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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F25D
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 F25D
管理番号 1348295
審判番号 不服2017-17241  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-21 
確定日 2019-02-05 
事件の表示 特願2016- 87993号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-164488号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年10月6日(優先権主張 平成21年3月27日、平成21年6月4日)に出願した特願2009-232440号の一部を、平成26年11月4日に新たな特許出願とした特願2014-224063号の一部を、平成28年4月26日に新たな特許出願としたものであって、平成28年5月17日に手続補正がされ、平成29年1月18日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年3月24日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成29年8月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、その後、平成30年9月5日付けで当審より拒絶理由通知がされ、平成30年10月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
1.理由1(特許法第17条の2第3項)
平成28年5月17日提出の手続補正書及び平成29年3月24日提出の手続補正書でした補正は、下記第5の1.の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(これらを以下、「当初明細書」、「当初特許請求の範囲」、「当初図面」といい、これらを総称して「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.理由2(進歩性)
本件出願の請求項1に係る発明は、引用文献1(特開2008-292136号公報)に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 当審拒絶理由の概要
本件出願は、特許請求の範囲の請求項1に係る発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年10月18日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室を有する冷蔵庫において、
ミストを放出するミスト放出部と、前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置とを有する構成の静電霧化装置を備え、
前記静電霧化装置は前記野菜室の上方に位置する仕切る仕切板に設置され、前記仕切板の下方には当該仕切板の下面に沿って前記野菜室内の冷気を流す冷気通路が設けられ、
前記ミスト放出部は下方に向けられ、前記静電霧化装置の放出口は前記ミスト放出部の下方に位置させて下向きに設けられ、前記放出口の下方には板があり、その板にあって前記放出口の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記板にあって前記放出口の下方に位置させて当該放出口と連通するミスト放出口が設けられ、
前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミストは、前記放出口から前記ミスト放出口を経て、前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、前記冷気通路を通って循環する構成としたことを特徴とする冷蔵庫。」

第5 原査定についての判断
1.理由1(特許法第17条の2第3項)
原査定によれば、「平成28年5月17日付けの手続補正、及び平成29年3月24日付けの手続補正によって、明細書及び特許請求の範囲に「前記静電霧化装置は貯蔵室を仕切る仕切板に設置され、前記仕切板の下方には当該仕切板の下面に沿って貯蔵室を循環する冷気が流れ」(以下、「発明特定事項A」という。)、「前記ミスト放出部は下方に向けられ、前記静電霧化装置の放出口は前記ミスト放出部の下方に位置させて下向きに設けられ、前記放出口の下方には板があり、その板にあって前記放出口の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記板にあって前記放出口の下方に位置させて当該放出口と連通するミスト放出口が設けられ」(以下、「発明特定事項B」という。)、「前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミストは、冷気に引き込まれて循環する」(以下、「発明特定事項C」という。)等の発明特定事項が追加されたが、これらの発明特定事項をすべて備える冷蔵庫は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には開示されていない。
すなわち、上記発明特定事項Bは、第1の実施形態の図6に示された静電霧化装置が備えるものであるのに対し、上記発明特定事項A及びCは、第9の実施形態(段落0098ないし0102、図22)の冷蔵庫が備えるものである。そして、第9の実施形態には、段落0100に「そして、前記ベース板37には、霧化ユニット38の下方に位置させてミスト放出口203を設けている。このミスト放出口203は、霧化ユニット38におけるミスト放出部49(図6参照)の下方、この場合ほぼ真下で、かつ前記冷気通路201に上方から臨む位置に設けている。」のように、図6の静電霧化装置(発明特定事項Bの「その板にあって前記放出口の下方に対応する位置は閉鎖されている」ような静電霧化装置)とは異なる形態の静電霧化装置を用いることが記載されている。
よって、上記発明特定事項A、B、Cを全て備える冷蔵庫は、当初明細書等には記載されておらず、当初明細書等の記載から当然に導き出せる自明なものであるともいえない。」と判断されている。

そこで、当審では、判断の前提として、上記第4における本願発明を以下のとおり分説する。
(発明特定事項1)
「冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室を有する冷蔵庫において、
ミストを放出するミスト放出部と、前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置とを有する構成の静電霧化装置を備え、」
(発明特定事項2)
「前記静電霧化装置は前記野菜室の上方に位置する仕切る仕切板に設置され、前記仕切板の下方には当該仕切板の下面に沿って前記野菜室内の冷気を流す冷気通路が設けられ、」
(発明特定事項3)
「前記ミスト放出部は下方に向けられ、前記静電霧化装置の放出口は前記ミスト放出部の下方に位置させて下向きに設けられ、前記放出口の下方には板があり、その板にあって前記放出口の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記板にあって前記放出口の下方に位置させて当該放出口と連通するミスト放出口が設けられ、」
(発明特定事項4)
「前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミストは、前記放出口から前記ミスト放出口を経て、前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、前記冷気通路を通って循環する構成」

まず、当初明細書の段落0010?0043、当初図面の図1?7に記載の第1の実施形態が、発明特定事項1?4を備えるか否かを以下検討する。
(発明特定事項1について)
第1の実施形態は、「冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室4を有する冷蔵庫において、ミストを放出するミスト放出部49と、前記ミスト放出部49に電圧を印加する電源装置56とを有する構成の静電霧化装置36を備え」るといえる(段落0010?0012、0023?0026参照)。
(発明特定事項2について)
第1の実施形態は、「静電霧化装置36は野菜室4の上方に位置する仕切る仕切板8に設置され」る構成を備える(特に段落0017、図6参照)ものの、前記仕切板8の下方に「当該仕切板8の下面に沿って前記野菜室4内の冷気を流す冷気通路が設けられ」る構成を備えていない。
(発明特定事項3について)
第1の実施形態は、「ミスト放出部49は下方に向けられ、静電霧化装置36の放出口51は前記ミスト放出部49の下方に位置させて下向きに設けられ、前記放出口51の下方にはベース板37があり、そのベース板37にあって前記放出口51の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記ベース板37にあって前記放出口51の下方に位置させて当該放出口51と連通するミスト放出口52が設けられ」る構成を備える(特に段落0023、図6参照)といえる。
(発明特定事項4について)
第1の実施形態は、「ミスト放出部49の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部49から放出されたミストは、前記放出口51から前記ミスト放出口52を経て、循環する構成」を備えるものの、当該放出されたミストが「前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ」る構成は備えていない。

以上検討したとおり、当初明細書の第1の実施形態、すなわち段落0010?0043の開示内容をみる限りにおいては、第1の実施形態は、発明特定事項1、3と、発明特定事項2、4の一部を備えるにとどまり、「仕切板8の下面に沿って野菜室4内の冷気を流す冷気通路が設けられ、ミスト放出口52を出たミストが冷気通路を循環する冷気に引き込まれる」点を備えていない。
しかしながら、当初明細書の第9の実施形態を説明する段落0099には、「野菜室4において、仕切板8の下方(静電霧化装置36を設置するためのベース板37の下方)には、当該仕切板8の下面に沿うようにカバー200が設けられていて、このカバー20と、仕切板8及びベース板37との間の空間部を、冷気通路201としている。この冷気通路201は、図22に矢印Dで示すように、野菜室4の後部から前方へ向けて吹き出される冷気を、野菜室4前部に収納されるペットボトル202などに送ってこれらを冷やすためのものである。」と記載されており、この記載から、「野菜室4の後部から前方へ向けて冷気を吹き出し、野菜室4前部に収納されるものを冷やす目的で、仕切板8の下方(ベース板37の下方)に、当該仕切板8の下面に沿うようにカバー200を設けて冷気通路201を形成する技術」が読み取れる。一方、第9の実施形態のミスト放出部49とミスト放出口(52、203)との位置関係について、第1の実施形態(段落0100、0102)と比較すると、前者が後者のほぼ真下にあるか否かで不一致はあるものの、野菜室4前部に収納されるものを冷やす目的で冷気通路201を形成する上記技術は、ミスト放出部49とミスト放出口(52、203)との位置関係にかかわらず一般的に採用し得る技術として当業者が理解し得るとともに、第1の実施形態においても(ベース板37より下方の構成について)野菜室4前部に収納されるものを冷やす目的で冷気通路201を形成する上記技術を両立し得る(その場合でも、ミストは下部容器72と上部容器73の両方に供給されることに変わりはない。)ことから、第1の実施形態と当該冷気通路201を形成する第9の実施形態における上記技術を併用した発明、すなわち発明特定事項1?4(本願発明)が、当業者によって、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものであるとまではいうことができない。
したがって、平成30年10月18日の手続補正後の特許請求の範囲に新規事項が追加されているとはいえない。

2.理由2(特許法第29条第2項)
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2008-292136号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、下線は理解の一助のために当審が付与した。)。

1a)「冷蔵室104は冷蔵保存のために凍らない温度を下限に通常1℃?5℃とし、野菜室107は冷蔵室104と同等もしくは若干高い温度設定の2℃?7℃としている。」(段落0036)

1b)「野菜室107は、冷蔵室104を冷却した後、その空気を冷却器112に循環させるための冷蔵室戻り風路140の途中に構成された野菜室用吐出口124から野菜室107に吐出し、上段収納容器120や下段収納容器119の外周に流し間接的に冷却し、その後、野菜室用吸込み口126から再び冷却器112に戻る。」(段落0074)

1c)「水滴が付着した霧化電極135に負電圧、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133により、この電極間に高電圧(例えば4?10kV)を印加させる。このとき電極間でコロナ放電が起こり、霧化電極135の先端の水滴が、静電エネルギーにより微細化され、さらに液滴が帯電しているためレイリー分裂により数nmレベルの目視できない電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随してオゾンやOHラジカルなどが発生する。」(段落0137)

1d)「(実施の形態7)
図9は本発明の実施の形態7における冷蔵庫の野菜室とその上部の仕切り壁の周辺部を左右に切断した場合の断面を示す要部縦断面図、図10は本発明の実施の形態7における冷蔵庫を図9のB-B線で切断し切断面を矢印方向から見た断面図、図11は本発明の実施の形態7における冷蔵庫の野菜室の上部の仕切り壁を図10のC-C線で切断し切断面を矢印方向から見た断面図である。」(段落0275)

1e)「本実施の形態においては、野菜室107が冷蔵庫100の最下部に構成され、その上部に比較的低温の冷凍温度の温度設定を行っている冷凍室108がその上に構成され、その間を仕切り壁174で仕切り、貯蔵室として区画されている。」(段落0277)

1f)「冷却室110の冷却器112で生成された冷気は、各室に冷却ファン113により搬送される。ここで本実施の形態の野菜室107は、上部の冷却器112で生成された冷気を直接もしくは他室で熱交換された戻り風路を利用して、野菜室吐出風路182を介して野菜室107に流れ、野菜室吸込み風路181から再び冷却器112に戻る。」(段落0279)

1g)「仕切り壁174は、ABSなどの樹脂で構成された野菜室側仕切り板173と冷凍室側仕切り板172とその間に断熱性を確保するための発泡スチロールやウレタンなどで構成された断熱材171で構成されている。ここで、仕切り壁174の野菜室107側の壁面の一部に他の箇所より低温になるように凹部174aを設け、その箇所に静電霧化装置131とミスト風路177が設置されている。
静電霧化装置131は、主に霧化部139、電圧印加部133で構成されている。霧化部139は、霧化電極135が設置され、霧化電極135はアルミニウムやステンレス、真鍮などの良熱伝導部材からなる電極接続部材(伝熱冷却部材)である冷却ピン134に固定され、電気的にも電圧印加部133から配線されている一端を含め接続している。」(段落0281、0282)

1h)「また、霧化電極135に対向している位置にドーナツ円盤状の対向電極136が、霧化電極135の先端と一定距離を保つように取付けられ、その延長上にミスト風路177が形成されている。」(段落0290)

1i)「ミスト風路177には、野菜室107から湿度を供給するための吸込み口183とミストを野菜室107へ噴霧するミスト吐出口176があり、このミスト吸込み口183から霧化部139に高湿な空気が流入し、霧化部139の霧化電極135は冷凍室から熱伝導で冷却ピンを介して冷却されているため、霧化電極135先端は結露する。
霧化電極135先端と対向電極136との間に高電圧を印加さえることによりミストを発生させる。
発生したミストは、ミスト風路177を通過して、ミスト吐出口176より野菜室107に噴霧される。
さらに、霧化部139と電気的に接続された電圧印加部133が構成され、高電圧を発生する電圧印加部133の負電位側が霧化電極135と、正電位側が対向電極136とそれぞれ電気的に配線、接続されている。」(段落0293?0296)

1j)「この状態で霧化電極135を負電圧側とし、対向電極136を正電圧側として、電圧印加部133によりこの電極間に高電圧(例えば7.5kV)を印加させる。このとき、電極間で空気絶縁層が破壊されコロナ放電が起こり、霧化電極135の水が電極先端から霧化し、目視できない1μm未満の電荷をもったナノレベルの微細ミストと、それに付随するオゾンやOHラジカルなどが発生する。」(段落0304)

1k)「また、霧化部139を野菜室107の収納空間内に備えず、野菜室側仕切り板173の奥側に備えているので、人の手にも触れにくいので安全性が向上させることができる。
また、本実施の形態の霧化部139は静電霧化方式によってミストを生成するものであり、高電圧等の電気エネルギーを使って水滴を分裂させ、細分化することによって微細ミストを発生させる。発生したミストは電荷を帯びているため、そのミストに野菜や果物等の付着させたい物と逆の電荷を持たすことによって、例えばプラスの電荷を持つ野菜に対してマイナスの電荷を帯びたミストを噴霧することにより、野菜や果物への付着力が向上するため、より均一に野菜表面にミストが付着するとともに、電荷を帯びていないタイプのミストと比較してミストの付着率をより向上させることが出来る。」(段落0310、0311)

1l)「


」(図9)

上記1d)、1g)、1h)、1i)、1l)の図9の記載からみて、上記静電霧化装置131は、野菜室の上方に位置する仕切り壁174に設置されているといえる。
図9の記載から、霧化電極135は横方向に向けられ、静電霧化装置131のドーナツ円盤状の対向電極136が有する開口が当該霧化電極135の横方向に対向配置されて横向きに設けられ、前記開口の下方には野菜室側仕切り板173があり、その野菜室側仕切り板173にあって前記開口の下方に対応する位置に開口又は出口は特に形成されていない、すなわち当該位置は閉鎖されている一方、前記野菜室側仕切り板173にあって前記開口の下方に位置されて当該開口と連通するミスト吐出口176が設けられていることが読み取れる。
また、上記霧化電極135先端と対向電極136との間に高電圧を印加するからには、静電霧化装置131が少なくとも「電源装置」を備えるものと認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷蔵室104と同等の温度設定の貯蔵室である野菜室107を有する冷蔵庫において、
ミストを発生させる霧化電極135と、前記霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136との間に高電圧を印加する電源装置とを有する静電霧化装置131を備え、
前記静電霧化装置131は前記野菜室107の上方に位置する仕切り壁174に設置され、
前記霧化電極135は横方向に向けられ、前記静電霧化装置131の前記ドーナツ円盤状の対向電極136が有する開口は前記霧化電極135の横方向に対向配置されて横向きに設けられ、前記開口の下方には野菜室側仕切り板173があり、その野菜室側仕切り板173にあって前記開口の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記野菜室側仕切り板173にあって前記開口の下方に位置させて当該開口と連通するミスト吐出口176が設けられ、
高電圧等の電気エネルギーを使って水滴を分裂させ、細分化することによって前記霧化電極135の先端から発生したミストは、前記開口から前記ミスト吐出口176を経て、循環する構成とした冷蔵庫。」

(2)対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「冷蔵室104と同等の温度設定の貯蔵室である野菜室107」、「冷蔵庫」、「ミストを発生させる霧化電極135」、「前記霧化電極135先端とドーナツ円盤状の対向電極136との間に高電圧を印加する電源装置」、「静電霧化装置131」は、それぞれ、本願発明における「冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室」、「冷蔵庫」、「ミストを放出するミスト放出部」、「前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置」、「静電霧化装置」に相当する。
また、引用発明における「前記野菜室の上方に位置する仕切り壁174」、「ドーナツ円盤状の対向電極136が有する開口」、「野菜室側仕切り板173」、「ミスト吐出口176」、は、それぞれ、本願発明における「前記野菜室の上方に位置する仕切る仕切板」、「放出口」、「板」、「ミスト放出口」に相当する。
さらに、「高電圧等の電気エネルギーを使って水滴を分裂させ、細分化することによって前記霧化電極135の先端から発生したミスト」、「循環」は、それぞれ、本願発明における「前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミスト」、「循環」に相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「冷蔵温度帯の貯蔵室である野菜室を有する冷蔵庫において、
ミストを放出するミスト放出部と、前記ミスト放出部に電圧を印加する電源装置とを有する構成の静電霧化装置を備え、
前記静電霧化装置は前記野菜室の上方に位置する仕切る仕切板に設置され、
前記静電霧化装置の放出口の下方には板があり、その板にあって前記放出口の下方に対応する位置は閉鎖されている一方、前記板にあって前記放出口の下方に位置させて当該放出口と連通するミスト放出口が設けられ、
前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミストは、前記放出口から前記ミスト放出口を経て、循環する構成とした冷蔵庫。」

(相違点1)
本願発明は、「前記ミスト放出部は下方に向けられ、前記静電霧化装置の放出口は前記ミスト放出部の下方に位置させて下向きに設けられ」るのに対し、引用発明は、前記霧化電極135は横方向に向けられ、前記開口は前記霧化電極135の横方向に対向配置されて横向きに設けられる点。

(相違点2)
本願発明は、「前記仕切板の下方には当該仕切板の下面に沿って前記野菜室内の冷気を流す冷気通路が設けられ」、当該ミスト放出部から放出されたミストは、「前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、前記冷気通路を通って」循環するのに対し、引用発明は、野菜室側仕切り板173の下方に上記冷気通路に相当するものが設けられておらず、上記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、上記冷気通路を通って循環する構成を備えていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、引用発明において、前記霧化電極135を下方に向けたうえで、さらに、前記開口を前記霧化電極135の下方に位置させて、下向きに設けるよう、設計変更する動機付けがなく、単なる設計事項ともいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明は、当業者といえども引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1には、「・・・当該ミスト放出部から放出されたミストは、前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、前記放出口から前記ミスト放出口、前記冷気通路を通って循環する構成としたことを特徴とする冷蔵庫。」と記載されているが、ミストが循環する経路が全体として不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月18日付けの補正において、請求項1の記載が、「・・・前記ミスト放出部の表面の水分が分裂して当該ミスト放出部から放出されたミストは、前記放出口から前記ミスト放出口を経て、前記冷気通路を循環する冷気に引き込まれ、前記冷気通路を通って循環する構成としたことを特徴とする冷蔵庫。」と補正された結果、ミストが循環する経路が全体として明確となったから、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審により通知した拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-21 
出願番号 特願2016-87993(P2016-87993)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (F25D)
P 1 8・ 55- WY (F25D)
P 1 8・ 121- WY (F25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 窪田 治彦
宮崎 賢司
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  
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