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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45C
管理番号 1348091
審判番号 不服2018-12952  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-28 
確定日 2019-02-06 
事件の表示 特願2018- 89997「宝飾箱」拒絶査定不服審判事件〔未公開、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年5月8日に出願されたものであって、同年5月14日に早期審査に関する事情説明書が提出され、同年6月15日付けで拒絶理由が通知され、同年7月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月22日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正書及び早期審理に関する事情説明書が提出され、平成30年11月22日付けで前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
・原査定(平成30年8月22日付け拒絶査定)の概要
本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2001-211922号公報
2.登録実用新案第3170485号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成30年9月28日提出の手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
下箱体と、
前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、
前記下箱体にヒンジで開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、
前記下箱体および前記上箱体に接続されて、前記開き位置に向かって前記上箱体を駆動するばね部材と、
前記下箱体または前記上箱体に支持されて、前記上箱体が前記開き位置に達した後に予め決められた時間が経過すると前記ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源と、
を備えることを特徴とする宝飾箱。
【請求項2】
請求項1に記載の宝飾箱において、前記光源は、徐々に光量を増加させながら前記ダイヤモンドに前記紫外線を照射することを特徴とする宝飾箱。
【請求項3】
請求項1または2に記載の宝飾箱において、前記下箱体に嵌め込まれて、表面に布材を有する緩衝材を備え、前記光源は、前記紫外線を含む透明な光線を放出することを特徴とする宝飾箱。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1(特開2001-211922号公報)について
原査定の理由に引用された上記引用文献1には、「宝石箱」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア.「【請求項1】 ケース本体と、このケース本体の縁部に連結され、該ケース本体に対して一定角度開く上蓋と、前記ケース本体あるいは上蓋の少なくともいずれか一方に配置され、上蓋の開閉に応じてケース本体の内側面に対して紫外線を照射する紫外線照射手段とを具備することを特徴とする宝石箱。」

イ.【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、宝石箱、特に紫外線照射により特殊な蛍光を発して所定の表示をするダイヤモンドを適宜配置した装飾品を収納する宝石箱に関する。」

ウ.「【0013】図中の付番1は宝石箱を示す。この宝石箱1は、ケース本体2と、このケース本体2の縁部と連結部材3を介して連結する上蓋4と、上蓋4の内側に設置された紫外線ランプ(紫外線照射手段)5とを備えている。前記上蓋4は、ケース本体2に対して約70度程度まで開くように設定されている。前記紫外線ランプ5には、上蓋4の内側に設置されたスイッチ6及び電源7が電気的に接続されている。ここで、上蓋4を開いたときスイッチ6がONとなって紫外線ランプ5が点灯し、上蓋4を閉じたときスイッチ6がOFFとなって紫外線ランプ5が消灯するようになっている。前記紫外線ランプ5、スイッチ6及び電源7により紫外線照射機構が構成され、これら紫外線ランプ,スイッチ6,電源7の回路図は、図3に示す通りである。但し、図3において、付番8は抵抗、付番9はトランスを示す。
【0014】前記ケース本体2の内側には、上部に溝10を有した宝飾品用支持部材11が収納されている。この支持部材11の溝部分には、例えば指輪12が固定されている。この指輪12は、図2に示すように、紫外線15の照射により蛍光例えば青白色な光を発する多数のダイヤモンド13からなる第1の群と、紫外線の照射により蛍光を発しない多数のダイヤモンド14からなる第2の群を、固定金具15に適宜配置した構成となっている。
【0015】こうした構成の宝石箱によれば、上蓋4に紫外線ランプ5とスイッチ6と電源7を備えた紫外線照射機構を具備した構成になっているため、上蓋4を開いた時、スイッチ6が“ON”して紫外線ランプ5が点灯し、ケース本体2の内側,特にこのケース本体2に収納された指輪12に紫外線15を照射することができる。そして、紫外線15を照射された第1の群を構成するダイヤモンド13からは青白色な光が発せられる一方、第2の群を構成するダイヤモンド14からは蛍光が発せられないので、例えば、図2に示すような月日の表示「1 1」(1月1日を意味する)が鮮明に表示される。」

エ.上記ア.、ウ.及び図1の記載から、上蓋4は、ケース本体2に連結部材3を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記ケース本体2に合わさってダイヤモンド13を隠し、開き位置で前記ダイヤモンド13を露出するものであることが明らかである。

オ.上記ウ.及び図1の記載から、紫外線ランプ5は、ダイヤモンド13に向かって紫外線を照射するものであることが明らかである。

(2)引用発明
上記(1)及び図面からみて、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ケース本体2と、
前記ケース本体2に収納された宝飾品用支持部材11に固定されて、蛍光例えば青白色な光を発する多数のダイヤモンド13と、
前記ケース本体2に連結部材3を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記ケース本体2に合わさって前記ダイヤモンド13を隠し、開き位置で前記ダイヤモンド13を露出する上蓋4と、
前記上蓋4の内側に設置されて、上蓋4が開いた時スイッチ6がONして、前記ダイヤモンド13に向かって紫外線を照射する紫外線ランプ5と、
を備える宝石箱1。」

2.引用文献2(登録実用新案第3170485号公報)について
(1)原査定の理由に引用された上記引用文献2には、「宝石箱用照明具」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0019】
宝石箱1は、ペンダントヘッドや指輪等の宝石Pを収納する箱本体2と、箱本体2にヒンジ5を介して連結され、上開きで開く上蓋6とを備えて構成されている。箱本体2は、宝石Pを収納する凹部3aを有した収納部3と、収納部3を囲むように配設される周壁部4とを備えてなる。周壁部4の前上端は、後述するスイッチ14の操作レバー14aを受け止める当接部4aとしている。また、上蓋6は、天井壁7と、天井壁7の周縁から延びる周壁部8とを備えてなり、周壁部8の前壁8aの中央付近に宝石箱用照明具10を取り付けることとなる。」

イ.「【0021】
ランプユニット11は、図6に示すように、電力供給時に発光するLED12、電池13、オン操作時に電池13の電力を供給してLED12を発光させるスイッチ14、及び、抵抗15、を具備して構成されている。LED12は、白色光の集光タイプとしており、発光時に、スポットライトのように、宝石Pを照らすこととなる。電池13は、ボタン電池が使用されている。スイッチ14は、B接点タイプのマイクロスイッチが使用されており、操作レバー14aが、宝石箱1の周壁部4の当接部4aと当接している時には、オフ操作され、宝石箱1の周壁部4の当接部4aから離れた際に、オン操作される。」

ウ.「【0025】
そして、このクリップ20は、前壁8aに取り付けた状態において、宝石箱1の上蓋6を開いた際にスイッチ14をオン操作させるように配置でき、かつ、図1,2に示すように、上蓋6を全開位置まで開けた際に、宝石Pを照らす位置に発光時のLED12を配置できるように、構成されている。」

エ.「【0035】
また、実施形態の宝石箱用照明具10のランプユニット11において、図6の括弧書きで図示したように、スイッチ14のオン操作から1?2秒程度遅れてLED12を発光させるオンディレイ回路16、を設けて構成してもよい。
【0036】
このような構成では、宝石箱1の上蓋6を開けた後に、1?2秒程度、遅れてLED12が発光する。そのため、このような宝石箱用照明具10では、上蓋6を完全に開けた後に、宝石Pが照らされて輝くことができて、贈られた側を、一層、ドラマチックに喜ばせることができる。」

(2)引用文献2技術
上記(1)及び図面からみて、引用文献2には以下の技術(以下、「引用文献2技術」という。)が記載されている。

「箱本体2と、前記箱本体2に収納される宝石Pと、箱本体2にヒンジを介して連結される上蓋6と、上蓋6に取り付けられた宝石箱用照明具10のランプユニット11と、を備えた宝石箱において、宝石箱用照明具10のランプユニット11は、宝石箱1の上蓋6を開けた後に、1?2秒程度遅れて発光することで、上蓋6を完全に開けた後に、宝石Pが照らされて輝くことができて、贈られた側を一層ドラマチックに喜ばせることができる技術。」

3.引用文献3(特開2007-190127号公報)について
前置報告書において引用された上記引用文献3には、「アクセサリーボックス」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0011】
図1はボックス蓋体の閉鎖状態で示す,本発明に係るアクセサリーボックスの縦断側面図,図2はボックス蓋体の開放状態で示す同アクセサリーボックスの縦断側面図,図3は支持台及び化粧天板を取り外してアクセサリーボックス内の照明ランプ及びその電気回路を示す正面図,図4は上記電気回路の分解図である。
【0012】
先ず図1及び図2において,アクセサリーボックスBは,上面を開放したボックス本体1と,このボックス本体1に左右一対のヒンジ3を介して結合されてボックス本体1の開口部を開閉するボックス蓋体2とを備える。これらボックス本体1及びボックス蓋体2の形状は任意であるが,図示例の場合,平面視でハート形に形成される。
【0013】
図1?図4に示すように,各ヒンジ3は,ボックス本体1及びボックス蓋体2の相対応する一側縁部にそれぞれ固着される第1ヒンジアーム4及び第2ヒンジアーム5と,両ヒンジアーム4,5を相対回動可能に連結するヒンジピン6とで構成され,両ヒンジアーム4,5間にはトグルスプリング7が接続される。
【0014】
このトグルスプリング7は,自由状態でヒンジピン6を跨ぐようにU字状をなしていて,ボックス蓋体2の所定の中間開度を境にして,ボックス蓋体2が閉じ側に位置するときは,それを閉じ方向に付勢し,ボックス蓋体2が開き側に位置するときは,それを開き方向に付勢するようになっている。」

4.引用文献4(特開2002-245844号公報)について
前置報告書において引用された上記引用文献4には、「浴室の演出照明装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0004】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、浴室の斜視構成図であり、浴室1内に設置された浴槽2の側壁面には、2個の水中照明3,3が設けられており、この水中照明3は、図2に示すように、浴槽2内の水中に没する側壁面部位に設けられた透光窓3a,3aを通してLEDの光を浴槽2の水中内に照射することができ、浴槽2内の水中をLEDからの光で良好に演出照明できるように構成したものであり、例えば、青の光を発する青色のLEDと、赤色の光を発する赤色のLEDと、緑色の光を発する緑色のLEDで水中照明3は構成されている。」

イ.「【0010】また、浴室1内で身体を洗う際等には、リモコン8の標準スイッチ10がONされ、この標準スイッチ10がONされると、水中照明3が消灯され、制御ボックス6を介して第1室内照明4,4が暗い状態から徐々に明るさを増して100%の全灯状態となり、第1室内照明4,4が全灯状態となった時に、第2室内照明5が点灯され、浴室1内を明るく照らすことができるものとなる。
【0011】なお、この状態で、リモコン8の調光用のダウンスイッチ14が操作されると、第1室内照明4,4は操作に伴って明るさを低下させてゆくが、第1室内照明4,4が全灯状態から少しでも明るさを低下させた時には、第2室内照明5が制御ボックス6を介し自動的に消灯されて、浴室1内を薄暗く落ち着いた環境にすることができるものである。また逆に、調光用アップスイッチ13が操作されると、第1室内照明4,4は徐々に明るさを増してゆき、第1室内照明4,4が100%の全灯状態に達した時に、自動的に第2室内照明5が点灯されて、浴室1内を明るく照明することができるものである。また、浴室1から外に出て、洗面室の電源スイッチ9をOFFした時には、第2室内照明5、第1室内照明4,4及び水中照明3は消灯されるものである。
【0012】このように本例では、水中照明3を作動させる時に、リモコン8のクールスイッチ11またはウォームスイッチ12を操作するだけで、第1室内照明4の明るさを低下させ、また第2室内照明5を消灯させることができ、煩わしい操作を行なうことなく自動的に浴室1内が暗くされて、良好な演出効果が得られるものである。さらに調光用のアップスイッチ13またはダウンスイッチ14を操作することで、第1室内照明4の明るさの増減に連動させて第2室内照明5を消灯または点灯させることができ、煩わしい操作をすることなく浴室の室内照明を良好に制御できるものである。」

5.引用文献5(特開2009-266672号公報)について
前置報告書において引用された上記引用文献5には、「照明装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
本発明は、室内の壁面を照らす壁面照明やショーウインドウに飾られる被写体を照らすショーウインドウ照明や屋外のビル等の壁面を照らす屋外照明に使用される照明ユニットの一部に紫外線ランプを搭載し、被写体をその照明により演出する照明装置に関するものである。」

イ.「【0006】
本課題を解決するために請求項1記載の本発明は、紫外線(BLA)を放射する紫外線ランプ(紫外線ランプ11、例えば、LED・EEFL・蛍光管、電球)および可視光線(COO・CYY)であって有彩色(オレンジ色、黄色、例えば青、緑、紫、赤、ピンク、蛍光灯色等)を放射する可視光線ランプ(可視光線ランプ12・13のいずれか一つであってもよい、その他可視光線ランプには例えば、LED・EEFL・蛍光管、電球)を一つのユニットに収容するとともに、被写体(5・6、例えばおもちゃ・壁面・衣服・鞄等)を照射するように構成された照明ユニット(照明ユニット10)と、当該照明ユニット(照明ユニット10)に接続され前記紫外線ランプおよび前記可視光線ランプの照度を制御する制御部(制御部40)とを備えた照明装置(照明装置1)であって、前記制御部は、各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を時間に伴い制御するパターンが記憶されたパターンデータ(パターンデータ25)と、当該パターンデータ(パターンデータ25)に基づいて各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を制御する制御コントローラ(制御コントローラ20)と、を設け、前記パターンデータ(パターンデータ25)は、前記各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を暗い照度から明るい照度へ徐々に移行させるフェードイン手段(フェードイン手段26)と、前記各ランプ(紫外線ランプ11及び可視光線ランプ12・13、可視光線ランプはいずれか一つであってもよい)の照度を明るい照度から暗い照度へ徐々に移行させるフェードアウト手段(フェードアウト手段27)と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
以上の構成により、照明装置は紫外線ランプや可視光線ランプを時々刻々と被写体に与える光の照度を変化させることができるので、紫外線ランプの放射により被写体が発光し白く鮮やかに見えたり、鮮やかな白が今度は徐々に薄れ、可視光線ランプの光りの色が現れて来たりと、被写体に与える色の演出を様々に楽しむことができる。
可視光線ランプは、いずれか一つであっても本実施形態を実現できるが、複数である場合には多色の色を放射することができるので、多彩な演出ができなおよい。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における「ケース本体2」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「下箱体」に相当し、以下同様に、「収納された宝飾品用支持部材11に固定されて」は「支持されて」に、「蛍光例えば青白色な光を発する」は「青色蛍光性を有する」に、「多数のダイヤモンド13」あるいは「ダイヤモンド13」は「ダイヤモンド」に、「上蓋4」は「上箱体」に、「前記上蓋4の内側に設置され」ることは「前記下箱体または前記上箱体に支持され」ることに、「紫外線ランプ5」は「光源」に、「宝石箱1」は「宝飾箱」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「連結部材3を介して」連結されることと、本願発明1における「ヒンジで」連結されることとは、「連結部材を介して」連結されることという限りにおいて一致する。
したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
下箱体と、
前記下箱体に支持されて、青色蛍光性を有するダイヤモンドと、
前記下箱体に連結部材を介して開閉自在に連結されて、閉じ位置で前記下箱体に合わさって前記ダイヤモンドを隠し、開き位置で前記ダイヤモンドを露出する上箱体と、
前記下箱体または前記上箱体に支持されて、前記ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源と、
を備える宝飾箱。」

[相違点1]
「連結部材を介して」連結されることに関して、
本願発明1においては、「ヒンジで」連結されることであるのに対し、
引用発明においては、連結部材3を介して連結されることである点。

[相違点2]
本願発明1においては、「前記下箱体および前記上箱体に接続されて、前記開き位置に向かって前記上箱体を駆動するばね部材」を備えるのに対し、
引用発明においては、かかるばね部材を備えるか否か明らかではない点。

[相違点3]
本願発明1においては、光源が「前記上箱体が前記開き位置に達した後に予め決められた時間が経過すると」ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源であるのに対し、
引用発明においては、光源が、上蓋4が開いた時スイッチがONして、ダイヤモンド13に向かって紫外線を照射する紫外線ランプ5である点。

事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
引用文献2には、箱本体2と、箱本体2に収納される宝石Pと、箱本体2にヒンジを介して連結される上蓋6と、上蓋6に取り付けられた宝石箱用照明具10のランプユニット11と、を備えた宝石箱の記載があり、特に、宝石箱用照明具10のランプユニット11は、宝石箱1の上蓋6を開けた後に、1?2秒程度、遅れて発光することで、上蓋6を完全に開けた後に、宝石Pが照らされて輝くことができて、贈られた側を一層ドラマチックに喜ばせることができるものである。
しかしながら、引用発明と引用文献2技術とは、対象となる宝石が、引用発明においてはダイヤモンド13であるのに対し、引用文献2技術においては宝石Pであり、また、宝石に照射する光源が、引用発明においては紫外線ランプ5であるのに対し、引用文献2技術においては宝飾箱用照明具10のランプユニット11であり、両者は対象となる宝石及び宝石を照射する光源の前提が異なるから、直ちに引用発明に引用文献2技術を適用することはできるものではない。
そして、本願発明1の「青色蛍光性を有するダイヤモンド」及び「ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源」を備えることを前提として、光源が「前記上箱体が前記開き位置に達した後に予め決められた時間が経過すると」ダイヤモンドに向かって紫外線を照射するという技術事項は、引用文献1及び引用文献2のいずれにも記載も示唆もされておらず、本願発明1は、かかる事項により、引用文献1及び引用文献2の記載事項から予測し得ない「上箱体13の開放後しばし透明に輝くダイヤモンド粒23が観察された後に、ダイヤモンド粒23は透明から青色に変色する。こうして上箱体13の開放動作に応じて光の演出効果は作り出される。この演出効果で宝飾箱11の観察者に他にはない感動を引き起こすことができる。(本願明細書段落【0030】)」という効果を奏するものである。
さらに、引用文献3ないし5の記載事項を検討しても、何れの文献も相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を開示又は示唆する記載はない。
したがって、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3ないし5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2も、本願発明1の「「前記上箱体が前記開き位置に達した後に予め決められた時間が経過すると」ダイヤモンドに向かって紫外線を照射する光源」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3ないし5の記載事項に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
原査定時の(すなわち、平成30年7月27日の手続補正により補正された)請求項1に係る発明は、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を含むものであるから、上記「第5」で検討したとおり、当業者であっても、原査定の理由において引用された引用発明、引用文献2技術に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし3に係る発明は、引用発明、引用文献2技術及び引用文献3ないし5の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-22 
出願番号 特願2018-89997(P2018-89997)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大内 康裕大光 太朗長清 吉範  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 佐々木 芳枝
山村 和人
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6484365号(P6484365)
発明の名称 宝飾箱  
代理人 特許業務法人落合特許事務所  

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