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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1348050
審判番号 不服2018-2817  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-28 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 特願2013-151323号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月6日出願公開、特開2014-39810号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月22日(優先権主張平成24年7月23日)の出願であって、平成29年1月13日に手続補正書が提出され、同年4月12日付けの拒絶理由通知に対し、同年6月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月29日付け(発送日:12月5日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、平成30年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1において、「示唆演出実行手段」が実行する「示唆演出」に係る事項を補正することを主旨とするものであり、本件補正前の請求項1の記載、及び、本件補正後の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。

(本件補正前)
「【請求項1】
可変表示が可能な遊技機であって、
遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段をさらに備える、
ことを特徴とする遊技機。 」

(本件補正後)
「【請求項1】
可変表示が可能な遊技機であって、
遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を実行する示唆演出実行手段をさらに備え、
前記示唆演出実行手段は、少なくとも前記第1の促進演出が終了する前から前記第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する、
ことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
(以下では、「本件補正後」及び「本件補正前」を単にそれぞれ「補正後」及び「補正前」という。)
(1)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「示唆演出実行手段」が「実行」する「第2の促進演出が実行されることを示唆する示唆演出」について、「遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様」のものであると特定することにより、補正前の請求項1に記載の上記「示唆演出」を限定するものである。

(2)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「示唆演出実行手段」について、「少なくとも前記第1の促進演出が終了する前から前記第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する」と特定することにより、補正前の請求項1に記載の上記「示唆演出実行手段」を限定するものである。

そして、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、出願当初の明細書の段落【0244】?【0246】、図面【図19】の記載に基づいており、いわゆる新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.本件補正の概要」において示した次に特定されるとおりのものである。
(A?Gについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)
「A 可変表示が可能な遊技機であって、
B 遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
C 遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
D 遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
E 前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
D-1 前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
D-2 一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
D-3 前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
F 前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を実行する示唆演出実行手段をさらに備え、
F-1 前記示唆演出実行手段は、少なくとも前記第1の促進演出が終了する前から前記第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する、
G ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定において引用され、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開2008?154618号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0027】
遊技領域7の中央付近には、それぞれが演出用の飾り図柄を変動表示する複数の変動表示部を含む変動表示装置(画像表示装置)9が設けられている。変動表示装置9には、たとえば「左」、「中」、「右」の3つの変動表示部(図柄表示エリア)がある。変動表示装置9は、特別図柄表示器8による特別図柄の変動表示期間中に、装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう。飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。このような変動表示装置9は、以下に示すような所定の演出を行なう演出表示装置としてパチンコ遊技機1に設けられている。」

イ 「【0036】
また、図3に示すように、打球供給皿3を構成する部材においては、遊技者により操作可能な操作手段としての操作部81が設けられている。操作部81は、遊技者が、遊技者から見て前後左右というような予め定められた複数の方向(4方向)のうちから選択した方向へ押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる平面視円形の押圧操作部811と、押圧操作部811の周囲で回転可能に設けられ回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812との複数の操作部を含む。押圧操作部811は、さらに、前後左右の4方向以外に、遊技者から見て下方向にも押圧操作可能であり、押圧操作部811において遊技者がパチンコ遊技機1に向かって前後左右4方向のうち1つの方向を選択的に押圧する方向選択操作と、方向選択操作以外に押圧操作部811全体を下方へ押圧する決定操作とを遊技者が行なうことが可能である。」

ウ 「【0050】
図6を参照して、操作部81は、押圧操作部811、回転操作部812、ボタンハウジング813、ボタンバネ814、カバープレート815、ダイヤルベース816、ボタンベース817、および、操作部基板818を含む。
【0051】?【0057】
(省略)
【0058】
ボタンベース817の下面部には、操作部基板818がビス止めにより取付けられる。図7(a)のように、操作部基板818は、円板型に形成され、各種の電気部品が搭載される基板である。操作部基板818の上面側には、第1押圧検出器81a、第2押圧検出器81b、第3押圧検出器81c、第4押圧検出器81d、第1回転検出器81e、第2回転検出器81f、第1操作部ランプ82a、第2操作部ランプ82b、第3操作部ランプ82c、第4操作部ランプ82d、第5操作部ランプ82e、第6操作部ランプ82f、第7操作部ランプ82g、第8操作部ランプ82h、および、第9操作部ランプ82iが設けられている。
【0059】
第1押圧検出器81a、第2押圧検出器81b、第3押圧検出器81c、および、第4押圧検出器81dは、前述したような押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出するために設けられた検出器であり、操作部基板818の中心部を中心とした同心円上に所定間隔で配置されている。各押圧操作器は、発光部と受光部とを備えたフォトセンサよりなり、図8(a)または図8(c)に示すように、前述のボタンハウジング813の突起部813aが内部空間に入ったときに光が遮断されることに基づいて、押圧操作部811が操作されたことを検出する。より具体的に、ボタンハウジング813の4つの突起部813aと、第1押圧検出器81a、第2押圧検出器81b、第3押圧検出器81c、および、第4押圧検出器81dのそれぞれとの関係は次の通りである。
【0060】?【0061】
(省略)
【0062】
また、第1回転検出器81eおよび第2回転検出器81fは、回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出するために設けられた検出器である。図7(a)に示すように、各回転検出器は、発光部と受光部とを備えたフォトセンサよりなり、前述のダイヤルベース816が回転したときに回転検出用壁部816aが発光部と受光部の間を通過できるような位置に設けられる。第1回転検出器81eと、第2回転検出器81fとの位置関係は、たとえば第1回転検出器81eがある回転検出用壁部816aを検出しているときに第2回転検出器81fが他の回転検出用壁部816aを検出していない状態となるように、所定距離だけ離隔して配置されている。」

エ 「【0084】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、RAM(図示せず)、シリアル出力回路353、シリアル入力回路354、クロック信号出力部356および入力取込信号出力部357を含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAMは外付けであってもよい。演出制御基板80において、演出制御用CPU101は、内蔵または外付けのROM(図示せず)に格納されたプログラムに従って動作し、シリアル入力回路102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。この場合、シリアル入力回路102は、シリアルデータ方式として受信した演出制御コマンドをパラレルデータに変換し出力する。また、演出制御用CPU101は、演出制御コマンドに基づいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に変動表示装置9の表示制御を行なわせる。
【0085】
この実施の形態では、演出制御用マイクロコンピュータ100と共動して変動表示装置9の表示制御を行なうVDP109が演出制御基板80に搭載されている。VDP109は、演出制御用マイクロコンピュータ100とは独立したアドレス空間を有し、そこにVRAMをマッピングする。VRAMは、画像データを展開するためのバッファメモリである。そして、VDP109は、VRAM内の画像データをフレームメモリを介して変動表示装置9に出力する。
【0086】
演出制御用CPU101は、受信した演出制御コマンドに従ってCGROM(図示せず)から必要なデータを読出すための指令をVDP109に出力する。CGROMは、変動表示装置9に表示されるキャラクタ画像データや動画像データ、具体的には、人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを予め格納しておくためのROMである。VDP109は、演出制御用CPU101の指令に応じて、CGROMから画像データを読出す。そして、VDP109は、読出した画像データに基づいて表示制御を実行する。」

オ 「【0150】
図22および図23のそれぞれは、チャンスリーチと呼ばれる特定種類のリーチとすることが決定されたときに、変動表示装置9に表示される画像を示す表示画面図である。図22には、リーチFの変動パターンでの変動表示が行なわれることによりリーチ表示態様においてスーパーリーチの演出表示が行なわれるときの画像が示され、図23にはリーチEの変動パターンでの変動表示が行なわれることによりリーチ表示態様においてスーパーリーチの演出表示が行なわれないときの画像が示されている。
【0151】
このパチンコ遊技機1においては、変動表示装置9においてリーチ表示態様の演出表示(以下、リーチ演出表示という)が行なわれるときに、操作部81の操作に応じて演出表示が変化する動作表示が行なわれる。
【0152】
図22および図23の(a)に示すように、中飾り図柄902が変動中において左飾り図柄901と右飾り図柄903とが同じ図柄で停止すると、リーチ状態となり、リーチ演出表示が行なわれる。前述のリーチEおよびリーチFのそれぞれにおいては、リーチ演出表示として、図22および図23の(b)のように、回転操作部812の回転操作を要求するリーチ時回転操作要求画像が表示される。リーチ時回転操作要求画像では、回転操作部812の回転操作に応じて所定の状況を示す画像が表示されればスーパーリーチとなる旨(「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」)を示すことにより、どのように操作部81を操作するかを説明する操作案内表示が行なわれる。
【0153】
そして操作案内表示が所定期間行なわれた後、図22および図23の(c),(d)に示すようなエアホッケーのミニゲームを行なう画像が表示される。その画像が表示されているときに、回転操作部812を回転操作すると、その操作に応じて、図22および図23の(d)に示すように、パック907を打つ打撃道具としてのマレット908が動作する表示(たとえば、回転操作部812の回転操作に応じてマレット908が所定の円周上で動作する表示)が行なわれ、その操作にしたがって、予め定められた時間(たとえば15秒)内で遊技者側(マレット908のみが表示されている側)とパチンコ遊技機1側(キャラクタ909が表示されている側)とでエアホッケーゲームで対戦する形式のミニゲームが行なわれる。
【0154】
ミニゲームにおいては、(c),(d)に示すように、ゲームの進行に応じて、対戦する両者の得点が表示される(図22の(c)および図23の(c),(d)においては遊技者側が0点でパチンコ遊技機1側が5点、図22の(d)においては遊技者側が1点でパチンコ遊技機1側が5点)とともに、ゲームの残り時間も表示される(図22の(c)および図23の(c)においては7秒、図22の(d)においては3秒、図23の(d)においては0秒)。このようなミニゲームにおいては、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をしたとき(たとえば、図22の(d)のような1得点をしたとき)には、図22の(e)に示すようにスーパーリーチとなった旨が表示された後、(f)に示すように、押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示される。リーチFでの変動パターンのときは、このようなミニゲームの状況およびスーパーリーチに関する表示が行なわれるように演出表示内容が予め定められており、図22の(e)のようなスーパーリーチの表示態様となったときに、スーパーリーチの演出表示をする条件が成立する。
【0155】
(省略)
【0156】
図22の(f)に示すようなスーパーリーチ時押圧操作要求画像では、押圧操作部811を押圧操作して所定の状況を示す画像を表示する旨(「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」)を示すことにより、どのように操作部81を操作するかを説明する操作案内表示が行なわれる。
【0157】
そして操作案内表示が所定期間行なわれた後、図22の(g)に示すように、押圧操作部811の押圧操作回数の増加に応じて、棒グラフ形式で表示されるパワーの値が増加する表示であるチャンス表示が行なわれる。その後、予め定められた期間が経過すると、図22の(h),(i)に示すように、貯まっているパワーに応じて、中飾り図柄の停止図柄を決める演出表示が行なわれる。そして、大当りとすることが決定されているときには、図22の(j)のように大当り表示結果が表示され、一方、はずれとすることが決定されているときには、はずれ表示結果が表示される。図22の(h),(i)に示すような、貯まっているパワーに応じて表示される中飾り図柄の停止図柄を決める演出表示の画像は、貯まっているパワーが多い程、大当り表示結果となることを連想させるような画像にすることが望ましい。
【0158】
このように、遊技者は、操作部81の操作に基づいて、リーチ表示態様のような演出表示の進行に関与することが可能となるので、遊技の演出態様が多様化し、遊技の興趣を向上させることができる。」

上記ア?オの記載事項から、次の事項が導かれる。

(2-1)上記ア【0027】には、「所定の演出を行なう演出表示装置」として「飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9」が「パチンコ遊技機1に設けられている」ことが記載されており、「変動表示装置9は、特別図柄表示器8による特別図柄の変動表示期間中に、装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう」ことが記載されている。
そうすると、刊行物1には、「装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9が設けられたパチンコ機1」が記載されているといえる。

(2-2)上記イ【0036】には、「遊技者により操作可能な操作手段」として「操作部81」が設けられており、「操作部81」は「押圧操作部811の周囲で回転可能に設けられ回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812」を含むことが記載されている。
上記ウ【0050】には、「操作部81」は「操作部基板818」を含むことが記載されており、上記ウ【0058】には、「操作部基板818の上面側には、・・・第1回転検出器81e、第2回転検出器81f」が設けられていることが記載されている。
また、上記ウ【0062】には、「第1回転検出器81eおよび第2回転検出器81f」は、「回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出するために設けられた検出器」であることが記載されている。
そうすると、刊行物1には、「遊技者により操作可能な操作手段として操作部81が設けられており、前記操作部81には、遊技者が回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812と、前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?fが設けられている」ことが記載されているといえる。

(2-3)上記イ【0036】には、「操作部81」は「遊技者」が「押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる平面視円形の押圧操作部811」を含むことが記載されている。
上記ウ【0050】には、「操作部81」は「操作部基板818」を含むことが記載されており、上記ウ【0058】には、「操作部基板818の上面側には、第1押圧検出器81a、第2押圧検出器81b、第3押圧検出器81c、第4押圧検出器81d」が設けられていることが記載されている。
また、上記ウ【0059】には、「第1押圧検出器81a、第2押圧検出器81b、第3押圧検出器81c、および、第4押圧検出器81d」は、「押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出するために設けられた検出器」であることが記載されている。
そうすると、刊行物1には、「前記操作部81には、遊技者が押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる押圧操作部811と、前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?dが設けられている」ことが記載されているといえる。

(2-4)上記エ【0084】には、「演出制御用CPU101」を含む「演出制御用マイクロコンピュータ100」が「演出制御基板80」に搭載されていることが記載されており、上記エ【0085】には、「演出制御用マイクロコンピュータ100と共動して変動表示装置9の表示制御を行なうVDP109」が「演出制御基板80」に搭載されていることが記載されている。
また、上記エ【0086】には、「演出制御用CPU101」は、「受信した演出制御コマンドに従って」「人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを予め格納」した「CGROM」から「必要なデータを読出すための指令をVDP109に出力」し、「VDP109」は、「演出制御用CPU101の指令に応じて、CGROMから画像データを読出」し、「読出した画像データに基づいて表示制御を実行する」ことが記載されている。
そうすると、刊行物1には、「人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを読み出して変動表示装置9の表示制御を実行する、演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100とVDP109が搭載された演出制御基板80を備えること」が記載されているといえる。

また、上記ア?オの記載事項及び図22の図示内容から、次の事項が認定できる。

[図22]




(2-5)上記オ【0150】?【0151】には、「チャンスリーチと呼ばれる特定種類のリーチとすることが決定されたとき」、「変動表示装置9」において「リーチFの変動パターンでの変動表示が行なわれ」、「操作部81の操作に応じて」「スーパーリーチの演出表示」に変化することが記載されている。
上記オ【0152】には、「リーチ演出表示」として、「回転操作部812の回転操作を要求するリーチ時回転操作要求画像が表示され」、「回転操作部812の回転操作に応じて所定の状況を示す画像が表示されればスーパーリーチとなる旨(「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」)を示すことにより」、「操作案内表示が行なわれる」ことが記載されている(図22(b)を参照)。
そうすると、刊行物1には、「チャンスリーチが決定されたとき、変動表示装置9においてリーチFの変動パターンでの変動表示が行なわれ、操作部81の操作に応じてスーパーリーチの演出表示に変化するに際し、「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」という回転操作部812の回転操作についての操作案内表示が行なわれること」が記載されていると認められる。

(2-6)上記オ【0153】には、「操作案内表示が所定期間行なわれた後」、「ミニゲームを行なう画像が表示され」、「その画像が表示されているときに、回転操作部812を回転操作すると、その操作に応じて」、「パック907を打つ打撃道具としてのマレット908が動作する表示・・・が行なわれ、その操作にしたがって、予め定められた時間(たとえば15秒)内」で「遊技者側」と「パチンコ遊技機1側」とで「対戦する形式のミニゲームが行なわれる」ことが記載されている(図22(c)を参照)。
上記オ【0154】には、「所定時間が経過するまでに遊技者側が得点」をすると(図22(d)を参照)、前記ミニゲームが終了して、「スーパーリーチとなった旨が表示され」ることが記載されている(図22(e)を参照)。
そうすると、刊行物1には、「前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、遊技者側とパチンコ遊技機1側とで対戦する形式のミニゲームを行なう画像が表示され、その画像が表示されているときに、回転操作部812の回転操作により、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチとなった旨が表示されること」が記載されていると認められる。

(2-7)上記オ【0154】には、「スーパーリーチとなった旨が表示された後」、「押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示される」ことが記載されている。
上記オ【0156】には、「スーパーリーチ時押圧操作要求画像」では「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という「押圧操作部811」の「押圧操作」についての「操作案内表示が行なわれる」ことが記載されている(図22(f)を参照)。
そうすると、刊行物1には、「スーパーリーチとなった旨が表示された後、押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示され、「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行なわれること」が記載されていると認められる。

上記(2-1)?(2-4)の記載事項、及び、上記(2-5)?(2-7)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
(a?gは刊行物発明の構成を分説するため当審で付した。)

[刊行物発明]
「a 装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9が設けられたパチンコ機1であって、

b 遊技者により操作可能な操作手段として操作部81が設けられており、前記操作部81には、遊技者が回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812と、前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?fが設けられ、

c 前記操作部81には、遊技者が押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる押圧操作部811と、前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?dが設けられ、

d1 人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを読み出して変動表示装置9の表示制御を実行する、演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100とVDP109が搭載された演出制御基板80を備え、

d2 チャンスリーチが決定されたとき、変動表示装置9においてリーチFの変動パターンでの変動表示が行なわれ、操作部81の操作に応じてスーパーリーチの演出表示に変化するに際し、「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」という回転操作部812の回転操作についての操作案内表示が行なわれ(認定事項(2-5))、

d3 前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、遊技者側とパチンコ遊技機1側とで対戦する形式のミニゲームを行なう画像が表示され(認定事項(2-6))、

d4 前記ミニゲームを行う画像が表示されているときに、回転操作部812の回転操作により、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチとなった旨が表示され(認定事項(2-6))、

d5 スーパーリーチとなった旨が表示された後、押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示され、「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行なわれる(認定事項(2-7))、

g パチンコ機1。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する。
なお、見出しは(a)?(g)とし、刊行物発明の分説に対応させている。

(a)刊行物発明の「装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示」は、本件補正発明の「可変表示」に相当する。
また、刊行物発明の「パチンコ1」に設けられた「変動表示装置9」が、「装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう」から、刊行物発明の「パチンコ機1」は、本件補正発明の「可変表示が可能な遊技機」に相当する。
したがって、刊行物発明の構成aである「装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9が設けられたパチンコ機1」は、本件補正発明の構成Aである「可変表示が可能な遊技機」に相当する。

(b)刊行物発明の「回転操作部812」に係る「遊技者」の「回転操作」は、本件補正発明の「遊技者の第1の動作」に相当するから、刊行物発明の「前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?f」は、本件補正発明の「遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段」に相当する。
したがって、刊行物発明の構成bである「遊技者により操作可能な操作手段として操作部81が設けられており、前記操作部81には、遊技者が回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812と、前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?fが設けられ」ることは、本件補正発明の構成Bである「遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段」を備えることに相当する。

(c)刊行物発明の「押圧操作部811」に係る「遊技者」の「押圧操作」は、「回転操作部812」に係る「遊技者」の「回転操作」とは異なるものであるから、本件補正発明の「遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作」に相当し、刊行物発明の「前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?d」は、本件補正発明の「遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段」に相当する。
したがって、刊行物発明の構成cである「前記操作部81には、遊技者が押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる押圧操作部811と、前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?dが設けられ」ることは、本件補正発明の構成Cである「遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段」を備えることに相当する。

(d)[構成Dの第1の促進演出について]
刊行物発明の構成d2の「「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」という回転操作部812の回転操作についての操作案内表示」は、遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促すものであるといえる(認定事項(2-5))。
また、刊行物発明の構成d3の「遊技者側とパチンコ遊技機1側とで対戦する形式のミニゲーム」において、構成d4では、「回転操作部812の回転操作により」、「遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチ」となるから、刊行物発明では、前記ミニゲームが終了するまで、得点を獲得するべく遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促しているといえる(認定事項(2-6))。
したがって、刊行物発明では、回転操作部812の回転操作についての操作案内表示がなされてからミニゲームが終了するまでの間、すなわち、図22の(b)から(d)までの画面遷移の間、遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促す演出がなされており、刊行物発明の当該演出は、本件補正発明の構成Dの「遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出」に相当する。

[構成Dの第2の促進演出について]
刊行物発明の構成d5の「「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示」は、遊技者に押圧操作部811の押圧操作を行うことを促すものであるといえる(認定事項(2-7))。
したがって、刊行物発明の構成d5の「スーパーリーチとなった旨が表示された後、押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示され、「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行なわれる」ことは、本件補正発明の構成Dの「遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出」に相当する

[構成Dの促進演出実行手段について]
刊行物発明では、構成d1として「人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを読み出して変動表示装置9の表示制御を実行する、演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100とVDP109が搭載された演出制御基板80」を備えており、この「演出制御基板80」により、上記「第1の促進演出」及び上記「第2の促進演出」に相当する演出を実行しているといえるから、刊行物発明の構成d1の「演出制御基板80」は、本件補正発明の構成Dである「促進演出実行手段」としての機能を有するものである。

[構成Eの特定演出実行手段について]
刊行物発明では、構成d4より、前記ミニゲームが終了するまでに遊技者が回転操作部812の回転操作を行い、遊技者側が得点をすると、スーパーリーチとなった旨が表示されるところ、この「スーパーリーチとなった旨」を表示することは(認定事項(2-6))、ミニゲーム実行中になされた回転操作部812の回転操作が第1?2回転検出器81e?fにより検出されたことに基づいているといえるから、上記(b)より、刊行物発明の構成d4の「スーパーリーチとなった旨」を表示することは、本件補正発明の構成Eの「特定演出を実行する」ことに相当する。
したがって、刊行物発明の構成d4の「回転操作部812の回転操作により、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチとなった旨が表示され」ることは、本件補正発明の構成Eの「前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する」ことに相当する。
そして、刊行物発明の構成d1の「演出制御基板80」により、上記「特定演出」に相当する演出を実行しているといえるから、刊行物発明の構成d1の「演出制御基板80」は、本件補正発明の構成Eの「特定演出実行手段」としての機能を有するものである。

よって、刊行物発明は、本件補正発明の構成D及びEに相当する構成を備えたものであるといえる。

[構成D-1?D-3 第2の促進演出の実行時期について]
刊行物発明の構成d5において、「押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示され、「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行われる」タイミングは(図22(f)を参照)、「スーパーリーチとなった旨が表示された後」であり、構成d2?d4より、スーパーリーチとなった旨が表示されたとき以前に(図22(b)?(e)参照)、上記「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行われることはない。
したがって、刊行物発明の構成d2?d5は、本件補正発明の構成D-1「前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し」、構成D-2「一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず」、構成D-3「前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず」という要件を満たす。
よって、刊行物発明は、本件補正発明の構成D-1、D-2及びD-3に相当する構成を備えたものであるといえる。

(g)刊行物発明の構成gである「パチンコ機1。」は、本件補正発明の構成Gである「遊技機。」に相当する。

上記(a)?(g)の対比により、本件補正発明と刊行物発明とは、

「A 可変表示が可能な遊技機であって、
B 遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
C 遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
D 遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
E 前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
D-1 前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
D-2 一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
D-3 前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行しない、
G 遊技機。」

である点で一致し、以下の相違点で相違する。

[相違点]
本件補正発明では、「前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を実行する示唆演出実行手段」をさらに備えており(構成F)、
「前記示唆演出実行手段は、少なくとも前記第1の促進演出が終了する前から前記第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する」ように構成している(構成F-1)のに対して、
刊行物発明では、そのような構成を備えていない点。、


(4)判断
上記相違点について検討する。
パチンコ遊技機の遊技者が演出表示の進行に関与することを可能とするために遊技者に操作ボタンを押圧するように促す促進演出において、第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を、少なくとも第1の促進演出が終了する前から第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に実行することは、例えば、特開2007-75359号公報や特開2010-213925号公報に記載されているように優先日前に周知の技術である(以下、「周知技術」という)。
(特開2007-75359号公報の段落【0054】?【0056】、【図16】?【図18】には、遊技者自らが音楽に合わせた形で連続操作を行い、遊技により積極的に参加しているという意識を遊技者に抱かせることを可能とするために(段落【0056】)、画面右上枠内において「リズムに合わせてタイミングよくボタンを押して」という表示をすることにより、「遊技者に動作を行うことを促進する演出態様」にて操作ボタンを押圧するように促す促進演出が実行されるとともに、画面左枠内において、サウンドにあわせてどのタイミングで操作ボタンを押圧すればよいかをナビゲーションする指標が上から下に移動しながら表示されることが開示されている。
ここで、指標が上から下に移動して横軸を通過した際にタイミングよく操作ボタンを操作した場合には、【図17】に示すように「GREAT!!」と表示され、横軸を通過した際にタイミングよく操作ボタンを操作しなかった場合には、【図18】に示すように「MISS!!」と表示されることから、指標が横軸を通過することの表示は、「遊技者に操作ボタンを押圧するように促す促進演出」であるといえる。
そして、指標は横軸に到達する前から上から下に移動しているから、指標が上から下に移動することの表示は、「促進演出が実行される前に、当該促進演出が実行されることを示唆する演出」であって、「遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出」であるといえる。
また、指標は上から下に複数個所定の間隔を有しながら同時に移動しており、横軸に最も近い指標(以下、「第1の指標」という)が移動して横軸を通過したことにより、第1の指標に係る促進演出が終了し、その次に横軸に近い指標(以下、「第2の指標」という)が横軸を通過しようとして第2の指標に係る促進演出が開始されるものであるといえる。
そして、少なくとも第1の指標に係る促進演出が終了する前から第2の指標に係る促進演出が開始されるまでの期間において継続的に指標が上から下に移動することが表示されているから、「少なくとも第1の促進演出が終了する前から第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する」ものであるといえる。

同様に、特開2010-213925号公報の段落【0034】?【0038】、【図2】?【図3】には、再生されている演奏曲のリズムに合わせて打楽器音を発生させ、あたかも遊技者が演奏曲の打楽器パートを演奏しているかのような仮想現実感を楽しみながら、より積極的にゲームをプレイさせるようにするために(段落【0036】)、ゲーム画面の中央に画面左右端にかけて設けられた帯状の符号流域4において、符号10が画面右端から左端方向に向かって流れ表示され、この符号10が入力タイミング指標8に入ったタイミングで、遊技者に当該符号10の示す操作種類に対応する操作ボタン118を操作させることが開示されている。
ここで、符号流域4の左端に固定表示された入力タイミング指標8へ符号10が進入することにより、操作ボタン118を操作すべきタイミングを遊技者に示しているから、入力タイミング指標8へ符号10が進入することの表示は、「遊技者に操作ボタンを押圧するように促す促進演出」であるといえる。
そして、符号10は入力タイミング指標8に進入する前から右から左に移動しているから、符号10が右から左に移動することの表示は、「促進演出が実行される前に、当該促進演出が実行されることを示唆する演出」であって、「遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出」であるといえる。
また、符号10は右から左に複数個所定の間隔を有しながら同時に移動しており、入力タイミング指標8に最も近い符号(以下、「第1の符号」という)が移動して入力タイミング指標8に進入したことにより、第1の符号に係る促進演出が終了し、その次に入力タイミング指標8に近い符号(以下、「第2の符号」という)が入力タイミング指標8に進入しようとして第2の符号に係る促進演出が開始されるものであるといえる。
そして、少なくとも第1の符号に係る促進演出が終了する前から第2の符号に係る促進演出が開始されるまでの期間において継続的に符号が右から左に移動することが表示されているから、「少なくとも第1の促進演出が終了する前から第2の促進演出が開始されるまでの期間において継続的に前記示唆演出を実行する」ものであるといえる。)

そして、刊行物発明は、パチンコ遊技機の遊技者に押圧操作部811の押圧操作を促す促進演出を含むものであり(構成d5)、回転操作部812の回転操作促進演出の後に、押圧操作部811の押圧操作促進演出が行われるものである(構成d2及びd5)。
また、刊行物発明及び上記周知技術は、遊技者の操作により演出表示の進行に関与させて遊技の興趣を向上させるという共通の課題を有している。
よって、上記周知技術を刊行物発明の押圧操作部811の押圧操作促進演出に適用して、押圧操作促進演出が実行される前に、当該押圧操作促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を、少なくとも回転操作促進演出が終了する前から押圧操作促進演出が開始されるまでの期間において継続的に実行することにより、上記相違点に係る本件補正発明の構成F及びF-1を得るようにすることは、当業者ならば容易に為し得たことである。

ここで、審判請求書において、請求人は、
「審査官殿は、拒絶査定において、引用文献1の図22(f)は第2の促進演出を示唆する示唆演出であり、図22(g)が第2の促進演出であると、ご認定されていると思われます。
しかし、引用文献1の記載によれば、図22(f)は、押圧操作を要求する(遊技者の動作を促す)押圧操作要求画像であって操作案内表示であり(例えば、段落0154、0156参照)、図22(g)は、押圧操作に応じてパワーの値が増加するチャンス表示であると考えられます(例えば、段落0157参照)。
このため、引用文献1では、図22(g)においてボタン画像も表示されているといえども、図22(f)-(g)においてボタン操作を促す(遊技者の動作を促す)促進演出が実行されている(※図22(g)では、促進演出と同時に操作に応じた演出が実行されている)ものと考えられます(例えば、段落0334の末文にもそのような記載があります)。
これに対して、本願の示唆演出(例えば、カウントダウン演出)は、補正により、遊技者の動作を促す態様(促進演出)とは異なる態様の演出であることが明らかとなっています。
このため、本願の示唆演出は、引用文献1の図22(f)に示される演出に相当するものではなく、引用文献1は、本願の特徴Bを開示するものではありません。
また、仮に、引用文献1における図22(f)の演出が、本願の示唆演出に相当すると解釈した場合には、図22(f)の演出の態様が遊技者の動作を促す態様であるため、この演出が実行されると遊技者が誤って(第2の促進演出が実行される前に)操作を行ってしまう可能性があります。
これに対して、本願発明では、特徴Bを有する(つまり、遊技者の動作を促す態様とは異なる態様の示唆演出を実行する)ために、示唆演出によって遊技者が誤操作を行うということはなく、その後行われる第2の促進演出に向けて適切に操作の準備を行うことができるという、引用文献1からは示唆されない効果が期待されます。
以上の理由から、本願発明は、引用文献1に開示されている発明ではなく、引用文献1に基づいて容易に想到されるものでもありません。
また、本願発明では、さらに、引用文献1、2に開示されいてない特徴Cを備えるものであり、これにより、本願発明では、2つの促進演出そのものを重複して実行しないことにより動作指示が明確になるとともに、示唆演出を継続的に実行することにより、最初の促進演出が実行されてからの期待感を継続的に維持しながら次の促進演出を開始することができ、遊技者の期待感をより長く持続できるという効果が期待されます。
以上の理由から、本願発明は、引用文献1、2に開示および示唆されている発明ではなく、新規性及び進歩性を有するものと思料いたします。」
と主張している。
(「(3-4)本願発明と引用文献との対比」を参照)

しかしながら、パチンコ遊技機の遊技者に操作ボタンを押圧するように促す促進演出について、当該促進演出が実行される前に、当該促進演出が実行されることを示唆する演出として、遊技者に動作を行うことを促進する演出態様とは異なる演出態様の示唆演出を実行することや、かかる示唆演出を継続的に実行することは、上述のとおり優先日前に周知な技術であり、最初の促進演出が実行されてからの期待感を継続的に維持しながら次の促進演出を開始することができ、遊技者の期待感をより長く持続できるという効果についても、刊行物発明及び上記周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

よって、本件補正発明は、刊行物発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年6月15日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであり、上記第2の1.で本件補正前として記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 可変表示が可能な遊技機であって、
B 遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
C 遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
D 遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
E 前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
D-1 前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
D-2 一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
D-3 前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
F’ 前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段をさらに備える、
G ことを特徴とする遊技機。」

2.原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、
理由1(新規性)
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)
この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
というものである。

引用文献1.特開2008-154618号公報

3.引用文献に記載された事項
上記引用文献1は、上記第2の[理由]「3.独立特許要件」「(2)刊行物に記載された事項」において引用された刊行物1である。
そして、刊行物1から、上記「(2)刊行物に記載された事項」の上記(2-1)?(2-4)の記載事項、及び、上記(2-5)?(2-7)の認定事項に加えて、以下の事項が認定できる。

(2-8)上記オ【0157】には、「操作案内表示が所定期間行なわれた後」、「押圧操作部811の押圧操作回数の増加に応じて、棒グラフ形式で表示されるパワーの値が増加する表示であるチャンス表示が行なわれる」ことが記載されており、【図22】の(g)から、CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示されることが読み取れる。
そうすると、刊行物1には、「前記押圧操作部811の押圧操作についての前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、押圧操作部811の押圧操作回数の増加に応じて、棒グラフ形式で表示されるパワーの値が増加する表示であるチャンス表示が行なわれ、CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示されること」が記載されていると認められる。

よって、上記(2-1)?(2-4)の記載事項、及び上記(2-5)?(2-8)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(a?gは引用発明の構成を分説するため当審で付したものである。)

[引用発明]
「a 装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9が設けられたパチンコ機1であって、

b 遊技者により操作可能な操作手段として操作部81が設けられており、前記操作部81には、遊技者が回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812と、前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?fが設けられ、

c 前記操作部81には、遊技者が押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる押圧操作部811と、前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?dが設けられ、

d1 人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを読み出して変動表示装置9の表示制御を実行する、演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100とVDP109が搭載された演出制御基板80を備え、

d2 チャンスリーチが決定されたとき、変動表示装置9においてリーチFの変動パターンでの変動表示が行なわれ、操作部81の操作に応じてスーパーリーチの演出表示に変化するに際し、「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」という回転操作部812の回転操作についての操作案内表示が行なわれ(認定事項(2-5))、

d3 前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、遊技者側とパチンコ遊技機1側とで対戦する形式のミニゲームを行なう画像が表示され(認定事項(2-6))、

d4 前記ミニゲームを行う画像が表示されているときに、回転操作部812の回転操作により、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチとなった旨が表示され(認定事項(2-6))、

d5 スーパーリーチとなった旨が表示された後、押圧操作部811の押圧操作を要求するスーパーリーチ時押圧操作要求画像が表示され、「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行なわれる(認定事項(2-7))、

d6 前記押圧操作部811の押圧操作についての前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、押圧操作部811の押圧操作回数の増加に応じて、棒グラフ形式で表示されるパワーの値が増加する表示であるチャンス表示が行なわれ、CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される(認定事項(2-8))、

g パチンコ機1。」

4.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
なお、見出しは(a)?(g)とし、引用発明の分説に対応させている。

(a)本願発明の構成Aは、本件補正発明の構成Aと共通する。
また、引用発明の構成aは、刊行物発明の構成aと共通する。
よって、上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定」[理由]「3.独立特許要件」「(3)対比」の(a)において検討したように、引用発明の構成aである「装飾用(演出用)の図柄としての飾り図柄の変動表示を行なう変動表示装置9が設けられたパチンコ機1」は、本願発明の構成Aである「可変表示が可能な遊技機」に相当する。

(b)本願発明の構成Bは、本件補正発明の構成Bと共通する。
また、引用発明の構成bは、刊行物発明の構成bと共通する。
よって、上記「(3)対比」の(b)において検討したように、引用発明の構成bである「遊技者により操作可能な操作手段として操作部81が設けられており、前記操作部81には、遊技者が回転操作をすることが可能なダイヤル(ジョグタイヤル)よりなる回転操作部812と、前記回転操作部812による左回転操作と右回転操作とを検出する第1?2回転検出器81e?fが設けられ」ることは、本願発明の構成Bである「遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段」を備えることに相当する。

(c)本願発明の構成Cは、本件補正発明の構成Cと共通する。
また、引用発明の構成cは、刊行物発明の構成cと共通する。
よって、上記「(3)対比」の(c)において検討したように、引用発明の構成cである「前記操作部81には、遊技者が押圧操作をすることが可能な押しボタンスイッチ(ジョグボタン)よりなる押圧操作部811と、前記押圧操作部811による4方向の方向選択操作と決定操作とを検出する第1?4押圧検出器81a?dが設けられ」ることは、本願発明の構成Cである「遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段」を備えることに相当する。

(d)[構成Dの第1の促進演出について]
引用発明の構成d2の「「回転リングを操作してシュートしてください!シュートが決まればスーパーリーチ!」という回転操作部812の回転操作についての操作案内表示」は、遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促すものであるといえる(認定事項(2-5))。
また、引用発明の構成d3の「遊技者側とパチンコ遊技機1側とで対戦する形式のミニゲーム」において、構成d4では、「回転操作部812の回転操作により」、「遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチ」となるから、引用発明では、前記ミニゲームが終了するまで、得点を獲得するべく遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促しているといえる(認定事項(2-6))。
したがって、引用発明では、回転操作部812の回転操作についての操作案内表示がなされてからミニゲームが終了するまでの間、すなわち、図22の(b)から(d)までの画面遷移の間、遊技者に回転操作部812の回転操作を行うことを促す演出がなされており、引用発明の当該演出は、本願発明の構成Dの「遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出」に相当する。

[構成Dの第2の促進演出について]
引用発明の構成d6の「チャンス表示」において「CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」ことは、遊技者に押圧操作部811の押圧操作を行うことを促すものであるといえる(認定事項(2-8))。
したがって、引用発明の構成d6の「前記押圧操作部811の押圧操作についての前記操作案内表示が所定期間行なわれた後、押圧操作部811の押圧操作回数の増加に応じて、棒グラフ形式で表示されるパワーの値が増加する表示であるチャンス表示が行なわれ、CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」ことは、本願発明の構成Dの「遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出」に相当する。

[構成Dの促進演出実行手段について]
引用発明では、構成d1として「人物、文字、図形や記号等(飾り図柄を含む)、および背景画像のデータを読み出して変動表示装置9の表示制御を実行する、演出制御用CPU101を含む演出制御用マイクロコンピュータ100とVDP109が搭載された演出制御基板80」を備えており、この「演出制御基板80」により、上記「第1の促進演出」及び上記「第2の促進演出」に相当する演出を実行しているといえるから、引用発明の構成d1の「演出制御基板80」は、本願発明の構成Dである「促進演出実行手段」としての機能を有するものである。

[構成Eの特定演出実行手段について]
引用発明では、構成d4より、前記ミニゲームが終了するまでに遊技者が回転操作部812の回転操作を行い、遊技者側が得点をすると、スーパーリーチとなった旨が表示されるところ、この「スーパーリーチとなった旨」を表示することは(認定事項(2-6))、前記ミニゲーム実行中になされた回転操作部812の回転操作が第1?2回転検出器81e?fにより検出されたことに基づいているといえるから、引用発明の構成d4の「スーパーリーチとなった旨」を表示することは、本願発明の構成Eの「特定演出を実行する」ことに相当する。
したがって、引用発明の構成d4の「回転操作部812の回転操作により、所定時間が経過するまでに遊技者側が得点をすると、前記ミニゲームが終了して、スーパーリーチとなった旨が表示され」ることは、本願発明の構成Eの「前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する」ことに相当する。
そして、引用発明の構成d1の「演出制御基板80」により、上記「特定演出」に相当する演出を実行しているといえるから、引用発明の構成d1の「演出制御基板80」は、本願発明の構成Eの「特定演出実行手段」としての機能を有するものである。

よって、引用発明は、本願発明の構成D及びEに相当する構成を備えたものであるといえる。

[構成D-1?D-3の第2の促進演出の実行時期について]
引用発明の構成d6の「チャンス表示」において「CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」タイミングは(認定事項(2-8))、「スーパーリーチとなった旨が表示された後」であり、構成d2?d5より、スーパーリーチとなった旨が表示されたとき以前に(図22(b)?(e)参照)、「CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」ことはない。
したがって、引用発明の構成d2?d6は、本願発明の構成D-1「前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し」、構成D-2「一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず」、構成D-3「前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず」という要件を満たす。
よって、引用発明は、本願発明の構成D-1、D-2及びD-3に相当する構成を備えたものであるといえる。

[構成F’の示唆演出実行手段について]
引用発明の構成d5の「「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示」(認定事項(2-7))は、構成d6の「CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」こと(認定事項(2-8))よりも前に実行されており、「CHANCEボタンを発光させるとともに、「連打!」という文字列が表示される」こと(認定事項(2-8))を示唆する「示唆演出」であるといえる。
したがって、引用発明の構成d5の「「CHANCEボタンを連打してパワーをためてください!」という押圧操作部811の押圧操作についての操作案内表示が行われる」ことは、本願発明の構成F’の「前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する示唆演出を実行する」ことに相当する。
そして、引用発明の構成d1の「演出制御基板80」により、上記「示唆演出」に相当する演出を実行しているといえるから、引用発明の構成d1の「演出制御基板80」は、本願発明の構成F’の「示唆演出実行手段」としての機能を有するものである。
よって、引用発明は、本願発明の構成F’に相当する構成を備えたものであるといえる

(g)引用発明の構成gである「パチンコ機1。」は、本願発明の構成Gである「遊技機。」に相当する。

上記(a)?(g)の対比により、本願発明と引用発明とは、

「A 可変表示が可能な遊技機であって、
B 遊技者の第1の動作を検出する第1の検出手段と、
C 遊技者の前記第1の動作とは異なる第2の動作を検出する第2の検出手段と、
D 遊技者に前記第1の動作を行うことを促進する第1の促進演出と、遊技者に前記第2の動作を行うことを促進する第2の促進演出とを実行する促進演出実行手段と、
E 前記第1の促進演出の実行中に前記第1の検出手段により前記第1の動作が検出されたことに基づいて特定演出を実行する特定演出実行手段と、
を備え、
前記促進演出実行手段は、
D-1 前記第1の促進演出を実行した後に、前記第2の促進演出を実行し、
D-2 一の可変表示において前記第1の促進演出と前記第2の促進演出を実行する場合、前記第1の促進演出の実行前の所定期間と実行後の所定期間との少なくともいずれか一方と、前記第1の促進演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
D-3 前記特定演出の実行中の期間は前記第2の促進演出を実行せず、
F’ 前記第2の促進演出が実行される前に、当該第2の促進演出が実行されることを示唆する示唆演出を実行する示唆演出実行手段をさらに備える、
G 遊技機。」

である点で一致し、相違するところはない。
そうすると、本願発明と引用発明との間に発明特定事項の差異はない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-19 
結審通知日 2018-11-20 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2013-151323(P2013-151323)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
濱野 隆
発明の名称 遊技機  

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