• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
管理番号 1347680
異議申立番号 異議2018-700809  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-04 
確定日 2018-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6305388号発明「ボトムエントリコネクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6305388号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6305388号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年11月26日に出願され、平成30年3月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年10月4日に特許異議申立人石井悠太(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6305388号の請求項1?4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明1」?「本件発明4」という。)。

「【請求項1】
基板の一方面に配置する第1のハウジングと、
前記第1のハウジングに対して変位可能な1つの第2のハウジングと、
前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとを繋ぐ端子とを備えており、
前記第2のハウジングは、前記一方面とは反対側の前記基板の他方面の側からピン状の接続対象物を挿入する挿入孔を有するボトムエントリコネクタにおいて、
前記端子は、
前記第1のハウジングに固定する固定片と、
前記一方面の側で前記第2のハウジングに固定する基部と、
前記固定片と前記基部とを繋ぐ可動片と、
前記一方面の側で前記基部から伸長する弾性腕と、
前記一方面の側で前記弾性腕と繋がり前記ピン状の接続対象物と導通接触する接触部を有しており、
前記第2のハウジングは、
前記一方面の側で前記弾性腕と前記接触部とを収容する端子保持部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体と一体に設けられ、前記ハウジング本体から前記基板に設けた貫通孔を通じて前記基板の前記他方面に突出する突出部とを有しており、前記突出部は、
前記貫通孔の孔軸方向に沿って伸長する前記ピン状の接続対象物を挿通する前記挿入孔を有しており、前記貫通孔の内部に位置する外周面が前記貫通孔との間に前記第2のハウジングの可動間隙となる隙間を形成するように括れ形状に形成されている挿通部と、
前記他方面に突出する端面に前記挿入孔と連通する前記ピン状の接続対象物の挿入ガイド面を有しており、前記挿通部に対して突出する膨出部とを有することを特徴とするボトムエントリコネクタ。
【請求項2】
前記突出部が前記第2のハウジングに取付けた突出部材である請求項1記載のボトムエントリコネクタ。
【請求項3】
前記膨出部は、前記貫通孔を前記他方面の側から覆い隠す大きさで形成されている請求項1または請求項2記載のボトムエントリコネクタ。
【請求項4】
前記膨出部は、前記挿通部が前記貫通孔の孔軸交差方向に変位した状態で、前記貫通孔を前記他方面の側で覆い隠す大きさで形成されている請求項1?請求項3何れか1項記載のボトムエントリコネクタ。」

第3 異議申立理由の概要
異議申立人は、証拠として以下の甲第1?2号証を提出し、請求項1?4の特許に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?4に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。

甲第1号証:特開2014-165066号公報
甲第2号証:特開2014-154452号公報

第4 文献の記載
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、「コネクタ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0011】
このコネクタは、互いに接続される一対の基板のうち、一方の基板1に実装され、接続対象物としての複数の相手側端子2と接続されるようになっている。相手側端子2は、絶縁部材3によって保持されたピンヘッダーからなり、他方の基板(図示せず)に取り付けられる。
【0012】
本実施形態のコネクタは、相手側端子2が下方から挿入される固定ハウジング10と、固定ハウジング10に対して前後方向(X方向)、幅方向(Y方向)及び上下方向(Z方向)に移動自在に設けられた可動ハウジング20と、一端側を可動ハウジング20に保持され、他端側を固定ハウジング10に保持された複数の端子30とから構成され、各端子30は互いに固定ハウジング10の幅方向に間隔をおいて配列されている。」

「【0014】
可動ハウジング20は、合成樹脂の成型品からなり、前後方向の寸法に対して幅方向の寸法が長い直方体状に形成され、固定ハウジング10内に前後方向、幅方向及び上下方向に移動自在に配置されている。可動ハウジング20には、各端子30の一端側をそれぞれ保持する複数の端子保持孔21が設けられ、各端子30の一端側は端子保持孔21内に圧入することにより可動ハウジング20に固定されるようになっている。端子保持孔21の底面には相手側端子2が挿入される複数の挿入口21aが設けられ、挿入口21aは下方に向かって開口部が徐々に広がるテーパ状に形成されている。
【0015】
各端子30は、金属板の打ち抜き加工及び折り曲げ加工によって形成され、互いに幅方向に間隔をおいて配列されている。端子30は、相手側端子2と導通する接触部31と、基板1に接続される基板接続部32と、固定ハウジング10の前後方向及び幅方向に弾性変形する第1の可動部33と、固定ハウジング10の上下方向に弾性変形する第2及び第3の可動部34,35とからなる。この場合、第2の可動部34は第1の可動部33と接触部31との間に設けられ、第3の可動部34は、第1の可動部33と基板接続部32との間に設けられている。また、第1の可動部33は、第2及び第3の可動部34,35と板厚方向が直交するように形成されている。
【0016】
接触部31は、端子30の一端側に設けられ、可動ハウジング20に保持されるようになっている。接触部31は、前後方向に対向する一対の第1及び第2の接触片31a,31bと、各接触片31a,31bを連結するコ字状の連結部31cとを有し、各接触片31a,31bが相手側端子2に前後方向から圧接するようになっている。第1の接触片31aは、第2の接触片31bに対向するように略平板状に形成され、その幅方向両端には可動ハウジング20の端子保持孔21に係止することにより可動ハウジング20に固定される係止部31dが設けられている。また、第1の接触片31aは、第2の接触片31bに向かって山側に屈曲する部分を上下二箇所に有し、これらの屈曲部分には相手側端子2と接触する二つの第1の接点部31a-1が互いに上下方向に間隔をおいて設けられている。第2の接触片31bは、上端側から下端側に向かって第1の接触片31aに接近するとともに、下端側が第1の接触片31aの反対側に屈曲するように形成され、第1の接触片31aに最も接近する部分には相手側端子2と接触する第2の接点部31b-1が設けられている。この場合、第2の接点部31b-1は、各第1の接点部31a-1の間に位置するように設けられている。連結部31cは、前面部、背面部及び幅方向一方の側面部からなり、内部に相手側端子2を上下方向に挿通可能に形成されている。この場合、第1の接触片31aは連結部31cの背面部から下方に延出し、第2の接触片31bは連結部31cの前面部から下方に延出している。
【0017】
基板接続部32は、端子30の他端側に設けられ、固定ハウジング10に保持されるようになっている。基板接続部32は、固定ハウジング10に固定される固定部32aと、基板1に半田付けされる接続部32bとからなる。固定部32aは上下方向に延びるように平板状に形成され、その下端から平板状の接続部32bが前方に延出するように形成されている。また、基板接続部32には、固定部32a及び接続部32bに亘って延びる開口部32cが設けられ、固定部32a側の開口部32c内の幅方向両端には、図15に示すように固定ハウジング10の端子保持部14の溝14aに係止することにより固定ハウジング10に固定される係止部32dが設けられている。また、接続部32bの後端側には、接続部32b側の開口部32cによって前後方向に延びる切り欠き部32eが形成されている。」

「【0021】
以上のように構成されたコネクタは、基板1の上面に配置され、固定ハウジング10の各固定部材15及び各端子30の基板接続部32を基板1に半田付けされる。その際、基板接続部32の接続部32bの後端側は、基板1との接触面の縁部が切り欠き部32eによって略コ字状をなすように形成されていることから、半田が接続部32bの外周縁のみならず切り欠き部32e内の縁部にも回り込み、基板接続部32と基板1との半田付け部分が十分に確保される。また、基板1には、可動ハウジング20の下端側を挿通するための孔1aが設けられている。
【0022】
次に、前記コネクタに相手側端子2を接続する場合は、図17に示すように各相手側端子2を基板1の下方から可動ハウジング20の挿入口21aに挿入することにより、各相手側端子2が可動ハウジング20内の各端子30に接続される。その際、相手側端子2が可動ハウジング20内に挿入されると、相手側端子2が端子30の接触部31の各接触片31a,31bを押し広げながら各接触片31a,31bに挟持され、各接触片31a,31bが相手側端子2に圧接することにより、相手側端子2と端子30とが接続される。
【0023】
前記接続状態において、例えば一方の基板1または他方の基板の撓みや振動により基板同士が互いに位置ずれを生ずると、各端子30の可動部33,34,35の弾性変形によって可動ハウジング20の移動が許容され、基板同士の位置ずれが吸収される。即ち、基板同士が前後方向(X方向)に位置ずれを生ずると、第1の可動部33が前後方向に弾性変形する。その際、接触部31では、図20に示すように、各接触片31a,31bによって挟持された相手側端子2が、二つの第1の接点部31a-1と、各第1の接点部31a-1の間に位置する一つの第2の接点部31b-1に三点で圧接していることから、各接点部31a-1,13b-2を中心とする相手側端子2の回動(図20中実線矢印方向の回動)が抑制される。また、基板同士が幅方向(Y方向)に位置ずれを生ずると、第1の可動部33が幅方向に弾性変形し、基板同士が上下方向(Z方向)に位置ずれを生ずると、第2の可動部34及び第3の可動部35がそれぞれ上下方向に弾性変形する。」

(2)段落【0014】の記載及び図1?2の図示内容を参照すると、可動ハウジング20は1つであると認められる。また、端子30は、一端側を可動ハウジング20に保持され、他端側を固定ハウジング10に保持されるものであるから(段落【0012】)、各ハウジングを繋ぐものであるといえる。

(3)図18を参照すると、次の事項が看取できる。
ア 端子保持孔21の底面と、相手側端子2が挿入されるテーパ状に形成された挿入口21aとの間に、相手側端子2が挿入される挿入孔(図18において、可動ハウジング20のうち相手側端子2に最も近接した部分)が形成されていること。
イ 可動ハウジング20の上側部分が、基板1の上面の側で端子30の第1及び第2の接触片31a,31bと第1及び第2の接点部31a-1,31b-1とを収容する端子保持孔21を有していること。
ウ 可動ハウジング20の下側部分が、基板1に設けた孔1aを通じて基板1の下面に突出していること。
エ 可動ハウジング20の下側部分のうち基板1の孔1aの内部に位置する部分の外周面が、孔1aとの間に隙間を形成していること。

そして、上記エに関して、段落【0012】の記載に鑑みれば、当該隙間は可動ハウジング20の移動を自在にするために設けられた隙間であると認められるから、可動ハウジング20の可動間隙であるといえる。

(4)上記の記載事項、認定事項及び図面の記載を総合し、本件発明1の記載振りに則って整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「基板1の上面に配置する固定ハウジング10と、
固定ハウジング10に対して移動自在な1つの可動ハウジング20と、
固定ハウジング10と可動ハウジング20とを繋ぐ端子30とを備えており、
可動ハウジング20は、上面とは反対側の基板1の下面の側からピンヘッダーからなる相手側端子2を挿入する挿入孔を有するコネクタにおいて、
端子30は、
固定ハウジング10に固定する固定部32aと、
基板1の上面の側で可動ハウジング20に固定する接触部31と、
固定部32aと接触部31とを繋ぐ第1?3可動部33?35と、
基板1の上面の側で接触部31から延出する第1及び第2の接触片31a,31bと、
基板1の上面の側で第1及び第2の接触片31a,31bと繋がり相手側端子2と導通接触する第1及び第2の接点部31a-1,31b-1を有しており、
可動ハウジング20は、
基板1の上面の側で第1及び第2の接触片31a,31bと第1及び第2の接点部31a-1,31b-1とを収容する端子保持孔21を有する上側部分と、
当該上側部分と一体に設けられ、基板1に設けた孔1aを通じて基板1の下面に突出する下側部分とを有しており、当該下側部分は、
孔1aの孔軸方向に沿って伸長するピンヘッダーからなる相手側端子2を挿通する挿入孔を有しており、孔1aの内部に位置する外周面が孔1aとの間に可動ハウジング20の可動間隙となる隙間を形成するように形成され、
基板1の下面に突出する端面に挿入孔と連通するテーパ状に形成された挿入口21aを有するコネクタ。」

2 甲第2号証
甲第2号証には、「コネクタ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0019】
コネクタ100は、図1に示すように、基板110の上方に配置されたスライダー1及び雌コネクタ(第2コネクタ)2と、基板110の下方に配置されたガイドコネクタ(第1コネクタ)3とを備えている。スライダー1は、雌コネクタ2に対して上下方向に移動可能に取り付けられる(図6参照)。また、基板110には、略矩形状の挿入孔110aが形成されている。挿入孔110aには、ガイドコネクタ(第1コネクタ)3の上端部が配置されている。」

「【0024】
また、雌ハウジング30の底壁32には、図2(b)に示すように、上下方向に貫通した貫通孔32aが形成されている。貫通孔32aには、基板110を貫通したコンタクト130が下方から挿入される。貫通孔32aは、径が一定の上領域と、径が変化した下領域とを有する。下領域は、上領域から離れるにつれて径が大きくなるテーパ状に形成されている。このような構成から、コンタクト130を下方から貫通孔32aの先にある収容室31内へ挿入しやすくなっている。」

「【0028】
(ガイドコネクタ)
ガイドコネクタ3は、図2(c)及び図3に示すように、前後方向に対向した第1可動体70及び第2可動体80と、これらを収容する略箱状のハウジング(第1ハウジング)90とを有する。第1可動体70、第2可動体80及びハウジング90は、絶縁性の樹脂で形成されている。また、図3に示すように、第1可動体70及び第2可動体80の間には、2つのバネ(付勢部材)120が配置されている。一方のバネ(付勢部材)120はガイドコネクタ3の右端部に配置され、他方のバネ(付勢部材)120はガイドコネクタ3の左端部に配置されている。第1可動体70及び第2可動体80は、略同じ構成であり、前後対称となるように配置されている。なお、以下では、主に第1可動体70について説明し、第2可動体80の説明を省略することがある。
【0029】<第1可動体、第2可動体>
第1可動体70及び第2可動体80は、図3に示すように、互いに対向する面と反対側の側部が3段(上段、中段、下段)の階段形状となっている。
【0030】
上段71,81の右端部及び左端部には、上方に向かって突出した突出部71a,71b,81a,81bが形成されている。第1可動体70及び第2可動体80をハウジング90内に収容すると、図4(a)に示すように、上段71,81は、後述する近接状態において、ハウジング90外に配置される。また、この状態で、ガイドコネクタ3を基板110に取り付けると、図2(c)に示すように、上段71,81は基板110の挿入孔110a内に配置される。また、突出部71a,71b,81a,81bの上端は、上下方向について基板110の上面より上方に位置している。
【0031】
また、図3に示すように、下段73の左右方向に関する中央部には、凹部が形成されている。これにより、下段73の右端部73a及び左端部73bは中央部73cより上下方向の高さが高い。さらに、下段73,83の互いに対向する内側部には凹部73d,83dが形成されている。そして、2つの凹部73d,83dによりバネ120を収容可能な空間が形成される。
【0032】
バネ120は、前後方向に弾性変形し、第1可動体70及び第2可動体80に対して互いに離隔する方向に付勢力を与える。これにより、第1可動体70及び第2可動体80は互いに離隔する方向へ移動しようとするが、ハウジング90に収容された状態では(図4参照)、ハウジング90によってその移動が規制され、近接状態(図4、図5(a)参照)から近接状態におけるよりも互いに離隔した離隔状態(図5(b))に遷移可能である。なお、図2(c)及び図3,4は近接状態における図である。
【0033】
近接状態では、図4及び図5(a)に示すように、第1可動体70及び第2可動体80の対向面が略接している。この状態では、第1可動体70及び第2可動体80の対向面により、5つのコンタクト挿入孔(3A,3B等)が画定される。コンタクト挿入孔には、図2(c)に示すように、上下方向に延在したコンタクト130が下方から挿入される。
【0034】
コンタクト挿入孔3Aは、径がテーパ状に変化したテーパ領域3tと、その上方において径が一定の上端領域3uとを有している(図2(c)参照)。テーパ領域3tは、上端領域3uに近づくにつれて径が小さくなっている。そして、テーパ領域3tの上端及び上端領域3uは、コンタクト挿入孔3Aにおいて最小径となっており、これはコンタクト130の径以上の大きさである。
【0035】
コンタクト130がコンタクト挿入孔3Aへ下方から挿入されると、第1可動体70及び第2可動体80はコンタクト130を挟んで互いに反対側に配置される(図6(b)参照)。
【0036】
一方、離隔状態では、図5(b)に示すように、近接状態におけるよりもバネ120が前後方向に伸長することにより、第1可動体70及び第2可動体80が離隔している。
【0037】<ハウジング>
ハウジング90は、図3に示すように、底壁91と、右壁92と、左壁93と、上壁94とを有している。また、これらの内側には、第1可動体70及び第2可動体80を収容可能な収容空間が形成されている。右壁92及び左壁93には、厚み方向(左右方向)に貫通した貫通孔92a,93aが形成されている。また、右壁92及び上壁94の間には隙間s1が形成され、左壁93及び上壁94の間にも隙間s2が形成されている。隙間s1,s2には、補強タブ(内挿部材)140,150が挿入される(図4参照)。
【0038】
底壁91には、厚み方向(上下方向)に貫通した5つのガイド孔(91a,91b等)が左右方向に並んで形成されている。ガイド孔91a,91bは、図2(c)に示すように、下端に近付くにつれて径が大きくなっている(図4(b)参照)。
【0039】
上壁94には、図3に示すように、第1可動体70及び第2可動体80が嵌合可能な貫通孔94Aが形成されている。貫通孔94Aを画定する上壁94の内周部では、右端部及び左端部が前後方向に凹んでいる。このため、対向する内周部の離間距離(前後方向についての離間距離)は、中央部より右端部及び左端部の方が長い。
【0040】
第1可動体70及び第2可動体80をハウジング90に収容すると、貫通孔94Aの右端部94a及び左端部94b(内周部の離間距離が長い部分)には、第1可動体70の下段73の右端部73a及び左端部73b(角部が形成された部分)と第2可動体80の下段83の右端部及び左端部が嵌まる。また、貫通孔94Aの中央部94c(内周部の離間距離が短い部分)には、第1可動体70の中央部73c(凹部が形成された部分)及び第2可動体80の中央部が嵌まる(図5参照)。」

「【0042】
近接状態では、図5(a)に示すように、第1可動体70の下段73の左右両端部及び第2可動体80の下段83の左右両端部が、ハウジング90の上壁94の内周面に接している。これにより、第1可動体70及び第2可動体80がバネ120の付勢力によって互いに離隔する方向へ移動することを規制している。
【0043】
一方、離隔状態では、図5(b)に示すように、近接状態におけるよりも第1可動体70及び第2可動体80が下方へ移動し、第1可動体70の下段73及び第2可動体80の下段83がハウジング90の上壁94と底壁91との間の空間に配置されている。この状態では、下段73,83が上壁94と接していないため、下段73,83の規制が解除されている。これにより、バネ120が近接状態におけるよりも伸長することにより、第1可動体70及び第2可動体80が近接状態におけるよりも互いに離隔している。
【0044】
なお、この状態では、図6(c)に示すように、第1可動体70の中段72及び第2可動体80の中段82が、上壁94の内周面(図5(b)に示す上壁94の中央部であり、対向する内周部の距離が短い部分)に接している。このため、第1可動体70及び第2可動体80は、所定の距離だけ離隔した状態で互いに離隔する方向への移動が規制されている。」

「【0046】
先ず、図6(a)に示すように、基板110に雌コネクタ2をハンダ接合する。このとき、スライダー1は雌コネクタ2の上部を覆うように配置され、ピン20が雌コンタクト40の前壁部51の突出部と曲折部42との間に挿入されていない(半嵌合)。また、基板110の下面にはガイドコネクタ3が固定され、第1可動体70及び第2可動体80が近接状態にある。
【0047】
次に、コンタクト130をガイドコネクタ3及び雌コネクタ2内に挿入する(図6(b)及び図7(a)参照)。コンタクト130は、下方からガイドコネクタ3のコンタクト挿入孔3Aを通過し、基板110を貫通して雌ハウジング30内に挿入される。コンタクト130が雌コンタクト40の後壁部52の突出部と曲折部42との間に挿入され、後壁部52及び曲折部42の少なくとも一方に接触することにより、これらの電気的接続が達成される。このとき、基板110の挿入孔110aでは、コンタクト130と第1可動体70の上段71及び第2可動体80の上段81とが近接している。また、図7(a)に示すように、スライダー1の右壁11は、下方にあるガイドコネクタ3の突出部81aと上下方向に離隔している。同様に、スライダー1の左壁12も、下方にあるガイドコネクタ3の突出部と上下方向に離隔している(図示省略)。
【0048】
この状態からスライダー1を押し下げると(完全嵌合)、図6(c)及び図7(b)に示すように、スライダー1の右壁11がガイドコネクタ3の突出部71a,81aを下方向に押圧する。これにより、ガイドコネクタ3が押し下げられ、雌コネクタ2から遠ざかる。なお、図7(b)に示す左壁12も同様にガイドコネクタ3の突出部を下方向に押圧している。これにより、図6(c)に示すように、第1可動体70の下段73及び第2可動体80の下段83が下方に移動することで、下段73,83の外側面が上壁94に接しないようになる。その結果、バネ120が伸長し、第1可動体70及び第2可動体80が互いに離隔する方向に移動することによりコンタクト130から遠ざかる。その後、第1可動体70の中段72及び第2可動体80の中段82が上壁94に接することにより、第1可動体70及び第2可動体80の移動が規制される。
【0049】
また、スライダー1を押し下げることにより、図6(c)に示すように、ピン20が雌コンタクト40の前壁部51の突出部と曲折部42との間に配置される。これにより、曲折部42がコンタクト130に向かって変位するため、雌コンタクト40とコンタクト130との接触性を向上させることができる。
【0050】
以上に述べたように、本実施形態のコネクタ100によると以下の効果を奏する。コンタクト130と雌コンタクト40とが電気的に接続された状態において、第1可動体70及び第2可動体80を離隔状態にすることにより、第1可動体70及び第2可動体80をコンタクト130から遠ざけることができる。これにより、ハウジング90が振動し、また、基板110が振動することで共振が起こっても、この振動がコンタクト130に伝わるのを防止できるため、コンタクト130の破損を防止できる。」

第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「基板1」、「基板1の上面」、「固定ハウジング10」、「移動自在」、「可動ハウジング20」、「端子30」、「基板1の下面」、「ピンヘッダーからなる相手側端子2」、「コネクタ」、「固定部32a」、「接触部31」、「第1?3可動部33?35」、「延出する」、「第1及び第2の接触片31a,31b」、「第1及び第2の接点部31a-1,31b-1」、「端子保持孔21」、可動ハウジング20の「上側部分」、「孔1a」、可動ハウジング20の「下側部分」、「挿入孔」及び「テーパ状に形成された挿入口21a」は、その技術的意義及び機能からみて、本件発明1の「基板」、「基板の一方面」、「第1のハウジング」、「変位可能」、「第2のハウジング」、「端子」、「基板の他方面」、「ピン状の接続対象物」、「ボトムエントリコネクタ」、「固定片」、「基部」、「可動片」、「伸長する」、「弾性腕」、「接触部」、「端子保持部」、「ハウジング本体」、「貫通孔」、「突出部」、「挿入孔」及び「ピン状の接続対象物の挿入ガイド面」にそれぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「孔1aの内部に位置する外周面が孔1aとの間に可動ハウジング20の可動間隙となる隙間を形成するように形成され、基板1の下面に突出する端面に挿入孔と連通するテーパ状に形成された挿入口21aを有する」という「可動ハウジング20の下側部分」に係る構成は、本件発明1の「前記貫通孔の内部に位置する外周面が前記貫通孔との間に前記第2のハウジングの可動間隙となる隙間を形成するように括れ形状に形成されている挿通部と、前記他方面に突出する端面に前記挿入孔と連通する前記ピン状の接続対象物の挿入ガイド面を有しており、前記挿通部に対して突出する膨出部とを有する」という「突出部」に係る構成と、「前記貫通孔の内部に位置する外周面が前記貫通孔との間に前記第2のハウジングの可動間隙となる隙間を形成するように形成された部分と、前記他方面に突出する端面に前記挿入孔と連通する前記ピン状の接続対象物の挿入ガイド面を有する部分とを有する」構成である限りにおいて一致する。

イ そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「基板の一方面に配置する第1のハウジングと、
前記第1のハウジングに対して変位可能な1つの第2のハウジングと、
前記第1のハウジングと前記第2のハウジングとを繋ぐ端子とを備えており、
前記第2のハウジングは、前記一方面とは反対側の前記基板の他方面の側からピン状の接続対象物を挿入する挿入孔を有するボトムエントリコネクタにおいて、
前記端子は、
前記第1のハウジングに固定する固定片と、
前記一方面の側で前記第2のハウジングに固定する基部と、
前記固定片と前記基部とを繋ぐ可動片と、
前記一方面の側で前記基部から伸長する弾性腕と、
前記一方面の側で前記弾性腕と繋がり前記ピン状の接続対象物と導通接触する接触部を有しており、
前記第2のハウジングは、
前記一方面の側で前記弾性腕と前記接触部とを収容する端子保持部を有するハウジング本体と、
前記ハウジング本体と一体に設けられ、前記ハウジング本体から前記基板に設けた貫通孔を通じて前記基板の前記他方面に突出する突出部とを有しており、前記突出部は、
前記貫通孔の孔軸方向に沿って伸長する前記ピン状の接続対象物を挿通する前記挿入孔を有しており、前記貫通孔の内部に位置する外周面が前記貫通孔との間に前記第2のハウジングの可動間隙となる隙間を形成するように形成された部分と、
前記他方面に突出する端面に前記挿入孔と連通する前記ピン状の接続対象物の挿入ガイド面を有する部分とを有するボトムエントリコネクタ。」

<相違点>
本件発明1は、「突出部」の構成に関し、「前記第2のハウジングの可動間隙となる隙間を形成するように形成された部分」が「括れ形状に形成されている挿通部」として形成され、「挿入ガイド面を有する部分」が「挿通部に対して突出する膨出部」として形成されているのに対し、甲1発明の可動ハウジング20の下側部分は、挿入口21を有する部分が挿通部に対して突出する膨出部として形成されておらず、それゆえ可動間隙となる隙間を形成する部分が括れ形状に形成されているとはいえない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。

ア 甲第2号証には、基板110の上方に配置されたスライダー1及び雌コネクタ2と、基板110の下方に配置されたガイドコネクタ3とを備え、雌コネクタ2の雌ハウジング30内に基板110の下方の側からコンタクト130を挿入する貫通孔32aを有するとともに、ガイドコネクタ3が第1可動体70、第2可動体80及びハウジング90を有するコネクタ100において、第1可動体70及び第2可動体80に、基板110に設けた挿入孔110aの孔軸方向に沿ってコンタクト130を挿入するコンタクト挿入孔3Aを設け、その上段71,81を、近接状態において基板110の挿入孔110aとの間に隙間を形成する形状に形成するとともに(段落【0030】、図2(c)、図6(a)参照。)、コンタクト130を挿入するためのテーパ領域3tを有する中段72,82及び下段73,83を、上段71,81に対して突出する形状に形成すること(図2(c)、図5?6参照。)が記載されている(以下、「甲2記載事項」という。)。

イ 甲2記載事項におけるガイドコネクタ3は、それ自体が雌コンタクト40やコンタクト130を保持するためのものではなく、コンタクト130を雌ハウジング30の貫通孔32aへとガイドするためのものである。そして、ガイドコネクタ3の第1可動体70及び第2可動体80は、近接状態においてコンタクト130の挿入をガイドした後(図6(a),(b)参照。)、スライダー1の押し下げによりバネ120の作用で互いに離隔する方向に移動し(図6(c)参照。)、コネクタ100の使用時には離隔状態に維持されるものと認められ、これにより、「ハウジング90が振動し、また、基板110が振動することで共振が起こっても、この振動がコンタクト130に伝わるのを防止できるため、コンタクト130の破損を防止できる。」(段落【0050】参照。)という効果を奏する。
これに対し、甲1発明の可動ハウジング20は、端子30を保持するものであり、相手側端子2と端子30の「接続状態において、例えば一方の基板1または他方の基板の撓みや振動により基板同士が互いに位置ずれを生ずると、各端子30の可動部33,34,35の弾性変形によって可動ハウジング20の移動が許容され、基板同士の位置ずれが吸収される。」(段落【0023】参照。)という効果を奏するものである。
してみると、甲1発明の可動ハウジング20の下側部分と甲2記載事項における第1可動体70及び第2可動体80は、その技術的意義及び機能が異なるものであるから、両者を相当する部材とみなすことはできない。加えて、第1可動体70及び第2可動体80の上段71,81と、基板110の挿入孔110aとの間の隙間は、第1可動体70及び第2可動体80の可動を許容するためのものでもない。

ウ 甲2記載事項において、第1可動体70及び第2可動体80の中段72,82及び下段73,83は、基板110を挿通する上段71,81に対して突出する形状に形成されているが、これらはハウジング90の上壁94に接することで第1可動体70及び第2可動体80の離隔方向への移動を規制するために形成されたものであって(段落【0042】-【0044】、【0048】、図5?6参照。)、コンタクト130を挿入するためのテーパ領域3tを大きく形成することを目的として形成されたものではない。それゆえ、甲2記載事項における第1可動体70及び第2可動体80は、ハウジング90と一体不可分の構成であると認められる。

エ 上述のイ、ウに鑑みれば、たとえ甲1発明に甲2記載事項を適用するとしても、当業者であれば、第1可動体70、第2可動体80及びハウジング90からなるガイドコネクタ3を、基板1の下面にそのまま付加する構成を採用すると考えるのが自然であるから、上記相違点に係る本件発明1の構成に至るものではない。

オ 異議申立人は、甲1発明の可動ハウジング20の「下側部分」は甲2記載事項における「第1可動体70及び第2可動体80」に相当するとした上で(特許異議申立書27ページ14行?16行参照。)、甲第1号証の段落【0014】の記載及び甲第2号証の段落【0024】、【0034】記載、並びに特開2014-229407号公報、特開平8-293349号公報、実願平2-43306号(実開平-2484号)のマイクロフィルム等の記載から、「テーパ状のガイド面の入り口を広くして挿入を容易にすることは、ごくありふれた一般的な技術的課題」であり、このような一般的な課題を解決するために甲1発明に甲2記載事項を適用することは当業者にとって容易である旨主張する(特許異議申立書28ページ5行?15行参照。)。
しかしながら、甲1発明の可動ハウジング20の「下側部分」と甲2記載事項における「第1可動体70及び第2可動体80」が技術的意義及び機能が異なるものであることは上記のイで説示したとおりである。
また、本件発明1の「膨出部」は単に「ピン状の接続対象物」の挿入を容易にすることだけを目的としたものではなく、「第2のハウジングの可動間隙となる隙間」を覆うことで「ピン状の接続対象物」が当該隙間に誤って差し込まれて噛み込んでしまうことを抑える効果も奏することから(本件特許の明細書の段落【0006】、【0010】、【0034】参照。)、仮に「テーパ状のガイド面の入り口を広くして挿入を容易にすること」が「ごくありふれた一般的な技術的課題」であったとしても、本件発明1の「膨出部」が奏する上記の効果は当業者といえども予測し得ないものである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。

カ よって、本件発明1は、甲1発明、及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1を更に減縮したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1発明及び甲2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-06 
出願番号 特願2015-231079(P2015-231079)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 由希子  
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 藤田 和英
内田 博之
登録日 2018-03-16 
登録番号 特許第6305388号(P6305388)
権利者 イリソ電子工業株式会社
発明の名称 ボトムエントリコネクタ  
代理人 大竹 正悟  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ