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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05D
管理番号 1347685
異議申立番号 異議2018-700820  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-09 
確定日 2018-12-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6307864号発明「真正性識別用の識別媒体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6307864号の請求項1?7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6307864号(以下「本件特許」という。)は、平成25年12月16日にされた特許出願に係るものであって、平成30年3月23日に特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、平成30年4月11日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人岡林茂(以下、「申立人」という。)により、請求項1?7に係る特許について、平成30年10月9日に特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?7に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1?7に係る発明を、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明7」ともいう。)

「【請求項1】
真正性識別用の識別媒体の製造方法であって、
凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物の硬化物の膜を製造する工程と、
前記液晶組成物の硬化物の膜を、基材に貼り合わせる工程とを含み、
前記液晶組成物の硬化物の膜を製造する工程が、
前記凹凸形状を反転させた型形状を有する面を有する基材フィルムの、前記型形状を有する面に、流体状の液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物の膜を形成する工程と、
前記液晶組成物の膜を硬化して、前記液晶組成物の硬化物の膜を得る工程と、を含む、真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項2】
前記液晶組成物が、コレステリック液晶性化合物を含む、請求項1記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項3】
前記液晶組成物の硬化物の膜が、光を反射しうる反射帯域を可視光領域に有する、請求項1又は2記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項4】
前記反射帯域の波長幅が、150nm以上である、請求項3記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項5】
前記基材フィルムが、熱可塑性樹脂からなる、請求項1?4のいずれか一項に記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項6】
前記凹凸形状が、1μm以下の段差を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。
【請求項7】
前記凹凸形状が、5μm以下の最小ピッチを有する線状の凹部、5μm以下の最小ピッチを有する線状の凸部、5μm以下の最小径を有するドット状の凹部、及び、5μm以下の最小径を有するドット状の凸部からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1?6のいずれか一項に記載の真正性識別用の識別媒体の製造方法。」

第3 特許異議申立書に記載した理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、証拠方法として以下の(3)の甲第1号証?甲第7号証を提出しつつ、概略、以下(1)及び(2)の取消理由には理由があるから、請求項1?7に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。

(1)甲第1号証を主引用文献とする進歩性
本件発明1?7は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明、及び、甲第3号証?甲第7号証に記載される事項から、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由1」という。)

(2)甲第2号証を主引用文献とする進歩性
本件発明1?7は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明、及び、甲第3号証?甲第7号証に記載される事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1?7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(以下「取消理由2」という。)

(3)証拠方法
甲第1号証:特許第4268336号公報
甲第2号証:特開2013-186235号公報
甲第3号証:特開2012-40706号公報
甲第4号証:特開2012-118516号公報
甲第5号証:特開2002-98831号公報
甲第6号証:特開2010-5796号公報
甲第7号証:特開2009-237457号公報
(以下、それぞれ「甲1」?「甲7」という。)

第4 当審の判断
当審合議体は、以下に述べるように、取消理由1及び2には理由はなく、申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?7に係る発明についての特許を取り消すことはできないと判断する。

1 取消理由1について
(1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲1には、以下の記載がある。(下線は当審合議体が付したものである。他の甲号証も同様。)

ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
少なくとも入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方のみを反射して反射光を生成する円偏光選択性を有する反射性フィルムを備え、
この反射性フィルムには、反射光と同一の円偏光の光を反射光と異なる方向に反射させてホログラム像を形成するホログラム形成部が設けられていることを特徴とする真正性識別フィルム。
・・・
【請求項3】
反射性フィルムは液晶フィルムからなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の真正性識別フィルム。
【請求項4】
反射性フィルムはコレステリック相を固定化していることを特徴とする請求項3記載の真正性識別フィルム。
【請求項5】
ホログラム形成部はエンボス・ホログラムからなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の真正性識別フィルム。」

イ 6頁37行?7頁38行
「(実施の形態1-1)
図1は、本発明による真正性識別フィルムの実施の形態1-1を示した断面図である。
真正性識別フィルム10は、反射性フィルム11と、保護層12と、光吸収層13と、基板フィルム14とを備えている。
反射性フィルム11は、入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させて反射光を生成する層である。また、反射性フィルム11の片側界面には、ホログラム形成部11aが設けられている。・・・反射性フィルム11で反射する反射光と同一の円偏光の光を反射光と異なる方向に反射して、ホログラム像を形成する。すなわち反射性フィルム11は、反射性フィルム11の保護層12側表面および層内部において、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させ、反射光を生成する。反射光と同一の円偏光の光は、更にホログラム形成部11aまで達し、このホログラム形成部11aにおいて反射光と異なる方向に反射してホログラム像を形成する。
反射性フィルム11は、コレステリック液晶相を有する。このコレステリック液晶相の平均的な螺旋軸方位は、膜厚方向と平行である。なお、コレステリック液晶については、後で詳細に説明する。
反射性フィルム11は、コレステリック液晶配向を固定化した高分子フィルム又はコレステリック液晶粒子を担体中に分散したフィルムなど光学的に選択反射性及び円偏光選択性を示す媒体すべてを用いることが可能であるが、特に液晶配向を固定化した高分子フィルムを好適に用いることができる。
このような高分子フィルムの例としては、低分子液晶をコレステリック配向させた後、光反応又は熱反応などで低分子液晶を架橋して配向固定化した高分子フィルムをあげることができる。また、他の例としては、側鎖型又は主鎖型のサーモトロピック高分子液晶を液晶状態でコレステリック配向させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して、配向状態を固定化して作製した高分子フィルムをあげることができる。さらに、側鎖型又は主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶液中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に除去することによって配向状態を固定化して作製した高分子フィルムを用いることもできる。
これらフィルム作製に用いることのできる高分子液晶の例としては、側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネートなどの側鎖型ポリマー、主鎖に液晶形成基をもつポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーをあげることができる。
ホログラム形成部11aは、エンボス・ホログラムのマスター型を用意し、そのマスター型の表面の微小凹凸を反射性フィルム11の片側界面に転写して形成する。転写の方法としては、プレス機、圧延機、カレンダーロール、ラミネーター、スタンパーなどで加熱加圧する方法が挙げられる。また、別の方法としては、ホログラムのマスター型上でコレステリック液晶層を直接塗布配向させる方法が挙げられる。ホログラム形成部11aで反射した光は、反射性フィルム11で反射する反射光と異なる方向へ反射してホログラム像を形成する。
保護層12は、反射性フィルム11を保護する層である。・・・
光吸収層13は、反射性フィルム11を透過した光を吸収する層である。・・・
基板フィルム14は、真正性識別フィルム10に自己支持性を付与するフィルムである。」

ウ 8頁39?48行
「(ホログラムの説明)
ホログラムは、対象物に形成した回折格子の格子間隔、回折方向を画素サイズの微小領域で変化させることで所望のパターン、像、文字などを結像させたものである。ホログラムは、その構造から体積型ホログラムと平面型ホログラムの2種類に分類され、また光の変調方式から振幅型と位相型に分類されるが、工業的には1つのマスター型からマイクロレプリカ法で大量複製が可能な位相変調平面型ホログラム(エンボス・ホログラム)が広く普及している。可視光領域で鮮明なホログラム像を得るためには、回折格子の格子間隔を10μm?100nm程度の範囲で極めて精密に制御する必要があるので、マスター型の作製およびレプリカの製造には高度で熟練した加工技術が要求される。
・・・
(使用方法)
・・・
真正性識別フィルム10は、熱転写方式、シール方式、スレッド方式または熱転写リボン方式などの方式によって、真正性識別対象物20に接着層45(図7参照)を介して貼付して用いられる。ここで、真正性識別対象物20として、プラスチックカード(クレジットカード、銀行カード、IDカードなど)、有価証券(商品券、金券、ギフト券、株券など)、PETカード(プリペイドカード、定期券など)、切符、紙幣、パスポート及び公共競技投票券などの金券類を例示できるが、これに限定するものではない。」

エ 図面





甲1の記載事項、特に、特許請求の範囲(上記ア)、図1で示される実施の形態1-1(上記イ及びエ)によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

「以下の(i)?(iv)の構造を備えた真正性識別フィルムの製造方法。
(i)少なくとも入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方のみを反射して反射光を生成する円偏光選択性を有する、コレステリック相を固定化している液晶フィルムからなる反射性フィルムであって、反射光と同一の円偏光の光を反射光と異なる方向に反射させてホログラム像を形成するエンボス・ホログラムからなるホログラム形成部(11a)が設けられている反射性フィルム(10)
(ii)上記反射性フィルムのホログラム形成部側に接して設けられた光吸収層(13)
(iii)上記光吸収層に接して反射性フィルムの反対側に設けられた基板フィルム(14)
(iv)上記反射性フィルムに接してホログラム形成部と反対側に設けられた保護層(12)」

(図1との対応関係を示す(11a)等の図番、及び、(i)?(iv)のアラビア数字は、合議体が甲1発明の技術理解を容易とするために便宜上付したもので、甲1発明を技術的に限定するものではない。)

なお、申立人は、申立書の3.(4)イ(ア)において甲1に記載された発明を認定しているが、申立人が認定する発明は、申立人が指摘している記載事項からは導き出せないから、申立人の認定は採用できないため、当審合議体が上記の甲1発明を認定した。(例えば、申立人がいうところの構成Cの根拠とされる記載(甲1の8頁43?45行)は、真正性識別フィルム(本件発明1の「識別媒体」に相当する。)を、真正性識別が必要な対象物20に貼り付ける工程であり、真正性識別フィルムの製造工程ではないので、当該記載から申立人が主張する甲1発明の構成Cは導き出せない。)

(2)甲3?甲7に記載の事項
本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲3?甲7には、以下の記載がある。

ア 「ホログラムシート材の製造方法、及び、ホログラムシート材」についての発明に関する甲3には、以下の記載がある。
「【要約】
【課題】ホログラムの微細凹凸を高い精度で形成することができ、しかも効率良く生産することができるホログラムシート材の製造方法を提供する。
【解決手段】シート状基材1上に、光硬化樹脂を塗布して光硬化樹脂層2を形成する光硬化樹脂層形成工程と、前記した光硬化樹脂層上に、表面にホログラムの微細凹凸4が形成された透光性の版フィルム5を該微細凹凸が光硬化樹脂層に密着する状態で被せ、この状態で版フィルムを通して光照射することにより前記ホログラムの微細凹凸を前記光硬化樹脂層の表面に転写するとともに当該光硬化樹脂層を硬化させるホログラム微細凹凸転写工程と、該ホログラム微細凹凸転写工程の後、版フィルムを剥離する剥離工程と、前記基材の光硬化樹脂層側の面に光輝性を有する物質を少なくともホログラム微細凹凸4’の部分に蒸着させて光輝層を微細凹凸の凹凸に沿って形成する光輝層形成工程と、を経て処理する。」
(なお、【要約】の選択図の記載は省略する。)

イ 「ホログラム画像形成方法、静電荷像現像用トナーおよびホログラム画像形成装置」についての発明に関する甲4には、以下の記載がある。
「【要約】
【課題】電子写真方式の画像形成方法によって得られた電子写真画像を用いて、簡単にホログラム画像を得ることができるホログラム画像形成方法、これに用いる静電荷像現像用トナーおよびホログラム画像形成装置の提供。
【解決手段】ホログラム画像形成方法は、画像支持体上に、熱可塑性樹脂を含有するトナーにより電子写真方式の画像形成方法によって電子写真画像部を形成してなる電子写真画像上に、エンボスホログラム転写部材を、凹凸が形成された面が前記電子写真画像における電子写真画像部に接触する状態に積層し、前記トナーの軟化点以上に加熱すると共に加圧した後、冷却し、その後、前記エンボスホログラム転写部材を剥離することにより、当該エンボスホログラム転写部材に係る凹凸を電子写真画像部に転写する工程を含むことを特徴とする。」
(なお、【要約】の選択図の記載は省略する。)

ウ 「光学補償フィルムおよびそれを用いた光学部材並びに液晶表示装置」についての発明に関する甲5には、以下の記載がある。
「【要約】
【課題】 光学特性に対して高精度の補償が可能な光学補償フィルムを提供する。
【解決手段】 トリアセチルセルロースフィルムなどの透明基材表面に、無機粒子を含有する樹脂を塗工することにより、前記透明基材表面に凹凸を形成した後、この凹凸形成面に、コレステリック液晶化合物、ネマティック液晶化合物およびディスコティック液晶化合物などの液晶化合物層を形成した。」
(なお、【要約】の選択図の記載は省略する。)

エ 「真正性識別体」についての発明に関する甲6には、以下の記載がある。
「【0039】
微細な凹凸を精密に作成するため、光学的な方法だけでなく、電子線描画装置を用いて、精密に設計されたレリーフ構造を作り出し、より精密で複雑な再生光を作り出すものであってもよい。このレリーフ形状は、ホログラムを再現もしくは再生する光もしくは光源の波長(域)と、再現もしくは再生する方向、及び強度によってその凹凸のピッチや、深さ、もしくは特定の周期的形状が設計される。凹凸のピッチ(周期)は再現もしくは再生角度に依存するが、通常0.1μm?数μmであり、凹凸の深さは、再現もしくは再生強度に大きな影響を与える要素であるが、通常0.1μm?1μmである。」

オ 「ホログラム記録媒体ならびにその製造方法および製造装置」についての発明に関する甲7には、以下の記載がある。
「【0234】
このように、本発明に係るホログラム記録媒体を構成する各微小要素は、ホログラム干渉縞や回折格子を構成する光学要素として機能する必要があるので、その配置ピッチは、光の波長のオーダーに設定する必要がある。たとえば、図21に示す例の場合、斜線によるハッチングが施された微小要素の横方向の配置ピッチは0.6μm、縦方向の配置ピッチは0.2μmであり、ドットによるハッチングが施された微小要素の横方向の配置ピッチは0.4μm、縦方向の配置ピッチは0.2μmである。このように、微小要素の配置ピッチは、1μm以下の寸法に設定されるため、単位領域ごとの配置ピッチの相違は、光学顕微鏡を用いた観察でも認識することが困難である。このような特徴は、偽造防止の観点から有益である。」
(なお、図の記載は省略する。)。

(3)本件発明1についての判断
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「真正性識別フィルム」は、「真正性識別対象物(20)に接着層45(図7参照)を介して貼付して用いられる」(上記(1)ウ及びエ参照。)ものであるから、本件発明1の「真正性識別用の識別媒体」に相当する。
また、「エンボス(構造)」と「凹凸」は同義であるから、甲1発明の「エンボス・ホログラムからなるホログラム形成部(11a)」は、本件発明1の「凹凸形状を有する面」に相当するし、甲1発明の「液晶フィルムからなる反射性フィルム(10)」は、「液晶組成物の膜」であるといえるから、甲1発明の「(i)少なくとも入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方のみを反射して反射光を生成する円偏光選択性を有する、コレステリック相を固定化している液晶フィルムからなる反射性フィルムであって、反射光と同一の円偏光の光を反射光と異なる方向に反射させてホログラム像を形成するエンボス・ホログラムからなるホログラム形成部(11a)が設けられている反射性フィルム(10)」は、本件発明の「凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物」の「膜」に相当する。
さらに、本件発明1の「基材」は、本件特許明細書の【0100】及び図5,6の記載から明らかなとおり、その上に(真正性識別部分である)表示領域を有し、識別媒体の土台をなすものであるところ、甲1の「基板フィルム(14)」は、「真正性識別フィルム10に自己支持性を付与するフィルム」(上記(1)イ)であって、真正性識別フィルムの土台をなすものといえるから、これは、本件発明1の「基材」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違するといえる。
<一致点>
真正性識別用の識別媒体の製造方法であって、
凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物の膜を製造する工程を含む、真正性識別用の識別媒体の製造方法。

<相違点1>
真正性識別用の識別媒体の製造方法に含まれる、識別媒体を構成する凹凸形状を有する面を有する液晶組成物の膜を製造する工程について、本件発明1では、製造される膜が液晶組成物の「硬化物」であることが特定され、その膜が、「(液晶組成物の硬化物の膜に設けられた)凹凸形状を反転させた型形状を有する面を有する基材フィルムの、前記型形状を有する面に、流体状の液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物の膜を形成する工程と、前記液晶組成物の膜を硬化して、前記液晶組成物の硬化物の膜を得る工程と、を含む」工程(以下、「特定の硬化膜形成工程」という。)により製造されることが特定されているのに対して、甲1発明では、上記膜が液晶組成物の「硬化物」であるとの特定はなく、また、上記膜が上記「特定の硬化膜形成工程」により製造されることは特定されていない点。
<相違点2>
真正性識別用の識別媒体の製造方法について、本件発明1では、「液晶組成物の(硬化物の)膜を、基材に貼り合わせる工程とを含」むことが特定されているのに対して、甲1発明では、かかる特定はされていない点。

イ 相違点についての判断
まず、相違点1について検討する。
甲1には、甲1発明真正性識別フィルムを構成する、「コレステリック相を固定化している液晶フィルムからなる反射性フィルム(11)」(これは、本件発明1の「凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物の膜」に相当する。)の製造方法に関し、上記(1)のイで摘記したとおりの記載がある。

そして、当該記載によれば、甲1発明の反射性フィルム(11)は、
(a)低分子液晶をコレステリック配向させた後、光反応又は熱反応などで低分子液晶を架橋して配向固定化、
(b)側鎖型又は主鎖型のサーモトロピック高分子液晶を液晶状態でコレステリック配向させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して、配向状態を固定化、又は、
(c)側鎖型又は主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶液中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に除去することによって配向状態を固定化、
のいずれかの工程により高分子フィルム化して製造できる。
また、甲1(同上記(1)のイ)には、甲1発明のホログラム形成部(11a)の形成方法には、
(d)エンボス・ホログラムのマスター型を用意し、そのマスター型の表面の微小凹凸を反射性フィルム(11)の片側界面に転写して形成する方法(転写の方法としては、プレス機、圧延機、カレンダーロール、ラミネーター、スタンパーなどで加熱加圧する方法)と、
(e)ホログラムのマスター型上でコレステリック液晶層を直接塗布配向させる方法とがあることが記載されている。

そして、甲1発明において、反射性フィルム(10)の製造方法として、上記工程(a)に相当する、低分子液晶をコレステリック配向させた後、低分子液晶を架橋(これは、本件発明1の「硬化」に相当する。)して、高分子フィルム化して反射性フィルム(10)とする方法を採用し、かつ、反射性フィルム(10)に設けられるホログラム形成部(11a)の形成方法として、上記工程(e)の方法である、ホログラムのマスター型(これは、本件発明1の「凹凸形状を反転させた型形状を有する面を有する基材」に相当する。)上でコレステリック液晶層を直接塗布配向させる方法を採用した場合には、当該製造方法は、相違点1に係る本件発明1の構成を満足するものとなる。(なお、工程(e)では、ホログラムのマスター型上にコレステリック液晶層を塗布するから、塗布されるコレステリック液晶層が本件発明1の「流体状」を満足することは当業者に自明であるし、工程(a)において塗布される「低分子液晶」が「流体状」であることも当業者に自明の事項である。)
しかしながら、甲1には、甲1発明のコレステリック相を固定化している液晶フィルムからなる反射性フィルムの製造工程を、上記工程(a)と工程(e)の方法を組み合わせた製造方法とすることを積極的に示唆する記載はなく、甲1には、上記反射性フィルムのエンボス形状の製造工程として、本件特許明細書の表2に比較例として記載される製造工程に相当する工程(d)の方法が、工程(e)の方法と同列に記載されている。その上、反射性フィルム(10)自体の製造工程についても、工程(a)以外に、工程(b)、工程(c)の方法が記載されているところ、これらの工程を採用する場合は、当該製造工程は、本件発明1の「特定の硬化膜形成工程」にはならない。
一方、本件特許明細書の表2によれば、真正性識別用の識別媒体の製造方法において、凹凸形状を有する面を有する液晶組成物の膜を、(甲1の工程(a)により製造される膜に相当する)「硬化物」の膜とし、当該膜を、(甲1の工程(a)と工程(e)を組み合わせた工程に相当する)「特定の硬化膜形成工程」により製造する場合には、予め硬化させた膜(フィルム)を熱プレスする工程(すなわち、甲1の工程(d)に相当する工程)により製造する場合に比べ、凹凸転写性に優れ、真正性識別用の識別媒体として、格別に優れたものが製造できることが理解できる。
そして、この効果は、甲1の記載からは予測できないし、申立人が提出した他の証拠(申立人が取消理由1に関して提示する甲3?甲7、さらには、申立人が取消理由2に関して提示した後述の甲2)を参酌しても同様である。

そうすると、相違点2について判断するまでもなく、相違点1に係る本件発明1の構成を備えることで、格別に優れた真正性識別用の識別媒体を製造することができる本件発明1の製造方法について、当業者が、甲1発明(すなわち、甲第1号証に記載された発明)及び甲3?甲7(さらには、後述の甲2)に記載された事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

(4)本件発明2?7について
本件発明2?7は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲3?甲7(さらには、後述の甲2)に記載された事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

(5)取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1には理由がなく、取消理由1によって本件特許の請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。


2 取消理由2について
(1)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明
本件特許に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲2には、以下の記載がある。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶層を一方の面に有する透明性基材に対し、磁気記録層、隠蔽層、蛍光インキ層を順次積層したことを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記のコレステリック液晶層を一方の面に有する透明性基材と、磁気記録層との間に、ホログラム形成層と透明反射層を、該透明反射層と磁気記録層とが接するように順次設け、該ホログラム形成層を透明性基材とコレステリック液晶層を通して、認識可能であることを特徴とする請求項1に記載する記録媒体。
【請求項3】
基材の一方の面に、コレステリック液晶層、磁気記録層、隠蔽層、蛍光インキ層、接着剤層を順次積層したことを特徴とする転写箔。
【請求項4】
前記のコレステリック液晶層と磁気記録層との間に、ホログラム形成層と透明反射層を、該透明反射層と磁気記録層とが接するように、順次設けたことを特徴とする請求項3に記載する転写箔。
【請求項5】
被着体の上に、接着剤層、蛍光インキ層、隠蔽層、磁気記録層、コレステリック液晶層を、少なくとも積層した記録媒体であって、該積層は前記の請求項3または請求項4に記載の転写箔を用いて熱転写されたことを特徴とする記録媒体。」

「【0001】
本発明は、磁気記録層と蛍光インキ層と、さらにコレステリック液晶層を有する偽造防止性の高い記録媒体と、該記録媒体で使用される転写箔に関するものである。」

「【0014】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の記録媒体1の一つの実施形態を示す。コレステリック液晶層7を一方の面に有する透明性基材2として、図1の場合では透明性基材2に接して、磁気記録層3、隠蔽層4、蛍光インキ層5を順次積層した構成の記録媒体である。図示してはいないが、コレステリック液晶層7の透明性基材2と接する面に、微細な凹凸によるホログラム画像を形成し、磁気記録層3による反射で、そのホログラム画像を視認できるようにすることができる。そのホログラム画像は、コレステリック液晶の入射光に対する選択反射性、及び円偏光選択性の特性を発揮した独特な色相で観察でき、偽造防止性が高く、かつ意匠性も高いものである。」

「【0021】
図5(b)に示す記録媒体1は、図5(a)の転写箔11の接着剤層10と被着体13を接するように重ねて、加圧及び加熱して、転写箔11の基材9からコレステリック液晶層7、磁気記録層3、隠蔽層4、蛍光インキ層5、接着剤層10の順次積層された複数層が、剥離して、被着体13の上に設けられる。すなわち、図示した記録媒体1は、被着体13の上に、接着剤層10、蛍光インキ層5、隠蔽層4、磁気記録層3、コレステリック液晶層7を順次積層した構成であって、その積層は図5(a)に示す転写箔を用いて熱転写されたものである。」

「【0042】
(コレステリック液晶層)
コレステリック液晶層7としては、液晶配向を固定化した高分子フィルム、もしくはコレステリック液晶を適宜な樹脂中に分散したもの等、光学的に選択反射性及び円偏光選択性を示す媒体すべてを用いることが可能であるが、特に液晶配向を固定化した高分子フィルムを好適に用いることができる。
【0043】
液晶配向を固定化した高分子フィルムの例としては、低分子液晶をコレステリック配向させた後、光反応又は熱反応などで低分子液晶を架橋して配向固定化した高分子フィルムを挙げることができる。また、他の例としては、側鎖型又は主鎖型のサーモトロピック高分子液晶を液晶状態でコレステリック配向させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して、配向状態を固定化して作製した高分子フィルムを挙げることができる。さらに、側鎖型又は主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶液中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に除去することによって配向状態を固定化して作製した高分子フィルムを用いることもできる。
【0044】
これらフィルム作製に用いることのできる高分子液晶の例としては、側鎖に液晶形成基を有するポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネートなどの側鎖型ポリマー、主鎖に液晶形成基をもつポリエステル、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミドなどの主鎖型ポリマーをあげることができる。必要に応じて、コレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中に配合した、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物を適宜な基材に塗布し、塗膜に電離放射線を照射することによりフィルム化してもよい。塗布したときの基材を剥がせるように構成することもできる。
・・・
【0049】
(ホログラム形成層)
ホログラム形成層8を記録媒体に形成する方法は、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して形成する方法、あるいは、ホログラム形成層が熱転写される、感熱転写箔を用いて形成することもできる。ホログラム形成層は、ホログラムの精細パターンを再現できる樹脂材料で構成することができる。一般的には、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン、エポキシ、アクリレート等の熱硬化性樹脂をそれぞれ単独、あるいは上記熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とを混合して使用することができ、さらにラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性物質、あるいはこれらにラジカル重合性不飽和基を有する単量体を加え、電離放射線硬化性樹脂としたものなどを使用することができる。このようなホログラム形成層の膜厚は、0.1?10μmの範囲が好ましい。
【0050】
ホログラム形成層に形成されるホログラム画像の大きさと形状は、要求される態様によってそれぞれ異なるので、特に限定されるものではない。ホログラム画像の形成方法としては、従来公知の方法、例えばホログラムの干渉縞の凹凸パターンを設けた原版を用い、微細凹凸をエンボス加工法等が挙げられる。ホログラム画像は、平面型ホログラムでも体積型ホログラムでもよく、平面型ホログラムの場合は、なかでもレリーフホログラムが量産性およびコストの面から好ましい。その他、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、レインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、更に、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチフレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子等を用いることができる。」






また、甲2には、偽造防止性の記録媒体の製造方法の具体的な実施例に関し、コレステリック液晶層の表面に凹凸形状のホログラム画像を設ける方法として、熱転写方式によるもの(【0057】?【0060】の実施例1)及びエンボス加工法によるもの(【0064】?【0065】の実施例3)が記載されている。

以上の甲2の記載、特に特許請求の範囲の請求項1、【0014】及び図1に示される記録媒体についての実施形態の記載、【0001】の「本発明は、・・・偽造防止性の高い記録媒体・・・に関するものである」、並びに、【0042】のコレステリック液晶層についての「特に液晶配向を固定化した高分子フィルムを好適に用いることができる」なる記載によれば、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「偽造防止性の記録媒体の製造方法であって、
上記記録媒体は、液晶配向を固定化した高分子フィルムからなるコレステリック液晶層(7)を一方の面に有する透明性基材(2)に対し、磁気記録層(3)、隠蔽層(4)、蛍光インキ層(5)を順次積層した構造からなり、コレステリック液晶層(7)の透明性基材2と接する面に、微細な凹凸によるホログラム画像を形成したものである、偽造防止性の記録媒体の製造方法。」

(図1との対応関係を示す(7)等の図番は、合議体が甲2発明の技術理解を容易とするために便宜上付したもので、甲2発明を技術的に限定するものではない。)

なお、申立人は、申立書の3.(4)イ(イ)において、甲2に記載された発明を認定しているが、申立人が認定する発明は、申立人が指摘している記載事項からは導き出せないから、申立人の認定は採用できないため、当審合議体が上記の甲2発明を認定した。(例えば、申立人のいうところの構成Cの根拠とされる記載(甲2の【0021】)は、記録媒体(本件発明1の「識別媒体」に相当する。)を、真正性識別が必要な被着体13に設ける工程であり、記録媒体の製造工程ではないので、当該記載から申立人が主張する甲2発明の構成Cは導き出せない。)

(2)本件発明1についての判断
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「偽造防止性の記録媒体」は、甲2の【0002】の「従来から、経済的に価値の高い高額商品や、ID(Identification;照合一致)手段として用いると高い価値を生じるクレジットカードや、トラベラーズチェック、または金券類等には、それらの真偽性を判定するのに適したホログラム(ラベル)を付与させて、偽造を防止して、真正物として証明することが行われている。」なる記載からも明らかなとおり、本件発明1の「真正性識別用の識別媒体」に相当する。
また、甲2発明の「微細な凹凸によるホログラム画像」は、本件発明1の「凹凸形状を有する面」に相当するし、甲2発明の「液晶配向を固定化した高分子フィルムからなるコレステリック液晶層(7)」は、「液晶組成物の膜」に相当するから、甲2発明の「コレステリック液晶層(7)の透明性基材2と接する面に、微細な凹凸によるホログラム画像を形成した」、「液晶配向を固定化した高分子フィルムからなるコレステリック液晶層(7)」は、本件発明1の「凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物」の「膜」に相当する。
さらに、甲2発明の「透明性基材(2)」は、本件発明1の「基材」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違するといえる。
<一致点>
真正性識別用の識別媒体の製造方法であって、
凹凸形状を有する面を有する、液晶組成物の膜を製造する工程を含む、真正性識別用の識別媒体の製造方法。

<相違点1’>
真正性識別用の識別媒体の製造方法に含まれる、識別媒体を構成する凹凸形状を有する面を有する液晶組成物の膜を製造する工程について、本件発明1では、製造される膜が液晶組成物の「硬化物」であることが特定され、その膜が、「(液晶組成物の硬化物の膜に設けられた)凹凸形状を反転させた型形状を有する面を有する基材フィルムの、前記型形状を有する面に、流体状の液晶組成物を塗布して、前記液晶組成物の膜を形成する工程と、前記液晶組成物の膜を硬化して、前記液晶組成物の硬化物の膜を得る工程と、を含む」工程(「特定の硬化膜形成工程」)により製造されることが特定されているのに対して、甲2発明では、上記膜が液晶組成物の「硬化物」であるとの特定はなく、また、上記膜が上記「特定の硬化膜形成工程」により製造されることは特定されていない点。
<相違点2’>
真正性識別用の識別媒体の製造方法について、本件発明1では、「液晶組成物の(硬化物の)膜を、基材に貼り合わせる工程」を含むことが特定されているのに対して、甲2発明では、(本件発明1の「液晶組成物の膜」に相当する)「液晶配向を固定化した高分子フィルムからなるコレステリック液晶層(7)」(前者)の一方の面に、(本件発明1の「基材」に相当する)「透明性基材(2)」(後者)を有する構造を含む記録媒体の製造方法であることが特定されるのみで、当該構造が、前者を後者に「貼り合わせる工程」であることは特定されていない点。

イ 相違点についての判断
まず、相違点1’について検討する。
甲2には、甲2発明の偽造防止性の記録媒体を構成する、「液晶配向を固定化した高分子フィルムからなるコレステリック液晶層(7)」の製造方法に関し、上記(1)で示した【0043】?【0044】のとおりの記載があり、これによれば、甲2発明のコレステリック液晶層(7)は、
(a)低分子液晶をコレステリック配向させた後、光反応又は熱反応などで低分子液晶を架橋して配向固定化、
(b)側鎖型又は主鎖型のサーモトロピック高分子液晶を液晶状態でコレステリック配向させた後、液晶転移点以下の温度に冷却して、配向状態を固定化、
(c)側鎖型又は主鎖型のリオトロピック高分子液晶を溶液中でコレステリック配向させた後、溶媒を徐々に除去することによって配向状態を固定化、又は、
(f)コレステリック液晶を電離放射線硬化性樹脂中に配合した、コレステリック液晶含有の電離放射線硬化性樹脂組成物を適宜な基材に塗布し、塗膜に電離放射線を照射することによりフィルム化(この場合、塗布したときの基材を剥がせるように構成することもできる。)
のいずれかの工程により高分子フィルム化して製造できる。
そして、上記の工程(a)あるいは工程(f)を経て得られるコレステリック液晶層(7)は、本件発明1の「液晶組成物の硬化物の膜」に相当するものとなる。
しかしながら、上記の工程はあくまで、コレステリック液晶層(7)自体を形成する工程についての記載であって、甲2には、工程(a)及び工程(f)が「微細な凹凸によるホログラム画像を形成」する工程として記載されているのではない。
そして、甲2には、甲2発明のコレステリック液晶層(7)面に設けられる「微細な凹凸によるホログラム画像」の形成方法については、公知のコーティング方法で塗布し乾燥して形成する方法やホログラム形成層を熱転写により形成する方法(上記(1)の【0049】及び【0057】?【0060】の実施例1)、微細エンボス加工法による方法(【0050】及び【0064】?【0065】の実施例3)が具体的に記載されるのみで、「微細な凹凸によるホログラム画像」の形成を、「特定の硬化膜形成工程」により行うことは記載されていない。
そうすると、甲2の記載からは、本件発明1の相違点1’に係る構成を導くことはできない。
また、申立人が取消理由2に関して提示した甲3?甲7を参酌しても同様である。

してみると、甲2?7からは、相違点1’に係る本件発明1の構成を導き出すことができないのであるから、相違点2’について判断するまでもなく、相違点1’に係る構成を備える本件発明1について、当業者が、甲2発明(すなわち、甲第2号証に記載された発明)及び甲3?甲7に記載された事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

なお、申立人が取消理由1に関して提出した甲1には、上記1(3)イで記載したとおり、ホログラム形成部の形成方法(e)として、ホログラムのマスター型(これは、本件発明1の「凹凸形状を反転させた型形状を有する面を有する基材」に相当する。)上でコレステリック液晶層を直接塗布配向させる方法が記載されており、甲2発明において、工程(a)あるいは(f)を採用した上で当該方法を採用した場合には、当該製造方法は、相違点1’に係る本件発明1の構成を満足するものとなる。
しかしながら、上記1(3)イで記載したとおり、甲1には、ホログラム形成部の形成方法として、本件特許明細書の表2に比較例として記載される製造工程に相当する工程(d)の方法も工程(e)の方法と同列に記載されている。そして、甲1及び甲2には、甲2発明において、工程(a)あるいは(f)を採用した上で甲1に示唆されている工程(e)を選択して組み合わせた製造方法とし、「特定の硬化膜形成工程」を満足する製造方法とすることを積極的に示唆する記載はないし、甲3?甲7の記載をみても同様である。
一方、上記1(3)イで説示したとおり、本件特許明細書の表2によれば、甲2発明を、「特定の硬化膜形成工程」を備えたものとすることで、凹凸転写性に優れ、真正性識別用の識別媒体として格別に優れたものが製造できることが理解できるところ、この効果は、申立人が提出したいずれの証拠(甲1?甲7)を参酌しても予測できない効果である。
そうすると、甲1を参酌した場合であっても、相違点2’について判断するまでもなく、相違点1’を備える本件発明1について、甲第2号証に記載された発明及び甲1、3?7に記載された事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。

(3)本件発明2?7について
本件発明2?7は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明及び甲3?7(さらには、甲1)に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2には理由がなく、取消理由2によって本件特許の請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-19 
出願番号 特願2013-259353(P2013-259353)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B05D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤澤 高之  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
渕野 留香
登録日 2018-03-23 
登録番号 特許第6307864号(P6307864)
権利者 日本ゼオン株式会社
発明の名称 真正性識別用の識別媒体の製造方法  
代理人 酒井 宏明  
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