とする画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-02 
出願番号 特願2016-100772(P2016-100772)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (F21S)
P 1 651・ 121- YAA (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
出口 昌哉
登録日 2017-02-17 
登録番号 特許第6092446号(P6092446)
権利者 デクセリアルズ株式会社
発明の名称 部分駆動型光源装置及びそれを用いた画像表示装置  
代理人 柿沼 公二  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 福井 敏夫  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 憲司  
代理人 福井 敏夫  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 柿沼 公二  
代理人 杉村 憲司  

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