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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1347696
異議申立番号 異議2018-700789  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-28 
確定日 2018-12-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第6302692号発明「中空封止用樹脂シート及び中空パッケージの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6302692号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯

特許第6302692号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成26年2月7日(優先権主張 平成25年3月28日)の出願であって、平成30年3月9日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年9月28日に特許異議申立人 益川 教親 により特許異議の申立てがされたものである。


第2.本件特許発明

本件特許第6302692号の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
無機充填剤を70体積%以上90体積%以下の含有量で含み、
前記無機充填剤の全量を100体積%とした際の前記無機充填剤のレーザー回折散乱法により測定した粒度分布が以下を満たす中空封止用樹脂シート。
100μm超:1体積%以下
10μm以下:30体積%以上70体積%以下
1μm以下:10体積%以上
【請求項2】
硬化前の80℃における動的粘度が5000Pa・s以上30000Pa・s以下である請求項1に記載の中空封止用樹脂シート。
【請求項3】
前記無機充填剤がシリカ粒子、アルミナ粒子又はこれらの混合物である請求項1又は2に記載の中空封止用樹脂シート。
【請求項4】
被着体上に配置された1又は複数の電子デバイスを覆うように請求項1?3のいずれかに記載の中空封止用樹脂シートを前記電子デバイス上に前記被着体と前記電子デバイスとの間の中空部を維持しながら積層する積層工程、及び
前記中空封止用樹脂シートを硬化させて封止体を形成する封止体形成工程
を含む中空パッケージの製造方法。」


第3.申立理由の概要

1.特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証?甲第8号証を提出し、以下のように主張している。

ア.取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
請求項1ないし4に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明と同一であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

イ.取消理由2(特許法第29条第2項)
請求項1ないし4に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ウ.取消理由3(特許法第29条第2項)
請求項1ないし4に係る発明は、下記の甲第1号証に記載の発明に、甲4、5号証に記載された技術事項を適用して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証: 特開2006-19714号公報
甲第2号証: DENKA 溶融シリカ 製品カタログ Version7.1 電気化学工業株式会社 2002年10月1日発行
甲第3号証: 球状シリカ/球状アルミナ 製品カタログ Ver.9 電気化学工業株式会社 2010年5月12日発行
甲第4号証: 特開2012-46657号公報
甲第5号証: 特開2010-3897号公報
甲第6号証: 特開2011-219726号公報
甲第7号証: 特開2004-231768号公報
甲第8号証: 「エポキシ成形材料の流動性に及ぼす球形充填剤の粒度分布の影響」 討論会講演要旨 合成樹脂工業協会編集・発行 1993年43巻 141-144頁(https://www.jstage.jst.go.jp/article/networkpolymer1951/43/0/43_141/_article/-char/ja/)


第4.甲号証の記載事項

1.甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付加した。以下、同じ。)

(1)「【0005】
上述の現状に鑑みて、本発明は、弾性表面波デバイス等の中空モールドをゲル状硬化性樹脂シートを用いて基板上で一括樹脂封止する際に、中空部の成形性に優れ、チップ抜け基板等の場合にもボイドの発生を低減でき、上述の問題を解決できる、信頼性と生産性に優れた製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、意外にも、真空下でゲル状硬化性樹脂シートを配置した後、熱ロールによる成形を組み合わせることにより、上記不良の発生を大幅に低減できることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、配線基板上に、上記配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を、上記複数の配列された機能素子を覆うように上記配線基板上に配置されたゲル状硬化性樹脂シートを加熱硬化させて、上記配線基板と上記機能素子との間を中空に保ちつつ、一括樹脂封止する電子部品の製造方法であって、少なくとも、以下の工程(a)、(b)、(c)及び(d)を有する電子部品の製造方法である:
(a)配線基板上に上記配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を覆うように、上記配線基板上にゲル状硬化性樹脂シートを配置する工程、
(b)上記複数の配列された機能素子がその内部に含まれている上記ゲル状硬化性樹脂シートと上記配線基板とで囲まれた閉空間領域を、真空にする工程、
(c)上記閉空間領域を真空に維持しつつ、熱ロールで上記ゲル状硬化性樹脂シートを硬化温度未満に加熱し流動させながら封止樹脂表面を平坦に成形する工程、及び、
(d)上記ゲル状硬化性樹脂シートを硬化温度に加熱して硬化させる工程。」

(2)「【0010】
上記ゲル状硬化性樹脂シートは、たとえば液状または固状の硬化性組成物とゲル化剤として作用する熱可塑性樹脂パウダーとの混合物をシート化することにより製造することができる。なお、固状の硬化性組成物に対するゲル化剤というのは、加熱し、溶融する条件にした場合にもゲル状にすることができるようにするためのものである。
【0011】
上記液状または固状の硬化性組成物の具体例としては、たとえばエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、ポリイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、ケイ素樹脂などの熱硬化性樹脂を樹脂成分として含有する硬化性組成物などがあげられる。これらは1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちでは、エポキシ樹脂組成物が、低粘度で、フィラー充填など他の機能を付与するのに適する点から好ましい。
【0012】
上記エポキシ樹脂組成物は、一般に、エポキシ樹脂、硬化剤および(または)潜在性硬化促進剤、必要により使用されるシリカ、アルミナなどのフィラー、その他の添加剤(ゲル化剤を除く)などを含有する組成物である。」

(3)「【0037】
上記ゲル状硬化性樹脂シートは、低ガラス転移温度、低線膨張率であることが、硬化物を低応力化(低ソリ化)することができるので好ましく、さらに、原料を高純度化したものであることが、不純物イオンが少なく、弾性表面波チップ表面の汚染を防ぐことができるので好ましく、さらに、ゲル状硬化性樹脂シートの弾性率(25℃)が103?109Pa、さらには104?108Paで、硬化時の溶融粘度が10?105Pa・s、さらには103?104Pa・sであることが、熱ロールすることにより、封止樹脂層形成前のデバイスに弾性表面波電極面と配線パターンが形成された面とがバンプの高さのぶん隔てられた部分が中空構造を保つように封止樹脂層を形成するうえで好ましい。また、軟化温度は、50℃以上、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0038】
上述のように、上記ゲル状硬化性樹脂シートにおいては、低ガラス転移温度であるか、及び/又は、低線膨張率であることが、硬化物を低応力化(低ソリ化)するうえで好ましい。低ガラス転移温度としては、ゲル状硬化性樹脂シートの硬化物のTgが100℃以下が好ましく、さらには60℃以下であることがより好ましい。また低ソリ化・流動性調整・電子部品の高信頼化等のために低熱膨張率を得るためには、ゲル状硬化性樹脂シートは無機フィラー(例えば溶融シリカなど)を好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上含有している。フィラーを高充填したシートの場合は、熱膨張率が低くなり低ソリ化できるので、信頼性を考慮するとTgは高い方が好ましく、例えば100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上であるが、これに限定されるものではなく、用途に応じて調整可能である。」

(4)「【0040】
なお、最内層のシートの軟化温度を他のシートより高くする場合、軟化温度は、最内層の軟化温度が5℃以上高いことが好ましく、より好ましくは10℃以上高いことが、製造方法上好ましい。ここで、軟化温度とは、シートを加熱軟化させながら電子部品を封止するという観点から、封止性を損なうことのない温度、すなわちシートの粘度が十分下がった温度を軟化点と定義し、例えば、弾性率G′の温度変化のグラフから外挿線の交点を求める方法で測定することができ、例えば、グラフにおいて、温度上昇とともにG′が下降する曲線の勾配が最大になる点で引いた接線とG′が充分低下した領域において引いた接線との交点の温度とすることができる。また上記ゲル状硬化性樹脂シートを複数枚積層する方法としては、ラミネート方法が好ましい。例えば、2枚以上積層する方法としては、加熱することが可能な2本のローラーを備えたラミネーターを用いて行うことができる。ラミネートする温度は、25?120℃が、シートの軟化点及び粘度の変化なく確実にラミネートできるので好ましい。」

(5)「【0051】
実施例1?5及び比較例1?2
表1の配合でワニスを作成し、このワニスを、離型処理された75μm厚さのPETフィルムの離型処理された面に塗布して乾燥後、樹脂層が300μm厚になるように調整し、PETフィルム上にゲル状エポキシ樹脂シート(軟化点50℃)を形成した。
【0052】
得られたシートの軟化温度(℃)、軟化時の弾性率(Pa)、軟化時の動的複素粘度(Pa・s)を測定した。また、硬化物(150℃、3時間、オーブン硬化)のTg(℃)、線膨張係数(ppm)、曲げ弾性率(25℃、150℃;GPa)を測定した。
測定方法:
軟化温度、弾性率、粘度:ARES粘弾性測定装置(TA)、動的粘弾性測定(Temp Ramp、周波数1HZ、Ramp Rate2.5℃/min)
曲げ弾性率:DMA6100(SEIKO)、動的粘弾性測定(Temp Ramp、周波数1Hz、Ramp Rate2℃/min)
線膨張係数:TMA120C(SEIKO)、(Ramp Rate2.5℃/min)
【0053】
得られたシートを適当な大きさに切断したものを、200μm×30mm×50mmのガラエポ基板上に、高さ50μmのバンプで接続された400μm×2mm×2mmのダミーチップを7行7列に2mm間隔で49個形成した保護層形成前のデバイスの上に、一番外側配列のチップから2mm外側までをカバーするようにのせた。このものを、実施例及び比較例に供した。
【0054】
実施例1では、配合1で得られたシートをデバイスに真空ラミネーター(25℃、5秒間、シートタックを利用してシート外周部を基板に貼付け)で真空ラミネートした。実施例2では、配合1で得られたシートをのたせデバイスを、50℃、10秒間、0.1MPaで真空プレスしてプリフォームした。比較例では、いずれも、配合1で得られたシートをデバイスにのせたものをそのまま熱プレス又は熱ロールにかけた。実施例、比較例とも、熱ロールは、上ロール(100℃、ゴムロール)、下ロール(25℃、金属ロール)の間を0.77mmに設定し、0.3m/分の速度で行った。この後、それぞれのサンプルを、150℃、3時間、オーブン硬化した。また、比較例の熱プレスは、150℃で5分間、0.1MPaで行い、硬化させた。
【0055】
実施例3?5では、配合2及び配合3(実施例3)、配合2及び配合4(実施例4)又は配合3及び配合4(実施例5)を、それぞれ、1枚ずつ2枚をラミネートした。上記実施例3?5でシートを2枚積層する方法としては、加熱することが可能な2本のローラーを備えたラミネーター(自社製)を用いて行った。ラミネートする温度は100℃で行った。
【0056】
なお、表1中の略号は以下のとおりである。
LSAC6006:旭化成エポキシ(株)製、変性(プロピレンオキサイド付加)エポキシ樹脂、エポキシ当量250g/eq
DAL-BPFD:本州化学工業(株)製、ジアリルビスフェノールF
HX3088:旭化成エポキシ(株)製、変性イミダゾール、活性温度約80℃
F301:日本ゼオン(株)製、アクリルパウダー、粒径2μm、軟化温度80?100℃のポリメチルメタクリレート
FB201S:電気化学工業(株)製、充填用シリカ
A187:日本ユニカー(株)製、エポキシシラン
IXE600:東亞合成(株)製、ビスマスアンチモン、イオンキャッチャー
RY200:日本アエロジル(株)製、微粉シリカ、揺変性発現剤
RE304S:日本化薬(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq
ELM100:住友化学(株)製、アミノエポキシ樹脂、エポキシ当量105g/eq
EPPN-502H:日本化薬(株)、多官能エポキシ樹脂、エポキシ当量170g/eq
MEH7500:明和化成(株)、多官能フェノール、フェノール当量105g/eq
2P4MHZ:四国化成工業(株)、変性イミダゾール
【0057】
【表1】




・上記(1)の段落【0006】には、配線基板上に、上記配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を、覆うように上記配線基板上に配置し加熱硬化させて、上記配線基板と上記機能素子との間を中空に保ちつつ、一括樹脂封止するゲル状硬化性樹脂シート、が記載されている。
・上記(2)の段落【0010】、【0011】には、上記ゲル状硬化性樹脂シートが硬化性組成物としてエポキシ樹脂組成物とゲル化材からなることが記載されている。
さらに、上記(5)の段落【0051】、【0056】、及び【0057】の【表1】には、ゲル状硬化性樹脂シートの実施例であるゲル状エポキシ樹脂シートに用いる配合パターンの「配合4」として、FB201S(電気化学工業(株)製、充填用シリカ)を81重量%含ませること、硬化時の動的複素粘度が5×10^(5)Pa・sであることが記載されている。

以上総合すると、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。

「配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を覆うように上記配線基板上に配置し加熱硬化させて、上記配線基板と上記機能素子との間を中空に保ちつつ、一括樹脂封止するゲル状硬化性樹脂シートにおいて、
充填用シリカとして、FB201S(電気化学工業(株)製)を81重量%含み、
硬化時の動的複素粘度が5×10^(5)Pa・s、
であるゲル状硬化性樹脂シート。」


2.甲第2号証の記載事項
電気化学工業株式会社の溶融シリカの製品カタログである甲第2号証には、以下の事項が記載又は示されている。

(1)2頁の表にはタイトルとして「DENKA 溶融シリカ/主要グレード平均粒径・比表面積」と記載され、球状シリカの列である第2列の第8行の欄に「FB-201S(3.1)」と記載され、また、該表の上部に「()内は比表面積(m^(2)/g)」と記載されている。

(2)4頁上欄の表にはタイトルとして「球状シリカ/汎用グレードFB 一般タイプ(粗粒子カットポイント:71μm)」と記載され、該表の第6列には「FB201S」の「Cilas920粒度分布(%)」による粒度分布と、比表面積(m^(2)/g)が記載され、1μm以下の粒子が5.7%、8μm以下の粒子が43.2%、12μm以下の粒子が48.3%、96μm以下の粒子が99.8%、128μm以下の粒子が100%であること、比表面積(m^(2)/g)が3.1であることが記載されている。
また、4頁下欄には上欄の各製品のCilas920による粒度分布(%)をグラフにしたものが記載されているが、縦軸に「累積重量%」と記載されていることから、上欄の表における「Cilas920粒度分布(%)」は重量%で示しているものと認められる。

以上総合すると、甲第2号証には、以下の技術事項(以下、「甲2記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「電気化学工業(株)社製のFB-201Sは、球状溶融シリカであって、Cilas920による粒度分布(%)が、1μm以下の粒子が5.7重量%、8μm以下の粒子が43.2重量%、12μm以下の粒子が48.3重量%、96μm以下の粒子が99.8重量%、128μm以下の粒子が100重量%であり、比表面積(m^(2)/g)は3.1である。」


3.甲第3号証の記載事項
電気化学工業株式会社の球状シリカ/球状アルミナの製品カタログである甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(1)6頁上欄の表にはタイトルとして「球状シリカ/汎用グレードFB 55μmタイプ」と記載され、該表の第7列には「FB-9454FC」の「Cilas920粒度分布(%)」による粒度分布と、比表面積(m^(2)/g)が記載され、1μm以下の粒子が6.5%、8μm以下の粒子が36.6%、12μm以下の粒子が42.5%、96μm以下の粒子が100%であること、比表面積(m^(2)/g)が3.4であることが記載されている。
また、6頁下欄には上欄の各製品のCilas920による粒度分布(%)をグラフにしたものが記載されているが、縦軸に「累積重量%」と記載されていることから、上欄の表における「Cilas920粒度分布(%)」は重量%で示しているものと認められる。


以上総合すると、甲第3号証には、以下の技術事項(以下、「甲3記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「電気化学工業(株)社製のFB-9454FCは、球状シリカであって、Cilas920による粒度分布(%)が、1μm以下の粒子が6.5重量%、8μm以下の粒子が36.6重量%、12μm以下の粒子が42.5重量%、96μm以下の粒子が100重量%であり、比表面積(m^(2)/g)は3.4である。」


4.甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料及び蓄熱性成形体等が提供される。
1.下記に示すポリアルファオレフィンの架橋体(A)、エポキシ樹脂(B)、及び無機充填材(C)を混練してなり、前記ポリアルファオレフィンの架橋体を0.2?5質量%含有する半導体封止用エポキシ樹脂成形材料。
ポリアルファオレフィンの架橋体(A):炭素数が16以上36以下であるαオレフィン単量体を少なくとも1種用いて重合して得た重合体に、スチレン類をグラフトして得られ、下記(a),(b)の条件を満たす架橋体。
(a)25℃で濃度15質量%にて2-ブタノンに分散させた場合、2-ブタノン不溶成分が70質量%以上である。
(b)示差走査型熱量計(DSC)を用いた融解挙動測定において、融点が30℃以上80℃以下であり、ピーク温度が一つだけ観測される。
・・・中略・・・
5.前記無機充填材(C)を80質量%以上含有する1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料。
6.前記ポリアルファオレフィンの架橋体(A)を、他の成分に溶融状態で噴霧して添加する工程を有する1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法。
7.上記1?5のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料からなる封止層と、前記封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材。
・・・以下略・・・ 」

(2)「【0090】
[半導体封止用エポキシ樹脂シート部材]
実施例2-1
封止材料基準で85.5質量%の球状シリカ粉体(FB9454FD、粒径≦45μm、電気化学工業株式会社製)、エポキシ樹脂(YX4000H、ジャパンエポキシレジン株式会社製)7質量%、エポキシ樹脂硬化剤(MEH7800、明和化成株式会社製)5質量%、エポキシ樹脂硬化促進剤(TPP、ケイアイ化成株式会社製)0.2質量%及び改質剤(S530、チッソ株式会社製)0.3質量%をヘンシェル型混合機に入れ、製造例7で得られたCPAO-50MS(融点50℃)2質量%を、粒径が15±5μmとなるように調整しつつ、溶融噴霧しながら攪拌混合し、封止材料を得た。
CPAO-50MSの粒径は、透明フィルムにCPAO-50MSを噴霧しフィルム上の液滴の粒径を計測したところ、25μm以下であった。
次に、混合物を押出機(SK1、株式会社栗本鐵工所製)で混錬した後、製造例4で得られたCPAO-40MS2を溶融塗布した保護フィルム(PET、75μm厚、東レ株式会社製)に挟み込み半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を得た。CPAO-40MS2の溶融塗布時の厚みは、6±3μmになるように調整した。
この部材の片面の保護フィルムを剥した後、模擬半導体基板(チップサイズ 10mm×10mmの176pinLQFP、外形24mm×24mm×1.4mm)を圧着成形(金型温度150℃、硬化時間3分)により封止し、剥離性、充填性、金線変形、外観について、下記の方法で評価した。尚、剥離性、充填性、金線変形、外観評価に用いた模擬半導体部品は、片面銅箔基板に半導体を整列配置する擬似回路配線を加工し、半導体は搭載せずに半導体相当部と外部接続用端子部を金線で結線したものである。」

(3)「【0111】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料は、半導体封止用トランスファー成形材料として用いた場合に成形性に優れており、特に、一括封止法において抜群の性能を発揮する。成形時の諸問題のため実用化が困難であった最先端半導体装置の樹脂封止を可能とする成形材料であり、既存の設備を使用して最先端の半導体装置を工業的に生産することを可能にする。
また、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は、半導体封止用圧着成形用シート部材として用いた場合に成形性に優れており、特に、一括封止法において抜群の性能を発揮する。成形時の諸問題のため実用化が困難であった最先端半導体装置の樹脂封止を可能とするシート部材であり、既存の設備を使用して最先端の半導体装置を工業的に生産することを可能にする。
本発明の蓄熱性成形体は、温度調整機能を有するため、体の周囲に接触又は非接触して用いて、体温に対して温度調節するのに適する。
具体的には、スキーウェア、レインウェア、ウェットスーツ等のスポーツ衣料、防寒衣料、靴下、パンティストッキング、シャツ、背広等の一般衣料、中綿等の寝具、手袋、靴材、家具用、自動車用人工レザー、保温、保冷が要求される食品包装材、建材等に使用でき、特に、繊維製品、家具及び自動車用レザー製品等に好適に使用できる。」


5.甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような状況下で、半導体素子の圧着成形による樹脂封止において、成形時の不良発生(未充填、金線変形、ボイド発生、半導体移動等)が極めて少ない優れた半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、特に、圧着成形一括封止法に最適な半導体封止用エポキシ樹脂シート部材及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、好ましくは溶融状態で噴霧添加された特定の融点と粒径を有する結晶性ポリアルファオレフィンと、エポキシ樹脂及び無機充填材を溶融混練してなる半導体封止用エポキシ樹脂シート部材により、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1.少なくとも(A)融点が30?90℃の結晶性ポリアルファオレフィンの粒径50μm以下の粉体及び/又は霧状体、(B)エポキシ樹脂、並びに(C)無機充填材を溶融混練してなり、かつ、該結晶性ポリアルファオレフィンを0.2?5質量%含有する封止材料からなる封止層を有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材であって、さらに、該封止層の片面又は両面に保護フィルムを有する半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、
2.前記結晶性ポリアルファオレフィンが、融点の-15℃以内で融解を開始し+3℃以内で融解を終了するものである上記1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、
3.前記保護フィルムの封止層側に、融点が30?90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを含む厚さ0.1?10μmの剥離層を有する上記1又は2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材、及び
4.融点が30?90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で噴霧して封止材料を製造する工程と、保護フィルムに融点が30?90℃の結晶性ポリアルファオレフィンを溶融状態で塗布又は噴霧して剥離層を形成する工程とを含むことを特徴とする上記1?3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材の製造方法、
を提供するものである。」
(2)「【0037】
実施例1
封止材料基準で85.5質量%の球状シリカ粉体(FB9454FD、粒径≦45μm、電気化学工業株式会社製)、エポキシ樹脂(YX4000H、ジャパンエポキシレジン株式会社製)7質量%、エポキシ樹脂硬化剤(MEH7800、明和化成株式会社製)5質量%、エポキシ樹脂硬化促進剤(TPP、ケイアイ化成株式会社製)0.2質量%および改質剤(S530、チッソ株式会社製)0.3質量%をヘンシェル型混合機に入れ、製造例4で得られたCPAO-50(融点52℃)2質量%を、粒径が15±5μmとなるように調整しつつ、溶融噴霧しながら攪拌混合し、封止材料を得た。CPAO-50の粒径は、透明フィルムにCPAO-50を噴霧しフィルム上の液滴の粒径を計測したところ、25μm以下であった。つぎに、混合物を押出機(SK1、株式会社栗本鐵工所製)で混錬した後、製造例5で得られたCPAO-40を溶融塗布した保護フィルム(PET、75μm厚、東レ株式会社製)に挟み込み半導体封止用エポキシ樹脂シート部材を得た。CPAO-40の溶融塗布時の厚みは、6±3μmになるように調整した。この部材の片面の保護フィルムを剥した後、模擬半導体基板(チップサイズ 10mm×10mmの176pinLQFP、外形24mm×24mm×1.4mm)を圧着成形(金型温度150℃、硬化時間3分)により封止し、剥離性、充填性、金線変形、外観について、下記の方法で評価した。なお、剥離性、充填性、金線変形、外観評価に用いた模擬半導体部品は、片面銅箔基板に半導体を整列配置する擬似回路配線を加工し、半導体は搭載せずに半導体相当部と外部接続用端子部を金線で結線したものである。」


上記甲第4、5号証の記載及び図面、並びに技術常識を考慮すると、甲第4ないし5号証には、以下の技術事項(以下、「甲4、5記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に封止材料基準で85.5質量%含まれる球状シリカ粉体としてFB9454FD(粒径≦45μm、電気化学工業株式会社製)を用いること。」


6.甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0011】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、中空型デバイスの封止を確実、容易に、歩留まりよく行うことができ、耐吸湿リフロー性に優れ、さらに外観が良好な封止が行える、封止用エポキシ樹脂組成物シート及びこれを用いて封止した中空型デバイスを提供することを課題とする。【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0013】
即ち、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物シートは、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、無機充填材の配合量が全エポキシ樹脂組成物中の70?90質量%であり、かつ平均粒子径が0.2?10μmである封止用エポキシ樹脂組成物を、半硬化状態のシート状樹脂層(A層)に成形したことを特徴とする。」

(2)「【0029】
本発明で用いられる必須成分としての無機充填材としては、一般にエポキシ樹脂組成物に用いられるものであれば特に限定することなく用いることができる。例えば、溶融シリカ、球状シリカ、破砕シリカ、結晶シリカ、球状アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等を挙げることができる。また、これらの他に、高誘電率性チタン酸バリウムや、酸化チタンのような高誘電率フィラーや、ハードフェライトのような磁性フィラー、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、スズ酸亜鉛等の無機系難燃剤や、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、雲母粉等を用いることができる。そして、これらの無機充填材は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。」

(3)「【0062】
これらの流動性は、シート状樹脂層(A層)、シート状樹脂層(B層)の配合成分の種類や配合割合を変えることにより調整することが可能である。例えば、無機充填材の種類や、配合割合、平均粒子径を変えたり、シート状樹脂層(A層)に配合されるエラストマー成分の重量平均分子量や配合量を変えることにより調整することができる。」

甲第6号証には、以下の技術事項(以下、「甲6記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「中空型デバイスの封止用エポキシ樹脂組成物シートの流動性は、無機充填材の種類や、配合割合、平均粒子径を変えたりすることで調整できること。」


7.甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0002】
【従来の技術】
従来、微細粒子を分散した液体においては、せん断力を加えると、低いせん断力下では低い粘性を示すが、加えるせん断力を増加させると、急激に高い粘性を示す現象、即ち、ダイラタンシー性を示すことが知られている。このダイラタンシー性は、粒子のパックキング状態が急激な外力により、一時的に変化することから起こる現象である。いま簡単のために、同じ大きさの球形粒子の集合を考えると、最密パックキングでは空隙率は26%である。
【0003】
この状態では、粒子間の空間を埋めるに足りるだけの液体を吸収すれば球形粒子の集合体は静かに流動することができる。しかし、いま、これに急激に強い外力が加えられると、球形粒子の集合は疎なパックキング状態に移行する。例えば、最疎パックキングでは、空隙率は48%であるから、その増大した空間に、上記液体が全部内部に吸い込まれてもまだ足りず、液体に浸されないで、擦れ合う粒子ができる。
【0004】
ダイラタンシー性において、表面の液体が内部に吸い込まれて、体積が膨張し、流動性が失われて、脆い固体のような挙動をするのはこのためである。例を挙げれば、海岸の濡れた砂地を足で踏むと、砂粒の間隙が広がり、海水が砂の中へ吸い込まれて、砂地は乾いて見え、固くなる現象がこれであり、また、無機物の結晶沈澱を吸引濾過するときにもダイラタンシー現象が観察される。」

甲第7号証には、以下の技術事項(以下、「甲7記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「微細粒子を分散した液体においては、せん断力を加えると、低いせん断力下では低い粘性を示すが、加えるせん断力を増加させると、急激に高い粘性を示す現象、即ち、ダイラタンシー性を示すこと。」


8.甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(1)「1.緒言
充填剤を配合したエポキシ成形材料は、成形性や機械的強度に優れているため工業的に広く利用されている。特に樹脂封止型半導体では、素子の高信頼性化のため、熱膨張率の低い充填剤を配合し成形材料の熱膨張率を小さくすることが重要となっている。
エポキシ成形材料の低熱膨張化は、充填剤の配合量を大きくすることにより可能であるが、成形時の粘度上昇が問題となる。成形材料の流動性は、エポキシ樹脂の粘度と充填剤の粒子形状や粒径の分布が影響しているものと考えられる。
本研究では、エポキシ成形材料の低粘度化を目的に、流動性に及ぼす球形充填剤の粒度分布の影響を検討した。」(141頁)

(2)「3.結果と考察
3.1フィラの最大充填分布率φ_(m)の計算
フィラを充填した混濁液の流動性に関しては、様々な粘度式が提案されている。この中でMooneyの粘度式(7)は、実験値と良く再現することがしられている。
ln(η/η_(1))=Kφ/(1-φ/φ_(m))
η:viscosity of molding compounds
η_(1):viscosity of resins
φ:volume fraction of filler
φ_(m):maximum packing fraction of filler
K:Einstein facter
フィラに注目し低粘度化を考えると、Kを小さくすること、最大充填分率φ_(m)を大きくするが有効である。K値はフィラの形状や表面状態に関係した量で、表面が滑らかな球形フィラを用いることにより小さくできるものと考えられる。φ_(m)はフィラを理想的に充填したときの体積分布率を表し、例えばフィラが単一粒径のときφ_(m)は六方最密充填時に0.74となり、理論的にはフィラを74%まで配合することができる。一方、フィラに粒度分布がある場合、単一粒径の場合よりφ_(m)は大きくなるため、74vol%以上の高充填と、(7)式による低粘度が可能となるものと予想される。」(142-143頁)


(3)Fig.3によれば、Filler B(21.98μm)、Filler C(8.68μm)、Filler G(0.68μm)を含み、かつFiller Cが30%以上、Filler Gが10%?20%の場合はφ_(m)が88%もしくは90%となることが記載されている。

以上総合すると、甲第8号証には、以下の技術事項(以下、「甲8記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。

「Filler B(21.98μm)、Filler C(8.68μm)、Filler G(0.68μm)を含み、かつFiller Cが30%以上、Filler Gが10%?20%の場合は最大充填分率φ_(m)が88%もしくは90%となり、低粘度のエポキシ成形材料を実現できること。」


第5.対比・判断
ア.取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
(a)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると以下のとおりである。

a.甲1発明の「ゲル状硬化性樹脂シート」は、配線基板との間に空隙を設けて対面載置した複数の配列された機能素子を、上記配線基板と上記機能素子との間を中空に保ちつつ、一括樹脂封止するものであるから、本件特許発明1の「中空封止用樹脂シート」に相当する。

b.甲1発明の「FB201S」は、充填用シリカであるから、本件特許発明1の「無機充填剤」に相当する。
また、甲1発明では「FB201S」を81重量%含むものである。
ここで、重量%と体積%の関係について検討すると、本件特許の明細書の段落【0089】の【表1】の上段の「配合量(重量部)」に示されている構成材料は合計すると100になっているから、各実施例・比較例における「無機充填剤1、2、3、4」の数値は、重量%を表しているものと認められ、さらに、各実施例・比較例に含まれる各成分の重量%を示しているものと認められ、下段の「評価」の「無機充填剤の含有量[体積%]と記載されていることから、下段では無機充填剤の体積%を記載しているものと認められる。
そして、【表1】の各実施例・比較例で無機充填剤を重量%で示した数値と体積%で示した数値を比較すると、体積%で示した数値は重量%で示した数値よりおおよそ10%程度小さな数値となるものと認められる。
してみると、甲1発明における「FB201S」の81重量%を体積%で示した際には、おおよそ73体積%となるものと認められる。
したがって、甲1発明の「充填用シリカとして、FB201S(電気化学工業(株)性)を81重量%含」むことは、本件特許発明1の「無機充填剤を70体積%以上90体積%以下の含有量で含」むことに相当する。

そうすると、両者は、

「無機充填剤を70体積%以上90体積%以下の含有量で含む、
中空封止用樹脂シート。」

の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件特許発明1では、「前記無機充填剤の全量を100体積%とした際の前記無機充填剤のレーザー回折散乱法により測定した粒度分布が」、「100μm超:1体積%以下 10μm以下:30体積%以上70体積%以下 1μm以下:10体積%以上」であるの対して、甲1発明では、そのような特定がされていない点。

相違点について検討する。
甲1発明で用いられる電気化学工業(株)社製のFB201Sに関して、電気化学工業(株)社の製品カタログである甲第2号証には、FB201Sは球状溶融シリカであって、Cilas920による粒度分布(%)が、1μm以下の粒子が5.7重量%、8μm以下の粒子が43.2重量%、12μm以下の粒子が48.3重量%、96μm以下の粒子が99.8重量%、128μm以下の粒子が100重量%であり、比表面積(m^(2)/g)が3.1であることが記載されている。
ここで、Cilas920はレーザー回折散乱法による粒度分布の測定である。
また、FB201Sは球状シリカのみから構成されているものであるから、重量%と体積%は等しいものと認められる。
してみると、甲1発明のFB201Sは100μm超の粒子を1体積%以下、10μm以下の粒子を30体積%以上70体積%以下で含むものではあるが、1μm以下の粒子は5.7体積%しか含んでおらず、10体積%以上含むものではない。
したがって、本件特許発明1と甲1発明では、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上含むか否かの点で相違しているものであり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

特許異議申立人は、この点に関して、
「以上より、甲1発明は、構成要件B3(1μm以下:10体積%以上)以外、本件特許得発明1と同じ発明である。
ここで、本件特許発明1の実施例1および実施例5の中空封止用樹脂シートに80体積%含まれるFB-9454FCのレーザー回折散乱式粒度分布測定装置(HORIBA製、装置名;LA-910)により測定された粒度分布は、本件特許明細書【0089】【表1】によれば、以下を満たす。
B1’ 100μm超:0.2体積%
B2’ 10μm以下:53体積%
B3’ 1μm以下:16体積%
しかしながら、甲第3号証によれば、Cilas920(レーザー散乱回折式粒度分布測定装置)により測定されたFB-9454FCの粒度分布は、以下を満たす。
100μm超:0重量%
10μm以下:36.6-42.5重量%
1μm以下:6.5重量%
以上のように、FB-9454FCの粒度分布は、甲1発明(審判注:本件特許発明1の誤記と認められる。)と甲第3号証では一致しない。このような相違が生じる原因としては、製造ロットの違いによる物性のゆらぎ、測定装置に相違による数値のゆらぎなどが一般的であると考えられる。換言すれば、FB201Sにおいても、同様のゆらぎが当然に生じるのであり、FB201Sの粒度分布をHORIBA製のLA-910で測定すれば、例えば9.5体積%(16-6.5)程度のプラスの誤差が生じ得ると考えられる。よって、構成要件B3の相違は実質的なものとは言い難い。」
と主張している。

確かに、製造ロットの違いによる物性のゆらぎ、測定装置に相違による数値のゆらぎなどが存在し、測定結果には誤差が生じるものと認められるが、、誤差はプラスの誤差のみでなくマイナスの誤差も生じるものであるし、さらに、他の粒径(100μm超、10μm以下)においても生じるものであるから、特定の粒径(1μm以下)に対してのみプラスの誤差を考慮に入れて判断をすることはできない。
さらに、粒径が1μmに対してマイナスの誤差が生じた際にさらに含有量は小さな値となり、また、100μm超において9.5体積%(16-6.5)程度のプラスの誤差が生じた際には9.5体積%となり、いずれも本件特許発明1の範囲を超えるものとなることも踏まえると、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
したがって、上記主張を採用することはできない。

(b)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2ないし4は、上記(a)と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。


イ.取消理由2(特許法第29条第2項)
(a)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、上記ア.の「(a)本件特許発明1について」で記したように、上記相違点で相違する。
上記相違点について検討するに、
上記ア.の「(a)本件特許発明1について」で検討したよう上記相違点は、実質的には、本件特許発明1と甲1発明では、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上含むか否かの点で相違するものである。
ここで、甲第1号証にはシリカ、アルミナ(本願の「無機充填剤」に相当)は、段落【0012】に必要により使用されると記載されるのみであって、その粒径や粒度分布に関しては何等記載されていない。
したがって、甲1発明において、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上のものとする動機付けが存在しない。

したがって、本件特許発明1は、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明することができたものではない。

特許異議申立人は、
「また、仮に、構成要件B3の相違が実質的な相違であったとしても、本件特許明細書【0089】【表1】からは『1μm以下:10体積%以上』を満たすべき技術的意義、すなわち10体積%の臨界的意義が示されていない。」、
及び、
「さらに、甲第2、3号証によれば、Cilas920(レーザー散乱回折式粒度分布測定装置)により測定されたFB201Sの粒度分布と、本件特許発明1の実施例1および実施例5の中空封止用樹脂シートに80体積%含まれるFB-9454Cの粒度分布は以下を満たす。
・・・表省略・・・
上記表から明らかなように、FB201SとFB-9454FCの粒度分布は、概ね対応しており、同様の粒度分布を有している。よって、甲1発明において、FB201Sの代わりに特定の粒度分布を有する無機充填剤、具体的にはFB-9454FCを選択することは設計事項に過ぎない。」
と主張している。

上記したように、甲1発明において、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上のものとする動機付けが存在しないことから、10体積%の臨界的意義が示されていないとしても、甲1発明において無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上のものとすることが容易であったということはできない。
また、甲第1号証にはシリカ、アルミナ(本願の「無機充填剤」に相当)は、段落【0012】に必要により使用されると記載されるのみであって、その粒径や粒度分布に関しては何等記載されていないことから、甲1発明において特定の粒度分布を有する無機充填剤、具体的にはFB-9454FCを選択する理由が存在しない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用することができない。

(b)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2ないし4は、上記(a)と同様の理由により、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明することができたものではない。


ウ.取消理由3(特許法第29条第2項)
(a)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、上記ア.の「(a)本件特許発明1について」で記したように、上記相違点で相違する。
上記相違点について検討するに、
上記ア.の「(a)本件特許発明1について」で検討したよう上記相違点は、実質的には、本件特許発明1と甲1発明では、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上含むか否かの点で相違するものである。
甲第4、5号証には、半導体封止用エポキシ樹脂シート部材に含まれる封止材料基準で85.5質量%の球状シリカ粉体としてFB9454FD(粒径≦45μm、電気化学工業株式会社製)を用いることが記載されている。
しかしながら、甲第4、5号証の半導体封止用エポキシ樹脂シート部材は中空封止用のものではないことから、甲1発明の中空封止用樹脂シートの無機充填剤として、甲第4、5号証に記載の無機充填剤であるFB9454FDを適用する理由が存在しない。
さらに、甲第4、5号証には、FB9454FDの粒度分布は何等記載されておらず、仮に、甲1発明の無機充填剤であるFB201Sの代わりに甲第4、5号証のFB9454FDを用いたとしても、無機充填剤が1μm以下の粒子を10体積%以上となるとも認められない。

したがって、本件特許発明1は、当業者が甲1発明および甲第4号証ないし甲第5号証に記載の技術事項に基づいて容易に発明することができたものではない。

特許異議申立人は、
「さらに、甲第8号証に示されるように、Filler B(21.98μm)、Filler C(8.68μm)、Filler G(0.68μm)を含み、かつFiller Cが30%以上、Filler Gが10%?20%の場合(すなわち構成要件B(B1、B2、B3)を満たす場合)に、φ_(m)が88%もしくは90%となり得ること、すなわち本件特許発明1の構成要件Bを満たすことでフィラを88%?90%の充填率で含み、かつ低粘度のエポキシ成形材料を実現できることはそもそも技術常識である。
・・・中略・・・
さらに、甲第7号証が言及するように、微細粒子を分散した液体においては、せん断力を加えると、低いせん断力下では低い粘性を示すが、加えるせん断力を増加させると、急激に高い粘性を示す現象、即ち、ダイラタンシー性を示すことが知られている。
ここで、甲第3号証に記載のFB9454FCの粒度分布から見て、FB9454FDは、FB9454FCと同様に構成要件B3を満たす蓋然性が高い。
そして、微細粒子が同様の粒度分布を有すれば同様のダイラタンシー性を示すことは明白であり、FB201Sの粒度分布は、FB9454FCと近似しているのであるから、同様にFB9454FDとも近似しており、FB201Sの代わりにFB9454FDを用いれば同様のダイラタンシー性が得られることは当業者であれば容易に推考し得ることである。
よって、甲第8号証の技術常識も踏まえて、中空構造付近の樹脂に対して流動を規制する作用(樹脂のダイラタンシー様作用)を付与する観点から、ゲル状硬化性樹脂シートにおいてFB201Sの代わりに構成要件B3を満たす蓋然性の高いFB9454FDを採用することは容易であるといえる。」
と主張している。

しかしながら、甲第3号証にはFB9454FCの粒度分布は記載されているが、FB9454FDの粒度分布は記載されておらず、FB9454FCとFB9454FDの粒度分布の比較をすることはできないことから、FB9454FDは、FB9454FCと同様に構成要件B3を満たす蓋然性が高いということはできない。
さらに、FB201SとFB9454FDが同様の粒度分布を有し同様のダイラタンシー性を示すのであれば、甲1発明のFB201Sを含むゲル状硬化性樹脂シートは既にダイラタンシー性を有するものであって、流動を規制する作用(樹脂のダイラタンシー様作用)を付与する必要もなく、また、FB201Sの代わりFB9454FDを採用する理由も存在しない。
したがって、異議申立人の上記主張を採用することはできない。

(b)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件特許発明2ないし4は、上記(a)と同様の理由により、当業者が甲1発明および甲第4号証ないし甲第5号証に記載の技術事項に基づいて容易に発明することができたものではない。


第6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-12 
出願番号 特願2014-22300(P2014-22300)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (H01L)
P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 洋介  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
山澤 宏
登録日 2018-03-09 
登録番号 特許第6302692号(P6302692)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 中空封止用樹脂シート及び中空パッケージの製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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