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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C02F
管理番号 1348392
審判番号 不服2018-932  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-24 
確定日 2019-01-30 
事件の表示 特願2016-524668「小分子団水の製造方法及び該方法を用いた小分子団水の製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日国際公開、WO2015/003620、平成28年 9月 5日国内公表、特表2016-526483〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年) 7月 8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年 7月 9日(CN)中華人民共和国)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年 4月 6日付けで意見書が提出され、同年 9月19日付けで拒絶査定がされ、平成30年 1月24日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成30年 1月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
まず、処理対象とする水に、放電孔(2)が開口された金属リング(1)を入れ、次に、金属リング(1)の側面に交番磁界を印加することで、金属リング(1)の放電孔(2)に放電現象を生じ、水の大分子団を小分子団に細分化し、交番磁界を生じる交番界磁コイル(4)は、金属リング(1)の側面に交番磁界を印加するように、金属リング側面に位置し被処理水を載せる非導磁容器(3)の外側に設けられ、
前記小分子団の水の^(17)O NMRハーフピーク幅は80Hz以下であることを特徴とする小分子団水の製造方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
本願特許請求の範囲の請求項1には、「小分子団水の製造方法」、「水の大分子団を小分子団に細分化」する、との発明特定事項が記載されているが、発明の詳細な説明の記載をみても、本願発明において、小分子団水が生成していることや水分子を細分化していることを示す測定方法や測定結果は示されていない。
なお、本願明細書の発明の詳細な説明には、^(17)O-NMR半値幅が80Hzまで小さくなると小分子団水であると考えられることが記載されているが、その具体的根拠は示されておらず、出願時の技術常識を考慮しても小分子団水が生成していることを当業者が理解することができない。
よって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

2 特許法第29条第1項第3号(新規性)について

引用文献1:中国特許出願公開第101791198号明細書

本願発明は、引用文献1に記載される発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 当審の判断
1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載事項
国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文(以下、「本願明細書」という。)における発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は小分子団水の製造分野に関し、特に、小分子団水の製造方法及び該方法を用いた小分子団水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化工及び物理工業の広い分野において、小分子団水は、常態水よりも分子団が小さいため、良い溶剤溶解力及び浸透力を有する。そのため、人々は、ますます小分子団水を生産原料とすることを重視し、特に化粧品と工業ガソリン分野では、様々な工夫をして、小分子団水を製造する便利、簡単な方法を探している。しかし、水の大分子団を小分子団に細分化する方法は複雑で、通常、数十の工程によって、各工程中に種々の化工原料及び設備機器が必要であるため、製造工程も複雑になり、それに伴って小分子団水の製造設備の構造も複雑になり、製造コストが非常に高くなるので、小分子団水で製造された工業完成品は価格が高い状態となっており、幅広く利用するのは困難であり、応用や展開の面で大きな制約が受けられている。」

(b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術の不足を克服し、製造方法を大幅に簡素化し、製造構造が簡単で、磁化効果も優れて、製造コストが低い小分子団水の製造方法及び該方法を用いる小分子団水の製造装置を提供することを目的としている。」

(c)「【0019】
上記の製造方法において、前記金属リング1は、首尾が切断された金属切断リングであることが好ましく、短リングの正負電位がリングの切口の両端にあり、リングに沿った周方向の誘導電流が形成される。周方向の誘導電流は、図2のように径方向に放電孔2を通過する流れ方向の電流を生じるので、放電孔2の放電現象が更に明らかになる。或いは、該製造方法の金属リング1は、首尾が連続された金属円形リングであり、リング内の正負電位がリングの内面及び外面に位置し、誘導電流がリングの一方の側面から他方の側面へ流れる。誘導電流は、軸方向に放電孔2を通過し、同様に放電現象を生じることができる。実際の応用に応じて、該製造方法の金属リング1は、首尾が連続された金属円形リングであることが好ましいが、磁界が印加された場合に、首尾が切断された金属切断リング周りの電位差が、首尾が連続されている上下間の電位差よりも強くなり、金属切断リングの放電孔の放電効果がより良い。
【0020】
この間に、金属リング1の上端横断面又は/及び下端横断面には、放電孔2が開口された端蓋が設けられることで、金属リング1の端面にも放電現象が同時に生じることが実現され、さらに、側面と上、下端断面に立体的な放電現象が生じることが実現され、大分子団水から小分子団水への転化が加速された。上端横断面、下端横断面の位置が図1のように示され、図面には端蓋が描かれていない。同時に、該端蓋は、如何なる放電孔2が設けられずに、蓋のみとして機能することもできる。
【0021】
上記の小分子団水の製造方法によって得られた小分子団水を測定して、以下のような測定報告が得られた。
【0022】
【表1】

【0023】
上記測定報告から、以下のことが分かった。1.パラメーター^(17)O NMRハーフピーク幅の54HZの小分子団水が得られた。国内外の水のサンプル測定データ/報告によると、^(17)O NMRハーフピーク幅が80HZまで小さくなると、物態が安定している小分子団水であると考えられる。よって、上記の方法によって得られた水のサンプルが、十分に安定している小分子団水である。2.該方法によって得られる小分子団水の溶解性固体の合計含有量は166.6mg/Lである(注:溶解性固体の合計量と飲用水の味の関係として、とても良い(300mg/L未満);良い(300?600mg/L);一般(600?900mg/L);悪い(900?1200mg/L);飲用できない(1200mg/Lを超える))。これにより、この水の口当たりがとてもよく、非常にスルスルとしているため、小分子団水の特性を有する。3.この水のサンプルは、測定される前に通常の水道水である。通常の水道水の溶解性固体の合計含有量は淡水値に近く、即ち、100mg/L未満となっている。この方法によって得られた水の小分子団水の溶解性固体の合計含有量は166.6mg/Lである。このため、この方法によって得られた小分子団水の溶解能力は大幅に向上され、小分子団水の高溶解能力の特性も満たしている。
【0024】
しかし、図1?図4に示されるように、上記の小分子団水の製造方法を用いた小分子団水の製造装置は、被処理水を載せる非導磁容器3と、金属リング1と、交番界磁コイル4とを含み、金属リング1は非導磁容器3内にセットされ、金属リング1には放電孔2が開口され、交番界磁コイル4は金属リング1側面に位置する非導磁容器3の外側に設けられ、金属リング1の側面に交番磁界を印加するように構成されている。そのうち、該金属リング1は、首尾が切断された金属切断リングにされても良い。図3に示されるように、短リングの正負電位がリングの切口の両端にあり、リングの周方向の誘導電流が形成されている。この図の矢印のように、周方向の誘導電流は、図2のように径方向に放電孔2を通過する流れ方向の電流を生じた。よって、放電孔2の放電現象がより明らかになる。或いは、金属リング1も、首尾が接続する金属円形リングに設けられてもよい。図4に示されるように、リング内の正負電位がリングの内面と外面にあり、誘導電流がリングの一方の側面から他方の側面に流れている。この図の矢印のように、誘導電流が軸方向に放電孔2を通過し、同様に放電現象を生じることができる。交番磁界が印加されると金属リング1に電位差を有するようになり、放電孔2を介して電位差を有する金属リング1が直接に正電荷を水分子に与え、これにより、水の大分子団水を小分子団水に細分化し、普通の水から小分子団水を製造することが実現された。この複数の放電孔2の形状は、円形、方形、又は楕円形等であってもよく、実際の需要に応じて選択することができる。」

(d)「【0028】
即ち、小分子団製造方法を用いた製造装置の具体的な操作原理について、まず、金属リング1を、非導磁容器3に載せられた水に放置して、その後、交番磁界を印加し、普通の方法として、220V,50HZの工業頻度の交流電を大電力の電子発振回路で1500V,25000HZの超可聴周波の交流電に転化し、更に、交番界磁コイル4を用い、即ち、ファラデーの法則を用い、超音波振動効果を果たす交番電磁界が生じるようにして、磁力線が非導磁容器3を透過して、金属リング1の表面に強大な誘導スワール流の電流が生じ、強い電位差が生じ、かつ、金属リング1に設けられた若干の放電孔2の作用によって、金属リング1の表面断層のスワール流の電流が瞬間の極性電池効果が生じ、正電荷を水分子のO_(2)^(-)酸素イオン、負電荷を水分子のH^(+)水素イオンに直接に伝達し、電気エネルギーの交換により、水分子を電解反応させ、微量のO_(2),H_(2),HO_(2),O_(3),O_(2)等の物質が生じ、同時に、超音波周波数の交番磁力線によって非導磁容器31の水に対し励起・磁化処理が行われ、水分子H_(2)Oの酸水素H-O化学結合の挟み角を普通水の105°から103°に変化し、小分子団水が生じた。
【0029】
上記の小分団水の製造装置によって製造された小分子団水は、普通水の大分子団水よりも浸透・溶解能力が63%増大し、その水分子の表面張力が低下され、粘度も下がり、還元性が迅速に強くなり、水の酸素含有量が顕著に増加され、形成された水分子団の状態が普通水の50-60個のH_(2)Oから5-10個のH_(2)Oに減少され、直径が2nm(ナノメートル)よりも小さく、運動速度が速く、浸透及び溶解能力が強く、及び、金属リング1の表面に強大な誘導スワール流の電流が生じたため、金属リング1の金属分子が振動状態になり、迅速に摩擦して発熱することで、水の塩素、フッ素等などの有害な元素が除去され、消毒滅菌の効果が果たされている。このように、従来技術における小分子団水の製造方法が複雑化するという問題が解決された上、小分団水の製造装置の構造が簡素化され、コスト投入が大幅に低減され、コストがより安い小分子団水の製造に有利である。」

(2)本願優先日の技術常識を示す先行技術文献
先行技術文献1:三浦 靖 編著、「水の機能化」 初版第1刷、株式会社工業調査会、2004年 9月 1日、p.138-140
先行技術文献2:「『活水器』の表示に関する科学的視点からの検証について」、東京都生活文化局、平成17年2月、p.3-5、8

(3)先行技術文献の記載事項
(3-1)先行技術文献1の記載事項
先行技術文献1には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
(1a)「4 分子クラスタが小さい水
おいしい水,健康によい水として宣伝されている水の宣伝には水分子のクラスタが小さいという言葉がよく出てくる。固体の水(氷)では,水分子は周囲の水分子に束縛されて自由に動けずに規則的な位置に収まっている。気体の水(水蒸気)では,単分子として自由に動き回る。一方,水の液体構造については,従来から混合モデル(水を水素結合しているクラスタと自由な水分子の混合物からなる系として,これらの成分の間に熱力学的平衡が成立していると考えるモデル),ならびに連続体モデル(歪んだ水素結合で水全体が繋がっているとするモデル)などが考えられてきた。
水分子のクラスタは,混合モデルで考えられているものである。完全に水素結合を保っている氷が溶けて液体になるとき,いくつかの水素結合が切れたために液体の水になるという考えである。水素結合が切れると,水分子はあるまとまった大きさの集団になっていて,その水分子の集団をクラスタと呼ぶ(図12.1)^(1))。この考えからすると,氷ならすべての水分子が水素結合で結合しているが,液体の水では部分的に氷の構造を残しながらも,単分子の水分子がそのすき間に入り込むことになる。ここで注意すべきことは,水分子のクラスタは固定的なものではなく,きわめて激しい変化の中にあるということである。すなわち,ある水クラスタの構造が保たれているのは10^(-12)s(1ps)程度の非常に短い時間であるので,短時間で生成・消滅している非常に動的なものである。
一般的に,通常の水と比べて何らかの活性をもった水を活性水と呼んでいる。そのうち特定の機能をもった水を機能水と呼ぶ。しかし,活性水と機能水との間の共通性や相違点の明確な定義はない。これらは共通して,「水は何らかの微弱なエネルギーを受けると,水の構造(クラスタ)が小さくなって,細胞に浸透しやすくなり,植物の成長を促進したり,味がよくなったりする。クラスタの小さい水は健康によい」と述べているが,科学的な裏付けはなされていない。以前には,^(17)O-NMRの半値幅を測定し,「半値幅が小さい水はクラスタが小さい」といわれたことがあるが,現在では^(17)O-NMR半値幅は水分子の回転運動とプロトンの交換速度の総合的情報を表すものであり,水分子のクラスタの大小表すものではないと結論が出されている。」(138頁4行?139頁7行)

(1b)「なお,真空中に液体のジェットを吹き出して数分子からなる細かい液滴を作って質量や成分を分析する実験技術があり,このときできる微小液滴をクラスタと呼ぶ。このクラスタは実体もあるし測定できる。しかし,液体中で分子がクラスタを作って存在するかどうかはまた別の問題である。液体状態でクラスタの集まりを測定する方法は今のところない。」(140頁3行?15行)

(1c)「

」(140頁)

(3-2)先行技術文献2の記載事項
先行技術文献2には以下の記載がある。
(2a)「3 『活水器』で『水のクラスター』が小さくなる?
(1)『クラスター』とは
クラスター(cluster)とは、『数個から数百個の原子又は分子が凝集して形成される原子又は分子の集団』のことである(『理化学辞典 第5版』岩波書店)。
何個かの水分子が水素結合によって集合している状態のことを一般的に水分子のクラスターと呼んでいる。こうした結合は、非常に短い時間(ピコ秒:1兆分の1秒単位)で変幻自在に生成消滅を繰り返しているといわれている。今のところ、液体状態での水のクラスターの大きさを測定する手段は確立されていない。
しかし、『活水器』に係る表示の中には、『水道水の大きなクラスター集団を切り離して小さな(数個単位の)クラスターにする』といったものが見受けられる。」(3頁1行?10行)

(2b)「

」(3頁)

(2c)「(2)『^(17)O NMR半値幅』と水のクラスター
水のクラスターの大きさを測定する方法として、『^(17)O NMR 半値幅』を測定^(※1)し、これが小さくなったことをもって『クラスターが小さくなった』とする説がある。しかし、この説は、1993年に水環境学会誌に掲載された論文^(※2)により否定されるなど、専門家の間で問題視されている。

※1 質量数17の酸素(^(17)O)の原子核が電磁波を吸収する波長などの様子から、その原子を含む分子の情報を測定する分析方法(NMR法 : Nuclear Magnetic Resonance Method)
※2 大河内正一,石原義正,荒井強,上平恒(1993) : NMR分光法による水評価,水環境学会誌,16,409-415.

(3)水のクラスターの大きさは測定できない。
上記(1)及び(2)から、現時点においては、『^(17)O NMR半値幅』の測定結果を根拠に『活水器で水道水のクラスターが小さくなった』と結論付けることはできない。科学的根拠が問題視されているデータ解釈をもとに、商品の優良性等を断定的に表示することは、客観的事実に基づいたものであるとは認められず、実際のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認を与えるおそれがある。

(4)クラスターに関する表示
以上のことを踏まえ、今回調査・検証した『活水器』の表示を見ると、下表以下のようなものがあり、いずれも客観的事実に基づいた表示であるとは認められず、景品表示法に違反するおそれがある。」(3頁11行?4頁11行)

(2d)「

」(4頁?5頁)

(2e)「おわりに
消費者の健康志向の高まりなどを受けて、商品やサービスについて、一見、科学的な根拠に基づいて、さまざまな効果・性能があるかのように表示しているものが多くみられる。
しかし、今回行った『活水器』の表示に関する調査・検証結果において、次の3点が認められた。

I 現時点で行われている試験結果からは、『水のクラスターが小さくなる』と結論付けることはできない。こうした中で、『水のクラスターが小さくなる』等と断定的に表示することは、客観的事実に基づいたものとは認められない。

II 『活水器』の様々な効果・性能に係る表示については、クラスターが小さくなることとの関連性が不明確であり、表示の根拠として提出された資料は客観的事実に基づくものとは認められなかった。

III インターネットを利用した通信販売事業者の中には、取扱商品について十分な情報や根拠を持たないまま、表示を行っているものがある。」(8頁1行?14行)

(4)判断
(ア)上記(1)(a)、(b)によれば、本願発明は、小分子団水の製造方法に関するものであって、製造方法を大幅に簡素化し、製造構造が簡単で、磁化効果も優れて、製造コストが低い小分子団水の製造方法を提供することを目的とするものである、とされている。

(イ)上記(1)(c)によれば、本願発明に係る小分子団水の製造方法によって製造された水は、以下のものである、とされている。
1.上記の方法によって製造された水のパラメーター^(17)O NMRハーフピーク幅は、54Hzであるところ、国内外の水のサンプル測定データ/報告によると、^(17)O NMRハーフピーク幅が80Hzまで小さくなると、物態が安定している小分子団水であると考えられるから、上記の方法によって製造された水は、十分に安定している小分子団水である。
2.上記の方法によって製造された水の溶解性固体の合計含有量は166.6mg/Lであり、これにより、この水の口当たりがとてもよく、非常にスルスルとしているため、この水は、小分子団水の特性を有する。
3.上記の方法によって製造される前の水は、通常の水道水であり、これの溶解性固体の合計含有量は淡水値に近く、即ち、100mg/L未満であるのに対して、上記の方法によって製造された水の溶解性固体の合計含有量は166.6mg/Lであるため、溶解能力は大幅に向上され、小分子団水の高溶解能力の特性も満たしている。

(ウ)上記(ア)?(イ)「1.」によれば、本願発明は、小分子団水の製造方法に係るものであって、具体的には、^(17)O NMRハーフピーク幅が54Hzの小分子団水を製造するものである、とされている。
ここで、例えば上記(3)(3-1)(1a)、(3-2)(2a)の記載に照らせば、上記小分子団水は、クラスター水であることを意味していると認められるので、本願発明は、クラスター水の製造方法に係るものであって、具体的には、^(17)O-NMRの半値幅が54Hzのクラスター水を製造するものである、と言い換えることができる。

(エ)一方、上記(3)(3-1)(1a)?(1c)によれば、水分子のクラスタは固定的なものではなく、きわめて激しい変化の中にあり、ある水クラスタの構造が保たれているのは10^(-12)s(1ps)程度の非常に短い時間であるので、短時間で生成・消滅している非常に動的なものであり、以前には、水の^(17)O-NMRの半値幅を測定し、「半値幅が小さい水はクラスタが小さい」といわれたことがあるが、現在では^(17)O-NMRの半値幅は水分子の回転運動とプロトンの交換速度の総合的情報を表すものであり、水分子のクラスタの大小を表すものではないと結論が出されているものであり、更に、液体状態の水でクラスタの集まりを測定する方法は今はない、とされている。

(オ)また、上記(3)(3-2)(2a)?(2e)によっても、液体状態での水のクラスターの大きさを測定する手段は確立されておらず、一部には、水のクラスターの大きさを測定する方法として「^(17)O NMR半値幅」を測定し、これが小さくなったことをもって「クラスターが小さくなった」とする説があるが、この説は専門家の間で問題視されており、現時点においては、「^(17)O NMR半値幅」の測定結果を根拠に、「水道水のクラスターが小さくなった」と結論付けることはできず、現時点で行われている試験結果からは、「水のクラスターが小さくなる」と結論付けることはできないものである、とされている。

(カ)上記(エ)、(オ)によれば、液体状態の水において、クラスターの構造が保たれているのは10^(-12)s(1ps)程度の非常に短い時間であって、短時間で生成・消滅している非常に動的なものであり、そのような液体状態の水のクラスターの大きさを測定する手段は確立されておらず、更に^(17)O-NMRの半値幅は、水のクラスターの大小を表すものではなく、水分子の回転運動とプロトンの交換速度の総合的情報を表すものであって、このことは、本願優先日において技術常識といえるものである。

(キ)そして、上記(カ)に記載される技術常識によれば、本願発明において、水の^(17)O-NMRの半値幅を測定し特定したとしても、クラスター水、つまり、小分子団水が製造できていることを確認できないことは明らかである。

(ク)また、上記(ア)?(イ)「2.」によれば、本願発明により製造された水の溶解性固体の合計含有量は166.6mg/Lであり、これにより、この水の口当たりがとてもよく、非常にスルスルとしているため、この水は、小分子団水の特性を有する、とされている。
ところが、上記(1)(c)の【0023】によれば、溶解性固体の合計量と飲用水の味は、とても良い(300mg/L未満);良い(300?600mg/L);一般(600?900mg/L);悪い(900?1200mg/L);飲用できない(1200mg/Lを超える)という関係があり、溶解性固体の合計量が多くなる程飲用には不適な水となるのであるから、本願発明により製造された、溶解性固体の合計含有量が166.6mg/Lである水が、溶解性固体の合計含有量が100mg/L未満である水道水より「口当たりがとてもよい」とする根拠はなく、そのため、「小分子団水の特性を有する」との根拠ともなり得ない。

(ケ)更に、上記(ア)?(イ)「3.」によれば、本願発明により製造された水の溶解性固体の合計含有量は、水道水が100mg/L未満であるのに対して、166.6mg/Lであるため、溶解能力は大幅に向上され、小分子団水の高溶解能力の特性も満たしている、とされている。
ところが、水の溶解性固体の合計含有量が多いということは、単に水が不純物を多く含むことを意味するに過ぎず、溶解能力の向上を意味しているとはいえないことから、「小分子団水の高溶解能力の特性も満たしている」との根拠ともなり得ない。

(コ)次に、上記(1)(d)によれば、本願発明により、金属リング1を、非導磁容器3に載せられた水に放置して、その後、交番磁界を印加し、普通の方法として、220V,50HZの工業頻度の交流電を大電力の電子発振回路で1500V,25000HZの超可聴周波の交流電に転化し、更に、交番界磁コイル4を用い、即ち、ファラデーの法則を用い、超音波振動効果を果たす交番電磁界が生じるようにして、磁力線が非導磁容器3を透過して、金属リング1の表面に強大な誘導スワール流の電流が生じ、強い電位差が生じ、かつ、金属リング1に設けられた若干の放電孔2の作用によって、金属リング1の表面断層のスワール流の電流が瞬間の極性電池効果が生じ、正電荷を水分子のO_(2)^(-)酸素イオン、負電荷を水分子のH^(+)水素イオンに直接に伝達し、電気エネルギーの交換により、水分子を電解反応させ、微量のO_(2),H_(2),HO_(2),O_(3),O_(2)等の物質が生じ、同時に、超音波周波数の交番磁力線によって非導磁容器の水に対し励起・磁化処理が行われ、水分子H_(2)Oの酸水素H-O化学結合の挟み角が普通水(通常の水道水)の105°から103°に変化するものであり、更に、本願発明により製造される水は、普通水よりも浸透・溶解能力が63%増大し、その水分子の表面張力が低下され、粘度も下がり、還元性が迅速に強くなり、水の酸素含有量が顕著に増加され、形成された水分子団の状態が普通水の50-60個のH_(2)Oから5-10個のH_(2)Oに減少され、直径が2nm(ナノメートル)よりも小さく、運動速度が速く、浸透及び溶解能力が強く、及び、金属リング1の表面に強大な誘導スワール流の電流が生じたため、金属リングの金属分子が振動状態になり、迅速に摩擦して発熱することで、水の塩素、フッ素等などの有害な元素が除去され、消毒滅菌の効果が果たされる、とされている。

(サ)しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、これらの化学結合の挟み角や表面張力、浸透・溶解能力といった特性の具体的な測定方法や測定結果が記載されておらず、かつ、これらの特性により、本願発明により直径2nmのクラスター水、つまり、5-10個のH_(2)Oからなる小分子団水が製造されることを確認できるという技術常識があるとも認められない。

(シ)そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、上記(カ)に記載される技術常識に照らして、また、本願明細書の発明の詳細な説明に記載される、本願発明により製造される水の特性を参酌しても、本願発明によってクラスター水が製造できること、つまり、小分子団水が製造できることを確認できないのであるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。

(ス)以上のとおりであるので、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合しない。

(5)平成30年 1月24日付け審判請求書における請求人の主張について
ア 平成30年 1月24日付け審判請求書における請求人の主張の概要
請求人は、平成30年 1月24日付け審判請求書(3頁1行?22行)において、小分子団水の形成のメカニズムに関しては、「磁場による水処理のメカニズムにおける議論」(CHEN Zhaowei,Physics,1992.col.21(2))に記載されているから、出願時の技術常識を考慮すれば、磁場は水中の水素結合を破壊して小分子団水を生成することを当業者が理解することができる旨、請求項1において、「前記小分子団の水の^(17)O NMRハーフピーク幅は80Hz以下である」と補正したことにより、仮に当業者が小分子団水の形成のメカニズムを理解できない場合であっても、当業者であれば、明細書に記載されている実験データによって証明されている80 Hz以下の^(17)O NMRのハーフピーク幅を有する水を理解することができ、すなわち、本願発明は、処理対象である水に交番磁界を印加して、^(17)O NMRハーフピーク幅が80Hz以下である水(小分子団の水)を生成するものであり、これは、明細書において明確且つ十分に記載されているから、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確且つ十分に記載されたものである旨を主張している。

イ 判断
(ア)液体状態の水において、クラスターの構造が保たれているのは10^(-12)s(1ps)程度の非常に短い時間であって、短時間で生成・消滅している非常に動的なものであり、そのような液体状態の水のクラスターの大きさを測定する手段は確立されておらず、更に^(17)O-NMRの半値幅は、水のクラスターの大小を表すものではなく、水分子の回転運動とプロトンの交換速度の総合的情報を表すものであって、このことは、本願優先日において技術常識といえるものであることは、上記(4)(カ)に記載のとおりであるから、請求人が上記審判請求書において主張する、小分子団水の形成のメカニズムや、^(17)O NMRハーフピーク幅が80Hz以下である水(小分子団の水)に関する技術事項は、その信憑性が本願優先日において既に否定されているものである。

(イ)したがって、請求人の上記審判請求書における主張はいずれも採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないので、特許を受けることができないから、他の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-08-29 
結審通知日 2018-09-04 
審決日 2018-09-18 
出願番号 特願2016-524668(P2016-524668)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片山 真紀  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 金 公彦
小川 進
発明の名称 小分子団水の製造方法及び該方法を用いた小分子団水の製造装置  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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