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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01L 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L |
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管理番号 | 1347640 |
異議申立番号 | 異議2018-700045 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-19 |
確定日 | 2018-11-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6165754号発明「電子部品用接着剤」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6165754号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-4,6,7,9,10,12〕,5,8,11,13について訂正することを認める。 特許第6165754号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6165754号の請求項1?13に係る特許についての出願は,2012年10月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年11月2日,アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって,平成29年6月30日にその特許権の設定登録がされ,平成29年7月19日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,平成30年1月19日に特許異議申立人 佐藤 義光により特許異議の申立てがされ,当審は,平成30年3月14日に取消理由を通知した。特許権者は,その指定期間内である平成30年6月14日に意見書及び訂正請求書を提出し,平成30年7月23日に平成30年6月14日提出の訂正請求書を補正する手続補正書を提出し,その訂正の請求に対して,特許異議申立人 佐藤 義光は,平成30年8月29日に意見書を提出した。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は,以下のアないしカのとおりである。 ア 訂正事項1 請求項1に係る 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有するフィルム状である,プリアプライドアンダーフィル材用の接着剤組成物。」を, 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有するフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 イ 訂正事項2 請求項2に係る 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)10ないし80重量%の平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状である,プリアプライドアンダーフィル材用の接着剤組成物。」を, 「(a)1ないし50重量%の,ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)1ないし20重量%の,極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)10ないし80重量%の平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)0.1ないし10重量%の熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化3】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化4】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 ウ 訂正事項3 請求項5に係る 「支持基材上に請求項1または2に記載の接着剤組成物を塗布し,該塗布された接着剤組成物をBステージ化する工程を含む,フィルム状接着剤組成物の製造方法。」を, 「支持基材上に, (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を塗布し,該塗布された混合物をBステージ化する工程を含む,フィルム状接着剤組成物の製造方法; 【化5】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化6】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 エ 訂正事項4 請求項8に係る 「請求項1または2に記載の接着剤組成物を,ウエハーの素子形成面上に塗布し,塗布された接着剤組成物をBステージ化する工程を含む,接着剤層付きウエハーの製造方法。」を, 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を,ウエハーの素子形成面上に塗布し,塗布された混合物をBステージ化する工程を含む,接着剤層付きウエハーの製造方法; 【化7】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化8】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 オ 訂正事項5 請求項11に係る 「請求項1に記載の接着剤組成物を配線基板上に塗布し,該塗布された接着剤組成物をBステージ化する工程を含む,接着剤付き配線基板の製造方法。」を, 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を配線基板上に塗布し,該塗布された接着剤組成物をBステージ化する工程を含む,接着剤付き配線基板の製造方法; 【化9】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化10】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 カ 訂正事項6 請求項13に係る 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状である,アンダーフィルフィルムである製品。」を, 「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,アンダーフィルフィルムである製品; 【化11】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化12】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」に訂正する。 本件訂正請求は,一群の請求項〔1?12〕及び請求項13に対して請求されたものである。 また,訂正後の請求項5,8,及び11に係る訂正について,特許権者は,当該訂正が認められる場合,引用先の請求項が属する訂正単位とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 (2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1は,請求項1に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものであるから,訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また,訂正事項1は,訂正前の請求項1で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項1に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 したがって,訂正事項1は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は,訂正前の「(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メククリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマー」,「(b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマー」,および「(d)熱ラジカル開始剤」の含有量を,それぞれ,「1ないし50重量%」,「1ないし20重量%」,および「0.1ないし10重量%」と特定し,さらに,請求項2に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものである。したがって,訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また,訂正事項2のうち,請求項2に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものは,訂正前の請求項2で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項2に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 したがって,訂正事項2は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3のうち,「(a)ビニル基,・・・,(d)熱ラジカル開始剤と,を含み,」,及び「混合物」の部分は,訂正前の請求項5の「支持基材上に請求項1または2に記載の接着剤組成物を塗布し」の記載が,フイルム状の接着剤組成物を塗布することになり文理上意味が不明瞭であったのを,支持基材上に塗布するものを特定して明瞭にするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また,訂正事項3のうち,「ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,・・・を含まない,混合物」の部分は,請求項5に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに,訂正事項3は,訂正前の請求項5で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項5に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 しかも,訂正事項3は,訂正前の請求項5の記載が,訂正前の請求項1または2の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,独立形式請求項へ改めるための訂正であるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 したがって,訂正事項3は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 エ 訂正事項4について 訂正事項4のうち,「(a)ビニル基,・・・,(d)熱ラジカル開始剤と,を含み,」,及び「混合物」の部分は,訂正前の請求項8の「請求項1または2に記載の接着剤組成物を,ウエハーの素子形成面上に塗布し」の記載が,フイルム状の接着剤組成物をウエハーの素子形成面上に塗布することになり文理上意味が不明瞭であったのを,ウエハーの素子形成面上に塗布するものを特定して明瞭にするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また,訂正事項4のうち,「ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,・・・を含まない,混合物」の部分は,請求項8に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに,訂正事項4は,訂正前の請求項8で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項8に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 しかも,訂正事項4は,訂正前の請求項8の記載が,訂正前の請求項1または2の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,独立形式請求項へ改めるための訂正であるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 したがって,訂正事項4は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 オ 訂正事項5について 訂正事項5のうち,「(a)ビニル基,・・・,(d)熱ラジカル開始剤と,を含み,」,及び「混合物」の部分は,訂正前の請求項11の「請求項1に記載の接着剤組成物を配線基板上に塗布し」の記載が,フイルム状の接着剤組成物を配線基板上に塗布することになり文理上意味が不明瞭であったのを,配線基板上に塗布するものを特定して明瞭にするものであるから,明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また,訂正事項5のうち,「ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,・・・を含まない,混合物」の部分は,請求項11に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 さらに,訂正事項5は,訂正前の請求項11で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項11に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 しかも,訂正事項5は,訂正前の請求項11の記載が,訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,独立形式請求項へ改めるための訂正であるから,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。 したがって,訂正事項5は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 カ 訂正事項6について 訂正事項6は,請求項13に記載の「(b)極性基を有するポリマー」が,「式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂」と「式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない」とするものであるから,訂正事項6は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また,訂正事項6は,訂正前の請求項1で特定する組成物の範囲から,取消理由通知で引用した甲第1号証(特開2009-102605号公報)に記載された特定の組成を有する組成物を除外するものであって,当該除外をした後の訂正後の請求項13に,新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。 したがって,訂正事項6は,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって,しかも,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものにも該当しない。 (3)小括 以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1?4,6,7,9,10,12〕,請求項5,請求項8,請求項11及び請求項13について訂正することを認める。 (4)特許異議申立人の意見について ア 異議申立人 佐藤 義光は,平成30年8月29日の意見書において,「すなわち,除くクレームは,新規性を回復する目的,又は特許の保護対象でない主題を除外する目的のみで使用される。取消理由通知に記載の取消理由1は,進歩性に関するものであるため,新規性を回復する目的で使用される『除くクレーム』は,訂正事項1において認められないことは明らかである。従って,訂正事項1は,新規事項の追加に該当し・・・認められない。同様に,訂正事項2?6についても,・・・この訂正は新規事項の追加に該当するため,・・・認められない。」と主張するが,訂正事項が,新規事項の追加に該当するか否かは,当該訂正によって,特許明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を追加するものであるか否かによって判断されるものであって,取消理由通知に記載した取消理由の条文によって一義的に決定されるものではないから,異議申立人 佐藤 義光の前記主張は採用することができない。 イ 特許異議申立人 佐藤 義光は,平成30年8月29日に提出した意見書において,訂正事項3?5の訂正により,フィルム状でないものをも含む混合物を塗布するように訂正することは,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものであり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合しない旨主張する。 そこで,以下において,これらの訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであるか否かについて検討する。 (ア)発明が解決しようとする課題とその解決手段について 特許法第126条第6項は,第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない旨を規定したものである。 また,特許法第36条第4項第1号の規定により委任された特許法施行規則の第24条の2には,「特許法第36条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は,発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定されているから,訂正前の請求項に記載された事項に基づいて理解される発明と,訂正後の請求項に記載された事項に基づいて理解される発明において,発明が解決しようとする課題及びその解決手段が,実質的に変更されたものか否かによって,訂正後の請求項に記載された発明の技術上の意義が,訂正前の請求項に記載された発明の技術上の意義を実質上拡張し,又は変更されたものであるか否かが判断されるものといえる。 そこで,本件の訂正について検討すると,訂正前の請求項5,8及び11が,「フィルム状」の接着剤組成物を「塗布」するという,技術的に矛盾した記載を含み,明らかに不合理であることが一見して明白であるところ,当該矛盾が,「塗布」を発明特定事項として含む訂正前の請求項5,8及び11が,「フィルム状」の接着剤組成物である訂正前の請求項1(及び,請求項2)の構成要素の全部を引用することによって生じていることは,当業者であれば直ちに理解するといえる。 そして,訂正前の特許請求の範囲の記載に接した当業者であれば,訂正前の請求項5,8及び11において「塗布」するのは,訂正前の請求項1(及び,請求項2)の「フィルム状」の接着剤組成物そのものではなく,塗布することによって訂正前の請求項1(及び,請求項2)の「フィルム状」の接着剤組成物となる訂正前の請求項1(及び,請求項2)に記載された所定の組成からなる「混合物」であると理解することは自明な事項であって,また,このような理解は,発明の詳細な説明の記載にも整合するものでもある。 すなわち,明らかに不合理であることが一見して明白な訂正前の請求項5,8及び11の記載は,当業者にとって上記の自明な事項に基づいて理解されるから,訂正前の請求項5,8及び11に記載された事項に基づいて理解される発明と,訂正後の請求項5,8及び11に記載された事項に基づいて理解される発明における発明の課題に何ら変更はなく,また,訂正前の請求項5,8及び11に記載された事項に基づいて理解される発明と訂正後の請求項5,8及び11に記載された事項に基づいて理解される発明における課題解決手段にも,実質的な変更はないといえる。 したがって,訂正後の請求項5,8及び11の技術的意義は,訂正前の請求項5,8及び11の技術的意義を実質上拡張し,又は変更するものではない。 (イ)訂正による第三者の不測の不利益について 特許請求の範囲は,「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべて」が記載されたもの(特許法第36条第5項)である。 また,特許法第126条第6項は,第1項に規定する訂正がいかなる場合にも実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものであってはならない旨を規定したものであって,訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなる,言い換えれば,訂正前の発明の「実施」に該当しないとされた行為が訂正後の発明の「実施」に該当する行為となる場合,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため,そうした事態が生じないことを担保したものである。 以上を踏まえ,訂正前の請求項5,8及び11に記載された発明と訂正後の請求項5,8及び11に記載された発明において,それぞれの発明の「実施」に該当する行為の異同により,訂正後の請求項5,8及び11に記載された発明の「実施」に該当する行為が,訂正前の請求項5,8及び11に記載された発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものであるか否かについて検討すると,上記(ア)で検討したように,訂正前の特許請求の範囲の記載に接した当業者であれば,訂正前の請求項5,8及び11において「塗布」するのは,訂正前の請求項1(及び,請求項2)の「フィルム状」の接着剤組成物そのものではなく,塗布することによって訂正前の請求項1(及び,請求項2)の「フィルム状」の接着剤組成物となる訂正前の請求項1(及び,請求項2)に記載された所定の組成からなる「混合物」であると理解することは自明な事項であって,明らかに不合理であることが一見して明白な訂正前の請求項5,8及び11の記載は,当業者にとって上記の自明な事項に基づいて理解されるから,訂正後の請求項5,8及び11に記載された発明の「実施」に該当する行為は,訂正前の請求項5,8及び11に記載された発明の「実施」に該当する行為に含まれ,第三者にとって不測の不利益が生じるおそれはない。したがって,請求項5,8及び11に係る訂正は,訂正前の請求項5,8及び11に記載された発明の「実施」に該当する行為を実質上拡張し,又は変更するものとはいえない。 (ウ)小括 上記(ア),(イ)のとおりであるから,訂正事項3?5の訂正は,実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものとはいえない。 したがって,異議申立人 佐藤 義光のかかる主張は,採用することができない。 3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?13に係る発明(以下「本件発明1?13」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1?13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有するフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項2】 (a)1ないし50重量%の,ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)1ないし20重量%の,極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)10ないし80重量%の平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)0.1ないし10重量%の熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化3】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化4】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項3】 前記(d)熱ラジカル開始剤が有機過酸化物である,請求項1または2に記載の接着剤組成物。 【請求項4】 支持テープ上に積層された,請求項1ないし3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。 【請求項5】 支持基材上に, (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を塗布し,該塗布された混合物をBステージ化する工程を含む,フィルム状接着剤組成物の製造方法; 【化5】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化6】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項6】 Bステージ化された状態で,ウエハーの素子形成面上に積層された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含む,接着剤層付きウエハー。 【請求項7】 さらに,接着剤層上に積層された支持テープを含む,請求項6に記載の接着剤層付きウエハー。 【請求項8】 (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を,ウエハーの素子形成面上に塗布し,塗布された混合物をBステージ化する工程を含む,接着剤層付きウエハーの製造方法; 【化7】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化8】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項9】 請求項1または2に記載のフィルム状接着剤組成物を,ウエハーの素子形成面上に積層する工程を含む,接着剤層付きウエハーの製造方法。 【請求項10】 Bステージ化された状態で配線基板上に積層された請求項1または2に記載の接着剤組成物を含む,接着剤付き配線基板。 【請求項11】 (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,混合物を配線基板上に塗布し,該塗布された接着剤組成物をBステージ化する工程を含む,接着剤付き配線基板の製造方法; 【化9】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化10】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項12】 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて製造された電子デバイス。 【請求項13】 (a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと, (b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマーと, (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと, (d)熱ラジカル開始剤と, を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有し,Bステージ化されたフィルム状であり,ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,アンダーフィルフィルムである製品; 【化11】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化12】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。」 4 取消理由通知に記載した取消理由について (1)取消理由の概要 訂正前の請求項1?13に係る特許に対して,当審が平成30年3月14日に特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。 ア (進歩性)請求項1?13に係る発明は,甲第1?3号証,甲第10号証及び甲第12?15号証に記載された発明に基いて,当業者が容易に想到することができたものである。よって,請求項1ないし13に係る特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。 イ (実施可能要件)本件特許明細書及び図面には,フィルム状の接着剤組成物を製造し,その後に,支持基材上,ウエハーの素子形成面上,あるいは配線基板上に,該「フィルム状」の接着剤組成物を「塗布」し,該塗布した接着剤組成物をBステージ化する具体的な方法が記載されていない。また,技術常識を考慮しても,フィルムを塗布できたとは認められない。したがって,請求項5,8及び11に係る特許は,その発明の詳細な説明が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 ウ (サポート要件)請求項5,8及び11に係る発明は,請求項2に記載された「・・・Bステージ化されたフィルム状である,プリアプライドアンダーフィル材用の接着剤組成物。」という発明を引用する発明であるから,請求項5,8及び11に係る発明は,「Bステージ化されたフィルム状である」接着剤組成物を,支持基材上,ウエハーの素子形成面上,あるいは配線基板上に塗布し,該塗布された「Bステージ化されたフィルム状である」接着剤組成物を,更に「Bステージ化」する工程を含む発明であると理解される。しかしながら,本件特許明細書及び図面には,Bステージ化されたフィルム状である接着剤組成物を塗布し,その塗布後に,更にBステージ化することについて何ら記載されていない。そして,このような構成を備えた発明が,本件特許発明に係る課題を解決するものであると認識することができない。したがって,請求項5,8及び11に係る特許は,その発明の詳細な説明が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 エ (明確性要件)「Bステージ化されたフィルム状である」接着剤組成物を塗布し,該塗布された接着剤組成物を,更にBステージ化することの技術的意義が,本件特許明細書及び図面の記載並びに本件特許の優先権主張の日前における技術常識を考慮しても理解できない。したがって,請求項5,8及び11に係る特許は,その発明の詳細な説明が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。 (2)甲号証の記載 ア 甲第1号証(特開2009-102605号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 下記一般式(I)で表される化学構造を含むゴム変性フェノキシ樹脂。 【化1】 [式(I)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示し,Rは下記式(II)で表されるゴム構造を含む基を示し,xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。] 【化2】 【請求項2】 下記一般式(III)で表される化学構造を含むゴム変性フェノキシ樹脂。 【化3】 [式(III)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示し,R^(1),R^(2),R^(3),R^(4),R^(5),R^(6),R^(7)及びR^(8)はそれぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数1?6のヒドロキシアルキル基又はハロゲン原子を示し,Rは下記式(II)で表されるゴム構造を含む基を示し,R’は水素原子又は下記式(II)で表されるゴム構造を含む基を示し,xは正の整数を示し,y,及びzは0又は正の整数を示す。] 【化4】 【請求項3】 ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000?100万である,請求項1又は2記載のゴム変性フェノキシ樹脂。 <途中省略> 【請求項6】 前記架橋性成分がラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含有する,請求項4又は5記載の樹脂組成物。 <途中省略> 【請求項8】 フィルム状である,請求項4?7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項9】 導電性粒子を更に含む,請求項4?8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項10】 絶縁性無機フィラー又は絶縁性無機ウィスカーを更に含む,請求項4?9のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」 「【0005】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,回路部材接続用接着剤として用いたときに反りを十分に低減できると共に,接続抵抗が低く,更に,高温高湿環境下に曝された後も接続抵抗の上昇が小さい樹脂組成物を得ることを可能とするゴム変性フェノキシ樹脂を提供することを目的とする。また,本発明は,上記ゴム変性フェノキシ樹脂を用いた樹脂組成物,回路部材接続用接着剤及び回路接続構造体を提供することを目的とする。」 「【0011】 ゴム変性フェノキシ樹脂は,反りをより一層低減し,かつ耐熱性を向上する観点から,ポリスチレン換算の重量平均分子量が5000?100万であることが好ましい。」 「【0016】 上記樹脂組成物は,取り扱い性に優れる観点から,フィルム状であることが好ましい。」 「【0021】 さらに,本発明は,回路基板及び該回路基板の主面上に形成された回路電極を有し,それぞれの回路電極同士が対向配置されるように配置された1対の回路部材と,当該1対の回路部材の間に介在し,対向配置された回路電極同士が電気的に接続されるように当該1対の回路部材同士を接着している接続部とを備え,接続部が,上記回路部材接続用接着剤によって形成されている回路接続構造体を提供する。」 「【0033】 ゴム変性フェノキシ樹脂を溶液重合法により合成する場合,例えば,下記一般式(IV)で表されるポリヒドロキシポリエーテル樹脂と,ゴム成分として下記一般式(VI)で表されるカルボキシル基を有する化合物との重合反応を溶液中で行うことが好ましい。反応溶媒としては,これらの化合物が溶解する溶媒であれば特に限定されず,例えば,ジメチルアセトアミドを用いることができる。 【0034】 【化5】 式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。 【0035】 【化6】 式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。式(VI)で表される化合物の具体例としては,カルボキシル基を有するポリブタジエン樹脂又はポリブタジエン-アクリロニトリル共重合体樹脂を挙げることができる。 【0036】 ここで,上記一般式(IV)で表されるポリヒドロキシポリエーテル樹脂は,例えば,4,4’-ビフェノール化合物のジグリシジルエーテルと,4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール化合物,又は4,4’-ビフェノール化合物及び4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール化合物との重合反応を溶液中で行うことにより得ることができる。反応溶媒としては,これら化合物が溶解する溶媒,例えば,N-メチルピロリドンが用いられる。反応液に水酸化ナトリウム,炭酸カリウム等の塩基を加えることにより効率的に反応が進行する。一般に,100?130℃で1?5時間の反応により,ポリヒドロキシポリエーテル樹脂が得られる。 「【0046】 ラジカル重合性化合物としては,ラジカル重合可能な官能基を有するものであり,例えば,(メタ)アクリレート化合物,マレイミド化合物,スチレン誘導体が好適に用いられる。ラジカル重合性の化合物は,重合性モノマー及び重合性オリゴマーのいずれであってもよく,重合性モノマーと重合性オリゴマーとを併用することも可能である。」 「【0051】 ラジカル重合開始剤としては,従来知られている過酸化化合物(有機過酸化物),アゾ化合物のような,加熱により分解して遊離ラジカルを発生する化合物が用いられる。ラジカル重合開始剤は,目的とする接続温度,接続時間,ポットライフ等により適宜選定される。」 「【0068】 導電性粒子は,核としての遷移金属を主成分とする粒子又は核を被覆した遷移金属を主成分とする層の表面を,更に貴金属を主成分とする層で被覆してなるものであってもよい。また,導電性粒子は,非導電性のガラス,セラミック,プラスチック等を主成分とする絶縁性粒子を核とし,この核の表面に上記金属又はカーボンを主成分とする層で被覆したものであってもよい。」 「【0073】 絶縁性無機フィラーとしては,例えば,ガラス,シリカ,アルミナ,酸化チタン,カーボンブラック,マイカ及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むフィラーが用いられる。これらの中でも,ガラス,シリカ,アルミナ及び酸化チタンが好ましく,ガラス,シリカ及びアルミナがより好ましい。ウィスカーとしては,例えば,ホウ酸アルミニウム,チタン酸アルミニウム,酸化亜鉛,珪酸カルシウム,硫酸マグネシウム及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが用いられる。これらのフィラーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。 【0074】 フィラーの形状は特に限定されないが,球状である場合,その粒径はフィラーが電極間に捕捉されて電気的な接続を阻害することを防止するため,10μm以下であることが好ましい。また,導電性粒子と併用する場合には,フィラーの平均粒径は導電性粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。 【0075】 フィラーの配合量は,ゴム変性樹脂及び架橋性樹脂成分の合計量100質量部に対して,好ましくは25?300質量部であり,より好ましくは50?200質量部である。25質量部より少ないと熱膨張係数を小さくする効果が低下する傾向があり,300質量部より多いと硬化前の樹脂組成物が脆くなって,フィルムの取り扱い性が低下する傾向がある。」 「【0079】 (回路接続構造体) 図3は,本発明に係る回路接続構造体の一実施形態を示す断面図である。図3に示す回路接続構造体1は,対向する1対の回路部材20,30が,接続部10を介して接着及び接続された構成を有する。回路部材20は回路基板21及びこれの主面上に形成された複数の回路電極22を有し,回路部材30は回路基板31及びこれの主面上に形成された複数の回路電極32を有する。回路部材20,30は,回路電極22及び回路電極32が互いに対向配置されるように配置されている。対向配置された回路電極同士が電気的に接続されている。」 「【0083】 あるいは,回路電極が形成された半導体チップを一方又は両方の回路部材として用いることもできる。この場合,回路部材接続用接着剤をフリップチップ接続方式におけるアンダーフィル材として機能させることができる。このときの回路電極は通常アルミニウムから構成されるが,その表面に金,銀,銅,ニッケル,インジウム,パラジウム,スズ,鉛,ビスマス等の金属層がめっきによって形成されていてもよい。」 「【0087】 この場合,回路部材接続用接着剤を回路部材20,30の表面に供給する位置や面積は任意であるが,回路電極22,32の少なくとも一部を覆うように供給することが好ましい。回路部材接続用接着剤がフィルム状である場合,個片に切り出したフィルムを回路部材に加熱及び加圧によって予め貼り付けてもよい。 【0088】 回路部材が半導体チップである場合,半導体ウエハにフィルム状の接着剤をロールラミネータなどで貼り付けてからダイシングすることによって,フィルム状の接着剤が貼り付けられた半導体チップを作製し,これを上記工程において用いることもできる。」 「【0090】 本実施形態に係る樹脂組成物は,フリップチップ接続方式におけるアンダーフィル材として使用できるだけでなく,半導体チップの回路形成面を上に向けて基板表面に接着固定し,金ワイヤなどで半導体チップの電極と基板の配線パターンを電気的に接続するワイヤボンディング方式において,チップと基板を接着するための接着剤としても用いることができる。また,半導体チップを多段に積層するスタックドパッケージにおいて,半導体チップ同士を接着固定するための接着剤としても用いることができる。」 「【0093】 (合成例1) <ポリヒドロキシポリエーテル樹脂(B)の合成> 4,4’-(9-フルオレニリデン)-ジフェノール(シグマアルドリッチジャパン社製)45g,及び3,3’,5,5’-テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン社製,商品名「YX-4000H」)50gを,ジムロート冷却管,塩化カルシウム管,及び攪拌モーターに接続されたフッ素樹脂製攪拌棒を装着した3000mLの3つ口フラスコ中でN-メチルピロリドン1000mLに溶解して反応液とした。反応液に炭酸カリウム21gを加え,マントルヒーターで110℃に加熱しながら攪拌した。3時間攪拌後,反応液を1000mLのメタノールが入ったビーカーに滴下し,生成した沈殿物を吸引濾過することによって回収した。回収した沈殿物をさらに300mLのメタノールで3回洗浄して,下記化学式(V)で表される繰り返し単位を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂(以下,「樹脂(B)」という。)75gを得た。式(V)中,nは正の整数を示す。」 【0094】 【化7】 」 「【0096】 (実施例1) <ゴム変性フェノキシ樹脂(A)の合成> 上記樹脂(B)330.7g,両末端にカルボキシル基を有するブタジエン-アクリロニトリル共重合体(以下,「樹脂(C)」という)(宇部興産社製,商品名「CTBNX1009-SP」,Mw:16800)69.3gをジメチルアセトアミド(DMAc)385.7gに溶解し,窒素雰囲気下,156℃で10時間反応させた。この反応溶液を室温(25℃)まで冷却した後に,多量の水に滴下し,生成した沈殿物をろ過して,乾燥させて樹脂粉末を得た。この樹脂粉末を粉砕し,水で洗浄後,減圧濾過し,減圧乾燥して,ゴム変性フェノキシ樹脂(A)の粉末を得た。ゴム変性フェノキシ樹脂(A)の収量は,388.0g(収率97%)であった。 【0097】 ゴム変性フェノキシ樹脂(A)の分子量を上記条件で測定した結果,Mwが59300であった。また,反応前後の溶液の酸価は,反応前6.6から反応終了後3.2へ変化した。」 「【0102】 (実施例2?5) ゴム変性フェノキシ樹脂として,実施例1で合成した樹脂(A),架橋性成分としてラジカル重合性化合物であるイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート(H,東亞合成社製,商品名「M-313」)及びウレタンアクリレート(I,新中村化学工業社製,商品名「UA-511」),ラジカル重合開始剤であるn-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート(J,日本油脂社製,商品名「TMH」),導電性粒子としてNi/Auめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm),さらにシランカップリング剤として,γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(K,東レ・ダウコーニング・シリコーン社製,商品名「SZ6030」),溶媒として2-ブタノンを準備した。これらを表1に示す配合量(質量部)で混合し,樹脂組成物のワニスを調製した。 【0103】 次いで,上記樹脂組成物のワニスをセパレータフィルムであるPETフィルム上にロールコータを用いて塗布し,70℃のオーブンで5分間乾燥させて,厚さ25μmのフィルム状の回路部材接続用接着剤を作製した。」 「【0110】 [回路接続構造体の作製1] 外形17mm×1.7mm,バンプ面積50μm×50μm,ピッチ100μm,高さ15μmの金バンプを配置したICチップと,厚み0.5mmのガラス上にインジュウム-錫酸化物(ITO)を形成したITO基板(表面抵抗率20Ω/□以下)とを準備した。このICチップとITO基板との間に,実施例2?5及び比較例2で得られたフィルム状回路部材接続用接着剤を配置し,これらを石英ガラスと加圧ヘッドとで挟んで,170℃,50MPa(バンプ面積換算)で8秒間加熱加圧して,ICチップとITO基板との接続を行った。このとき,フィルム状回路部材接続用接着剤は,あらかじめITO基板上にフィルム状回路部材接続用接着剤の接着面を70℃,0.5MPa(バンプ面積換算)で3秒間加熱加圧して貼り付け,その後,PETフィルムを剥離してICチップと上記の温度及び圧力条件で接続した。これにより,実施例2?5及び比較例2,3のフィルム状回路部材接続用接着剤を用いたICチップ/ITO接続構造をそれぞれ作製した。」 以上によれば,甲第1号証は,以下の発明(以下「引用発明1」という。)を開示していると認められる。 「フリップチップ接続方式におけるアンダーフィル材として使用できる,フィルム状である樹脂組成物であって, ポリヒドロキシポリエーテル樹脂と,両末端にカルボキシル基を有するブタジエン-アクリロニトリル共重合体を,ジメチルアセトアミドに溶解し,窒素雰囲気下,156℃で10時間反応させ,この反応溶液を室温(25℃)まで冷却した後に,多量の水に滴下し,生成した沈殿物をろ過して,乾燥させて得た樹脂粉末を粉砕し,水で洗浄後,減圧濾過し,減圧乾燥して得たゴム変性フェノキシ樹脂(A)と, 架橋性成分としてラジカル重合性化合物であるイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレートと, ウレタンアクリレートと, ラジカル重合開始剤であるn-ブチル4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレートと, 導電性粒子としてNi/Auめっきポリスチレン粒子(平均粒径3μm)と, シランカップリング剤として,γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランと, 溶媒として2-ブタノンと, を準備して,所定の配合量(質量部)で混合して調整した樹脂組成物のワニスをセパレータフィルムであるPETフィルム上にロールコータを用いて塗布し, 70℃のオーブンで5分間乾燥させて得た, 厚さ25μmのフィルム状である樹脂組成物。」 イ 甲第2号証(特開2008-81713号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物と,分子内に2つ以上のメルカプト基を有する化合物と,ラジカル重合開始剤とを含有する接着剤組成物。 <途中省略> 【請求項7】 請求項1?5のいずれか一項に記載の接着剤組成物をフィルム状に形成してなるフィルム状接着剤。 【請求項8】 請求項6記載の回路接続材料をフィルム状に形成してなるフィルム状回路接続材。」 「【0015】 また,本発明は,上記本発明の接着剤組成物をフィルム状に形成してなるフィルム状接着剤を提供する。また,本発明は,上記本発明の回路接続材料をフィルム状に形成してなるフィルム状回路接続材を提供する。フィルム状とした接着剤及び回路接続材料は取扱性に優れるため,スループットを一層向上させることができる。」 「【0020】 本発明によれば,低温で十分迅速に硬化処理を行うことができ,接着強度や接続抵抗等の特性を安定的に得ることが可能な接着剤組成物,並びに該接着剤組成物を用いた回路接続材料,回路部材の接続構造及び半導体装置を提供することが可能となる。」 「【0023】 本発明において用いられる(A)分子内に炭素-炭素二重結合を有する化合物としては,ビニル基,アリル基,スチリル基,アルケニル基,(メタ)アクリロイル基,マレイミドやマレイン酸,フマル酸,ブタジエン,ノルボルンネン等に代表される不飽和結合を分子内に有する化合物であれば,特に制限なく公知のものを使用することができる。」 「【0053】 本発明の接着剤組成物は,上記の優れた特性を有するものであることから,回路接続材料として好適に用いることができる。例えば,第1の回路部材の回路電極と第2の回路部材の電気的に接続する際に,これらの回路部材を対向配置した状態で,本発明の接着剤組成物を一方の回路電極に付与し,ラジカル重合反応により他方の回路電極と電気的に接続することができる。このように本発明の接着剤組成物を回路接続材料として用いると,電気的接続を短時間で行うことができ,接続を行う際のプロセス温度や時間が変動したとしても,接続強度や接続抵抗等の特性を安定化させることができる。また,回路接続材料の経時的な特性の低下を抑制することもできる。更に,この回路接続材料が導電性粒子を含有する場合には,電気的な接続の異方性を示すことができ,回路電極用の異方導電性回路接続材料として用いることも可能である。 【0054】 上記の回路接続材料は,熱膨張係数の異なる異種の被着体の回路接続材料としても使用することができる。具体的には,異方導電接着剤,銀ペースト,銀フィルム等に代表される回路接続材料,CSP用エラストマー,CSP用アンダーフィル材,LOCテープ等に第行される半導体素子接着材料として使用することができる。」 ウ 甲第3号証(特開2011-38075号公報)には,以下の記載がある。 「【0018】 本発明によれば,低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができるとともに,信頼性試験(例えば,85℃/85%RHで240時間保持)後においても,接着強度及び接続抵抗といった特性を維持することが可能であり,さらに取扱性に優れた接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することができる。」 「【0029】 (b)ラジカル重合性化合物は,ラジカル重合開始剤の作用でラジカル重合を生じる化合物をいうが,光や熱等の活性化エネルギーを付与することでそれ自体ラジカルを生じる化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物としては,例えば,ビニル基,(メタ)アクリロイル基,アリル基,マレイミド基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を好適に使用可能である。」 「【0064】 接着剤組成物は,常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には,加熱して使用する他,溶剤を使用してペースト化してもよい。使用できる溶剤としては,接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく,かつ十分な溶解性を示すものであれば,特に制限は受けないが,常圧での沸点が50?150℃であるものが好ましい。沸点を50℃以上とした場合,室温で放置しても揮発しにくく,開放系での使用が制限されないため好ましい。また,沸点が150℃以下であると,溶剤を揮発させやすくなり,接着後の信頼性を得やすくなる。 【0065】 接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶剤等を加えるなどした溶液を,フッ素樹脂フィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,離形紙等の剥離性基材上に塗布し,あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し,溶剤等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。 <途中省略> 【0067】 接着剤組成物は,熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には,異方導電接着剤,銀ペースト,銀フィルム等に代表される回路接続材料,CSP用エラストマー,CSP用アンダーフィル材,LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。」 エ 甲第4号証(特開2007-56209号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 熱硬化性樹脂を主成分とする回路接続用接着剤において, 熱硬化後の35℃における貯蔵弾性率が0.5?3.5GPa,35℃から100℃までの平均熱膨張係数が10?200ppm/℃であり,かつ,前記貯蔵弾性率と平均熱膨張係数の積により示される値が40?300であることを特徴とする回路接続用接着剤。」 「【0039】 また,回路接続用接着剤2の貯蔵弾性率をより一層効果的に低減させるとの観点から,回路接続用接着剤2に,エポキシ基含有アクリル樹脂を含有することが好ましい。このエポキシ基含有アクリル樹脂としては,例えば,アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル,およびアクリロニトリル等の共重合体であるアクリルゴムに,官能基として,グリシジル基またはエポキシ基を含むものが挙げられる。また,上述の動的粘性測定装置(DMA)を用いて測定された,当該エポキシ基含有アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは,-50℃?30℃が好ましく,さらに好ましくは,-10℃?30℃のものを用いるのが良い。」 「【0057】 (実施例4) 平均分子量35000のエポキシ基含有アクリル樹脂〔ナガセケムテックス製,商品名テイサンレジンSG-P3〕を,エポキシ樹脂の合計重量に対して5重量%加えたこと以外は,上述の実施例2と同様にして,ICチップとガラス基板の接合体を得た。その後,上述の実施例1と同1条件により,貯蔵弾性率測定,平均熱膨張係数測定,および抵抗評価を行った。以上の結果を表1に示す。」 オ 甲第5号証(特開2011-174010号公報)には,以下の記載がある。 「【0003】 フェイスダウンボンディング方式で製造された半導体装置は,各種環境下に曝された場合,接続されたチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが接続界面で発生するため,接続信頼性が低下しやすいという問題を有している。このため,接続界面のストレスを緩和する目的で,チップと基板の間隙をエポキシ樹脂等のアンダーフィル材で充填することが行われている。 【0004】 アンダーフィル材の充填方式としては,チップと基板とを接続した後に低粘度の液状樹脂を注入する方式と,基板上にアンダーフィル材を設けた後にチップを搭載する方式がある。更に,後者の方式には,液状樹脂を塗布する方式とフィルム状樹脂を貼付ける方式がある。」 「【0009】 上記の方法において,フィルム状接着剤を用いたウエハへの貼付工程,ウエハ裏面研削工程,ダイシング工程,フリップチップボンディング工程を経たのち,封止剤でモールディングされ,半導体装置(パッケージ)が作製される。上記方法により,工程の削減は大きく可能だが,パッケージには,信頼性のより一層の向上が要求されている。これに伴い,耐リフロー性及び接続信頼性が十分に高い半導体装置の作製を可能とするフィルム状接着剤の開発が求められている。」 「【0022】 (A)重量平均分子量が10万以上である高分子量成分としては,接着性向上の点で,グリシジル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,カルボキシル基,水酸基,エピスルフィド基などの官能基を有するものが好ましい。このような高分子量成分としては,例えば,(メタ)アクリルエステル共重合体,アクリルゴムなどが挙げられる。特に,アクリルゴムがより好ましい。アクリルゴムは,アクリル酸エステルを主成分とし,主として,ブチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体や,エチルアクリレート及びアクリロニトリルなどとの共重合体などからなるゴムである。共重合体モノマーとしては,例えば,ブチルアクリレート,エチルアクリレートアクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,アクリロニトリル等を挙げることができる。」 カ 甲第6号証(特開2011-9709号公報)には,以下の記載がある。 「【0003】 フェイスダウンボンディング方式で製造された半導体装置は,各種環境下に曝された場合,接続されたチップと基板の熱膨張係数差に基づくストレスが接続界面で発生するため,接続信頼性が低下しやすいという問題を有している。このため,接続界面のストレスを緩和する目的で,チップと基板との間隙をエポキシ樹脂等のアンダーフィル材で充填することが行われている。 【0004】 アンダーフィル材の充填方式としては,チップと基板とを接続した後に低粘度の液状樹脂を注入する方式と,基板上にアンダーフィル材を設けた後にチップを搭載する方式がある。さらに,後者の方式には,液状樹脂を塗布する方式とフィルム状樹脂を貼付ける方式がある。 <途中省略> 【0006】 他方,フィルム状樹脂を用いる方式は,フィルムの厚みを調整することによって最適な樹脂量を与えることが容易にできる反面,仮圧着工程と呼ばれるフィルム状樹脂を基板に貼付ける工程を必要とする。通常,仮圧着工程は,対象となるチップ幅よりも大きめの幅にスリットされたリール状の接着剤テープを用意し,チップサイズに応じて基材上の接着剤テープをカットして接着剤が反応しない程度の温度で基板上に熱圧着する。ところが,チップ搭載位置にフィルムを精度よく供給することは難しく,また微小チップ等に対応した細幅のリール加工は困難であることから,一般的に,歩留りの確保には,仮圧着で貼付けるフィルムをチップサイズより大きくすることで対応している。そのため,本方式では,隣接部品との距離や実装面積を余分に確保する必要があり,高密度化実装に対応しにくい。」 「【0011】 上記の方法におけるフィルム状接着剤は,ウエハへの貼付工程,ウエハ裏面研削工程,ダイシング工程,フリップチップボンディング工程を経ることになる。ウエハへの貼付工程では,ウエハに貼付したときに剥離やボイドの発生を十分抑制できる貼付性がフィルム状接着剤に求められる。ウエハ裏面研削工程では,ウエハ裏面研削性に優れていること,すなわち,研削による破損やクラックの発生を十分防止できる粘着性や密着性を有していることがフィルム状接着剤に求められる。フリップチップボンディング工程では,半導体素子搭載用部材等の回路部材との接続時にボイドが発生しにくい埋込性がフィルム状接着剤に求められる。」 「【0025】 (A)重量平均分子量が10万以上である高分子量成分は,例えば,接着剤組成物に塗膜性を付与するために使用される。具体例としては,接着性向上の点で,グリシジル基,アクリロイル基,メタクリロイル基,カルボキシル基,水酸基,エピスルフィド基等の官能基を有するものが好ましい。このような高分子量成分としては,例えば,(メタ)アクリルエステル共重合体,アクリルゴムが挙げられ,特に,アクリルゴムがより好ましい。アクリルゴムは,アクリル酸エステルを主成分とし,主として,ブチルアクリレート及びアクリロニトリル等との共重合体や,エチルアクリレート及びアクリロニトリル等との共重合体からなるゴムである。共重合体モノマーとしては,例えば,ブチルアクリレート,エチルアクリレートアクリル酸メチル,アクリル酸エチル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル及びアクリロニトリルを挙げることができる。」 キ 甲第7号証(特開2010-111847号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 (a)熱可塑性樹脂,(b)ラジカル重合性化合物,(c)芳香族ビニル化合物,及び(d)ラジカル重合開始剤を含む接着剤組成物。 <途中省略> 【請求項3】 (a)熱可塑性樹脂が,フェノキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエステルウレタン樹脂,ブチラール樹脂,アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種である,請求項1又は2に記載の接着剤組成物。」 「【0019】 このような樹脂としては,ポリアミド,フェノキシ樹脂類,ポリ(メタ)アクリレート類,ポリイミド類,ポリウレタン類,ポリエステル類,ポリエステルウレタン類,ポリビニルブチラール類,エチレン-ビニル酢酸共重合体,などを用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに,これら樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていてもよい。これらは,混合する樹脂同士が完全に相溶するか,もしくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。上記樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ,また接着剤組成物としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。 【0020】 (a)熱可塑性樹脂の分子量は特に制限を受けるものではないが,一般的な重量平均分子量としては5,000?500,000が好ましく,10,000?100,000が特に好ましい。この値が,5,000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり,また500,000を超えると他の成分との相溶性が悪くなる傾向がある。」 「【0050】 本発明の接着剤組成物は,熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には,異方導電接着剤,銀ペースト,銀フィルム等に代表される回路接続材料,CSP用エラストマー,CSP用アンダーフィル材,ダイボンディングフィルム,ダイボンディングペースト等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。」 ク 甲第8号証(特開2007-177204号公報)には,以下の記載がある。 「【0018】 熱可塑性樹脂は,熱可塑性を有するものであれば特に制限されなく,公知のものを用いることができる。具体的には,ポリイミド,ポリアミド,フェノキシ樹脂,ポリ(メタ)アクリレート,ポリエステル,ポリビニルブチラート等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては,溶解度パラメーター(以下,SP値という)が9.5?14.0(cal/cm^(3))^(1/2)の範囲にあるポリマーが好ましい。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。 <途中省略> 【0020】 熱可塑性樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性に優れ,流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定することができる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが,一般的に5000?150000であることが好ましく,10000?80000であることが特に好ましい。この値が,5000未満ではフィルム形成性が劣る傾向があり,150000を超えると他の成分との相溶性が低下する傾向がある。」 「【0053】 本実施形態に係る接着剤組成物は,熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として用いることも可能である。具体的には,例えば,異方導電接着剤,銀ペースト,銀フィルム等に体表される回路接続材料又はCSP用エラストマー,CSP用アンダーフィルム材,LOCテープ等に体表される半導体素子接着材料として用いられる。」 ケ 甲第9号証(特開2011-178986号公報)には,以下の記載がある。 「【0021】 また,本発明に係る半導体装置製造用の接着シートは,前記に記載の接着剤組成物から形成されたことを特徴とする。前記に記載の接着剤組成物は,陽イオンを捕捉する添加剤が少なくとも含有されているため,当該接着剤組成物を用いて形成された接着シートは,半導体装置の製造における各種プロセス中に外部から混入する陽イオンを捕捉することができる。その結果,外部から混入する陽イオンがウェハ上に形成された回路形成面に到達し難くなり,電気特性の低下が抑えられて製品信頼性を向上させることができる。」 「【0066】 (実施例1) 下記(a)?(f)をメチルエチルケトンに溶解させ,濃度20重量%の接着剤組成物溶液を得た。 (a)アクリル酸エチル-メチルメタクリレートを主成分とするアクリル酸エステル系ポリマー(根上工業(株)製,パラクロンW-116.3) 30部 (b)エポキシ樹脂(JER(株)製,エピコート1004) 5部 (c)フェノール樹脂(三井化学(株)製,ミレックスXLC-LL) 5部 (d)多官能エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製,テトラッド-C) 1部 (e)シリカフィラー((株)アドマテックス製,SE-2050) 60部 (f)窒素含有化合物(城北化学(株)製,ベンゾトリアゾール化合物,BT-120) 0.5部」 コ 甲第10号証(特開2010-106244号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 (メタ)アクリレートモノマー,成膜用樹脂,無機フィラー,シランカップリング剤及びラジカル重合開始剤を含有する,電子部品を配線基板に固着させるためのアクリル系絶縁性接着剤であって, 無機フィラーを(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し70?160質量部含有し, アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物が,150?185℃のガラス転移点を示し且つガラス転移温度より低い温度領域で30?35ppmの線膨張係数(α1)と,ガラス転移温度以上の温度領域で105?125ppmの線膨脹係数(α2)とを示し,更に以下式(1) 【数1】 α2/α2≧3.4 (1) を満足するアクリル系絶縁性接着剤。」 「【請求項7】 電子部品と配線基板とが,請求項1?5のいずれかに記載のアクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物で固着され,該電子部品のバンプが配線基板の接続パッドに直接接合されている接続構造体。 【請求項8】 電子部品が,スタッドバンプを備えたICチップである請求項7記載の接続構造体。 【請求項9】 請求項7記載の接続構造体の製造方法であって, 配線基板に請求項1?5のいずれかに記載のアクリル系絶縁性接着剤を供給し,配線基板の接続パッドに対し,電子部品のバンプを位置合わせし,電子部品を加熱加圧することによりアクリル系絶縁性接着剤をラジカル重合硬化させて電子部品を配線基板に固着させると共に,電子部品のバンプと配線基板の接続パッドとを直接接合する製造方法。」 「【背景技術】 【0002】 近年,ICチップの高集積化に伴い,ICチップのバンプ間スペースが狭ピッチ化し,またバンプ面積も狭面積化している。ICチップを配線基板に接合する際,異方性導電フィルムが広く使用されていたが,導電性粒子の粒径の下限が2μm程度であるため,高集積化したICチップと配線基板との接合に適用するには難点があった。また,狭ピッチ及び狭面積化に対応したバンプとして,ボンディングマシーンを利用して作成されるスタッドバンプを使用した場合,バンプ形状がその先端部が倒れた略コーン形状となっているため,導電性粒子の捕捉性が低いという欠点があった。このため,異方性導電フィルムを使用せずに,絶縁性接着剤を使用してICチップのバンプと配線基板の接続バッドとを直接接合(NCF接合)することが行われるようになっている。」 「【0007】 本発明は,電子部品を配線基板にNCF接合するための絶縁性接着剤として,低温速重合硬化性に優れ,良好な接続信頼性を実現できる,ラジカル重合性のアクリル系絶縁性接着剤を提供することを目的とする。」 「【0015】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤の構成成分の一つである(メタ)アクリレートモノマーは,接着剤の重合硬化物に主として凝集力を与え,機械的特性を付与することができる。ここで,(メタ)アクリレートモノマーとは,アクリレートモノマーまたはメタクリレートモノマーを意味する。」 「【0019】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,成膜用樹脂を含有する。成膜用樹脂は,ガラス転移温度が50℃以上の常温で固体の樹脂であって,(メタ)アクリレートモノマーと相溶する樹脂であり,アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物のガラス転移温度を上昇させるためのものである。このような成膜用樹脂としては,フェノキシ樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,アルキル化セルロース樹脂,ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,スチレン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。中でも,分子量が10000?100000であって,分子内にフルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましい。このようなフルオレン骨格を有する成膜用樹脂の具体例としては,FX293(東都化成社製)等が挙げられる。 【0020】 本発明において,成膜用樹脂の使用量は,少なすぎるとアクリル系絶縁性接着剤の成膜性が不充分となり,多すぎると相対的に(メタ)アクリレートモノマーの使用量が減少しすぎて凝集力を損なうこととなるので,(メタ)アクリレートモノマー100質量部に対し,好ましくは50?100質量部である。 【0021】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,溶融粘度の調整,難燃性の改善,寸法安定性の改善等のために無機フィラーを含有する。このような無機フィラーとしては,水酸化アルミニウム,水酸化マグネシウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,珪酸カルシウム,珪酸マグネシウム,酸化カルシウム,酸化マグネシウム,アルミナ粉末,結晶性シリカ,非結晶性シリカ,窒化アルミニウム,窒化ホウ素粉末,ホウ酸アルミウイスカ等が使用できる。中でも,非結晶性シリカを好ましく使用することができる。これらは,球状などの定形や不定形であってもよい。 【0022】 無機フィラーの粒径は,小さすぎるとバインダーの増粘を引き起こし良好な塗布ができなくなり,大きすぎるとフィラーアタックの原因となるので,好ましくは0.005?15μm,より好ましくは0.01?1μmである。 【0023】 本発明において,無機フィラーの使用量は,少なすぎると良好な導通信頼性が得られず,多すぎるとバインダーの増粘を引き起こし良好な塗布ができなくなるので,(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し,好ましくは70?160質量部であり,または使用した樹脂100質量部に対して50?150質量部である。 【0024】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,接着剤の重合硬化物とICチップや配線基板あるいは無機フィラーとの密着性を改善するために,シランカップリング剤を含有する。シランカップリング剤としては,γ-グリシドプロピルトリメトキシシラン,γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン,γ-アミノプロピルトリエトキシシラン,γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン,N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも,γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを好ましく使用することができる。 【0025】 本発明において,シランカップリング剤の使用量は,少なすぎると接着力不十分となり,多すぎると加熱硬化時の気泡の原因となるので,(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し,好ましくは0.1?5質量部である。 【0026】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,(メタ)アクリレートモノマーと,ラジカル重合させるためにラジカル重合開始剤とを含有する。このようなラジカル重合開始剤としては,ベンゾイルパーオキサイド,ジクミルパーオキサイド,ジブチルパーオキサイド等の有機過酸化物,アゾビスイソブチロニトリル,アゾビスバレロニトリル等のアゾビス系化合物を挙げることができる。中でも,ベンゾイルパーオキサイドを好ましく使用することができる。 【0027】 本発明において,ラジカル重合開始剤の使用量は,少なすぎると短時間硬化が不可能となり,多すぎると硬化物が硬くなり密着性が低下するので,(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し,好ましくは1?10質量部である。 【0028】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,以上説明した成分の他に,接続信頼性を向上させるために応力緩和剤を含有することが好ましい。応力緩和剤としては,成膜樹脂や(メタ)アクリルモノマーの重合硬化物と相溶するゴムや熱可塑性エラストマーを使用することができる。このようなゴムや熱可塑性エラストマーとしては,アクリルゴム,ニトリル-ブタジエンゴム(NBR),ブタジエンゴム(PB)等を挙げることができ,二種以上を併用することもできる。」 「【0036】 本発明のアクリル系絶縁性接着剤は,ICチップを配線基板にNCF接合する際に好ましく適用できる。具体的には,電子部品と配線基板とが,本発明のアクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物で固着され,該電子部品のバンプが配線基板の接続パッドに直接接合されている接続構造体に好ましく適用できる。この接続構造体も本発明の一態様である。 【0037】 電子部品としては,バンプを備えたICチップ,バンプを備えた発光ダイオードチップ等が挙げられる。バンプとしては,特に限定されないが,狭ピッチ,狭面積化に寄与するスタッドバンプを好ましく使用できる。このようなスタッドバンプの好ましい高さは,30?100μmである。また,配線基板としては,銅やアルミなどの接続パッドを備えた,ガラスエポキシ配線基板,ガラス基板,フレキシブル配線基板等が挙げられる。 【0038】 このような接続構造体は,配線基板に本発明のアクリル系絶縁性接着剤をディスペンサー等の公知の供給手段で供給し,配線基板の接続パッドに対し,電子部品のバンプを公知の手法で位置合わせし,電子部品を加熱加圧することによりアクリル系絶縁性接着剤をラジカル重合硬化させて電子部品を配線基板に固着させると共に,電子部品のバンプと配線基板の接続パッドとを直接接合することにより製造できる。ここで,好ましい加熱加圧条件としては,160?200℃の加熱温度,5?10秒の加熱時間,10?100g/バンプの圧力が挙げられる。 【実施例】 【0039】 以下,本発明を実施例により具体的に説明する。 【0040】 実施例1?4,比較例1?6 (1)アクリル系絶縁性接着剤の調製 表1に示す配合の成分を混合機により均一に混合することによりアクリル系絶縁性接着剤を調製した。但し,比較例5ではエポキシ系絶縁性接着剤を調製した。また,比較例6ではアクリル系異方性導電接着剤を調製した。 【0041】 (2)ガラス転移温度の測定 190℃-30分間熱プレスにより完全硬化サンプルを作成し,長さ20mm,幅2mm,高さ0.05mmのテストピースを作成した。得られたテストピースはJISK7244に従ってガラス転移温度を測定した。得られた結果を表1に示す。 【0042】 (3)線膨張係数の測定 190℃-30分間熱プレスにより完全硬化サンプルを作成し,長さ5mm,直径が1.5mmの円柱のテストピースについて,JISK7197に従ってガラス転移温度より低い0?50℃の温度領域の線膨張係数(α1)と,ガラス転移温度より高い185?200℃の温度領域の線膨張係数(α2)を測定した。得られた結果を表1に示す。 【0043】 (4)接続構造体の作成 接続銅パッドが形成された0.5mm厚の評価用ガラスエポキシ基板の接続パッド面に接着剤を貼り付けた。他方,信頼性用TEG(Test Element Group)が形成された0.4mm厚の評価用ICチップの表面にボンディングマシーンで高さ70μmのスタッド金バンプを形成した。この評価用ICチップのスタッドバンプ面を,評価用ガラスエポキシ基板の接続パッド面に対向させ,バンプと接続パッドとを位置合わせした後,50μm厚のパーフルオロエチレンシートで挟持して以下の熱圧着条件A又はBで熱圧着した。 【0044】 熱圧着条件A:190℃,5秒,12.8kgf/ティプ(80gf/バンプ) 熱圧着条件B:190℃,10秒,12.8kgf/ティプ(80gf/バンプ) 【0045】 <評価1(接続信頼性評価)> 4端子法により接続構造体の初期,吸湿リフロー処理後(85℃,85%RH環境下に24時間放置し,続いて最高温度260℃のリフロー炉に3回通過させた後),及びPCT試験後(121℃の飽和水蒸気環境中に96時間放置した後)の接続抵抗値を測定した。 得られた結果を表1に示す。 【0046】 <評価2(吸湿剥離試験評価)> 接続構造体の初期,吸湿リフロー処理後(85℃,85%RH環境下に24時間放置し,続いて最高温度260℃のリフロー炉に3回通過させた後),又はPCT試験後(121℃の飽和水蒸気環境中に96時間放置した後)に,評価用ICチップの剥離が生じたか否かを超音波映像装置(SAT)にて観察し,剥離が観察されない場合を[A],観察された場合を[B]と評価した。得られた結果を表1に示す。 【0047】 <総合評価> また,上述の評価1及び評価2の両方の結果を総合し,吸湿リフロー後とPCT試験後のそれぞれについて,以下の基準にて評価した。得られた結果を表1に示す。 【0048】 非常に良好[Exc]: 接続抵抗値(評価1)が0.02Ω以下であり,剥離(評価2)が観察されない場合 良好[G] : 一部剥離(評価2)が観察されるが,接続抵抗値(評価1)が0.02Ω以下であり,実用特性上問題がない場合 不良[NG] : 剥離(評価2)が観察されるかに関わらず,接続抵抗値(評価1)が0.02Ωを超える(open含む)場合 【0049】 【表1】 <途中省略> 【0050】 表1注: *1:エポキシ-エステル樹脂,共栄社化学社 *2:トリシクロデカンジメタクリレート,新中村化学工業社 *3:トリイソシアヌレート,東亜合成社 *4:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂,ジャパンエポキシレジン社 *5:フルオレン型フェノキシ樹脂,東都化成工業社 *6:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂,東都化成工業社 *7:水酸基含有アクリルゴム,長瀬ケムテックス社 *8:不定形シリカ粒子,平均粒径0.5μm,アドマテックス社 *9:アクリレート系シランカップリング剤,信越化学工業社 *10:エポキシ系シランカップリング剤,モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社 *11:有機過酸化物(ラジカル硬化剤),日本油脂社 *12:潜在性イミダゾール系硬化剤,旭化成ケミカルズ社 *13:φ5μm導電性粒子,積水化学工業社 【0051】 表1からわかるように,実施例1?5の場合,熱圧着条件A及びBの双方で,初期,吸湿リフロー処理後,PCT試験後であっても接続信頼性試験の結果は良好であり,吸湿剥離試験の結果は実用上問題がなかった。 【0052】 他方,(メタ)アクリレートモノマーと成膜用樹脂との合計100質量部に対して無機フィラーの使用量が70質量部未満となると,吸湿リフロー処理後及びPCT試験後に一部剥離が生じ,PCT試験後に接続抵抗値が上昇してopenとなり,実用特性上,不良と評価された。 【0053】 なお,アクリル系絶縁性接着剤ではなく,エポキシ系絶縁性接着剤を使用した比較例5の場合,熱圧着時間が不足しているため,初期・吸湿リフロー後で接続抵抗が高く,特にPCT試験後の接続抵抗値が0.5Ωを超えてしまった。また,導電性粒子を追加した比較例6の場合,スタッドバンプと電極パッドとの間に,導電性粒子が十分に捕捉されていないと考えられるため,PCT試験後の接続抵抗値が0.5Ωを超えてしまった。 【産業上の利用可能性】 【0054】 本発明のラジカル重合性のアクリル系絶縁性接着剤は,160?200℃という比較的低温の加熱温度条件下,5?10秒という加熱時間で,ラジカル重合硬化が可能であり,しかも,応力緩和性にも優れているので,ICチップ等の電気部品を配線基板にNCF接合に用いる接着剤として有用である。」 以上によれば,甲第10号証は,以下の発明(以下「引用発明2」という。)を開示していると認められる。 「電子部品のバンプが配線基板の接続パッドに直接接合されている電子部品と配線基板からなる接続構造体を作製する際に,好ましく適用されるアクリル系絶縁性接着剤であって, 当該アクリル系絶縁性接着剤は, (メタ)アクリレートモノマーと, 成膜用樹脂と, 無機フィラーと, シランカップリング剤及び ラジカル重合開始剤を含有し, 前記成膜用樹脂は,ガラス転移温度が50℃以上の常温で固体の樹脂であって,(メタ)アクリレートモノマーと相溶する樹脂であり,アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物のガラス転移温度を上昇させるためのものであって,フェノキシ樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,アルキル化セルロース樹脂,ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,スチレン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ,中でも,分子量が10000?100000であって,分子内にフルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましく,このようなフルオレン骨格を有する成膜用樹脂の具体例としては,FX293(東都化成社製)等が挙げられ, 前記無機フィラーは,(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し70?160質量部であり, 前記アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物が,150?185℃のガラス転移点を示し,且つガラス転移温度より低い温度領域で30?35ppmの線膨張係数(α1)と,ガラス転移温度以上の温度領域で105?125ppmの線膨脹係数(α2)とを示し,更に,α2/α2≧3.4を満足するものであり, このような接続構造体は,配線基板に前記アクリル系絶縁性接着剤をディスペンサー等の公知の供給手段で供給し,配線基板の接続パッドに対し,電子部品のバンプを公知の手法で位置合わせし,電子部品を加熱加圧することによりアクリル系絶縁性接着剤をラジカル重合硬化させて電子部品を配線基板に固着させると共に,電子部品のバンプと配線基板の接続パッドとを直接接合することにより製造できるものである, アクリル系絶縁性接着剤。」 サ 甲第11号証(特開2003-82034号公報)には,以下の記載がある。 「【請求項1】 (A)エポキシ基を含む(メタ)アクリレートモノマー,(B)アクリロニトリル及び(C)イミド(メタ)アクリレートを含む重合性モノマー混合物を重合して得られる,重量平均分子量500,000?1,500,000,ガラス転移点温度-30?10℃であるアクリル樹脂。 <途中省略> 【請求項4】 請求項1,2又は3記載のアクリル樹脂を含有してなる接着剤。 【請求項5】 アクリル樹脂の他,エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有する請求項4記載の接着剤。 【請求項6】 請求項4又は5記載の接着剤を用いて接着層を形成してなる接着フィルム。」 「【0039】 なお,この場合のA,B,Cステージは,接着剤の硬化程度を示すもので,Aステージは,ほぼ未硬化でゲル化していない状態であり,DSCを用いた硬化発熱量が全硬化発熱量の0?20%の発熱を終えた状態である。Bステージは,若干硬化が進んだ状態であり,硬化発熱量が全硬化発熱量の20?60%の発熱を終えた状態である。Cステージは,かなり硬化した状態であり,硬化発熱量が全硬化発熱量の60?100%の発熱を終えた状態である。ゲル化の判定についてはテトラヒドロフラン(THF)等の浸透性の高い溶剤中に接着剤を浸漬し,25℃で20時間放置した後,接着剤が完全に溶解しないで膨潤した状態にあるものをゲル化とした。」 「【0043】 実施例1?6及び比較例3 得られた樹脂に対して表2に示す材料(*^(1)?*^(6))を加え,接着剤樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し,140℃で5時間加熱乾燥して膜厚80μmのBステージ状態の塗膜を形成し,接着フィルムを得た。 *^(1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ株式会社製エピコート828を使用) *^(2):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製ESCN001を使用) *^(3):フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製フェノライトLF2822を使用) *^(4):フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製フェノトートYPー50を使用) *^(5):1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(四国化成株式会社製キュ アゾール2PZ-CNを使用) *^(6):アクリロニトリルブタジエンゴム(日本合成ゴム株式会社製PNR-1を使用)」 シ 甲第12号証(国際公開2010/131655号)には,以下の記載がある。 「[0057] 上記ワニスを,基材フイルムである厚さ38μmの離型処理したポリエチレンテレフタレートフイルム上に塗布し,115℃で5分間加熱乾燥して,Bステージ状態の接着剤層(厚さ25μm)が基材フィルム上に形成された接着シートを作製した。」 ス 甲第13号証(特開2007-9188号公報)には,以下の記載がある。 「【0010】 このような目的は,下記(1)?(14)に記載の本発明により達成される。 (1)プリアプライド用封止樹脂に用いる樹脂組成物であって,(A)熱硬化性樹脂と,(B)硬化剤と,(C)前記熱硬化性樹脂に対する良溶媒性であり,かつ前記硬化剤に対して貧溶媒性である第一の溶剤と,(D)前記第一の溶剤よりも沸点が低い第二の溶剤と,を含むことを特徴とする樹脂組成物。 (2)前記熱硬化性樹脂は,エポキシ樹脂を含むものである上記(1)に記載の樹脂組成物。 (3)前記エポキシ樹脂は,常温で固形のエポキシ樹脂と,常温で液状のエポキシ樹脂とを含むものである上記(2)に記載の樹脂組成物。 (4)前記硬化剤は,フラックス活性を有する硬化剤である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。 (5)前記フラックス活性を有する硬化剤が,1分子中に少なくとも2個のフェノール性水酸基と,芳香族に直接結合したカルボキシル基を1分子中に少なくとも1個含む化合物である上記(4)に記載の樹脂組成物。 (6)前記第二の溶剤は,前記熱硬化性樹脂に対する良溶媒であり,かつ前記硬化剤に対して貧溶媒である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の樹脂組成物。 (7)前記第一の溶剤の沸点と,前記第二の溶剤の沸点との差が,20℃以上である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。 (8)前記第一の溶剤は,エーテルアセテート型溶剤である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。 (9)前記第二の溶剤は,エーテルアセテート型溶剤である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の樹脂組成物。 (10)上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の樹脂組成物を塗布してなることを特徴とするプリアプライド用封止材。 (11)上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の樹脂組成物で封止してなることを特徴とする半導体装置。 (12)上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の樹脂組成物をウェハーに塗布する工程と,前記ウェハーに塗布後の前記樹脂組成物をBステージ化する工程と,前記ウェハーをダイシングし,半導体チップに個片化する工程と,個片化した半導体チップの前記樹脂組成物が塗布された面と基板とを加熱圧着接合する工程と,を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。 (13)ウェハーと,前記ウェハーの基板との接合面に塗布された樹脂組成物を備えてなるプリアプライド封止用部品であって,前記樹脂組成物が熱硬化性樹脂と,硬化剤とを含み,かつ前記硬化剤が樹脂組成物中に不溶分として分散していることを特徴とするプリアプライド封止用部品。 (14)Bステージ化されたプリアプライド用封止樹脂が形成されたプリアプライド封止用部品であって,前記プリアプライド用封止樹脂は,熱硬化性樹脂と,硬化剤とを含み,前記硬化剤が,前記プリアプライド用封止樹脂中に不溶分として分散していることを特徴とするプリアプライド封止用部品。」 「【0058】 本発明の製造方法では,ウェハーに塗布した前記樹脂組成物をBステージ化(半硬化)する工程を有する。これにより,前記樹脂組成物の液状成分(前記第一の溶剤等)がある程度揮発され,タックがほとんど無い状態とすることができ,作業性を向上することができる。なお,前記Bステージ化工程では,前記樹脂組成物の液状成分をある程度揮発させるが,この状態で前記樹脂組成物中の硬化剤(フラックス活性を有する硬化剤)は,樹脂組成物中に不溶分として分散している状態となる。 ウェハーに塗布後の(封止)樹脂組成物をBステージ化する方法としては,一般的に乾燥工程が必要であり,乾燥オーブン内で一定時間静置させるか,インラインオーブン,コンベア式加熱炉などでも代替できる。必要に応じて,ステップ加熱,定常昇温,定常降温などが設定される。」 セ 甲第14号証(特開2011-157557号公報)には,以下の記載がある。 「【0050】 (実施例1?3,比較例1?2) (a)熱可塑性樹脂として,フェノキシ樹脂及びウレタン樹脂を使用した。フェノキシ樹脂(PKHC,ユニオンカーバイト社製商品名,平均分子量45,000)40gを,メチルエチルケトン60gに溶解して,固形分40重量%の溶液とした。また,ウレタン樹脂は,平均分子量2,000のポリブチレンアジペートジオール450重量部と平均分子量2,000のポリオキシテトラメチレングリコール450重量部,1,4-ブチレングリコール100重量部をメチルエチルケトン4000重量部中で均一に混合し,ジフェニルメタンジイソシアネート390重量部を加えて70℃にて反応させて得られた重量平均分子量35万のウレタン樹脂を使用した。ラジカル重合性化合物として,前記ウレタンアクリレート(UA-1?UA-5)及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(ライトエステルP-2M,共栄社株式会社製商品名),ラジカル重合開始剤としてt-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(パーヘキシルO,日本油脂株式会社製商品名)を用いた。またポリスチレンを核とする粒子の表面に,厚み0.2μmのニッケル層を設け,このニッケル層の外側に,厚み0.02μmの金層を設けた平均粒径4μm,比重2.5の導電粒子を作製した。 固形重量比で表1に示すように配合し,さらに導電粒子を1.5体積%配合分散させ,厚み80μmのフッ素樹脂フィルムに塗工装置を用いて塗布し,70℃,10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが15μmのフィルム状接着剤を得た。」 「【0057】 (実施例5) 半導体チップ(3×10mm,高さ0.5mm,主面の4辺周囲にバンプとよばれる100μm角,高さ20μmの突起した金電極が存在)のバンプ配置と対応した接続端子を有する厚み1mmのガラスエポキシ基板(回路は銅箔で厚み18μm)から作製した半導体搭載用基板を用意した。半導体搭載用基板の回路表面には,ニッケル/金めっきを施した。半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板とを上記実施例3のフィルム状接着剤を用いて次のようにして接続した。半導体搭載用基板の回路面にフィルム状接着材を80℃,1MPa,3秒で仮圧着し,剥離性フッ素樹脂フィルムを剥離後,半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板との位置合せを行い,180℃,10kgf/チップの温度及び圧力により20秒間加熱圧着した。 これによって,フィルム状接着剤を介して半導体チップの突起電極と半導体搭載用基板の回路とを電気的に接続すると同時に半導体チップと半導体搭載用基板の電極はフィルム状接着剤の硬化によって,この接続状態を保持した。このようにして得た半導体チップと半導体搭載用基板を接続した半導体装置を(-55℃,30分)/(125℃,30分)の条件で繰り返す冷熱サイクル試験に曝した。この冷熱サイクル試験1,000回後の半導体チップの突起電極と基板回路の接続抵抗を測定したところ接続抵抗の上昇がなく,良好な接続信頼性を示した。」 ソ 甲第15号証(特開2011-140617号公報)には,以下の記載がある。 「【0037】 本発明のアンダーフィル形成用接着剤組成物は,(D)成分として無機フィラーを含有することにより,硬化後の接着剤層2の吸湿率及び線膨張係数を低減し,弾性率を高くすることができるため,作製される半導体装置の接続信頼性を向上することができる。また,(D)成分としては,接着剤層2における可視光の散乱を防止して可視光透過率を向上するために,可視光透過率を低減しない無機フィラーを選択することができる。可視光透過率の低下を抑制可能な(D)成分として,可視光の波長よりも細かい粒子径を有する無機フィラーを選択すること,あるいは,樹脂成分である(A),(B)及び(C)成分からなる樹脂組成物(以下,場合により「樹脂組成物」という)の屈折率に近似の屈折率を有する無機フィラーを選択することが好ましい。 【0038】 可視光の波長よりも細かい粒子径を有する無機フィラーとしては,透明性を有するフィラーであれば特にフィラーの組成に制限はなく,平均粒径0.3μm未満であることが好ましく,0.1μm以下であることがより好ましい。また,係る無機フィラーの屈折率は,1.46?1.7であることが好ましい。」 (3)当審の判断 ア 特許法第29条第2項について 本件発明1と引用発明1とを対比すると,両発明は「『(a)ビニル基,マレイミド基,アクリロイル基,メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと,(c)フィラーと,(d)熱ラジカル開始剤と,を含み,5μm以上100μm以下の厚みを有するフィルム状であ』る『プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物』。」の点で一致し,本件発明1が「『(b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマー』『ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)』」を含む,という技術的事項を有するのに対して,引用発明1が,前記技術的事項を含まず,その一方で,「ポリヒドロキシポリエーテル樹脂と,両末端にカルボキシル基を有するブタジエン-アクリロニトリル共重合体を,ジメチルアセトアミドに溶解し,窒素雰囲気下,156℃で10時間反応させ,この反応溶液を室温(25℃)まで冷却した後に,多量の水に滴下し,生成した沈殿物をろ過して,乾燥させて得た樹脂粉末を粉砕し,水で洗浄後,減圧濾過し,減圧乾燥して得たゴム変性フェノキシ樹脂(A)」を含むものである点(相違点1),及び,フィラーの径において,本件発明1が「平均粒径が1μm未満である」という技術的特徴を有するのに対して,引用発明では「平均粒径3μm」である点(相違点2)において相違する。 ここで,甲第2号証?甲第15号証に記載された技術的事項,及び出願時の技術常識を参酌しても,引用発明1が,「『(b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマー』『ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)』」を含むものとすることは,当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって,本件発明1は,引用発明1及び甲第2号証?甲第15号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,同様の理由から,本件発明2ないし13も,引用発明1及び甲第2号証?甲第15号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 特許法第36条第4項第1号について 平成30年6月14日に提出された訂正請求書によって,請求項5,8及び11に係る特許は,所定の材料を含む混合物を塗布し,当該混合物をBステージ化するものと訂正された。これにより,平成30年3月14日に特許権者に通知した実施可能要件に係る取消理由は解消した。よって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項5,8及び11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 ウ 特許法第36条第6項第1号について 平成30年6月14日に提出された訂正請求書によって,請求項5,8及び11に係る特許は,所定の材料を含む混合物を塗布し,当該混合物をBステージ化するものと訂正された。これにより,平成30年3月14日に特許権者に通知したサポート要件に係る取消理由は解消した。よって,請求項5,8及び11の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるという要件を満たすものである。 エ 特許法第36条第6項第2号について 平成30年6月14日に提出された訂正請求書によって,請求項5,8及び11に係る特許は,所定の材料を含む混合物を塗布し,当該混合物をBステージ化するものと訂正された。これにより,平成30年3月14日に特許権者に通知した,明確性要件に係る取消理由は解消した。よって,請求項5,8及び11の記載は,特許を受けようとする発明が明確であるという要件を満たすものである。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)申立て理由(i-1)について(特許異議申立書第36?37頁) 特許異議申立人 佐藤 義光は,特許異議申立書において,甲第1号証に記載された発明に基づき,本件特許1?7,9,10,12及び13について,特許法第29条第1項第3号に基づく取消理由を主張するが,甲第1号証には,「『(b)極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマー』『ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)』」を含む,という技術的事項が記載されていないから,本件特許1?7,9,10,12及び13は,甲第1号証に記載された発明ではない。 したがって,特許異議申立人 佐藤 義光のかかる主張は,採用することができない。 (2)申立て理由(i-3),(i-4)について(特許異議申立書第38?39頁) フリップチップ接続方式におけるアンダーフィル材として使用できる,フィルム状である樹脂組成物に用いることができる材料は無数に知られている。 そして,これらの材料の中から,特に,甲第4号証の実施例4で用いられているナガセケムテックス製の「テイサドレジンSG-P3,甲第5号証の【0022】に記載された材料,甲第6号証の【0025】に記載された材料,甲第7号証の請求項3,【0019】,【0020】,甲第8号証の【0018】,【0020】及び甲第9号証の【0066】に記載された材料を選択して,引用発明1で用いられているゴム変性フェノキシ樹脂(A)に替えて,あるいは,前記ゴム変性フェノキシ樹脂(A)に加えて用いる動機を見いだすことができない。 さらに,引用発明1は,前記ゴム変性フェノキシ樹脂(A)を用いることによって,甲第1号証に記載された所定の効果を奏するのであって,前記甲第4?9号証に記載された材料を用いた場合に,引用発明1において前記所定の効果を奏することが明らかでないから,引用発明1において,前記甲第4?9号証に記載された材料を用いることには,阻害要因が存在する。 すなわち,本件発明1は,引用発明1及び甲第4号証?甲第9号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって,特許異議申立人 佐藤 義光の申立て理由(i-3),(i-4)は,採用することができない。 (3)申立て理由(i-5)について(特許異議申立書第39?40頁) ア 特許異議申立人 佐藤 義光は,特許異議申立書,及び,平成30年8月29日に提出した意見書において,甲第10号証に記載された発明に基づき,本件特許1について,特許法第29条第2項に基づく取消理由を主張する。 そこで検討すると,上記4(2)コのとおり,甲第10号証には,以下の引用発明2が記載されていると認められる。 (再掲)「電子部品のバンプが配線基板の接続パッドに直接接合されている電子部品と配線基板からなる接続構造体を作製する際に,好ましく適用されるアクリル系絶縁性接着剤であって, 当該アクリル系絶縁性接着剤は, (メタ)アクリレートモノマーと, 成膜用樹脂と, 無機フィラーと, シランカップリング剤及び ラジカル重合開始剤を含有し, 前記成膜用樹脂は,ガラス転移温度が50℃以上の常温で固体の樹脂であって,(メタ)アクリレートモノマーと相溶する樹脂であり,アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物のガラス転移温度を上昇させるためのものであって,フェノキシ樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,アルキル化セルロース樹脂,ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,スチレン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ,中でも,分子量が10000?100000であって,分子内にフルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましく,このようなフルオレン骨格を有する成膜用樹脂の具体例としては,FX293(東都化成社製)等が挙げられ, 前記無機フィラーは,(メタ)アクリレートモノマー及び成膜用樹脂の合計100質量部に対し70?160質量部であり, 前記アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物が,150?185℃のガラス転移点を示し,且つガラス転移温度より低い温度領域で30?35ppmの線膨張係数(α1)と,ガラス転移温度以上の温度領域で105?125ppmの線膨脹係数(α2)とを示し,更に,α2/α2≧3.4を満足するものであり, このような接続構造体は,配線基板に前記アクリル系絶縁性接着剤をディスペンサー等の公知の供給手段で供給し,配線基板の接続パッドに対し,電子部品のバンプを公知の手法で位置合わせし,電子部品を加熱加圧することによりアクリル系絶縁性接着剤をラジカル重合硬化させて電子部品を配線基板に固着させると共に,電子部品のバンプと配線基板の接続パッドとを直接接合することにより製造できるものである, アクリル系絶縁性接着剤。」 イ しかしながら,引用発明2の「ガラス転移温度が50℃以上の常温で固体の樹脂であって,(メタ)アクリレートモノマーと相溶する樹脂であり,アクリル系絶縁性接着剤のラジカル重合硬化物のガラス転移温度を上昇させるためのものであって,フェノキシ樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,ポリビニルブチラール樹脂,アルキル化セルロース樹脂,ポリエステル樹脂,アクリル樹脂,スチレン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられ,中でも,分子量が10000?100000であって,分子内にフルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂が好ましく,このようなフルオレン骨格を有する成膜用樹脂の具体例としては,FX293(東都化成社製)等が挙げられる成膜用樹脂」から,本件発明1に係る「『(b)1ないし20重量%の,極性基を有するポリマーであって,該極性基が,水酸基,カルボキシル基,(メタ)アクリロイル基,およびエポキシ基からなる群より選ばれ,該ポリマーが,10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する,極性基を有するポリマー』『ただし前記(b)極性基を有するポリマーが,下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない,プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中,R^(a),R^(b),R^(c)及びR^(d)は,それぞれ独立に水素原子,炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基,炭素数6の環状アルキル基,置換基を有していてもよいアリール基,置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中,W^(1)は,カルボキシル基を示し,W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し,y及びzは0又は正の整数を示す。)。』」を選択する動機を見い出すことはできない。 ウ さらに,引用発明2に係るアクリル系絶縁性接着剤は,配線基板に前記アクリル系絶縁性接着剤をディスペンサー等の公知の供給手段で供給されることを前提とした物性を有するものと認められる。 そして,甲第10号証には,引用発明2を,「プリアプライドアンダーフイル材用」として用いることは記載も示唆もされておらず,また,引用発明2を,「プリアプライドアンダーフイル材用」として用いる動機も示されていない。さらに,甲第1号証及び甲第11号証に記載された技術的事項を参酌しても,引用発明2の「アクリル系絶縁性接着剤」の物性に基づいて,「プリアプライドアンダーフイル材用の接着剤組成物」とすることが容易であったと理解することもできない。 エ したがって,本件発明1は,引用発明2と甲第1号証及び甲第11号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 特許異議申立人 佐藤 義光は,平成30年8月29日に提出した意見書において,「甲第10号証の【0007】には,『本発明は,電子部品を配線基板にNCF接合するための絶縁性接着剤として,低温速重合硬化性に優れ,良好な接続信頼性を実現できる,ラジカル重合性のアクリル系絶縁性接着剤を提供することを目的とする』と記載されている。『NCF』は,『Non Conductive Film』の略記であることは当業者であれば容易に理解できる(必要であれば,甲第6号証の【0059】及び甲第15号証の【0004】を参照のこと。甲第6号証の【0059】及び甲第15号証の【0004】には,非導電性接着フィルムとして『NCF』が記載(略記)されている。)。また,甲第10 号証の実施例(【0043】)には,『接続銅パッドが形成された0.5mm厚の評価用ガラスエポキシ基板の接続パッド面に接着剤を貼り付けた』と記載されているので,この点からも,甲第10号証に記載の接着剤は,フィルムであることが理解できる。」と主張する。 しかしながら,甲第10号証には,「【0022】無機フィラーの粒径は,小さすぎるとバインダーの増粘を引き起こし良好な塗布ができなくなり・・・」,「【0023】本発明において,無機フィラーの使用量は,少なすぎると良好な導通信頼性が得られず,多すぎるとバインダーの増粘を引き起こし良好な塗布ができなくなる・・・」と記載されており,これらの記載から,甲第10号証に係るアクリル系絶縁性接着剤が,塗布によって配線基板等に供給される液体状のものであることを前提として,当該アクリル系絶縁性接着剤を構成する材料である無機フィラーの粒径及び使用量を特定したものであることが理解され,さらに,甲第10号証の「【0038】このような接続構造体は,配線基板に本発明のアクリル系絶縁性接着剤をディスペンサー等の公知の供給手段で供給し,配線基板の接続パッドに対し,電子部品のバンプを公知の手法で位置合わせし,電子部品を加熱加圧することによりアクリル系絶縁性接着剤をラジカル重合硬化させて電子部品を配線基板に固着させると共に,電子部品のバンプと配線基板の接続パッドとを直接接合することにより製造できる。」との記載における,「ディスペンサー」が,液体定量吐出装置であることに照らして,甲第10号証に係るアクリル系絶縁性接着剤は,液体定量吐出装置等によって供給され,配線基板に塗布することができる,液体状のものであることが理解される。 そして,このような理解が,甲第10号証の実施例(【0043】)の「接続銅パッドが形成された0.5mm厚の評価用ガラスエポキシ基板の接続パッド面に接着剤を貼り付けた」との記載と整合しないとも認められない。 したがって,「甲第10号証に記載の接着剤は,フィルムであることが理解できる。」とする,特許異議申立人 佐藤 義光のかかる主張は,採用することができない。 さらに,甲第10号証の「【0002】<途中省略>絶縁性接着剤を使用してICチップのバンプと配線基板の接続バッドとを直接接合(NCF接合)することが行われるようになっている。」との記載に基づけば,「絶縁性接着剤を使用してICチップのバンプと配線基板の接続バッドとを直接接合すること」を,甲第10号証においては,「NCF接合」と呼ぶと定義しているものと認められるから,甲第10号証の【0007】に,「本発明は,電子部品を配線基板にNCF接合するための絶縁性接着剤として,低温速重合硬化性に優れ,良好な接続信頼性を実現できる,ラジカル重合性のアクリル系絶縁性接着剤を提供することを目的とする。」と記載されていることをもって,「甲第10号証に記載の接着剤は,フィルムであることが理解できる。」とは認めることはできない。したがって,この点からも,「甲第10号証に記載の接着剤は,フィルムであることが理解できる。」とする,特許異議申立人 佐藤 義光のかかる主張は,採用することができない。 (4)申立て理由(ii)-(xiii)について(特許異議申立書第39?57頁) 上記(i-1)?(i-5)と同様の理由により,特許異議申立人 佐藤 義光のかかる主張は,採用することができない。 6 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1?13に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (a)ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)熱ラジカル開始剤と、 を含み、5μm以上100μm以下の厚みを有するフィルム状であり、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、プリアプライドアンダーフィル材用の接着剤組成物; 【化1】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化2】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項2】 (a)1ないし50重量%の、ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)1ないし20重量%の、極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)10ないし80重量%の平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)0.1ないし10重量%の熱ラジカル開始剤と、 を含み、5μm以上100μm以下の厚みを有し、Bステージ化されたフィルム状であり、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、プリアプライドアンダーフィル材用の接着剤組成物; 【化3】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化4】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項3】 前記(d)熱ラジカル開始剤が有機過酸化物である、請求項1または2に記載の接着剤組成物。 【請求項4】 支持テープ上に積層された、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。 【請求項5】 支持基材上に、 (a)ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)熱ラジカル開始剤と、 を含み、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、混合物を塗布し、該塗布された混合物をBステージ化する工程を含む、フィルム状接着剤組成物の製造方法; 【化5】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化6】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項6】 Bステージ化された状態で、ウエハーの素子形成面上に積層された請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含む、接着剤層付きウエハー。 【請求項7】 さらに、接着剤層上に積層された支持テープを含む、請求項6に記載の接着剤層付きウエハー。 【請求項8】 (a)ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)熱ラジカル開始剤と、 を含み、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、混合物を、ウエハーの素子形成面上に塗布し、塗布された混合物をBステージ化する工程を含む、接着剤層付きウエハーの製造方法; 【化7】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化8】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項9】 請求項1または2に記載のフィルム状接着剤組成物を、ウエハーの素子形成面上に積層する工程を含む、接着剤層付きウエハーの製造方法。 【請求項10】 Bステージ化された状態で配線基板上に積層された請求項1または2に記載の接着剤組成物を含む、接着剤付き配線基板。 【請求項11】 (a)ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)熱ラジカル開始剤と、 を含み、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、混合物を配線基板上に塗布し、該塗布された混合物をBステージ化する工程を含む、接着剤付き配線基板の製造方法; 【化9】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化10】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 【請求項12】 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて製造された電子デバイス。 【請求項13】 (a)ビニル基、マレイミド基、アクリロイル基、メタクリロイル基およびアリル基からなる群から選ばれる1以上の官能基を有するラジカル重合性モノマーと、 (b)極性基を有するポリマーであって、該極性基が、水酸基、カルボキシル基、(メタ)アクリロイル基、およびエポキシ基からなる群より選ばれ、該ポリマーが、10,000ないし1,000,000の範囲内の重量平均分子量を有する、極性基を有するポリマーと、 (c)平均粒径が1μm未満であるフィラーと、 (d)熱ラジカル開始剤と、 を含み、5μm以上100μm以下の厚みを有し、Bステージ化されたフィルム状であり、ただし前記(b)極性基を有するポリマーが、下記式(IV)で表される構造を有するポリヒドロキシポリエーテル樹脂と下記式(VI)で表される化合物とが反応することにより得られるゴム変性フェノキシ樹脂を含まない、アンダーフィルフィルムである製品; 【化11】 (式(IV)中、R^(a)、R^(b)、R^(c)及びR^(d)は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1?6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数6の環状アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基又はハロゲン原子を示す。); 【化12】 (式(VI)中、W^(1)は、カルボキシル基を示し、W^(2)はカルボキシル基又は水酸基を示す。xは正の整数を示し、y及びzは0又は正の整数を示す。)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-11-06 |
出願番号 | 特願2014-539967(P2014-539967) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L) P 1 651・ 536- YAA (H01L) P 1 651・ 537- YAA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 工藤 一光 |
特許庁審判長 |
飯田 清司 |
特許庁審判官 |
加藤 浩一 小田 浩 |
登録日 | 2017-06-30 |
登録番号 | 特許第6165754号(P6165754) |
権利者 | ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング |
発明の名称 | 電子部品用接着剤 |
復代理人 | 神谷 麻子 |
復代理人 | 神谷 麻子 |
代理人 | 小野 暁子 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 伊藤 克博 |
復代理人 | 神谷 麻子 |
代理人 | 小野 暁子 |
復代理人 | 神谷 麻子 |
代理人 | 伊藤 克博 |