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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B31F
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B31F
管理番号 1347688
異議申立番号 異議2018-700794  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-02 
確定日 2018-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6306963号発明「シングルフェーサ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6306963号の請求項1ないし3、5ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6306963号(以下「本件特許」という。)の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成26年7月18日(優先権主張 平成25年9月3日 日本国)の出願であって、平成30年3月16日にその特許権の設定登録がされ(平成30年4月4日特許掲載公報発行)、その後、平成30年10月2日に特許異議申立人鈴木幸代(以下「異議申立人」という。)により請求項1?3及び5?16に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許異議の申立てがされていない請求項4を含め、本件特許の請求項1?16に係る発明(以下「本件発明1?16」という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
中芯を波状に形成する一対の段ロールと、
両段ロールのうちの特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が変化するように加工ロールを支持し、間隙を変化させるために少なくとも一部が移動する支持機構と、
中芯およびライナ、または中芯を介して、加工ロールを特定の段ロールに押し付ける押圧作動部と、
支持機構のうちの移動する一部と当接可能に配置される規制部材を含み、その移動する一部に対して規制部材が変位する規制機構と、
規制部材を変位させるために駆動されるモータと、
モータの駆動を制御する制御部と、を備え、
制御部は、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、モータを駆動する第1の制御処理を実行するシングルフェーサ。
【請求項2】
制御部は、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値になったときの規制部材の位置を基準位置として、所定の調整値だけ、特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が変化するようにモータを駆動する第2の制御処理をさらに実行する請求項1に記載のシングルフェーサ。
【請求項3】
加工ロールは、金属材料から形成され、
制御部は、第2の制御処理において、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値になったときの規制部材の位置を基準位置として、中芯およびライナの紙厚、または中芯の紙厚に基いて定められる所定の調整値だけ、特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が大きくなるようにモータを駆動する請求項2に記載のシングルフェーサ。
【請求項4】
制御部は、
第1の制御処理において、押圧作動部が加工ロールを特定の段ロールに押し付ける力より小さな力で支持機構のうちの移動する一部に対して規制部材を変位させるための第1のトルクで、モータを駆動し、規制部材が支持機構のうちの移動する一部と当接したときにモータの回転が最初に停止したときから、加工ロールに発生する振動が所定値に減少するまで、第1のトルクで引き続きモータを駆動し、
第2の制御処理において、押圧作動部が加工ロールを特定の段ロールに押し付ける力より大きな力で支持機構のうちの移動する一部に対して規制部材を変位させるための第2のトルクで、所定の調整値だけ、特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が大きくなるようにモータを駆動する請求項3に記載のシングルフェーサ。
【請求項5】
中芯およびライナの紙厚、または中芯の紙厚に基いて定められる所定の調整値は、圧縮されていない状態での中芯およびライナの紙厚から、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値になるまで中芯およびライナを圧縮するために予め定められた圧縮力で圧縮された状態での中芯およびライナの紙厚を差し引いた値、または、圧縮されていない状態での中芯の紙厚から、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値になるまで中芯を圧縮するために予め定められた圧縮力で圧縮された状態での中芯の紙厚を差し引いた値である請求項3または請求項4に記載のシングルフェーサ。
【請求項6】
加工ロールは、非金属材料から形成され、
制御部は、第2の制御処理において、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値になったときの規制部材の位置を基準位置として、中芯およびライナの紙質、または中芯の紙質に基いて定められる所定の調整値だけ、特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が小さくなるようにモータを駆動する請求項2に記載のシングルフェーサ。
【請求項7】
制御部は、1つのオーダに従って片面段ボールが生産される間に、第1および第2の制御処理を含む処理を複数回実行する請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のシングルフェーサ。
【請求項8】
制御部は、第1および第2の制御処理を含む処理が実行される間隔がオーダの開始時よりも、その後のオーダの実行途中の方が長くなるように、第1および第2の制御処理を含む処理を繰り返し実行する請求項7に記載のシングルフェーサ。
【請求項9】
両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動を検出する検出手段を備え、
制御部は、第1の制御処理において、検出手段により検出される振動の大きさが所定値に減少するまで、モータを駆動する請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のシングルフェーサ。
【請求項10】
検出手段は、加工ロールに発生する振動として、モータの回転軸の回転変化量を検出し、
制御部は、第1の制御処理において、モータの回転軸の回転変化量が所定の回転変化量に減少するまで、モータを駆動する請求項9に記載のシングルフェーサ。
【請求項11】
検出手段は、加工ロールに発生する振動として、モータの回転トルクを検出し、
制御部は、第1の制御処理において、モータの回転トルクが所定のトルクまで増加した状態が所定時間継続するまで、モータを駆動する請求項9に記載のシングルフェーサ。
【請求項12】
加工ロールは、特定の段ロールよりも弾力性の大きな非金属材料から形成されるプレスロールである請求項1または請求項6に記載のシングルフェーサ。
【請求項13】
規制機構は、モータにより回転されるネジ軸と、傾斜面を有し、ネジ軸と噛み合ってネジ軸に沿って移動する移動部材と、移動部材の傾斜面と摺接する傾斜面を有し、支持機構のうちの移動する一部と当接するようにネジ軸と直交する方向に移動する規制部材とを含む請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のシングルフェーサ。
【請求項14】
支持機構は、所定の揺動軸線の回りに揺動可能にフレームに取り付けられ、加工ロールを支持する揺動部材を含み、
押圧作動部は、加工ロールを特定の段ロールに押し付けるために揺動部材に連結され、
規制部材は、加工ロールが支持される位置よりも所定の揺動軸線から離れた位置で、揺動部材の一部と当接可能に配置される請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のシングルフェーサ。
【請求項15】
中芯を波状に形成する一対の段ロールと、
両段ロールのうちの特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が変化するように加工ロールの回転軸の両端部をそれぞれ支持し、間隙を変化させるために少なくとも一部が移動する第1および第2の支持機構と、
中芯およびライナ、または中芯を介して、加工ロールを特定の段ロールに押し付ける押圧作動部と、
両支持機構にそれぞれ対応して設けられ、各支持機構のうちの移動する一部と当接可能に配置される規制部材を含み、その移動する一部に対して規制部材が変位する第1および第2の規制機構と、
両規制機構にそれぞれ対応して設けられ、各規制機構の規制部材を変位させるために駆動される第1および第2のモータと、
両モータの駆動をそれぞれ制御する制御部と、を備え、
制御部は、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、各モータを駆動する第1の制御処理を実行するシングルフェーサ。
【請求項16】
両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールの回転軸の両端部に発生する振動をそれぞれ検出する第1および第2の検出手段を備え、
制御部は、第1の制御処理において、各検出手段により検出される振動の大きさ応じて、各モータを駆動する請求項15に記載のシングルフェーサ。」

第3 申立理由の概要
1.提出された証拠
異議申立人は、証拠として以下の甲第1?4号証を提出した。
・甲第1号証:特開2001-171023号公報
・甲第2号証:特開2009-126103号公報
・甲第3号証:特公昭62-4216号公報
・甲第4号証:特開平9-192556号公報
以下、甲第1号証等を、「甲1」等といい、甲1等に記載された発明あるいは事項を、それぞれ「甲1発明」等あるいは「甲1事項」等という。

2.異議申立理由1
本件発明の課題を解決するための手段として、本件の発明の詳細な説明には「第1の制御処理において、規制部材の変位によっては支持機構の移動する一部を移動させることなく、規制部材の当接により支持機構の移動する一部の移動を規制する」ことが記載されているものの、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3及び5?16には当該手段が記載されていない。
よって、本件発明1?3及び5?16は発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合しないものであり、その特許は、特許法第113条第4号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。

3.異議申立理由2
本件発明1,9及び15は甲1発明及び周知技術に基いて、また、本件発明2及び7は甲1発明、甲4事項及び周知技術に基いて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第113条第2号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。

第4 異議申立理由についての判断
1.異議申立理由1について
(1)本件発明が解決しようとする課題は、「加工ロールと段ロールとの間で、中芯およびライナの紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯およびライナに加えること、または、中芯の紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯に加えることができるシングルフェーサを提供すること」(本件明細書の【0007】を参照)であるところ、この課題は、「たとえば、プレスロールと一方の段ロールとの間の間隙を表す間隙検出信号は、プレスロールが振動していることから、その振動に伴って常時変化する。このように常時変化する間隙検出信号を基に、特許文献1に記載のモータが制御された場合、プレスロールと一方の段ロールとの間の間隙は、プレスロールの振動の影響を受けて変動することから、両ロールの間で中芯およびライナの紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯およびライナに加えることができない問題がある。同様に、糊付けロールと一方の段ロールとの間でも中芯の紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯に加えることができない問題がある。」(本件明細書の【0006】を参照)という、従来技術における問題点を解決しようとするために生じたものである。

(2)ところで、本件発明1及び15に特定された「制御部」は、「両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、モータを駆動する第1の制御処理を実行する」ものである。
そして、「所定値」とは、本件明細書の段落【0091】?【0100】及び【図8】の記載、特に段落【0099】の「・・・たとえば、時点TM4?時点TM7の期間において、時点TM5で達する最高の回転速度が所定の回転速度まで低下したか否かが判断される。所定の回転速度は、下位管理装置310から指令される所定のプレス振動閾値に基いて定められる。プレス振動閾値は、プレスローラ44の振動がほぼ抑制された状態での振動の大きさである所定値を表す。・・・」との記載を参酌すると、加工ロールの振動がほぼ抑制された状態での振動の大きさに相当する値であると理解できる。
そうすると、本件発明1及び15は、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが、加工ロールの振動がほぼ抑制された状態での振動の大きさに相当する値に減少するまで、モータを駆動する第1の制御処理を実行し、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動をほぼ抑制するものであると理解できる。
したがって、本件発明1及び15は、上記(1)に示したとおり、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動をほぼ抑制するものであるところ、加工ロールと一方の段ロールとの間の間隙を表す間隙検出信号の変動をほぼ抑制して挟持圧力の安定化することによって当該問題を解消しようとするであると理解でき、本件発明が解決しようとする課題を解決するものであるといえる。
したがって、本件発明1及び15は、本件発明が解決しようとする課題を解決し得るものであり、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。

(3)異議申立人は、「第1の制御処理において、規制部材の変位によっては支持機構の移動する一部を移動させることなく、規制部材の当接により支持機構の移動する一部の移動を規制する」ことが、本件発明1及び15の課題を解決するための必須の構成である旨、主張する。
しかし、上記(1)(2)に示したとおり、本件発明1及び15は、本件発明が解決しようとする課題を解決し得るものであるから、異議申立人の主張は採用できない。

そして、本件発明2、3、及び5?14は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明1にさらに特定事項を付加し、技術的に限定されたものである。
また、本件発明16は、本件発明15を直接引用するものであって、請求項15にさらに特定事項を付加し、技術的に限定されたものである。
したがって、本件発明2、3、5?14、及び16も、本件発明が解決しようとする課題を解決しうるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1?3及び5?16は発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?3及び5?16の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合しないものであるとはいえないから、その特許は、特許法第113条第4号の規定には該当せず、取り消されるべきものではない。

2.異議申立理由2について
(1)刊行物に記載された発明
ア.甲1について
甲1には、図面と共に、以下の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、片面段ボールシートを製造するシングルフェーサの糊付装置に関し、特に、段ロールと糊付ロールとが直接接触した場合における糊付ロールの損傷を低減できるようにしたシングルフェーサの糊付装置に関する。」

(イ)「【0002】
【従来の技術】図3はシングルフェーサの一般的な構成について示したものである。図3に示すように、シングルフェーサ1は芯紙2の搬送ライン上に配設された上段ロール5,下段ロール6,圧力ロール7及び糊付装置8から構成されている。上段ロール5と下段ロール6とは、それぞれ円周面に段が形成され、この段において相互に噛合するように上下の関係で回転自在に配設されている。・・・」

(ウ)「【0003】上記の構成により、上流から供給された芯紙2は上段ロール5,下段ロール6間の噛み合い部を通過する際に段成形される。・・・」

(エ)「【0004】・・・糊付装置8は、シングルフェーサ1の主フレーム9,9間に配設され、主フレーム9,9間に通された支軸11の周りにそのフレーム(糊付フレーム)10を回転可能に支持されている。また、糊付フレーム10の先端下部はフレーム9に固設されたシリンダ12によって支持され、このシリンダ12の伸縮によって糊付装置8は支軸11を中心に揺動運動するようになっている。」

(オ)「【0005】糊付フレーム10,10間には糊付ロール13及びドクタロール14が支持されるとともに糊溜層15が設けられており、この糊溜層15の中に糊16が貯えられている。・・・」

(カ)「【0006】この糊付けの際、糊付ロール13はシリンダ12の作用により所定の力で芯紙2を下段ロール6側に押し付けるようになっている。・・・」

(キ)「【0007】この下段ロール6と糊付ロール13との直接の接触を防ぐため、従来の糊付装置8には、糊付ロール13がある限度以上は下段ロール6に近づかないようストッパ装置17が設けられている。ストッパ装置17は、主フレーム9,9間に通された軸18に偏心輪19を設けるとともに糊付フレーム10に突起部10aを設けることで構成され、突起部10aを偏心輪19に当てて糊付装置8の位置を規制するようになっている。」

(ク)「【0008】このときの下段ロール6と糊付ロール13との隙間は、偏心輪19の回転角度により調整することができ、芯紙2の厚さに応じて変えることができる。つまり、ストッパ装置17は隙間調整装置としても機能するようになっている。・・・」

(ケ)「【0011】図5に示すように、本出願人の先願技術は、ストッパ装置17の軸18にモータ20を取りつけるとともに、パルスゼネレータ21により偏心輪19の回転位相角度を検出することで糊付ロール13と下段ロール6との隙間調整を可能にしたものである。・・・」

(コ)「【0024】本糊付装置は、図5に示した従来の糊付装置と同様の基本構成を有しており、図2に示すように、偏心輪19をそなえた軸18の端部にモータ20を取りつけ、このモータ20の回転により糊付ロール30を下段ロール6に対して離接移動させて、糊付ロール30と下段ロール6との隙間調整を行なうようになっている。・・・」

(サ)「【0026】制御装置41は、その機能要素としてモータ制御手段44と警報制御手段45と接触検知手段46とをそなえている。モータ制御手段44はモータ20の回転制御を行なう手段であり、警報制御手段45は警報装置42の作動を制御する手段である。これらモータ制御手段44,警報制御手段45はともに接触検知手段46からの信号に基づきそれぞれモータ20の回転制御,警報装置42の作動制御を行なうようになっている。」

(シ)「【図5】



(シ)より、糊付ロール13の回転軸の両端部がそれぞれ両糊付フレーム10及び支軸11に支持されているということ、及び、両偏心輪19は両糊付フレーム10にそれぞれ対応して設けられているということが、理解できる。
以上より、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
「芯紙2を段成形する上段ロール5及び下段ロール6と、
下段ロール6と糊付ロール13との間隙が変化するように糊付ロール13を支持し、下段ロール6と糊付ロール13との間の間隙を変化させるために糊付フレーム10が支軸11の周りに回転する糊付フレーム10及び支軸11と、
芯紙2を介して糊付ロール13を下段ロール6に押し付けるシリンダ12と、
糊付フレーム10の突起部10aに当接可能に配置される偏心輪19を含み、突起部10aに対して偏心輪19が回転するストッパ装置17と、
偏心輪19を回転させるために駆動されるモータ20と、
モータ20の駆動を制御する制御装置41と、を備え、
制御装置41は、モータ20を駆動する制御処理を実行するシングルフェーサ。」

(2)本件発明1について
ア.本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
甲1発明の「芯紙2」、「段形成」は、それぞれ、本件発明1の「中芯」、「波状に形成」に相当し、甲1発明の「上段ロール5及び下段ロール6」は、本件発明1の「一対の段ロール」に相当する。
甲1発明の「下段ロール6」、「糊付ロール13」は、それぞれ、本件発明1の「両段ロールのうちの特定の段ロール」、「加工ロール」に相当し、甲1発明の「糊付フレーム10及び支軸11」は、本件発明1の「支持機構」に相当する。
甲1発明の「シリンダ12」は、本件発明1の「押圧作動部」に相当する。
甲1発明の「糊付フレーム10の突起部10a」、「偏心輪19」は、それぞれ、本件発明1の「支持機構のうちの移動する一部」、「規制部材」に相当し、甲1発明の「ストッパ装置17」は、本件発明1の「規制機構」に相当する。
甲1発明の「モータ20」は、本件発明1の「モータ」に相当する。
甲1発明の「制御装置41」は、モータの駆動を制御するものであるという限りにおいて、本件発明の「制御部」に相当する。
甲1発明の「シングルフェーサ」は、本件発明1の「シングルフェーサ」に相当する。

よって、本件発明1と甲1発明は、以下の構成において一致する。
「中芯を波状に形成する一対の段ロールと、
両段ロールのうちの特定の段ロールと加工ロールとの間の間隙が変化するように加工ロールを支持し、間隙を変化させるために少なくとも一部が移動する支持機構と、
中芯およびライナ、または中芯を介して、加工ロールを特定の段ロールに押し付ける押圧作動部と、
支持機構のうちの移動する一部と当接可能に配置される規制部材を含み、その移動する一部に対して規制部材が変位する規制機構と、
規制部材を変位させるために駆動されるモータと、
モータの駆動を制御する制御部と、を備え、
制御部は、モータを駆動する制御処理を実行するシングルフェーサ。」

そして、本件発明1と甲1発明は、以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1は「制御部は、両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、モータを駆動する第1の制御処理を実行する」のに対し、甲1発明は、制御装置41がこのような制御処理を実行するものではない点。

イ.相違点1について検討する。
この点、異議申立人は、異議申立書において以下のように主張している。
「甲第2号証ないし甲第4号証に記載されているように、シングルフェーサにおいて、上段ロール及び下段ロールが中芯を波状に形成している間に、特定の段ロールとの干渉により加工ロールに発生する振動に基づいて、加工ロールと特定の段ロールと間の隙間を調整する隙間調整制御を行うことは周知技術にすぎない。
このような隙間調整制御では、例えば甲第2号証及び甲第3号証に記載されているように、加工ロールと特定の段ロールとの間の間隙を増大させる場合には、制御装置が、「両段ロールが中芯を波状に形成している間に加工ロールに発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、」駆動装置を駆動する制御処理を実行することとなる。
このため、甲1発明1のシングルフェーサの隙間調整制御に、周知技術の隙間調整制御を適用して、制御装置41が、「上段ロール5及び下段ロール6が芯紙2を段成形している間に糊付ロール13に発生する振動の大きさが所定値に減少するまで、」モータ20を駆動する制御処理を実行するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得るものにすぎない。」(異議申立書第37ページ第22行?第38ページ第10行)

しかし、甲1発明は「段ロールと糊付ロールとが直接接触した場合における糊付ロールの損傷を低減できるようにした、シングルフェーサの糊付装置を提供する」(甲1の段落【0014】を参照)という課題を解決しようとするものであり、「芯紙2の紙切れや熱膨張による糊付ロール30の曲がり等により糊付ロール30のストップリング31と下段ロール6とが直接接触すると、芯紙2による緩衝効果が無くなるので糊付ロール30の振動は著しく大きくなる」(甲1の段落【0027】を参照)ので、「糊付ロール30と下段ロール6との接触を検知すると、接触検知手段42は、モータ制御手段44と警報制御手段45とに検知信号を出力するようになっており、この検知信号に基づき、モータ制御手段44では糊付ロール30が下段ロール6から所定量だけ離れる方向にモータ20を回転制御し、警報制御手段45では警報装置42を作動させる」(甲1の段落【0029】を参照)ことにより、「作業員に対して不具合が生じたことを早期に知らせることができるとともに、糊付ロール30と下段ロール6との接触状態をごく短時間のうちに解消する」(甲1の段落【0031】を参照)というものである。
すなわち、甲1発明は不具合を検知して作業員に警報することにより、段ロールと糊付ロールとが直接接触した場合における糊付ロールの損傷を低減しようというものである。
これに対して、本件発明1の解決しようとする課題は、「加工ロールと段ロールとの間で、中芯およびライナの紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯およびライナに加えること、または、中芯の紙厚に応じた挟持圧力を安定して中芯に加えることができるシングルフェーサを提供すること」(本件明細書の【0007】を参照)であるが、このような、作業員によらずに自動で、加工ロールと段ロールとの間の挟持圧力の安定化を図ろうという技術思想は、甲1には記載されていないし、示唆する記載はない。
そのため、仮に、異議申立人の主張するように、シングルフェーサにおいて、上段ロール及び下段ロールが中芯を波状に形成している間に、特定の段ロールとの干渉により加工ロールに発生する振動に基づいて、加工ロールと特定の段ロールと間の隙間を調整する隙間調整制御を行うことが周知技術であったとしても、これを甲1発明に適用することの動機付けは見当たらない。

ウ.以上より、本件発明1は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2、7及び9について
本件発明2、7及び9は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明1に特定事項を付加し、技術的に限定されたものである。
上記(2)に示したように、本件発明1は、甲1発明及び甲2?4事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て包含し、さらに、技術的に限定されたものである本件発明2、7及び9も、甲1発明及び甲2?4事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明15について
本件発明15も、上記相違点1に係る事項を発明特定事項として備えるものであるから、本件発明15と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点1で相違する。
そして、上記相違点1については、上記(2)イ.で検討したとおりである。
よって、本件発明15も、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)小括
以上のとおり、本件発明1、2、7、9、及び15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号には該当せず、取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、本件発明1?3、5?16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3、5?16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-07 
出願番号 特願2014-148039(P2014-148039)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B31F)
P 1 652・ 537- Y (B31F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小川 悟史  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 横溝 顕範
竹下 晋司
登録日 2018-03-16 
登録番号 特許第6306963号(P6306963)
権利者 株式会社ISOWA
発明の名称 シングルフェーサ  
代理人 武藤 勝典  
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