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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06N
管理番号 1348280
審判番号 不服2018-4054  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-23 
確定日 2019-02-12 
事件の表示 特願2015-172197「事象判定装置及び数量予測システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日出願公開,特開2017- 49779,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成27年9月1日の出願であって,
平成28年7月26日付けで審査請求がなされ,平成29年6月15日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成29年8月23日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成29年12月19日付けで審査官により拒絶査定がなされ(謄本送達;平成29年12月26日),これに対して平成30年3月23日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成30年5月23日付けで審査官により特許法第164条第3項の規定に基づく報告がなされ,平成30年11月6日付けで上申書の提出があったものである。

第2.原審拒絶査定の概要
原審拒絶査定(平成29年12月19日付けの拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1?本願の請求項6に係る発明は,以下の引用文献1?引用文献5に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-123460号公報
2.佐々木仁,外4名,
“SVMに基づく画像認識処理のGPUを用いた高速化手法”,
DAシンポジウム 2011 情報処理学会シンポジウムシリーズ,
一般社団法人情報処理学会,2011年08月24日,第2011巻,第5号,
pp.153-158
3.森秀樹,外1名,“クラスタ冗長による耐故障性木構造プロセッサ”,
電子情報通信学会技術研究報告CPSY91-62~70 コンピュータシステム,
社団法人電子情報通信学会,1992年01月31日,第91巻,第463号,
pp.33-39
4.特開平08-106448号公報
5.特開2009-251779号公報

第3.審判請求時の補正について
平成30年3月23日付けの手続補正(以下,これを「本件手続補正」という)により,補正前の請求項1,及び,補正前の請求項4の,
「機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する分類器プログラムがそれぞれロードされた複数のコアを備えるGPU」,
という記載が,
「機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPU」,
と補正され(補正事項1),補正前の請求項1,及び,補正前の請求項4の,
「複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて並列処理させる制御手段」,
という記載が,
「複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて,該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段」,
と補正されている(補正事項2),
上記補正事項1,及び,補正事項2について検討すると,補正事項1は,本願明細書の段落【0026】,及び,段落【0032】に記載された事項に基づくものであり,補正事項2は,本願明細書の段落【0032】に記載された事項に基づくものであって,
補正事項1は,本願の請求項1,及び,請求項4に記載の発明における発明特定事項である「分類器プログラム」を限定するものであり,補正事項2は,同じく,本願の請求項1,及び,請求項4に記載の発明における発明特定事項である「制御手段」の機能を限定するものであるから,本件手続補正は,願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲,及び,図面の記載の範囲内でなされたものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって,本件手続補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
そして,「第4.本願発明について」から「第6.本願発明と引用発明との対比及び相違点についての判断」において検討するとおり,補正後の請求項1?補正後の請求項6に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。

第4.本願発明について
本願の請求項1?本願の請求項6に係る発明(以下,これを「本願発明1?本願発明6」という)は,本件手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項6に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

「 【請求項1】
教師データに基づき生成され,機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと,
前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて,該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と,
前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段と
を具備することを特徴とする事象判定装置。
【請求項2】
前記GPUの複数のコアは,第1群の複数のコアと,第2群の複数のコアと,・・・,第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され,
前記第1群の複数のコアには,第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ,
前記第2群の複数のコアには,第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ,
・・・
前記第N群の複数のコアには,第(N-1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する請求項1に記載の事象判定装置。
【請求項3】
前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果,前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果,・・・,前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を,それぞれ多数決により決定することを特徴とする請求項2に記載の事象判定装置。
【請求項4】
教師データに基づき生成され,機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPUと,前記複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて,該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御手段と,前記同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段とを具備する事象判定装置を備え,
前記分類器プログラムを,入力情報が所定数値を基準として大小の分類を行う構成とし,分類結果を判定手段により判定して数量を予測することを特徴とする数量予測システム。
【請求項5】
前記GPUの複数のコアは,第1群の複数のコアと,第2群の複数のコアと,・・・,第N(Nは2以上の整数)群の複数のコアとにより構成され,
前記第1群の複数のコアには,第1の数値以上であるか否かの分類を行う第1の分類器プログラムがそれぞれロードされ,
前記第2群の複数のコアには,第1の数値より大きい第2の数値以上であるか否かの分類を行う第2の分類器プログラムがそれぞれロードされ,
・・・
前記第N群の複数のコアには,第(N-1)の数値より大きい第Nの数値以上であるか否かの分類を行う第Nの分類器プログラムがそれぞれロードされることを特徴する請求項4に記載の数量予測システム。
【請求項6】
前記第1群の複数のコアの第1の分類器プログラムによる処理結果,前記第2群の複数のコアの第2の分類器プログラムによる処理結果,・・・,前記第N群の複数のコアの第Nの分類器プログラムによる処理結果を,それぞれ多数決により決定することを特徴とする請求項5に記載の数量予測システム。」

第5.引用文献に記載の事項及び引用文献に記載の発明
1.引用文献1について
(1)引用文献1に記載の事項
引用文献1には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

A.「【0070】
また,さらに高い精度で年代を推定する技術として,前述の2クラス判別器を利用した以下の手法がある。
【0071】
まず,検索特徴情報管理部130は,年齢を推定するために事前に識別したい年齢ごとの顔画像を予め保持する。たとえば,10歳から60歳前後までの年代の判別を行う場合,検索特徴情報管理部130は,10歳未満から60歳以上までの顔画像をあらかじめ保持する。ここでは,検索特徴情報管理部130が保持する顔画像の枚数が多くなるほど,年代判別の精度を向上させることができる。さらに,検索特徴情報管理部130は,幅広い年代の顔画像を予め保持することにより,判別できる年齢を広げることができる。
【0072】
次に,検索特徴情報管理部130は,「基準年齢より上か下か」の判別をするための識別器を準備する。検索特徴情報管理部130は,線形判別分析などを用いて2クラスの判別をイベント検出部120に行わせることができる。
【0073】
また,イベント検出部120及び検索特徴情報管理部130は,サポートベクターマシン(Support Vector Machine)などの手法を用いる構成であってもよい。なお,以下サポートベクターマシンをSVMと称する。SVMでは,2クラスを判別する為の境界条件を設定し,設定された境界からの距離にあるかを算出することができる。これにより,イベント検出部120及び検索特徴情報管理部130は,基準とする年齢N歳より上の年齢に属する顔画像と,下の年齢に属する顔画像とを分類することができる。
【0074】
たとえば,30歳を基準年齢としたときに,検索特徴情報管理部130は,30歳より上か下かを判別するための画像群を予め保持する。例えば,検索特徴情報管理部130には,30歳以上を含む画像が正のクラス「30歳以上」の画像として入力される。また,検索特徴情報管理部130には,負のクラス「30歳未満」の画像が入力される。検索特徴情報管理部130は,入力された画像に基づいて,SVM学習を行う。
【0075】
上記した方法により,検索特徴情報管理部130は,基準年齢を10歳から60歳までずらしながら辞書の作成を行う。これにより,検索特徴情報管理部130は,例えば図3に示すように,「10歳以上」,「10歳未満」,「20歳以上」,「20歳未満」,・・・「60歳以上」,「60歳未満」の年代判別用の辞書を作成する。年代判別部124は,検索特徴情報管理部130により格納されている複数の年代判別用の辞書と入力画像とに基づいて入力画像の人物の年代を判別する。
【0076】
検索特徴情報管理部130は,基準年齢を10歳から60歳までずらしながら準備した年代判別用の辞書の画像を基準年齢にあわせて二つに分類する。これにより,検索特徴情報管理部130は,SVMの学習器を基準年齢の数に応じて準備することができる。なお,本実施例では,検索特徴情報管理部130は,10歳から60歳まで6個の学習器を準備する。
【0077】
検索特徴情報管理部130は,「X歳以上」とするクラスを「正」のクラスとして学習することで,「基準年齢より年齢が上の画像が入力されると指標はプラスの値を返す」ようになる。この判別処理を基準年齢を10歳から60歳までずらしながら実行していくことにより,基準年齢に対して上か下かの指標を得ることができる。また,この出力された指標の中で,もっとも指標がゼロに近いところが出力すべき年齢に近いことになる。
【0078】
ここで年齢の推定方法を図4に示す。イベント検出部120の年代判別部124は,各基準年齢に対するSVMの出力値を算出する。さらに,年代判別部124は,縦軸を出力値,横軸を基準年齢として出力値をプロットする。このプロットに基づいて年代判別部124は,入力画像の人物の年齢を特定することができる。
【0079】
例えば,年代判別部124は,出力値が最もゼロに近いプロットを選択する。図4に示す例によると,基準年齢30歳がもっともゼロに近い。この場合,年代判別部124は,「30代」を入力画像の人物の属性として出力する。また,プロットが不安定に上下に変動する場合,年代判別部124は,隣接する基準年齢との移動平均を算出することにより,安定して年代を判別することができる。
【0080】
また,例えば,年代判別部124は,隣り合う複数のプロットに基づいて近似関数を算出し,算出された近似関数の出力値が0である場合の横軸の値を推定年齢として特定する構成であってもよい。図4に示す例によると,年代判別部124は,プロットに基づいて直線の近似関数を算出することにより交点を特定し,特定した交点からおよそ33歳という年齢を特定することができる。
【0081】
また,年代判別部124は,部分集合(たとえば隣接する3つの基準年齢に対するプロット)に基づいて近似関数を算出するのではなく,全てのプロットに基づいて近似関数を算出する構成であってもよい。この場合,より近似誤差が少ない近似関数を算出することができる。
【0082】
また,年代判別部124は,所定の変換関数を通して得られた値でクラスを判別する構成であってもよい。」

(2)引用文献1に記載の発明
上記Aの「検索特徴情報管理部130は,年齢を推定するために事前に識別したい年齢ごとの顔画像を予め保持する。たとえば,10歳から60歳前後までの年代の判別を行う場合,検索特徴情報管理部130は,10歳未満から60歳以上までの顔画像をあらかじめ保持する」という記載,同じく,上記Aの「検索特徴情報管理部130は,「基準年齢より上か下か」の判別をするための識別器を準備する。検索特徴情報管理部130は,線形判別分析などを用いて2クラスの判別をイベント検出部120に行わせることができる」という記載,同じく,上記Aの「イベント検出部120及び検索特徴情報管理部130は,サポートベクターマシン(Support Vector Machine)などの手法を用いる構成であってもよい。なお,以下サポートベクターマシンをSVMと称する。SVMでは,2クラスを判別する為の境界条件を設定し,設定された境界からの距離にあるかを算出することができる。これにより,イベント検出部120及び検索特徴情報管理部130は,基準とする年齢N歳より上の年齢に属する顔画像と,下の年齢に属する顔画像とを分類することができる」という記載,同じく,上記Aの「検索特徴情報管理部130は,入力された画像に基づいて,SVM学習を行う」という記載,同じく,上記Aの「検索特徴情報管理部130は,例えば図3に示すように,「10歳以上」,「10歳未満」,「20歳以上」,「20歳未満」,・・・「60歳以上」,「60歳未満」の年代判別用の辞書を作成する。年代判別部124は,検索特徴情報管理部130により格納されている複数の年代判別用の辞書と入力画像とに基づいて入力画像の人物の年代を判別する」という記載,及び,同じく,上記Aの「検索特徴情報管理部130は,基準年齢を10歳から60歳までずらしながら準備した年代判別用の辞書の画像を基準年齢にあわせて二つに分類する。これにより,検索特徴情報管理部130は,SVMの学習器を基準年齢の数に応じて準備することができる。なお,本実施例では,検索特徴情報管理部130は,10歳から60歳まで6個の学習器を準備する」という記載から,引用文献1には,次の発明(以下,これを「引用発明」という)が記載されているものと認める。

「検索特徴情報管理部130は,年齢を推定するために事前に識別したい年齢ごとの顔画像を予め保持し,
前記画像に基づいてSVM学習を行って,年齢判別用の辞書を作成し,
年代判別部124は,前記年齢用の辞書を用いて,入力画像の人物の判別を行う,装置であって,
前記検索特徴管理部130は,判別したい年代の数に応じて,SVM学習器を準備することができる,装置。」

2.引用文献2について
引用文献2には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

B.「画像認識方式の一つとして,パターン認識に有効な学習モデルであるSVM(Support Vector Machine)【1】を採用する手法が注目されている。SVMは,学習サンプルと分類境界の間隔を最大にするように境界を決定するため,大域的な最適解を求めることが可能となり,過学習しにくい点に特徴がある。また,学習サンプルの次元数が高くても対応可能で,汎化能力も高い。これらの特徴からSVMに基づく画像認識処理は,一般に高い認識性能を示している。しかし,SVMでは多数のサンプルについて学習を行うと,学習処理時間のみならず分類処理時間も増加して,実時間処理が困難な場合がある。これは,実時間処理性能が求められる画像認識処理システムでは問題がある。
本稿では,GPU(Graphics Processing Unit)を汎用演算に用いることで,高速化を実現するGPGPU(GeneralPurpose computing on GPUs)に注目し, SVMに基づく画像認識処理の高速化を実現する手法を提案する。提案手法では,SVMに基づく画像認識処理に関して,演算負荷や並列度の高い処理の一部に対してGPUを適用することで,高速化を実現する。提案手法を用いることで,認識率向上のために学習量を増加させた場合でも,実時間処理を実現する。」(153頁左欄6行?右欄12行)

C.「本稿で適用した,NVIDIA社のGeForce GT 240と呼ばれるGPUのアーキテクチャについて述べる。GeForce GT240には,図1に示すストリーミング・マルチプロセッサ(SM)が12個搭載されている。SMは,8個の単精度演算を行うストリーミング・プロセッサ(SP),1個の倍精度演算器(DPU),シェアードメモリと呼ばれる16 KBの小容量のメモリから構成される。
図2にCUDAのプログラミングモデルを示す。CUDAはグリッド,ブロック,スレッドという階層構造をもつ。最も大きな処理単位であるグリッドは,並列には動作しない。しかし,グリッドに含まれるブロック,ブロックに含まれるスレッドは並列に動作する。また,グリッドに生成可能な最大ブロック数は65,535^(2)個であり,ブロックに生成可能な最大スレッド数は512個である。このことから,グリッドに生成することのできるスレッド数は最大で65,535^(2)×512個に及ぶ。CUDAでは,ブロックをSMに割り当て,スレッドをSPに割り当てて,処理する。」(154頁左欄9行?左欄25行)

3.引用文献3について
引用文献3には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

D.「本方式では,まず,親ノード処理時には6個で6重化多数決を行い,かつ,多数決に一致しないセルを故障セルとして認識する。引き続き,子ノード処理時には3個ずつ2組とし,それぞれで左右の子ノード処理を同時に3重化多数決を介して実行する。各クラスタ毎に2個までのセル故障が許容される。 2個までのセル故障の故障パターンの数は_(6)C_(2) =15(2個故障時)と_(6)C_(1)=6(1個故障時)であり,合計21パターンがある。 クラスタ内の6個のセルのセル・インデックスを1?6とし,クラスタ内でどのように多数決をとって演算するかを図4に示す。演算は2分木の親ノードとしての演算を行うステップτ_(1)と2個の子供に対する演算を行うステップτ_(2)の2ステップの繰り返しで行われる。親ノードとしての演算ステップ時には,多数決を6個のセル全体を対象にして行い,これを用いて演算する。」(34頁左欄20行?左欄38行)

4.引用文献4について
引用文献4には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

E.「【0031】この実施例の場合,通常,入力切替え部204は気象レーダ101により計測したレーダ画像を学習・予測部203への入力として選択するように設定されている。予測時間指定部205は,予測する時刻に関する情報tをレーダ画像とともに学習・予測部203に与える。この結果,固定時間間隔ではなく,学習した時刻に応じた任意の時間後の予測が可能になる。例えば学習時に5分から最大30分までの予測時間を表す指標を与えて学習した場合,30分までは1回の神経回路網モデルへの入力で予測結果を得ることができる。30分より先の時刻のレーダ画像を予測する場合には,学習・予測部203により予測した30分後のレーダ画像を入力切替え部204を介して学習・予測部203に与え,必要な次の予測時間を指定して学習・予測部203による予測を繰り返すことにより,不等間隔の時刻におけるレーダ画像を少ない計算量で予測する。」

5.引用文献5について
引用文献5には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。

F.「【0029】
なお,本発明による販売数予測システムの好ましい一態様は,例えば,1つ以上の販売条件と複数の商品またはサービスの過去の売上とを示す情報を記憶した売上データベースと,売上データベースの情報に基づいて,属性を販売条件,ラベルを1つの商品またはサービスが販売されれば第1ラベル,販売されなければ第2ラベルとして,時系列的な短期間における属性とラベルとの組である短期データの組を生成する短期データ群生成部と,短期間データの組に基づいて長期データを生成する長期データ生成部と,長期間のデータの属性からラベルを判定するルールであって第1ラベルらしさ(または第2ラベルらしさ)の実数値であるスコアを出力する分類器を生成する長期分類器生成部と,分類器で各短期データのスコアを算出し,各短期データのラベルとスコアとに基づいて,スコアの閾値を算出する短期閾値群推定部と,閾値の時系列的な変化を解析する時系列解析部と,長期データの属性に基づいて生成された仮想的な販売条件である仮想データの属性と予測対象時刻の販売条件とに基づいて,仮想短期データを生成する仮想短期データ生成部と,仮想短期データと分類器とに基づいて,スコアを算出するスコア算出部と,時系列解析部での解析に基づいて,予測対象時刻の閾値を推定する閾値推定部と,スコア算出部で算出されたスコアと閾値とに基づいて,予測対象時刻の販売数を予測する販売数予測部とを備えることを特徴とする。」

第6.本願発明と引用発明との対比及び相違点についての判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア.引用発明において保持される「顔画像」は,「SVM学習」のために用いられるものであるから,本願発明1における「教師データ」に相当する。

イ.引用発明において,「年代判定部124」は,入力された「顔画像」が,「判別」するために,「SVM学習」の結果である「年齢判別用の辞書」を用いるものであるから,本願発明1における「分類器プログラム」と,“分類手段”である点で共通する。

ウ.引用発明においても「検索特徴管理部130」,「年代判定部124」を制御するための“制御部”を有することは明らかであるから,
引用発明における“制御部”と,本願発明1における「制御手段」とは,
“分類処理を行わせる制御構成”である点で共通する。

エ.以上,上記ア.?ウ.において検討した事項から,本願発明1と,引用発明との,一致点,及び,相違点は,次のとおりである。

[一致点]
教師データに基づき生成され,機械学習を用いて入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する分類手段と,
入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる制御構成とを有する,装置。

[相違点1]
“分類手段”に関して,
本願発明1においては,「同一の分類器プログラムがそれぞれロードされたコアを複数備えるGPU」を有するものであるのに対して,
引用発明においては,上記の如き「GPU」に関しては,言及されていない点。

[相違点2]
“制御構成”に関して,
本願発明1においては,「複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて,該入力情報に基づき2つの事象のいずれかに分類する処理を並列処理させる」ものであるのに対して,
引用発明においては,“複数のコアの分類器プログラムへ同一の入力情報を与えて,分類する処理を並列処理させる”構成については,言及されていない点。

[相違点3]
本願発明1は,「同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段」を有するものであるのに対して,
引用発明は,当該「判定手段」については,言及されていない点。

(2)相違点についての当審の判断
事案に鑑みて,上記[相違点3]について先に検討すると,[相違点3]に係る本願発明1の「同一の入力情報が前記複数のコアの分類器プログラムにより処理された結果を統計処理して事象判定を行う判定手段」という構成は,上記引用文献1?引用文献5には記載されておらず,本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって,本願発明1は,[相違点1],及び,[相違点2]を検討するまでもなく,当業者であっても引用発明,引用文献2?引用文献5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2,及び,引用発明3について
本願の請求項2,及び,本願の請求項3は,本願の請求項1を直接・間接に引用するものであるから,本願発明2,及び,本願発明3は,共に,「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての当審の判断」において検討した,[相違点3]に係る構成を有している。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2?引用文献5に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明4?本願発明6について
本願発明4は,「数量予測システム」に係る発明であるが,本願発明1と同等の構成を有するものであって,「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての当審の判断」において検討した,[相違点3]に係る構成を有している。
そして,本願の請求項5,及び,本願の請求項6は,本願の請求項1を直接・間接に引用するものであるから,本願発明5,及び,本願発明6は,共に,「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての当審の判断」において検討した,[相違点3]に係る構成を有している。
したがって,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2?引用文献5に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7.原審拒絶査定についての判断
・理由1(特許法第29条第2項)について
上記「第6.本願発明と引用発明との対比及び相違点についての判断」において検討したとおり,本願発明1?本願発明6は,[相違点3]に係る構成を有しているので,当業者であっても,原審拒絶査定において引用された引用文献1?引用文献5に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原審拒絶査定の理由1を維持することはできない。

第8.むすび
以上のとおり,原審拒絶査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-30 
出願番号 特願2015-172197(P2015-172197)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 多胡 滋  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 石井 茂和
山崎 慎一
発明の名称 事象判定装置及び数量予測システム  
代理人 本田 崇  
代理人 松浦 孝  
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