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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 A24B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A24B
管理番号 1348094
審判番号 不服2017-16843  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-13 
確定日 2019-02-05 
事件の表示 特願2014-548819号「溶融性無煙タバコ組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日国際公開、WO2013/096408号、平成27年 1月22日国内公表、特表2015-502175号、請求項の数(28)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2012年12月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理:2011年12月20日,米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月9日に意見書が提出され、平成29年7月3日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年11月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年12月18日に審判請求書に対する手続補正書が提出され、平成30年7月27日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年10月31日に意見書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1?28に係る発明は、特表2011-504733号公報(以下、「引用文献1」という。)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.本件出願の請求項1、2に係る発明は、その出願日前の下記の出願(以下、「先願」という。)の請求項4に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

2.本件出願の請求項6に係る発明、請求項7に係る発明、請求項8に係る発明、請求項9?11、16、18に係る発明、請求項12に係る発明、請求項14に係る発明、請求項15に係る発明は、それぞれ、先願の請求項2に係る発明、請求項3に係る発明、請求項6に係る発明、請求項10に係る発明、請求項9に係る発明、請求項12に係る発明、請求項13に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

3.本件出願の請求項20に係る発明、請求項21に係る発明、請求項23に係る発明、請求項24に係る発明は、それぞれ、先願の請求項14に係る発明、請求項18に係る発明、請求項23に係る発明、請求項14に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。

(先願)特願2013-524167号(パリ条約による優先権主張2010年8月11日。特許第5931870号公報参照。)

第4 本願発明
本件出願の請求項1?28に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明28」という。)は、平成29年11月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?28は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
使用者の口の中へ挿入するように構成され、前記口の中で液化することが可能である、溶融可能な無煙タバコ組成物であって、前記タバコ組成物が、タバコ抽出物と、29℃?49℃の融点を有する少なくとも30乾燥重量%の脂質とを含有する、無煙タバコ組成物。
【請求項2】
前記タバコ抽出物は、噴霧乾燥又は凍結乾燥した粒子状形態の水性タバコ抽出物である、請求項1に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項3】
前記タバコ抽出物が、噴霧乾燥又は凍結乾燥したタバコ抽出物粒子、及び第二の噴霧乾燥又は凍結乾燥した粒状材料の粒状混合物の形態である、請求項1に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項4】
前記第二の粒状材料が、マルトデキストリン、シクロデキストリン及び天然ゴムから成る群から選択される、充填剤又は結合剤材料である、請求項3に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項5】
タバコ抽出物対第二の粒状材料の重量比が、7:1?1:1である、請求項3に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項6】
前記脂質が、36℃?45℃の融点を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項7】
前記脂質が、38℃?41℃の融点を有する、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項8】
前記脂質が、パーム核油及びパーム油のブレンドを含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項9】
糖アルコールを更に含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項10】
前記組成物の全重量に基づいて、少なくとも20乾燥重量%の量で糖アルコールを含む、請求項9に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項11】
前記組成物の全重量に基づいて、少なくとも40乾燥重量%の量で糖アルコールを含む、請求項10に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項12】
前記糖アルコールがイソマルトである、請求項9に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項13】
粒子状タバコ材料の形態の第二のタバコ材料を更に含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項14】
前記組成物の全重量に基づいて、
少なくとも2乾燥重量%のタバコ抽出物と、
少なくとも0.1乾燥重量%の少なくとも一種の甘味料と、
少なくとも30乾燥重量%の少なくとも一種の充填剤と、
少なくとも0.5乾燥重量%の少なくとも一種の風味料と
を含む、請求項1に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項15】
前記無煙タバコ組成物の全乾燥重量に基づいて、
2?10乾燥重量%のタバコ抽出物と、
30?50乾燥重量%の脂質と、
0.1?1乾燥重量%の人工甘味料と、
30?60乾燥重量%の充填剤と、
最大5乾燥重量%の量の風味料と、
最大10乾燥重量%の量の塩化ナトリウムと
を含む、請求項1に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項16】
前記充填剤が糖アルコールを含む、請求項14?15のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項17】
レシチンを更に含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項18】
少なくとも20乾燥重量%の量の糖アルコール及び少なくとも30乾燥重量%の量の脂質を含む、請求項1?5のいずれか一項に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項19】
粉砕されたタバコ材料を更に含む、請求項18に記載の無煙タバコ組成物。
【請求項20】
29℃?49℃の融点を有する脂質を溶融して、溶融した脂質組成物を形成することと、
前記溶融した脂質組成物とタバコ抽出物を混合して、溶融した無煙タバコ組成物を形成することと、
前記溶融した無煙タバコ組成物を冷却して、固形化した無煙タバコ組成物を形成することと
を含む、使用者の口の中に挿入するために構成された溶融性無煙タバコ組成物を調製するためのプロセス。
【請求項21】
前記脂質が、パーム核油及びパーム油のブレンドを含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
一つ以上の塩及び糖アルコールと、前記溶融した脂質組成物とを混合する工程を更に含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項23】
前記溶融した無煙タバコ組成物を所定の形状へ形成するように、鋳型中に前記溶融した無煙タバコ組成物を堆積する工程を更に含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項24】
前記タバコ抽出物が、噴霧乾燥又は凍結乾燥した粒子状形態の水性タバコ抽出物である、請求項20に記載のプロセス。
【請求項25】
前記タバコ抽出物が、噴霧乾燥又は凍結乾燥したタバコ抽出物粒子、及び第二の噴霧乾燥又は凍結乾燥した粒状材料の粒状混合物の形態である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記第二の粒状材料が、マルトデキストリン、シクロデキストリン及び天然ゴムから成る群から選択される、充填剤又は結合剤材料である、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記水性タバコ抽出物を、少なくとも18重量%の固形含有量を有する混合物を提供するのに十分な量の前記第二の粒状材料と混合し、その後、混合物を噴霧乾燥又は凍結乾燥に供して乾燥粒状材料を形成することにより、前記タバコ抽出物及び前記第二の粒状材料の噴霧乾燥又は凍結乾燥した混合物を調製する工程を更に含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項28】
前記乾燥粒状材料中のタバコ抽出物と第二の粒状材料との重量比が、7:1?1:1である、請求項27に記載のプロセス。」

第5 当審拒絶理由について
1.先願発明
先願の請求項1?23に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「先願発明1」?「先願発明23」という。)。

「【請求項1】
使用者の口の中に挿入するよう形成した、口の中で液化することができる溶融可能な無煙タバコ組成物であって、前記タバコは、粒子状タバコ材料および少なくとも10乾燥重量%の29℃?49℃の融点を有する脂質を含む、溶融可能な無煙タバコ組成物。
【請求項2】
前記脂質が36℃?45℃の融点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂質が38℃?41℃の融点を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂質が少なくとも30乾燥重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質が14?20個の炭素原子の炭素長を有する複数の飽和または不飽和脂肪酸鎖を含む植物由来脂肪である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂質がパーム核油およびパーム油のブレンドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
香味剤、結合剤、充填剤、崩壊助剤、湿潤剤およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
充填剤、人口甘味剤、香味剤および塩をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記充填剤がイソマルトである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも20乾燥重量%の量で存在する糖アルコールの形態の充填剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記タバコ材料が50ミクロン未満の平均粒径を有する粒子状タバコ材料を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の総重量基準で少なくとも25乾燥重量%の粒子状タバコ材料と、
少なくとも10乾燥重量%の脂質と、
少なくとも0.1乾燥重量%の少なくとも1種の甘味剤と、
少なくとも20乾燥重量%の少なくとも1種の充填剤と、
少なくとも0.5乾燥重量%の少なくとも1種の香味剤と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
無煙タバコ組成物の総乾燥重量基準で25?45%の粒子状タバコ材料と、
10?50%の脂質と、
0?1%の人工甘味剤と、
20?40%の充填剤と、
最大10%までの量の香味剤と、
最大5%までの量の塩と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
使用者の口の中に挿入するよう形成した、口の中で液化することができる溶融可能な無煙タバコ組成物を調製する方法であって、
29℃?49℃の融点を有する脂質を溶かして溶融した脂質組成物を形成することと、
粒子状タバコ材料を前記溶融した脂質組成物と混合して溶融した無煙タバコ組成物スラリーを形成することと、
前記溶融した無煙タバコ組成物スラリーを冷却して凝固した無煙タバコ組成物を形成することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記脂質が36℃?45℃の融点を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記脂質が38℃?41℃の融点を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記脂質が14?20個の炭素原子の炭素長を有する複数の飽和または不飽和脂肪酸鎖を含む植物由来脂肪である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記脂質がパーム核油およびパーム油のブレンドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記混合ステップの前に塩を前記タバコ材料に添加するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記混合ステップの前に香味剤、結合剤、充填剤、崩壊助剤、湿潤剤およびこれらの混合物からなる群から選択される添加剤を前記タバコ材料に添加するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記添加剤が糖アルコールを含む充填剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タバコ材料を前記溶融した脂質組成物と混合するステップが、6%未満の水分含量を有する粒子状タバコ材料を前記溶融した脂質組成物と混合するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記溶融した無煙タバコ組成物スラリーを所定の形状に形成するために前記溶融した無煙タバコ組成物スラリーを型に堆積させるステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。」

2.本願発明1、2について
(1)対比
本願発明1と、先願発明4を対比すると、本願発明1の前記タバコ組成物が「タバコ抽出物」を含有するのに対して、先願発明4の前記タバコが「粒子状タバコ材料」を含有する点で相違する。

そして、本願発明1の「タバコ抽出物」について、本件出願の明細書の段落0028の「タバコ組成物又は製品中で用いられるタバコ材料の少なくとも一部(例えば、タバコ成分)は、抽出物の形態を有してもよい。蒸留水又は水道水などの水性特性を有する溶媒を用いてタバコを抽出することにより、タバコ抽出物を得ることができる。そのようにして、水性タバコ抽出物を、水でタバコを抽出することによって提供することができ、その結果、水不溶性パルプ物質は、水性溶媒から分離され、水溶性及び分散性タバコ成分がその中に溶解し、分散される。・・・」等の記載を参酌すれば、当該「タバコ抽出物」とは、少なくとも溶媒を用いてタバコを抽出することにより得られるものと解される。
一方、先願発明4の「粒子状タバコ材料」とは、先願明細書の段落0026の「タバコ材料は、典型的には粒子状(すなわち、刻み、粉砕、顆粒化または粉末形態)として記載することができる形態で使用される。タバコ材料を微粒子状または粉末型の形態で提供する様式は変化し得る。」等の記載を参酌すれば、少なくとも刻み、粉砕、顆粒化または粉末形態として記載することができる形態で使用されるものと解されるから、上記本願発明1の「タバコ抽出物」とは実質的に異なるものである。
以上のことから、本願発明1は、先願発明4と同一とはいえない。

また、本願発明2も、本願発明1の「タバコ抽出物」と同一の構成を備えるものであるから、同様に、先願発明4と同一とはいえない。

3.本願発明6?12、14?16、18について
本願発明1を直接的に又は間接的に引用する本願発明6?12、14?16、18も、本願発明1と同一の構成を備えるものであり、先願発明2、3、6、9、10、12、13のいずれの発明も本願発明1の上記「タバコ抽出物」を備えていないから、本願発明1と同じ理由により、本願発明6と先願発明2、本願発明7と先願発明3、本願発明8と先願発明6、本願発明9?11、16、18と先願発明10、本願発明12と先願発明9、本願発明14と先願発明12、本願発明15と先願発明13は、いずれも同一とはいえない。

4.本願発明20、21、23、24について
本願発明20、21、23、24も、「タバコ抽出物」との構成を備えるものであり、先願発明14、18、23は、「粒子状タバコ材料」を備えるものであって、本願発明20、21、23、24の上記「タバコ抽出物」を備えていないから、本願発明1と同様の理由により、本願発明20と先願発明14、本願発明21と先願発明18、本願発明23と先願発明23、本願発明24と先願発明14は、いずれも同一とはいえない。

第6 原査定についての判断
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特表2011-504733号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。)。

1a)「【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品であって、
(a)30重量%から50重量%の少なくとも1つのタバコ成分、
(b)1重量%から15重量%の少なくとも1つの香味料、
(c)5重量%から35重量%の少なくとも1つの充填剤-結合剤、
(d)1重量%から3重量%の少なくとも1つの甘味料、
(e)1重量%未満の少なくとも1つの潤滑剤、
(f)少なくとも1つの乾燥剤、
(g)1重量%未満の少なくとも1つの流動促進剤、及び
(h)少なくとも1つの脂質、
を含む組成物から形成される、
ことを特徴とする製品。
【請求項2】
前記少なくとも1つの脂質は、圧縮タバコ製品マトリックス内に注入されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮タバコ製品。
【請求項3】
前記少なくとも1つの脂質は、圧縮タバコ製品の表面上にシェルコーティングを形成することを特徴とする請求項1に記載の圧縮タバコ製品。
・・・
【請求項6】
溶解可能圧縮タバコ製品を作る方法であって、
(a)粉砕または粉末状の少なくとも1つのタバコ成分、少なくとも1つの香味料、少なくとも1つの充填剤-結合剤、少なくとも1つの甘味料、少なくとも1つの潤滑剤、少なくとも1つの乾燥剤、及び少なくとも1つの流動促進剤の混合物を形成する段階、
(b)前記混合物をダイに圧縮して圧縮タバコ製品を形成する段階、及び、
(c)前記圧縮タバコ製品に少なくとも1つの脂質を注入する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
少なくとも1つの脂質を含むシェルコーティングを前記圧縮タバコ製品の表面上に形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧縮タバコ製品に少なくとも1つの脂質を注入する前記段階は、該少なくとも1つの脂質を含有する油浴に該圧縮タバコ製品を置く段階と、該圧縮タバコ製品の割れ目空間を該少なくとも1つの脂質で充填する段階と、該圧縮タバコ製品を加熱する段階とを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記圧縮タバコ製品に少なくとも1つの脂質を注入する前記段階は、粉末状タバコ積層体と少なくとも1つの脂質とを含む混合物を形成する段階と、粉末状タバコ積層体と少なくとも1つの脂質との該混合物を加熱する段階と、該加熱した混合物を段階(a)の前記混合物に追加する段階とを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。」

1b)「【0010】
更に別の形態では、タバコ成分は、粉砕又は粉末状タバコ(例えば、粉砕又は粉末状積層体又はステム又はこれらの組合せ)及びタバコ抽出物のうちの一方又は両方を含む。タバコ成分は、硬化タバコから作ることができる。」

1c)「【0028】
圧縮タバコ製品はまた、1つ又はそれよりも多くの脂質を含むことができる。脂質は、広く脂溶性の天然素材の分子として定めることができ、脂肪、油、ワックス、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びリン脂質などを含む。脂質はまた、脂肪酸及びこれらの誘導体のような分子、並びにコレステロールのような他のステロール含有代謝産物を含有する。脂質は、広く疎水性又は両親媒性の小さな分子として定めることができ、以下のカテゴリ、すなわち、脂肪アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質及びポリケチド、ステロール脂質、並びにプレノール脂質に分類することができる。
【0029】
1つの形態では、圧縮タバコ製品は、熱帯油、バター、植物油、ショートニング及びスクロースポリエステルのような非栄養合成物質から選択された1つ又はそれよりも多くの脂質を含む。1つの形態では、合成物質は、米国オハイオ州のシンシナティ所在のプロクター・アンド・ギャンブル・カンパニーから入手可能なOlean(登録商標)銘柄オレストラである。
1つの形態では、圧縮タバコ製品は、ヤシ油、ココナツ油のような他の熱帯油、又はこれらの組合せを含む。ヤシ油は、室温で固体脂肪であり、溶融すると外観は水様であるラウリン系油である。パーム核油は、最も混じりけのない味のする植物油の1つであることは公知である。ヤシ油は、高い安定性を保有し、酸化に対して耐性を示して、良好なテクスチャを有する。1つの形態では、ヤシ油は、精製され、漂白されて、防臭加工されているパーム核油である。1つの形態では、パーム核油は、約96°Fから約104°F(約35℃から約40℃)のスリップ融点を有する。1つの形態では、パーム核油は、等級P-100であり、約96°Fから約104°F(約35℃から約40℃)のスリップ融点を有する。」

1d)「【0043】
別の形態では、タバコの量は、望ましいタバコ香味を与える重量で約40%である。
別の形態では、タバコ成分は、粉砕又は粉末状タバコ及び任意的にタバコ抽出物を含む。タバコ成分は、それ自体のタバコ香味料(香味強化剤)を含むことができるが、好ましくは、香味は、組成物の1つ又はそれよりも多くの個別原料として別々に追加される。」

1e)「【0045】
タバコ配合及び処理段階は、以下の通り行うことができる。最初に、タバコ配合物が形成される。上述のように、タバコは、Bright、Burley、「Dark Air Cured」、又はOrientalタバコの配合物を含むことができ、又は上述のタバコの単一種を配合物の代わりに用いることができる。タバコは、硬化してもよいし硬化しなくてもよいが、硬化タバコが好ましい。タバコ成分は、タバコ積層体及びステムの一方又は両方を含むことができ、粉砕改良ステムを含むことができる。」

1f)「【0047】
粉砕段階後に、タバコ成分は、あらゆる好ましい技術によって加熱する(半殺菌する)ことができる。例えば、タバコ成分は、高圧、熱及び蒸気の一方又は両方によって加熱することができる。1つの形態では、加熱段階は、約1から約2時間の間約170°Fから約190°F(約77℃から約88℃)の温度で行われる。他の加熱技術を用いることもできる。加熱の後に、タバコ成分は、必要になるまで室温で又はほぼ室温で保存することができる。1つの形態では、脂質注入は、加熱段階の前に粉末状タバコ積層体及び少なくとも1つの脂質を含む混合物を形成することにより、並びに粉末状タバコ積層体及び少なくとも1つの脂質の混合物を加熱することによって達成される。任意的なpH調整剤を加熱段階前に混合物に追加することができる。加熱混合物は、次に、以下に説明する成分の初期製剤に用いることができる。
【0048】
1つの形態では、タバコ成分は、少なくとも1つの充填剤-結合剤、少なくとも1つの香味料、少なくとも1つの潤滑剤、及び少なくとも1つの流動促進剤を含む成分の初期製剤と乾燥配合される。」

1g)「【0056】
1つの形態では、押圧作動後に、圧縮タバコ製品は、熱い脂質混合物を含有する油浴に置くことができる。熱い液体脂質は、タブレットの割れ目空間を充填し、タバコマトリックスから油溶性物質を抽出し、これらを脂質に組み込む。このようにして、脂質は、圧縮タバコマトリックスに熱い脂質混合物を含浸又は注入する。油浴は、約40℃から約80℃、又は約50℃から約70℃、又は約55℃から約65℃の温度で維持される。圧縮タバコ製品は、脂質注入の適切なレベルを達成するように、約5分から約25分、又は約10分から約20分までの間油浴に残る。」

1h)「【0057】
注入段階の後に、圧縮タバコ製品は、加熱段階を受けて、液化脂質が毛管作用を通じてタブレット間隙に均等に堆積することを可能にする。加熱は、多数の方法で達成することができる。1つの形態では、加熱段階は、約30℃から約70℃、又は約40℃から約60℃、又は約45℃から約55℃の温度で維持されたオーブンで行われる。圧縮タバコ製品は、水分の低レベル(約5%未満)を達成するように、約5分から約25分、又は約10分から約20分までの間オーブンに残る。オーブン加熱段階の後に、圧縮タバコ製品は、冷却してもよい。別の形態では、加熱段階を省略して、注入後冷却を室温で行う。このようにして冷却する時に、この脂質混合は、それ程深くは浸透することなく、その代わりにタバコマトリックスの表面上に魅力的で薄い滑らかなシェルを形成する。」

1i)「【0059】
タブレットが冷えて脂質が固化すると、溶解物質は、圧縮タバコ製品が口中に置かれるまでここで固体脂質と共に残る。口中で脂質が融解した状態で、溶解香味が、次に、舌及び口腔粘膜を被覆する液体脂質のままで圧縮タバコ製品を出ることを可能にし、心地よい滑らかな口当たりを提供する。疎水性脂質はまた、タブレットの内部への唾液の移動を抑制し、溶解を滑らかにしてタバコマトリックスの剥離を低下させ、従来の圧縮タバコ製品の濁ったテクスチャを生じる。更に、多くの香味及び芳香は、疎水性であり、従って、水性唾液溶解のみを用いて従来の圧縮タバコ製品から解放するのは困難である。代替的に、油は、これらの香味及び芳香が口及び鼻後方の嗅覚環境内で容易に広がることを可能にする。疎水性香味油は、直接注入脂質配合物に追加するか注入後にスプレーすることができる。
【0060】
他の形態では、脂質マトリックスは、スプレーを通じて又はカスケードコーティングを通じて加熱パン被覆機を用いて単一コーティングとして圧縮後に追加することができる。タバコ固体、香味、又はこれらの組合せは、コーティング脂質に追加して、容易に口中融解タバコ香味シェルを形成することができる。」

1j)「【0089】
製品試験は、脂質注入圧縮タバコ製品が、香味及びテクスチャ特質の改良をもたらすことを示している。更に、よりきれいで滑らかな溶解特性が、口中で達成される。」

以上の記載を総合すると、引用文献1には、以下の2つの発明(物の発明と、方法の発明)が記載されていると認められる。

(引用発明A)
「経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物であって、
タバコ成分及び少なくとも1つの脂質を含み、
前記タバコ成分がタバコ抽出物を含む、
溶解特性が口中で達成される溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物。」

(引用発明B)
「経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物の製造方法であって、
粉砕または粉末状の少なくとも1つのタバコ成分を含む混合物(a)を圧縮して形成された圧縮タバコ製品に、少なくとも1つの脂質を注入する段階を含み、
前記注入の段階とは、加熱段階の前に粉末状タバコ積層体及び少なくとも1つの脂質を含む混合物を形成して、当該混合物を加熱する段階と、前記混合物(a)は、加熱した当該混合物と乾燥配合される段階とを含むものであって、
前記注入の段階を経て得られた配合物は冷却された後、前記組成物を形成する段階を含み、
前記タバコ成分はタバコ抽出物を含む、方法。」

2.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明Aとを対比すると、次のことがいえる。
引用発明Aにおける「経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物」、「脂質」、「タバコ抽出物」は、本願発明1における「使用者の口の中へ挿入するように構成され、前記口の中で液化することが可能である、溶融可能な無煙タバコ組成物」、「脂質」、「タバコ抽出物」にそれぞれ相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明Aとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「使用者の口の中へ挿入するように構成され、前記口の中で液化することが可能である、溶融可能な無煙タバコ組成物であって、前記タバコ組成物が、タバコ抽出物と、脂質とを含有する、無煙タバコ組成物。」

(相違点1)
本願発明1の「脂質」は、無煙タバコ組成物について、「29℃?49℃の融点を有する少なくとも30乾燥重量%の脂質とを含有する」と特定しているのに対して、引用発明Aの「脂質」は、その融点及び含有量が不明な点。

イ 判断
上記相違点1について検討すると、引用発明Aにおいて使用し得る具体的な脂質とその融点について、引用文献1の開示をみるに、その段落0028,0029には、脂質について多くの選択肢が列挙されているものの、例えば熱帯油、バター、植物油、ショートニングという一般的な用語からは、具体的に使用する油脂名やその融点の数値範囲が定まらないことは明らかであるから、引用文献1の開示から本願発明1にいう29℃?49℃の融点を有する特定の脂質が導き出されるとはいえない。
そして、引用発明Aにおいて設計し得る具体的な脂質の含有率について、引用文献1の開示をみるに、引用文献1の請求項1には、タバコ成分、香味料、充填剤-結合剤、甘味料、潤滑剤、流動促進剤の含有量の範囲又は上限が記載されているものの、引用文献1には、少なくとも30乾燥重量%の脂質を含有させる点について明示的な記載はない。脂質以外の上述した各成分量を開示された範囲で低く設定すれば、計算上は脂質含有量が30乾燥重量%以上となり得るものの、引用文献1の段落0056、0057に記載の脂質混合物を含浸又は注入する方法は、押圧作動後に圧縮タバコ製品を熱い脂質混合物を含有する油浴に置く方法であって、段落0057の「このようにして冷却する時に、この脂質混合は、それ程深くは浸透することなく、その代わりにタバコマトリックスの表面上に魅力的で薄い滑らかなシェルを形成する。」という記載からも分かるとおり、含浸又は注入後の脂質量はかなり制限されたものとなることを勘案すると、引用文献1において、脂質の含有量が30乾燥重量%以上になるとはいえないし、脂質の含有量を30乾燥重量%以上とする動機付けもない。
このことは、引用文献1の段落0059、0060に記載の脂質をスプレー又はコーティングをする方法についても同様である。
以上のことを踏まえて総合的に検討すると、引用発明Aにおいて、引用文献1の記載から、当業者が29℃?49℃の融点を有する特定の脂質を選択し、かつ、無煙タバコ組成物に対してその含有量を30乾燥重量%以上とする動機付けがなく、本願発明1は、引用発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?19について
本願発明2?19は、本願発明1を直接的に又は間接的に引用する発明であり、本願発明1と同一の構成を備える以上、本願発明1と同じ理由により、本願発明2?19は、引用発明Aに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明20について
ア 対比
本願発明20と引用発明Bとを対比すると、次のことがいえる。
引用発明Bにおける「経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物の製造方法」、「脂質」、「タバコ抽出物」は、本願発明20における「使用者の口の中に挿入するために構成された溶融性無煙タバコ組成物を調製するためのプロセス」、「脂質」、「タバコ抽出物」にそれぞれ相当する。
そうすると、本願発明20と引用発明Bとの間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「脂質と、タバコ抽出物を含む、経口摂取のための溶解可能圧縮タバコ製品を形成する組成物の製造方法。」

(相違点2)
本願発明20は、「29℃?49℃の融点を有する脂質を溶融して、溶融した脂質組成物を形成することと、前記溶融した脂質組成物とタバコ抽出物を混合して、溶融した無煙タバコ組成物を形成することと、前記溶融した無煙タバコ組成物を冷却して、固形化した無煙タバコ組成物を形成することとを含む」のに対して、引用発明Bは、タバコ抽出物においてそのような段階を含まず、粉砕または粉末状の少なくとも1つのタバコ成分を含む混合物(a)を圧縮して形成された圧縮タバコ製品に、少なくとも1つの脂質を注入する段階を含み、前記注入の段階とは、加熱段階の前に粉末状タバコ積層体及び少なくとも1つの脂質を含む混合物を形成して、当該混合物を加熱する段階と、前記混合物(a)は、加熱した当該混合物と乾燥配合される段階とを含むものであって、前記注入の段階を経て得られた配合物は冷却された後、前記組成物を形成する段階を含む点。

イ 判断
上記相違点2について検討すると、引用発明Bにおいて前記タバコ成分にタバコ抽出物を含有させるとしても、引用文献1にはタバコ抽出物をどのように処理するかについて特に記載はないので、粉砕または粉末状の少なくとも1つのタバコ成分を含む混合物(a)を圧縮して形成された圧縮タバコ製品に少なくとも1つの脂質を注入する上記段階に代えて、29℃?49℃の融点を有する脂質を溶融して、溶融した脂質組成物を形成し、前記溶融した脂質組成物とタバコ抽出物を混合して、溶融した無煙タバコ組成物を形成し、前記溶融した無煙タバコ組成物を冷却して、固形化した無煙タバコ組成物を形成する動機付けがなく、単なる設計的な事項ともいえないので、本願発明20は、引用発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本願発明21?28について
本願発明21?28は、本願発明20を直接的に又は間接的に引用する発明であり、本願発明20と同一の構成を備える以上、本願発明20と同じ理由により、本願発明21?28は、引用発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.まとめ
以上のとおり、本願発明1?28は、引用発明A又は引用発明Bに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審により通知した拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-21 
出願番号 特願2014-548819(P2014-548819)
審決分類 P 1 8・ 4- WY (A24B)
P 1 8・ 121- WY (A24B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 宮崎 賢司
莊司 英史
発明の名称 溶融性無煙タバコ組成物  
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所  
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