• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D21J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D21J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D21J
管理番号 1347690
異議申立番号 異議2018-700845  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-17 
確定日 2018-12-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6313512号発明「セルロースナノファイバー成形体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6313512号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6313512号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成29年9月6日(優先権主張平成28年10月14日)を出願日とする出願であって、平成30年3月30日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年10月17日に特許異議申立人山田毅彦(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許6313512号の請求項1?4の特許に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
セルロースナノファイバーを含むセルロース繊維を主成分とし、
上記セルロース繊維が、パルプをさらに含み、
上記セルロース繊維に占めるパルプの含有量が、0.1質量%以上70質量%以下であり、
ナノインデンテーション法により算出された25℃における弾性率(E_(25))が3,000MPa以上20,000MPa以下であり、
上記25℃における弾性率(E_(25))に対するナノインデンテーション法により算出された90℃における弾性率(E_(90))の比(E_(90)/E_(25))が0.5以上であり、
JIS K7127:1999に準拠して測定される23℃における引張弾性率(T_(23))に対するJIS K7127:1999に準拠して測定される90℃における引張弾性率(T_(90))の比(T_(90)/T_(23))が0.7以上であるセルロースナノファイバー成形体。
【請求項2】
上記パルプが叩解パルプである請求項1に記載のセルロースナノファイバー成形体。
【請求項3】
上記セルロース繊維に占めるセルロースナノファイバーの含有量が、50質量%以上である請求項1又は請求項2に記載のセルロースナノファイバー成形体。
【請求項4】
密度が0.95g/cm^(3)以上1.5g/cm^(3)以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のセルロースナノファイバー成形体。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証(以下「甲1」といい、甲1に記載された発明を甲1発明という。)を提出し、申立理由1?4を主張している。
1.申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1、3、4は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3項の規定に該当し、本件発明1、3、4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当するから、取り消されるべきものである。

2.申立理由2(特許法第29条第2項)
本件発明1?4は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

3.申立理由3(特許法第36条第4項第1号)
本件発明1は、セルロースナノファイバーを含むセルロース繊維を主成分とするものであれば、セルロース繊維以外の成分を含むことを許容するものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、セルロース繊維以外の成分、例えばセメントや比較的強度の低いPET繊維などを含んだ場合について、どのように作成すれば本件発明1に特定されるセルロースナノファイバー成形体が得られるかが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないから、本件発明1と本件発明1を直接あるいは間接に引用する本件発明2?4に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

4.申立理由4(特許法第36条第6項第1号)
本件発明1の課題は、「優れた強度を有し、かつその強度の温度依存性が低い成形体を提供する」ものであるところ、本件発明1は、達成すべき結果である「強度の温度依存性が低い」ことを示す指標であるE_(90)/E_(25)及びT_(90)/T_(23)を用いて発明特定事項が規定されている。しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には当該結果を達成するための特定の手段による発明が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を、拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないから、本件発明1と本件発明1を直接あるいは間接に引用する本件発明2?4に係る特許は、特許法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:Zhiqiang Fang外、「Highly transparent paper with tunable haze for green electronics」, Energy & Environmental Science、2014年8月、3313?3319

第4 甲1の記載
甲1には、3313ページ右欄23?末行、3314ページ左欄1?26行、3315ページ右欄末行?3316ページ左欄7行、及び、3315ページのFig.2の記載及び図示があり、それらの記載から把握される発明、すなわち甲1に記載された甲1発明を、申立人が提出した訳文により示すと、次のとおりである。
「NFC(ナノ繊維セルロース)を含むセルロース繊維を主成分とし、
上記セルロース繊維が、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)-酸化木質パルプをさらに含み、
上記セルロース繊維に占めるTEMPO-酸化木質パルプの含有量が20質量%あるいは50質量%である透明紙」

第5 当審の判断
1.申立理由1について
(1)本件発明1(特許法第29条第1項第3号)について
ア.本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点>
本件発明1のセルロースナノファイバー成形体は、「ナノインデンテーション法により算出された25℃における弾性率(E_(25))が3,000MPa以上20,000MPa以下であり、上記25℃における弾性率(E_(25))に対するナノインデンテーション法により算出された90℃における弾性率(E_(90))の比(E_(90)/E_(25))が0.5以上であり、JIS K7127:1999に準拠して測定される23℃における引張弾性率(T_(23))に対するJIS K7127:1999に準拠して測定される90℃における引張弾性率(T_(90))の比(T_(90)/T_(23))が0.7以上であるセルロースナノファイバー成形体。」であるのに対し、甲1発明の「透明紙」がそのようなものであるか不明である点。

イ.相違点についての検討
上記相違点は、ファイバー成形体が有する、25℃における弾性率や、25℃と90℃のそれぞれにおける弾性率の比、そして、23℃と90℃における引張弾性率の比についての相違点であり、当該相違点により、本件発明1のセルロースナノファイバー成形体は、優れた強度を有し、かつその強度の温度依存性が低いとの格別な作用効果を奏する。よって、上記相違点は、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明ではない。

(2)本件発明3及び4について
本件発明3及び4は、直接あるいは間接に本件発明1を引用する発明である。そうすると、本件発明1の特定事項の全てを包含する本件発明3及び4も、甲1発明ではない。

(3)申立人の主張について
申立人は、甲1の第3314ページ左欄第1段落?第2段落に記載された「Experimental」に準じて、成形体を作成し、得られた厚み50μmの成形体について、本件特許明細書に記載された方法で各温度における弾性率及び引張弾性率を測定すると、E_(25)は、4,000(表面)もしくは4,100(裏面)MPaであり、E_(90)/E_(25) は、2.3(表面)もしくは1.9(裏面)であり、T_(90)/T_(23)は、1.2であったから、甲1の「Experimental」で作成された成形体は、本件発明1の全ての構成要件を満たすものである旨主張している。(申立書10ページ下から7行?15ページ17行)
しかし、甲1には、上記相違点に係る構成を、甲1発明が備えていることの直接的な記載もないし、示唆する記載もない。そして申立人が作成した上記成形体は「なお、上記<TEMPO酸化パルプ作成方法>には、甲第1号証の「Experimental」の記載の条件と若干異なる点や、甲第1号証の「Experimental」に詳細な条件の記載がないために異議申立人が適宜設定した」(特許異議申立書11ページ12?16行)と申立人が説明しているところ、そうした「若干異なる点」や「異議申立人が適宜設定した点」によっては、上記弾性率や引張弾性率が影響を受けることはないことを示す証拠はないから、上記申立人が作成した成形体は、甲1発明であるとはいえない。したがって、たとえ、申立人が作成した成形体が、上記相違点に係る構成を備えたものであったとしても、そのことは本件発明1が甲1発明であることの論拠にはなり得ないから、上記主張は採用できない。

(4)小括
よって、本件発明1、3、4は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当せず、本件発明1、3、4に係る特許は、特許法第113条第2号に規定された要件に該当せず、取り消すことはできない。

2.申立理由2(特許法第29条第2項)について
(1)本件発明1について
ア.本件発明1及び甲1発明
本件発明1は、上記第2に示したとおりのものであり、甲1発明は、上記第4に示したとおりのものである。

イ.対比・検討
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記第5の1.(1)ア.に示した<相違点>において相違するから、次に当該<相違点>について検討する。

甲1には、次の記載がある。
「 In this work, we proposed a facile method to manage the optical properties of paper through a rational design, TEMPO (2,2,6,6-tetramethylpiperidine-1-oxyl radical)-oxidized microsized wood fibers with an average diameter of ?27 μm and an average length of 0.92 mm were used to enhance the haze of the paper, while NFC (nanofibrillated cellulose) with a diameter of ?30 nm was used to decrease the haze of the paper. By adjusting the weight ratio of the TEMPO-oxidized wood fibers to the NFC, the transparent paper fabricated by vacuum filtration possesses a tunable haze from 18% to 60% while rataining a transumittance of over 90%. In addition, a scattering angular distribution measurement was conducted to elucidate the light scattering effect of various transparent papers with a different haze and a high-performance transistor with a MoS_(2) nanoflake as a semiconductor was demonstrated.」(3313ページ右欄23?最下行)
(本研究において、我々は、合理的な設計を通じて、紙の光学特性を管理する容易な方法を提案する。約27μmの平均径および0.92mmの平均長さを備えたTEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)-酸化マイクロサイズ木質繊維を使用して、紙のヘイズを強化し、その一方で、約30nmの径を備えたNFC(ナノ繊維セルロース)を使用して、紙のヘイズを減少させた。NFCに対するTEMPO-酸化木質繊維の重量比を調整することにより、真空濾過で作成された透明紙は、18%から60%まで調整可能なヘイズを有し、その一方で90%を超える透過率を保持している。さらに、散乱角度分布測定を実施して、異なるヘイズを有する種々の透明紙の光散乱効果を明らかにし、半導体としてMoS_(2)ナノフレークを備えた高性能トランジスターを実証した。)

そうすると、甲1発明は、紙のヘイズ値や透過率といった光学特性を調整するために、NFCに対するTEMPO-酸化木質繊維の重量比を調整するものである。そして、甲1には当該重量比を調整することで、上記相違点に係る本件発明1の構成を甲1発明に備えることを示す記載はないし、示唆する記載もない。よって、甲1発明には、本件発明1における相違点に係る構成を備えたものにすることの動機付けは存在しない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を備えることで、上記1.(1)イ.に示した格別な作用効果を奏する。

以上のとおりであるから、甲1発明において、相違点に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえず、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1を直接あるいは間接に引用するものである。そうすると、本件発明1の構成を包含し、さらに技術的に限定された本件発明2?4も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(3)小括
上記(1)及び(2)に示したとおり、本件発明1?4は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第2号に規定された要件に該当せず、取り消すことはできない。

3.申立理由3(特許法第36条第4項第1号)について
本件特許明細書の段落【0045】?【0086】には、CNF(セルロースナノファイバー)成形体の製造方法が記載されており、さらに段落【0099】?【0105】には、実施例1の「CNF成形体」を得る方法が記載されている。また、段落【0108】には、実施例4の「CNF成形体」を得る方法が記載されている。さらに、段落【0109】には、実施例5の「CNF成形体」を得る方法が記載されている。なお、実施例2は、「実施例1と同様の方法により、CNF成形体を得て、引張試験を行った」(段落【0106】)ものである。
そして、これら実施例1、2、4、5に対し、段落【0088】?【0097】に記載された評価方法に準じて物性を測定した結果が段落【0111】の【表1】に記載されている。
それらの記載によれば、実施例1、2、4、5は、いずれも本件発明1に記載された「上記25℃における弾性率(E_(25))に対するナノインデンテーション法により算出された90℃における弾性率(E_(90))の比(E_(90)/E_(25))が0.5以上であり、JIS K7127:1999に準拠して測定される23℃における引張弾性率(T_(23))に対するJIS K7127:1999に準拠して測定される90℃における引張弾性率(T_(90))の比(T_(90)/T_(23))が0.7以上」である。
さらに実施例4は、本件発明2と同様に、パルプとして「叩解パルプ」を用いたものである。
また、実施例1、2、5は、本件発明3と同様に、セルロース繊維に占めるセルロースナノファイバーの含有量が、50質量%以上である(本件特許明細書の段落【0099】、【0109】)。
そして、実施例1、2、4及び5の密度は、本件発明4と同様に、「0.95g/cm^(3)以上1.5g/cm^(3)以下」(本件特許明細書の段落【0111】の【表1】)である。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4を実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。
申立人は、上記第3の3.に示したように、「本件特許明細書の発明の詳細な説明には、セルロース繊維以外の成分、例えばセメントや比較的強度の低いPET繊維などを含んだ場合について、どのように作成すれば本件発明1に特定されるセルロースナノファイバー成形体が得られるかが、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない」と主張している。しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、セルロース繊維以外の成分を含んだものについての記載がされていなくとも、上記したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1?4を実施ができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、申立人の主張は採用できない。さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1?4を実施ができる程度に明確かつ十分に記載されているのだから、本件発明1?4が課題を解決できるように、セルロース繊維以外の成分を調整しつつ添加することで、過度の試行錯誤を経ることなく、セルロース繊維以外の成分が含まれた本件発明1?4についても当業者は実施できるものと解される。
以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定された要件に適合しないとはいえず、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第4号に規定された要件に該当せず、取り消すことはできない。

4.申立理由4(特許法第36条第6項第1号)について
本件特許明細書の「近年、物質をナノメートルレベルまで微細化し、物質が持つ従来の性状とは異なる新たな物性を得ることを目的としたナノテクノロジーが注目されている。化学処理、粉砕処理等によりセルロース系原料であるパルプから製造されるセルロースナノファイバー(以下、「CNF」と略記することもある)は、強度、弾性、熱安定性等に優れている。このCNFの成形体は、バイオマス由来の高強度材料として、各種用途への活用が期待されている。
このような中、CNFの強度を活かした複合材料として、CNFにマトリクス材料としての有機高分子等を混合させた繊維強化複合材料などが提案されている(特開2005-60680号公報参照)。しかし、このような複合材料は、主成分であるマトリクスに有機高分子等を用いるため、高温環境下で軟化するなどといった不都合を有する。従ってこの場合、高温環境下で十分な強度を発揮できない場合がある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、セルロース繊維を主成分とし、優れた強度を有し、かつその強度の温度依存性が低い成形体を提供することである。」(段落【0002】?【0005】)という記載から、本件発明は、「セルロース繊維を主成分とし、優れた強度を有し、かつその強度の温度依存性が低い成形体を提供すること」を課題とするものであるといえる。
そして、本件発明1は、「セルロースナノファイバーを含むセルロース繊維を主成分」とするものであって、さらに、「ナノインデンテーション法により算出された25℃における弾性率(E_(25))が3,000MPa以上20,000MPa以下」との強度を有するものであって、「25℃における弾性率(E_(25))に対するナノインデンテーション法により算出された90℃における弾性率(E_(90))の比(E_(90)/E_(25))が0.5以上」であって、「JIS K7127:1999に準拠して測定される23℃における引張弾性率(T_(23))に対するJIS K7127:1999に準拠して測定される90℃における引張弾性率(T_(90))の比(T_(90)/T_(23))が0.7以上」であるから、90℃という高温下での弾性率や引張弾性率が、25℃又は23℃でのものに比べて、大きく低下するものではなく、高温環境下で十分な強度を発揮するから、強度の温度依存性が低いものであるといえる。
よって、本件発明1と本件発明1を直接あるいは間接に引用する本件発明2?4は、上記本件発明の課題を解決するものであると理解できるから、本件発明の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合しないとはいえず、その特許は特許法第113条第4号の規定に該当せず、取り消すことはできない。
なお、申立人は、上記第3の4.に示したように、「本件発明1では、達成すべき結果である「強度の温度依存性が低い」ことを示す指標としてE_(90)/E_(25)及びT_(90)/T_(23)を用いて発明特定事項が規定されている。しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には当該結果を達成するための特定の手段による発明が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を、拡張ないし一般化できるとはいえない」と主張している。しかし、上記したように、本件発明1?4は、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。そして、上記3.においても示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1?4の実施ができる程度に明確かつ十分なものであるから、当該記載に基いて、本件発明1?4に特定された事項を満たすように、繊維の材質や含有割合等を選定することは、当業者が通常行う試行錯誤の範囲内のものであると解される。そうすると、発明の詳細な説明において開示された内容を、本件特許請求の範囲の記載の範囲にまで、拡張ないし一般化することはできないとはいえないから、申立人の上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する申立理由1?4によっては、本件発明1?4のそれぞれに係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4のそれぞれに係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-10 
出願番号 特願2017-171337(P2017-171337)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21J)
P 1 651・ 537- Y (D21J)
P 1 651・ 536- Y (D21J)
P 1 651・ 113- Y (D21J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 堀内 建吾岩田 行剛  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 久保 克彦
白川 敬寛
登録日 2018-03-30 
登録番号 特許第6313512号(P6313512)
権利者 大王製紙株式会社
発明の名称 セルロースナノファイバー成形体  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ