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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
管理番号 1347697
異議申立番号 異議2018-700733  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-07 
確定日 2019-01-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6295237号発明「バックライトユニット、液晶表示装置および波長変換部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6295237号の請求項1?19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6295237号の請求項1?19に係る特許についての出願は、平成27年9月29日(優先権主張 平成26年9月30日)に出願されたものであって、平成30年2月23日に特許権の設定登録がされ、同年3月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、特許異議申立人 特許業務法人朝比奈特許事務所(以下「異議申立人」という。)は、同年9月6日付け(同年9月7日差出)で特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6295237号の請求項1?19に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光の光路上に位置する波長変換部材と、を含むバックライトユニットであって、
前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、
粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含み、
前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし、かつ、
前記光散乱層の波長λnmにおける吸光率は、8.0%以下であるバックライトユニット。
【請求項2】
前記光散乱層は、前記波長変換層より出射側に配置されている請求項1に記載のバックライトユニット。
【請求項3】
前記蛍光体は、量子ドットである請求項1または2に記載のバックライトユニット。
【請求項4】
前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2は、1.45?2.00の範囲であり、ただしn1<n2を満たす請求項1?3のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項5】
前記波長変換層の平均屈折率n1は、1.43?1.60の範囲であり、ただしn1<n2を満たす請求項1?4のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項6】
前記波長変換層と光散乱層とが、バリアフィルムを介して積層されている請求項1?5のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項7】
前記バリアフィルムは、少なくとも無機層を含む請求項6に記載のバックライトユニット。
【請求項8】
前記無機層は、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素炭化物およびアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む無機層である請求項7に記載のバックライトユニット。
【請求項9】
前記バリアフィルムには、波長変換層側から光散乱層側に向かって、無機層、有機層および基材フィルムがこの順に隣接配置されている請求項7または8に記載のバックライトユニット。
【請求項10】
波長λnmは、青色光の波長帯域にある請求項1?9のいずれか1項に記載のバックライトユニット。
【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載のバックライトユニットと、液晶セルと、を含む液晶表示装置。
【請求項12】
励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含み、
前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし、かつ、
前記光散乱層の波長450nmにおける吸光率は、8.0%以下である波長変換部材。
【請求項13】
前記蛍光体は、量子ドットである請求項12に記載の波長変換部材。
【請求項14】
前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2は、1.45?2.00の範囲であり、ただしn1<n2を満たす請求項12または13に記載の波長変換部材。
【請求項15】
前記波長変換層の平均屈折率n1は、1.43?1.60の範囲であり、ただしn1<n2を満たす請求項12?14のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項16】
前記波長変換層と光散乱層とが、バリアフィルムを介して積層されている請求項12?15のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項17】
前記バリアフィルムは、少なくとも無機層を含む請求項16に記載の波長変換部材。
【請求項18】
前記無機層は、ケイ素酸化物、ケイ素窒化物、ケイ素炭化物およびアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む無機層である請求項17に記載の波長変換部材。
【請求項19】
前記バリアフィルムには、波長変換層側から光散乱層側に向かって、無機層、有機層および基材フィルムがこの順に隣接配置されている請求項17または18に記載の波長変換部材。」

第3 特許異議申立理由の概要
1 異議申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
異議申立人は甲第1号証を提出し、請求項1、2、4?8、10?12、14?18に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4?8、10?12、14?18に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

2 異議申立理由2(特許法第29条第2項)
(1)異議申立人は甲第1号証を提出し、請求項1、2、4?8、10?12、14?18に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2、4?8、10?12、14?18に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

(2)異議申立人は甲第1号証及び甲第2号証を提出し、請求項3、9、13、19に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項3、9、13、19に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

3 異議申立理由3(特許法第29条第1項第3号)
異議申立人は甲第3号証を提出し、請求項1、4、5、10、12、14、15に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4、5、10、12、14、15に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 異議申立理由4(特許法第29条第2項)
(1)異議申立人は甲第3号証を提出し、請求項1、4、5、10、12、14、15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、4、5、10、12、14、15に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

(2)異議申立人は甲第3号証及び甲第1、2、4号証を提出し、請求項2、6、16に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項2、6、16に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

(3)異議申立人は甲第3号証及び甲第1、2号証を提出し、請求項7?9、11、17?19に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項7?9、11、17?19に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

(4)異議申立人は甲第3号証及び甲第2号証を提出し、請求項3、13に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項3、13に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

5 証拠
・甲第1号証:特開2009-231273号公報
・甲第2号証:国際公開第2012/064562号
・甲第3号証:特開2013-143436号公報
・甲第4号証:特開2011-107508号公報

第4 特許異議申立理由についての検討
1 異議申立理由1(特許法第29条第1項第3号)及び異議申立理由2(同法第29条第2項)について
(1) 甲第1号証の記載事項等
ア 記載事項
本件の優先日前に頒布された甲第1号証には図面とともに以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。)
(ア)「【請求項1】
青色発光素子と、青色励起で赤色光に変換する赤色変換体と、青色励起で緑色光に変換する緑色変換体を備える照明装置であって、前記緑色変換体はフィルム形状であるとともに、前記緑色変換体の出光面側に微細凹凸が形成された拡散層を備え、前記赤色変換体が前記青色発光素子と前記緑色変換体の間の光路中に前記緑色変換体とは分離して設けられたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記拡散層が樹脂と透明ビーズを備え、前記微細凹凸が前記透明ビーズにより形成されるとともに、前記透明ビーズが2または3種類の異なる粒径を持った単分散粒子であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散層が樹脂と透明ビーズを備え、前記樹脂と前記透明ビーズの屈折率の差が0.05以下であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。」

(イ)「【0001】
本発明は、非自発光型の表示素子を照明する照明装置、及び、電子機器に用いられる表示装置に関する。特に、携帯情報機器や携帯電話などに用いられる液晶表示装置、及び表示素子を照明するバックライトなどの照明装置に関する。」

(ウ)「【0014】
本発明の照明装置は、青色発光素子、青色励起で赤色光に変換する赤色変換体、青色励起で緑色光に変換する緑色変換体を備えており、赤色変換体は、青色発光素子と緑色変換体の間の光路中に緑色変換体とは分離して設けられている。すなわち、赤色変換体1とフィルム形状の緑色変換体2は照明装置の光路中に分離して設けられている。このような構成を図1に模式的に示す。図示するように、青色発光素子3からの光を導いて出光面から出射する導光体4が赤色変換体1と緑色変換体2の間に設けられており、青色発光素子3と導光体4の間に赤色変換体1が設けられている。このような構成により、青色発光素子3の青色発光と赤色変換体1により変換された赤色光が混色された後、さらに、緑色変換体2により変換された緑色光と混色して白色光が得られる。このような変換順で白色光が得られるため、緑色変換体に含まれる緑色蛍光体からの発光が赤色変換体に含まれる赤色蛍光体の励起光となることがなく、照明装置としての発光効率が上昇する。また、青色発光素子と緑色変換体に含まれる緑色蛍光体が完全に分離されているので、発光素子は化学的影響を受けることもなく、温度?輝度特性や信頼性が向上する。」

(エ)「【0030】
次に、緑色蛍光体粒子を含んだ緑色変換体の構成について説明する。図4は、緑色変換体の構成を模式的に示す断面図である。透明基材21を基材として、一方の表面に緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20が塗布され、他方の表面に透明ビーズ7を分散した拡散層22を設けた構成である。透明樹脂20には、アクリル系樹脂などの透過率が高いものが望ましい。また透明基材21は、PETやポリカーボネートやアクリルやゼオノア等の透明性が高いものが好ましい。緑色蛍光体粒子6の材料としては、II属金属チオガレートと希土類ドーパントからなる蛍光材料や、酸化物と希土類ドーパントからなる蛍光材料、Sr-SIONと希土類ドーパントからなる蛍光材料等を用いることができる。すなわち、YAG蛍光体以上の輝度効率を有するものが適している。
【0031】
緑色蛍光体粒子に水分との化学反応が懸念されるものを使用する場合、色変換体の構成を図5のようにすることが必要となる。図5は、ガスバリア性透明基材25を挟んで、その間に緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20を設け、出光面側に拡散層22を形成した構成を示している。この場合、ガスバリア性透明基材は水蒸気などの水分を遮断する機能を持っている。透明基材にガスバリア性の効果を持たせる例として、SnO_(2)やSiO_(2),Al_(2)O_(3)などのバリア層を透明フィルムに設けるものが挙げられる。中でも、Al_(2)O_(3)は他のバリア層と比較して、分光透過率が高く透過率が高くなるため、Al_(2)O_(3)を用いたものが好ましい。バリア層の層構成は単層とは限らず複数の層を形成するほうがガスバリア性の効果は高くなる。また、フィルム透過率はフィルムの厚みにも起因するため、なるべく薄いものを使用する。そのため、使用する透明基材は、厚み12μmのフィルムに先に述べた各種バリア層を設けたものが望ましい。」

(オ)「【0034】
図8は、本発明の表示装置の構成を模式的に示す断面図である。青色発光素子3が発光した光は、導光体4に入光し全反射を繰り返しながら導光体4の内部を導波していく。途中、導光体4に設けられた光出射構造体30に光が照射された場合、屈折もしくは反射により光が出射するような構造になっている。出射された光は導光体4の上部に設けられた緑色変換体2、光学シート31を通って、最終的に液晶表示パネル32が照明されることになる。・・・」

(カ)「【0037】
図13は、拡散層50に二種類の単分散粒子を使用した第二色変換体を用いた照明装置の色度の角度分布を示した図である。拡散ビーズ51には屈折率n=約1.5,粒径約15μmと約5μmのアクリル系単分散粒子を使用し、透明樹脂52には屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した。図13では、-20度?0度の色度変化と0度?20度までの色度変化が小さくなっており、図10や図11と比較してもほとんど色度変化がない状態になっている。」

イ 認定事項
上記ア(エ)、(カ)及び【図4】、【図5】、【図12】の記載より、【図12】に係る例においても、透明樹脂20は、緑色蛍光体粒子6が混合されたものであることは明らかであり、また、緑色変換体2は、当該透明樹脂20と拡散層50を設けた構成であることも明らかである。

ウ 記載された発明
上記ア、イより、甲第1号証には次の発明(特に【図12】に係る例に対応。以下「甲1A発明」という。)が記載されているものと認める。
「青色発光素子3と、青色励起で赤色光に変換する赤色変換体1と、青色励起で緑色光に変換する緑色変換体2を備えるバックライトである照明装置であって、
前記緑色変換体2はフィルム形状であるとともに、前記緑色変換体2の出光面側に微細凹凸が形成された拡散層50を備え、前記赤色変換体2が前記青色発光素子3と前記緑色変換体2の間の光路中に前記緑色変換体2とは分離して設けられ、
前記緑色変換体2は、緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20と、拡散ビーズ51には屈折率n=約1.5,粒径約15μmと約5μmのアクリル系単分散粒子を使用し、透明樹脂52には屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した拡散層50を設けた構成である、
バックライトである照明装置。」

また、次の発明(以下「甲1B発明」という。)も記載されているものと認める。
「青色発光素子3と、青色励起で赤色光に変換する赤色変換体1と、青色励起で緑色光に変換する緑色変換体2を備えるバックライトである照明装置に用いる緑色変換体2であって、
前記緑色変換体2はフィルム形状であるとともに、前記緑色変換体2の出光面側に微細凹凸が形成された拡散層50を備え、前記赤色変換体2が前記青色発光素子3と前記緑色変換体2の間の光路中に前記緑色変換体2とは分離して設けられ、
前記緑色変換体2は、緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20と、拡散ビーズ51には屈折率n=約1.5,粒径約15μmと約5μmのアクリル系単分散粒子を使用し、透明樹脂52には屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した拡散層50を設けた構成である、
バックライトである照明装置に用いる緑色変換体2。」

(2)対比・判断
ア 請求項1について
(ア)対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)と、甲1A発明とを対比する。
a 後者の「青色発光素子3」は前者の「光源」に相当し、以下同様に、「緑色変換体2」は「波長変換部材」に、「バックライトである照明装置」は「バックライトユニット」に、「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」は「蛍光体を含む波長変換層」ないし「波長変換層」に、「拡散層50」は「光散乱層」に、「透明樹脂52」は光散乱層の「マトリックス」にそれぞれ相当する。

b 後者の「青色発光素子3」も発光中心波長λnmの光を出射するものであることは明らかである。また、甲第1号証の【図1】の記載より、「緑色変換体2」は「青色発光素子3」から出射される光の光路上に位置していることも明らかである。
そうすると、後者の「青色発光素子3と、青色励起で赤色光に変換する赤色変換体1と、青色励起で緑色光に変換する緑色変換体2を備えるバックライトである照明装置」は、後者の「発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光の光路上に位置する波長変換部材と、を含むバックライトユニット」に相当するといえる。

c 後者の「前記緑色変換体2は、緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20と、拡散ビーズ51には屈折率n=約1.5,粒径約15μmと約5μmのアクリル系単分散粒子を使用し、透明樹脂52には屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した拡散層50を設けた」という事項と、前者の「前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含み、前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし」ているという事項とは、「前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含」んでいるという事項の限度で一致するといえる。

d 以上のことから、本件発明1と甲1A発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。
〔一致点1〕
「発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光の光路上に位置する波長変換部材と、を含むバックライトユニットであって、
前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、
粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含んでいるバックライトユニット。」

〔相違点1〕
本件発明1が、「前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし」ているのに対し、甲1A発明は、「透明樹脂52」(光散乱層のマトリックスに相当)が「屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した」ものであり、「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」(波長変換層に相当)の「平均屈折率」が明らかでない点。

〔相違点2〕
本件発明1が、「前記光散乱層の波長λnmにおける吸光率は、8.0%以下である」のに対し、甲1A発明は、「拡散層50」(光散乱層に相当)の波長λnmにおける吸光率が明らかでない点。

(イ)判断
a 上記相違点1について検討する。
本件発明1の「平均屈折率」とは、本件特許明細書の段落【0010】の「本発明における平均屈折率とは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、遅相軸方向と直交する方向である面内の進相軸方向の屈折率ny、ならびに遅相軸方向および進相軸方向と直交する方向の屈折率nzの平均値をいうものとする。・・・一方、遅相軸がないものについては、面内方向の屈折率、厚み方向の屈折率、ならびに面内方向および厚み方向と直交する方向の屈折率の平均値を、平均屈折率とする。」という記載により定義されるものと認められる。
ここで、甲1A発明における「屈折率n」が本件発明1の「平均屈折率」と同様のものであるのか明らかとはいえず、直接的に対比・判断をすることはできない。
仮に、甲1A発明における「屈折率n」と本件発明1の「平均屈折率」が同様のものであったとしても、甲1A発明における「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」(波長変換層に相当)の屈折率が明らかでない。甲第1号証の段落【0030】に「透明樹脂20には、アクリル系樹脂などの透過率が高いものが望ましい」と記載されてはいるが、どのようなアクリル系樹脂であるのか特定がなく、屈折率が特定されているとはいえない。仮にアクリル系樹脂のうちの「アクリル樹脂」であって、異議申立人がいうように「アクリル樹脂の屈折率は1.50程度であることは、技術常識」(特許異議申立書第52頁第6行)であって、「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」(波長変換層に相当)の屈折率が1.50程度であったとしても、「透明樹脂52」(光散乱層のマトリックスに相当)と同程度ということになり、上記相違点1のn1<n2の関係を満たすものとはいえない。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点であって、本件発明1は甲1A発明であるということはできない。また、甲第1号証には、「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」(波長変換層に相当)と「透明樹脂52」(光散乱層のマトリックスに相当)との間の屈折率の大小関係に着目するような記載はなく、甲1A発明において、少なくとも上記相違点1に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易に想到し得たとはいえない。
さらに、他の証拠を検討しても、甲1A発明において、上記相違点1に係る本件発明1の事項を有するものとすることが当業者にとって容易想到であるとする合理的な理由は見当たらない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る本件発明1の事項を採用することにより、本件特許明細書の段落【0027】に記載される「全反射を抑制」するという作用効果を奏するものと認める。

b よって、本件発明1は、甲1A発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、甲1A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

c なお、異議申立人は、特許異議申立書第52頁第7?15行において、甲第1号証の請求項3の「前記樹脂と前記透明ビーズの屈折率の差が0.05以下である」との記載及び同段落【0035】の「透明ビーズ7」が「屈折率n=約1.6」であることの記載より、甲第1号証に記載される発明も、上記相違点1に係る本件発明1の事項を有しているに等しい旨も主張するが、「透明ビーズ」が「屈折率n=約1.6」の場合の「拡散層」の「透明樹脂」がどのようなものを用いているのかは明らかでなく、さらに、「緑色蛍光体粒子」が混合された「透明樹脂」がどのようなものを用いているのかも明らかではないため、異議申立人の主張は採用できない。(なお、「緑色蛍光体粒子」が混合された「透明樹脂」に関し、甲第1号証の段落【0030】に例示される「アクリル系樹脂」であったとしても、屈折率は1.50程度とは限らず、それよりも高屈折のものも存在する。)

イ 請求項2?11について
請求項2?11に係る発明は、請求項1に特定される事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、請求項2、4?8、10、11に係る発明は、甲1A発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、請求項2?11に係る発明は、甲1A発明(及び甲第2号証に記載された技術的事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

ウ 請求項12について
(ア)対比
上記ア(ア)を踏まえると、請求項12に係る発明(以下「本件発明12」という。)と甲1B発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。
〔一致点2〕
「励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含む波長変換部材。」

〔相違点3〕
本件発明12が、「前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし」ているのに対し、甲1B発明は、「透明樹脂52」(マトリックスに相当)が「屈折率n=約1.5のアクリル樹脂を使用した」ものであり、「緑色蛍光体粒子6が混合された透明樹脂20」(波長変換層に相当)の「平均屈折率」が明らかでない点。

〔相違点4〕
本件発明12が、「前記光散乱層の波長450nmにおける吸光率は、8.0%以下である」のに対し、甲1B発明は、「拡散層50」(光散乱層に相当)の波長450nmにおける吸光率が明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点3について検討する。
上記相違点3は、実質的には上記「ア(イ)」で検討した相違点1と同様の内容であり、その判断についても同様である。
よって、本件発明12は、甲1B発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、甲1B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

エ 請求項13?19について
請求項13?19に係る発明は、請求項12に特定される事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記ウ(イ)と同様の理由により、請求項14?18に係る発明は、甲1B発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、請求項13?19に係る発明は、甲1B発明(及び甲第2号証に記載された技術的事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、異議申立理由1、2及び証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。

2 異議申立理由3(特許法第29条第1項第3号)及び異議申立理由4(同法第29条第2項)について
(1) 甲第3号証の記載事項等
ア 記載事項
本件の優先日前に頒布された甲第3号証には図面とともに以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散しており、前記ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有する結晶とを含む基材と、
前記基材の上に配されており、ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体とを含む波長変換層と、
を備え、
前記基材と前記波長変換層とが融着している、波長変換部材。」

(イ)「【請求項11】
請求項1?10のいずれか一項に記載の波長変換部材と、
前記波長変換層に前記無機蛍光体の励起波長の光を照射する光源と、
を備える、発光デバイス。」

(ウ)「【0030】
基材10のガラスマトリクスの屈折率(nd)は、1.45?2.0であることが好ましく、1.47?1.85であることがより好ましい。」

(エ)「【0033】
結晶の平均粒子径(D50)は、1μm?70μm程度であることが好ましく、2μm?50μm程度であることがより好ましい。結晶の平均粒子径が小さすぎると、結晶が凝集する場合がある。一方、結晶の平均粒子径が大きすぎると、基材10の強度が弱くなる場合がある。」

(オ)「【0035】
このように、基材10は、ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有する結晶を含むため、基材10は、高い光反射率を有する。従って、基材10は、反射材として機能する。」

(カ)「【0054】
波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率(nd)は、1.45?2.00であることが好ましく、1.5?1.85であることがより好ましい。」

(キ)「【0059】
(発光デバイス2)
図2は、本実施形態における発光デバイス2の模式的側面図である。発光デバイス2は、波長変換部材1を用いた発光デバイスである。発光デバイス2は、波長変換部材1と、光源30とを備えている。光源30は、無機蛍光体の励起波長を含む光L1を出射する。光L1は、ビームスプリッタ40によって波長変換部材1に導かれる。光L1は、波長変換層20に入射する。これにより波長変換層20に含まれる無機蛍光体から蛍光が出射する。また、波長変換層20を透過した光L1は、基材10によって波長変換層20側に反射され、波長変換層20に再入射する。この再入射光も無機蛍光体によって蛍光に変換される。」

(ク)「【0063】
発光デバイス2は、種々の光学装置に好適に適用される。なかでも、発光デバイス2は、高強度の光源を要するプロジェクタにより好適に用いられ、さらには、光源としてLD(Laser Diode)またはLED(Light Emitting Diode)を用いたプロジェクタにさらに好適に用いられる。光源の出力が高い場合は、光源からの光によって樹脂接着層が劣化しやすいため、樹脂接着剤を用いず、光劣化し難い波長変換部材1を用いることが特に好適であるためである。
【0064】
なお、プロジェクタでは、一般的に青色、赤色及び緑色の三色が必要である。青色の高出力LED及び赤色の高出力LEDは入手容易であるものの、緑色の高出力LEDは入手困難である。従って、緑色の光源を、青色光を出射するLEDと波長変換部材1とにより構成することが好ましい。」

(ケ)「【0080】
(積層体50の作製及び焼成)
上記作製の第1のグリーンシート51と第2のグリーンシート52とを積層することにより、積層体50を作製する。
【0081】
次に、積層体50を焼成させることにより、基材10と波長変換層20とが融着した波長変換部材1を完成させることができる。なお、積層体50を焼成する前に、積層体50に含まれる有機物を除去する脱脂工程をさらに行ってもよい。」

(コ)「【0086】
(実施例1)
モル%でSiO_(2):38%、B_(2)O_(3):11%、Li_(2)O:10%、Na_(2)O:6%、K_(2)O:7%、MgO:2%、BaO:4%、ZnO:7%、TiO_(2):12%、Nb_(2)O_(5):2%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得た。
【0087】
得られたガラス粉末にAl_(2)O_(3)結晶(平均粒子径(D50):4μm)及びNb_(2)O_(5)結晶(平均粒子径(D50):3μm)を、ガラス粉末:Al_(2)O_(3)結晶:Nb_(2)O_(5)結晶が57体積%:39体積%:4体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末100gに結合剤としてポリブチルメタクリレート、可塑剤としてメチルエチルケトン、溶剤としてブチルベンジルフタレートを適量添加し24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1のグリーンシートを作製した。
【0088】
体積%でSiO_(2):58%、Al_(2)O_(3):6%、B_(2)O_(3):17%、Li_(2)O:8%、Na_(2)O:8%、K_(2)O:3%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得た。
【0089】
得られたガラス粉末と、YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末(平均粒子径(D50):15μm)とを、ガラス粉末:YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末とが50体積%:50体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤等を適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2のグリーンシートを作製した。
【0090】
第1のグリーンシートと第2のグリーンシートとを重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10MPaの圧力を印加することにより積層体を作製した。その積層体を、大気中にて、400℃で1時間脱脂処理を行った後に、600℃で20分間焼成することにより波長変換部材を作製した。」

(サ)「【0105】
表1に示す結果から、樹脂接着剤を用いた比較例1では蛍光強度が経時的に低下しているのに対して、実施例1,2では蛍光強度が経時的に実質的に低下していないことが分かる。無機接着剤を用いた比較例2においても、蛍光強度が経時的に実質的に低下しなかったが、光散乱が大きく生じるため、初期から蛍光強度が低かった。」

(シ)段落【0104】の【表1】に、「実施例1」の基材のガラスマトリクスの屈折率が1.7、波長変換層のガラスマトリクスの屈折率が1.5であることが示されている。(なお、【表1】に「波長変換部材」と記載されているが「波長変換層」の誤記であることは明らかである。)

イ 記載された発明
上記アより、甲第3号証には次の発明(特に「実施例1」に係る例に対応。以下「甲3A発明」という。)が記載されているものと認める。
「ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散しており、前記ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有する結晶とを含む反射材として機能する基材10と、
前記基材10の上に配されており、ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体とを含む波長変換層20と、
を備え、
前記基材10と前記波長変換層20とが融着している、波長変換部材1と、
前記波長変換層20に前記無機蛍光体の励起波長の光を照射する青色光を出射するLEDである光源30と、
を備える、プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2であって、
光源30は、無機蛍光体の励起波長を含む光L1を出射し、光L1は、ビームスプリッタ40によって波長変換部材1に導かれ、光L1は、波長変換層20に入射し、これにより波長変換層20に含まれる無機蛍光体から蛍光が出射し、また、波長変換層20を透過した光L1は、基材10によって波長変換層20側に反射され、波長変換層20に再入射し、この再入射光も無機蛍光体によって蛍光に変換されるものであり、
モル%でSiO_(2):38%、B_(2)O_(3):11%、Li_(2)O:10%、Na_(2)O:6%、K_(2)O:7%、MgO:2%、BaO:4%、ZnO:7%、TiO_(2):12%、Nb_(2)O_(5):2%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得て、得られたガラス粉末にAl_(2)O_(3)結晶(平均粒子径(D50):4μm)及びNb_(2)O_(5)結晶(平均粒子径(D50):3μm)を、ガラス粉末:Al_(2)O_(3)結晶:Nb_(2)O_(5)結晶が57体積%:39体積%:4体積%となるように、振動混合機を用いて混合し、得られた混合粉末100gに結合剤としてポリブチルメタクリレート、可塑剤としてメチルエチルケトン、溶剤としてブチルベンジルフタレートを適量添加し24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1のグリーンシート51を作製し、
体積%でSiO_(2):58%、Al_(2)O_(3):6%、B_(2)O_(3):17%、Li_(2)O:8%、Na_(2)O:8%、K_(2)O:3%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得て、得られたガラス粉末と、YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末(平均粒子径(D50):15μm)とを、ガラス粉末:YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末とが50体積%:50体積%となるように、振動混合機を用いて混合し、得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤等を適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2のグリーンシート52を作製し、
第1のグリーンシート51と第2のグリーンシート52とを重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10MPaの圧力を印加することにより積層体を作製し、その積層体を、大気中にて、400℃で1時間脱脂処理を行った後に、600℃で20分間焼成することにより波長変換部材1を作製し、
波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率が1.5であり、基材10のガラスマトリクスの屈折率が1.7である、
プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2。」

また、次の発明(以下「甲3B発明」という。)も記載されているものと認める。
「ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散しており、前記ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有する結晶とを含む反射材として機能する基材10と、
前記基材10の上に配されており、ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体とを含む波長変換層20と、
を備え、
前記基材10と前記波長変換層20とが融着している、波長変換部材1と、
前記波長変換層20に前記無機蛍光体の励起波長の光を照射する青色光を出射するLEDである光源30と、
を備える、プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2に用いる波長変換部材1であって、
光源30は、無機蛍光体の励起波長を含む光L1を出射し、光L1は、ビームスプリッタ40によって波長変換部材1に導かれ、光L1は、波長変換層20に入射し、これにより波長変換層20に含まれる無機蛍光体から蛍光が出射し、また、波長変換層20を透過した光L1は、基材10によって波長変換層20側に反射され、波長変換層20に再入射し、この再入射光も無機蛍光体によって蛍光に変換されるものであり、
モル%でSiO_(2):38%、B_(2)O_(3):11%、Li_(2)O:10%、Na_(2)O:6%、K_(2)O:7%、MgO:2%、BaO:4%、ZnO:7%、TiO_(2):12%、Nb_(2)O_(5):2%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得て、得られたガラス粉末にAl_(2)O_(3)結晶(平均粒子径(D50):4μm)及びNb_(2)O_(5)結晶(平均粒子径(D50):3μm)を、ガラス粉末:Al_(2)O_(3)結晶:Nb_(2)O_(5)結晶が57体積%:39体積%:4体積%となるように、振動混合機を用いて混合し、得られた混合粉末100gに結合剤としてポリブチルメタクリレート、可塑剤としてメチルエチルケトン、溶剤としてブチルベンジルフタレートを適量添加し24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1のグリーンシート51を作製し、
体積%でSiO_(2):58%、Al_(2)O_(3):6%、B_(2)O_(3):17%、Li_(2)O:8%、Na_(2)O:8%、K_(2)O:3%となるよう原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム上にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルを用いて粉砕し、平均粒子径(D50)が10μmのガラス粉末を得て、得られたガラス粉末と、YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末(平均粒子径(D50):15μm)とを、ガラス粉末:YAG(Y_(3)Al_(5)O_(12))蛍光体の粉末とが50体積%:50体積%となるように、振動混合機を用いて混合し、得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤等を適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。そのスラリーをドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2のグリーンシート52を作製し、
第1のグリーンシート51と第2のグリーンシート52とを重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10MPaの圧力を印加することにより積層体を作製し、その積層体を、大気中にて、400℃で1時間脱脂処理を行った後に、600℃で20分間焼成することにより作製し、
波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率が1.5であり、基材10のガラスマトリクスの屈折率が1.7である、
プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2に用いる波長変換部材1。」

(2)対比・判断
ア 請求項1について
(ア)対比
本件発明1と、甲3A発明とを対比する。
a 後者の「光源30」は前者の「光源」に相当し、以下同様に、「波長変換部材1」は「波長変換部材」に、「無機蛍光体」は「蛍光体」に、「波長変換層20」は「波長変換層」にそれぞれ相当する。

b 後者の「青色光を出射するLED」は、発光中心波長λnmの光を出射するものであることは明らかである。また、一般に「バックライト」とは「液晶画面を裏から照らす照明」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]を意味する用語であり、本件においてもそのような意味で用いていることは、本件特許明細書の【背景技術】を説明する段落【0002】、【0003】の記載から明らかであるところ、後者の「プロジェクタの光源として使用される光デバイス2」は液晶画面を裏から照らす照明であるか明らかとはいえないから、「バックライト」とはいえない。
そうすると、後者の「前記基材10と前記波長変換層20とが融着している、波長変換部材1と、前記波長変換層20に前記無機蛍光体の励起波長の光を照射する青色光を出射するLEDである光源30と、を備える、プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2」と、前者の「発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光の光路上に位置する波長変換部材と、を含むバックライトユニット」とは、「発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光を受ける波長変換部材と、を含むライトユニット」の限度で一致するといえる。

c 後者の「波長変換層20」は、「青色光を出射するLEDである光源30」からの「励起波長の光」により励起され蛍光を発光することは明らかである。また、「基材10」の作製途上の状態である「第1のグリーンシート51」は「得られたガラス粉末にAl_(2)O_(3)結晶(平均粒子径(D50):4μm)及びNb_(2)O_(5)結晶(平均粒子径(D50):3μm)を、ガラス粉末:Al_(2)O_(3)結晶:Nb_(2)O_(5)結晶が57体積%:39体積%:4体積%となるように、振動混合機を用いて混合し」ているものであるから、「基材10」においても「Al_(2)O_(3)結晶」及び「Nb_(2)O_(5)結晶」は上記と同様の平均粒子径となっていると解されるので、0.1μm以上の粒子をガラスマトリクス中に含んでいるといえる。
そうすると、後者の「波長変換部材1」は、「ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散しており、前記ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有する結晶とを含む基材10と、前記基材10の上に配されており、ガラスマトリクスと、前記ガラスマトリクス中に分散した無機蛍光体とを含む波長変換層20と、を備え」ているという事項と、前者の「前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む光散乱層と、を含」んでいるという事項とは、「前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む層と、を含」んでいるという事項の限度で一致するといえる。

d 以上のことから、本件発明1と甲3A発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。
〔一致点3〕
「発光中心波長λnmの光を出射する光源と、該光源から出射される光を受ける波長変換部材と、を含むライトユニットであって、
前記波長変換部材は、励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、
粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む層と、を含むライトユニット。」

〔相違点5〕
「ライトユニット」に関し、本件発明1が、「バックライトユニット」であるのに対し、甲3A発明は、「プロジェクタの光源として使用される発光デバイス2」である点。

〔相違点6〕
「波長変換部材」に関し、本件発明1が、「光路上に位置する」のに対し、甲3A発明は、「波長変換部材1」(波長変換部材に相当)はビームスプリッタ40によって光L1が導かれる位置にある点。

〔相違点7〕
「粒子をマトリックス中含む層」に関し、本件発明1が、「光散乱層」であって、「前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし」ており、「波長λnmにおける吸光率は、8.0%以下である」のに対し、甲3A発明は、「反射材として機能する基材10」であって、「波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率が1.5であり、基材10のガラスマトリクスの屈折率が1.7」であって、波長λnmにおける吸光率が明らかでない点。

(イ)判断
a 上記(ア)dのとおり、本件発明1と甲3A発明との間には、上記相違点5?7が存在することから、本件発明1は甲3A発明であるということはできない。

b 事案に鑑み上記相違点7について検討する。
甲3A発明の「反射材として機能する基材10」は、「ビームスプリッタ40によって波長変換部材1に導かれ」た「光L1」のうち、「波長変換層20を透過した光L1は、基材10によって波長変換層20側に反射され、波長変換層20に再入射し、この再入射光も無機蛍光体によって蛍光に変換される」(上記(1)ア(キ))という作用を奏するためのものであって、本件発明1の「光散乱層」とはもとより意図する作用効果が異なるものである。そして、甲第3号証には「無機接着剤を用いた比較例2においても、蛍光強度が経時的に実質的に低下しなかったが、光散乱が大きく生じるため、初期から蛍光強度が低かった。」(上記(1)ア(サ))と記載されており、当該記載において「光散乱が大きく生じる」のは、「基材10」と「波長変換層20」を「無機接着剤」を用いて接着したことによるものであるが、「基材10」により反射された光の散乱が大きいことは好ましくないことが示唆されているといえる。
そうすると、甲3A発明において、「反射材として機能する基材10」を「光散乱層」に変更する合理的理由があるとはいえない。
したがって、甲3A発明において、少なくとも上記相違点7に係る本件発明1の事項を有するものとすることが当業者にとって容易に想到し得たとはいえない。
さらに、他の証拠を検討しても、甲3A発明において、上記相違点7に係る本件発明1の事項を有するものとすることが当業者にとって容易想到であるとする合理的な理由は見当たらない。

c よって、本件発明1は、甲3A発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、甲3A発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

イ 請求項2?11について
請求項2?11に係る発明は、請求項1に特定される事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記ア(イ)と同様の理由により、請求項4、5、10に係る発明は、甲3A発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、請求項2?11に係る発明は、甲3A発明(及び甲第1、2、4号証に記載された技術的事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

ウ 請求項12について
(ア)対比
上記ア(ア)を踏まえると、本件発明12と甲3B発明との一致点、相違点は以下のとおりと認める。
〔一致点4〕
「励起光により励起され蛍光を発光する蛍光体を含む波長変換層と、粒子サイズ0.1μm以上の粒子をマトリックス中に含む層と、を含む波長変換部材。」

〔相違点8〕
「粒子をマトリックス中に含む層」に関し、本件発明1が、「光散乱層」であって、「前記波長変換層の平均屈折率n1は、前記光散乱層のマトリックスの平均屈折率n2との間で、n1<n2の関係を満たし」ており、「波長450nmにおける吸光率は、8.0%以下である」のに対し、甲3B発明は、「反射材として機能する基材10」であって、「波長変換層20のガラスマトリクスの屈折率が1.5であり、基材10のガラスマトリクスの屈折率が1.7」であって、波長450nmにおける吸光率が明らかでない点。

(イ)判断
上記相違点8について検討する。
上記相違点8は、実質的には上記「ア(イ)」で検討した相違点7と同様内容であり、その判断についても同様である。
よって、本件発明12は、甲3B発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、甲3B発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

エ 請求項13?19について
請求項13?19に係る発明は、請求項12に特定される事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、上記ウ(イ)と同様の理由により、請求項14、15に係る発明は、甲3B発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないし、また、請求項13?19に係る発明は、甲3B発明(及び甲第1、2、4号証に記載された技術的事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえないから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、異議申立理由3、4及び証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
以上検討したとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-12-28 
出願番号 特願2015-192309(P2015-192309)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F21S)
P 1 651・ 113- Y (F21S)
最終処分 維持  
前審関与審査官 安食 泰秀  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
中村 泰二郎
登録日 2018-02-23 
登録番号 特許第6295237号(P6295237)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 バックライトユニット、液晶表示装置および波長変換部材  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  
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