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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H04N
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H04N
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1347652
異議申立番号 異議2018-700350  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-26 
確定日 2018-11-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6221399号発明「撮像システムおよび結像光学系および撮像システムの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6221399号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。 特許第6221399号の請求項2-12に係る特許を維持する。 特許第6221399号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6221399号の請求項1?12に係る特許についての出願は、平成25年6月21日に特許出願され、平成29年10月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成30年4月26日に特許異議申立人キヤノン株式会社により特許異議の申立てがされ、平成30年6月28日付けで取消理由が通知され、平成30年8月31日に訂正の請求がなされ、平成30年10月24日に訂正請求書の補正(方式)がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)?(6)のとおりである。なお、以下の訂正事項の番号は、本件訂正請求における訂正事項の番号とした。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「請求項1記載の撮像システムにおいて、
結像光学系のOTF:H(u、ν)と、該撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:」とあるのを、
「被写体の像を結像させる結像光学系と、
該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、
該撮像素子から出力された画像データに復元処理を施す画像処理部と、を有し、
前記結像光学系により前記撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
前記撮像素子のS/N比:SNRと、該撮像素子の1/2ナイキスト周波数における前記結像光学系のMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足し、
前記結像光学系のOTF:H(u,ν)と、前記撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1ないし3の任意の1に」とあるのを、「請求項2または3に」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6」とあるのを、「請求項2ないし6」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?6」とあるのを、「請求項2ないし6」に訂正する。

(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0013】に、「を満足する」とあるのを、「を満足し、前記結像光学系のOTF:H(u,ν)と、前記撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足する」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するのみであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アのとおり、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アのとおり、訂正事項2は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、請求項4において引用されている請求項1が訂正事項1により削除されたことにより、請求項4において請求項1の引用を削除するものであり、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項4において請求項1の引用を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項4において請求項1の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項7において引用されている請求項1が訂正事項1により削除されたことにより、請求項7において請求項1の引用を削除するものであり、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、請求項7において請求項1の引用を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、請求項7において請求項1の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、請求項10において引用されている請求項1が訂正事項1により削除されたことにより、請求項10において請求項1の引用を削除するものであり、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、請求項10において請求項1の引用を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、請求項10において請求項1の引用を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。よって、訂正事項6は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記訂正事項2と同様であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、上記訂正事項2と同様であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(7)一群の請求項
上記訂正事項1?5は、一群の請求項に対して請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
上記訂正事項6による明細書の訂正に係る請求項は、上記訂正事項2による訂正に係る請求項と同じであって、上記訂正事項6による明細書の訂正は、一群の請求項のすべてについて行われたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。
したがって、上記訂正事項1?6は、特許法第120条の5第4項及び同条第9項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合する。

(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1?11について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1?11に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。また、請求項12に係る発明(以下「本件発明12」という。)は、特許請求の範囲の請求項12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ただし、(2A)?(12F)は当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件2A」?「構成要件12F」という。
なお、請求項1は削除された。

(本件発明2)
(2A)被写体の像を結像させる結像光学系と、
(2B)該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、
(2C)該撮像素子から出力された画像データに復元処理を施す画像処理部と、を有し、
(2D)前記結像光学系により前記撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
(2E)前記撮像素子のS/N比:SNRと、該撮像素子の1/2ナイキスト周波数における前記結像光学系のMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足し、
(2F)前記結像光学系のOTF:H(u,ν)と、前記撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足すること
(2G)を特徴とする撮像システム。

(本件発明3)
(3A)請求項2記載の撮像システムにおいて、
(3B)撮像素子から出力される画像のS/N比:SNRを基準として、
画像処理部で復元処理を施された後の画像のS/N比が、前記基準のSNRよりも
20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}
以上には下からないこと
(3C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明4)
(4A)請求項2または3に記載の撮像システムにおいて、
(4B)結像光学系の被写界深度を拡張させること
(4C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明5)
(5A)請求項4記載の撮像システムにおいて、、
(5B)結像光学系が、球面収差を意図的に付与されて、点像の有効領域の、被写体距離の変化にともなう変化を低減させるものであること
(5C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明6)
(6A)請求項5記載の撮像システムにおいて、
(6B)結像光学系が、意図的に球面収差を付与するための位相板を有すること
(6C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明7)
(7A)請求項2ないし6の任意の1に記載の撮像システムの結像光学系であって、
(7B)撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mが、前記撮像素子のS/N比:SNRに対して、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足すること
(7C)を特徴とする撮像システムの結像光学系。

(本件発明8)
(8A)請求項7記載の撮像システムの結像光学系において、
(8B)撮像素子のS/N比:SNRに対して、OTF:H(u,ν)が、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足すること
(8C)を特徴とする撮像システムの結像光学系。

(本件発明9)
(9A)請求項7または8記載の撮像システムの結像光学系において、
(9B)球面収差を意図的に付与されて、点像の有効領域の、被写体距離の変化にともなう変化を低減させるための位相板を有すること
(9C)を特徴とする撮像システムの結像光学系。

(本件発明10)
(10A)請求項2ないし6の任意の1に記載の撮像システムにおいて、
(10B)画像処理部として、撮像素子から出力される画像に対して、ウィーナフィルタを利用した復元処理を施すものを用いること
(10C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明11)
(11A)請求項10記載の撮像システムにおいて、
(11B)画像処理部として、ウィーナフィルタをフーリエ変換したカーネルフィルタを用いて復元処理を施すものを用いること
(11C)を特徴とする撮像システム。

(本件発明12)
(12A)被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像に復元処理を施す画像処理部と、を有する撮像システムを製造する方法であって、
(12B)使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された撮像素子を用意する工程と、
(12C)該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程と、
(12D)前記撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程と、
(12E)前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程と、
(12F)を有することを特徴とする撮像システムの製造方法。

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1、4?7、9?11に係る特許に対して平成30年6月28日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)請求項1、4、5、7、10に係る特許は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1、4、5、7、10に係る特許は、取り消されるべきものである。

(2)請求項6、9に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された発明に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項6、9に係る特許は、取り消されるべきものである。
請求項11に係る特許は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第7号証参照)に基づき、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項11に係る特許は、取り消されるべきものである。

3 甲各号証の記載及び甲各号証に記載された発明
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2010-213274号公報。以下「甲1」という。)には、「拡張された被写界深度の監視用撮像システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0036】
被写界深度DOF及び焦点深度DOF´は、レンズシステム10(後述する)の縦倍率M_(A)及び横倍率M_(L)によって関連付けられており、DOF´=(M_(A))DOF=(M_(L))^(2)DOFとされているため、レンズシステム10は、便宜上「拡張された被写界深度」(EDOF)を有するものとして記載する。当業者であれば、この表現によりレンズシステム10が対応する「拡張された焦点深度」も有することを意味すると理解するであろう。よって、拡張された被写界深度EDOF又は拡張された焦点深度EDOF´は、以下において文脈に応じて用いる。」

「【0037】
図1は、本発明のEDOF撮像システム8の実施例の概略図である。EDOF撮像システム8は、物体面OPにおける物体OBの像面IPに像IMを生成するレンズシステム10を含む。レンズシステム10は光軸A1を有し、光軸に沿って最も物体側に第1レンズ群G1、最も像側に第2レンズ群G2を有する。まず、レンズ群G1は第1及び第2メニスカスレンズ素子L1及びL2を有し、各面をS1,S2、S3及びS4とする。最も物体側の第1メニスカスレンズ素子L1は、像面に対して凹である面S1及びS2を有し、最も像側の第2メニスカスレンズ素子L2は物体面に対し凹である面S3及びS4を有する。よって、二つのメニスカスレンズは相対するように配されている。」

「【0043】
レンズ群G1におけるレンズL1及びL2の表面曲率により、レンズ群G2によって生じたフィールドの収差の制御をしつつ球面収差SAを調整することができる。球面収差SAの量の選択は、タブレットD1の一以上の表面曲率を選択することにより設定することができる。実施形態では、レンズL1からL5のうち一以上のレンズがガラス製かプラスチック製である。」

「【0046】
レンズシステム10は、対応する回折限界レンズに比してDOFが増加するように上述の球面収差量を有するよう設計されている。図3は、EDOFレンズシステム10の一例の各面が寄与する球面収差SAの量を、Σで示される総量(「総和」)と共に示す概略図である。」

「【0055】
レンズシステム10の設計例を表2及び3に示している。これは、監視用に適した(そして特にCCTVカメラに適した)ものである。同レンズ例は、次の主なパラメータ特性を有する。



「【0056】
図8は、レンズシステム10のフィールドの任意の点について、瞳に関して正規化された瞳座標ρの関数として「波」λにおける光路差(OPD)を示す概略図である。図8に示すOPDは、球面収差の特徴を有する。レンズシステム10の設計の重要な特徴は、球面収差SAがフィールドに対する主な収差となることであり、フィールドの位置に関わらずほぼ一定であることである。この特徴により像フィールド全体にわたり均一な像の質及びEDOFを持続させることができる。この特徴はまた、ゼルニケ係数を選択する表4のリストにおいても明らかであり、ここではゼルニケ係数Z_(9)は球面収差を示し、他の非点収差のゼルニケ係数(Z_(5)及びZ_(6))やコマ収差のゼルニケ係数(Z_(7)及びZ_(8))よりも実質的に大きい。」

「【0059】
図1に戻ると、EDOF撮像システム8は、上述のイメージセンサ30を含む。イメージセンサは、イメージセンサが像IMを受信し検出するように像面IPに配された光電面32(例えば、電荷結合素子列)を有する。この場合、像IMはまた「最初の」又は「未処理」画像とここでは呼ぶことにする。実施例では、イメージセンサ30は高解像度のCCDカメラ又はCMOSカメラであるか、それを含む。実施形態では、光電面32は3000×2208画素からなり、画素サイズは3.5ミクロンである。この小さな画素サイズのCMOSカメラでは、飽和容量は21000電子量まで減らされることになり、飽和レベルでは43.2dBという最小限のショット雑音となる。イメージセンサ30の例は、IEEE1394のFire Wireによってイメージプロセッサ(後述する)に連結されたPixelink PL-A781 3000×2208画素のカメラであるか、それを含む。アプリケーションはDLLのPixelinkライブラリによって提供されるAPIを呼び出し、カメラの撮像を制御する。」

「【0060】
実施形態では、EDOF撮像システム8は更に、コンピュータや同様の装置等のコントローラ50を含む。コントローラは、(例えば、コンピュータ読み取り可能な又は装置読み取り可能な媒体の中のソフトウエア等の指令を介して)システムの各部の動作を制御する。コントローラ50は、EDOF撮像システム10の動作を制御するよう構成され、イメージセンサ30に電気的に接続された画像処理部(「イメージプロセッサ」)54を有する。イメージプロセッサ54は、イメージセンサ30からのデジタル化された未処理画像信号SRIを受信し処理し、処理済み画像信号SPIを生成する。なお、詳細は後述する。」

「【0072】
イメージプロセッサ54は、イメージセンサ30からデジタル化された電気的な未処理画像信号SRIを受信し、対応する未処理画像を処理することにより、処理済みの、コントラストを向上させた画像を生成する。これは、空間周波数に関して連続的に減少し、好ましくはオーバーシュート、リンギング及び他のアーチファクトを回避する平滑関数としてMTFを回復させるように未処理画像をフィルタリングする。 」

「【0073】
ノイズ増幅は信号を鮮鋭にするためのフィルタリング処理(例えば、デジタル光学イメージのコントラストを上げる等)ではしばしば問題となる。したがって、一実施形態では、ノイズのパワースペクトルを考慮した最適化したゲイン関数(ウィナーフィルタと同様)を適用して、コントラスト向上処理時のノイズ増幅を削減する。 」

「【0075】
基本的には、MTFは、像から抜粋することができる情報や測定により知られている場合、デフォーカス距離に応じて回復される。図9は、ベストフォーカスから様々な距離における未処理の光学的MTFのプロット図であり、ここではデフォーカス距離ステップδF=1.33・ZFであり、ZFはZF=λ/NA2で定義されるフレネル距離である。NAはデフォーカスが測定された空間(つまり、「像空間」)の開口数である。異なるフォーカス距離の未処理MTFのプロットは、デフォーカスにより生じるMTFの分散を示す。デフォーカスの各ステップでは、デジタルフィルタリング機能は測定されたMTFに応じて処理済み画像にとって最良のMTFを回復させるのに使用される。このフィルタの利用にはデフォーカス量を知る必要があるが、当該技術分野において公知の技術のいずれかを用いれば測定できる。デフォーカスステップδF間で用いられるフィルタは、隣接するフォーカスステップの線形補間である。」

「【0077】
「向上」或いは「回復」OTF´は次のように定義される。
OTF´(u,v,d)=G(u,v,d)OTF(u,v,d)
ここで、OTFはインコヒーレントな光のレンズシステム10に関する光学的伝達関数である。OTF´はデジタル処理を含む撮像システムの均等OTFであり、Gは上記MTFのゲイン関数である。元の、回復されていないMTFに基づく「出力」MTF´の関係式は次の通りである。
MTF´(ω,d)=G´(ω,d)MTF(ω,d) 」

「【0083】
電源ノイズを抑制することは重要である。出力MTF´を得るために未処理MTFのゲインが高くなる距離においては、高い空間周波数において出力MTF´の傾斜を制御して大きなオーバーシュートを回避しつつ、像の信号ノイズ比とMTFレベル間の妥協点を決めることができる。メリット関数Mにおける第3の項は、エッジ広がりの相対的オーバーシュートの2乗であり、図12に示されている。ここでは、オーバーシュートはΔosにより与えられる。」

「【0089】
高解像度セキュリティ撮像等撮像用途によっては高解像度のイメージセンサ30を必要とする。このため、実施形態では、イメージセンサ30は、画素サイズが3.5μmである3000×2208画素列等多数の画素を有するCMOS又はCCDカメラであるか、それを含むものである。この小さな画素サイズのCMOSカメラでは、かかるイメージセンサにおける飽和容量は21000電子量まで削減され、関係するショット雑音の最小値は飽和レベルでは約43.2dBである。 」

「【図1】



「【図9】



イ 甲第1号証に記載された発明
段落【0037】、図1によると、EDOF(拡張された被写界深度)撮像システムは、「物体の像を生成するレンズシステム10」を有している。
段落【0059】、図1によると、EDOF撮像システムは、「レンズシステム10からの光を受光するイメージセンサ30」を有している。
段落【0060】、【0072】、図1によると、EDOF撮像システムは、「イメージセンサ30からの未処理画像信号を処理する画像処理部54」を有しており、段落【0077】によると、OTFに基づいた復元処理を行うことが明らかであるから、EDOF撮像システムは、「イメージセンサ30からの未処理画像信号をOTFに基づいた復元処理する画像処理部54」を有している。

段落【0059】、【0089】によると、イメージセンサ30の画素サイズは、3.5μmである。
段落【0055】によると、レンズシステム10の設計例が表3に示されている。当該表3に示されたデータ及び波長を656nm(本件特許明細書の段落0082に記載された波長)を用いて、一般的な光学設計・シミュレーション解析ソフト「code V」(Synopsys社製)により点像強度分布を再現する(サンプルピッチは画素ピッチ(3.5μm)の25分の1)と、点像の有効領域である点像分布関数の「1/e^(2)」(本件特許明細書の段落0031)は8.3μmであり、点像の有効領域は3画素に亘る(異議申立書10頁8行?12頁7行)。
以上より、EDOF撮像システムは、「レンズシステム10よりイメージセンサ30の受光面に形成される点像の有効領域がイメージセンサ30の3画素以上に亘る大きさとなるように構成されている」といえる。

段落【0059】、【0089】によると、イメージセンサのS/N比(SNR)は、43.2dBである。
段落【0075】によると、図9は、ベストフォーカスからの様々な距離における未処理の光学的MTFのプロットである。
図9の異なるZF値のプロットにおいて最大値をとるのは、0ZF、すなわち「MTF0ZF」と認められ、1/2ナイキスト周波数(図9の横軸の「0,5」)における「MTF0ZF」の値は、約0.09と読み取れる(少なくとも0.0346より大きな値である)。
したがって、甲1の撮像システムにおいては、イメージセンサ30のS/N比:SNRは43.2dB、1/2ナイキスト周波数におけるMTFが0.09(少なくとも0.0346より大きな値)である。

以上まとめると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(甲1発明)
物体の像を生成するレンズシステム10と、
該レンズシステム10からの光を受光するイメージセンサ30と、
該イメージセンサ30からの未処理画像信号をOTFに基づいた復元処理する画像処理部54とを有し、
前記レンズシステム10より前記イメージセンサ30の受光面に形成される点像の有効領域が前記イメージセンサ30の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
前記イメージセンサ30のS/N比:SNRは43.2dB、該イメージセンサの1/2ナイキスト周波数におけるMTFが0.09(少なくとも0.0346より大きな値)であることを特徴とするEDOF撮像システム。

(2)甲第2号証?甲第5号証
甲第2号証?甲第5号証は、次のとおりである。

甲第2号証:「Nikon D800E:Measurements-DxOMark」(https://www. dxomark.com/Cameras/Nikon/D800E---Measurements)、平成30年4月23日(出力日)
甲第3号証:「Sony Cyber-shot DSC-RX1:Measurements-DxOMark」(https://www.dxomark.com/Cameras/Sony/Cyber-shot-DSC-RX1---Measurements)、平成30年4月23日(出力日)
甲第4号証:「Pentax K-5:Measurements-DxOMark」(https://www.dxomark.com/Cameras/Pentax/K5---Measurements)、平成30年4月23日(出力日)
甲第5号証:「Olympus OM-D:Measurements-DxOMark」(https://www.dxomark.com/Cameras/Olympus/0M-D-E-M5---Measurements)、平成30年4月23日(出力日)

以下「甲第2号証」?「甲第5号証」を「甲2」?「甲5」という。
甲2は、「https://www.dxomark.com/Cameras/Nikon/D800E---Measurements」を平成30年4月23日に出力したものである。甲2自体は、本件特許発明の出願日より前に公開されたものではない。
また、「Nikon D800E」が、2012年4月12日に発売されたとしても、甲2に記載された計測結果が、いつ発売された「Nikon D800E」を計測したものか明らかでなく、甲2をもって、2012年4月12日に発売された「Nikon D800E」の撮像素子のISO感度100におけるS/N比がおよそ45dBであることが立証できたとは認められない。
甲3?甲5も、甲2と同様である。

(3)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証(特開2011-227421号公報。以下「甲6」という。)には、「光変調板および撮像レンズ」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0035】
本発明の光変調板10は、結像光学系からなる撮像レンズ100を被写界深度拡大光学系として機能させるためにこの撮像レンズ100の光路上に挿入されるものである。すなわち、結像光学系である撮像レンズ100と、光変調素子である光変調板10とを組み合わせた光学系は被写界深度拡大光学系として機能するようになる。」

「【0097】
図4A、図4B、図5A、図5Bは実施例1の撮像レンズ100に関する諸収差を示す図であり、図4Aは、広角端に設定され、かつ光変調板が装着されていない撮像レンズ100の諸収差を示す図、図4Bは、望遠端に設定され、かつ光変調板が装着されていない撮像レンズ100の諸収差を示す図、図5Aは、広角端に設定され、かつ光変調板が装着された撮像レンズ100の諸収差を示す図、図5Bは、望遠端に設定され、かつ光変調板が装着された撮像レンズ100の諸収差を示す図である。」

「【図1A】



「【図4A】



「【図4B】



「【図5A】



「【図5B】



イ 甲第6号証に記載された技術
以上によると、甲6には、次の技術(以下「甲6技術」という。)が記載されている。

(甲6技術)
「光変調板を挿入することによって球面収差を増大させる技術」

(4)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載事項
甲第7号証(特開2013-26875号公報。以下「甲7」という。)には、「画像処理システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

「【0004】
光学系のボケの低減化に用いるフィルタは、光学系の点拡がり関数PSF(Point Spread Function)に基づいて設計される。理想画像をf(x,y)、ボケ画像などの劣化画像をg(x,y)、PSFをh(x,y)とすると、以下の(1)式の関係式が成り立つ。
【0005】
【数1】
g(x、y)=f(x,y)×h(x,y) (1)
【0006】
式(1)を二次元フーリエ変換すると、(2)式が得られる。
【0007】
【数2】
G(u,v)=F(u,v)H(u,v) (2)
【0008】
なお、H(u,v)は伝達関数(Optical Transfer Function)と呼ばれる。(2)式の両辺に伝達関数の逆フィルタH-1(u,v)を乗じることにより(3)式に示すように、理想画像の二次元フーリエ変換F(u,v)が算出される。
【0009】
【数3】
F(u,v)=H^(-1)(u,v)G(u,v) (3)
【0010】
さらに、(3)式をフーリエ逆変換することにより(4)式に示すように、理想画像を復元することが可能である。
【0011】
【数4】
f(x、y)=h^(-1)(x、y)×g(x、y) (4)
【0012】
ところで、伝達関数H(u,v)の値がゼロである場合や、実質的にゼロである場合に、逆フィルタH^(-1)(u,v)が無限大に発散してしまい、理想画像の二次元フーリエ変換F(u,v)を算出することが出来ない。それゆえ、従来は、逆フィルタH^(-1)(u,v)の代わりにウィーナフィルタなどの画像復元用のフィルタが用いられる。
【0013】
ウィーナフィルタH_(w1)^(-1)(u,v)では、(5)式で示すように、分母に定数Γを付加することにより、発散が防止されている。
【0014】
【数5】
H_(w1)^(-1)(u,v)=H(u,v)/[H^(2)(u,v)+Γ] (5)
【0015】
(5)式において、定数Γの値を小さくするほどボケの復元強度は高くなる一方で、ノイズが増加する性質がある。上述のようなウィーナフィルタH_(w1)^(-1)(u,v)はボケの度合いが全方向に同様であれば劣化画像を十分に復元可能であるが、方向によってボケの度合いが変わる劣化画像を十分に復元することは出来ない。
【0016】
例えば、σ=1.5のガウス分布特性を有するPSFに対する21×21のサイズを有するウィーナフィルタの例を説明する。σ=1.5のガウス分布特性を有するPSFは、図7に示される。図7に示すように、中心部から同心円状に分布強度が減少している。
【0017】
このようなPSFに対して、係数Γを0.5にしたウィーナフィルタH_(w1)^(-1)(u,v)が、図8に示される。また、このようなウィーナフィルタH_(w1)^(-1)(u,v)をフーリエ逆変換した復元フィルタh_(w)^(-1)(x、y)は、図9に示される。
【0018】
図9におけるグラフの縦軸は、注目画素を原点とする座標(x,y)の画素に対する復元フィルタの要素を表す。図9に示すように、注目画素から同じ距離の画素に対する復元フィルタh_(w)^(-1)(x,y)要素は同じである。
【0019】
このような復元フィルタh_(w)^(-1)(x,y)を用いる場合には、空間周波数に対する伝達関数のMTFは行方向も列方向も同じ曲線となる(図10参照)。すなわち、上述の復元フィルタh_(w)^(-1)(x,y)の復元強度は行方向も列方向にも等しくなる。
【0020】
このような復元フィルタは、ボケの度合いが全方向で同等であれば、ボケ画像の復元に適している。しかし、ボケの度合いが方向によって異なる場合には、最適のフィルタとならない。」

イ 甲第7号証に記載された技術
以上によると、甲7には、次の技術(以下「甲7技術」という。)が記載されている。

(甲7技術)
「ウィーナフィルタをフーリエ逆変換した復元フィルタを用いてボケ画像を復元する技術」

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
取消理由は、上記第3の2のとおり、訂正前の請求項1に係る特許及び訂正前の請求項を引用する訂正前の請求項4、5、7、10に係る特許が、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、当該特許は取り消されるものである、及び請求前の請求項1を引用する請求項6、9に係る特許が甲1及び甲6に記載された発明に基づき、容易に発明できたものであり、請求前の請求項1を引用する請求項11に係る特許が甲1に記載された発明及び周知技術に基づき、容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、当該特許は取り消されるものである、というものである。
しかしながら、上記第2の本件訂正請求により、訂正前の請求項1は削除され、訂正後の請求項4?7、9?11に係る特許は、訂正前の請求項1を引用しないものとなり、取消理由が通知していない請求項2を引用するものとなった。
したがって、上記取消理由は解消した。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 本件発明6、9:甲1に記載された発明に基づく新規性
特許異議申立人は、訂正前の本件発明6は、甲1に記載された発明であると主張する。
しかしながら、本件訂正請求により、本件発明2は、訂正前の請求項2を他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとなり、本件発明6は請求項2を引用するものとなった。特許異議申立人は、訂正前の本件発明2が甲1に記載された発明であると主張していないから、本件訂正請求により訂正前の請求項1を引用しないものとなった本件発明6について、甲1に記載された発明であるという主張は理由がない。
また、本件発明9も本件発明6と同様である。
よって、上記主張に理由はない。

イ 本件発明1、4、5、7、10、11:甲1に記載された発明に基づく容易想到性
特許異議申立人は、訂正前の本件発明1、4、5、7、10、11は、甲1に記載された発明に基づいて容易想到であると主張する。
しかしながら、本件訂正請求により、訂正前の本件発明1は削除され、本件発明2は、訂正前の請求項2を他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものとなり、本件発明4、5、7、10、11は請求項2を引用するものとなった。特許異議申立人は、訂正前の本件発明2が甲1に記載された発明に基づいて容易想到であると主張していないから、本件訂正請求により訂正前の請求項1を引用しないものとなった本件発明4、5、7、10、11は、甲1に記載された発明に基づいて容易想到であるという主張は理由がない。
よって、上記主張に理由はない。

ウ 本件発明12:甲1に記載された発明に基づく新規性及び容易想到性
(ア)本件発明12及び甲1に記載された発明
本件発明12と甲1に記載された発明とを対比するにあたり、本件発明12(上記第3の1)と甲1発明(上記第3の3(1)イ)とを再掲する。

(本件発明12)
(12A)被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像に復元処理を施す画像処理部と、を有する撮像システムを製造する方法であって、
(12B)使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された撮像素子を用意する工程と、
(12C)該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程と、
(12D)前記撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程と、
(12E)前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程と、
(12F)を有することを特徴とする撮像システムの製造方法。

(甲1発明)
物体の像を生成するレンズシステム10と、
該レンズシステム10からの光を受光するイメージセンサ30と、
該イメージセンサ30からの未処理画像信号をOTFに基づいた復元処理する画像処理部54とを有し、
前記レンズシステム10より前記イメージセンサ30の受光面に形成される点像の有効領域が前記イメージセンサ30の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
前記イメージセンサ30のS/N比:SNRは43.2dB、該イメージセンサの1/2ナイキスト周波数におけるMTFが0.09(少なくとも0.0346より大きな値)であることを特徴とするEDOF撮像システム。

ここで、甲1発明は、「EDOF撮像システム」の発明であるから、本件発明12と対比するに際し、甲1に「EDOF撮像システム」の製造方法が記載されているか検討する。
甲1の段落【0105】には、「以上の通り、当業者にとって、本発明の精神と範囲より逸脱することなく、本発明に対し多様な変更やバリエーションをなすことができることは明らかである。従って、本発明の変更やバリエーションが添付の請求の範囲やその均等物の範囲内に入るものであるならば、本発明は、それらの変更やバリエーションをその範囲に含むことを意味する。」と記載されている。
そうすると、単に、甲1発明の「EDOF撮像システム」の構成である「レンズシステム10」、「イメージセンサ30」、「画像意処理部」を用意し、組み合わせて「EDOF撮像システム」を製造する方法は、甲1に記載されているといえる。
甲1発明の「EDOF撮像システム」を製造する方法(以下「甲1発明’」という。)は次のとおりである。

(甲1発明’)
(a)物体の像を生成するレンズシステム10と、該レンズシステム10からの光を受光するイメージセンサ30と、該イメージセンサ30からの未処理画像信号をOTFに基づいた復元処理する画像処理部54と、を有する撮像システムを製造する方法であって、
(b)イメージセンサ30を用意する工程と、
(c)前記レンズシステム10より前記イメージセンサ30の受光面に形成される点像の有効領域が前記イメージセンサ30の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
前記イメージセンサ30のS/N比:SNRは43.2dB、該イメージセンサの1/2ナイキスト周波数におけるMTFが0.09(少なくとも0.0346より大きな値)であるレンズシステム10を用意する工程と、
(d)前記イメージセンサ30からの未処理画像信号をOTFに基づいた復元処理する画像処理部54を用意する工程と、
(e)前記イメージセンサ30と前記レンズシステム10と前記画像処理部54を組み合わせる工程と、
(f)を有することを特徴とするEDOF撮像システムの製造方法。

なお、(a)?(f)は、甲1発明’の構成を区別するために、当審で付与した。以下、各構成を「構成a」?「構成f」という。

(イ)対比
本件発明12と甲1発明’とを対比する。

甲1発明’の「レンズシステム10」、「イメージセンサ30」、「画像処理部54」は、本件発明12の「結像光学系」、「撮像素子」、「画像処理部」に相当する。

a 構成要件12Aと構成aとを対比すると、「被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像に復元処理を施す画像処理部と、を有する撮像システムを製造する方法」として一致する。

b 構成要件12Bと構成bとを対比すると、「撮像素子を用意する工程」として共通する。
しかしながら、「撮像素子」が、構成要件12Bにおいては、「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものであるのに対し、構成bにおいては「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものではない点で相違する。

c 構成要件12Cと構成cとを対比する。
甲1発明’において、20log10(5/M)を計算すると、M=0.09の場合34.9dB(M=0.0346場合43.2dB)である。
イメージセンサ30のSNRは43.2dBであるから、M=0.09の場合、式(A) SNR≧20log10(5/M)を満足する(M=0.0346が式(A)を満足する下限値である)。
以上より、甲1発明’は、「イメージセンサ30のS/N比:SNRと、イメージセンサの1/2ナイキスト周波数におけるレンズシステム10のMTF値:Mとが、条件:(A) SNR≧20log10(5/M)を満足するレンズシステム10を用意する工程」を有しているといえる。
したがって、構成要件12Cと構成cとは、「該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程」として一致する。

d 構成要件12Dと構成dとを対比すると、「前記撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程」として一致する。

e 構成要件12Eと構成eとを対比すると、「前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程」として一致する。

f 構成要件12Fと構成fとを対比すると、「撮像システムの製造方法」として一致する。

(ウ)一致点、相違点
以上によると、本件発明12と甲1発明’との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像に復元処理を施す画像処理部と、を有する撮像システムを製造する方法であって、
撮像素子を用意する工程と、
該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程と、
前記撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程と、
前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程と、
を有することを特徴とする撮像システムの製造方法。

(相違点)
「撮像素子」が、本件発明12においては「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものであるのに対し、甲1発明’においては「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものでない点

(エ)判断
a 新規性
上記(ウ)のとおり、本件発明12と甲1発明’とを対比すると、相違点があるから、本件発明12は甲1発明’ではなく、特許異議申立人の新規性がないとの主張は理由がない。

b 容易想到性
上記相違点について検討する。
甲1発明’における「撮像素子」を「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものとする理由は、甲6、甲7をみてもない。
また、甲2?5については上記第3の3(2)のとおりであるが、仮に甲2?5により、本件発明12の出願当時にISO感度100におけるS/N比がおよそ39?45dBである撮像素子が周知であるとしても、甲1発明’における「撮像素子」を「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものとする理由にはならない。
さらに、甲1発明’における「撮像素子」を「使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された」ものとする理由はない。
したがって、特許異議申立人の容易想到性の主張は理由がない。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明12が甲1に記載された発明であるという異議申立人の主張は理由はない。また、本件発明12が、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できるものであるという異議申立人の主張は理由がない。

エ 記載不備(明確性要件違反)
(ア)「撮像素子のS/N比:SNR」について
特許異議申立人は、概略、次のように主張している(特許異議申立書21頁14行?末行)。
『本件特許2-12(本件特許1は訂正請求により削除された)は、その発明特定事項に「撮像素子のS/N比:SNR」を含むが、本件特許明細書の段落【0043】によれば撮像素子のSNRは測定環境を特定しなければ一意に定めることができない。また、同段落【0044】によれば、SNRの測定環境として「実際に使用される環境」としか定めておらず、「実際に使用される環境」は、客観性を欠き、「撮像素子のSNR」を定義するものではなく、「撮像素子のS/N比:SNR」を含む本件特許発明2-12は、明確でない。』

しかしながら、「撮像素子のS/N比:SNR」は、文言どおり撮像素子のS/N比という意味であって、文言的に明確である。また、「実際に使用される環境において測定されたSNR」(段落【0044】)も文言どおりの意味として理解でき、明確である。
そして、本件発明2?12は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、特許異議申立人の主張は理由がない。

(イ)「20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}」について
特許異議申立人は、概略、次のように主張している(特許異議申立書22頁3?37行)。
『本件発明2の「条件: (B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15」が、以下の3つの点で明確でない。
a 本件特許明細書の段落【0114】によると、条件(B)の左辺の第2項は「周波数空間上での画像処理フィルタ特性の平均値」であるが、条件(B)の左辺の第2項は平均を演算するものでない。
b 条件(B)の左辺の第2項の二重総和に関して、総和を取る際に変化させるパラメータの上限と下限が規定されておらず、計算することができない。
c 条件(B)の左辺の第2項の二重総和に関して、総和を取る際に変化させるパラメータの離散化間隔(上限から下限の間でパラメータを何分割するか)が規定されていないから、計算することができない。』

上記各主張について検討する。
・上記aについて
条件(B)の左辺の第2項は「周波数空間上での画像処理フィルタ特性の平均値」であるから、「平均値」として理解でき、条件(B)に平均を演算することが記載されていなくとも、表記上省略しているだけで、平均であることが理解できるものである。


・上記bについて
u、νは周波数であるから、有意な上限、下限を有しているということは、当業者に明らかな事項であり、不明確とまではいえない。

・上記cについて
間隔をどのくらいにするかは、所望の精度や計算コストに応じて適宜設定されることにすぎず、不明確とまではいえない。

以上のとおりであるから、本件発明2?12は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえず、特許異議申立人の主張は理由がない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項12及び本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項2?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項12及び本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項2?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
撮像システムおよび結像光学系および撮像システムの製造方法
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像システムおよび結像光学系および撮像システムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像センサとしては従来からCCD(Charge Coupled Device)が広く知られている。
【0003】
またCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)も広く使用されつつある。
【0004】
これら「CCDやCMOSなどの画像センサを持った撮像システム」は各種の撮像装置として広く知られている。
【0005】
このような撮像システムにおいて、画像処理を前提として光学系を設計し、光学系で得られた画像を復元処理により「より良好な画像」として復元させることが知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、波面変調素子で結像光束を規則的に分散して撮像した画像をデジタル処理で復元し、被写界深度の深い撮影を可能にする方法が開示されている。
【0007】
即ち、特許文献1記載の方法では、点像分布関数:PSF(Point spread function)が撮像素子のピッチの2倍より大きいレンズで「ピントのぼけた画像」を撮像する。
【0008】
そして、撮像された「ピントのぼけた画像」に対して、PSFに基づいた逆重畳フィルタを用いることによって「ピントぼけを修正した画像」を得ることが開示されている。
【0009】
しかし、特許文献1等により知られた従来の「被写界深度拡大機能を有する撮像装置」では、撮像素子自体が本来的に有するS/N比が考慮されていない。
【0010】
撮像された画像には撮像素子が有するノイズ成分が含まれており、このようなノイズ成分を含む画像に対してデジタルの復元処理を行うと、ノイズ成分も増幅されてしまう。
【0011】
このため、復元された画像は「増幅されたノイズ成分」により、像質が著しく劣化したものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、結像光学系による像を撮像する撮像素子が有するノイズ成分の影響を、有効に低減して画像復元処理を行いうる撮像システムの実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の撮像システムは、被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像データに復元処理を施す画像処理部と、を有し、前記結像光学系により前記撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、前記撮像素子のS/N比:SNRと、該撮像素子の1/2ナイキスト周波数における前記結像光学系のMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足し、前記結像光学系のOTF:H(u,ν)と、前記撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、結像光学系による像を撮像する撮像素子が有するノイズ成分の影響を、有効に低減して画像復元処理を行い得る撮像システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】撮像システムの実施の1形態を説明するためのブロック図である。
【図2】撮像レンズユニットの具体的1例(実施例)を示す図である。
【図3】撮像レンズユニットの実施例の横収差図である。
【図4】撮像レンズユニットの実施例の縦収差図である。
【図5】撮像レンズユニットの実施例の像面湾曲とディストーションの図である。
【図6】撮像レンズユニットの実施例の被写体距離:370mmのMTFである。
【図7】撮像レンズユニットの実施例の被写体距離:400mmのMTFである。
【図8】撮像レンズユニットの実施例の被写体距離:430mmのMTFである。
【図9】撮像レンズユニットの実施例と共に用いる撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるTFMTFを示す図である。
【図10】球面収差により広がった点像分布関数と撮像素子の画素ピッチの関係を説明するための図である。
【図11】通常の結像による点像分布関数と撮像素子の画素ピッチの関係を説明するための図である。
【図12】実施例で用いるウィーナフィルタ(画像処理フィルタ)の周波数応答性を示す図である。
【図13】ウィーナフィルタを利用したカーネルフィルタを示す図である。
【図14】撮像レンズユニットの比較例を示す図である。
【図15】撮像レンズユニットの比較例の横収差図である。
【図16】撮像レンズユニットの比較例の縦収差図である。
【図17】撮像レンズユニットの比較例の像面湾曲とディストーションの図である。
【図18】撮像レンズユニットの比較例の被写体距離:370mmのMTFである。
【図19】撮像レンズユニットの比較例の被写体距離:400mmのMTFである。
【図20】撮像レンズユニットの比較例の被写体距離:430mmのMTFである。
【図21】撮像レンズユニットの比較例と共に用いる撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるTFMTFを示す図である。
【図22】実施例で復元された復元画像を示す図である。
【図23】比較例で復元された復元画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を説明する。
【0017】
この発明は「画像処理を前提として作製された結像光学系と、撮像素子とを有し、画像復元処理を行う種々の撮像システム」として実施できる。
【0018】
以下に説明するのは「被写界深度を拡大する機能を有する撮像装置」として構成された撮像システムに関するものである。
【0019】
図1は、撮像システムの実施の形態を示すブロック図である。
撮像システムは、撮像レンズユニット202と、撮像素子205と、画像処理部206を有し、被写体201の撮像を行う。
被写体201は、例えば「バーコードや2次元コード」あるいは「文字列」などであることができる。
この場合には、撮像システムは「コードや文字列を読取るための読取装置」である。
【0020】
被写体201はまた、製品検査の対象となる「製造された製品」であることができる。
【0021】
この場合の撮像システムは「検査用カメラ装置」として実施することができる。
【0022】
撮像レンズユニット202は「1枚以上のレンズを有する光学系」である。撮像レンズユニット202を構成するレンズ系は「結像光学系」である。
【0023】
混同の恐れはないと思われるので、以下において、結像光学系を、結像光学系202とも言う。
【0024】
撮像レンズユニット202による、撮像素子205上の「被写体201の画像」が撮像素子205により読み取られる。
【0025】
コードや文字列を読取るための読取装置や、検査用カメラ装置では、被写体201と撮像レンズユニット202との距離(被写体距離)が変動し易い。
【0026】
被写体位置が「結像光学系202による撮像素子205の受光面と共役な位置」に合致するときがピントの合った状態である。
【0027】
結像光学系202の被写界深度が浅いと、撮像素子205が読取る画像の「ピントのボケ」が、被写界距離の変動により大きく変動しやすい。
【0028】
このため、撮像システムにおける撮像光学系202は「被写界深度が深い」ことが好ましい。
【0029】
説明中の実施の形態においては、撮像光学系202中に配置された絞り204の近傍に、位相板203が挿入されている。
位相板203は「被写界深度を拡大させるための収差」を発生させるものである。
【0030】
即ち、位相板203により「撮像素子205の受光面における点像の有効領域が3画素以上にまたがる」ように結像光束を拡散させる。
【0031】
点像の有効領域は、点像分布関数:PSFの「1/e^(2)」以上の領域である。
【0032】
このようにして、結像光学系202により撮像素子205の受光面に結像するのは「被写体201の収差が発生した状態の像」である。
なお、説明中の実施の形態では、位相板203により「収差の制御」を行っているが、収差の制御には必ずしも位相板を用いなくともよい。
【0033】
例えば、特許文献2には「位相板を用いずに被写界深度を拡大する撮像システム」が開示されており、この発明は、このような形態にも対応できる。
撮像素子205としては一般的な固体撮像素子、即ち、CCDセンサやCMOSセンサなどを使用できる。
撮像素子205からは「画像データ」が出力され、出力された画像データは、画像処理部206に入力される。
画像処理部206では入力された画像データに対して、復元処理を行う。この復元処理は「位相板203により拡散されたPSFを復元する画像処理」である。
【0034】
画像処理部206としては、コンピュータや、FPGA(Field-Programmable Gate Array)のような集積回路を用いることができる。
【0035】
画像処理は、前者であれば「ソフトウェアによる処理」で、後者であれば「ハードウェア処理」で行うことができる。
【0036】
この発明の特徴とするところは、結像光学系202のMTF特性と、撮像素子205のS/N特性の間に以下の関係があることにある。
【0037】
SNR≧20log_(10)(5/M) (A)
(A)式において「SNR」は撮像素子205のS/N比の値である。
「M」は、「撮像素子205の画素ピッチで定義される1/2ナイキスト周波数(ナイキスト周波数の1/2)」における結像光学系202のMTF値である。
【0038】
「M」は、上記「1/2ナイキスト周波数に対するMTF値」が最も高くなるようにフォーカスを調整したときの値である。
撮像素子205のSNRが低い場合や、低くなってしまう状況(例えば、非常に暗くてゲインを上げなくてはならない場合)なども考えられる。
【0039】
この場合には、結像光学系202を「MTF値が高くなる」ように設計する。
条件(A)が満足されることにより、最終的な画像復元処理後に得られる復元画像におけるノイズを抑えて良好な復元画像とすることが可能になる。
【0040】
(A)式で「M」として用いられるMTF値は「全像高で(A)式が満たされる」ことが好ましい。しかし、最低限「画像の中心(像高:0)」のみが満たしていれば良い。
【0041】
撮像素子205のSNRは、以下のごとくに定義される。
全面一様な被写体を撮影したときに撮像素子205から出力される「画像全体の各画素の輝度値の平均」をB、「輝度値の標準偏差」をNとして(1)式で定義される。
【0042】
SNR=20log_(10)(B/N) (1)
SNRの単位はdBであり、Bは「単位がdBではないS/N比」である。
【0043】
撮像素子のSNRは一般に、撮像素子の使用される環境(照度)や露光時間、ゲインなどによって変化する。
【0044】
条件(A)を満足するべきSNRは「撮像素子が実際に使用される環境において測定されたSNR」である。
【0045】
撮像素子が使用される環境が変化する場合は、その全ての場合でSNRが(A)式を満たすことが好ましい。
【0046】
しかし、現実に全ての場合を想定できない場合も多いため「使用される代表的な状況」で(A)式が満たされれば良いとする。
【0047】
また、撮影する被写体201の色によってもSNRは変化するが、上記「Bの値」が撮像素子205の取り得る最大の輝度値の7割になるような色の被写体に対する値とする。
【0048】
撮像素子205が「カラー撮像素子」の場合は、撮影可能な全ての色について(A)式が満足されるようにする。
【0049】
図1の撮像システムを実施するにあたっては、まず「使用する撮像素子205のSNRを測定」する。
【0050】
S/N比:SNRが予め知られている場合は「その値」を使用しても良い。
【0051】
説明中の実施の形態では、以下の仕様のCMOSセンサを使用する。
【0052】
サイズ:1/3インチモノクロ
画素数:640(横)×480(縦)
画素ピッチ:7.4μm×7.4μm
SNR:30(dB) 。
【0053】
画素ピッチが7.4μmであるから、ナイキスト周波数(=(1000/7.4)/2)は67.6cycle/mmで、1/2ナイキスト周波数は33.8cycle/mmである。
【0054】
以下、この仕様による撮像素子を以下、「実施例撮像素子」と呼ぶ。
【0055】
また、以下において、撮像素子205は特に断らない限り「実施例撮像素子」を指すものとする。
【0056】
このような実施例撮像素子205を用いる場合に、結像光学系202は、(A)式を満足するように設計を行う必要がある。
【0057】
即ち、結像光学系202は、1/2ナイキスト周波数:33.8cycle/mmにおいて「MTF値が0.16以上」になるように設計する必要がある。
【0058】
このように設計された結像光学系202の具体的な1例(以下、実施例結像光学系202と称する。)のレンズ構成を図2に示す。
【0059】
実施例撮像素子と実施例結像光学系とを組み合わせた撮像システムを以下においては単に「実施例」と称する。
【0060】
図2において左方が物体側(即ち被写体側)であり、右方が像面側(即ち撮像素子側)である。図において符号L1?L3、L5?L7はレンズ、符号Sは絞りを示す。
【0061】
また、符号ISは撮像素子の受光面であり、実施例結像光学系の像面である。
【0062】
符号L4は「被写界深度を拡大させるための収差」を発生させる位相板を示す。
【0063】
即ち、実施例結像光学系202は、位相板L4も含めて7枚構成であり、絞りSの面は、物体側から数えて第9面となっている。
【0064】
位相板L4は、結像光学系に球面収差を意図的に付与するためのものである。
【0065】
被写界深度を拡大する光学系では、このように「球面収差を付与する位相板を絞りの近傍に配置」する構成が一般的である。
【0066】
実施例結像光学系202のデータを表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1において、「Type」は「面の形状」、「STANDARD」は面の形状が「通常の球面または平面」であることを意味する。
【0069】
また「ASPHERE」は面の形状が「非球面形状」であることを意味する。
【0070】
「Curvature」は面の曲率であり、その逆数が曲率半径である。なお、曲率は、非球面にあっては「近軸曲率」である。
【0071】
「Thickness」は面間隔を意味する。
また「Glass」は硝材を意味し、「Semi-Diameter」は各面の有効半径である。長さの次元を持つ量の単位は「mm」である。
【0072】
上記表記において例えば「3.07E-02」は「3.07×10^(-2)」を意味する。
【0073】
表1から明らかなように、撮像レンズユニットの実施例(実施例結像光学系202)においては、位相板L4の「絞りSの側の面」のみが非球面である。
【0074】
非球面は、軸上の曲率半径と、光軸からの距離:hの多項式によって表される。
【0075】
実施例結像光学系の第8面(位相板L4の像側面)の非球面を特定するデータ(非球面データ)を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2において、「Surf」は面、「Aspheric」は非球面、「Normalized Radius」は規格化された近軸曲率半径を意味する。
「非球面の形状」は次式で示す多項式で表している。
【0078】
Z=Σa_(n)(|h/r|)^(n) n=2?10
この多項式において「r」は、上記「Normalized Radius」であり、「h」は光軸からの距離である。
【0079】
表2における「h^(2)?h^(10)」は、2次ないし10次を示し、右欄はこれらの次数に対する係数を表す。
【0080】
実施例結像光学系の、横収差図を図3に、縦収差図を図4に、像面湾曲とディストーションを図5に示す。
【0081】
また、実施例のMTFを被写体距離:370mm、400mm、430mmについて、図6、図7、図8に示す。
【0082】
これらの図は、波長:656nm(rと表示)、588nm(gと表示)、286nm(bと表示)について描かれている。
【0083】
横収差と、ディストーションについては、収差曲線はr、g、bについて実質的に分離しておらず互いに重なっている。
【0084】
図4に示す縦収差の図から明らかなように、0.7mm以上の大きい球面収差が発生している。これが「位相板L4による影響」である。
【0085】
このような大きい球面収差により、点像分布関数(PSF)が拡散し、MTFは低下している。
【0086】
図9には、上記仕様の撮像素子205の1/2ナイキスト周波数(33.8cycle/mm)における「Through Focus MTF(TFMTF)」を示す。
図の横軸は「像面のフォーカスシフト量」、縦軸は「MTF」である。
図において、「T」はタンジェンシアル、「S」は「サジタル」を意味し、0.0000mm、1.5000mm、3.0000mmとあるのは像高である。
【0087】
図9から明らかなように、全ての像高(0?±3.0mm)で「MTFの最大値」が0.35以上あり、条件(A)の右辺の0.16を上回っている。
【0088】
原則的には1/2ナイキスト周波数MTFは「全ての像高で0.16を上回っている」ことが好ましい。しかし、最低でも「画像中心のみが上回って」いれば良い。
これは、後述のように「画像処理部での復元処理を設計する際に、画像中心の特性を基に設計する」ためである。
【0089】
図10は、点像分布関数:PSFと「撮像素子の画素ピッチ」との関係を説明するための図である。
【0090】
図10の上図は、PSFのプロファイルを示したものであり、下図は、PSFが受光素子の受光面状で広がって分布している状態を示す。
【0091】
図10の下図に示すように、図のPSFは、受光画素の3画素以上に「またがって広がって」いる。
【0092】
「点像の有効領域」は、図10の上図のようにPSFの(1/e^(2))となる幅であり、有効領域は図10下図のように5画素分に跨って広がっている。
【0093】
この発明の撮像システムでは、結像光学系である撮像レンズユニットの「撮像素子の受光面上における点像の有効領域」は3画素以上に広がっていることが必要である。
【0094】
なお、一般的な撮像装置では、図11に示すように点像の有効領域が、1画素に収まるように結像光学系が設計される。
【0095】
上記の如く、この発明の撮像システムでは、結像光学系202の球面収差を意図的に増大させて、撮像素子205の受光面における点像の有効領域を3画素以上に広げる。
【0096】
そして撮像素子205から出力される画像データに対して、画像処理部206により復元処理が行われる。
【0097】
復元処理を行う画像処理としては、一般的な画像処理である「逆フィルタ処理やウィーナフィルタ処理」を使用することができる。
以下には、ウィーナフィルタを利用した復元処理の場合を説明する。
【0098】
なお、ウィーナフィルタ処理に関しては、非特許文献1などに記載されている。
ウィーナフィルタは(2)式のように表される。
【0099】
R(u,ν)=H^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{W(u,ν)/S(u,ν))}^(2)] (2)
(2)式において、R、H、H^(*)、W、S、u、νの意味は以下の通りである。
【0100】
R: 画像処理フィルタ(ウィーナフィルタ)
H: 光学系のOTF(optical transfer function 「光学伝達関数」)
H^(*): Hの共役複素量
S^(2): 被写体のパワースペクトル
W^(2): センサ固有のノイズのパワースペクトル
u、v: 縦方向および横方向の周波数 OTF:H(u,ν)は、結像光学系202の設計データから求めることが可能である。
説明中の「実施例結像光学系」のOFTは、画像中心と画像端部で殆ど変わらない。
【0101】
従って、画像中心のOTFの値を代表値として画像処理フィルタを設計する。
【0102】
このように設計された画像処理フィルタにより、画像全体(前記画像データにより構成される画像の全体)に対して同一の画像処理を施す。
【0103】
なお、像高に応じてOTFが変化する結像光学系、例えば「画像端での性能が悪く、OTFが劣化するような結像光学系」もあり得る。
【0104】
このような場合には「像高に応じた画像処理フィルタ」を設計し、画像の位置によって使用する画像処理フィルタを変えるようにすることができる。
【0105】
W(u,ν)とS(u,ν)とは、撮像素子のS/N比率から近似的に求めることができる。
【0106】
即ち、被写体のパワースペクトルおよびノイズのパワースペクトルが「周波数特性を持たない」と近似すると、(1)式におけるB/NがS/Wと等しくなる。
【0107】
説明中の実施例では、実施例撮像素子205のS/N比:SNRは30dBであるから、dB表記から通常の比率に直すと「B/N=31.6」となる。
【0108】
「B/N≒S/W」の関係を用いると、W^(2)/S^(2)(=1/(31.6)^(2))は0.001となる。
【0109】
これを用いて、ウィーナフィルタ(画像処理フィルタ)を求めると、その周波数応答性は図12に示す如きものとなる。図12は横軸が空間周波数で縦軸がゲインである。
実際は2次元の画像処理フィルタであるが、ここでは1次元のみを表示している。
画像処理後の復元画像のMTFは「結像光学系のMTFに画像処理フィルタの特性を掛け合わせたプロファイル」を持ち、球面収差によって低くなったMTFが補正される。
【0110】
しかし、反面、画像処理によって「画像データに含まれるノイズ成分」も増幅される。
【0111】
ノイズが完全なホワイトノイズで、かつ被写体によって変化しないと仮定すると「全空間周波数に対する画像処理フィルタRの値を平均したもの」がノイズの倍率となる。
【0112】
上記の如く設計した画像処理フィルタRの値を平均すると約3.2となり、この画像処理フィルタRによって「ノイズが約3.2倍増幅される」ことが分かる。
【0113】
これをもとに計算すると、画像処理後の復元画像のS/N比は、もともとの撮像素子205のS/N比:30dBから約20dBまで低下する。
一般的に「15dBを下回るS/N比」の画像では、ノイズ成分が非常に多く、実用的ではない画像になってしまう。
したがって、撮像素子205のS/N比:SNRと「画像処理によるゲインG」の間には、以下の関係が有ることが好ましい。
【0114】
SNR-G≧15 (3)
Gは(4)式により定義される「周波数空間上での画像処理フィルタ特性の平均値」で、単位はdBである。
【0115】
G=20log_(10)[ΣΣR(u,ν)] (4)
(4)式の右辺の2重和(ΣΣ)は、空間周波数:u、νのそれぞれについてとる。
【0116】
この発明では「実際に使用する環境における撮像素子のSNRを考慮して結像光学系の設計」を行う。
【0117】
従って、復元処理の画像処理後の復元画像におけるS/N比が低くなるのを防ぐことができる。
【0118】
(1)ないし(4)式と、近似関係:B/N≒S/Wを用いると、以下の(B)式が得られる。
【0119】
SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15 (B)
(B)式の左辺は「画像処理後の復元画像のS/N比」を表す。左辺の第2項が「画像復元処理により低下するS/N比」を表す。
【0120】
(B)式の左辺の値は、説明中の実施例では、上記の如く略20であり、(B)式の右辺の15よりも大きい。
【0121】
(2)式で与えられる「画像処理フィルタ」は、空間周波数領域におけるものである。
【0122】
勿論、このままの形で画像復元の画像処理に使用することもできるが、処理の規模が大きくなり、処理時間も長くなり易い。
【0123】
従って、ウィーナフィルタを利用する実際の画像処理では上記画像処理フィルタにフーリエ変換を行なって、実空間の変数を持つカーネルフィルタを作成するのが良い。
実施例結像光学系と実施例撮像素子を用いる場合のカーネルフィルタを図13に示す。
【0124】
このカーネルフィルタは「11行×11列」であり、11×11の画素配列に対して用いられる。
【0125】
即ち、実施例結像光学系では、撮像素子205の受光面上の点像の有効領域は、縦横共に11画素に広がっている。
【0126】
カーネルフィルタによる復元処理について簡単に説明する。
撮像素子205から出力される画像データの2次元配列において、I行J列のデータをIM(I,J)とする。
【0127】
カーネルフィルタのフィルタエレメントをK(i,j)とし、i=-5?+5、j=-5?+5とする。すると、中心のフィルタエレメントはK(0,0)となる。
【0128】
画像データにおける任意のデータ:IM(I,J)に対し、フィルタエレメント:K(0,0)を重ねる。
【0129】
そして、m=-5?+5、n=-5?+5として、データ:IM(I-m,J-n)とフィルタエレメント:K(i,j)の積を取る。
【0130】
こうして得られる11×11個の積の総和をもって、復元された画像データの「I行J列の復元画像データ」とするのである。
【0131】
復元画像データは、上記の演算を全ての画像データ:IM(I,J)について行うことにより得られる。
【0132】
上に説明した撮像システムの実施例は、被写体201の像を結像させる結像光学系202と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子205を有する。
【0133】
また、撮像素子205から出力された画像データに復元処理を施す画像処理部206を有する。
【0134】
結像光学系202により撮像素子205の受光面に形成される点像の有効領域が、撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなるように構成されている。
【0135】
そして、撮像素子205のS/N比:SNRと、1/2ナイキスト周波数における結像光学系202のMTF値:Mとは、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足している。
【0136】
また、結像光学系202のOTF:H(u,ν)と、撮像素子205のS/N比:SNRは、条件:
(6) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足している。
【0137】
さらに、撮像素子205から出力される画像のS/N比:SNRを基準として、画像処理部206で復元処理を施された後の画像のS/N比は、基準のSNRよりも、
20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}
以上には下がらない。
【0138】
また、上に実施の形態を説明した撮像システムは、結像光学系(撮像レンズユニット)202の被写界深度を拡張させる。
即ち、結像光学系202は、球面収差を意図的に付与されて、点像の有効領域の「被写体距離の変化にともなう変化」を低減させるように構成されている。
【0139】
結像光学系202は、意図的に球面収差を付与するための位相板203(実施例結像素子において位相板L4)を有する。
【0140】
即ち、上記撮像システムの実施例に用いられている実施例結像光学系202は以下の条件(A)を満足する。
【0141】
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
「M」は、撮像素子205の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値であり、SNRは撮像素子205のS/N比である。
【0142】
また、実施例結像光学系202は、実施例撮像素子205のS/N比:SNRに対して、OTF:H(u,ν)が、以下の条件(B)を満足する。
【0143】
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15 。
【0144】
実施例結像光学系202はまた、点像の有効領域の、被写体距離の変化にともなう変化を低減させるための位相板203(位相板L4)を有する。
【0145】
画像処理部206は、撮像素子205から出力される画像に対して、ウィーナフィルタを利用した復元処理を施す。
【0146】
このとき、ウィーナフィルタをフーリエ変換したカーネルフィルタを用いて復元処理を施すことができる。
【0147】
以下に「比較例」を挙げる。
【0148】
比較例においても、撮像素子としては、上に示した実施例撮像素子と同一仕様のものを用いる。即ち、撮像素子のSNRは30dBである。
【0149】
一方、比較例結像光学系としては、図14に示す構成のものを用いる。
【0150】
繁雑をさけるため、レンズには、図2におけると同一の符号を付した。
比較例結像光学系も、7枚構成で、符号L1?L3、L5?L7はレンズであり、符号L4が位相板である。符号ISは像面である。
【0151】
位相板L4の像側面が非球面となっている。
【0152】
比較例結像光学系のデータを表1に倣って表3に示す。
【0153】
【表3】

【0154】
位相板L4の像側面の非球面データを表2に倣って表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
また、図15に横収差図、図16に縦収差図、図17に像面湾曲とディストーションを示す。縦収差図に見られるように、球面収差は2.8mm程度である。
【0157】
図18、図19、図20に、比較例のMTFを被写体距離:370mm、400mm、430mmについて示す。
【0158】
図21には、上記撮像素子205の1/2ナイキスト周波数(33.8cycle/mm)における、比較例結像光学系の「TFMTF」を図9に倣って示す。
【0159】
図21に示されたように、比較例結像光学系では、ピント位置を調整しても1/2ナイキスト周波数におけるMTF値は0.15以下である。
【0160】
即ち、比較例結像光学系は、条件(A)の左辺の値が30より大きく、条件(A)を満足しない。
【0161】
実施例の場合と同様にして画像処理フィルタを設計すると、図22に示す特性を持つ画像処理フィルタができる。
この画像処理フィルタから求められるGの値は約19であり、最終的に得られる画像処理後の復元画像のS/N比は約11dBとなる。
【0162】
これは極めてノイズ成分が大きく実用的ではない画像になってしまう。
【0163】
実際に画像処理された復元画像を図22と図23に示す。
【0164】
図22は、上述した実施例の撮像システムにより得られた復元画像であり、図23は比較例の撮像システムにより得られた復元画像である。被写体は同一である。
【0165】
両者を比較して明らかなように、比較例で得られた復元画像は、S/N比が小さく(ノイズ成分が大きく)、見づらい画像となっている。
【0166】
実施例で得られた復元画像はS/N比が大きく、ノイズ成分の目立たない良質の画像となっている。
【0167】
若干付言する。
この発明の基本とするところは、撮像素子に対して、結像光学系が条件(A)を満足することである。
【0168】
結像光学系には、撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域が「撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさ」となることが求められる。
【0169】
ここで、結像光学系は、当初から良質な画像を結像する性能が求められるわけではなく、撮像素子が読取った画像が修正されることを前提として設計・製造される。
【0170】
換言すれば、結像光学系の性能は上の要件を満足すれば、性能が高くなくとも良い。
【0171】
従って、この発明の撮像システムに用いられる結像光学系は、安価かつ容易に製造することができる。
【0172】
上に、実施例として説明した撮像システムでは、結像光学系として「意図的に球面収差を増大」させたものが用いられている。
【0173】
球面収差を意図的に増大させる意義は、以下の点にある。
即ち、球面収差が増大させられた結像光学系では、撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域は、被写体距離がピントのあった状態から少々ずれても殆ど変化しない。
【0174】
従って、ウィーナフィルタを利用して復元処理を行う際に、被写体距離が「ピントのあった状態」からずれていても1種類の画像処理フィルタで復元処理を行うことができる。
【0175】
即ち、復元を行う画像処理が簡素となる。
【0176】
この発明の撮像システムを製造するには、以下の工程に依れば良い。
【0177】
(a)使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された撮像素子を用意する工程。
【0178】
(b)該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の「1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:M」とが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程。
【0179】
(c)撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程。
【0180】
(d)前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程。
【符号の説明】
【0181】
201 被写体
202 撮像レンズユニット(結像光学系)
203 位相板
204 絞り
205 撮像素子
206 画像処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0182】
【特許文献1】特許第4377404号公報
【特許文献2】特開2010-213274号公報
【非特許文献】
【0183】
【非特許文献1】田村秀行著「コンピュータ画像処理」
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (削除)
【請求項2】
被写体の像を結像させる結像光学系と、
該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、
該撮像素子から出力された画像データに復元処理を施す画像処理部と、を有し、
前記結像光学系により前記撮像素子の受光面に形成される点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなるように構成され、
前記撮像素子のS/N比:SNRと、該撮像素子の1/2ナイキスト周波数における前記結像光学系のMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足し、
前記結像光学系のOTF:H(u,ν)と、前記撮像素子のS/N比:SNRが、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足することを特徴とする撮像システム。
【請求項3】
請求項2記載の撮像システムにおいて、
撮像素子から出力される画像のS/N比:SNRを基準として、
画像処理部で復元処理を施された後の画像のS/N比が、前記基準のSNRよりも
20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}
以上には下がらないことを特徴とする撮像システム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の撮像システムにおいて、
結像光学系の被写界深度を拡張させることを特徴とする撮像システム。
【請求項5】
請求項4記載の撮像システムにおいて、
結像光学系が、球面収差を意図的に付与されて、点像の有効領域の、被写体距離の変化にともなう変化を低減させるものであることを特徴とする撮像システム。
【請求項6】
請求項5記載の撮像システムにおいて、
結像光学系が、意図的に球面収差を付与するための位相板を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項7】
請求項2ないし6の任意の1に記載の撮像システムの結像光学系であって、
撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mが、前記撮像素子のS/N比:SNRに対して、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足することを特徴とする撮像システムの結像光学系。
【請求項8】
請求項7記載の撮像システムの結像光学系において、
撮像素子のS/N比:SNRに対して、OTF:H(u,ν)が、以下の条件:
(B) SNR-20log_(10){ΣΣH^(*)(u,ν)/[|H(u,ν)|^(2)+{10^(-SNR/10)}]}≧15
を満足することを特徴とする撮像システムの結像光学系。
【請求項9】
請求項7または8記載の撮像システムの結像光学系において、
球面収差を意図的に付与されて、点像の有効領域の、被写体距離の変化にともなう変化を低減させるための位相板を有することを特徴とする撮像システムの結像光学系。
【請求項10】
請求項2ないし6の任意の1に記載の撮像システムにおいて、
画像処理部として、撮像素子から出力される画像に対して、ウィーナフィルタを利用した復元処理を施すものを用いることを特徴とする撮像システム。
【請求項11】
請求項10記載の撮像システムにおいて、
画像処理部として、ウィーナフィルタをフーリエ変換したカーネルフィルタを用いて復元処理を施すものを用いることを特徴とする撮像システム。
【請求項12】
被写体の像を結像させる結像光学系と、該結像光学系から入射する光を受光する撮像素子と、該撮像素子から出力された画像に復元処理を施す画像処理部と、を有する撮像システムを製造する方法であって、
使用環境に応じたS/N比:SNRを特定された撮像素子を用意する工程と、
該撮像素子の受光面に投影された点像の有効領域が前記撮像素子の受光画素の3画素以上に亘る大きさとなり、前記SNRと、前記撮像素子の1/2ナイキスト周波数におけるMTF値:Mとが、条件:
(A) SNR≧20log_(10)(5/M)
を満足するようにした結像光学系を用意する工程と、
前記撮像素子から出力された画像に、前記結像光学系のOTFに基づいた復元処理を施す画像処理部を用意する工程と、
前記撮像素子と結像光学系と画像処理部を組み合わせる工程と、を有することを特徴とする撮像システムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-09 
出願番号 特願2013-130922(P2013-130922)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H04N)
P 1 651・ 113- YAA (H04N)
P 1 651・ 851- YAA (H04N)
P 1 651・ 857- YAA (H04N)
P 1 651・ 537- YAA (H04N)
P 1 651・ 121- YAA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高野 美帆子  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 樫本 剛
小池 正彦
登録日 2017-10-13 
登録番号 特許第6221399号(P6221399)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 撮像システムおよび結像光学系および撮像システムの製造方法  
代理人 樺山 亨  
代理人 本多 章悟  
代理人 工藤 修一  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 本多 章悟  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 樺山 亨  
代理人 工藤 修一  
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