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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60N 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60N |
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管理番号 | 1348358 |
審判番号 | 不服2017-18048 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-12-05 |
確定日 | 2019-01-24 |
事件の表示 | 特願2013-251742号「通気性シート」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日出願公開、特開2015-107744号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成25年12月5日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年6月22日付け:拒絶理由通知書 平成29年8月24日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年9月 5日付け:拒絶査定 平成29年12月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2.平成29年12月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成29年12月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「ウレタンフォームからなるクッション本体を有する通気性シートクッションにおいて、 前記クッション本体には、通気性を有する芯鞘構造繊維体が一体成形され、前記芯鞘構造繊維体は、前記クッション本体において、乗員の身体が接する位置に配置されると共に、 前記クッション本体の上面側から下面側に渡って貫通し、 前記芯鞘構造繊維体は、芯部分とその周りの鞘部分とからなり、芯部分が鞘部分内で偏位して成り、前記クッション本体の下面側は、網状のバネ体により支持されている ことを特徴とする通気性シート。」 なお、上記「乗員の身体が接する位置に配置されると共に、 前記クッション本体」との記載内の空所は平成29年12月5日に提出された手続補正書の記載のまま認定した。 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、平成29年8月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「ウレタンフォームからなるクッション本体を有する通気性シートクッションにおいて、 前記クッション本体には、通気性を有する芯鞘構造繊維体が一体成形され、前記芯鞘構造繊維体は、前記クッション本体において、乗員の身体が接する位置に配置されると共に、前記クッション本体の上面側から下面側に渡って貫通し、 前記芯鞘構造繊維体は、芯部分とその周りの鞘部分とからなり、芯部分が鞘部分内で偏位して成る、 ことを特徴とする通気性シート。」 2.補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「クッション本体を有する通気性シートクッション」について、「前記クッション本体の下面側は、網状のバネ体により支持されている」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア.引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2012-115515号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 シートの着座部における臀部にウレタンを配置し、腿下部に繊維材により形成された立体網状クッション体を配置することを特徴とする通気性シート。」 「【0001】 本発明は、車両や船舶、航空機等の乗り物に装備される座席や椅子などに使用される通気性シートに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 従来においては十分なクッション性と蒸れ感を両立させた通気性シートは提供されていなかった。」 「【0011】 本発明に用いられるウレタンパットとは、従来知られているどのようなウレタンパットでも良いが、好ましくは一般の車両用座席に使用されているウレタンパットを用いることが好ましい。このようなウレタンパットを用いることで、クッション性のみならず、耐久性や難燃性など、実使用において重要な性能を維持することが可能となる。 【0012】 着座部における腿下部とは、着座面の長さ方向を100とした際に、ひざ側から臀部方向に60までの範囲であることを言う。本発明者らは着座面の蒸れ感を研究した結果、腿下部は蒸れ感に敏感であり、かつ臀部は蒸れ感に対して鈍感であることを見出したものである。すなわち、腿下部にのみ、蒸れ感を低減する構成を配することで、蒸れ感を低減させ、十分な快適性が得られることを見出したものである。 【0013】 具体的には、繊維材により形成された立体網状クッション体を、腿下部にのみ配置することで、十分な蒸れ感低減による快適性が得られることを見出したものである。この立体網状クッション体は、熱可塑性樹脂からなる繊維径0.1?1.5mm、好ましくは、繊維径0.2?1.0mmの連続線状体を多数、それぞれループ状に曲がりくねらせ、かつ互いの接触部を融着させた立体的な網状構造体で構成されている。例えば、熱可塑性樹脂として、熱可塑性ポリエステルエラストマーと熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含む熱可塑性エラストマー樹脂が挙げられる。 立体網状クッション体の厚みとしては、10mm以上が好ましい。さらに好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上である。厚みが薄い場合には、十分な蒸れ感低減効果が得られず好ましくない。厚みは厚い方が蒸れ感低減には好ましいが、車両用シートとして150mmを超えると取り扱いが困難になるため、150mm以下が好ましい。」 「【0032】 実施例1 シート着座部の金型内の大腿部が位置する箇所に縦180mm×横300mm×厚み100mmの立体網状クッション体を設置し、ウレタンを金型内で発泡成形することにより、大腿部に立体網状クッション体のみが、臀部にはウレタンが配置した着座部を作成した。立体網状クッション体の位置は、着座部の長さ方向全長を100とした場合に、着座時におけるひざ側から臀部の方向に45の位置に立体網状クッション体の上辺が位置するように配置した。評価にはカーシートフレームに作成した着座部を置き、通気度30cc/cm^(2)/secのファブリックの表皮材で覆ったシートを用いた。」 「【符号の説明】 【0047】 1:シート着座部 2:立体網状クッション体 3:ウレタン 4:通気孔」 次の図面が示されている。 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a.引用文献1に記載された技術は、通気性シートに関するものであり(段落【0001】)、十分なクッション性と蒸れ感を両立させた通気性シートを提供することを課題としたものである(段落【0006】)。 b.ウレタンとして、ウレタンパットを用いている(段落【0011】)。 (ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「シート着座部1における臀部にウレタン3を配置し、腿下部に繊維材により形成された立体網状クッション体2を配置する通気性シートであって、 ウレタン3として、ウレタンパットを用い、 立体網状クッション体2は、熱可塑性樹脂からなる連続線状体を多数、それぞれループ状に曲がりくねらせ、かつ互いの接触部を融着させた立体的な網状構造体で構成され、 シート着座部1の金型内の大腿部が位置する箇所に立体網状クッション体2を設置し、ウレタン3を金型内で発泡成形することにより、大腿部に立体網状クッション体2のみが、臀部にはウレタン3が配置した着座部を作成した通気性シート。」 イ.引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開2009-268579号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 合成樹脂発泡体からなるクッション層と、該合成樹脂発泡体の内部に完全に被包された状態、又はその表面の一部が合成樹脂発泡体の表面に露出した状態の繊維集積体とを含むことを特徴とする複合クッション体。」 「【0001】 本発明は自動車等の車両、室内用などの座席のクッション材として使用される、複合クッション体及びその製造方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 発泡体からなるクッション材に関して、底部や側部の補強材として繊維不織布を併用して改善することはなされているが、例えば、ウレタン発泡体自体の問題点、即ち柔軟性の調整、吸湿性の改善などは行われていない。座席のクッション材、特に自動車の座席は、長時間使用されることが多く、そのような用途のクッション材は、座席の部位に対応した柔軟性の調整や、人体から発する湿気を吸収し放出する吸湿性の改善されたクッション材が望まれている。」 「【0030】 実施例1 先ず、太さ15dtexのポリエステル繊維と、太さ6dtexで芯部の融点が160℃以上で、鞘部の融点が130℃以下の芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維とを60:40の質量比率で混綿及びニードリング絡合し、150℃で1分間熱処理された厚さ50mm、密度0.045g/cm^(3)の繊維集積体を準備した。」 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。 「自動車等の車両、室内用などの座席のクッション材として使用される、合成樹脂発泡体からなるクッション層と繊維集積体とを含む複合クッション体において、ポリエステル繊維と、芯部の融点が160℃以上で、鞘部の融点が130℃以下の芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維とで繊維集積体を形成する技術。」 ウ.引用文献3 (ア)同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された特開平7-331571号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 立体捲縮を有する中空複合繊維Aと、該中空複合繊維の捲縮数より多い捲縮数を有する熱融着複合繊維Bとから主として構成される繊維構造体であって、繊維Aの捲縮に繊維Bの捲縮が局部的に絡みついて融着している部分を有し、かつ剥離強力が160g/cm以上である繊維構造体。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はクッション材として用いる繊維構造体に係り、特に、その圧縮弾性や剥離強力が高く、へたりや形態変化が起きることの少ない、成型性に優れた繊維構造体に関するものである。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、圧縮弾性、剥離強力の優れた繊維構造体を提供せんとするものであり、しかもそのような特性の繊維構造体を、一般的なバインダー繊維を用いて実現せんとするものである。」 「【0011】本発明でのバインダー繊維を構成する熱融着複合繊維Bとしては、前記主体繊維としての中空複合繊維Aのバインダー成分となると共に、熱融着後においても捲縮を維持し、繊維形態を維持した繊維であることが必要であり、次ぎの性質を有するものであることが望ましい。 即ち、まず該熱融着複合繊維Bとしては、熱融着後においても繊維形態を維持するものであることから、芯成分となるポリマー成分(c)と、該ポリマー成分(c)の融点より少なくとも40℃以上低い融点を有する鞘成分となるポリマー成分(d)からなる偏芯芯鞘型の複合繊維として構成するか、または同様の融点差を有するポリマー(c)、(d)のサイドバイサイド型の複合繊維として構成することが好ましく、かつ該熱融着側のポリマー成分(d)の融点が前記主体繊維としての中空複合繊維Aの低融点側ポリマー成分の融点より30℃以上低い融点を持つ関係にあることが好ましい。熱融着複合繊維Bの両成分(c)と(d)との融点差が40℃より小さい関係となると、繊維特性を維持するポリマー成分(c)の特性を熱融着時に損なうこととなり好ましくない。またこの関係は熱融着複合繊維と主体繊維としての中空複合繊維Aとの関係でも同様であって、中空複合繊維Aの低融点側ポリマー成分の融点に対して、熱融着複合繊維Bの熱融着側ポリマー成分(d)の融点の融点差が30℃以下の接近した融点となると、熱融着時に中空複合繊維A側の繊維特性を損なうこととなり好ましくない。」 「【0030】・・・ 【発明の効果】本発明の繊維構造体はその硬さがクッション材として適し、かつ特にその繰返し圧縮後の回復率が大きく、剥離強力に優れたものであり、家具、ベッド、その他各種の座席のクッション材等として好適なものである。」 (イ)上記記載から、引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。 「各種の座席のクッション材等として用いる繊維構造体に係り、中空複合繊維Aと、熱融着複合繊維Bとから主として構成される繊維構造体であって、熱融着複合繊維Bとしては、芯成分となるポリマー成分(c)と、該ポリマー成分(c)の融点より少なくとも40℃以上低い融点を有する鞘成分となるポリマー成分(d)からなる偏芯芯鞘型の複合繊維として構成する技術。」 (3)引用発明との対比 ア.本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明は、十分なクッション性と蒸れ感を両立させた通気性シートを提供することを課題とした通気性シートに係る技術であり、本件補正発明と、技術分野及び課題が共通する。 (イ)引用発明の「シート着座部1における臀部に」「配置し」た「ウレタン3」として用いられる「ウレタンパット」は、クッション性(段落【0011】)を有するものであるから、本件補正発明の「ウレタンフォームからなるクッション本体」に相当する。 (ウ)引用文献1の「繊維材により形成された立体網状クッション体を、腿下部にのみ配置することで、十分な蒸れ感低減による快適性が得られる」(段落【0013】)との記載を踏まえると、その機能に照らし「立体網状クッション体2」は通気性を有することが明らかであるから、引用発明の「繊維材により形成された立体網状クッション体2」と本件補正発明の「通気性を有する芯鞘構造繊維体」とは、「通気性を有する繊維体」の限度で共通する。また、引用発明の「腿下部」は本件補正発明の「乗員の身体が接する位置」に相当すること、引用発明の「シート着座部1の金型内の大腿部が位置する箇所に立体網状クッション体2を設置し、ウレタン3を金型内で発泡成形することにより、大腿部に立体網状クッション体2のみが、臀部にはウレタン3が配置した着座部を作成した」との構成から、「ウレタン3」には、「立体網状クッション体2」が一体成形されるといえること、及び引用文献1の【図1】及び【図3】を併せみると、引用発明の「立体網状クッション体2」は、ウレタン3の上面側から下面側に渡って貫通していることが看取できることから、引用発明の「シート着座部1における臀部にウレタン3を配置し、腿下部に繊維材により形成された立体網状クッション体2を配置する」構成は、本件補正発明の「前記クッション本体には、通気性を有する芯鞘構造繊維体が一体成形され、前記芯鞘構造繊維体は、前記クッション本体において、乗員の身体が接する位置に配置されると共に、前記クッション本体の上面側から下面側に渡って貫通し」との構成との対比において、「前記クッション本体には、通気性を有する繊維体が一体成形され、前記繊維体は、前記クッション本体において、乗員の身体が接する位置に配置されると共に、前記クッション本体の上面側から下面側に渡って貫通し」との構成の限度で共通する。 (エ)本件補正発明の「通気性シートクッション」は、本件明細書の段落【0015】の「図1に示されるように、通気性シート1は、車床上にスライドレールを介して取り付けられた通気性シートクッションSCと、シートクッションSCに対して傾動自在に取り付けられた通気性シートバックSBを備えている。」との記載によれば、【図1】に示された「通気性シートクッションSC」に対応するものと認められるから、引用発明の「シート着座部1」は、本件補正発明の「通気性シートクッション」に相当し、引用発明の「通気性シート」は、本件補正発明の「通気性シート」に相当する。 イ.以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「ウレタンフォームからなるクッション本体を有する通気性シートクッションにおいて、 前記クッション本体には、通気性を有する繊維体が一体成形され、前記繊維体は、前記クッション本体において、乗員の身体が接する位置に配置されると共に、 前記クッション本体の上面側から下面側に渡って貫通する通気性シート。」 【相違点1】 「繊維体」に関し、 本件補正発明は、「芯鞘構造繊維体」であり、「芯部分とその周りの鞘部分とからなり、芯部分が鞘部分内で偏位して成」るのに対し、 引用発明は、「立体網状クッション体」であり、「熱可塑性樹脂からなる連続線状体を多数、それぞれループ状に曲がりくねらせ、かつ互いの接触部を融着させた立体的な網状構造体で構成され」るものである点。 【相違点2】 本件補正発明は、「前記クッション本体の下面側は、網状のバネ体により支持されている」のに対し、 引用発明は、かかる構成が特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア.相違点1について 引用文献2には、上記(2)イ.(イ)のとおり、「自動車等の車両、室内用などの座席のクッション材として使用される、合成樹脂発泡体からなるクッション層と繊維集積体とを含む複合クッション体において、ポリエステル繊維と、芯部の融点が160℃以上で、鞘部の融点が130℃以下の芯鞘型ポリエステル系バインダー繊維とで繊維集積体を形成する技術」(以下「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されている。また、引用文献3には、上記(2)ウ.(イ)のとおり、「各種の座席のクッション材等として用いる繊維構造体に係り、中空複合繊維Aと、熱融着複合繊維Bとから主として構成される繊維構造体であって、熱融着複合繊維Bとしては、芯成分となるポリマー成分(c)と、該ポリマー成分(c)の融点より少なくとも40℃以上低い融点を有する鞘成分となるポリマー成分(d)からなる偏芯芯鞘型の複合繊維として構成する技術」が記載されており、かかる技術に例示されているように、座席のクッション材に用いられる繊維として、芯部分が鞘部分内で偏位している構成は、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)といえる。 そして、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術1は、いずれも、各種座席のクッション材に用いられる繊維構造体に関する技術である点、及び、クッション性の向上若しくは調整を課題とする点で共通しているから、引用発明の「立体網状クッション体2」を形成する「連続線状体」の具体的構成を構築する際に、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術1を参考にする動機付けは十分存在するものである。そして、引用発明における「連続線状体」の具体的構成を、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術1を参考にして、芯部分とその周りの鞘部分とからなり、芯部分が鞘部分内で偏位して成る芯鞘構造とすることは、当業者であれば適宜になし得ることである。 よって、引用発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ.相違点2について 自動車用のシートの技術分野において、クッションの下面側を網状のバネ体により支持することは、例えば、特開平4-197316号公報の第2図に示された、それぞれスプリング効果部6を有する横部材3及び縦部材4を結合して成るネット2、及び特開2005-124744号公報の【図2】に示された、S字状バネ24と補強部材26とを固定して成る構成等に例示されているように従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)であるから、引用発明に当該周知技術2を適用し、ウレタンの下面側は、網状のバネ体により支持されている構成にすることは当業者であれば適宜になし得ることである。 よって、引用発明において、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 ウ.そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び上記周知技術1、2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 エ.したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成29年12月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成29年8月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2.[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に例示された周知技術1に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2012-115515号公報 引用文献2:特開2009-268579号公報 引用文献3:特開平7-331571号公報 3.引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?3及びその記載事項は、前記第2.[理由]2.(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は、前記第2.[理由]2.検討した本件補正発明から、「クッション本体」に係る限定事項を省くものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2.[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、上記限定事項(相違点2)の容易性の判断のために必要となった周知技術2は省けるので、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び引用文献3に例示された周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-11-14 |
結審通知日 | 2018-11-20 |
審決日 | 2018-12-03 |
出願番号 | 特願2013-251742(P2013-251742) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60N)
P 1 8・ 575- Z (B60N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永安 真 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
島田 信一 一ノ瀬 覚 |
発明の名称 | 通気性シート |
代理人 | 山田 和明 |