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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部無効 発明同一  C09K
審判 全部無効 2項進歩性  C09K
管理番号 1347941
審判番号 無効2015-800224  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-12-15 
確定日 2018-12-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第5240487号発明「ネマチック液晶組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5240487号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等

1 本件無効審判に係る特許
本件無効審判に係る特許第5240487号(以下、「本件特許」という。)は、被請求人であるDIC株式会社が特許権者であって、平成17年10月31日に特願2005-316168号として出願され、平成25年4月12日、発明の名称を「ネマチック液晶組成物」、請求項の数を6として特許権の設定登録を受けたものである。

2 本件無効審判における手続の経緯
本件無効審判は、請求人であるJNC株式会社より請求されたものであって、手続の経緯(両当事者からの提出書類)は以下のとおりである。
平成27年12月15日 審判請求書(請求人)
平成28年 3月15日 審判事件答弁書及び訂正請求書(被請求人)
同年 5月 6日 弁駁書(請求人)
同年 6月29日付け 審理事項通知書
同年 9月14日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 9月28日 口頭審理
同年10月19日 上申書(被請求人)
同年11月 2日 上申書(請求人)
同年11月29日付け 審決の予告
平成29年 2月 3日 上申書及び訂正請求書(被請求人)
同年 3月17日 弁駁書2(請求人)

第2 両当事者の主張の概要と証拠方法

1 両当事者の主張
(1) 請求の趣旨
特許第5240487号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2) 答弁の趣旨
本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

2 証拠方法
両当事者から提出された証拠方法は以下のとおりである(以下、各証拠につき、甲第1号証を「甲1」などと略して記載する。)。
(1) 請求人から提出された証拠
甲1:国際公開第2005/017067号
甲2:特開2004-238489号公報
甲3:特開2005-220355号公報
甲4:特開2001-181635号公報
甲5:特開2001-33748号公報
甲6:国際出願番号PCT/EP2006/004708号
(国際公開第2006/133783号参照)
甲7:国際出願番号PCT/EP2005/006428号
(国際公開第2005/123879号参照)
甲8:特願2006-144861号
(特開2006-328399号公報参照)
甲9:国際公開第2006/038443号
甲10:特開2005-89759号公報
(以上、審判請求書に添付して提出)
甲11:特開2003-183655号公報
甲12:特開2003-201477号公報
甲13:特開2004-149775号公報
甲14:特開2004-352992号公報
甲15:特開2005-179676号公報
甲16:特開2005-179680号公報
甲17:特開平11-152297号公報
甲18:特開2004-2771号公報
甲19:特開2005-35985号公報
甲20:特開2004-2894号公報
(以上、弁駁書に添付して提出)
甲21:特開平10-77476号公報
甲22:特開2001-42793号公報
甲23:特開2001-72977号公報
(以上、弁駁書2に添付して提出)
(2) 被請求人から提出された証拠
乙1:特開2000-63305号公報
乙2:液晶便覧編集委員会編,“液晶便覧”,丸善株式会社,
2000年10月30日,312-316頁
乙3:“JEITA ED-2521B”,社団法人電子情報技術
産業協会,2009年,26-28、63-66頁
(以上、口頭審理陳述要領書に添付して提出)
乙4:“無効審判口頭審理 技術説明資料”
(以上、平成28年10月19日付け上申書に添付して提出)
乙5:岡村維彦他,“液晶科学実験講座 第4回:液晶材料特性の測定技術(2)”,液晶,日本液晶学会,2002年10月25日,6巻,4号,390(44)-399(53)頁
乙6:石原將市,“電圧保持率に及ぼす諸要因”,シャープ技報,2005年8月,92号,11-16頁
(以上、平成29年2月3日付け上申書に添付して提出)

第3 平成29年2月3日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の可否について

本件訂正は、特許法第134条の2第3項及び同法同条第9項で準用する同法第126条第4項の規定に従い、一群の請求項(請求項1?6)ごとに請求されたものであるところ、当審は、本件訂正の請求を認容すべきものと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は-OCF_(2)-、-CF_(2)-、または単結合であり、
X^(1)?X^(3)はそれぞれ独立してH、F又はClである。」とあるのを「式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は、単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。」と訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「質量%含有」とあるのを「質量%含有し、前記構造式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物を55?95%含有し、」と訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「することを特徴とする」とあるのを「加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれることを特徴とする」と訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「ネマチック液晶組成物。」とあるのを「ネマチック液晶組成物(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物:
【化4】

(式中、R^(1)は、水素であり、もしくは炭素原子1?15を有し、ハロゲン化されている未置換のアルキル基であり、これらの基中に存在する1個または2個以上のCH_(2)基は、それぞれ相互に独立し、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-により置き換えられていてもよく、
X^(1)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCNまたはNCSであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
L^(1-4)は、それぞれ相互に独立し、HまたはFである)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物
【化5】

(式中、R^(1)は、炭素数1?7のアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、炭素数2?7のアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルであり、
X^(1)はハロゲン、炭素数1?3のハロゲン化アルキルもしくはアルコキシ、または炭素数2または3のハロゲン化アルケニルもしくはアルケニルオキシである。)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物
【化6】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-COで置き換えられていてもよく、
環Aは、以下の式:
【化7】

の左または右を向いている環構造を表し、
Z^(1)、Z^(2)は、単結合、-C≡C-、-CF=CF-、-CH=CH-、-CF_(2)O-または-CH_(2)CH_(2)-を表し、ただし、Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-を表し、
Xは、F、Cl、CN、SF_(5)またはハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないように、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L^(1)、L^(2)、L^(3)、L^(4)、L^(5)およびL^(6)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、および
mは、0または1を表す。)を1種以上含むことを特徴とする、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物を含むことを特徴とする極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。
【化8】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
Xは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
L^(1)?L^(3)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表す。)」 と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否に関する判断

ア 訂正事項1
訂正事項1は、一般式(2)中の、R^(1)が「炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基であ」ったものを「炭素数1?15のアルキル基であ」るとし、B^(1)、B^(2)、B^(3)が1,4-フェニレン基である場合に、「CH_(3)又はハロゲンで置換されていても良」いとしていた条件を削除し、L^(1)が「単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-又は-CF_(2)O-を表し」ていたものを「単結合を表し」とし、L^(2)、L^(3)がそれぞれ独立的に「単結合、-CH_(2)CH_(2)-、-OCH_(2)-、-CH_(2)O-、-OCF_(2)-又は-CF_(2)O-を表し」たものであったのを「-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-で表し」とし、Q^(1)が「-OCF_(2)-、-CF_(2)-、または単結合であ」ったのを「単結合であり」とし、そして、X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立して「H、F又はClであ」ったものを「H又はFであり」とし、さらに、X^(2)は「H、F又はClであ」ったものを「Fである」とすることで、特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、上記いずれの訂正事項も、許容されていた選択肢の一部を削除する目的の訂正であって、それにより新たな技術事項が導入されるものとは認められないから、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項1は、許容されていた選択肢の一部を削除することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもなく、したがって、訂正事項1は、特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2
訂正事項2は、請求項1に記載の液晶組成物における構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の含有量が、合計で55?95%であることを限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、請求項1に記載の液晶組成物において、構造式(1)で表される化合物を35?65%、一般式(2)で表される化合物群から選ばれる化合物を10?30質量%含有することが特定されているので、構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の含有量の許容される合計の上限は65%+30%で95%であり、訂正事項2のうち「95%」については、自明の事項である。そして、本件特許明細書の【0037】【表1】によれば、実施例における構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の含有量の合計は、それぞれNo.1が55%、No.2が66%、No.3が77%であるから、訂正事項2のうち「55%」についても、当初明細書にある値である。しかも、訂正事項2により、当初明細書等に記載された事項との関係において、本件特許明細書等の記載に基づかない効果の発現等の新たな技術的事項を導入されるものでない。したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項2は、請求項1に記載の液晶組成物における構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物の含有量の合計量を限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもなく、したがって、訂正事項2は、特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3
訂正事項3は、請求項1に記載の液晶組成物を、「加熱温度150℃1時間後の60℃での保持率(%)・・が96%以上に保たれる」ものに限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、訂正事項3の、「加熱温度150℃1時間後の60℃での保持率(%)・・が96%以上に保たれる」との技術事項の追加について、本件特許明細書の段落【0034】及び【0037】【表1】によれば、本件特許明細書には、「加熱温度150℃1時間後の60℃での保持率(%)・・が96%に保たれる」ことが記載されていたと認められる。さらに、同【0002】に、「アクティブマトリックス表示方式・・には高電圧保持率であることが重要視されている」と記載されているように、そもそも高電圧保持率であることが求められているのは技術常識であることを考慮すると、特段の事情がない限り、実施例における値(すなわち、良好な物性)である96%よりも高い電圧保持率は一律に良好であると理解するのが自然であるし、また、訂正事項3により、新たな事項が導入されるとも解されないから、本件特許に係る発明の「加熱温度150℃1時間後の60℃での保持率(%)」として、96%のみならず、「96%以上」も記載されていたに等しい事項と認められる。したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項3は、請求項1に記載の液晶組成物を、「加熱温度150℃1時間後の60℃での保持率(%)・・が96%以上に保たれる」ものに限定することにより特許請求の範囲を減縮しているものであるから、特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもなく、したがって、訂正事項3は、特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

エ 訂正事項4
訂正事項4は、請求項1に記載の液晶組成物から、甲2、甲3、甲6及び甲7の特許請求の範囲の請求項1で必須成分とされた化合物群を含む液晶組成物を除くことにより特許請求の範囲を減縮しているものと認められる。したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認めることができる。
また、訂正事項4は、特定の化学構造を有する液晶化合物を含む液晶組成物の場合を除外する、いわゆる「除くクレーム」とするものであるが、これは、訂正前の請求項1に記載した事項で特定される発明における一部の態様を単に除外するものであって、当該除外によって、本件特許明細書等の記載に基づかない効果の発現等の新たな技術的事項が導入されるものでもない。したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
さらに、訂正事項4は、特定の化学構造を有する液晶化合物を含む液晶組成物の場合を除外する、いわゆる「除くクレーム」とすることにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許請求の範囲を拡張するものでも、変更するものでもなく、したがって、訂正事項4は、特許法134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3 訂正に係るまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の各規定に適合するものである。
よって、本件訂正を認める。

第4 本件特許請求の範囲の記載

上記「第3」のとおり、本件訂正の請求は適法なものであるから、本件無効審判の請求の対象となっている請求項1?6の記載は、以下のとおりとなった。
「【請求項1】
第一成分として構造式(1)、
【化1】

で表される化合物を35?65%含有し、第二成分として一般式(2)
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)で表される化合物群から選ばれる3種以上の化合物を10?30質量%含有し、
前記構造式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物を55?95%含有し、
加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれることを特徴とするネマチック液晶組成物(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物:
【化4】

(式中、R^(1)は、水素であり、もしくは炭素原子1?15を有し、ハロゲン化されている未置換のアルキル基であり、これらの基中に存在する1個または2個以上のCH_(2)基は、それぞれ相互に独立し、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-により置き換えられていてもよく、
X^(1)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCNまたはNCSであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
L^(1-4)は、それぞれ相互に独立し、HまたはFである)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物
【化5】

(式中、R^(1)は、炭素数1?7のアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、炭素数2?7のアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルであり、
X^(1)はハロゲン、炭素数1?3のハロゲン化アルキルもしくはアルコキシ、または炭素数2または3のハロゲン化アルケニルもしくはアルケニルオキシである。)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物
【化6】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-COで置き換えられていてもよく、
環Aは、以下の式:
【化7】

の左または右を向いている環構造を表し、
Z^(1)、Z^(2)は、単結合、-C≡C-、-CF=CF-、-CH=CH-、-CF_(2)O-または-CH_(2)CH_(2)-を表し、ただし、Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-を表し、
Xは、F、Cl、CN、SF_(5)またはハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないように、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L^(1)、L^(2)、L^(3)、L^(4)、L^(5)およびL^(6)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、および
mは、0または1を表す。)を1種以上含むことを特徴とする、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物を含むことを特徴とする極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。
【化8】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
Xは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
L^(1)?L^(3)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表す。)
【請求項2】
第三成分として一般式(3)
【化3】

(式中、R^(2)はR^(1)と同じ意味を表し、
B^(4)はB^(1)と同じ意味を表し、
L^(4)、L^(1)と同じ意味を表し、
B^(4)及びL^(4)が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
mは 0、1又は2であり、
nは0又は1であり、
Q^(2)は-OCH_(2)-、-OCF_(2)-、-OCHF-、-CF_(2)-、または単結合であり、
X^(4)?X^(8)はそれぞれ独立してH、F又はClである。) で表される化合物群から選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有する請求項1記載のネマチック液晶組成物。
【請求項3】
構造式(1)で表される化合物35?65%、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物からなる請求項2記載のネマチック液晶組成物。
【請求項4】
ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが2.5?10.0であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブマトリックス液晶表示素子。」
(以下、本件訂正後の上記請求項1ないし6に係る発明を、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明6」といい、これらを併せて「本件発明」ということもある。)

第5 請求人が主張する無効理由

請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。

無効理由1-1、1-2、1-3、2-1、2-2、2-3、3

ただし、第1回口頭審理調書の「審判長」の「3」のとおり、平成28年3月15日に請求された訂正請求(以下、「訂正請求1」という。)後の特許請求の範囲を対象とする限りにおいて、本件発明の進歩性あるいは拡大先願に係る無効理由1-2、1-3、2-1は審理の対象としないことが確認されている。これに関し、被請求人は、平成29年2月3日付け訂正請求書により再度の訂正(本件訂正)を行っているが、本件訂正は、実質的に訂正請求1後の特許請求の範囲の請求項1?6をさらに減縮するものであり、また、特許請求の範囲の請求項1?6を拡張又は変更するものではないと認められる。すなわち、本件訂正後の特許請求の範囲は、訂正請求1後の特許請求の範囲内であり、これを対象とする場合に本件発明の進歩性あるいは拡大先願に係る上記無効理由が改めて問われるものではないと認められる。(なお、請求人も、弁駁書2で、これらを改めて検討し直すべきものとして挙げていない。)したがって、審決の予告と同様に、以下では、無効理由1-1、2-2、2-3、3のみについて判断していくものとする。そして、無効理由1-1、2-2、2-3、3は、それぞれ以下のとおりであると認められる。

無効理由1-1:本件発明1ないし6は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものではなく、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由2-2:本件発明1ないし6は、甲7に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由2-3:本件発明1、4ないし6は、甲8に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、本件訂正後の請求項1、4ないし6に係る発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
無効理由3 :本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号に記載する要件を満たしておらず、また、本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないので、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明についての特許は、特許を受けることができるものではなく、同法同条第4項第1号又は第6項に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

第6 当審の判断

当審は、

請求人が主張する無効理由1-1、2-2、2-3、3につき、いずれも理由がない、
と判断する。
以下、その理由につき詳述する。

1.無効理由1-1について

(1)刊行物
甲1:国際公開第2005/017067号
甲10:特開2005-89759号公報

(2)刊行物に記載の発明

1.甲1に記載の事項(甲1の日本語訳を記載する。訳文は、対応日本国公報である特表2007-501301号公報によるものであり、甲1の記載箇所も併せて記載した。)
(1a)請求の範囲
「【請求項1】
正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、式I
【化1】

で表される1種または2種以上の化合物および式IA
【化2】

で表される1種または2種以上の化合物を含み、ここで、該媒体中の式Iで表される化合物の比率は、少なくとも18重量%であり、ここで、個々の基は、以下の意味:
R^(1)は、2?8個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
R^(2)は、H、1?15個の炭素原子を有し、ハロゲン化されているか、CNもしくはCF_(3)により置換されているか、または非置換であるアルキル基であり、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH_(2)基は、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、
【化3】

により置換されていてもよく、
X^(1)は、各々6個までの炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアルケニルオキシ基であり、a=1である場合には、またF、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCSまたはOCNであり、
X^(2)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、OCN、各々6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
Z^(1)およびZ^(2)は、各々、互いに独立して、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-または単結合であり、ここでZ^(1)≠Z^(2)であり、
aは、0または1であり、
【化4】

は、各々、互いに独立して、
【化5】

であり、
L^(1?4)は、各々、互いに独立して、HまたはFである、
を有することを特徴とする、前記液晶媒体。」
「【請求項3】
式I-1?I-5
【化12】

式中、alkenylは、2?8個の炭素原子を有するアルケニル基であり、alkylは、1?15個の炭素原子を有する直鎖状アルキル基である、
で表される1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。」
「【請求項9】
式IAで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、5?40重量%であることを特徴とする、請求項1?8のいずれかに記載の液晶媒体。」

(1b)11頁14?34行
「【0035】
本発明の液晶混合物は、利用できるパラメーター自由度の顕著な拡大を可能にする。透明点、低温における粘度、熱的およびUV安定性並びに誘電異方性の達成可能な組み合わせは、従来技術からの従前の材料に比較してはるかに優れている。
【0036】
EP 1 046 694 A1に開示されている混合物と比較して、本発明の混合物は、高い透明点、低いγ_(1)値、流動粘度についての低い値および100℃におけるVHRについての極めて高い値を有する。本発明の混合物は、好ましくは、3.3および2.5Vドライバーを有するノート型PC用途のためのTN-TFT混合物として適する。
【0037】
本発明の液晶混合物は、-30℃まで、特に好ましくは-40℃までのネマティック相を維持しながら、70℃を超える、好ましくは75℃を超える、特に好ましくは≧80℃の透明点、同時に≧6、好ましくは≧8の誘電異方性値Δε並びに優れたSTNおよびMLCディスプレイを得ることを可能にする比抵抗値についての高い値を達成することを可能にする。特に、この混合物は、低い動作電圧により特徴づけられる。TNしきい値は、1.5Vより低く、好ましくは1.4Vより低く、特に好ましくは<1.3Vである。」
「【0040】
20℃における流動粘度ν_(20)は、好ましくは<20mm^(2)・s^(-1)、特に好ましくは<19mm^(2)・s^(-1)である。本発明の混合物の20℃における回転粘度γ_(1)は、好ましくは<140mPa・s、特に好ましくは<120mPa・sである。ネマティック相範囲は、好ましくは少なくとも100°、特に少なくとも110°である。この範囲は、好ましくは少なくとも-40°?+80°まで拡大される。」

(1c)13頁1?18行
「【0042】
電圧保持率(HR)の測定値[S. Matsumoto et al., Liquid Crystals 5, 1320 (1989); K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, 1984年6月、 p. 304 (1984); G. Weber et al., Liquid Crystals 5, 1381 (1989)]は、式IおよびIAで表される化合物を含む本発明の混合物は、式
【化6】

で表されるシアノフェニルシクロヘキサン類または式
【化7】

で表されるエステル類を、式IAで表される化合物の代わりに含む類似する混合物よりも、温度の上昇に伴うHRの減少が顕著に小さいことを示した。
【0043】
本発明の混合物は、好ましくは、ニトリル類をほとんど(≦20%、特に≦10%)または全く含まない。20℃における本発明の混合物の保持比は、少なくとも98%、好ましくは>99%である。本発明の混合物のUV安定性はまた、顕著に一層良好であり、即ち、これらは、UVに露光した際にHRの顕著に小さい低下を示す。」

(1d)13頁20行?16頁2行
「【0044】
式Iは、好ましくは、式I-1?I-5
【化8】

で表される化合物を包含する。
【0045】
式Iで表される特に好ましい化合物は、式
【化9】

【0046】
【化10】

式中、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、好ましくは1、2、3または5である、
で表される化合物である。
【0047】
alkylは、1?15個の炭素原子を有する直鎖状アルキル、好ましくはCH_(3)、C_(2)H_(5)、n-C_(3)H_(7)、n-C_(4)H_(9)、n-C_(5)H_(11)またはn-C_(6)H_(13)である。
alkenylは、好ましくは、CH_(2)=CH、CH_(3)CH=CH、CH_(2)=CH_(2)CH_(2)またはCH_(3)-CH=CHCH_(2)CH_(2)である。
【0048】
・・(省略)・・
好ましいのは、式I-1および/またはI-2で表される少なくとも1種の化合物を含む、本発明の媒体である。」

(1e)30頁21?29行
「【0069】
・・(省略)・・
-式IAおよびI?VIで表される化合物の合計の、全体としての混合物中の比率は、少なくとも50重量%である;
-式Iで表される化合物の、全体としての混合物中の比率は、≧18重量%、好ましくは≧20重量%、特に≧22重量%、極めて特に好ましくは≧24重量%である;
-式IAで表される化合物の、全体としての混合物中の比率は、5?40重量%、特に好ましくは10?30重量%である;
-式II?VIで表される化合物の、全体としての混合物中の比率は、30?80重量%である;」

(1f)66頁27行以降
「【0131】
以下の例は、本発明を限定せずに、本発明を説明することを意図する。本明細書中、パーセンテージは重量パーセントである。すべての温度を、摂氏度で示す。m.p.は融点を示し、cl.p.は透明点を示す。さらに、C=結晶状態、N=ネマティック相、S=スメクティック相およびI=アイソトロピック相である。これらの記号間のデータは、転移温度を示す。Δnは、光学異方性(589nm、20℃)を示し、Δεは、誘電異方性(1kHz、20℃)を示す。流動粘度ν_(20)(mm^(2)/秒)は、20℃において決定する。回転粘度γ_(1)(mPa・s)は、同様に20℃において決定する。
【0132】
例M1
【表2】

【0133】
例M2
【表3】

【0134】
例M3
【表4】


「【0136】
例M4
【表6】

【0137】
例M5
【表7】

【0138】
例M6
【表8】

【0139】
例M7
【表9】

【0140】
例M8
【表10】

」(当審注:上記表記の一部について、その意味する化学構造式を示す。

)

2.甲10に記載の事項
(10a)
「【0017】
本発明による混合物は好ましくは、式Iで表わされる化合物に加え、1種または2種以上の式IIで表わされるアルケニル化合物を含有する:
【化5】

【0018】
式中、
A^(4)は、1,4-フェニレンまたはトランス-1,4-シクロヘキシレンであり、
R^(3)は、炭素原子2?7個を有するアルケニル基であり、
R^(4)は、炭素原子1?12個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルケニル基であり、これらの基中に存在する1個のCH_(2 )基または隣接していない2個のCH_(2 )基はさらに、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよく、
aは、0または1である。
aが1である式IIで表わされる化合物は、特に好適な化合物として挙げられる。
【0019】
特に好適な式IIで表わされる化合物は、式IIa?IIiから選択される:
【化6】

【0020】
上記各式中、R^(3a)およびR^(4a)は、それぞれ相互に独立し、H、CH_(3)、C_(2)H_(5)またはn-C_(3)H_(7)であり、およびalkylは、炭素原子1?8個を有するアルキル基である。
式IIaで表わされる化合物、特にその分子中に存在するR^(3a)およびR^(4a)がCH_(3)である化合物、および式IIe、式IIf、式IIg、式IIhおよび式IIiで表わされる化合物、特にその分子中に存在するR^(3a)がHまたはCH_(3)である化合物は、特に好適な化合物として挙げられる。
【0021】
式IIで表わされる化合物を使用すると、本発明による液晶混合物に特に低い回転粘度値が得られ、また大きい急峻度および迅速な応答時間を、特に低温で有するTNおよびSTNディスプレイが得られる。
・・(省略)・・」

(10b)
「【0040】
好適液晶混合物は、1種または2種以上の成分Bの化合物を、好ましくは20?85%、特に好ましくは30?75%の割合で含有する。グループBの化合物、特にアルケニル基を含有する化合物は、特に回転粘度γ_(1)にかかわり低い数値を有する点で際立っている。
1種または2種以上の式IIで表わされる化合物以外に、成分Bは好ましくは、1種または2種以上の下記式で表わされる二環状化合物からなる群から選択される化合物:
【0041】
【化19】

【0042】
および/または1種または2種以上の下記式で表わされる三環状化合物からなる群から選択される化合物:
【化20】(省略)
【0043】
【化21】(省略)
および/または1種または2種以上の下記式で表わされる四環状化合物からなる群から選択される化合物:
【0044】
【化22】(省略)
【0045】
を包含する(上記各式中、R^(1)およびR^(2)は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1?12個を有するアルキル基、アルコキシ基またはアルケニル基であり、これらの基中に存在する1個のCH_(2)基または隣接していない2個以上のCH_(2)基はまた、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-により置き換えられていてもよく、および
Lは、HまたはFである)。」(当審注:【0040】における「成分B」、「グループB」は同一の意味であり、これらは請求項9における「b)-1.5?+1.5の誘電異方性を有する化合物からなる液晶成分B」を意味するものと推察される。)

(3)甲1に記載された発明

ア 上記摘示事項(1a)によれば、甲1には、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項9として、「正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、式Iで表される1種または2種以上の化合物(式は省略)および式IAで表される1種または2種以上の化合物(式は省略)を含み、ここで、該媒体中の式Iで表される化合物の比率は、少なくとも18重量%であり、
(式Iで表される化合物として、)式I-1?I-5で表される1種または2種以上の化合物(式は省略)を含み、
式IAで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、5?40重量%である、液晶媒体」が記載されていると認められる。

イ 上記摘示事項(1e)によれば、甲1に記載の液晶媒体において、式Iで表される化合物の全体としての混合物中の比率は、極めて特に好ましくは「≧24重量%」であり、式IAで表される化合物の全体としての混合物中の比率は、特に好ましくは「10?30重量%」であるといえる。

ウ 上記摘示事項(1b)の【0037】によれば、甲1に記載の液晶媒体は、ネマチック液晶媒体であることが理解される。

エ 上記摘示事項(1c)の【0043】によれば、甲1に記載の液晶媒体は、20℃における電圧保持比が、「少なくとも98%、好ましくは>99%である」といえる。

上記アないしエの検討事項より、甲1には、
「正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、式Iで表される1種または2種以上の化合物(式は省略)および式IAで表される1種または2種以上の化合物(式は省略)を含み、ここで、該媒体中の式Iで表される化合物の比率は、少なくとも18重量%、好ましくは24重量%以上であり、
(式Iで表される化合物として、)式I-1?I-5で表される1種または2種以上の化合物(式は省略)を含み、
式IAで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、5?40重量%、好ましくは10?30重量%であって、20℃における電圧保持比が少なくとも98%、好ましくは>99%であるネマチック液晶媒体。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比・検討

(4-1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
○甲1発明の「ネマチック液晶媒体」は、本件発明1の「ネマチック液晶組成物」に相当する。

○甲1発明の「式Iで表される1種または2種以上の化合物(式省略)」「を含み、ここで、該媒体中の式Iで表される化合物の比率は、少なくとも18重量%、好ましくは24重量%以上であり、」と本件発明1の「第一成分として構造式(1)で表される化合物(式省略)を35%?65%含有し、」は、「第一成分としてアルケニル基を有する化合物を特定量含有し、」である点で一致する。

○甲1発明の「式IAで表される1種または2種以上の化合物(式は省略)を含み、」「式IAで表される化合物の、全体としての混合物中の比率が、5?40重量%、好ましくは10?30重量%である、」と本件発明1の「第二成分として一般式(2)で表される化合物(式省略)群から選ばれる3種以上の化合物を10?30質量%含有し、」は、「第二成分として2種以上の四環化合物を10?30質量%含有し、」である点で一致する。

上記より、本件発明1と甲1発明とは、「第一成分としてアルケニル基を有する化合物を特定量含有し、第二成分として2種以上の四環化合物を10?30質量%含有するネマチック液晶組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>
アルケニル基を有する化合物の構造及び含有量が、本件発明1では、「構造式(1)、
【化1】

で表される化合物」及び「35?65%」であるのに対し、甲1発明では、「式Iで表される1種または2種以上の化合物

ここで、個々の基は、以下の意味:
R^(1)は、2?8個の炭素原子を有するアルケニル基であり、
X^(1)は、各々6個までの炭素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基またはアルケニルオキシ基であり、a=1である場合には、またF、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCSまたはOCNであり、
aは、0または1であり、
L^(1?2)は、各々、互いに独立して、HまたはFである」及び「少なくとも18重量%、好ましくは24重量%以上」である点。

<相違点1-2>
四環化合物の構造及び種類数が、本件発明1では、「一般式(2)で表される化合物
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)」及び「3種以上」であるのに対し、甲1発明では、「式IAで表される」「化合物

ここで、個々の基は、以下の意味:
R^(2)は、H、1?15個の炭素原子を有し、ハロゲン化されているか、CNもしくはCF_(3)により置換されているか、または非置換であるアルキル基であり、ここでさらに、これらの基中の1つまたは2つ以上のCH_(2)基は、各々、互いに独立して、O原子が互いに直接結合しないように、
【化3】

により置換されていてもよく、
X^(2)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、OCN、各々6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
Z^(1)およびZ^(2)は、各々、互いに独立して、-CF_(2)O-、-OCF_(2)-または単結合であり、ここでZ^(1)≠Z^(2)であり、
【化4】

は、各々、互いに独立して、
【化5】

であり、
L^(3?4)は、各々、互いに独立して、HまたはFである」及び「1種または2種以上」である点。

<相違点1-3>
アルケニル基を有する化合物と四環化合物の含有量の合計が、本件発明1では「55?95%」であることが特定されているのに対し、甲1発明では斯かる事項が特定されていない点。

<相違点1-4>
電圧保持率に関し、本件発明1では、「加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上」であることが特定されているのに対し、甲1発明では、「20℃における電圧保持比が少なくとも98%、好ましくは>99%」である点。

<相違点1-5>
本件発明1では、「(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物(式省略)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物(式省略)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物(式省略)を1種以上含む、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物(式省略)を含む極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。 」ことが特定されているのに対し、甲1発明では斯かる事項が特定されていない点。

<相違点1-1>について
上記<相違点1-1>に関して、まず、甲1発明において、アルケニル基を有する化合物の構造について検討する。甲1発明は、式Iで表される化合物として、式I-1?I-5で表される1種または2種以上の化合物を含むものであり、上記摘示事項(1d)の【0048】によると、特に、式I-1および/またはI-2で表される化合物が好ましいとされている。そして、上記摘示事項(1f)によれば、実際に、全ての実施例において、必ず、式I-1で表される化合物であるCC-5-V、CC-3-V1、CC-3-Vのいずれかが用いられているから、甲1発明を実施するに際し、式Iで表される化合物の少なくとも一部として、本件発明1の構造式(1)に相当するCC-3-Vを用いる点については、甲1に記載ないし示唆されているといえる。
次に、甲1発明において、CC-3-Vを含有する場合の含有量について検討すると、甲1発明では、式Iで表される化合物が24重量%以上であることが好ましいとされ、特にその上限は決められていない。しかしながら、上記摘示事項(1f)を参照すると、実施例における式Iで表される化合物全体の含有量は、最大でも30%である。そして、その中で、CC-3-Vを含有するものについてみてみると、その含有量は、15?18%の範囲であり、式I-1で表される化合物全体としてみても19?30%に留まっている。してみると、甲1には、式Iで表される化合物の含有量を24重量%を超えて、35重量%以上とすることが具体的に開示されているとはいえず、まして、式Iで表される化合物の一形態にすぎないCC-3-Vの含有量を35重量%以上とすることまで記載ないし示唆されているとは認められない。
一方、上記摘示事項(1b)によれば、甲1発明は、低いγ_(1)(回転粘度)値を特徴の一つとするものであるところ、上記摘示事項(10a)の【0021】、(10b)の【0040】を参照すると、アルケニル基を有する化合物を使用することで低い回転粘度γ_(1)値が得られることが、本件特許の出願時に周知ないし少なくとも公知の技術事項であったことが理解される。とするならば、回転粘度γ_(1)値を低くすることが意図されている甲1発明においてアルケニル基を有する化合物である式Iで表される化合物の含有量を、他の物性を損なわない範囲内で増量する程度のことまでは、当業者に容易といえなくもない。しかしながら、式Iで表される化合物の中で、その一形態である式I-1で表される化合物の、さらに、限定された一態様にすぎない、CC-3-Vに着目する動機は何ら見当たらず、当該技術事項に接した当業者が、その含有量を単独で35重量%以上とすることが容易になし得たとはいえない。

請求人は、平成28年9月14日付け口頭審理陳述要領書の21頁「エ.相違点I-Aの検討」の中で、甲1発明では、式IAで表される化合物が5?40重量%、式II?VIで表される化合物を30?80重量%含むので(上記摘示事項(1d)参照)、式II?VIで表される化合物を30重量%含有すれば、式IA,II?VIで表される化合物を35?70重量%含有することとなり、その残りの式Iで表される化合物は30?65重量%となると主張している。しかしながら、上述したように、甲1に開示の実施例では式Iで表される化合物が最大でも30重量%までしか含有されていないことからして、甲1には、式Iで表される化合物を30?65重量%とすることが具体的に記載されているとは認められず、単に、30?65重量%とすることが積極的には否定されていないというに留まる。

したがって、甲1発明において、相違点1-1に係る構成を想到することは、当業者といえども容易とはいえない。

<本件発明1の効果>について
本件発明1は、本件特許明細書の【0009】、【0013】の記載からして、液晶相温度範囲が広く、同時に、粘性が低いことを作用効果とするものと認められる(同【0030】によれば、好適には、ネマチック相-等方性液体相転移温度(T_(N-I))が70℃以上であり、固体相又はスメクチック相-ネマチック相転移温度(T_(→N))が-20℃以下であると記載されているから、上記「液晶温度範囲が広」いとは、T_(N-I)が70℃以上、T_(→N)が-20℃以下であれば足りると解される。)。そして、同【0037】【表1】によれば、いずれの実施例(No.1?No.3)においても、T_(N-I)が70℃以上、T_(→N)が-20℃以下であるから、液晶温度範囲が十分に広いことが理解され、また、回転粘度γ_(1)は35以下であるところ、例えば、同【0040】【表2】によれば、比較例もT_(N-I)が70℃以上、T_(→N)が-20℃以下であるものの、回転粘度γ_(1)は37以上であるから、本件発明1の効果は、比較例と同程度に広い液晶相温度範囲を維持しつつ、同時に回転粘度γ_(1)が35以下という低粘度を達成した点にあると解される。
これに対し、上記摘示事項(1b)の【0037】によれば、甲1発明も、本件発明1と同程度に広い液晶温度範囲を示すものと認められ、また、同時に低粘度であるとされており、目指す効果(液晶組成物の物性)の方向性は類似するといえる。しかしながら、上記摘示事項の【0040】によれば、甲1発明における20℃における回転粘度γ_(1)は、特に好ましくても120mPa・s未満であれば足りるとされており、上記摘示事項(1f)によれば、実施例における回転粘度γ_(1)は、86[mPa・s,20℃]以上であり、本件発明1のものとは大きく異なっている。ここで、本件特許明細書を参酌すると、本件特許明細書における回転粘度の測定条件が開示されておらず、特に測定温度が不明であるため、どのような測定条件の下で測定された値であるのか不明であり、本件発明1の「35以下」と甲1発明の「86以上」との数値を単純に比較することはできないが、本件特許明細書の比較例1?3では、構造式(1)で表される化合物に相当する0d1-Cy-Cy-3を、甲1の実施例におけるCC-3-V(0d1-Cy-Cy-3と同一の化合物)の配合量の上限値である18%を大幅に超える30%配合されているが、それでも回転粘度γ_(1)は37以上とされていることからして、本件発明1における低粘度とは、甲1発明における低粘度と程度が相当異なると推認される。したがって、本件発明1は甲1発明と比して、低粘度の点で有意な差異を有するものと認められる。

よって、本件発明1は、相違点1-2?1-5について検討するまでもなく、当業者といえども甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(4-2)本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、本件発明1を限定するものであるところ、本件発明1が甲1発明に基いて容易に想到し得るものでないことは、上記(4-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明2ないし6も、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(5)無効理由1-1のまとめ

以上のとおり、本件発明1ないし6は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。

2.無効理由2-2について

(1)先願
甲7:国際出願番号PCT/EP2005/006428号〔国際公開第2005/123879号として国際公開され、明細書及び特許請求の範囲の日本語による翻訳文が提出された(特表2008-502754号公報参照)。〕

(2)先願に記載の事項(甲7の日本語訳を記載する。訳文は、特表2008-502754号公報による。併せて、甲7の国際公開公報の該当箇所を示す。)
(7a)請求の範囲
「【請求項1】
式Iで表される1種類以上の化合物と、式IA、IBおよびICで表される化合物群からの1種類以上の化合物とを含むことを特徴とする極性化合物混合物系液晶媒体。
【化1】

【化2】

(式中、R^(1)、R^(1A)、R^(1B)およびR^(1C)は、それぞれ互いに独立に、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、
【化3】

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
X、XAおよびXBは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
【化4】

a)それぞれ互いに独立に、1,4-シクロヘキセニレンまたは1,4-シクロヘキシレン基を表し、1または2個の隣接していないCH_(2)基が-O-または-S-で置き換えられていてもよく、
c)1,4-フェニレン基で、1または2個のCH基がNで置き換えられていてもよく、
b)ピペリジン-1,4-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、フルオレン-2,7-ジイルの群からの基で、
但し、a)、b)およびc)の基は、ハロゲン原子によって、1または多置換されていてもよく、
L^(1)?L^(6)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、および
bは、0、1または2を表す。)」

(7b)19頁1?8行
「【0054】
本発明は、また、この型の液晶媒体を含む電気光学的ディスプレイ、例えば、セル、各ピクセルをスイッチングするための外板上の集積非線形素子、および正の誘電異方性および高比抵抗でセル内にあるネマチック液晶混合物を、外枠と共に構成する2枚の平行な外板を有するSTNまたはMLCのようなディスプレイに関し、また、これらの媒体を電気光学的目的のために使用することに関する。」

(7c)19頁16?28行
「【0056】
本発明の混合物は、特に、高速スイッチングモニター、TVセット、TV/モニター組合せ装置およびΔnの高いTFT分野に特に好適で、例えば、射影テレビセット、LCoSおよびOCBなどである。
【0057】
本発明の液晶混合物は、-20℃まで、好ましくは-30℃まで、特に好ましくは-40℃までネマチック相を保持しながら、60℃を超える、好ましくは70℃を超える、特に好ましくは75℃を越える透明点を可能にし、同時に4以上、好ましくは5以上の誘電異方性Δεおよび高い比抵抗が達成可能とされ、優れたSTNおよびMLCディスプレイが実現可能とされる。特に、この混合物は、低い電圧駆動によって特徴づけられる。」

(7d)20頁32行?21頁14行
「【0062】
電圧保持率(HR)を測定[S.Matsumotoら、Liquid Crystals、1989年、第5巻、第1320頁;K.Niwaら、Proc.SID Conference、(サンフランシスコ)、1984年6月、第304頁、;G.Weberら、Liquid Crystals、1989年、第5巻、第1381頁]した結果、
【0063】
【化9】

のシアノフェニルシクロヘキサン類、または以下の式
【0064】
【化10】

のエステル類を式I、IA、IBおよびICの化合物の代わりに含み本発明と類似した混合物に比べて、式I、IA、IBおよびICの化合物を含む本発明の混合物の方が、UVへの曝露によるHRの低下が著しく小さいことが示された。
【0065】
また、本発明による混合物のUV安定性は極めて優れている。即ち、これらの混合物は、UVに暴露されてもHRの低下が著しく小さい。式Iの化合物の割合が低い(10重量%未満)場合においても、先行技術による混合物と比較して、6%以上も混合物のHRが増加する。」

(7e)21頁16行?25頁11行
「【0066】
式Iの特に好ましい化合物は、式I-1?I-10の化合物である。
【0067】
【化11.1】

【0068】
【化11.2】

式中、R^(1)は、式Iで示された意味を有する。R^(1)は、好ましくは、アルキル、さらには、アルケニルを表す。
【0069】
これらの好ましい化合物のうち、式I-1、I-4、I-7およびI-10の化合物が特に好ましく、特に、I-1およびI-10である。
【0070】
下位の式I-1?I-10中のR^(1)は、好ましくは、C_(2)H_(5)、n-C_(3)H_(7)、n-C_(5)H_(11)、さらに、CH_(3)、n-C_(4)H_(9)、n-C_(6)H_(13)、n-C_(7)H_(15)、CH_(2)=CH、CH_(3)CH=CH、CH_(2)=CHCH_(2)CH_(2)またはCH_(3)CH=CHCH_(2)CH_(2)を表す。R^(1)は、非常に好ましくは、n-C_(3)H_(7)を表す。
【0071】
・媒体は、好ましくは、少なくとも1種類の以下の化合物を含む。
【0072】
【化12.1】

【0073】
【化12.2】

・媒体は、好ましくは、以下の化合物を含む。
【0074】
【化13】

式中、nは3または5である。
【0075】
nが3の化合物とnが5の化合物とを含む媒体のようなものが好ましい。」

(7f)35頁22行?36頁27行
「・媒体は、一般式VII?XIIからなる群より選ばれる1種類以上の化合物を更に含む。
【0109】
【化20】

式中、R^(0)、X^(0)およびY^(1?4)は、それぞれ互いに独立に、請求項6で示される意味を有する。X^(0)は、好ましくは、F、Cl、CF_(3)、OCF_(3)またはOCHF_(2)である。R^(0)は、好ましくは、それぞれ6個以下の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フッ化アルキルまたはアルケニルである。」(当審注:「R^(0)、X^(0)およびY^(1?4)は、それぞれ互いに独立に、請求項6で示される意味を有する」とは、R^(0)が、それぞれ9個以下の炭素原子を有するn-アルキル、アルコキシ、オキサアルキル、フルオロアルキルまたはアルケニルを表し、X^(0)が、F、Cl、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化オキサアルキル、ハロゲン化アルケニルオキシまたはハロゲン化アルコキシを表し、Y^(1)?Y^(4)が、それぞれ互いに独立して、HまたはFを表すということである。)

(7g)43頁30行?45頁26行
「【0139】
・媒体は、式AN1?AN11の1種類または2種類以上の融合した環構造を有する化合物を更に含む。
【0140】
【化28.1】

【0141】
【化28.2】

式中、R^(0)は、上で示される意味を有する。本発明の混合物中における式AN1?AN11の化合物の割合は、好ましくは、1?20重量%である。」

(7h)実施例
「【実施例】
【0184】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。以上および以下において、パーセンテージは質量パーセントである。温度はすべて摂氏で示される。m.p.は融点を表わし、cl.p.は透明点を表わす。さらに、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクティック相、およびIはアイソトロピック相を表す。これらの記号間のデータは相転移温度を表す。Δnは光学異方性を表わし、n_(0)は屈折率を表す(589nm、20℃)。流動粘度ν_(20)(mm^(2)/sec)および回転粘度γ_(1)(mPa・s)は、それぞれ20℃で決定した。
【0185】
特に他に明記しない限り、用途中の全ての濃度は重量%で示されており、対応する混合物または混合物の成分に関する。全ての物理的特性は、「メルク液晶、液晶の物理的物性」(1997年刊11月、独国Merck KGaA社)に従って決定され、特に他に明記しない限り、20℃で行なう。Δnは589nmで、Δεは1kHzで決定される。
<I.混合物例>
<例M1>
【0186】
【表6】


「<例M17>
【0203】
【表23】

<例M18>
【0204】
【表24】

」(当審注:上記表記の一部について、その意味する化学構造式を示す。

)

(3)先願に記載された発明

ア 上記摘示事項(7h)によれば、甲7には、例M17として、「CC-3-Vを46%、CCGU-3-Fを10%、PPGU-V2-Fを4%含有し、そして、CC-3-V、CCGU-3-F、PPGU-V2-Fを合計60%含有する液晶媒体」が記載されているといえる。

イ 上記摘示事項(7h)によれば、甲7には、例M18として、「CC-3-Vを45%、CCGU-3-Fを10%、PPGU-V2-Fを3%含有し、そして、CC-3-V、CCGU-3-F、PPGU-V2-Fを合計58%含有する液晶媒体」が記載されているといえる。

ウ 上記摘示事項(7b)及び(7c)の【0057】の記載からして、甲7の液晶媒体が、ネマチック液晶媒体であることは明らかである。

エ 上記摘示事項(7d)によれば、甲7発明の液晶媒体は、UV照射後の電圧保持率の低下が著しく小さいことが理解される。

上記アないしエの検討事項より、甲7には、例M17として、
「CC-3-Vを46%、CCGU-3-Fを10%、PPGU-V2-Fを4%含有し、そして、CC-3-V、CCGU-3-F、PPGU-V2-Fを合計60%含有する、UV照射後の電圧保持率の低下が著しく小さいネマチック液晶媒体。」(以下、「甲7発明1」という。)、及び、例M18として、
「CC-3-Vを45%、CCGU-3-Fを10%、PPGU-V2-Fを3%含有し、そして、CC-3-V、CCGU-3-F、PPGU-V2-Fを合計58%含有する、UV照射後の電圧保持率の低下が著しく小さいネマチック液晶媒体。」(以下、「甲7発明2」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比・検討

(4-1)本件発明1について

本件発明1と甲7発明1、2とを対比する。
○甲7発明1、2の「ネマチック液晶媒体」は、本件発明1の「ネマチック液晶組成物」に相当する。

○甲7発明1、2の「CC-3-V」は、本件発明1の「構造式(1)で表される化合物(式省略)」に相当する。そして、甲7発明1、2では、CC-3-Vの含有量は「46%」、「47%」であるから、本件発明1の構造式(1)で表される化合物の含有量である「35?65%」とは、「46%又は47%」で重複する。

○甲7発明1、2の「CCGU-3-F」及び「PPGU-V2-F」と本件発明1の「一般式(2)で表される化合物(式省略)」とは、四環化合物である点で一致する。そして、甲7発明1、2のCCGU-3-FとPPGU-V2-Fの含有量は、合計で12%又は13%であるから、本件発明1の「一般式(2)で表される化合物(式省略)」の含有量である「10?30質量%」とは、「12質量%又は13質量%」で重複する。

○甲7発明1、2の「CC-3-V、CCGU-3-F、PPGU-V2-Fを合計58%」又は「60%含有」と本件発明1の「前記構造式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物を55?95%含有」とは、「前記構造式(1)で表される化合物及び四環化合物を58%又は60%含有」で重複する。

上記より、本件発明1と甲7発明1、2とは、「第一成分として構造式(1)で表される化合物(式省略)を46%又は47%含有し、第二成分として四環化合物を12質量%又は13質量%含有し、
前記構造式(1)で表される化合物及び前記四環化合物を58%又は60%含有することを特徴とするネマチック液晶組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-1>
四環化合物の構造及びその種類数が、本件発明1では、「一般式(2)
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)で表される化合物」であって「3種以上」と特定されているのに対し、甲7発明1、2では、「CCGU-3-F、PPGU-V2-F」であって2種である点。

<相違点2-2>
電圧保持率に関し、本件発明1では、「加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれる」ことが特定されているのに対し、甲7発明1、2では、「UV照射後の電圧保持率の低下が著しく小さい」ことが特定されている点。

<相違点2-3>
本件発明1では、「(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物(式省略)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物(式省略)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物(式省略)を1種以上含む、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物(式省略)を含む極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。 」ことが特定されているのに対し、甲7発明1、2では、PPGU-V2-Fが含有されている点。

<相違点2-3>について
甲7発明1、2は、いずれもPPGU-V2-Fを含有するものであるところ、当該化合物は、本件発明1において、除かれている「下記式で表される1種以上の化合物を含む極性化合物混合物系液晶媒体
【化8】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
Xは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
L^(1)?L^(3)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表す。)」の「R^(1)が2個のCH_(2)基が-CH=CH-で置換されている炭素数4のアルキル基を表し、X、L^(1)がFで、L^(2)、L^(3)がHを表す。」場合に相当する。また、上記摘示事項(7a)を参照すれば、甲7の液晶媒体において、PPGU-V2-Fは必須成分でないことが理解されるから、これを他の成分に置換したもの、すなわち、当該成分を含まない液晶媒体も甲7に記載されていた範囲内といえるものの、その場合であっても、「下記式で表される1種以上の化合物

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
Xは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
L^(1)?L^(3)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表す。)」自体は必須成分であることからして、これを含まないことが特定されている本件発明1と、当該化合物を必ず含む甲7発明1、2又はそれと実質同等の液晶媒体とは、明らかな相違点を有するといえ、実質的に同一でない。

よって、本件発明1は、相違点2-1?2-2について検討するまでもなく、甲7発明1、2と実質同一でない。

(4-2)本件発明2ないし6について

本件発明2ないし6は、本件発明1を限定するものであるところ、本件発明1が甲7発明1、2と実質同一でないことは、上記(4-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明2ないし6も、甲7発明1、2と実質同一でない。

(5)無効理由2-2のまとめ

以上のとおり、本件発明1ないし6は、甲7発明1、2と実質同一でないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件訂正後の請求項1ないし6に係る発明発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。

3.無効理由2-3について

(1)先願及び参考文献
甲8:欧州特許出願番号05011326号(特開2006-328399号公報参照。なお、上記先願には、当該公開公報の【0122】以降の例27?例38が開示されていない。)
甲21:特開平10-77476号公報
甲22:特開2001-42793号公報
甲23:特開2001-72977号公報

(2)先願及び参考文献に記載の事項

(2-1)先願に記載の事項(日本語訳を併記する。訳文は、特開2006-328399号公報による。)
(8a)



(【請求項1】
液晶媒体であって、
-式I:
【化1】

で表される誘電的に中性の化合物を含む、誘電的に中性の成分である成分A、
および
-3より大の誘電異方性を有する1種または2種以上の誘電的に正の化合物を含む、誘電的に正の成分である成分B、
を含むこと、および、前記媒体中の成分Aの濃度が、20%?80%の範囲であることを特徴とする、前記液晶媒体。
【請求項2】
媒体中の成分Aの濃度が、25%?60%の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の液晶媒体。
【請求項3】
誘電的に正の成分である成分Bが、式IIおよびIII:
【化2】

式中、
R^(2)およびR^(3)は、互いに独立して、1?7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2?7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルであり 、
【化3】

は、互いに独立して、
【化4】

であり、
L^(21)、L^(22)、L^(31)およびL^(32)は、互いに独立して、HまたはFであり、
X^(2)およびX^(3)は、互いに独立して、ハロゲン、1?3個のC原子を有するハロゲン化アルキルもしくはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルもしくはアルケニルオキシであり、
Z^(3)は、-CH_(2)CH_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH_(2)O-または単結合であり、そして
l、m、nおよびoは、互いに独立して、0または1である、
で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶媒体。
【請求項8】
請求項1?7のいずれかに記載の液晶媒体を含むことを特徴とする、液晶ディスプレイ。
【請求項9】
アクティブマトリクスによってアドレスされることを特徴とする、請求項8に記載の液晶ディスプレイ。)

(8b)



(【0057】
本発明による液晶媒体は、70℃以上、好ましくは75℃以上、そして特に80℃以上の透明点によって特徴付けられる。
本発明による液晶媒体の、589nm(Na^(D))および20℃におけるΔnは、好ましくは0.060以上?0.135以下の範囲、より好ましくは0.070以上?0.125以下の範囲、そして最も好ましくは0.080以上?0.120以下の範囲である。
【0058】
本発明による液晶媒体の、1kHzおよび20℃におけるΔεは、4.0以上である。
好ましくは本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも0℃以下から70℃以上まで、より好ましくは少なくとも-20℃以下から70℃以上、最も好ましくは少なくとも-30℃以下から75℃以上、そして特に、少なくとも-40℃以下から75℃以上まで広がっている。
【0059】
本発明の第1の好ましい態様において、液晶媒体のΔnは、0.090以上?0.125以下の範囲、より好ましくは0.095以上?0.120以下の範囲、そして最も好ましくは0.100以上?0.115以下の範囲であり、一方Δεは、好ましくは4.0以上?7.0以下の範囲である。
本発明の第2の好ましい態様において、液晶媒体のΔnは、0.085以上?0.130以下の範囲、より好ましくは0.090以上?0.125以下の範囲、そして最も好ましくは0.095以上?0.120以下の範囲であり、一方Δεは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.0以上、さらにより好ましくは8.0以上、そして最も好ましくは8.0以上?10.0以下の範囲である。
【0060】
この態様において、好ましくは本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも-20℃以下から70℃以上まで、より好ましくは少なくとも-20℃以下から70℃以上、最も好ましくは少なくとも-30℃以下から70℃以上、そして特に、少なくとも-40℃以下から70℃以上まで広がっている。
【0061】
本発明の第3の好ましい態様において、液晶媒体のΔnは、0.070以上?0.120以下の範囲、より好ましくは0.075以上?0.115以下の範囲、そして最も好ましくは0.080以上?0.110以下の範囲であり、一方Δεは、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.0以上?14.0以下の範囲、そして最も好ましくは4.0以上?6.0以下の範囲であるか、または特に好ましくは6.0以上?11.0以下の範囲である。
【0062】
この態様において、好ましくは本発明の媒体のネマチック相は、少なくとも-20℃以下から75℃以上まで、より好ましくは少なくとも-30℃以下から70℃以上、最も好ましくは少なくとも-30℃以下から75℃以上、そして特に、少なくとも-30℃以下から80℃以上まで広がっている。)

(8c)



(【0062】
・・・
成分Aは好ましくは、混合物全体に対して29%?65%の濃度で、より好ましくは33%?59%の濃度で、より好ましくは36%?47%の濃度で、そして最も好ましくは39%?44%の濃度で用いられる。
【0063】
成分Bは好ましくは、混合物全体に対して10%?60%の濃度で、より好ましくは15%?55%の濃度で、より好ましくは20%?50%の濃度で、そして最も好ましくは25%?45%の濃度で用いられる。
・・・)

(8d)


」(当審注:上記実施例で用いられている化合物の構造式の一部を下に示す。

)
(【0109】
例14
次の表に与えられた組成と特性を有する液晶混合物を作製する。
【表19】(表省略)
この混合物は、有利なΔn値、高いΔε値、および低い回転粘度を有する。従ってこれは、TNモードで作動するディスプレイに非常によく適している。)

(2-2)甲21に記載の事項
(21a)
「【請求項7】 前記液晶組成物に加えて、-2?+2の誘電率異方性を有する化合物からなる液晶成分Cを多くとも70重量%含有し、該液晶成分Cが一般式(III-1)?(III-3)
【化3】

(式中、R^(31)?R^(33)は各々独立的に炭素原子数2?7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表し、R^(34)?R^(36)は各々独立的に炭素原子数1?7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基又はC_(u)H_(2u+1)-O-C_(v)H_(2v)を表し、u及びvは各々独立的に1?5の整数を表し、Y^(31)?Y^(33)は各々独立的に水素原子、フッ素原子又は-CH_(3)を表し、Z^(31)は単結合、-COO-、-C_(2)H_(4)-、-C_(4)H_(8)-、-C≡C-又は-CH=CH-を表し、Z^(32)?Z^(34)は各々独立的に単結合、-COO-、-C_(2)H_(4)-又は-C_(4)H_(8)-を表し、Z^(35)は単結合、-C≡C-又は-COO-を表し、環A^(31)及び環A^(32)は各々独立的にシクロヘキサン環又はシクロヘキセン環を表し、i、j及びkは各々独立的に0又は1の整数を表し、各化合物におけるシクロヘキサン環の水素原子(H)は重水素原子(D)で置換されていても良い。)で表される化合物群から選ばれる化合物を1種又は2種以上含有し、該液晶成分Cと前記液晶成分Bの総和が40?99重量%であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のネマチック液晶組成物。」

(21b)
「【0041】液晶成分Cとして、一般式(III-1)?(III-3)の化合物を含有することで、粘度や粘弾性を低減させることができ、比抵抗や電圧保持率が比較的高いという特徴を有する。液晶成分Cの粘度は、可能な限り低い粘度であることが好ましく、本発明の場合、45cp以下が好ましく、30cp以下がより好ましく、20cp以下が更に好ましく、15cp以下が特に好ましい。液晶成分Cとして、一般式(III-1)?(III-3)のより好ましい化合物は、一般式(III-1a)?(III-3a)、(III-3c)?(III-3g)である。また、R^(31)?R^(33)が炭素原子数2?5の直鎖状アルキル基又はCH_(2)=CH-(CH_(2))_(q)(q=0、2)のアルケニル基である化合物を少なくとも1種以上含有した液晶成分Cはより好ましい効果が得られる。更に特に、一般式(III-1a)、(III-1d)、(III-2a)の化合物及びY^(31)が水素原子である一般式(III-3c)?(III-3f)の化合物は、3?30%と少量含有させてもこの効果を得ることができ、応答速度の改善に有用であり、例えばSTN-LCDに有用である。」

(21c)
「【0062】組成物の化学的安定性は、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後窒素置換の処理をして封入し、150℃、1時間の加熱促進テストを行い、この液晶組成物の比抵抗あるいは電圧保持率を測定した。実施例中、測定した特性は以下の通りである。」
「【0072】(実施例2)
【0073】
【化16】

【0074】からなるネマチック液晶組成物(2-2)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
T_(N-I ) : 102.3 ℃
T_(→N) : -26. ℃
V_(th) : 2.27 V
γ : 1.16
△ε : 6.2
△n : 0.285
η : 27.9 c.p.
テスト前の比抵抗 : 4.0×10^(12) Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 : 8.8×10^(11) Ω・cm
テスト前の電圧保持率 : 98.9%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.0%」
「【0089】(実施例5)
【0090】
【化20】

【0091】からなるネマチック液晶組成物(2-5)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
T_(N-I) : 86.9 ℃
T_(→N) : -40. ℃
V_(th) : 2.14 V
γ : 1.15
△ε : 4.7
△n : 0.095
テスト前の電圧保持率 : 99.2%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.6%」
「【0098】(実施例7)
【0099】
【化22】

【0100】からなるネマチック液晶組成物(2-7)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
T_(N-I) : 91.7 ℃
T_(→N) : -70. ℃
V_(th) : 1.64 V
γ : 1.16
△ε : 6.8
△n : 0.119
テスト前の電圧保持率 : 99.3%
加熱促進テスト後電圧保持率 : 98.6%」

(2-3)甲22に記載の事項
(22a)
「【請求項1】 液晶組成物が、一般式(I-1)、(I-2)
【化1】

(式中、
R^(1)?R^(3)は各々独立的に炭素原子数1?10のアルキル基又は炭素原子数2?10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH_(3)又はCF_(3)を有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、
Q^(1)は各々独立的にF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)、OCF_(2)H、OCFH_(2)、NCS又はCNを表し、
X^(1)、X^(2)は各々独立的にはH、F、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はCNを表し、
K^(1)?K^(3)、P^(1)?P^(3)は各々独立的に単結合、-COO-、-OCO-、-CH_(2)O-、-OCH_(2)-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-(CH_(2))_(2)-、-(CH_(2))_(4)-、-CH=CH-(CH_(2))_(2)-、-(CH_(2))_(2)-CH=CH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-又は-N(O)=N-を表し、
環A^(1)?A^(4)、B^(1)?B^(4)は各々独立的に1,4-フェニレン、2又は3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、3,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2又は3-クロロ-1,4-フェニレン、2,3-ジクロロ-1,4-フェニレン、3,5-ジクロロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、トランス-1,4-シクロへキシレン、トランス-1,4-シクロへキセニレン、トランス-1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、トランス-1-シラ-1,4-シクロヘキシレン、トランス-4-シラ-1,4-シクロヘキシレン、ナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラハイドロナフタレン-2,6-ジイル、デカハイドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、9,10-ジハイドロフェナントレン-2,7-ジイル、1,2,3,4,5,6,7,8,-オクタハイドロフェナントレン-2,7-ジイル、テトラデカハイドロフェナントレン-2,7-ジイル又はフルオレン-2,7-ジイルを表し、ナフタレン-2,6-ジイル環中に存在する1個又は2個以上のCH基がN基で置換されていてもよく、ナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラハイドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイル、9,10-ジハイドロフェナントレン-2,7-ジイル、1,2,3,4,5,6,7,8,-オクタハイドロフェナントレン-2,7-ジイル、テトラデカハイドロフェナントレン-2,7-ジイル又はフルオレン-2,7-ジイルは非置換又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はCH_(3)を有することができ、k^(1)?k^(2)、p^(1)?p^(2)は各々独立的に0又は1を表し、前記一般式の化合物を構成する原子はその同位体原子で置換されていても良い。但し、側鎖基R^(1)?R^(3)、極性基Q^(1)、X^(1)、X^(2)、連結基K^(1)?K^(3)、P^(1)?P^(3)及び環A^(1)?A^(4)、B^(1)?B^(4)に存在する水素原子のうち少なくとも1個以上が重水素原子と置換されている。)で表される化合物から選ばれた1種又は2種以上の化合物からなる液晶成分Aを含有し、該液晶成分Aの総和が0.01?100重量%であることを特徴とするネマチック液晶組成物。」

(22b)
「【0032】本発明に関わる化合物は、構成する水素原子を重水素原子に意識的に置換させた化合物であり、相溶性、弾性定数、プレチルト角、電圧保持率等により好ましい効果を示す。・・(省略)・・」
「【0035】また、水素原子を重水素原子置換した化合物を多用した場合、不純物の混入に対して、より高い電圧保持率を維持する特段の効果があり、アクティブ用のTFT-LCD、PDLC、PN-LCD等の表示特性や製造上の歩留まりに好適である。この様な効果は、重水の性質、即ち反応の平衡定数や速度定数の差異、低いイオン移動度、無機物や酸素の低い溶解性等の性質が、液晶化合物においても発現していることが考えられる。より高い電圧保持率を維持することを得るためには、液晶成分Aの化合物を液晶組成物総量に対して0.01?100重量%含有させることができるが、30?100重量%が好ましく、50?100重量%がより好ましく、70?100重量%が更に好ましい。」

(22c)
「【0069】組成物の化学的安定性は、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後窒素置換の処理をして封入し、150℃、1時間の加熱促進テストを行った。この液晶組成物のテスト前の比抵抗、加熱促進テスト後の比抵抗、テスト前の電圧保持率、加熱促進テスト後電圧保持率を測定した。
【0070】(実施例1)
【化29】

からなるネマチック液晶組成物(3-01)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
液晶組成物の物性特性
T_(N-I) : 88.8 ℃
T_(→N) : -70. ℃
△ε : 7.3
△n : 0.094
液晶組成物の信頼性特性
テスト前の比抵抗 :1.3×10^(13) Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 :7.0×10^(12 )Ω・cm
テスト前の電圧保持率 :99.5%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.8%」
「【0074】(比較例1)
【化32】

【0075】本発明の優位性を示すために、重水素原子を含有しない混合液晶(b-01)を調製し、信頼性を測定した。結果は以下の通りであった。
液晶組成物の信頼性特性
テスト前の比抵抗 :1.2×10^(13) Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 :5.6×10^(12 )Ω・cm
テスト前の電圧保持率 :99.1%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.2%
【0076】(実施例4)及び(比較例2)
さらに本発明の優位性を示すために、液晶組成物(3-01)?(3-03)と混合液晶(b-01)にステアリン酸を0.2重量%添加して信頼性特性を測定した。結果は以下の通りであった。
液晶組成物の信頼性特性
液晶組成物(3-01)
テスト前の電圧保持率 :99.5%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.6%
液晶組成物(3-02)
テスト前の電圧保持率 :96.1%
加熱促進テスト後電圧保持率:94.5%
液晶組成物(3-03)
テスト前の電圧保持率 :96.3%
加熱促進テスト後電圧保持率:94.9%
液晶組成物(b-01)
テスト前の電圧保持率 :88.7%
加熱促進テスト後電圧保持率:86.9%」

(2-4)甲23に記載の事項
(23a)
「【請求項1】 液晶組成物が、グループA1とA2から選ばれる化合物からなる液晶成分Aを含有し、該グループは下記に示す一般式(I-1)?(I-4)で表される化合物から構成され、
【化1】

(式中、
R^(1)?R^(3)は各々独立的に炭素原子数1?10のアルキル基又は炭素原子数2?10のアルケニル基を表し、該アルキル基又は該アルケニル基は非置換又は置換基として1個又は2個以上のF、Cl、CN、CH_(3)又はCF_(3)を有することができ、該アルキル基又は該アルケニル基中に存在する1個又は2個以上のCH_(2)基は、O原子が相互に直接結合しないものとして、O、CO又はCOOで置換されていてもよく、Q^(1)は各々独立的にF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)、OCF_(2)H、OCFH_(2)、NCS又はCNを表し、X^(1)?X^(3)は各々独立的にはH、F、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はCNを表し、X^(3)はまた各々独立的にはCH_(3)を表し、W^(1)?W^(4)は各々独立的にはH、F、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はCNを表し、前記一般式(I-1)?(I-4)の化合物を構成する原子はその同位体原子で置換されていても良い。但し、一般式(I-1)におけるW^(1)?W^(4)の少なくとも一つはF、Cl、CF_(3)又はOCF_(3)である。)
前記一般式(I-1)?(I-4)の化合物を除く液晶成分として、+2以上の誘電率異方性を有する化合物からなる液晶成分Bを0?99.9重量%含有し、-10?+2の誘電率異方性を有する化合物からなる液晶成分Cを0?85重量%含有し、該液晶成分Bと該液晶成分Cの総和が0?99.9重量%であることを特徴とするネマチック液晶組成物。」
「【請求項3】 前記液晶成分Aが、下記小群(I-ai)?(I-aiv)のうち一つ又は二つ又は三つ以上の小群から選ばれる化合物を1種?20種含有することを特徴とする請求項1?2記載のネマチック液晶組成物。前記一般式(I-1)において、
(I-ai)R^(1)が炭素原子数2?7のアルキル基又はアルケニル基である化合物。
(I-aii)Q^(1)がF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はOCF_(2)Hである化合物。
(I-aiii)W^(1)?W^(4)のうち一つ又は二つがFである化合物。
(I-aiv)X^(1)、X^(2)のうち一つ又は二つがF、Cl、CF_(3)又はOCF_(3)である化合物。」

(23b)
「【0041】(I-aii):一般式(I-1)において、Q^(1)がF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はOCF_(2)Hである化合物。具体的な化合物例としては式(I-1a)?(I-1dp)の化合物。具体的用途としては、Q^(1)がF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はOCF_(2)Hである極性基を有する化合物を実質的に主成分とした場合には高信頼性のSTN-LCDやアクティブ用のTFT-LCD、STN-LCD、PDLC、PN-LCD等に好ましく、駆動電圧の低減や高電圧保持率に優れており、Q^(1)がF、Cl又はCNの極性基を有する化合物を実質的に主成分とした場合にはTN-LCD、STN-LCD、PDLC、PN-LCD等の駆動電圧、急峻性や応答性あるいはその温度特性に優れた電気光学特性を得ることができる。
【0042】(I-aiii):一般式(I-1)において、W^(1)?W^(4)のうち一つ又は二つがFである化合物。具体的な化合物例としては式(I-1a)?(I-1dp)の化合物。具体的用途としては、W^(1)?W^(4)の少なくとも1個がFであり、Q^(1)がF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はOCF_(2)Hである化合物を実質的に主成分とした場合にはアクティブ用のTFT-LCD、PDLC、PN-LCD等の駆動電圧の低減や高電圧保持率に優れており、 Q^(1)がF、Cl又はCNである化合物を実質的に主成分とした場合にはTN-LCD、STN-LCD、PDLC、PN-LCD等の駆動電圧、急峻性や応答性あるいはその温度特性に優れた電気光学特性を得ることができる。更に、この小群の化合物は、液晶組成物の相溶性の改善、低温保存の向上により動作温度範囲を拡大し、駆動電圧の低減及びその温度変化を改善し、所定の駆動電圧に対し比較的速い応答性を達成するあるいは改善することができ、STN-LCD、TFT-LCD、PDLC、PN-LCD等のより改善された電気光学特性を得ることができる、
【0043】(I-aiv):一般式(I-1)において、X^(1)、X^(2)のうち一つ又は二つがF、Cl、CF_(3)又はOCF_(3)である化合物。具体的な化合物例としては式(I-1a)?(I-1dp)の化合物。具体的用途としては、更に好ましい化合物は以下である。X^(1)とX^(2)の組において少なくとも一方が又は両方がF、Clであり、Q^(1)がF、Cl、CF_(3)、OCF_(3)又はOCF_(2)Hである化合物を実質的に主成分とした場合にはアクティブ用のTFT-LCD、PDLC、PN-LCD等の駆動電圧の低減や高電圧保持率に優れており、 Q^(1)がF、Cl又はCNである化合物を実質的に主成分とした場合にはTN-LCD、STN-LCD、PDLC、PN-LCD等の駆動電圧、急峻性や応答性あるいはその温度特性に優れた電気光学特性を得ることができる。」

(23c)
「【0164】組成物の化学的安定性は、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後窒素置換の処理をして封入し、150℃、1時間の加熱促進テストを行った。この液晶組成物のテスト前の比抵抗、加熱促進テスト後の比抵抗、テスト前の電圧保持率、加熱促進テスト後電圧保持率を測定した。
【0165】(実施例1)
【化43】

からなるネマチック液晶組成物(3-01)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
液晶組成物の物性特性
T_(N-I) : 95.8 ℃
T_(→N) : -23. ℃
△ε : 6.6
△n : 0.275
液晶組成物の信頼性特性
テスト前の比抵抗 :5.6×10^(12 )Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 :9.9×10^(11 )Ω・cm
テスト前の電圧保持率 :99.0%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.0%
ツイスト角90度のTN-LCD表示特性(セル厚8μm)
V_(th) : 2.16 V
γ : 1.16 」
「【0171】(実施例2)
【化45】

からなるネマチック液晶組成物(3-02)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
液晶組成物の物性特性
T_(N-I) : 100.9 ℃
T_(→N) : -23. ℃
△ε : 4.8
△n : 0.246
η : 31.6 c.p.
液晶組成物の信頼性特性
テスト前の比抵抗 :1.0×10^(13) Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 :4.2×10^(12) Ω・cm
テスト前の電圧保持率 :99.1%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.2%
ツイスト角90度のTN-LCD表示特性(セル厚8μm)
V_(th) : 2.50 V
γ : 1.160 」
「【0193】(実施例10)
【化53】

からなるネマチック液晶組成物(3-10)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
T_(N-I) : 101.5 ℃
T_(→N) : -10. ℃
V_(th) : 2.45 V
γ : 1.160
△ε : 5.5
△n : 0.307
テスト前の比抵抗 :2.2×10^(13) Ω・cm
加熱促進テスト後の比抵抗 :6.1×10^(12) Ω・cm
テスト前の電圧保持率 :98.9%
加熱促進テスト後電圧保持率:98.1%」

(3)先願に記載された発明

ア 上記摘示事項(8a)の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3によれば、甲8には、「液晶媒体であって、
-式I: (式省略)で表される誘電的に中性の化合物を含む、誘電的に中性の成分である成分A、
および
-式IIおよびIII:(式省略)で表される化合物の群から選択される、3より大の誘電異方性を有する1種または2種以上の誘電的に正の化合物を含む、誘電的に正の成分である成分B、
を含むこと、および、前記媒体中の成分Aの濃度が、25%?60%の範囲である液晶媒体」が記載されているといえる。

イ 上記摘示事項(8d)の例14によれば、甲8には、「CC-3-Vを41%、CCGU-3-Fを4%、APUQU-2-Fを7%、APUQU-3-Fを7%含有する液晶媒体」が記載されているといえる。

ウ 上記摘示事項(8b)の【0062】等によれば、甲8の液晶媒体は、ネマチック液晶媒体であるといえる。

上記ア、ウの検討事項より、甲8には、
「液晶媒体であって、
-式I: (式省略)で表される誘電的に中性の化合物を含む、誘電的に中性の成分である成分A、
および
-式IIおよびIII:(式省略)で表される化合物の群から選択される、3より大の誘電異方性を有する1種または2種以上の誘電的に正の化合物を含む、誘電的に正の成分である成分B、
を含むこと、および、前記媒体中の成分Aの濃度が、25%?60%の範囲であるネマチック液晶媒体。」(以下、「甲8発明1」という。)が記載されていると認められる。

上記イ、ウの検討事項より、甲8には、例14として、
「CC-3-Vを41%、CCGU-3-Fを4%、APUQU-2-Fを7%、APUQU-3-Fを7%含有するネマチック液晶媒体。」(以下、「甲8発明2」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比・判断

(4-1)甲8発明1を主発明とした場合

(4-1-1)本件発明1について

本件発明1と甲8発明1とを対比する。
○甲8発明1の「ネマチック液晶媒体」は、本件発明1の「ネマチック液晶組成物」に相当する。

○甲8発明1の「式I:(式省略)で表される誘電的に中性の化合物」は、本件発明1の「構造式(1)で表される化合物(式省略)」に相当する。

○甲8発明1の「式IIおよびIII:(式省略)で表される化合物」は、l=m=0、n=o=0であるときは2環化合物であり、l=m=1、n=o=1であるときは四環化合物であり、いずれにしろ、多環化合物であるから、本件発明1の「一般式(2)で表される化合物(式省略)」とは、「多環化合物」である点で一致する。

上記より、本件発明1と甲8発明1とは、「
第一成分として構造式(1)、
【化1】

で表される化合物を含有し、第二成分として、多環化合物を含有するネマチック液晶組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3-1>
多環化合物が、本件発明1では、「一般式(2)
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は、単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)で表される化合物群から選ばれる3種以上の化合物」であるのに対し、甲8発明1では、「式IIおよびIII:
【化2】

式中、
R^(2)およびR^(3)は、互いに独立して、1?7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ化アルキルまたはフッ化アルコキシ、2?7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ化アルケニルであり 、
【化3】

は、互いに独立して、
【化4】

であり、
L^(21)、L^(22)、L^(31)およびL^(32)は、互いに独立して、HまたはFであり、
X^(2)およびX^(3)は、互いに独立して、ハロゲン、1?3個のC原子を有するハロゲン化アルキルもしくはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルもしくはアルケニルオキシであり、
Z^(3)は、-CH_(2)CH_(2)-、-CF_(2)CF_(2)-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH_(2)O-または単結合であり、そして
l、m、nおよびoは、互いに独立して、0または1である、
で表される化合物の群から選択される、1種または2種以上の化合物」である点。

<相違点3-2>
本件発明1では、構造式(1)で表される化合物を「35?65%含有」し、多環化合物である一般式(2)で表される化合物を「10?30質量%含有」し、かつ、構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物を「55?95%含有」することが特定されているのに対し、甲8発明1では、構造式(1)で表される化合物を「25%?60%」含有することが特定されるに留まる点。

<相違点3-3>
電圧保持率に関し、本件発明1では、「加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれる」ことが特定されているのに対し、甲8発明1では斯かる事項が不明である点。

<相違点3-4>
本件発明1では、「(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物(式省略)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物(式省略)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物(式省略)を1種以上含む、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物(式省略)を含む極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。 」ことが特定されているのに対し、甲8発明1では斯かる事項が特定されていない点。

まず、上記相違点3-1、3-2、3-4について検討し、その後、相違点3-3について検討する。

<相違点3-1>について
甲8発明1の式IIおよびIIIにおいて、l=m=1、n=o=1である場合、これらの化合物は、四環化合物である。ここで、例えば、上記摘示事項(8d)の例14によれば、甲8発明1の具体的態様で、APUQU-2-F、APUQU-3-F、及び、CCGU-3-Fが含有されているが、APUQU-n-Fは、式IIにおいてl=m=1である四環化合物に相当し、CCGU-3-Fは、式IIIにおいてn=o=1、Z^(3)=単結合である四環化合物に相当することからして、甲8発明1の式IIおよびIIIに表される化合物は、四環化合物である場合を、文言上のみならず実体上も包含していることが分かる。そして、

が、

であり、さらに、R^(2)およびR^(3)が、1?7個のC原子を有するアルキルであるとき、甲8発明1の式IIおよびIIIで表される化合物は、本件発明1の一般式(2)で表される化合物と一致する。そして、甲8発明1において、式IIおよびIIIで表される化合物は、それぞれ1種以上選択されるものであるから、その合計量が3種以上である態様を当然に含むものである(上記例14参照)。そして、本件特許明細書を参照しても、特定の構造を有する四環化合物を3種以上併用することにより、上記APUQU-n-F等の一般式(2)で表される化合物でない四環化合物であったり、四環化合物が2種以下である場合と比較して、新たな効果が奏されることも把握できない。
しかしながら、甲8には、本件発明1の一般式(2)で表される化合物を3種以上配合することが具体的に記載されているわけでなく、甲8発明1が、一般式(2)で表される化合物を含む四環化合物を含有し得ることや、それが3種以上であっても良いとされているにいえるに留まる。

<相違点3-2>について
上記摘示事項(8c)によれば、甲8発明1において、式Iで表される化合物を含む、成分Aは、「好ましくは、混合物全体に対して29%?65%の濃度で、より好ましくは33%?59%の濃度で、より好ましくは36%?47%の濃度で、そして最も好ましくは39%?44%の濃度で用いられ」、式IIおよびIIIで表される化合物を含む成分Bの「好ましくは、混合物全体に対して10%?60%の濃度で、より好ましくは15%?55%の濃度で、より好ましくは20%?50%の濃度で、そして最も好ましくは25%?45%の濃度で用いられる」ことが記載されているが、成分A中の式Iで表される化合物であったり、成分B中の式IIおよびIIIで表される化合物、特に、四環化合物の含有量までは特定されていない。
しかしながら、上記摘示事項(8c)の例14では、本件発明1の構造式(1)で表される化合物に相当するCC-3-Vが35?65%である41%含有され、また、四環化合物であるCCGU-3-F、APUQU-2-F、APUQU-3-Fが合計で、10?30質量%である18%含有し、かつ、これら4成分の合計量が、55?95%である59%含有されているように、甲8発明1において、式Iで表される化合物と、式II及びIIIで表される化合物の含有量として、本件発明1の規定を満たす組み合わせが許容されているといえる。
とするならば、甲8発明1が、上記相違点3-1に係る構成を満たす実施例を包含することを前提とし、さらに、当該実施例の中に、相違点3-2に係る構成をも満たす実施態様が包含されるものといえる。

<相違点3-4>について
甲8発明1で、相違点3-4に係る構成に関連する4種の化合物のいずれかを含むことが必須要件とされていないから、甲8発明1の実施形態の中に、相違点3-4に係る構成を満たす態様が包含されるといえる。

上記のとおりであるから、甲8発明1の具体的な実施形態の中には、相違点3-1、3-2、3-4に係る構成を同時に満たすものが一応包含されてはいると認められる。

<相違点3-3>について
甲8には、甲8発明1の電圧保持率がどの程度の値であるか明記されていない。

この点について、弁駁書2の14頁下から10行以降「(4)相違点3-A1の検討」によれば、請求人は、相違点3-3に係る構成は、『本件「第一成分として構造式(1)、(式の記載は省略)で表される化合物を35?65%含有し、
第二成分として一般式(2)(カッコ内 略)で表される化合物群から選ばれる3種以上の化合物を10?30質量%含有し、
前記構造式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を55?95%含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。」が有する物性値としてのVHR特性の限定であって、この点以外の発明特定事項が実質的に異ならず、即ち、構成が同じである以上、・・・甲8に記載された実施例について、本条件で測定すれば、当該値になることは自明である』旨主張し、また、その根拠として、「本件特許明細書には、段落【0030】に本発明の液晶組成物の各種特性が記載されているが、VHR特性については記載がない」にもかかわらず『実施例1?3には、「HR(%)加熱後150℃1時間後 96」であることが記載されており、これを根拠に訂正請求し』ている点を挙げている。
しかしながら、上記実施例1?3は、確かに、「第一成分として構造式(1)、(式の記載は省略)で表される化合物を35?65%含有し、
第二成分として一般式(2)(カッコ内 略)で表される化合物群から選ばれる3種以上の化合物を10?30質量%含有し、
前記構造式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を55?95%含有することを特徴とするネマチック液晶組成物。」という本件発明1の構成要件を全て備えることによるものであるところ、これらが加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%以上であるからといって、そのことが、本件発明1の如く組成が限定されず、これとは、相違点3-1、3-2及び3-4、あるいは、相違点として挙げられていない構成において相違するものである甲8発明1が加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%以上であることが自明であるとの証拠とはなり得ない。そして、それ以上の立証がされていないことからして、相違点3-3に係る構成で、本件発明1と甲8発明1とが、実質的に相違しないと認めることはできない。
また、請求人は、弁駁書2の15頁下から8行以降「(5)甲8の例27の電圧保持率の測定」において、甲8発明1の要件を満たす「例M27」(なお、例M27は、甲8である欧州特許出願番号05011326号には載っておらず、優先権の効果が直接には及ばない実施例である。)が加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率99.5%であったことを示し、さらに、弁駁書2の16頁下から8行以降「(6)「電圧保持率」(150℃、1時間後の電圧保持率)を96%以上は、周知である」において、『本件訂正明細書によれば、比較例1?3においても、実施例1?3と同じく96%であるから、従来技術と認識される液体組成物においても96%以上であることになるが、以下に「電圧保持率」(150℃、1時間後の電圧保持率)を96%以上である特許文献を例示する。』とし、甲21?甲23を挙げている。
しかしながら、当該実験結果が、誰がいつどのような条件の下で行ったのかについて詳細な開示が伴っておらず、その証拠能力が低いといわざるを得ない。また、例M27は、優先権の効果が及ばないものであり、これが甲8発明1の要件を満たすからといって、甲8発明1の優先日前に加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%を超えるものが具体的態様として示されていたとはいえない。よって、甲8発明1の態様であれば加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%を超えるという根拠にはなり得ない。また、従来より、加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%を超える液晶組成物が周知であるとして、甲21?甲23を挙げているが、ここでの電圧保持率は、「加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率」とはされていないし、これらの液晶組成物の構成は、甲8発明1とは異なるものであるから、甲8発明1が加熱150℃1時間後の60℃の電圧保持率が96%以上であることや、そのような特徴を付与するための具体的な手段が周知慣用技術であると認めるに足る証拠とはいえない(請求人も、当該物性を有する液晶組成物が周知であることを述べるにとどまり、当該物性を付与するための手段が周知であるとは述べていない。)。なお、本件特許明細書の比較例1?3が、加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%以上であるとの特性を有するからといって、甲8発明1も同様の特性を有するとすることはできない。
とするならば、甲8発明1が、加熱150℃1時間後の60℃の電圧保持率が96%以上であることが実質的に記載されていたとは認められず、また、加熱150℃1時間後の60℃の電圧保持率が96%以上であると特定することが周知・慣用技術の付加等であるとは認められないから、相違点3-3に係る構成は、実質的な相違点であって、本件発明1は、この点で、甲8発明1と実質的に同一でない。

よって、甲8発明1の具体的な実施形態の中には、相違点3-1、3-2、3-4に係る構成を同時に満たすものが一応包含されているといえるものの、そのような実施形態の中で、さらに相違点3-3に係る構成も具備するものまで、実質的に記載されていたとは認められない。

(4-1-2)本件発明4?6について

本件発明4?6は、本件発明1を限定するものであるところ、本件発明1が甲8発明1と実質同一でないことは、上記(4-1-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明4?6も、甲8発明1と実質同一でない。

(4-2)甲8発明2を主発明とした場合、

(4-2-1)本件発明1について

本件発明1と甲8発明2とを対比する。
○甲8発明2の「ネマチック液晶媒体」は、本件発明1の「ネマチック液晶組成物」に相当する。

○甲8発明2の「CC-3-Vを41%」と、本件発明1の「構造式(1)で表される化合物(式省略)を35?65%」とは、「構造式(1)で表される化合物(式省略)を41%」である点で一致する。

○甲8発明2におけるCCGU-3-F、APUQU-2-F、APUQU-3-Fはいずれも四環化合物であるから、甲8発明2の「CCGU-3-Fを4%、APUQU-2-Fを7%、APUQU-3-Fを7%」と、本件発明1の「一般式(2)で表される化合物(式省略)群から選択される3種以上の化合物を10?30質量%」とは、「3種の四環化合物を18質量%」である点で一致する。

○甲8発明2では、CC-3-Vと四環化合物(CCGU-3-F、APUQU-2-F、APUQU-3-F)が合計で59%含有されているから、本件発明1の「構造式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物を55?95%」とは、「構造式(1)で表される化合物及び四環化合物を59%」である点で一致する。

○上記摘示事項(3d)によれば、甲8発明2も、「(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物(式省略)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物(式省略)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物(式省略)を1種以上含む、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物(式省略)を含む極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。 」ものである点で、本件発明1と一致する。

上記より、本件発明1と甲8発明2とは、
「第一成分として構造式(1)、
【化1】

で表される化合物を41%含有し、第二成分として、3種の四環化合物を18質量%含有し、
構造式(1)で表される化合物及び四環化合物を59%含有するネマチック液晶組成物(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物(式省略)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物(式省略)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物(式省略)を1種以上含む、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物(式省略)を含む極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3-5>
四環化合物が、本件発明1では、「一般式(2)
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は、単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)で表される化合物」であることが特定されているのに対し、甲8発明2では、「CCGU-3-F」、「APUQU-2-F」及び「APUQU-3-F」である点。

<相違点3-6>
電圧保持率に関し、本件発明1では、「加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDで注入し、5V印可、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印可電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれる」ことが特定されているのに対し、甲8発明2では斯かる事項が不明である点。

<相違点3-5>について
甲8発明2において、CCGU-3-Fは、本件発明1の一般式(2)において、R^(1)が炭素数3のアルキル基、B^(1)、B^(2)がトランス-1,4-シクロヘキシレン基、B^(3)がハロゲンで置換された1,4-フェニレン基、L^(1)、L^(2)、L^(3)、Q^(1)がいずれも単結合、X^(1)、X^(2)、X^(3)がいずれもFである場合に相当する。
一方で、APUQU-n(2又は3)-Fは、本件発明1の一般式(2)と比較して、R^(1)が炭素数n(2又は3)のアルキル基、B^(2)が1,4-フェニレン基、B^(3)がハロゲンで置換された1,4-フェニレン基、L^(1)、L^(2)、Q^(1)がいずれも単結合、L^(3)が-CF_(2)O-、X^(1)、X^(2)、X^(3)がいずれもFである点で一致するものの、B^(1)に対応する“A”が「(a) トランス-1,4-シクロへキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(a)、基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く」との要件を満たさない点で相違する。しかし、甲8発明2のAPUQU-n-Fは、上記摘示事項(8a)における式IIで表される化合物の一形態であるところ、式II中の上記“A”が位置する環A^(23)は、

の他、

も選択可能とされており、これらの環構造が置換可能な同等のものと認識されていることが分かる。そして、この同等の環構造が選択された類似化合物であれば、本件発明1の一般式(2)の要件を満足する(なお、本件特許の公開公報を参照すると、本件発明の一般式(2)におけるB^(1)、B^(2)、B^(3)は、「トランス-1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のCH_(2)基又は隣接していない2個以上のCH_(2)基は -O- 及び又は -S- に置き換えられてもよい)」と記載されており、本件発明においても、出願当初は、一般式(2)で表される化合物として、APUQU-n-Fも許容されていたことが分かる。)。
とするならば、上記相違点3-5に係る構成は、甲8において、甲8発明2のAPUQU-n-Fと同等の化合物が有する構成として許容されているものであり、これをただちに実質的な相違点とすることはできない。

<相違点3-6>について
相違点3-6は、相違点3-3と同一であるところ、当該相違点が実質的な相違点でないといえる根拠が見当たらないことは、上記(4-1-1)における「<相違点3-3>について」で検討したとおりである。
また、上記相違点3-5に関する検討において、相違点3-5に係る構成を実質的な相違点とはただちにいえない旨説示したが、加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率に対する影響の観点で、相違点3-5に係る具体的な構成の差異が同等であるか不明であり、また、少なくとも、当該差異が実質的な相違でないとの技術常識があったと認める証拠は見当たらない。
さらに、甲8発明2は、上記摘示事項(8d)の例M14に基づいて認定したものであるが、例M14と請求人が弁駁書2で加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率を一応示した例M27とでは、一定程度組成が異なり、また、どの程度組成が異なっていても加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が同等の値を示すかについての既知の知見があるとは認められないから、仮に例M27の加熱150℃1時間後の60℃での電圧保持率が96%以上であったとしても、そのことが、例M14に基づく甲8発明2の加熱150℃1時間後の60℃の電圧保持率が96%以上であると推察する根拠とはならない。
したがって、相違点3-6に係る構成は、実質的な相違点であって、本件発明1は、この点で、甲8発明2と実質的に同一でない。

(4-2-2)本件発明4?6について

本件発明4?6は、本件発明1を限定するものであるところ、本件発明1が甲8発明2と実質同一でないことは、上記(4-2-1)で検討済みである。
そして、それと同様の理由により、本件発明4?6も、甲8発明2と実質同一でない。

(5)無効理由2-3のまとめ

以上のとおり、本件発明1、4?6は、甲8発明1、2と実質同一でないから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものではなく、本件訂正後の請求項1、4?6に係る発明発明についての特許は、同法同条に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものでない。

4.無効理由3について

(1)特許法第36条第6項第1号又は同条第4項第1号の規定について

(1-1)本件発明が解決しようとする課題について

本件特許明細書の【0009】等を参照すると、本件発明が解決しようとする課題は、「液晶相温度範囲が広く、粘性が低いアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物を提供」することにあるものと認められる。

(1-2)第二成分、第三成分について

本件特許明細書の【0010】?【0012】に、「上記課題を解決するために鋭意検討した結果、第一成分として構造式(1)で表される化合物(式省略)を35?65%含有し、第二成分としてとして一般式(2)で表される化合物(式省略)群から選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有する・・アクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物・・を提供」することが記載されており、本件発明は、構造式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化合物との組合せによって、上記課題を解決することが理解される。
また、【0020】?【0021】には、「一般式(2)の具体的な構造として以下の化合物が好ましい。
【化4】

(式中R^(1)はそれぞれ独立して、炭素数1?15のアルキル基又は炭素数2?15のアルケニル基を表す。)」ことが記載され、また、【0022】には、「組成物の物性値を調整し、さらに低粘性化、低電圧化を達成させるために第三成分として、一般式(3)で表される化合物(式省略)群から選ばれる1種もしくは2種以上の化合物含有することが好ましい」ことが記載されている。
そして、実施例として、【0037】【表1】には、本件特許の要件を満足する3つのネマチック液晶組成物(No.1)?(No.3)が開示されているが、上記「1.無効理由1-1について」の(4-1)の「<本件発明1の効果>について」で検討したように、これらでは、上記課題が解決されていると認められる。そして、これらのネマチック液晶組成物(No.1)?(No.3)は、一般式(2)で表される化合物として、一般式(2-1)で表される化合物のみが用いられ、かつ、一般式(3)で表される化合物が併用されている点で共通する。すなわち、構造式(1)で表される化合物と共に、一般式(2-1)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物を併用した場合に、上記課題が解決し得ることが具体的に確認されているものの、それ以外の場合にまで上記課題が解決し得るかについての十分な証拠が、本件特許明細書に開示がされているとまではただちにいうことができない。

そこで、まず、一般式(2-1)以外の一般式(2)で表される化合物であっても上記課題が解決するかについて検討すると、被請求人は、口頭審理陳述要領書7頁において、『四環液晶化合物のT_(N-I)が高いことは液晶分野の当業者に知られていたことですので(乙第2号証)、2-Cy-Cy-Ph-Ph1-F、3-Cy-Cy-Ph-Ph1-F、4-Cy-Cy-Ph-Ph1-Fを含有する実施例1?3の液晶組成物の「特性は、ネマチック相-等方性液体相転移温度(T_(N-I))、・・・所望の値を示した。」(【0038】)という記載に接した当業者は、2-Cy-Cy-Ph-Ph1-F、3-Cy-Cy-Ph-Ph1-F、4-Cy-Cy-Ph-Ph1-F以外の一般式(2)で表される化合物を用いた場合でも、0d1-Cy-Cy-3と組み合わせて技術常識に従い適宜組成を調整して所望のT_(N-I)とすることができる』旨主張している。そして、乙第2号証には、312頁右欄に「ベンゼン環は1,4-位で連結され,環の数が増えると棒状分子の長さが長くなり,液晶相の熱安定性が高くなる.ビフェニル系液晶のN-I転移温度は35℃であり,同じ末端基をもち,ベンゼン環が一つ多いテルフェニル系液晶のN-I転移温度は240℃である.ベンゼン環が一つ増え,二環から三環になると,N-I転移温度が205℃高くなる」ことが、313頁右欄に「液晶骨格中のシクロヘキサン環の数が増えても,ベンゼン環同様に液晶相の熱安定性は顕著に高くなる.ビフェニル系液晶からシクロヘキサン環が一つ増えた三環のビフェニルシクロヘキサン系液晶のN-I転移温度は,」当該ビフェニル系液晶「のN-I転移温度より,187℃高い」ことが記載されており、シクロヘキシレン基やフェニレン基を多数有する四環液晶化合物であれば、「T_(N-I)が高いことは液晶分野の当業者に知られていたこと」といえることが理解されるから、実施例で用いられ、課題を解決することが確認されている液晶組成物では、常に一般式(2-1)で表される化合物のみが用いられているとして、当業者であれば、その他の四環化合物であっても、すなわち、一般式(2)の要件を満たす化合物であれば、上記課題を解決し得ると推察する技術的根拠があるといえる。さらに、被請求人は、平成28年10月19日付け上申書で添付した乙第4号証の10頁で、追加実験例1?3を示し、一般式(2-2)、(2-6)で表される化合物を用いても良好な結果が得られることを示した。
これに対して、請求人は、平成28年11月2日付け上申書の6頁で、判決を引用し、「後出しの実験データが認められない」旨主張する。しかしながら、請求人が引用した平成17年(行ケ)第10042号審決取消請求事件の判決で、「発明の詳細な説明に,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に,具体例を開示せず,本件出願時の当業者の技術常識を参酌しても,特許請求の範囲に記載された発明の範囲まで,発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないのに」と記載されているように、「発明の詳細な説明に,当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に,具体例を開示」しない場合であって、かつ、当該「具体例を開示」していない事項が「本件出願時の当業者の技術常識」でもない場合に、(当初明細書の不足部分を)「後出しの実験データ」によって補足することが許されないとして、本件における当該論点には、上述した技術常識が存在し、それを裏付ける証拠として提出された実験データであるから、「後出しの実験データ」であっても、これの提出は認められるべきである。
次に、一般式(3)で表される化合物が任意成分であるかについて検討すると、本件特許明細書の【0022】には、一般式(3)で表される化合物が、「組成物の物性値を調整し、さらに低粘性化、低電圧化を達成させるために」含有させることが好ましい任意成分であることが記載されていたところ、被請求人は、口頭審理陳述要領書の6頁で、『1-フルオロ-2-(3,4,5-トリフルオロフェニル)-6-プロピルナフタレンをはじめとする一般式(I)で表されるフツ素置換-2-フェニルナフタレン誘導体が「低粘度で応答性に優れ、屈折率が大きく、かつ広いネマチック相温度範囲と,低い閾値電圧とを兼ね備えた液晶組成物を得る上において、従来の化合物より優れた効果を有していること」は本件特許の出願時の当業者に知られていたことです(特開2000-63305号公報(乙第1号証)・・・』旨主張し、さらに、平成28年10月19日付け上申書で添付した乙第4号証の10頁で、追加実験例3を示し、一般式(3)で表される化合物を用いなくても良好な結果が得られることを示した。請求人は、上記と同様に、「後出しの実験データが認められない」旨主張するが、当該追加実験例は、本件特許明細書に出願当初より記載された事項を裏付けるためのものであるから、やはり、「後出しの実験データ」であっても、これの提出は認められるべきである。
そして、上記主張及び追加の実験データを参酌すれば、第二成分として一般式(2)で表される化合物が広く適用でき、また、第三成分が任意成分であることは明らかであるし、請求人の他のいずれの主張を参照しても、それを覆すに足る事由を見出せない。

(1-3)第一成分の下限値、第二成分の種類数について

本件特許明細書の【0037】【表1】と【0040】【表4】を比較すると、本件発明の構造式(1)で表される化合物(0d1-Cy-Cy-3)の含有量と回転粘度γ_(1)との間にある程度の相間関係があることが見て取れる(なお、例えば、No.1とNo.3で、0d1-Cy-Cy-3の含有量はNo.3の方が多いが、回転粘度は低くなっていないように、液晶組成物の低粘性は、構造式(1)で表される化合物の含有量のみによって決まるものではないことも分かる。)。そして、審判請求書の88頁表1によると、0d1-Cy-Cy-3の含有量を25%から54%に増加させていくと、回転粘度γ_(1)は連続的に減少し、35%付近に変曲点がなかったことが示されている。
しかしながら、本件特許明細書の【0004】に、「低粘性液晶組成物は、Δn値の小さいシクロヘキサン環で構成されたビシクロヘキサン誘導体等の含有率を大きくすることで得ることができる。しかし、これらの化合物はスメクチック性が高く、ビシクロヘキサン系化合物の含有率を大きくした場合、ネマチック相下限温度(T-n)を低くすることが困難であり、広いネマチック温度範囲を有する液晶組成物を得ることが困難であった。」と記載され、また、【0006】に、「一方、四環化合物を使用して液晶温度範囲を調整した液晶組成物も既に知られてられており、好ましい化合物の具体例が開示されている(特許文献5)。しかしながら、この組成物も高速応答に対応できるほど粘性が十分に低いものではなかった。」ことが記載され、そして、【0009】に、「本発明が解決しようとする課題は、液晶相温度範囲が広く、粘性が低いアクティブマトリクス型液晶表示素子用液晶組成物を提供すること」と記載されているように、本件発明は、含有量を増やせば低粘性が得られるが、ネマチック相温度範囲を広くすることが困難であることが知られるビシクロヘキサン誘導体と、液晶温度範囲を調整するために用いられるが、粘性が十分に低いものとすることができていなかった四環化合物とを併用することで、液晶相温度範囲が広く、粘性が低い液晶組成物を得ようとするものと理解され、少なくとも、低粘性の変曲点を見出すことを課題とする発明でない。そして、構造式(1)で表される化合物の含有量を40%以上とすれば、(その他の成分や比率にもよるとして、)必要な粘度が得られ、30%では得られないことが具体的に確認されているのであるから、構造式(1)で表される化合物の下限値を35%とすることは、上記課題との関係で意味を有するものと認められる。
また、審判請求書の89頁表2で、含有させる第二成分の種類数を1種、2種、3種と変えても、作用効果(課題解決)に影響がないことが示されているが、そもそも、本件特許の当初明細書では、第二成分は、「1種または2種以上」であれば良いとされていたところ、「3種以上」と発明特定事項をさらに限定するものであるから、上記課題を解決する範囲に発明が限定されていることは明らかであり、上記課題との関係で直接的な意味が認められないとして、そのことをもって、特許法第36条第6項第1号又は同条第4項第1号の規定に反することとはならない(単に、この点で、有利な効果が認められないというだけである。)。

(1-4)実施例の有無について

本件発明1は、「下記式の化合物
【化6】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-COで置き換えられていてもよく、
環Aは、以下の式:
【化7】

の左または右を向いている環構造を表し、
Z^(1)、Z^(2)は、単結合、-C≡C-、-CF=CF-、-CH=CH-、-CF_(2)O-または-CH_(2)CH_(2)-を表し、ただし、Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-を表し、
Xは、F、Cl、CN、SF_(5)またはハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないように、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L^(1)、L^(2)、L^(3)、L^(4)、L^(5)およびL^(6)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、および
mは、0または1を表す。)を1種以上含むことを特徴とする、化合物の混合物に基づく正の誘電率異方性を有する液晶媒体」であるものを含まないことが特定されている。そして、上記化合物が、「Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-」と「mは、0」との要件を同時に満たす場合にどのような化合物が許容されるかについて検討すると、m=0の場合、Z^(1)は存在しないことから、Z^(2)が「基-CF=CF-」でなくては、化合物中に「基-CF=CF-」が存在しないこととなるので、「Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-」を必須要件とする化合物において、m=0の場合は、Z^(2)が「基-CF=CF-」となると理解するのが自然である。また、当該訂正事項は、訂正請求書の6?7頁を参照すると、「国際公開された(国際公開第2006/133783号。甲第6号証)・・・に記載された液晶組成物を除くものである」ことが理解されるところ、甲6を参照しても、m=0の場合は、Z^(2)が「基-CF=CF-」となると解するのが妥当である。
請求人は、弁駁書2の5頁下から1行?6頁3行で、『式【化6】の化合物における式の定義規定によれば、「Z^(1)及びZ^(2)からの少なくとも一方の基は基-CF=CF-」のうち、「基-CF=CF-」を必須要件とする旨の記載はされていないから、「基-CF=CF-」を必須要件であるとすることはできない』旨主張するが、「Z^(1)及びZ^(2)からの少なくとも一方の基は基-CF=CF-」との規定がある以上、「基-CF=CF-」が必須成分であると解するのが自然である。また、請求人は、弁駁書2の6頁下から9行?7頁4行で、『本件訂正後の特許請求の範囲の記載の解釈を、訂正の原因に求め、これを参酌して、「Z^(1)及びZ^(2)からの少なくとも一方の基は、「基-CF=CF-」を「必須要件とする化合物」であると認定していることになる。・・・
しかしながら、訂正後の本件発明が特許法第36条第6項、ないし第4項の要件を充足するか否かは、訂正の原因を参酌することはできず、本件訂正後の特許請求の範囲の記載及び本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて判断されるべきである』旨主張している。しかしながら、当審は、本件訂正後の特許請求の範囲の記載に基づいて、まず適当な解釈を検討し、その検討結果の妥当性を訂正の原因を参酌して確認したにすぎず、請求人の主張は的を射たものでない。
したがって、、上記化合物は、本件特許明細書の実施例で用いられている液晶組成物No.1?No.3に配合されている「3-Ph-T-Ph-1」、「0d3-Ph-T-Ph-3d0」を包含するものでないから、本件発明1の液晶組成物から、上記化合物を含む液晶組成物が除かれたとして、それによって、実施例がなくなることはなく、したがって、実施例の不存在を根拠とする当該無効理由を認めることはできない。

(2)特許法第36条第6項第2号の規定について

(2-1)誘電率異方性Δεについて

本件発明4は、誘電率異方性Δεの値を発明特定事項の一つとするものであるが、本件特許明細書には、誘電率異方性Δεの測定条件が開示されていない。
ここで、答弁書27頁の「Δεの値は、常法(通常日本電子機械工業会規格EIAJ・ED-2521A)にしたがって測定するというのが本件特許出願時の当業者の技術常識である。」との記載、及び、被請求人の口頭審理陳述要領書8頁の『乙第3号証(当審注:JEITA・ED-2521B。日本電子機械工業会規格EIAJ・ED-2521Aが2009年3月に改正されたもの。)には、液晶材料の比誘電率測定方法として、「(1)平行板パネルを用いる場合」、「(2)静磁場及び平行板パネルを用いる場合」及び「(3)交流インピーダンス測定器を用いる場合」が記載されています・・・。
そうすると、本件特許の出願時、液晶材料の比誘電率測定方法として、「(1)平行板パネルを用いる場合」、「(2)静磁場及び平行板パネルを用いる場合」及び「(3)交流インピーダンス測定器を用いる場合」が当業者に技術常識であったといえます。
そして、この三つの場合は、液晶の配向のさせ方が異なる(「(1)平行板パネルを用いる場合」及び「(3)交流インピーダンス測定器を用いる場合」は「配向パネル」、「(2)静磁場及び平行板パネルを用いる場合」は「静磁場」、が用いられる)ものの、いずれも、「液晶の交流電気信号に対する・・・液晶材料の比誘電率(ε)はC/C_(air)の値となる。」という理論に基づき、配向した液晶の「静電容量を測定」する方法ですので、技術常識を有する当業者が普通に測定すれば、その比誘電率(ε)の値は当然一致します。
さらに、「(1)平行板パネルを用いる場合」、「(2)静磁場及び平行板パネルを用いる場合」及び「(3)交流インピーダンス測定器を用いる場合」のいずれかの測定方法で測定してもε_(||)及びε_(⊥)の値は一致しますので、測定方法がいずれであっても、Δεの値も当然に一致します。』との記載によれば、誘電率異方性Δεの測定条件は、本件特許の出願時に規格化がされていたこと、及び、当該規格には3つの異なる測定条件が含まれているが、いずれの測定条件で測定してもΔεの値は一致することが理解される。
とするならば、本件発明4において、誘電率異方性Δεの測定条件が不明であると認められるとして、規格化されたいずれの常法にしたがっても誘電率異方性Δεの値は一致するのであるから、「誘電率異方性Δεが2.5?10.0である」との発明特定事項は明確であるといえる。

(3)無効理由3のまとめ

以上のとおり、請求人が主張するいずれの理由によっても、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に記載する要件を満たしており、また、本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしているので、本件訂正後の請求項1?6に係る発明についての特許は、同法同条第4項第1号又は第6項に違反して特許されたものでないから、同法第123条第1項第4号に該当せず、無効とすべきものでない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1?6に係る発明についての特許に対する本件無効審判請求は、成り立たない。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として構造式(1)、
【化1】

で表される化合物を35?65%含有し、第二成分として一般式(2)
【化2】

(式中、R^(1)は炭素数1?15のアルキル基であり、
B^(1)、B^(2)、B^(3)はそれぞれ独立的に
(a) トランス-1,4-シクロヘキシレン基
(b) 1,4-フェニレン基
からなる群より選ばれる基であり、上記の基(b)はCH_(3)又はハロゲンで置換されていても良く、
L^(1)は単結合を表し、L^(2)、L^(3)はそれぞれ独立的に単結合、-CH_(2)CH_(2)-又は-CF_(2)O-を表し、
Q^(1)は単結合であり、
X^(1)、X^(3)はそれぞれ独立してH又はFであり、X^(2)はFである。)で表される化合物群から選ばれる3種以上の化合物を10?30質量%含有し、
前記構造式(1)で表される化合物及び前記一般式(2)で表される化合物を55?95%含有し、
加熱150℃1時間後の60℃での保持率(%)(セル厚6μmのTN-LCDに注入し、5V印加、フレームタイム200ms、パルス幅64μsで測定したときの測定電圧と初期印加電圧との比を%で表した値)が96%以上に保たれることを特徴とするネマチック液晶組成物
(ただし、1種または2種以上の下記式で表されるエステル化合物:
【化4】

(式中、R^(1)は、水素であり、もしくは炭素原子1?15を有し、ハロゲン化されている未置換のアルキル基であり、これらの基中に存在する1個または2個以上のCH_(2)基は、それぞれ相互に独立し、酸素原子が相互に直接に結合しないものとして、-C≡C-、-C=C-、-O-、-CO-O-または-O-CO-により置き換えられていてもよく、X^(1)は、F、Cl、CN、SF_(5)、SCNまたはNCSであり、もしくはそれぞれ6個までの炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基であり、
L^(1-4)は、それぞれ相互に独立し、HまたはFである)を含有することを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基材とする液晶媒体、
下記式の誘電的に正の化合物
【化5】

(式中、R^(1)は、炭素数1?7のアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、炭素数2?7のアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルであり、
X^(1)はハロゲン、炭素数1?3のハロゲン化アルキルもしくはアルコキシ、または炭素数2または3のハロゲン化アルケニルもしくはアルケニルオキシである。)の1種または2種以上を含む液晶媒体、
下記式の化合物
【化6】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
環Aは、以下の式:
【化7】

の左または右を向いている環構造を表し、
Z^(1)、Z^(2)は、単結合、-C≡C-、-CF=CF-、-CH=CH-、-CF_(2)O-または-CH_(2)CH_(2)-を表し、ただし、Z^(1)およびZ^(2)からの少なくとも一方の基は、基-CF=CF-を表し、
Xは、F、Cl、CN、SF_(5)またはハロゲン化されているか無置換で1?15個の炭素原子を有しているアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないように、-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L^(1)、L^(2)、L^(3)、L^(4)、L^(5)およびL^(6)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表し、および
mは、0または1を表す。)を1種類以上含むことを特徴とする、化合物の混合物に基づく正の誘電異方性を有する液晶媒体、並びに、
下記式で表される1種以上の化合物を含むことを特徴とする極性化合物混合物系液晶媒体、を除く)。
【化8】

(式中、R^(1)は、ハロゲン化されているかまたは置換されていない1?15個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、但し、加えて、これらの基の1個以上のCH_(2)基は、それぞれ互いに独立に、酸素原子が互いに直接結合しないようにして、-C≡C-、-CF_(2)-O-、-OCF_(2)-、-CH=CH-、

-O-、-CO-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
Xは、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CN、SF_(5)、SCN、NCS、6個以下の炭素原子を有するハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アルコキシ基またはハロゲン化アルケニルオキシ基を表し、
L^(1)?L^(3)は、それぞれ互いに独立に、HまたはFを表す。)
【請求項2】
第三成分として一般式(3)
【化3】

(式中、R^(2)はR^(1)と同じ意味を表し、
B^(4)はB^(1)と同じ意味を表し、
L^(4)、L^(1)と同じ意味を表し、
B^(4)及びL^(4)が複数存在する場合はそれらは同一でも良く異なっていても良く、
mは0、1又は2であり、
nは0又は1であり、
Q^(2)は-OCH2-、-OCF2-、-OCHF-、-CF2-、または単結合であり、
X^(4)?X^(8)はそれぞれ独立してH、F又はClである。)で表される化合物群から選ばれる1種もしくは2種以上の化合物を含有する請求項1記載のネマチック液晶組成物。
【請求項3】
構造式(1)で表される化合物35?65%、一般式(2)で表される化合物及び一般式(3)で表される化合物からなる請求項2記載のネマチック液晶組成物。
【請求項4】
ネマチック-アイソトロピック転移温度が68℃?120℃であり、クリスタル又はスメクチック-ネマチック転移温度が-80℃?-20℃であり、屈折率異方性Δnが0.05?0.15であり、誘電率異方性Δεが2.5?10.0であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いた液晶表示素子。
【請求項6】
請求項1から4の何れか一項に記載のネマチック液晶組成物を用いたアクティブマトリックス液晶表示素子。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2017-04-12 
結審通知日 2017-04-14 
審決日 2017-04-27 
出願番号 特願2005-316168(P2005-316168)
審決分類 P 1 113・ 161- YAA (C09K)
P 1 113・ 536- YAA (C09K)
P 1 113・ 537- YAA (C09K)
P 1 113・ 121- YAA (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仁科 努  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 橋本 栄和
岩田 行剛
登録日 2013-04-12 
登録番号 特許第5240487号(P5240487)
発明の名称 ネマチック液晶組成物  
代理人 清水 義憲  
代理人 中塚 岳  
代理人 中塚 岳  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 河野 通洋  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 石井 良夫  
代理人 城所 宏  
代理人 河野 通洋  
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