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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1348353
審判番号 不服2017-15071  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-10 
確定日 2019-01-24 
事件の表示 特願2015-229255「ユーザ操作処理装置、ユーザ操作処理方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日出願公開、特開2016- 42383〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月27日に出願した特願2012-40193号の一部を平成27年11月25日に新たな特許出願としたものであって、平成28年11月28日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月14日に手続補正がされ、同年6月14日付けで拒絶査定がされ、それに対して同年10月10日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に手続補正されたものである。

第2 平成29年10月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。
「表示画面に表示される表示オブジェクトに対する移動指示操作が、当該表示画面上でのタッチ操作か非タッチ操作かを検出する検出手段と、
前記移動指示操作の移動量が予め設定された設定量を超えたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により、前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が第1の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第1の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する、および、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第2の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理を実行する実行制御手段と、
を備えたことを特徴とするユーザ操作処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年2月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「表示画面に表示される表示オブジェクトに対する移動指示操作が、当該表示画面上でのタッチ操作か非タッチ操作かを検出する検出手段と、
前記移動指示操作の移動量が予め設定された設定量を超えたか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により、前記移動指示操作の移動量が前記設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記移動指示操作の移動量が前記設定量を超えたと判別された場合には、当該移動指示操作が前記タッチ操作か前記非タッチ操作かに応じて、前記表示オブジェクトに対してそれぞれ異なる処理を実行する実行制御手段と、
を備えたことを特徴とするユーザ操作処理装置。」

2 補正の適否
本件補正において、「設定量」を「第1の設定量」と「第2の設定量」とする補正内容は、出願当初の明細書及び図面の【図4】(特に、図4でステップS14、S17それぞれの「設定量」が別の互いに独立した値である点を参照。)の記載を参照すると、それぞれ、「静電容量式タッチパネルを用いたタッチ操作の移動量」及び「抵抗膜式タッチパネルを用いたタッチ操作の移動量」に対する「設定量」であり、単に、「設定量」を明確にしたものであって、不明瞭な記載の釈明である。
また、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「設定量」について、「タッチ操作による移動指示操作の移動量」に対する「第1の設定量」及び「前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量」に対する「記第2の設定量」との限定を付加し、それに伴って、「実行制御手段」について、「前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第1の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する、および、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第2の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理を実行する」と「処理」の内容に対し限定を付加するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

ア 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された特開2011-53971号公報(平成23年3月17日出願公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(なお、下線は重要箇所につき、当審にて付与した。以下、同様。)

a.【段落【0007】-【0010】
「【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、操作体によるタッチパネルに対する接触操作と近接操作とを明確に区別することが可能な、新規かつ改良された技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、表示面を有するとともに表示面に情報を表示させることが可能である表示部と、接触面を有するとともに接触面と操作体との近接度合いを近接量として検出することが可能であるタッチパネルと、操作体によって接触面に加えられる圧力の大きさである圧力値を検出する圧力値検出部と、圧力値検出部によって検出される圧力値を経過時間とともに監視する圧力値監視部と、タッチパネルによって検出された近接量が第1閾値より大きいという第1条件を満たすか否かを判断する近接量判断部と、圧力値監視部によって監視されている圧力値が変化したか否かを判断する圧力値判断部と、第1処理を実行することが可能である第1処理部と、近接量判断部によって第1条件を満たすと判断され、かつ、圧力値判断部によって圧力値が変化したと判断された場合に、第1処理を第1処理部に実行させ、近接量判断部によって第1条件を満たすと判断され、かつ、圧力値判断部によって圧力値が変化しないと判断された場合に、第1処理を第1処理部に実行させない処理制御部と、を備える、情報処理装置が提供される。
【0009】
タッチパネルは、操作体が接触面に近接することによって増加する接触面上における静電容量を近接量として検出することとしてもよい。
【0010】
第2処理を実行することが可能である第2処理部をさらに備え、処理制御部は、近接量判断部によって第1条件を満たすと判断され、かつ、圧力値判断部によって圧力値が変化しないと判断された場合に、第2処理を第2処理部に実行させることとしてもよい。」

b.段落【0018】
「【0018】
以上説明したように本発明によれば、操作体によるタッチパネルに対する接触操作と近接操作とを明確に区別することが可能となる。」

c.段落【0028】-【0029】
「【0028】
[1-3.情報処理装置の分解斜視図]
図3は、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置の分解斜視図である。図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成について説明する。図3には、情報処理装置100の上面から下面に向けて、タッチパネル102、圧力センサ(感圧センサ)105、表示装置101および基盤109の順に積層される例について示されているが、積層される順については特に限定されるものではない。
【0029】
図3に示すように、情報処理装置100の上面には、タッチパネル102が配設されている。タッチパネル102は、ユーザの操作体210が接触または近接することが可能な接触面102aを有しており、接触面102aにおける操作体210との接触位置または近接位置を示す位置情報を取得することが可能である。タッチパネル102は、取得した位置情報をCPU108(図4参照)に情報信号として出力する。情報処理装置100のユーザは、タッチパネル102に対して操作体210を接触または近接させることにより、情報処理装置100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。タッチパネル102としては、指先と導電膜との間での静電容量の変化を捉えることによって位置を検出する静電容量式タッチパネルを使用した場合を例に説明する。しかし、操作体210が接触または近接した接触面102a上における位置とその近接度合いとを検出できるものであればどのようなものを使用してもよい。例えば、赤外線の反射により指の接近を検出する赤外線距離デバイスや、無線タグと受信回路とにより構成した無線デバイスなどを使用することとしてもよい。」

d.段落【0040】-【0043】
「【0040】
圧力センサ105は、圧力センサ105に加えられる圧力の大きさを圧力値として検出する。ユーザが操作体210によってタッチパネル102が押下されると、圧力センサ105はタッチパネル102が押下されることによって圧力センサ105に加えられる圧力の大きさを圧力値として検出する。図5に示された例からは、タッチパネル102が押下されることによって圧力センサ105に微細な押圧反応(時間t1?t2)があったことが分かる。
【0041】
操作体210が圧力センサ105に対して、直接的に、または、タッチパネル102などを介して間接的に接触すると、接触が非常に弱いものであっても、圧力センサ105に必ず微弱な押圧反応が現れる。逆に、圧力センサ105に対して、直接的に、または、タッチパネル102などを介して間接的に接触をしない限り、ノイズや環境によって圧力センサ105が反応することはほとんどない。
【0042】
[1-6.情報処理装置が有する機能の概要]
図6は、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置が有する機能の概要を示す図である。図6を参照して、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置が有する機能の概要について説明する。
【0043】
図6に示すように、本実施形態では、例えば、表示装置101などに表示される文書が複数ページから構成される場合に、ページ内でのスクロール(以下、「ページ内スクロール」とも言う)とページ間でのスクロール(以下、「ページ間スクロール」とも言う)とを操作体210による異なる操作によって可能とする。例えば、操作体210による接触操作によってページ内スクロールを可能とし、操作体210による近接操作によってページ間スクロールを可能とする。ページ内スクロールは、図6においては、ページPA20内でのスクロールとして示されており、ページ間スクロールは、図6においては、ページPA20?ページPA30間でのスクロールとして示されている。図5を参照して説明したように、圧力センサ105には、ユーザが近接操作を行った場合には押圧反応が現れないが、ユーザが接触操作を行った場合には押圧反応が現れる。この現象を利用して、例えば、情報処理装置100は、圧力センサ105に押圧反応が現れた場合にはページ内スクロールを行い、タッチパネル102による操作体210の検出があり、かつ、圧力センサ105に押圧反応が現れない場合にはページ間スクロールを行う。」

e.段落【0052】
「【0052】
近接量判断部118は、タッチパネル102によって検出された近接量が第1閾値より大きいという第1条件を満たすか否かを判断する。第1閾値としては、例えば、閾値A(図8参照)を用いることができる。なお、近接量が第1閾値より大きい場合とは、近接量が第1閾値となる位置よりも接触面102aに近い位置に操作体210がある場合のことを言う。第1閾値は、例えば、記憶部120によって記憶されているものである。」

f.段落【0058】-【0059】
「【0058】
制御部110は、ドラッグ検出部113をさらに備えることとしてもよい。ドラッグ検出部113は、操作体210が接触面102aに接触しながら移動する操作であるドラッグを検出するとともにドラッグによって操作体210が接触面102aに接触しながら移動した距離と方向とを検出する。第1処理部116は、ドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいた処理を第1処理として実行する。ドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいた処理は、特に限定されるものではない。第1処理部116は、例えば、表示面に表示されている1のページ(図6に示した例では、PA20)に対してドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいてスクロールさせる処理を第1処理として実行することとしてもよい。
【0059】
第2処理部117は、操作体210が接触面102aに近接しながら移動した距離と方向とを検出し、検出した距離と方向とに基づいた処理を第2処理として実行することとしてもよい。第2処理部117が検出した方向と距離とに基づいた処理は、特に限定されるものではない。第2処理部117は、例えば、検出した距離と方向とに基づいて、表示面に表示される複数のページに対してページ間でスクロールさせる処理を第2処理として実行することとしてもよい。」

g.段落【0080】-【0085】
「【0080】
[1-10.情報処理装置の動作の流れ(その2)]
図10は、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置の動作の流れを示すフローチャート(その2)である。図10を参照して、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置の動作の流れについて説明する。
【0081】
ステップS120に進んだ場合には、第2処理部117は、現時点での座標P2を記憶する(ステップS120)。第2処理部117は、P1からP2までの画面平行方向の2次元ベクトル長を算出し、そのベクトル長がページ間スクロール方向(ここでは右方向か左方向か)に対して、所定値以上か否かをチェックする(ステップS121)。第2処理部117は、P1からP2までのベクトル長がページ間スクロール方向に対して所定値以上であると判断した場合には(ステップS121で「Yes」)、そのベクトルの向きが正の方向(右方向)か負の方向(左方向)かをチェックする(ステップS122)。
【0082】
第2処理部117は、そのベクトルの向きが右方向であると判断した場合には(ステップS122で「正の方向」)、次ページに変数Xによって指定される速度でスクロールを行い(ステップS123)、処理を終了する。第2処理部117は、そのベクトルの向きが左方向であると判断した場合には(ステップS122で「負の方向」)、前ページに変数Xによって指定される速度でスクロールを行い(ステップS124)、処理を終了する。
【0083】
図9、10に示した近接チェックのうちで、ステップS108や、ステップS112、ステップS116などについては、必要に応じて行うこととすればよく、特に必須のステップではない。
【0084】
[1-11.情報処理装置が圧力値を検出した場合の動作]
図11は、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置が圧力値を検出した場合の動作について説明するための図である。図11を参照して、本発明の第1実施形態に係る情報処理装置が圧力値を検出した場合の動作について説明する。
【0085】
図11に示すように、操作体210がタッチパネル102に接触した場合には、圧力センサ105は、操作体210によるタッチパネル102に対する押圧を検出する。圧力センサ105によって押圧が検出されると、第1処理部116は、第1処理を実行する。第1処理部116は、第1処理として、例えば、表示部150に表示される1のページに対するページ内スクロールを行うことができる。」

イ 引用発明
以上の記載(特に下線部)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「情報処理装置100の上面から下面に向けて、タッチパネル102、圧力センサ(感圧センサ)105、表示装置101および基盤109の順に積層され、
情報処理装置100の上面には、タッチパネル102が配設され、
タッチパネル102は、ユーザの操作体210が接触または近接することが可能な接触面102aを有しており、接触面102aにおける操作体210との接触位置または近接位置を示す位置情報を取得することが可能であり、
圧力センサ105は、圧力センサ105に加えられる圧力の大きさを圧力値として検出し、
ユーザが操作体210によってタッチパネル102が押下されると、圧力センサ105はタッチパネル102が押下されることによって圧力センサ105に加えられる圧力の大きさを圧力値として検出し、
表示装置101などに表示される文書が複数ページから構成される場合に、ページ内でのスクロール(以下、「ページ内スクロール」とも言う)とページ間でのスクロール(以下、「ページ間スクロール」とも言う)とを操作体210による異なる操作によって可能とし、
情報処理装置100は、圧力センサ105に押圧反応が現れた場合にはページ内スクロールを行い、タッチパネル102による操作体210の検出があり、かつ、圧力センサ105に押圧反応が現れない場合にはページ間スクロールを行い、
制御部110は、ドラッグ検出部113をさらに備え、
ドラッグ検出部113は、操作体210が接触面102aに接触しながら移動する操作であるドラッグを検出するとともにドラッグによって操作体210が接触面102aに接触しながら移動した距離と方向とを検出し、
第1処理部116は、ドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいた処理を第1処理として実行し、
第1処理部116は、表示面に表示されている1のページに対してドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいてスクロールさせる処理を第1処理として実行し、
第2処理部117は、操作体210が接触面102aに近接しながら移動した距離と方向とを検出し、検出した距離と方向とに基づいた処理を第2処理として実行し、
第2処理部117は、検出した距離と方向とに基づいて、表示面に表示される複数のページに対してページ間でスクロールさせる処理を第2処理として実行し、
第2処理部117は、現時点での座標P2を記憶し、
第2処理部117は、P1からP2までの画面平行方向の2次元ベクトル長を算出し、そのベクトル長がページ間スクロール方向に対して、所定値以上か否かをチェックし、
第2処理部117は、P1からP2までのベクトル長がページ間スクロール方向に対して所定値以上であると判断した場合には、そのベクトルの向きが正の方向(右方向)か負の方向(左方向)かをチェックし、
第2処理部117は、そのベクトルの向きが右方向であると判断した場合には、次ページに変数Xによって指定される速度でスクロールを行い、
操作体210がタッチパネル102に接触した場合には、圧力センサ105は、操作体210によるタッチパネル102に対する押圧を検出し、
圧力センサ105によって押圧が検出されると、第1処理部116は、第1処理を実行し、
第1処理部116は、第1処理として、表示部150に表示される1のページに対するページ内スクロールを行う、
操作体によるタッチパネルに対する接触操作と近接操作とを明確に区別することが可能となる情報処理装置。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア)引用発明の「表示装置101」は、本件補正発明の「表示画面」に相当する。
引用発明の「文書」は、表示装置101に表示されているので、本件補正発明の「表示オブジェクト」に相当する。
引用発明は、「表示装置101などに表示される文書が複数ページから構成される場合に、ページ内でのスクロールとページ間でのスクロールとを操作体210による異なる操作によって可能とし」ているので、本件補正発明の「移動指示操作」に相当する。
また、引用発明は「圧力センサ105に押圧反応が現れた場合にはページ内スクロールを行い、タッチパネル102による操作体210の検出があり、かつ、圧力センサ105に押圧反応が現れない場合にはページ間スクロールを行」っているので、引用発明の操作体210による異なる操作における「押圧反応が現れた場合」と「タッチパネル102による操作体210の検出があり、かつ、圧力センサ105に押圧反応が現れない場合」は、本件補正発明の「タッチ操作」と「非タッチ操作」にそれぞれ相当する。
そのため、引用発明は本件補正発明の「表示画面に表示される表示オブジェクトに対する移動指示操作が、当該表示画面上でのタッチ操作か非タッチ操作かを検出する検出手段」に相当する手段を有しているといえる。

イ)引用発明の「第2処理部117は」は、「操作体210が接触面102aに近接しながら移動した距離と方向とを検出し」、「画面平行方向の2次元ベクトル長を算出し、そのベクトル長がページ間スクロール方向に対して、所定値以上か否かをチェック」しているので、引用発明の「ベクトル長が」「所定値以上か否かをチェック」することは、本件補正発明の「移動量が予め設定された設定量を超えたか否かを判別」することに相当する。
そのため、引用発明は本件補正発明の「移動指示操作の移動量が予め設定された設定量を超えたか否かを判別する判別手段」に相当する機能を有しているといえる。

ウ)引用発明は、「ドラッグ検出部113は、操作体210が接触面102aに接触しながら移動する操作であるドラッグを検出するとともにドラッグによって操作体210が接触面102aに接触しながら移動した距離と方向とを検出し」、「第1処理部116は、ドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいた処理を第1処理として実行し」、「第1処理部116は、表示面に表示されている1のページに対してドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいてスクロールさせる処理を第1処理として実行し」ているので、引用発明の「ドラッグ」は、本件補正発明の「タッチ操作による移動指示操作」に相当し、また、引用発明の「1のページに対してドラッグ検出部113によって検出された方向と距離とに基づいてスクロールさせる処理」すなわち「第1処理」を実行することは、本件補正発明の「表示オブジェクトに対して第1処理」を実行することに相当する。
そのため、引用発明は本件補正発明の「前記タッチ操作による移動指示操作」「と判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する」ことに相当する機能を有しているといえる。

エ)引用発明の「第2処理部117」は、「操作体210が接触面102aに近接しながら移動した距離と方向とを検出し、検出した距離と方向とに基づいた処理を第2処理として実行し、第2処理部117は、検出した距離と方向とに基づいて、表示面に表示される複数のページに対してページ間でスクロールさせる処理を第2処理として実行」しているので、引用発明の「表示面に表示される複数のページに対してページ間でスクロールさせる処理」すなわち「第2処理」を実行することは本件補正発明の「表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理」を実行することに相当する。
また、引用発明は、「第2処理部117は、P1からP2までのベクトル長がページ間スクロール方向に対して所定値以上であると判断した場合には」、「第2処理部117は、そのベクトルの向きが右方向であると判断した場合には、次ページに変数Xによって指定される速度でスクロールを行」っているので、ベクトル長がページ間スクロール方向に対して所定値以上となるまでは、スクロールを行う処理を待機して、所定値以上であると判断した場合にはスクロールを行う処理に進むことは明らかである。そのため、引用発明は本件補正発明の「判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第2の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理を実行する実行制御手段」ことに相当する手段を有しているといえる。

オ)引用発明と本件補正発明は、共に「ユーザ操作処理装置」であることで共通する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「表示画面に表示される表示オブジェクトに対する移動指示操作が、当該表示画面上でのタッチ操作か非タッチ操作かを検出する検出手段と、
前記移動指示操作の移動量が予め設定された設定量を超えたか否かを判別する判別手段と、
前記タッチ操作による移動指示操作と判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する、および、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第2の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理を実行する実行制御手段と、
を備えたことを特徴とするユーザ操作処理装置。」

【相違点】
本件補正発明は、「前記判別手段により、前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が第1の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第1の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する」のに対し、引用発明は、タッチ操作による移動指示操作と判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行するが、「タッチ操作による移動指示操作の移動量が第1の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し」、「タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第1の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する」ことについて特定がなされていない点。

(4)判断
以下、相違点について検討する。

引用発明は、非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、移動指示操作に基づく処理を待機し、判別手段により、非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別された場合には、表示オブジェクトに対して第2処理を実行する機能を有するものである。そして、引用発明は、タッチ操作による移動指示操作と判別された場合には、表示オブジェクトに対して第1処理を実行する機能を有しており、これは非タッチ操作によるものか、タッチ操作によるものかの違いはあるものの、移動指示操作を行うという点では共通するものであるので、非タッチ操作の場合のみではなく、タッチ操作の場合においても移動指示操作の移動量が設定量を超えたと判別されるまでの間は、移動指示操作に基づく処理を待機し、移動指示操作の移動量が設定量を超えたと判別された場合には、表示オブジェクトに対して処理を実行するように構成することは、当業者であれば当然想到し得ることである。
また、例えば、原査定において引用された引用文献10:特開2005-125877号公報(段落【0047】-【0052】、【図10】の、特にステップS107の判別に関する記載。)に記載されているように、誤操作防止などの目的で、タッチパネル上のスライド操作における押下点座標の差分値が所定閾値以上でなるまでは、スライド操作とみなさないようにするようなことは周知技術であり、当該周知技術を、引用文献1に記載された発明の接触操作に付加することにも困難性は認められない。

特開2005-125877号公報
「【0048】
次いで、マスターマイコン100は、この操作がスライド操作あるいは長時間押下操作であるかを判別すべく、次の処理を実行する。すなわち、マスターマイコン100は、操作時間の長短を判別するために、内蔵するタイマカウンタ回路(不図示)をリセットして起動し、所定時間のタイムカウントを開始する(ステップS103)。
【0049】
次にマスターマイコン100は、表示マイコン152からの出力に基づいて、手が離されたか否かを判別する(ステップS104)。具体的には、このステップS104実行時に表示マイコン152からの押下点座標の出力が継続されていれば肯定判別され、そうでなければ否定判別される。この判別の結果、手が離されていると判別した場合には(ステップS104:NO)、今回の操作態様を短時間押下操作と特定し(ステップS105)、処理を終了する。
【0050】
一方、未だ手が離されていない場合には(ステップS104:YES)、スライド操作であるか否かを判別すべく、マスターマイコン100は、表示マイコン152から今現在出力されている押下点座標値と、ステップS102にてRAMに格納した押下当初の押下点座標値とのX軸方向の押下点差分値(=現在の押下点座標値-押下当初の押下点座標値)を算出してRAMに格納し(ステップS106)、この押下点差分値が所定閾値以上であるかを判別する(ステップS107)。この所定閾値は、その操作がスライド操作であるか否かを判別するための閾値であり、運転中の手ぶれなどを勘案し、例えば5mmに達しない程度の手の移動(X方向)をスライド操作とみなさないように、予めその値が設定されている。
【0051】
ステップS107の判別結果がNOである場合、すなわち、スライド操作とみなせる程度の押下点座標の移動が無い場合には、マスターマイコン100は、タイマカウンタ回路がタイムアウトしているか否かを判別し(ステップS108)、タイムアウトしていれば(ステップS108:YES)、今回の操作態様を長時間押下操作と特定し(ステップS109)、処理を終了する。一方、未だタイムアウトしていなければ(ステップS108:NO)、処理手順をステップS104に戻す。
【0052】
また、先のステップS107にて、肯定判別された場合には(ステップS107:YES)、スライド操作が確定するものの、その操作がスライド操作のみか、あるいは、長時間押下操作を伴うものであるかを判別するために、タイマカウンタ回路を起動してリセットした後、所定時間のタイムカウントを開始する(ステップS110)。次にマスターマイコン100は、表示マイコン152からの出力に基づいて、手が離されたか否かを判別する(ステップS111)。既に手が離されている場合には(ステップS111:YES)、マスターマイコン100は、ステップS106にてRAMに格納した押下点差分値が正の値か否かを判別する(ステップS112)。押下点差分値が正の値であれば(ステップS112:YES)、X軸正方向へ移動したことを示すから、今回の操作態様を右スライド操作と特定し(ステップS113)、処理を終了する。一方、押下点差分値が負の値であれば(ステップS112:NO)、今回の操作態様を左スライド操作と特定し(ステップS114)、処理を終了する。」


そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年10月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-7に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

1. 特開2011-53971号公報
2. 特開2005-31799号公報(周知技術を示す文献)
6. 特開2006-271003号公報(周知技術を示す文献)
7. 特開2011-134271号公報(周知技術を示す文献)
10.特開2005-125877号公報(周知技術を示す文献;新たに引用された文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された引用発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、
「設定量」について、「タッチ操作による移動指示操作の移動量」に対する「第1の設定量」及び「前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量」に対する「記第2の設定量」との限定、それに伴って、「実行制御手段」について、「前記タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第1の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して第1処理を実行する、および、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が第2の設定量を超えたと判別されるまでの間は、当該移動指示操作に基づく処理を待機し、前記判別手段により、前記非タッチ操作による移動指示操作の移動量が前記第2の設定量を超えたと判別された場合には、前記表示オブジェクトに対して前記第1処理とは異なる第2処理を実行する」と「処理」の内容に付き限定を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-17 
結審通知日 2018-11-06 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2015-229255(P2015-229255)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西田 聡子間野 裕一  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 稲葉 和生
安久 司郎
発明の名称 ユーザ操作処理装置、ユーザ操作処理方法及びプログラム  

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