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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1348049
審判番号 不服2018-2766  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-27 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 特願2016-103946号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月23日出願公開、特開2016-168363号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年12月3日に出願した特願2009-275761号の一部を平成25年12月10日に新たな特許出願(特願2013-254843号)とし、さらにその一部を平成27年3月17日に新たな特許出願(特願2015-53834号)とし、さらにその一部を平成28年5月25日に新たな特許出願(特願2016-103946号)としたものであって、平成29年4月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月12日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年11月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年2月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成29年6月12日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項1の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Iについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
A 始動入賞口に遊技球が入賞することを契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定するための抽選を実行する抽選手段と、
B 図柄の変動表示及び停止表示を行うことが可能な表示手段と、
C 前記抽選が実行された場合、前記表示手段において、図柄を変動表示させた後、該抽選の結果に応じた態様で図柄を停止表示させる表示制御手段と、
D 遊技者が操作することが可能な操作手段と、
E 前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設定する操作有効期間設定手段と、
F 前記操作有効期間内に前記操作手段が操作された場合に、所定の演出を行う演出制御手段と、を備える
G 遊技機であって、
H 前記所定の演出は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングに関係なく共通の報知態様であり、
I 前記演出制御手段は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングが所定の適正条件を満たすか否かに応じて、前記操作手段が操作されてから前記所定の演出を開始するまでの時間を異ならせることを特徴とする遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 始動入賞口に遊技球が入賞することを契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定するための抽選を実行する抽選手段と、
B 図柄の変動表示及び停止表示を行うことが可能な表示手段と、
C 前記抽選が実行された場合、前記表示手段において、図柄を変動表示させた後、該抽選の結果に応じた態様で図柄を停止表示させる表示制御手段と、
D 遊技者が操作することが可能な操作手段と、
E 前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設定する操作有効期間設定手段と、
F 前記操作有効期間内に前記操作手段が操作された場合に、所定の演出を行う演出制御手段と、を備える
G 遊技機であって、
H 前記所定の演出は、所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングに関係なく共通の報知態様であり、
I 前記演出制御手段は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングが前記所定の適正条件を満たすか否かに応じて、前記操作手段が操作されてから前記所定の演出を開始するまでの時間を異ならせることを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「操作有効期間」について、「所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な」ものであることを付加して限定したものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0121】及び【0124】の記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物である特開2009-34186号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0019】
[第1実施形態の遊技機の構成]
第1実施形態における遊技機の概観について図1?図4を用いて説明する。なお、以下において説明する実施形態においては、本発明に係る遊技機に好適な実施形態として本発明を「デジパチ」とも称されるパチンコ遊技機に適用した場合を示す。」

「【0031】
また、上皿20の前面には、遊技者による操作が可能な操作ボタン80が備えられている。この操作ボタン80は、左操作ボタン80a、中操作ボタン80b、及び右操作ボタン80cの3つからなり、相互に水平方向に並設されている。この操作ボタン80は、回転リール装置500による変動表示を停止させることに用いられる。このように、操作ボタン80は、表示手段に変動表示された識別情報を、遊技者の変動停止操作によって停止表示させる停止操作手段の一例である。」

「【0041】
例えば、特別図柄表示器35で表示される特別図柄の変動表示中においては、回転リール装置500において、数字や記号などからなる識別図柄が変動表示される。また、特別図柄表示器35において変動表示されていた特別図柄が停止表示されるとともに、回転リール装置500でも演出用としての識別図柄が停止表示される。このように、回転リール装置500は、所定の条件を満たしたときに、識別情報の変動表示および停止表示が行われる表示手段の一例である。」

「【0046】
前述した始動口25内には入賞領域が設けられている。この入賞領域には始動入賞球センサ116(図7参照)を備える。遊技球などの遊技媒体が、始動入賞球センサ116で検出された場合、遊技球が入賞したと判定される。遊技球が入賞した場合には、特別図柄表示器35による特別図柄の変動表示が開始される。また、特別図柄の変動表示中に遊技球が入賞した場合には、変動表示中の特別図柄が停止表示されるまで、始動口25への遊技球の入賞に基づく特別図柄の変動表示の実行(開始)が保留される。その後、変動表示していた特別図柄が停止表示された場合には、保留されていた特別図柄の変動表示が開始される。なお、特別図柄の変動表示の実行が保留される回数には上限が設定されており、例えば、4回を上限として特別図柄の変動表示が保留される。」

「【0063】
操作ボタン80における左操作ボタン80a(図4参照)が左図柄(左列)、中操作ボタン80bが中図柄(中列)、右操作ボタン80cが右図柄(右列)にそれぞれ対応し、後述するスロットゲームが実行されている際に、例えば、左図柄が変動中に左操作ボタン80a(図4参照)が押下されると駆動モータ540aが停止して左図柄が停止表示される。他の図柄についても同様である。
【0064】
これら左操作ボタン80a、中操作ボタン80b及び右操作ボタン80cは、後述するサブCPU206に電気的に接続されている。そして、左操作ボタン80aが押下されると左図柄停止信号が、中操作ボタン80bが押下されると中図柄停止信号が、右操作ボタン80cが押下されると右図柄停止信号がそれぞれサブCPU206に入力されるようになっている。
【0065】
なお、左図柄停止信号とは、回転リール装置500にて可変表示中の識別図柄の図柄列のうち、左図柄を停止表示させるための信号である。本実施形態において、この信号を受信したサブCPU206(図7参照)により、回転リール装置500にて変動表示中の図柄列のうち、左図柄を停止表示させるための制御が行われる。つまり、左操作ボタン80aは左図柄と対応しており、左操作ボタン80aか押下されると左図柄が停止表示されるようになっている。
【0066】
また、中図柄停止信号とは、回転リール装置500にて可変表示中の識別図柄の図柄列のうち、中図柄を停止表示させるための信号である。本実施形態において、この信号を受信したサブCPU206(図7参照)により、回転リール装置500にて変動表示中の図柄列のうち、中図柄を停止表示させるための制御が行われる。つまり、中操作ボタン80bは中図柄と対応しており、中操作ボタン80bが押下されると中図柄が停止表示されるようになっている。
【0067】
また、右図柄停止信号とは、回転リール装置500にて可変表示中の識別図柄の図柄列のうち、右図柄を停止表示させるための信号である。本実施形態において、この信号を受信したサブCPU206(図7参照)により、回転リール装置500にて変動表示中の図柄列のうち、右図柄を停止表示させるための制御が行われる。つまり、右操作ボタン80cは右図柄と対応しており、右操作ボタン80cが押下されると右図柄が停止表示されるようになっている。」

「【0096】
具体的には、サブCPU206は、遊技者により各操作ボタン80a、80b、80cが操作された際に、回転リールの各識別情報を停止させるスロットゲームを実行するスロットゲーム実行手段としての機能を備える。更に、サブCPU206は、各操作ボタン80a、80b、80cの操作毎に、可動体600,601,602を可動させる制御を行う可動体制御手段としての機能を備える。」

「【0141】
ステップS52において、特別図柄関連スイッチチェック処理を行う。この処理において、メインCPU66は、始動入賞球センサ116からの検知信号を受信したか否かをチェックする処理を行う。始動入賞球センサ116からの検知信号を受信した場合に、保留個数が上限(例えば、4個)である否かを判定し、特別図柄ゲームの大当たり判定用乱数値と、大当たり図柄決定用乱数値とを抽出し、メインRAM70の特別図柄記憶領域に格納する処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS54に処理を移行する。」

「【0174】
ステップS105においては、大当たり判定処理を実行する。この処理において、メインCPU66は、特別図柄決定テーブルに記憶されている大当たり判定値を選択する。そして、メインCPU66は、始動入賞時に抽出された乱数値と、大当たり判定値とを参照する。つまり、メインCPU66は、遊技者に有利な大当たり遊技状態(特別遊技状態)とするか否かの判定を行うことになる。この処理が終了した場合には、ステップS106に処理を移行する。」

「【0208】
[大当たり停止表示処理]
図19を用いて、図18のステップS193に示した大当たり停止表示処理を説明する。
【0209】
ステップS211において、サブCPU206は、操作ボタン80が操作されたか否かを判定する処理を行う。操作ボタン80が操作されたと判定した場合にはステップS212に処理を移行する。操作ボタン80が操作されたと判定しない場合にはステップS213に処理を移行する。
【0210】
ステップS212において、回転リール停止処理を行う。詳しくは後述するが、この処理において、サブCPU206は、左操作ボタン80aが押下された場合には、回転リール510aを、中操作ボタン80bが押下された場合には、回転リール510bを、右操作ボタン80cが押下された場合には、回転リール510cを停止させる処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS213に処理を移行する。
【0211】
ステップS213において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの中で回転中のリールがあるか否かを判定する処理を行う。回転中のリールがあると判定した場合にはステップS215に処理を移行する。回転中のリールがあると判定しない場合にはステップS214に処理を移行する。
【0212】
ステップS214において、待機処理を行う。この処理において、サブCPU206は、ステップS214で監視している制限時間前に回転リール510a、510b、510cが全て停止した場合に、制限時間に到達するまで回転リール510a、510b、510cによる停止態様を維持しながら待機する処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS217に処理を移行する。
【0213】
ステップS215において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの回転を開始してからの時間が制限時間内であるか否かを判定する処理を行う。制限時間内であると判定した場合にはステップS211に処理を移行する。制限時間内であると判定しない場合にはステップS216に処理を移行する。
【0214】
ステップS216において、回転リール停止処理を行う。この処理において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの中で回転中のリールがあれば、全て停止させる処理を行う。なお、回転リール510a、510b、510cが全て回転している状態で制限時間を越えた場合には、大当たり停止態様で停止させてもよい。この処理が終了した場合には、ステップS217に処理を移行する。
【0215】
ステップS217において、サブCPU206は、回転リール装置500の停止表示態様が大当たり停止態様であるか否かを判定する処理を行う。大当たり停止態様であると判定した場合には、本サブルーチンを終了する。大当たり停止態様であると判定しない場合にはステップS218に処理を移行する。
【0216】
ステップS218において、再変動処理を行う。この処理において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cを再度回転させる処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS219に処理を移行する。
【0217】
ステップS219において、回転リール停止処理を行う。この処理において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの停止態様が大当たり停止態様となるように、回転リール510a、510b、510cを停止させる処理を行う。この処理が終了した場合には、本サブルーチンを終了する。
【0218】
即ち、第1実施形態では、主制御回路60における大当たり抽選に当選している場合において、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cを大当たり停止態様となるように停止できなかった場合には、再変動して自動的に大当たり停止態様となるように駆動制御される。
【0219】
[はずれ停止表示処理]
次に、図20を用いて、図18のステップS194に示したはずれ停止表示処理を説明する。
【0220】
ステップS231において、サブCPU206は、操作ボタン80が操作されたか否かを判定する処理を行う。操作ボタン80が操作されたと判定した場合にはステップS232に処理を移行する。操作ボタン80が操作されたと判定しない場合にはステップS233に処理を移行する。
【0221】
ステップS232において、回転リール停止処理を行う。詳しくは後述するが、この処理において、サブCPU206は、左操作ボタン80aが押下された場合には、回転リール510aを、中操作ボタン80bが押下された場合には、回転リール510bを、右操作ボタン80cが押下された場合には、回転リール510cを停止させる処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS233に処理を移行する。
【0222】
ステップS233において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの中で回転中のリールがあるか否かを判定する処理を行う。回転中のリールがあると判定した場合にはステップS234に処理を移行する。回転中のリールがあると判定しない場合にはステップS236に処理を移行する。
【0223】
ステップS234において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの回転を開始してからの時間が制限時間内であるか否かを判定する処理を行う。制限時間内であると判定した場合にはステップS231に処理を移行する。制限時間内であると判定しない場合にはステップS235に処理を移行する。
【0224】
ステップS235において、回転リール停止処理を行う。この処理において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cの中で回転中のリールがあれば、全て停止させる処理を行う。なお、回転リール510a、510b、510cが全て回転している状態で制限時間を越えた場合には、はずれ停止態様で停止させてもよい。この処理が終了した場合には、ステップS236に処理を移す。
【0225】
ステップS236において、サブCPU206は、大当たり停止態様となるタイミングで停止操作がなされたか否かを判定する処理を行う。大当たり停止態様となるタイミングであると判定した場合には、ステップS237に処理を移し、大当たり停止態様となるタイミングであると判定しない場合には本サブルーチンを終了する。
【0226】
ステップS237において、回転リール停止処理を行う。この処理において、サブCPU206は、回転リール510a、510b、510cが停止した場合の識別情報の組合せが大当たり停止態様とならないように、最後の1つの回転リールを停止させる識別情報を1コマずらして停止させる処理を行う。この処理が終了した場合には、ステップS238に処理を移行する。
【0227】
ステップS238において、待機処理を行う。この処理において、サブCPU206は、ステップS234で監視している制限時間前に回転リール510a、510b、510cが全て停止した場合に、制限時間に到達するまで回転リール510a、510b、510cによる停止態様を維持しながら待機する処理を行う。この処理が終了した場合には、本サブルーチンを終了する。
【0228】
即ち、第1実施形態では、主制御回路60における大当たり抽選に当選していないにも関わらず、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cが大当たり停止態様となるタイミングで操作ボタンが操作された場合に、強制的にはずれ停止態様となるように回転中の最後の回転リールが駆動制御される。」

「【0233】
図23は、第1実施形態に係るパチンコ遊技機10の可動体の動作テーブルを示す説明図である。同図に示すように、スロットゲームが実行されている際に、左操作ボタン80aが押下されたタイミングと予め設定されている所定のタイミングとのタイミング差が、所定の差以内である場合には目押しが成功となり、所定のタイミングとのタイミング差が所定の差よりも大きい場合には目押しが失敗となる。」

「【0240】
上記のことから、各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である場合、即ち、目押しが成功した場合には、確変状態である場合に「M1」が選択され、通常状態である場合には「M3」が選択される。
【0241】
そして、「M1」が選択された場合には、可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが1秒後とされ、「M3」が選択された場合には、可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが2秒後とされる。そして、この時間差により、遊技者は、現在の遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかを認識できる。
【0242】
他方、「M2」、「M4」が選択された場合には、遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかに関わらず、上記持ち物の可動タイミングが3秒後とされる。この場合には、遊技者に対して現在の遊技状態は報知されない。即ち、遊技者は、目押しが成功した場合には、現在の遊技状態を認識でき、目押しが失敗した場合には、現在の遊技状態を認識できない。」

上記記載事項を総合すれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?iについては本願補正発明のA?Iに対応させて付与した。)。

「a 始動口25内の入賞領域で遊技球を検出する始動入賞球センサ116からの検知信号を受信した場合に、保留個数が上限(例えば、4個)である否かを判定し、特別図柄ゲームの大当たり判定用乱数値を抽出し(【0046】、【0141】)、始動入賞時に抽出された乱数値と、大当たり判定値とを参照し、遊技者に有利な大当たり遊技状態(特別遊技状態)とするか否かの判定を行うメインCPU66(【0174】)と、
b 識別図柄の変動表示および停止表示が行われる回転リール装置500(【0041】)と、
c 主制御回路60における大当たり抽選に当選している場合において、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cを大当たり停止態様となるように停止できなかった場合には、再変動して自動的に大当たり停止態様となるように駆動制御し(【0218】)、主制御回路60における大当たり抽選に当選していないにも関わらず、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cが大当たり停止態様となるタイミングで操作ボタンが操作された場合に、強制的にはずれ停止態様となるように回転中の最後の回転リールが駆動制御する(【0228】)サブCPU206(【0210】、【0214】、【0217】、【0221】、【0224】、【0226】)と、
d 遊技者による操作が可能な左操作ボタン80a、中操作ボタン80b、及び右操作ボタン80cからなる操作ボタン80(【0031】)と、
e スロットゲームが実行されている際に、左図柄が変動中に左操作ボタン80aが押下されると左図柄を停止表示し、中図柄が変動中に中操作ボタン80bが押下されると中図柄を停止表示し、右図柄が変動中に左操作ボタン80cが押下されると右図柄を停止表示する前記サブCPU206(【0063】?【0067】)と、
f 各操作ボタン80a、80b、80cの操作毎に、可動体600,601,602を可動させる制御を行う前記サブCPU206(【0096】)と、を備える
g パチンコ遊技機(【0019】)であって、
h、i スロットゲームが実行されている際に(【0233】)、各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である場合、即ち、目押しが成功した場合には、確変状態である場合に可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが1秒後とされ、通常状態である場合には可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが2秒後とされ、この時間差により、遊技者は、現在の遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかを認識でき(【0240】、【0241】)、目押しが失敗した場合には、遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかに関わらず、上記持ち物の可動タイミングが3秒後とされ、遊技者に対して現在の遊技状態は報知されない(【0242】)
パチンコ遊技機。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(i)は、本願補正発明のA?Iに対応させている。

(a)引用発明の「始動口25内の入賞領域で」「始動入賞球センサ116」が「遊技球を検出する」ことは、本願補正発明の「始動入賞口に遊技球が入賞すること」に相当する。
また、引用発明の「遊技者に有利な大当たり遊技状態(特別遊技状態)」は、本願補正発明の「特賞状態」に相当する。
したがって、引用発明の「a 始動口25内の入賞領域で遊技球を検出する始動入賞球センサ116からの検知信号を受信した場合に、保留個数が上限(例えば、4個)である否かを判定し、特別図柄ゲームの大当たり判定用乱数値を抽出し、始動入賞時に抽出された乱数値と、大当たり判定値とを参照し、遊技者に有利な大当たり遊技状態(特別遊技状態)とするか否かの判定を行うメインCPU66」は、本願補正発明の「A 始動入賞口に遊技球が入賞することを契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定するための抽選を実行する抽選手段」に相当する。

(b)引用発明の「b 識別図柄の変動表示および停止表示が行われる回転リール装置500」は、本願補正発明の「B 図柄の変動表示及び停止表示を行うことが可能な表示手段」に相当する。

(c)引用発明の「c 主制御回路60における大当たり抽選に当選している場合において、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cを大当たり停止態様となるように停止できなかった場合には、再変動して自動的に大当たり停止態様となるように駆動制御し、主制御回路60における大当たり抽選に当選していないにも関わらず、遊技者による操作ボタン80の操作によって、回転リール510a、510b、510cが大当たり停止態様となるタイミングで操作ボタンが操作された場合に、強制的にはずれ停止態様となるように回転中の最後の回転リールが駆動制御するサブCPU206」は、本願補正発明の「C 前記抽選が実行された場合、前記表示手段において、図柄を変動表示させた後、該抽選の結果に応じた態様で図柄を停止表示させる表示制御手段」に相当する。

(d)引用発明の「d 遊技者による操作が可能な左操作ボタン80a、中操作ボタン80b、及び右操作ボタン80cからなる操作ボタン80」は、本願補正発明の「D 遊技者が操作することが可能な操作手段」に相当する。

(e)引用発明の「e スロットゲームが実行されている際に、左図柄が変動中に左操作ボタン80aが押下されると左図柄を停止表示し、中図柄が変動中に中操作ボタン80bが押下されると中図柄を停止表示し、右図柄が変動中に左操作ボタン80cが押下されると右図柄を停止表示する前記サブCPU206」は、「スロットゲームが実行されている」とき、すなわち「図柄が変動中」のときに「操作ボタン80」の操作が有効となる期間が「サブCPU206」により設定されていることは明らかであるから、本願補正発明の「E 前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設定する操作有効期間設定手段」に相当する。

(f)引用発明の「f 各操作ボタン80a、80b、80cの操作毎に、可動体600,601,602を可動させる制御を行う前記サブCPU206」は、上記(e)の操作有効期間についての検討を踏まえれば、本願補正発明の「F 前記操作有効期間内に前記操作手段が操作された場合に、所定の演出を行う演出制御手段」に相当する。

(g)引用発明の「g パチンコ遊技機」は、本願補正発明の「G 遊技機」に相当する。

(h)引用発明においては、「各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である場合、即ち、目押しが成功した場合」と、「目押しが失敗した場合」とで、いずれも「可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)」を「可動」させる共通の態様の演出を行うものといえる。
また、「可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)」の「可動」は、「各操作ボタン80a、80b、80cを押下し」たことを「報知」するとともに、「可動開始タイミング」により、確変状態か、通常状態か、目押しに失敗したかを「報知」するものといえる。
したがって、引用発明の「h、i スロットゲームが実行されている際に、各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である場合、即ち、目押しが成功した場合には、確変状態である場合に可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが1秒後とされ、通常状態である場合には可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが2秒後とされ、この時間差により、遊技者は、現在の遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかを認識でき、目押しが失敗した場合には、遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかに関わらず、上記持ち物の可動タイミングが3秒後とされ、遊技者に対して現在の遊技状態は報知されない」ことと、本願補正発明の「H 前記所定の演出は、所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングに関係なく共通の報知態様であり」とは、「H’前記所定の演出は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングに関係なく共通の報知態様であり」の点で共通する。

(i)引用発明のh、iの「各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である」ことは、本願補正発明の「所定の適正条件」に相当する。
したがって、引用発明のh、iの「各操作ボタン80a、80b、80cを押下して回転リールを停止操作させた際のタイミングと所定のタイミングとのタイミング差が所定の差以内である場合、即ち、目押しが成功した場合には、確変状態である場合に可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが1秒後とされ、通常状態である場合には可動体600,601,602のそれぞれの持ち物(パイプ600a、花火601a、団扇602a)の可動開始タイミングが2秒後とされ」、「目押しが失敗した場合には、遊技状態が確変状態であるか、或いは通常状態であるかに関わらず、上記持ち物の可動タイミングが3秒後とされ」ることは、上記(f)の検討を踏まえれば、本願補正発明の「I 前記演出制御手段は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングが」「所定の適正条件を満たすか否かに応じて、前記操作手段が操作されてから前記所定の演出を開始するまでの時間を異ならせること」に相当する。

そうすると、両者は、

「A 始動入賞口に遊技球が入賞することを契機として、特賞状態を生起させるか否かを決定するための抽選を実行する抽選手段と、
B 図柄の変動表示及び停止表示を行うことが可能な表示手段と、
C 前記抽選が実行された場合、前記表示手段において、図柄を変動表示させた後、該抽選の結果に応じた態様で図柄を停止表示させる表示制御手段と、
D 遊技者が操作することが可能な操作手段と、
E 前記操作手段の操作が有効となる操作有効期間を設定する操作有効期間設定手段と、
F 前記操作有効期間内に前記操作手段が操作された場合に、所定の演出を行う演出制御手段と、を備える
G 遊技機であって、
H’前記所定の演出は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングに関係なく共通の報知態様であり、
I 前記演出制御手段は、前記操作有効期間における前記操作手段が操作されたタイミングが所定の適正条件を満たすか否かに応じて、前記操作手段が操作されてから前記所定の演出を開始するまでの時間を異ならせる
遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
「操作有効期間」について、本願補正発明は「所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な」ものであるのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

イ 判断
以下、上記相違点について検討する。

スロットゲームを行う遊技機において、目押しの操作タイミングを通知可能とすることは、例えば、

(ア)特開2005-143844号公報(下線は当審で付した。)
「【0002】
従来より、遊技機、特にパチスロ機では、所定枚数のメダルを投入し、始動レバーを操作することで、抽選を実行し、周面に複数の図柄が表示された複数列(通常3列)の図柄変動リール(表示装置)を回転させるようにしている。
【0008】
例えば、大役に内部当選した場合、遊技者の停止操作で大役図柄を揃えなければならないが、この停止操作(目押し)は、技術を要するため、熟練者と初心者とでは、大役図柄を揃えるまでの遊技回数が異なり、この結果、投資するメダル数に差が生じる。このため、前記目押しタイミングをランプの点灯で報知することがある。これ(目押しタイミング)は、遊技者にとって有利な情報ということができる。」

(イ)特開2003-38723号公報(下線は当審で付した。)
「【0040】なお、ここで、「回転中の前記回転リール(40)の図柄のうち、所定の図柄を所定の位置に停止させるために遊技者のストップスイッチ(50)の操作タイミングの報知を行う」とは、具体的には、回転中の回転リール(40)の周囲の図柄のうち、所定の図柄が所定の範囲に移動してきている際に、例えば、目押し補助用のランプを点灯させたり、或いは、目押し補助用の音をスピーカから発生させることにより、遊技者にストップスイッチ(50)の操作タイミングを報知させるものを意味するものである。もちろん、報知手段は、上述したものに限定されることはなく、例えば、蛍光灯の点灯や消滅、LEDによる光信号、スロットマシンや椅子の一部に埋め込んだ機械的な振動発生器若しくは低周波による振動の発生、又は、弱電気による体感信号の発生等によるものでも良いものである。」

に記載されているように、本願の出願遡及日前において周知技術である。

そして、引用発明のスロットゲームに対して、目押しに熟練していない初心者に対する遊技の興趣向上のため、目押しの操作タイミングを通知可能とする周知技術を適用して、相違点に係る本願補正発明の構成に想到することは当業者が容易になし得たことである。

そのうえ、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献には、目押しの成功失敗にかかわらず演出内容を同じ態様とする構成について記載されており、この点において今回補正の前の本願請求項1に係る発明と一致する点については異論ないが、引用文献には、本願補正発明の発明特定事項「所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な前記操作有効期間」について開示も示唆もされておらず、操作有効期間には所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能なため、遊技者は適正期間であるか否かを認識することが可能となり、操作演出が開始されるタイミングを遊技者に選択させることができ、遊技者の遊技に対する興趣を向上することが可能となるという効果を奏し得ることはない、つまり、引用文献に記載された発明においては、本願補正発明のように操作有効期間に所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な構成を備えておらず、よって、引用文献の記載された発明は、所定の適正条件を満たすタイミングを知る術がなく、本願補正発明と趣旨が大きく異なり、それ故に、本願補正発明は、引用文献には開示も示唆もない独自の技術的思想であり、引用文献には本願補正発明に至る動機付けもない旨主張する。

しかしながら、上記(3)イで検討したように、目押しに熟練していない初心者に対する遊技の興趣向上のため、目押しの操作タイミングを通知可能とする周知技術を引用発明に適用して、操作有効期間たるスロットゲームの際に、所定の適正条件を満たすタイミングたる目押しの操作タイミングを通知可能とすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年6月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の請求項1に係る発明の拒絶の理由は、
理由1.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願遡及日前に頒布された以下の刊行物アまたはイに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、
理由2.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願遡及日前に頒布された以下の刊行物アまたはイに記載された発明に基づいて、その出願遡及日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

ア.特開2005-87769号公報
イ.特開2009-34186号公報(引用文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明の発明特定事項である「操作有効期間」について、Hの「所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な」ものであるという限定を省いたものである。
そうすると、前記第2[理由]2(3)ア(相違点)に記載したとおり、本願補正発明と引用発明とは、Hの「所定の適正条件を満たすタイミングを通知可能な」ものである点でのみ相違するから、この限定事項を省いた本願発明と引用発明との間に相違点はなく、本願発明は引用文献に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、仮にそうでないとしても、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-13 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-04 
出願番号 特願2016-103946(P2016-103946)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 昌宏  
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 藤田 年彦
濱野 隆
発明の名称 遊技機  
代理人 横堀 芳徳  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 竹沢 荘一  

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