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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1348048
審判番号 不服2018-2165  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 特願2014- 14979「手動測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 3日出願公開、特開2015-141139〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成26年1月29日
手続補正: 平成29年11月20日(以下、「補正1」という。)
拒絶査定: 平成29年12月28日(送達日:平成30年1月9日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成30年2月15日
手続補正: 平成30年2月15日(以下、「本件補正」という。)


第2 補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正によって、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。

(補正前)
「 【請求項1】
測定プローブが手動で移動するようにされた手動測定装置において、
前記測定プローブ先端近傍に装着されるサブモニタを備え、該サブモニタが携帯端末であることを特徴とする手動測定装置。」

(補正後)
「 【請求項1】
測定プローブが手動で移動するようにされた手動測定装置において、
前記測定プローブ先端近傍に装着されるサブモニタを備え、該サブモニタが、タッチパネルディスプレイを有する携帯端末であることを特徴とする手動測定装置。」(下線は補正箇所。)

上記補正を見ると、補正前の請求項1において、「該サブモニタが携帯端末である」とされていた構成が、補正後の請求項1において、「該サブモニタが、タッチパネルディスプレイを有する携帯端末である」と限定されており、この補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2 検討
(1)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2000-35305号公報(以下「引用例」という。)には、「座標測定システムに使用される表示装置」(【発明の名称】)の発明に関し、次の事項が記載されている。(下線は当審による。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般的に三次元座標測定器(coordinate masuring machinesまたはCMM)に関し、特に、三次元CMMに使用することで精度および使い勝手を向上させる新しい改良型表示装置に関する。」

「【0006】現在のCMMシステムでは操作者は、アームを操作すると同時に、ホストコンピュータのディスプレイスクリーンを確認しそこに表示された英数字のメッセージに応答するか、もしくは、音声信号に対して応答する必要がある。メッセージおよび音声信号は、ホストコンピュータおよびアプリケーションソフトウェアによって生成される。場合によっては、CMMシステムの構成品(たとえばアーム、シリアルボックス、およびディスプレイを伴うホストコンピュータ)は、操作者が表示または音声を確認するのが困難または不便な位置に配置されることもある。」

「【0007】CMMの測定アームは、操作者側の端部にプローブハンドルを含む。従来のプローブハンドルは、操作者が鉛筆またはピストルのグリップのように握る。従来のプローブハンドルはまた、オプションの電子機器を接続するための二つのスイッチや、多様なプローブを取り付けるためのねじ込み式取付具を有することもある。CMMは手動の測定装置であるためユーザは、測定を実施し、続いてその測定値が受容できるものであるかをCMMに対して確認しなければならない。これは通常、前述の二つのスイッチを使用して実施される。第一のスイッチを用いて三次元データ情報を捕捉し、第二のスイッチによって情報の受容を確認しその情報をホストコンピュータに送信する。数々の電圧ラインおよびアナログ-デジタルコンバータラインが、シリアルボックスからアームを通じてプローブハンドルへ配線されており、レーザ走査デバイスまたはタッチ式プローブなどの数々のオプションに汎用的に接続できるようにされている。スイッチはさらに、ホストコンピュータの表示または音声信号によるメニュープロンプトに対して応答する際にも使用される。
【0008】プローブハンドルアセンブリには、直径1/4インチ硬質ボールプローブ(hard 1/4 inch diameter ball probe)またはポイントプローブなどの、多様なプローブをねじ込むことができる。通常、プローブはねじ込みによって取付具に取り付けられ、その取付具は同様にねじ込みによってプローブハウジングに装着される。取付具は、レンチを用いてプローブを容易に着脱するために、複数の平面を含んでもよい。」

「【0016】図1に、三次元座標測定器(CMM)に使用するための、複数の継手を有する手動式アームを、全体的に符号1にて図示する。一般的に説明すれば、アーム1は、第一のセットの転位ハウジング3,4に接続するベース2と、第一のセットの転位ハウジングおよび第二のセットの転位ハウジング6,7にしっかりと固定される第一の延伸部材5と、第二の延伸部材8を挟んで配置される第三のセットの転位ハウジング9,10とを有する。転位ハウジング9は、転位ハウジング7に取り付けられている。転位ハウジングのセットとは通常、互いに交差方向に配置された対の回転自在の継手であって、従来技術のものと同様に、位置検知トランスデューサ(図示せず)が内部に設けられている。データスイッチボタン17,18を含むプローブハンドルアセンブリ11が、アームの端部に取り付けられ転位ハウジング10から延伸する。従来同様、アーム1はケーブル13を通じてシリアルボックス12と電気的に通信し、シリアルボックス12はケーブル16を通じて、ディスプレイ15を有するホストコンピュータ14と電子的に通信する。
【0017】本発明に従い、図1の実施形態では例として表示装置50を、プローブハンドルアセンブリ11に近接してアーム上に設け、アームを操作する操作者(図示せず)に近い位置に配置する。実際には表示装置50は、アーム1上の数箇所のうち操作者にとって都合の良いいずれかの位置に、以下に説明するとおりに設置できる。表示装置50は、従来のCMMシステムにおける上述のシリアルボックスおよびホストの特徴を多数含む。表示装置50の詳細は、図2に基づいて説明する。例として表示装置50は、テキストスクリーン51を含む。テキストスクリーン51は、周知のLCDによって構成され、次元位置データおよびプロンプトを操作者に対して視覚的に示す。・・・
【0018】図2において表示装置50は、ネジ63によってベース取付具62に固定されている。ベース取付具62は、手関節状部品64上に配置されて、軸方向に沿って固定され、さらに周知のボールおよび移動止めによる構造(図示せず)によって制限された経路内で回転可能に固定される。周知の手法にしたがいツイストロック用溝65を、延伸部材に設けられ溝65にかみ合うスプライン(図示せず)と連結させることよって、手関節状部品64(およびそれに連結する表示装置50)は延伸部材8に着脱自在に固定される。表示装置50が上述のとおりに装着されている場合には、ハンドルアセンブリ11を通じてアーム1を操作する操作者は、表示装置50を矢印66で示す方向に回転させることにより、表示装置50を簡単に目視できる。
【0019】本発明の他の実施形態を、図3に基づき説明する。この実施形態では、遠隔表示装置(telemetric display)67の背面に、磁性ベース68が取り付けられている。遠隔表示装置67は、前述の表示装置と同様に機能するが、シリアルボックス12およびホストコンピュータ14との間の電子的通信の送受信を、周知の遠隔伝送(telemetry)を通じて実施する。磁性ベース68により表示装置67は、操作者にとって都合の良いいずれの適切な表面上にも設置され得る。たとえば、操作者が細かく確認するために、表示装置67を一時的に鉄製のワークピース(作業の目的物)または他の都合の良い鉄製表面に取り付けることができる。他の実施形態においては、ベース取付具62は鉄製表面を含み、表示装置67を着脱自在に装着することができる。この実施形態の利点は、アームの特定の使用または操作に合わせて操作者が簡単に目視できるよう表示装置67を矢印69で示す方向へ回転させることができ、またあるいは、取り外して上述のとおり壁またはワークピースに装着することもできる点である。さらに他の実施形態では遠隔表示装置67は、周知の一時的固定システムである面ファスナー(a hook andloop type temporary fastening system)に適応するベース取付具を含む。別の実施形態では、表示装置67は周知のばねクリップ固定具を含み、それにより多様な表面に一時的に設置することが可能である。
【0020】・・・代替の実施形態においては、操作者用表示スクリーン51は周知のタッチスクリーンから成り、操作者はスクリーンの表面を触れることによって、ホストコンピュータから送信されてきた簡単な一式のメニュー選択肢に対して回答することができる。図2に示す実施形態では表示装置50は、たとえばメニュー選択ツール71などを接続するオプションのポート70を含む。あるいはオプションのポート70には、キーボードまたは他の入力もしくは出力デバイスの通信用連結子を接続してもよい。」


上記の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。

「手動式アームを使用する三次元座標測定器において、(段落【0016】参照。)
プローブハンドルアセンブリ11が、アームの端部に取り付けられ(段落【0016】参照。)、プローブハンドルアセンブリには、直径1/4インチ硬質ボールプローブまたはポイントプローブなどの、多様なプローブをねじ込むことができ(段落【0008】参照。)、
表示装置50は、プローブハンドルアセンブリ11に近接してアーム上に設けられ、テキストスクリーン51を含み(段落【0017】参照。)、アーム1はケーブル13を通じてシリアルボックス12と電気的に通信し、シリアルボックス12はケーブル16を通じて、ディスプレイ15を有するホストコンピュータ14と電子的に通信し(段落【0016】参照。)、
前述の表示装置と同様に機能する遠隔表示装置67は、一時的に鉄製のワークピース(作業の目的物)に取り付けることができ、またベース取付具62に着脱自在に装着することができ(段落【0019】参照。)、操作者用表示スクリーン51はタッチスクリーンから成る(段落【0020】参照。)、
三次元座標測定器。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比、判断
本願補正発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明が、「アームの端部に取り付けられ」る「プローブハンドルアセンブリ11」を「多様なプローブをねじ込むことができ」るようにされた「手動式アーム」を備える「三次元座標測定器」であることは、本願補正発明が「測定プローブが手動で移動するようにされた手動測定装置」であることに相当する。

イ 引用発明の「表示装置50」(遠隔表示装置67)は、「プローブハンドルアセンブリ11に近接してアーム上に設けられ」ており、また、「プローブハンドルアセンブリ11」は「多様なプローブをねじ込むことができ」るように構成されているのであるから、「表示装置50」(遠隔表示装置67)は、プローブの先端に近接して設けられているといえる。また、引用発明は「ディスプレイ15を有するホストコンピュータ14と電子的に通信」するように構成されており、引用発明の「表示装置50」(遠隔表示装置67)は上記「ホストコンピュータ14」の「ディスプレイ15」に対するサブモニタであるといえる。
そうすると、引用発明において「表示装置50」(遠隔表示装置67)が「プローブハンドルアセンブリ11に近接してアーム上に設けられ」、「アーム1はケーブル13を通じてシリアルボックス12と電気的に通信し、シリアルボックス12はケーブル16を通じて、ディスプレイ15を有するホストコンピュータ14と電子的に通信」するように構成されている点は、本願補正発明において「前記測定プローブ先端近傍に装着されるサブモニタを備え」る点に相当する。

ウ 引用発明の「遠隔表示装置67は、一時的に鉄製のワークピース(作業の目的物)に取り付けることができ、またベース取付具62に着脱自在に装着することができ」るように構成されているのであるから、上記「遠隔表示装置67」は、携帯端末であるといえる。
そうすると、引用発明において「遠隔表示装置67は、一時的に鉄製のワークピース(作業の目的物)に取り付けることができ、またベース取付具62に着脱自在に装着することができ」るように構成され、表示装置が含む「操作者用表示スクリーン51」(テキストスクリーン51)が「タッチスクリーンから成る」という点は、本願補正発明において「該サブモニタが、タッチパネルディスプレイを有する携帯端末である」点に相当する。

してみると、本願補正発明と引用発明との間に相違点はなく、本願補正発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明を再掲すると次のとおりである。

「測定プローブが手動で移動するようにされた手動測定装置において、
前記測定プローブ先端近傍に装着されるサブモニタを備え、該サブモニタが携帯端末であることを特徴とする手動測定装置。」(以下「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由の概要
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



理由1(新規性)について
・請求項 1,3,4,6,7
・引用文献等 1

理由2(進歩性)について
・請求項 8-10
・引用文献等 1、2

<引用文献等一覧>
1.特開2000-035305号公報(上記引用例と同じ。)
2.特開2001-311616号公報

3 引用文献1記載の事項・引用発明
引用文献1(上記引用例と同じ。)に記載されている事項及び引用文献1に記載された発明(上記引用発明と同じ。)は、上記「第2 補正の却下の決定 2 検討 (1)引用例記載の事項・引用発明」に示したとおりである。

4 判断
本願発明は実質的に、前記「第2 補正の却下の決定」の「1 補正の内容」で検討した本願補正発明において「サブモニタ」が「タッチパネルディスプレイを有する携帯端末である」とされていた構成について、「タッチパネルディスプレイを有する」と限定することを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に上記本件補正に係る限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 検討」における「(2)対比、判断」に記載したとおり、引用発明であるといえるものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明であるといえる。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明であるから特許を受けることができない。
したがって、本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-14 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2014-14979(P2014-14979)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01B)
P 1 8・ 575- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三好 貴大  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 中塚 直樹
中村 説志
発明の名称 手動測定装置  
代理人 松山 圭佑  
代理人 高矢 諭  

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