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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C01G
管理番号 1347686
異議申立番号 異議2018-700711  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-04 
確定日 2018-12-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6290786号発明「メソポーラス二酸化チタンナノ粒子およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6290786号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6290786号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、2012年(平成24年)11月15日(パリ条約による優先権主張 2011年11月16日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成30年2月16日に特許権の設定登録がなされ、同年3月7日に特許掲載公報が発行され、その後、同年9月4日付けで全請求項(請求項1?3)に対し、特許異議申立人 天津品源科技有限公司(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件特許発明について
本件特許の請求項1?3に係る発明は、それぞれ、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された以下のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明3」ということがある。)

「【請求項1】
20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、
(i)0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;
(ii)前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持し;
(iii)前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離する
ことを含む、方法。
【請求項2】
反応生成物を、(i)ろ別し;(ii)ろ別した反応生成物を洗浄して、反応シーケンスの間に生じた塩を除去し;かつ、(iii)乾燥により水および有機内容物を除去することによって生成物を完成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
完成が空気流下で200℃から500℃の範囲の上昇した温度にて生成物を加熱することによって達成される、請求項2に記載の方法。」


第3 申立理由の概要
異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第7号証を提出して、特許異議申立書において、以下の申立理由1?4によって、請求項1?3に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

1. 申立理由1
請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けられないものである。

2. 申立理由2
請求項1?3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、または、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(例えば、甲第2?7号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、それらの発明による格別に優れた効果も認められないことから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けられないものである。

3. 申立理由3
請求項1?3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(例えば、甲第1、3?6号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、それらの発明による格別に優れた効果も認められないことから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けられないものである。

4. 申立理由4
請求項1に係る発明の発明特定事項である、「略均一なTiO_(2)ナノ粒子」及び「略均一なポア」の「略均一」に該当する場合と該当しない場合との境界が特定できず、請求項1に係る発明の範囲及びこれに従属する請求項2?3に係る発明の範囲が不明確であるため、請求項1?3における記載は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない。

[異議申立人が提出した証拠方法]
甲第1号証:特表2001-511467号公報
甲第2号証:特開平2-55221号公報
甲第3号証:特開平9-67125号公報
甲第4号証:特開2006-89297号公報
甲第5号証:特開2006-290680号公報
甲第6号証:特開平2-196029号公報
甲第7号証:特開平9-165218号公報


第4 当審の判断
1. 申立理由4について
(1) 事案に鑑み、上記第3の4.に示した、請求項1に係る発明の発明特定事項である、「略均一なTiO_(2)ナノ粒子」及び「略均一なポア」の「略均一」に該当する場合と該当しない場合との境界が特定できず、請求項1に係る発明の範囲及びこれに従属する請求項2?3に係る発明の範囲が不明確であるため、請求項1?3における記載は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない旨の異議申立人の申立理由4についての主張の妥当性についての検討を、申立理由1?3の妥当性についての検討に先んじて、行うこととする。

(2) 上記第2に示したとおり、本件特許の請求項1には、「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、(i)0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;(ii)前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持し;(iii)前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離することを含む、方法。」と記載されており、このような請求項1の記載によれば、請求項1に係る発明が、前記(i)?(iii)の工程を含むTiO_(2)ナノ粒子の製造方法であることは明確に規定されているものの、その製造方法によって製造されるTiO_(2)ナノ粒子についての、「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する」との規定では、「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子」や「メソポアサイズ範囲の略均一なポア」において用いられている「略均一」という用語によって表されている均一の程度が、必ずしも、明らかではない。

(3) ここで、上記(2)に示した「略均一」という用語の意義の解釈のために、特許法第70条第2項の規定に基づき、本件特許の明細書及び図面におけるTiO_(2)ナノ粒子のサイズやポアサイズについての記載を見てみるに、その明細書及び図面には、次の記載がある。(当審注:「…」は記載の省略を表す。以下、同じ。)
(3a) 「【0001】
ここに開示され特許請求された発明概念は、概略、メソポーラス二酸化チタン(TiO_(2))ナノ粒子に関し、より詳しくは、粒子サイズが高度に均一であり、メソポアサイズ範囲内の略均一な粒子内ポアを含有する新しいタイプのTiO_(2)ナノ粒子に関する。」
(3b) 「【0005】
ここに開示され特許請求された発明概念は、約20nmから約100nmのサイズの略均一な球状ナノ粒子の形態である、チタンの酸化物、すなわちTiO_(2)に関し、各粒子は、約2nmから約12nmの間の値を中心とする実質的に均一なポアサイズ分布を有する略均一な粒子内メソポアを含む。…」
(3c) 「【0008】
本発明の方法は、約20nmから約100nmのサイズ範囲に制御できるこのタイプのTiO_(2)ナノ粒子に対して整って均一な粒子サイズを生じることができる。前記粒子内メソポアは、約2nmから約12nmの間の値を中心とする狭いポアサイズ分布を提示する。このタイプのナノ粒子由来の粉状物質も、約15nmから約80nmの間を中心とするポアサイズ分布で実質的に均一な粒子間ポアを提示する。このタイプのナノ粒子生成物のうちのひとつに対するN_(2)吸着(BET)によるポアサイズ分布測定は、この物質がふたつのタイプのメソポアを有することを明らかにした。ひとつ目のタイプのメソポア、すなわち、粒子内メソポアは、約6nmを中心とし、そのことはSEMによっても確認された。…」
(3d) 「【0014】
開示され特許請求された発明概念は、粒子サイズが高度に均一であり、かつ、比較的狭いポアサイズ分布のメソポアサイズ範囲内の均一な粒子内ポアを含有するあるタイプのTiO_(2)ナノ粒子を生成する方法に関する。ここで用いるとき、用語「メソポーラス」または「メソポアサイズ範囲」は、2 nmから100 nm (20 Aから1000 Aまで)の平均ポア径を有する構造を意味する…」
(3e) 「【0023】
図1Aおよび1Bに示されたSEM像は、ここに記載された発明概念により生成された球状メソポーラスTiO_(2)ナノ粒子を描写する。これらのTiO_(2)粒子は、粒子サイズが高度に均一であり、図1Aおよび1Bに示されるサンプルは約50nmの粒子サイズを有する。粒子内ポアは、サイズがおよそ数ナノメーターであり、それらはSEMではっきりと見ることができる。BET測定は、それらのサンプルが二峰性ポアサイズ分布を示し、ひとつのタイプのポアは約6nmを中心とし、SEMで観察される同一粒子内ポアであることを提示した。ナノ粒子は、例えば、6nm、10nm、12nm等を中心とする狭いポアサイズ分布を提示する。観察された他のタイプのポアは約35nmを中心とし、個々の50nmナノ粒子の充填配置により形成されたものと確信される。両方のタイプのポアともメソポアサイズ範囲にある。」
(3f) 「【0028】
実施例4
種を用いず、5.9gに代えて6.6gのクエン酸一水和物を添加した以外は実施例1で上記したようにTiO_(2)ナノ粒子サンプルを生成した。BET測定前に反応生成物の3分の1を200℃にて約12時間、脱ガスした。反応生成物の別の3分の1をオーブン中300℃にて6時間、処理し、反応生成物の最後の3分の1をオーブン中500℃にて6時間、処理した。BETで測定した3つのサンプルのポアサイズ分布プロットを図5に示す。3つ全てのサンプルが実質的に二峰性ポアサイズ分布を提示する。しかしながら、200℃にて脱ガスしたサンプルは2.2nmを中心とするポアサイズ峰を提示し、オーブン中300℃にて処理したサンプルは5.4nmを中心とする幾分大きい側にポアサイズ峰を提示する。オーブン中500℃にて処理したサンプルは8.6nmを中心とするさらに大きい側のポアサイズ峰を提示する。…」
(3g) 「【図5】



(4) まず、本発明におけるTiO_(2)ナノ粒子のサイズについて検討するに、上記(3a)?(3d)に示した本件特許の明細書には、粒子サイズが高度に均一であること、また、20nmから100nmのサイズ範囲に制御され、整って均一な粒子サイズであることが記載されている。
そして、このような粒子サイズについて、上記(3e)に示した本件特許の明細書には、SEM像で描写しても、粒子サイズが高度に均一で、どの粒子の粒子サイズも、例えば50nmに制御されて整っており、均一であることが記載されている。
これらの記載から、本発明におけるTiO_(2)ナノ粒子のサイズは、20nmから100nmのサイズ範囲に制御されて整っており、均一な粒子サイズであるということを把握することができる。
してみると、上記(2)に示した本件特許の請求項1のTiO_(2)ナノ粒子についての、「20nmから100nmのサイズの略均一な」というのは、20nmから100nmのサイズ範囲に制御されていることをもって、「略均一な」と表現していると認められる。

(5) 次に、本発明におけるTiO_(2)ナノ粒子のポアサイズについて検討するに、上記(3a)?(3d)に示した本件特許の明細書には、メソポアサイズ範囲内の略均一な粒子内ポアであること、また、粒子内メソポアは約2nmから約12nmの間の値を中心とする狭いポアサイズ分布を有すること、ポアサイズ分布はN_(2)吸着(BET)による測定やSEMによって確認されること、また、用語「メソポーラス」または「メソポアサイズ範囲」は、2nmから100nmの平均ポア径を有する構造を意味することが記載されている。
そして、このような粒子内ポアサイズについて、上記(3e)に示した本件特許の明細書には、粒子内ポアは、SEMではっきりと観察でき、そのサイズはおよそ数ナノメーターであり、BET測定によると、例えば、6nm、10nm、12nm等を中心とする狭いポアサイズ分布を示すところ、メソポアサイズ範囲のポアであることが記載され、さらに、上記(3f)に示した本件特許の明細書の記載及び上記(3g)に示した本件特許の図面には、BET測定すると粒子内ポアは、例えば2.2nmを中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示すところ、当該中心の数値は、生成したTiO_(2)ナノ粒子サンプルに対する脱ガスの具体的態様に応じて、例えば、5.4nm、8.6nmに変動し得ることが記載されており、また、このような変動に伴って、平均ポア径も変動し得ることも明らかである。
これらのことから、本発明におけるTiO_(2)ナノ粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一な粒子内ポアを含有し、また、粒子内メソポアは2nmから12nmの間の値を中心とする狭いポアサイズ分布を有するところ、「メソポアサイズ範囲」は、2nmから100nmの平均ポア径を有する構造を意味しており、また、粒子内メソポアは、BET測定によると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示すことを把握することができる。
してみると、上記(2)に示した本件特許の請求項1のTiO_(2)ナノ粒子についての、「TiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子」という発明特定事項における、「各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有」するというのは、各粒子が2nmから100nmの平均ポア径の粒子内ポアを含有することもって、「略均一な」と表現していると認められるし、また、「2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する」というのは、粒子内メソポアは、BET測定によると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示すことを意味していると認められる。

(6) 上記(4)?(5)の検討を踏まえると、本件特許の請求項1における、「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、メソポアサイズ範囲の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」という発明特定事項は、本件特許の明細書及び図面の記載を考慮すると、「20nmから100nmのサイズ範囲に制御されたTiO_(2)ナノ粒子であって、各粒子は、2nmから100nmの平均ポア径の粒子内ポアを含有し、その粒子内ポアは、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示す、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」を意味していることが明らかとなる。
したがって、本件特許の請求項1に、「略均一なTiO_(2)ナノ粒子」及び「略均一なポア」という「略均一」を用いた記載があっても、それらによって、本件特許の請求項1に特定される発明特定事項が不明確になっているとまではいえない。

(7) 上記(6)の検討からすると、異議申立人の申立理由4は理由がない。


2. 甲第1?2号証の記載事項、及び、甲第1?2号証に記載された発明

(1) 甲第1号証(特表2001-511467号公報)の記載事項、
及び、甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の記載事項は、以下の1ア.?1オ.のとおりである。
1ア. 「【0043】
実施例

【0051】
例5:二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製
ヨーロッパ特許第0335773号明細書の教示に従って、種結晶の存在下で二酸化チタンナノ粒子の水性分散液を調製する。
1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液A394.7gに、以下のものを順次添加する:
・36%HCl 42.02g
・クエン酸 4.73g
・精製水 547.1g
・分散アナターゼ種結晶(TiO_(2)力価10g/kg、寸法5?6nm) 11.36g(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして0.2重量%)(温度が75℃に達した時に添加)。この温度を2時間維持する。
この混合物を沸点にし(0.8℃/分)、その温度に3時間保つ。
次いでこの溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄する。
【0052】
次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にする。
TEMによって測定した寸法は45nmだった。XDC分析は、凝集物のない単一集団(即ち単分散であること)を示し、分散指数が0.2だった。
X線分析は、粒子の80重量%がアナターゼTiO_(2)形にあることを示した。
これら粒子は多孔質であり、相対密度は2.54g/ccだった。
【0053】
例6:二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製
ヨーロッパ特許第0335773号明細書の教示に従って、種結晶の存在下で二酸化チタンナノ粒子の水性分散液を調製する。
1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液A394.7gに、以下のものを順次添加する:
・36%HCl 42.02g;
・クエン酸 4.73g;
・精製水 501.7g;
・分散アナターゼ種結晶(TiO_(2)力価10g/kg、寸法5?6nm) 56.8g(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして1重量%)(温度が75℃に達した時に添加)。この温度を2時間維持する。
この混合物を沸点にし(0.8℃/分)、その温度に3時間保つ。
次いでこの溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄する。
【0054】
次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にする。
TEMによって測定した寸法は25nmだった。
X線分析は、粒子の80重量%がアナターゼTiO_(2)形にあることを示した。」

1イ. 「【0016】
本発明に従う…粒子は、せいぜい100nm、特に10?50nmの範囲の寸法を示す二酸化チタン粒子であるのが好ましい。この直径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
結晶相の性状は、大部分がアナターゼ結晶形であるのが好ましい。「大部分」とは、二酸化チタン粒子中のアナターゼの割合が50重量%より高いことを意味する。この粒子は、80%より高いアナターゼ含有率を示すのが好ましい。…
【0017】
透明性がより高いコーティングを得るためには、単分散二酸化チタン粒子を用いるのが好ましい。…」

1ウ. 「【0018】
分散体の単分散粒子は、チタン塩の酸化又は高温熱分解ではなくて、いわゆる溶液状での又は湿式経路による製造法(チタン塩の熱分解、熱加水分解又は沈殿)から由来するものであるのが好ましい。これらは例えばヨーロッパ特許第0335773号明細書に記載された方法によって得られた二酸化チタン粒子であることができる。

【0024】
…出発溶液は、特定的な態様で用いられる二酸化チタン種結晶を含む。
まず第一に、本発明において用いられる二酸化チタン種結晶は、X線回折によって測定してせいぜい5nmの寸法を示すものでなければならない。…
次に、(種結晶中に存在する二酸化チタン)対(種結晶を導入する前に加水分解媒体中に存在する(即ちチタン化合物Aによってもたらされる)TiO_(2)で表わしたチタン)の重量比は0.01?3%の範囲にする。…粒子寸法は種結晶の割合と関連するので、種結晶に関するこれら2つの条件(寸法及び重量比)を一緒に前記の方法に適用することによって、二酸化チタン粒子の最終寸法を正確に調節することが可能になる。かくして、5?100nmの範囲の寸法の粒子を得ることが可能になる。
【0025】
アナターゼの形の二酸化チタンの沈殿をもたらすためには、アナターゼの形の二酸化チタン種結晶を用いる。…
【0026】
次の工程は、この出発溶液を当業者に周知の任意の手段によって、一般的には加熱することによって、加水分解することから成る。加熱による場合、70℃以上の温度において加水分解を実施するのが好ましい。また、最初に媒体の沸騰温度より低い温度において操作し、次に加水分解媒体を沸騰温度で安定段階に保つこともできる。
加水分解を実施したら、母液から沈殿した固体を分離することによって得られた二酸化チタン粒子を回収する。次いでこれらを水性液状媒体中に再分散させて、二酸化チタン分散体を得る。この液状媒体は、酸性であっても塩基性であってもよい。」

1エ. 「【0027】
いわゆる溶液又は湿式経路沈殿法から得られた二酸化チタン粒子、特に約100℃の温度における加水分解を伴う前記の方法から得られた二酸化チタン粒子は、多孔質である…」

1オ. 「【0028】
分散体の粒子は、少なくとも70m^(2)/gのBET比表面積を示すのが好ましい。
BET比表面積とは、…Brunauer-Emmett-Teller法から確立されたASTM法D3663-78に従って窒素吸着によって測定される比表面積を意味するものとする。分散体の形で提供される本発明に従う粒子の比表面積を測定するためには、分散体から液相を取り除き、次いで粒子を真空下で150℃の温度において少なくとも4時間乾燥させることから成る測定プロトコルに従うことが必須である。
【0029】
分散体の粒子はまた、約2.4の相対密度をも示すのが好ましい。「約」とは、相対密度が2.4±0.2であることを意味するものとする。かかる相対密度値は、慣用のアナターゼ型二酸化チタンの相対密度の3.8と比較して低い。この相対密度は、細孔容積の測定によって算定される。
【0030】
これらの比表面積及び相対密度の特徴は、いわゆる溶液又は湿式経路の製造方法から得られた二酸化チタン粒子、特に約100℃の温度における加水分解を伴う前記の方法から得られた二酸化チタン粒子について、得ることができる。」

1カ. 上記1ア.の【0051】?【0052】によれば、例5として、二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法が記載されており、その調製法は、具体的には、1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液A394.7gに、42.02gの36%HCl、4.73gのクエン酸、547.1gの精製水を順次添加して、オキシ塩化チタン水溶液を作成し、その水溶液の温度が75℃に達した時に、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶を11.36g(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして0.2重量%)添加し、この温度を2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保ち、次いでこの水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄し、次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にするという、調製法であり、その調製法で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子の寸法は45nmであり、それらの粒子は単分散で多孔質で相対密度は2.54g/ccであったということが記載されている。

1キ. また、上記1ア.の【0053】?【0054】によれば、例6として、二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法が記載されており、その調製法は、具体的には、1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液A394.7gに、42.02gの36%HCl、4.73gのクエン酸、501.7gの精製水を順次添加して、オキシ塩化チタン水溶液を作成し、その水溶液の温度が75℃に達した時に、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶を56.8g(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして1重量%)添加し、この温度を2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保ち、次いでこの水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄し、次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にするという、調製法であり、その調製法で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子の寸法は25nmであったということが記載されている。

1ク. 上記1カ.?1キ.に示したように、例5で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については多孔質であったということが記載されているのに対し、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については多孔質であったということは記載されていないが、上記1エ.によれば、約100℃の温度における加水分解を伴う、いわゆる溶液又は湿式経路沈殿法から得られた二酸化チタン粒子は、多孔質であるとされていることから、上記1カ.に示した、例5で得られた二酸化チタン粒子だけではなく、上記1キ.に示した、例6で得られた二酸化チタン粒子も多孔質であると認められる。
また、上記1カ.?1キ.に示したように、例5で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については単分散であったということが記載されているのに対し、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については単分散であったということは記載されていないが、上記1ウ.によれば、ヨーロッパ特許第0335773号明細書に記載された方法によって得られた二酸化チタン粒子は単分散粒子とされているところ、上記1ア.の【0053】?【0054】によれば、例6では、ヨーロッパ特許第0335773号明細書の教示に従って二酸化チタンナノ粒子の水性分散液を調製したとされているから、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子も単分散であったと認められる。
また、上記1カ.?1キ.に示したように、例5で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については相対密度の値が記載されているのに対し、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子については相対密度の値が記載されていないが、上記1オ.の【0029】?【0030】によれば、約100℃の温度における加水分解を伴う前記の方法から得られた二酸化チタン粒子の相対密度は2.4±0.2であるとされているから、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子の相対密度は2.4±0.2であったと認められる。
また、上記1カ.?1キ.に示したように、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶について、例5では(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして0.2重量%)とし、例6では(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わして1重量%)としたとされているが、上記1ウ.の【0024】によれば、分散アナターゼ種結晶についての(溶液Aのチタンに対してTiO_(2)として表わした重量%)は、(種結晶中に存在する二酸化チタン)対(種結晶を導入する前に加水分解媒体中に存在する(即ちチタン化合物Aによってもたらされる)TiO_(2)で表わしたチタン)の重量比を意味しており、この種結晶の導入により、この種結晶の重量比の分だけ加水分解媒体中の二酸化チタンは増量するところ、この種結晶の重量比と種結晶との寸法によって、二酸化チタン粒子の最終的な寸法が正確に調節できるとされている。
また、上記1イ.によれば、二酸化チタン粒子の寸法とは、分散体の二酸化チタン粒子の直径を意味していると認められる。

1ケ. 上記1カ.?1ク.の検討から、例5では分散アナターゼ種結晶の導入により、加水分解媒体中の二酸化チタンは0.2重量%増量するところ、例5で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子は、直径が45nmに正確に調整されており、それらの粒子は単分散で多孔質であったと認められ、また、例6では分散アナターゼ種結晶の導入により、加水分解媒体中の二酸化チタンは1重量%増量するところ、例6で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子は、直径が25nmに正確に調整されており、それらの粒子は単分散で多孔質であったと認められる。

1コ. 上記1カ.?1ケ.の検討を踏まえ、例5の二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法に注目すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。
「二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であって、1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液394.7gに、42.02gの36%HCl、4.73gのクエン酸、547.1gの精製水を順次添加して、オキシ塩化チタン水溶液を作成し、その水溶液の温度が75℃に達した時に、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶を11.36g導入して二酸化チタンを0.2重量%増量し、この温度を2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保ち、次いでこの水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄し、次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にするという、前記調製法であり、その調製法で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子は、直径が45nmに正確に調整されており、それらの粒子は単分散で多孔質で相対密度が2.54g/ccである、前記調製法。」

1サ. また、上記1カ.?1ケ.の検討を踏まえ、例6の二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法に注目すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。
「二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であって、1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液394.7gに、42.02gの36%HCl、4.73gのクエン酸、501.7gの精製水を順次添加して、オキシ塩化チタン水溶液を作成し、その水溶液の温度が75℃に達した時に、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶を56.8g導入して二酸化チタンを1重量%増量し、この温度を2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保ち、次いでこの水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄し、次いで粒子をNaOHと共に再分散させて、pH9及び固体含有率約12%にするという、前記調製法であり、その調製法で得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子の直径は25nmに正確に調整されており、それらの粒子は単分散で多孔質で相対密度が2.4±0.2g/ccである、前記調製法。」


(2) 甲第2号証(特開平2-55221号公報)の記載事項、及び、
甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の記載事項は、以下の2ア.?2キ.のとおりである。
(当審注:便宜上、「シ戸」という漢字には、「濾」という漢字を用いた
。以下、同じ。)
2ア. 「2.特許請求の範囲
1)チタン化合物を加水分解し、次いで得られた沈殿を回収することからなる賦形可能な酸化チタンの製造方法において、加水分解を、少なくとも1個のカルボキシル基と少なくとも2個のヒドロキシル及び(又は)アミノ基とを含有する酸、少なくとも2個のカルボキシル基と少なくとも1個のヒドロキシル及び(又は)アミノ基とを含有する酸、これらの酸の塩並びに…有機りんの酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で実施することを特徴とする酸化チタンの製造方法。

6)添加する酸化合物が、
・ヒドロキシポリカルボン酸、特にヒドロキシジカルボン酸又はヒドロキシトリカルボン酸、例えばりんご酸、くえん酸及びタルトロン酸、
・(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸、例えばグルコヘプトン酸及びグルコン酸、
・ポリ(ヒドロキシカルボン酸)例えば酒石酸、
・アミノジカルボン酸…
よりなる群から選ばれることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の方法。

9)加水分解に付すチタン化合物の溶液がチタンとして表わして0.1?1.5モル/lのチタン化合物を含むことを特徴とする請求項1?8のいずれかに記載の方法。
10)加水分解すべき溶液の酸化合物のモル濃度が0.01?1モル/l、好ましくは0.01?0.1モル/lであることを特徴とする請求項1?9のいずれかに記載の方法。
11)加水分解を70℃以上の温度で実施することを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の方法。
12)請求項1?11のいずれかに記載の方法によって微細状で得られた酸化チタンを乾燥して1?50%の強熱減量を有する20μm以上の寸法の基本粒子よりなるわずかに結晶化した酸化チタンを得、次いで1?50重量%の添加水、0?15重量%の賦形用添加剤及び45?99重量%の乾燥された酸化チタンを含有する混合物を形成し、この混合物を賦形し、次いで要すれば得られた生成物を乾燥し焼成することからなることを特徴とする微細状生成物を賦形することによって酸化チタンを基体とした物品を製造する方法。」(第1頁左下欄第5行?第2頁右下欄第14行)

2イ. 「[産業上の利用分野]
本発明は、酸化チタンでできた物品の製造方法に関する。
特に、本発明は、賦形可能な酸化チタンの製造方法を目的とする。」(第3頁左上欄第9?13行)

2ウ. 「[従来の技術とその問題点]
現在、ある種の方法、例えば排煙の脱硝及び(又は)脱硫法、元素状硫黄の製造のためのクラウス法においては、酸化チタンを基体とした触媒がもっばら使用されている。さらに、これらの触媒は、塔内に床として使用され、そして充填損失を制限させる形状を示さねばならない。したがって、これらの触媒は大体において粉末を例えば成形、押出又は類似の方法によって賦形することにより得られる。
しかしながら、これらの触媒は、また、摩耗や衝撃による摩滅を回避するための良好な機械的性質と良好な触媒効率を得るのに十分な多孔性又は比表面積とを示さなければならない。
特に、ヨーロッパ特許第38741号によれば、触媒又は触媒担体に使用するのに十分な良好な機械的性質と多孔性とを示す物品を得るのを可能ならしめる酸化チタンを賦形する方法が既に知られている。
しかし、賦形可能な酸化チタンは、硫酸チタン又はイルメナイトの硫酸浸蝕によって得られる溶液を加水分解することによって得られる。
オキシ塩化チタンのようなその他のチタン化合物を加水分解することによって得られる酸化チタンは、触媒に使用するのに十分な良好な機械的性質と比表面積又は多孔性を示す物品を形成させるのに使用することができない。
しかして、特開昭53-95893号は、塩化チタンの加水分解によって得られる酸化チタンが賦形できないことを示している。
[発明が解決しようとする課題]
したがって、本発明は、特に、チタン化合物の熱加水分解によって得られる良好な機械的性質と高い比表面積とを示す酸化チタン粉末からの成形物品の製造方法を提供することによって前記の不都合をなくすことを目的とする。」(第3頁左上欄第14行?左下欄第10行)

2エ. 「沈殿する固体は酸化チタン又はオルト若しくはメタチタン酸の形であるが、これは例えば濾過により回収される。この固体は、存在し得る不純物を除去するため洗浄し、次いで例えば乾燥器で乾燥される。
X線回折による分析では、このようにして得られた生成物がわずかに結晶化した酸化チタンであって、その結晶がアナターゼ形であることが示された。
また、酸化チタンの基本粒子の寸法及び性状の分析では、それらが微結晶の凝結体であることが示された。これらは20nm以上、一般には30?70nmの平均寸法を有する。これらの基本粒子は、前記したような有機化合物の不存在下で同一化合物の加水分解によって得られるものよりも明らかに大きい寸法を有する。」(第4頁右下欄第6行?第5頁左上欄第1行)

2オ. 「例1
1モルのTiを含有するオキシ塩化チタン溶液1lに…酒石酸0.05モルを添加する。
次いでこの溶液を沸騰させ、それを4時間保持する。
冷却した後、溶液を濾過し、得られた固体を1lの蒸留水で洗浄し、次いで乾燥する。生成物の乾燥は各種の方法で、特に噴霧化によって行う。
得られた粉末は20%の強熱減量を有する。
X線回折による分析では、得られた生成物がもっばらアナターゼ形として存在しかつわずかに結晶化した酸化チタンであることが示された。…
得られた粉末のMET法(透過型電子顕微鏡)による分析では、このものが約50nmに等しい平均直径の基本粒子からなることが示された。
この粉末の500gを混練機…において130gの水及び60gの賦形用添加剤(この場合は硝酸)とともに1時間混練する。
得られた混合物は下記の組成を有する。
TiO_(2)粉末 69%
水(添加水) 21%
HNO_(3)(賦形状添加剤)10%
この混合物を直径3.2mmの円筒状顆粒として押出す。
これらの押出物を120℃で8時間乾燥し、350℃で2時間焼成する。
得られた押出物、即ち物品は、典型的な分析法によって決定される下記の性質を示す。
比表面積 200 m^(2)/g
全細孔容積 32 cm^(3)/g
粒子対粒子の圧潰 1 daN/mm」(第6頁左上欄第5行?左下欄第2行)

2カ. 「例2
0.5モルのTiを含有するオキシ塩化チタン溶液1lに…くえん酸0.1モルを添加する。
このようにして得られた混合物を例1と同じ処理に付す。
得られた酸化チタン粉末は例1のものと同じ特性を示し、また例1に記載の方法によって押出成形して、例1のものと同じ特性を有する成形物品を得た。」(第6頁左下欄第3?15行)

2キ. 「例5(比較例)
くえん酸の添加を省いて例1を繰り返す。洗浄したが乾燥しなかった固体を1.0のpHで懸濁させる。これを即座にデカンテーションする。X線回折による分析では、このものがもっばらルチル形で存在する酸化チタンよりなることが示された。
また、得られた粉末のMETによる分析では、このものが約5nmの寸法の微結晶よりなることが示された。
この粉末を例1におけるように乾燥し、例1に記載の方法に従って賦形試験を行った。
非常に念入りに混練することによって押出可能なペーストを得るのに成功した。しかし、乾燥し、200℃以上の温度で焼成した後に得られた顆粒はひどい性質を示した。
しかして、この顆粒は取り扱うことができなかった。なぜならば、それは2本の手指の間で押えるか又はそれを互いに衝突させると崩壊するからである。」(第6頁右下欄第13行?第7頁左上欄第12行)

2ク. 上記2ア.?2イ.によれば、甲第2号証には、チタン化合物を加水分解し、次いで得られた沈殿を回収することからなる賦形可能な酸化チタンの製造方法に関する発明が記載されていると認められる。

2ケ. 上記2ウ.によれば、元素状硫黄の製造のためのクラウス法等においては、酸化チタンを基体とした触媒がもっばら使用されており、これらの触媒は、塔内に床として使用され、そして充填損失を制限させる形状としなければならないため、これらの触媒は大体において粉末を例えば成形、押出又は類似の方法によって賦形することにより得られるが、これらの触媒は、また、摩耗や衝撃による摩滅を回避するための良好な機械的性質と良好な触媒効率を得るのに十分な多孔性又は比表面積とを示さなければならないところ、オキシ塩化チタンのようなチタン化合物を加水分解することによって得られる酸化チタンは、賦形可能ではなく、触媒に使用するのに十分な良好な機械的性質と比表面積又は多孔性を示す物品を形成させるのに使用することができないという問題があることから、このような問題を解決することが発明の目的であると認められる。

2コ. 上記2オ.?2キ.によれば、酒石酸又はくえん酸の存在下にオキシ塩化チタンを熱加水分解することによって、わずかに結晶化した、平均直径が約50nmに等しい酸化チタン粉末を製造した、例1?2の酸化チタン粉末の製造方法によると、比表面積200m^(2)/g、全細孔容積32cm^(3)/g、粒子対粒子の圧潰1daN/mmという性質の押出成形物品が形成できる酸化チタン粉末を製造できることから、上記2ケ.に示した問題を解決できたのに対し、酒石酸やくえん酸を存在させずにオキシ塩化チタンを熱加水分解して、約5nmの寸法の微結晶よりなる酸化チタン粉末を製造した、例5(比較例)の酸化チタン粉末の製造方法によると、前記のような押出成形物品が形成できる酸化チタン粉末を製造できなかったことから、上記2ケ.に示した問題は解決できなかったとされている。

2サ. 上記2ク.?2コ.の検討を踏まえ、例1の賦形可能な酸化チタン粉末の製造方法に注目すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明1」という。)が記載されていると認められる。
「1モルのTiを含有するオキシ塩化チタン溶液1lに酒石酸0.05モルを添加し、次いでこの溶液を沸騰させ、それを4時間保持し、冷却した後、溶液を濾過し、得られた固体を1lの蒸留水で洗浄し、次いで乾燥して、わずかに結晶化した、平均直径が約50nmに等しい、賦形可能な酸化チタン粉末の製造方法。」

2シ. また、上記2ク.?2コ.の検討を踏まえ、例2の賦形可能な酸化チタン粉末の製造方法に注目すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明2」という。)が記載されていると認められる。
「0.5モルのTiを含有するオキシ塩化チタン溶液1lにくえん酸0.1モルを添加し、次いでこの溶液を沸騰させ、それを4時間保持し、冷却した後、溶液を濾過し、得られた固体を1lの蒸留水で洗浄し、次いで乾燥して、わずかに結晶化した、平均直径が約50nmに等しい、賦形可能な酸化チタン粉末の製造方法。」


3. 申立理由1について
上記第3の1.に示した、請求項1に係る発明は甲第1号証に記載された発明である旨の異議申立人の申立理由1につき、以下に検討する。
(1) 本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
(1-1) 本件特許発明1と甲1発明1との対比・判断
ア. 本件特許発明1と上記2.の1コ.に示した甲1発明1とを対比するに、甲1発明1における、「二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であって、」、「クエン酸」、「オキシ塩化チタン水溶液」は、それぞれ、本件特許発明1における「TiO_(2)」「粒子の製造方法であって、」、「アルファヒドロキシカルボン酸」、「チタンの水溶性化合物水溶液」に相当し、また、甲1発明1における「1.9モル/kgオキシ塩化チタン溶液394.7gに、42.02gの36%HCl、4.73gのクエン酸、547.1gの精製水を順次添加して、オキシ塩化チタン水溶液を作成し、その水溶液の温度が75℃に達した時に、寸法5?6nmの分散アナターゼ種結晶を11.36g導入して二酸化チタンを0.2重量%増量」するということは、その水溶液中の、チタンのモル量は1.9モル/kg×0.3947kg×1.002≒0.75モルであるのに対し、1モル192gのクエン酸のモル量を4.73/192≒0.0246モルとすることであるから、チタンに対するクエン酸のモル比は0.0246/0.75≒0.033であり、その際の水溶液の質量は、(394.7+42.02+4.73+547.1+11.36=0.04202+0.00473+0.5471+0.01136)≒999.9gであり、この水溶液の比重が約1.00であることを考慮すると、この水溶液中のチタン濃度は、0.75モル/0.9999リットル≒0.75モル/リットルと算出されることから、0.033のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.75モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成することとなるため、本件特許発明1における「(i) 0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成」することに相当する。
そして、甲1発明1における「この温度を2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保」つことは、水溶液の温度を75℃に2時間維持し、その水溶液の温度を0.8℃/分で上昇させて沸点にし、その温度に3時間保つことであるから、本件特許発明1における「(ii) 前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持」することに相当する。
また、甲1発明1における「得られた塩基性水性分散液中の二酸化チタン粒子は、直径が45nmに正確に調整されて」いることは、その「二酸化チタン粒子」が45nmのサイズに制御された二酸化チタンナノ粒子であることを意味しているから、本件特許発明1における「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、
(i) 0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;
(ii) 前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持する
ことを含む、方法。

<相違点>
相違点1-1: TiO_(2)ナノ粒子の製造方法が、本件特許発明1では「各粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」であるのに対し、
甲1発明1では、二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であり、「各粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」であるのか明らかでない点。

相違点1-2: 本件特許発明1の製造方法は「前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離することを含む」のに対し、
甲1発明1では、沸点温度に保った後の水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄するものの、「前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離することを含む」のか明らかでない点。

イ. そこで、まず、上記相違点1-2につき検討するに、上記2.の1コ.によれば、甲1発明1においては、沸点温度に保った後の水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄するのであるが、この工程は、上記2.の1ウ.の【0026】の記載によれば、加水分解を実施した後の母液から沈殿した固体を分離することによって得られた二酸化チタン粒子を回収する工程であるところ、pH測定にあたっては正確な測定のために、液温25±0.2℃とするとの技術常識を考慮すると、この工程は、水溶液の温度を25±0.2℃にし、その水溶液から沈殿した加水分解物である二酸化チタン粒子を分離することによって回収する工程であるといえる。
そうすると、上記相違点1-2は実質的な相違点とはいえない。

ウ. 次に、上記相違点1-1につき検討するに、本件特許発明1が備えている、「各粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する」との発明特定事項は、上記1.(6)に示したとおり、各粒子は、2nmから100nmの平均ポア径の粒子内ポアを含有し、その粒子内ポアは、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示すことを意味していると認められる。
このような発明特定事項を備える本件特許発明1に対し、甲1発明1における分散液中のTiO_(2)ナノ粒子は、上記2.の1コ.によれば、直径が45nmの単分散で多孔質で相対密度が2.54g/ccであり、技術常識からして、その相対密度の値の測定のために、TiO_(2)ナノ粒子の乾燥が必要であるところ、乾燥工程について、甲第1号証においては、上記2.の1オ.によれば、液相を取り除き、次いで粒子を真空下で150℃の温度において少なくとも4時間乾燥させるとされている。
しかしながら、甲1発明1において得られたTiO_(2)ナノ粒子について、甲第1号証全体の記載をみてみても、平均ポア径やポアサイズ分布は、明らかではなく、そのTiO_(2)ナノ粒子についての平均ポア径やポアサイズ分布を特定し得る根拠も見当たらない。
したがって、甲1発明1において得られたTiO_(2)ナノ粒子が、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたものとは認められない。

エ. ここで、異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証には、本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を含むTiO_(2)ナノ粒子の製法が記載されており、製法が同じであれば同じTiO_(2)ナノ粒子が得られるから、甲第1号証には、本件特許発明1が記載されている旨主張している。
しかしながら、例えば、本件特許の明細書における、「【0028】
実施例4
種を用いず、5.9gに代えて6.6gのクエン酸一水和物を添加した以外は実施例1で上記したようにTiO_(2)ナノ粒子サンプルを生成した。BET測定前に反応生成物の3分の1を200℃にて約12時間、脱ガスした。反応生成物の別の3分の1をオーブン中300℃にて6時間、処理し、反応生成物の最後の3分の1をオーブン中500℃にて6時間、処理した。BETで測定した3つのサンプルのポアサイズ分布プロットを図5に示す。3つ全てのサンプルが実質的に二峰性ポアサイズ分布を提示する。しかしながら、200℃にて脱ガスしたサンプルは2.2nmを中心とするポアサイズ峰を提示し、オーブン中300℃にて処理したサンプルは5.4nmを中心とする幾分大きい側にポアサイズ峰を提示する。オーブン中500℃にて処理したサンプルは8.6nmを中心とするさらに大きい側のポアサイズ峰を提示する。」との記載によれば、
本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を経て得られた、20nmから100nmのサイズ範囲の略均一なTiO_(2)ナノ粒子であったとしても、そのナノ粒子からの脱ガスの具体的態様に応じて、そのナノ粒子が有するポアサイズ分布は変動し得、その変動に伴って、平均ポア径も変動し得ることは明らかであるし、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示す粒子内ポアを備えるには、少なくても、200℃にて12時間に匹敵する脱ガスの具体的態様を要することも把握できることから、本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を含むTiO_(2)ナノ粒子の製法が記載されているというだけでは、上記相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたTiO_(2)ナノ粒子が得られているとはいえない。
また、甲第1号証には、上記ウ.に示した、真空下に150℃で少なくとも4時間の乾燥工程が記載されていることを考慮しても、技術常識からして、当該乾燥工程が200℃にて12時間の脱ガス工程に相当するとまではいえない。
よって、異議申立人の前記主張は採用できない。


(1-2) 本件特許発明1と甲1発明2との対比・判断
カ. 本件特許発明1と上記2.の1サ.に示した甲1発明2とを対比するに、上記(1-1)ア.での検討と同様にして、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、
(i) 0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;
(ii) 前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持する
ことを含む、方法。

<相違点>
相違点2-1: TiO_(2)ナノ粒子の製造方法が、本件特許発明1では「各粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」であるのに対し、
甲1発明1では、二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であり、「各粒子は、メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する、TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」であるのか明らかでない点。

相違点2-2: 本件特許発明1の製造方法は「前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離することを含む」のに対し、
甲1発明1では、沸点温度に保った後の水溶液をデカンテーションし、再びスラリーにし、中和してpH6にし、塩化物及びNa^(+)イオンが取り除かれるまで洗浄するものの、「前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離することを含む」のか明らかでない点。

キ. そこで、上記相違点2-1、2-2につき検討するに、これらの相違点は、それぞれ、上記相違点1-1、1-2と同じ相違点であり、そして、上記相違点2-2については、上記(1-1)イ.での検討と同様にして、実質的な相違点とはいえないものの、上記相違点2-1については、上記(1-1)ウ.?エ.での検討と同様にして、甲1発明2は、上記相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたものとは認められない。


(1-3) 小括
上記(1-1)?(1-2)の検討によれば、甲1発明1または2は、上記相違点1-1または上記相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えたものとは認められないから、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明である旨の申立理由1は、理由がない。


4. 申立理由2について
上記第3の2.に示した、請求項1?3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、または、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(例えば、甲第2?7号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、それらの発明による格別に優れた効果も認められない旨の異議申立人の申立理由2につき、以下に検討する。
(1) 本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
(1-1) 本件特許発明1と甲1発明1との対比・判断
サ. 本件特許発明1と甲1発明1とを対比するに、上記3.(1-1)ア.?エ.で検討したとおり、両者は、上記相違点1-1の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

シ. そこで、上記相違点1-1について、さらに、検討してみる。
甲第4号証には、2nmと20nmの細孔を有する、粒子径約50nmのマリモ状酸化チタンが記載されている(【0026】)が、マリモ状酸化チタンというのは、酸化チタンの一次微粒子が集合して形成された酸化チタンである(【特許請求の範囲】)から、甲1発明1の単分散のTiO_(2)ナノ粒子とは、粒子の形態が異なっている。
また、甲第5号証には、平均孔径が6.4nmまたは8.4nmのメソポーラス酸化チタンナノ球状粒子多孔体が記載されている(【0032】?【0033】)が、メソポーラス酸化チタンナノ球状粒子多孔体というのは、酸化チタンナノ球状粒子の集合構造から形成されるナノ細孔からなる多孔体である(【特許請求の範囲】)から、甲1発明1の単分散のTiO_(2)ナノ粒子とは、粒子の形態が異なっている。
したがって、甲第4?5号証に記載される、いずれの細孔構造も、一次粒子が集合して形成されることを前提にするものであるから、甲第1号証の、上記2.の1イ.にも示されている、「単分散二酸化チタン粒子を用いるのが好ましい」とされている、甲1発明1の単分散のTiO_(2)ナノ粒子において採用することには阻害要因がある。
また、甲第3号証には、乾燥後の酸化チタン微粉末を空気中400℃で30分加熱し、その後粉砕して酸化チタン微粉末を得ることが記載されており(【0020】)、甲第6号証には、乾燥後の酸化チタンを200?400℃の一定温度域の空気酸化雰囲気下にて一定時間仮焼するという多孔質性酸化チタン粒子の製造方法が記載されている(第2頁右下欄第4行?第3頁左上欄第3行、第3頁右下欄第1行?第4頁左上欄第5行)が、甲1発明1は、上記2.の1コ.に示したとおり、二酸化チタン粒子の塩基性水性分散液の調製法であって、その分散液中の二酸化チタン粒子について、相対密度等の測定のために、乾燥を行うことはあっても、加熱処理や仮焼処理を行う必要を生じ得ないから、甲1発明1において、甲第3号証や甲第6号証に記載される、乾燥後の酸化チタンに対する加熱処理や仮焼処理を行うことも合理的なこととはいえないし、それらの処理の後に形成される、細孔構造についての記載も示唆もない。

セ. また、上記2.の2ア.?2キ等の甲第2号証の全体の記載事項や、その余の甲第3号証?甲第7号証の記載事項を見てみても、TiO_(2)ナノ粒子について、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示す粒子内ポアを有するようにすることは記載も示唆もされていない。

ソ. 上記シ.?セ.の検討を踏まえると、甲第2号証?甲第7号証の全体の記載事項を見てみても、甲1発明1に上記相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えさせることを容易になし得ることであると判断し得る記載や示唆は見当たらないこととなる。
よって、本件特許発明1は、甲1発明1及び甲第2号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(1-2) 本件特許発明1と甲1発明2との対比・判断
タ. 本件特許発明1と甲1発明2とを対比するに、上記3.(1-2)カ.?キ.で検討したとおり、両者は、上記相違点2-1の点で相違し、その余の点で一致していると認められる。

チ. そして、上記相違点2-1(上記相違点1-1)については、上記(1-1)シ.?セ.での検討と同様にして、甲第2号証?甲第7号証の全体の記載事項を見てみても、甲1発明2に上記相違点2-1(上記相違点1-1)に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えさせることを容易になし得ることであると判断し得る記載や示唆は見当たらないこととなる。
よって、本件特許発明1は、甲1発明2及び甲第2号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(2) 本件特許発明2?3と甲1発明との対比・判断
本件特許発明2?3は、上記第2に示したとおり、本件特許発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(1)での検討と同様にして、甲1発明1または2及び甲第2号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 小括
上記(1)、(2)の検討によれば、本件特許発明1?3は、甲1に記載された発明及び甲第2号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、異議申立人の申立理由2も理由がない。


5. 申立理由3について
上記第3の3.に示した、請求項1?3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(例えば、甲第1、3?6号証)に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、また、それらの発明による格別に優れた効果も認められない旨の異議申立人の申立理由3につき、以下に検討する。
(1) 本件特許発明1と甲2発明との対比・判断
(1-1) 本件特許発明1と甲2発明1との対比・判断
ナ. 本件特許発明1と、上記2.の2サ.に示した、甲2発明1とを対比するに、甲2発明1における「平均直径が約50nmに等しい、」「酸化チタン粉末の製造方法」は、本件特許発明1における「20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子であ」る「TiO_(2)ナノ粒子の製造方法」に相当し、また、甲2発明1における「1モルのTiを含有するオキシ塩化チタン溶液1lに酒石酸0.05モルを添加」することは、本件特許発明1における「0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成」することに相当し、また、甲2発明1における「冷却した後、溶液を濾過し、得られた固体を1lの蒸留水で洗浄し、次いで乾燥」することは、本件特許発明1における「前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離すること」に相当する。
してみると、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<一致点>
20nmから100nmのサイズの略均一なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、
(i) 0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;
(iii) 前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離する
ことを含む、方法。

<相違点>
相違点3-1: TiO_(2)ナノ粒子が、本件特許発明1では「メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する」のに対し、
甲2発明1では、「メソポアサイズ範囲内の略均一なポアを含有し、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ分布を有する」のか明らかでない点。

相違点3-2: TiO_(2)ナノ粒子の製造方法が、本件特許発明1では「(ii) 前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持」することを含むのに対し、
甲2発明1では、この溶液を沸騰させ、それを4時間保持する点。

ニ. そこで、まず、上記相違点3-2につき検討するに、上記3.(1-1)?(1-2)の検討のとおり、甲第1号証には、上記相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を含む、本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を備えたTiO_(2)ナノ粒子の製造方法が記載されているものの、その製造方法によって得られるのは、上記2.の1ア.?1イ.に示されるとおり、粒子の80重量%がアナターゼTiO_(2)形にあるTiO_(2)ナノ粒子、すなわち結晶化が十分に進行したTiO_(2)ナノ粒子であるのに対し、甲2発明1の賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子は、上記2.の2サ.のとおり、わずかに結晶化したTiO_(2)ナノ粒子であるところ、甲2発明1の賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子が、わずかに結晶化したTiO_(2)ナノ粒子であることは、上記2.の2ア.に示した、甲第2号証の特許請求の範囲の請求項12の記載からして、賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子とするための必要不可欠な技術事項であると認める。
そうすると、甲第1号証に記載される、本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を備えた結晶化が十分に進行したTiO_(2)ナノ粒子の製造方法を、甲2発明1のわずかに結晶化した賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法として採用することには、阻害要因がある。
また、甲第3号証には、四塩化チタン水溶液を60℃、8時間で加水分解し、その水溶液が白濁しだしたら直ちに該液を沸点付近(104℃)に加熱し、その温度で60分間保持して2段階の加水分解反応を行なった後、濾過、乾燥して、結晶性酸化チタン微粉末を得る方法が記載されている(【0013】?【0015】、【0019】?【0020】)が、このような結晶性酸化チタン微粉末を得る方法を、甲2発明1のわずかに結晶化した賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法として採用することにも、阻害要因がある。
また、甲第4号証?甲第7号証の全体の記載事項を見てみても、わずかに結晶化した賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法として、本件特許発明1の(i)?(iii)の工程を備えたTiO_(2)ナノ粒子の製造方法は見当たらない。
してみると、甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証の全体の記載事項を見てみても、甲2発明1に上記相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えさせることを容易になし得ることであると判断し得る記載や示唆は見当たらないこととなる。

ヌ. 上記ニ.の検討を踏まえると、上記相違点3-1につき検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明1及び甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ネ. ここで、異議申立人は、特許異議申立書において、甲第2号証には、本件特許発明1の(ii)の工程についての具体的な記載はないが、
甲第1号証における「次の工程は、この出発溶液を当業者に周知の任意の手段によって、一般的には加熱することによって、加水分解することから成っている。加熱による場合、70℃以上の温度において加水分解を実施するのが好ましい。また、最初に媒体の沸騰温度より低い温度において操作し、次に加水分解媒体を沸騰温度で安定段階に保つこともできる。…」(【0026】)との記載、及び、
甲第3号証における「(実施例1)四塩化チタン(純度99.9%)に水を加え、四塩化チタンの濃度が1モル/リットルの水溶液を調整した。この水溶液3リットルを図2に示す還流冷却器付きの反応槽に装入し、沸点付近(104℃)まで加熱し、60分間保持して加水分解した。…」(【0013】)、「(実施例2)四塩化チタン水溶液の加水分解温度を60℃、反応時間を8時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行ない酸化チタン微粉末を得た。…」(【0015】)、「(実施例6)実施例2と同様に四塩化チタン水溶液を60℃に加熱し、水溶液が白濁しだしたら直ちに該液を沸点付近(104℃)に加熱し、その温度で60分間保持して2段階の加水分解反応を行なった。その他は実施例1と同様にして酸化チタン微粉末を得た。…」(【0019】)との記載によれば、
チタンの水溶性化合物水溶液の加熱による加水分解において、1段階で実施する加水分解と、最初に媒体の沸騰温度より低い温度において操作し、次に加水分解媒体を沸騰温度で安定段階に保つという、2段階で実施する加水分解のいずれを適用するかは、当業者には、周知の任意手段であり、上記1段階で実施する加水分解の代わりに上記2段階で実施する加水分解の加水分解を使用することは、当業者にとって、単なる設計変更に過ぎず、格別の困難性を要することではない旨主張している。
しかしながら、甲第3号証に記載の酸化チタン微粉末の製造方法は、四塩化チタン水溶液を60℃、8時間で加水分解し、その水溶液が白濁しだしたら直ちに該液を沸点付近(104℃)に加熱し、その温度で60分間保持して2段階の加水分解反応を行なった後、濾過、乾燥して、結晶性酸化チタン微粉末を得るという方法であって(【0013】?【0015】、【0019】?【0020】)、本件特許発明における(i)?(ii)の工程を備えてはいないから、甲第3号証に記載の酸化チタン微粉末の製造方法を、甲2発明1において採用しても、本件特許発明には到達し得ない。
また、甲第1号証に記載のTiO_(2)ナノ粒子の製造方法は、本件特許発明における(i)?(iii)の工程を備えているものの、その加水分解工程について、甲第1号証の【0026】に「加水分解媒体を沸騰温度で安定段階に保つ」と記載されているとおり、加水分解媒体を沸騰温度に保つことが、安定段階での加水分解を意味していることを考慮すると、甲2発明1における「溶液を沸騰させ、それを4時間保持」するという加水分解工程は、すでに、安定段階での加水分解が行われていることを意味しているため、その加水分解工程を変更することは合理的なことではない。
してみると、本件特許発明における(ii)の工程は、甲第3号証や甲第1号証の記載事項を参酌しても、甲2発明1における単なる設計変更事項として導出し得ることとはいえない。
また、上記ニ.で検討したとおり、甲第1号証に記載されるTiO_(2)ナノ粒子の製造方法、及び、甲第3号証に記載される酸化チタン微粉末を得る方法は、いずれも、結晶化が進行したTiO_(2)ナノ粒子や酸化チタン微粉末の製造方法であるから、甲2発明1のわずかに結晶化した賦形可能なTiO_(2)ナノ粒子の製造方法において、採用することには阻害事由がある。
よって、異議申立人の前記主張は採用できない。


(1-2) 本件特許発明1と甲2発明2との対比・判断
ハ. 本件特許発明1と、上記2.の2シ.に示した、甲2発明2とを対比するに、上記(1-1)ナ.での検討と同様にして、両者は、以下の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。
<一致点>
20nmから100nmのサイズ範囲に整っており、均一な粒子サイズのTiO_(2)ナノ粒子の製造方法であって、
(i) 0.02から0.2のチタンに対する酸のモル比でアルファヒドロキシカルボン酸の存在下、0.5から1.5モル/リットルの濃度のチタンの水溶性化合物水溶液を形成し;
(iii) 前記溶液を室温または周囲温度に冷却し、その反応生成物を分離する
ことを含む、方法。

<相違点>
相違点4-1: TiO_(2)ナノ粒子が、本件特許発明1では「メソポアサイズ範囲内の粒子内ポアを含有し、その粒子内ポアは、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示す」のに対し、
甲2発明2では、「メソポアサイズ範囲内の粒子内ポアを含有し、その粒子内ポアは、BET測定すると、2nmから12nmの間の値を中心とするポアサイズ峰のあるポアサイズ分布を示す」のか明らかでない点。

相違点4-2: TiO_(2)ナノ粒子の製造方法が、本件特許発明1では「(ii) 前記水溶液を70℃から80℃の範囲の温度に加熱し、1時間から3時間の間その温度に維持し、その後、前記水溶液を100℃から前記水溶液の還流温度までの範囲の温度に加熱し、2時間から4時間のさらなる期間、その温度に維持」することを含むのに対し、
甲2発明2では、この溶液を沸騰させ、それを4時間保持する点。

ヒ. そこで、上記4-2について検討するに、この相違点は、上記相違点3-2と同じ相違点であるから、上記(1-1)ニ.、ネ.での検討と同様にして、甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証の全体の記載事項を見てみても、甲2発明2に上記相違点4-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えさせることを容易になし得ることであると判断し得る記載や示唆は見当たらない。
よって、上記相違点4-1につき検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明2及び甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(2) 本件特許発明2?3と甲2発明との対比・判断
本件特許発明2?3は、上記第2に示したとおり、本件特許発明1の全ての発明特定事項を備えたものであるから、上記(1)での検討と同様にして、甲2発明1または2及び甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3) 小括
上記(1)?(2)の検討によれば、本件特許発明1?3は、甲2に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証?甲第7号証に記載の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、異議申立人の申立理由3も理由がない。


第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-20 
出願番号 特願2014-542466(P2014-542466)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C01G)
P 1 651・ 121- Y (C01G)
P 1 651・ 113- Y (C01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山口 俊樹伊藤 真明  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 小川 進
後藤 政博
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6290786号(P6290786)
権利者 クリスタル ユーエスエー インコーポレイテッド
発明の名称 メソポーラス二酸化チタンナノ粒子およびその製造方法  
代理人 鮫島 睦  
代理人 特許業務法人ひのき国際特許事務所  
代理人 佐藤 剛  
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