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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1348402
審判番号 不服2017-16474  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-06 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 特願2016- 17162「マルチサイト測定アクセサリー、マルチサイト測定デバイス、及びマルチサイト測定システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月18日出願公開、特開2016-147052、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年2月1日(パリ条約による優先権主張 2015年2月13日 米国)の出願であって、同年12月27日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月4日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月22日付けで拒絶査定されたところ、同年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において平成30年8月31日付けで拒絶理由が通知され、同年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は平成30年11月30日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1、本願発明4、本願発明7は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
少なくとも二つの反射型光学センサモジュールと、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールに電気的に接続されている通信モジュールと、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュール及び前記通信モジュールを収容するハウジングと、
を備えるマルチサイト測定アクセサリーであって、
前記ハウジングに複数の透明な開口が設置され、前記反射型光学センサモジュールの各々が、それぞれ一つの前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置しており、前記透明な開口は、カバーを備え、前記カバーの上表面には、マイクロ構造、湾曲したレンズ、薄膜或いはこれらの組み合わせが形成され、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記ハウジングの二つの表面に位置し、
前記ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面であることを特徴とするマルチサイト測定アクセサリー。」

「【請求項4】
少なくとも二つの反射型光学センサモジュールと、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールに電気的に接続されているマイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに電気的に接続されるメモリと、
前記マイクロプロセッサ及び前記メモリに電気的に接続される電源と、
前記マイクロプロセッサ、前記メモリ及び前記電源を収容するハウジングと、
を備えるマルチサイト測定デバイスであって、
前記ハウジングが複数の透明な開口を備え、前記反射型光学センサモジュールの各々が、それぞれ1つの前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置しており、前記透明な開口は、カバーを備え、前記カバーの上表面には、マイクロ構造、湾曲したレンズ、薄膜或いはこれらの組み合わせが形成され、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記ハウジングの二つの表面に位置し、
前記ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面であることを特徴とするマルチサイト測定デバイス。」

「【請求項7】
光学センサアクセサリーと、
光学センサデバイスと、
を備えるマルチサイト測定システムであって、
前記光学センサアクセサリーが、
第一反射型光学センサモジュールと、
前記第一反射型光学センサモジュールに電気的に接続されている第一マイクロプロセッサと、
前記第一マイクロプロセッサに電気的に接続されている第一通信モジュールと、
前記第一反射型光学センサモジュール、前記第一マイクロプロセッサ及び前記第一通信モジュールを収容する第一ハウジングと、を備え、
前記光学センサデバイスが、
少なくとも二つの第二反射型光学センサモジュールと、
前記第二反射型光学センサモジュールに電気的に接続されているマイクロプロセッサと、
前記マイクロプロセッサに電気的に接続されているメモリと、
前記マイクロプロセッサに電気的に接続されている第二通信モジュールと、
前記マイクロプロセッサ及び前記メモリに電気的に接続されている電源と、
前記マイクロプロセッサ、前記メモリ、前記第二通信モジュール及び前記電源を収容する第二ハウジングと、を備え、
前記第二ハウジングが透明な開口を含み、前記第二反射型光学センサモジュールが前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置しており、前記第一通信モジュールが前記第二通信モジュールと通信し、前記透明な開口は、カバーを備え、前記カバーの上表面には、マイクロ構造、湾曲したレンズ、薄膜或いはこれらの組み合わせが形成され、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記第二ハウジングの二つの表面に位置し、
前記第二ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記第二ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面であることを特徴とするマルチサイト測定システム。」

なお、本願発明2-3、5-6の概要は以下のとおりである。

本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明5-6は、本願発明4を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014-166215号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、当審で付した。)

「【0035】
<脈波センサ(第1実施形態)>
図3は、脈波センサの第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態の脈波センサ1は、本体ユニット10と、本体ユニット10の両端部に取り付けられて生体2(具体的には手首)に巻き回されるベルト20とを備えた腕輪構造(腕時計型構造)とされている。ベルト20の素材としては、皮革、金属、樹脂などを用いることができる。
【0036】
本体ユニット10は、光センサ部11と、フィルタ部12と、制御部13と、表示部14と、通信部15と、電源部16と、を含む。
【0037】
光センサ部11は、本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、発光部から生体2に光を照射して、生体内を透過した光の強度を受光部で検出することにより、脈波データを取得する。第1実施形態の脈波センサ1において、光センサ部11は、発光部と受光部が生体2を挟んで互いに反対側に設けられた構成(いわゆる透過型、図1の破線矢印を参照)ではなく、発光部と受光部が生体2に対していずれも同じ側に設けられた構成(いわゆる反射型、図1の実線矢印を参照)とされている。なお、本願の発明者らは、手首での脈波測定について、十分に脈波の測定が可能であることを実際に実験で確認済みである。光センサ部11の具体的な構造については、後ほど詳述する。
【0038】
フィルタ部12は、光センサ部11の出力信号(受光部の検出信号)にフィルタ処理、及び、増幅処理を施して制御部13に伝達する。なお、フィルタ部12の具体的な回路構成については、後ほど詳細に説明する。
【0039】
制御部13は、脈波センサ1全体の動作を統括的に制御するほか、フィルタ部12の出力信号に各種の信号処理を施すことにより、脈波に関する種々の情報(脈波の揺らぎ、心拍数、心拍変動、及び、加速度脈波など)を取得する。なお、制御部13としては、CPU[central processing unit]などを好適に用いることができる。
【0040】
表示部14は、本体ユニット10の表面(生体2と対向しない側の面)に設けられており、表示情報(日付や時間に関する情報のほか、脈波の測定結果なども含まれる)を出力する。すなわち、表示部14は、腕時計の文字盤面に相当する。なお、表示部14としては、液晶表示パネルなどを好適に用いることができる。
【0041】
通信部15は、脈波センサ1の測定データを外部機器(パーソナルコンピュータや携帯電話機など)に無線または有線で送信する。特に、脈波センサ1の測定データを外部機器に無線で送信する構成であれば、脈波センサ1と外部機器とを有線で接続する必要がなくなるので、例えば、被験者の行動を制約せずに測定データのリアルタイム送信を行うことが可能となる。また、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、測定データの外部送信方式として無線送信方式を採用することが望ましい。なお、無線送信方式を採用する場合、通信部15としては、Bluetooth(登録商標)無線通信モジュールICなどを好適に用いることができる。
【0042】
電源部16は、バッテリとDC/DCコンバータを含み、バッテリからの入力電圧を所望の出力電圧に変換して脈波センサ1の各部に供給する。このように、バッテリ駆動方式の脈波センサ1であれば、脈波の測定時に外部からの給電ケーブルを接続する必要がないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。なお、上記のバッテリとしては、繰り返して充電を行うことが可能な二次電池(リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなど)を用いることが望ましい。このように、バッテリとして二次電池を用いる構成であれば、煩わしい電池交換作業が不要となるので、脈波センサ1の利便性を高めることができる。また、バッテリ充電時における外部からの電力供給方式としては、USB[universal serial bus]ケーブルなどを用いる接触給電方式であってもよいし、或いは、電磁誘導方式、電界結合方式、及び、磁界共鳴方式などの非接触給電方式であってもよい。ただし、脈波センサ1を防水構造とする際には、外部端子を完全に排除するという観点から、外部からの電力供給方式として非接触給電方式を採用することが望ましい。
【0043】
上記のように、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者が意図的に脈波センサ1を手首から外さない限り、脈波の測定中に脈波センサ1が手首から脱落してしまうおそれは殆どないので、被験者の行動を制約せずに脈波の測定を行うことが可能となる。
【0044】
また、腕輪構造を有する脈波センサ1であれば、被験者に対して脈波センサ1を装着していることをあまり意識させずに済むので、長期間(数日?数ヶ月)に亘る継続的な脈波測定を行う場合であっても、被験者に過度のストレスを与えずに済む。
【0045】
特に、脈波の測定結果だけでなく、日時情報なども表示することのできる表示部14を備えた脈波センサ1(すなわち、腕時計構造の脈波センサ1)であれば、被験者は脈波センサ1を腕時計として日常的に装着することができるので、脈波センサ1の装着に対する抵抗感をさらに払拭することが可能となり、延いては、新規ユーザ層の開拓に寄与することが可能となる。
【0046】
また、脈波センサ1は、防水構造としておくことが望ましい。このような構成とすることにより、水(雨)や汗などに濡れても故障せずに脈波を測定することが可能となる。また、脈波センサ1を多人数で共用する場合(例えばスポーツジムでの貸し出し用として使用する場合)には、脈波センサ1を丸ごと水洗いすることにより、脈波センサ1を清潔に保つことが可能となる。
【0047】
<光センサ部(構造)>
図4は、光センサ部11の第1構成例を模式的に示す断面図である。第1構成例の光センサ部11は、ケース11aと、遮光壁11bと、透光板11zと、発光部xと、受光部yと、を有する。
【0048】
ケース11aは、発光部xと受光部yを収納する枡形状の部材である。なお、ケース11aは、その開口面を塞ぐ透光板11zが本体ユニット10の表面(生体2と対向する側の面)と面一になるように、本体ユニット10に埋設されている。
【0049】
遮光壁11bは、ケース11aを発光部xが載置される第1領域と受光部yが載置される第2領域に分割する部材である。遮光壁11bを設けることにより、発光部xから受光部yへ直接的に入射される光を遮ることができるので、脈波データの検出精度を高めることが可能となる。なお、ケース11aと遮光壁11bは、一体成形することが望ましい。
【0050】
透光板11zは、ケース11aの開口面を塞ぐ透光性の部材である。透光板11zを設けることにより、発光部x及び受光部yの汚損(埃などの付着)を防止することができるので、発光部x及び受光部yとして、樹脂などで封止されていないベアチップ(発光チップ及び受光チップ)を用いることが可能となる。
【0051】
第1構成例の光センサ部11であれば、発光部xから生体2に光を照射した後、生体2内を透過した光の強度を受光部yで検出することによって、被験者の脈波データを取得することが可能である。
【0052】
しかしながら、第1構成例の光センサ部11では、生体2と発光部x及び受光部yとの間に透光板11zが存在するので、生体2を介することなく透光板11zを介して発光部xから受光部yへ直接的に光が入射されるおそれがある。また、第1構成例の光センサ部11では、光センサ部11と生体2との密着性が損なわれたときに、外光が受光部yに漏れ入るおそれもある。生体2を透過していない光が受光部yに入射されると、脈波データの検出精度(S/N)が低下するので、脈波データの検出精度を向上させるためには、上記の問題を解消しておくことが重要となる。」

「【0075】
<光センサ部(配置)>
図10は腕時計型の脈波センサ1における光センサ部11の配置レイアウト図である。腕時計型の脈波センサ1において、光センサ部11を担持する本体ユニット10(例えば直径28mm)は、その両端にベルト20が接続されるものであり、生体2(手首)への装着時には、ベルト20の締め付けによって生体2側への押圧力(図10中の太い矢印を参照)が与えられる部材である。
【0076】
このような腕時計構造の脈波センサ1について、本願の発明者らは、本体ユニット10に与えられる生体2側への押圧力が所定の分布を有しており、光センサ部11の配設位置に応じて、光センサ部11と生体2との密着性(延いては受光信号の信号強度)が異なるという知見を得た。
【0077】
そして、本願の発明者らは、鋭意研究の末、生体2側への押圧力が最大となる着力点の近傍、より具体的には、本体ユニット10とベルト20との接続点から光センサ部11の配設位置(光センサ部11の中心位置)までの距離をDとしたときに、D≦10mmという関係が成立する領域内(図10のハッチング領域内)に光センサ部11を配置すれば、受光信号の信号強度を向上し得ることを見出した。
【0078】
図11は、光センサ部11の配置と信号強度との相関関係を示す波形図であり、上段には、本体ユニット10の端部(図10のハッチング領域内)に配置された光センサ部11の受光波形が示されており、下段には、本体ユニット10の中央部(図10のハッチング領域外)に配置された光センサ部11’の受光波形が示されている。両波形を比較すれば分かるように、本体ユニット10の端部に配置された光センサ部11は、生体2との密着性が向上した結果、被験者の安静時における脈波はもちろん、被験者の運動時における脈波についても、これを精度良く測定することが可能である。
【0079】
なお、上記で得られた知見は、腕時計型の脈波センサ1のみならず、図12で示すように、イヤリング型の脈波センサ1にも適用が可能である。
【0080】
図12は、イヤリング型の脈波センサ1における光センサ部11の配置レイアウト図である。イヤリング型の脈波センサ1において、光センサ部11を担持する本体ユニット10(例えば第1端から第2端までの全長が24mm)は、第1端にバネ蝶番30が接続されて第2端が開放端とされるものであり、生体2(耳朶)への装着時には、バネ蝶番30によって生体2側への押圧力(図12中の太い矢印を参照)が与えられる部材である。
【0081】
この場合、生体2側への押圧力が最大となる着力点は、本体ユニット10の第2端(開放端)となる。従って、本体ユニット10の第2端(開放端)から光センサ部11の配設位置(光センサ部11の中心位置)までの距離をDとしたときに、D≦10mmという関係が成立する領域内に光センサ部11を配置すれば、光センサ部11と生体2との密着性を高めて、受光信号の信号強度を向上することができる。
【0082】
なお、図10及び図12では、本体ユニット10の表面上に光センサ部11を一つだけ設けた構成を例に挙げたが、光センサ部11の設置数についてはこれに限定されるものではなく、生体2側への押圧力が最大となる着力点の近傍領域内に、光センサ部11を複数設けても構わない。」

【図1】

【図3】

【図4】


また、【図3】、【図4】より、本体ユニット10に開口部が設置され、光センサ部11が開口部内に配置されていることが見て取れる。そして、光センサ部11が複数であることから(段落【0082】参照)、開口部も複数であり、複数の光センサ部11の各々が別個の開口部に位置しているものと認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 本体ユニット10と、本体ユニット10の両端部に取り付けられて生体2に巻き回されるベルト20とを備えた腕時計型構造の脈波センサ1であって、
本体ユニット10は、複数の反射型の光センサ部11と、CPUなどの制御部13と、通信部15と、電源部16と、を含み、
制御部13と通信部15は光センサ部11に電気的に接続され、
電源部16は脈波センサ1の各部に電力を供給し、
本体ユニット10には複数の開口部が設置され、複数の光センサ部11の各々は別個の開口部に位置して本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、
各光センサ部11のケース11aは、その開口面を塞ぐ透光性の部材である透光板11zが本体ユニット10の裏面と面一となるように、本体ユニット10に埋設されている、
脈波センサ1。」

第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「複数の反射型の光センサ部11」は、本願発明1の「少なくとも二つの反射型光学センサモジュール」に相当する。

イ 引用発明の「光センサ部11に電気的に接続され」た「通信部15」は、本願発明1の「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールに電気的に接続されている通信モジュール」に相当する。

ウ 引用発明の「光センサ部11」と「通信部15」を「含」む「本体ユニット10」は、本願発明1の「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュール及び前記通信モジュールを収容するハウジング」に相当する。

エ 引用発明の「複数の反射型の光センサ部11」を有する「腕時計型構造の脈波センサ1」は、本願発明1の「マルチサイト測定アクセサリー」に相当する。

オ 引用発明の「透光板11z」は、本願発明1の「カバー」に相当する。

カ 引用発明の「本体ユニット10」に設けられた「複数の開口部」は、「複数の光センサ部11」が位置する部分であり、透明であると認められるから、引用発明の「本体ユニット10には複数の開口部が設置され」ること、は本願発明1の「ハウジングに複数の透明な開口が設置され」ることに相当する。

キ 引用発明の「本体ユニット10には複数の開口部が設置され、複数の光センサ部11の各々は別個の開口部に位置して本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、
各光センサ部11のケース11aは、その開口面を塞ぐ透光性の部材である透光板11zが本体ユニット10の裏面と面一となるように、本体ユニット10に埋設され」ており、「本体ユニット10」の「複数の開口部」には「透光性の部材である透光板11zが本体ユニット10の裏面と面一になるように」備えられていることから、引用発明の本体ユニット10の複数の開口部は、透光性の部材である透光板11zが設置されていると認められる。
したがって、引用発明の「本体ユニット10には複数の開口部が設置され、複数の光センサ部11の各々は別個の開口部に位置して本体ユニット10の裏面(生体2と対向する側の面)に設けられており、
各光センサ部11のケース11aは、その開口面を塞ぐ透光性の部材である透光板11zが本体ユニット10の裏面と面一となるように、本体ユニット10に埋設されている」ことは、本願発明1の「ハウジングに複数の透明な開口が設置され」「前記透明な開口は、カバーを備え」ることに相当する。

ク 引用発明の「本体ユニット10には複数の開口部が設置され、複数の光センサ部11の各々は別個の開口部に位置して」いることは、本願発明1の「ハウジングに複数の透明な開口が設置され、前記反射型光学センサモジュールの各々が、それぞれ一つの前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置して」いることに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 少なくとも二つの反射型光学センサモジュールと、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールに電気的に接続されている通信モジュールと、
前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュール及び前記通信モジュールを収容するハウジングと、
を備えるマルチサイト測定アクセサリーであって、
前記ハウジングに複数の透明な開口が設置され、前記反射型光学センサモジュールの各々が、それぞれ一つの前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置しており、前記透明な開口は、カバーを備えた、
マルチサイト測定アクセサリー。」

(相違点)
(相違点1)
本願発明1の「カバー」には、その「上表面」に「マイクロ構造、湾曲したレンズ、薄膜或いはこれらの組み合わせが形成され」ているのに対して、引用発明の「透光板11z」は、(平)「板」である点。

(相違点2)
本願発明1の「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが」、「一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり」、「他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」「前記ハウジングの二つの表面に位置し」ているのに対して、引用発明1では「複数の光センサ部11」は、いずれも本体ユニット10の裏面に設けられている点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用文献1の全記載を精査しても、相違点2に係る本願発明1の「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが」、「一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり」、「他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」「前記ハウジングの二つの表面に位置し」ているという構成は、記載されておらず、また、腕時計型構造の脈波センサ1に複数の光センサ部11を設ける場合の配置について、段落【0082】に「光センサ部11の設置数については…生体2側への押圧力が最大となる着力点の近傍領域内に、光センサ部11を複数設けても構わない。」と記載されているのみであり、本体ユニット10の裏面以外の面に光センサ部を設けることを示唆する記載もない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1と同様に「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが」、「一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり」、「他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」「前記ハウジングの二つの表面に位置し」ているという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 特許法第37条について
原査定は、この出願の平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1-3に係る発明は、上記引用文献1により新規性が欠如しており、特別な技術的特徴を有しない。また、同手続補正で補正された請求項4-9に係る発明は、請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない。そして、請求項4-9に係る発明は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情も無い。
したがって、同手続補正で補正された請求項4-9は特許法第37条の要件を満たしていないので、審査対象としないというものである。
その後、当該請求項1、4、9は平成30年11月30日付け手続補正で、請求項1、4、7となり、その際、「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記ハウジングの二つの表面に位置し、
前記ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」という共通する構成を追加する補正がされた。
そして、当該構成は上記引用文献1に記載されたものではなく、先行技術に対して貢献をもたらすものであり、発明の特別な技術的特徴である。
また、平成30年11月30日付け手続補正で補正された請求項5-6は請求項4の構成を含むものである。
したがって、平成30年11月30日付け手続補正で補正された、請求項1-7に係る発明は同一の特別な技術的特徴を有するものとなったため、当該拒絶理由は解消した。

2 特許法第29条第1項第3号について
原査定は、この出願の平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1-3に係る発明は上記引用文献1に記載されたものであるから、特許を受けることができないというものである。
しかしながら、請求項1-3に係る発明は、平成30年11月30日付け手続補正により、「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記ハウジングの二つの表面に位置し、
前記ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」という構成を有するものとなっており、上記第4 1(1)に示したとおり、少なくとも相違点2で引用発明と相違しており、上記引用文献1に記載されたものではない。

3 特許法第29条第2項について
原査定は、この出願の平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1-3に係る発明は上記引用文献1に基づき、当業者であれば容易に想到し得るものであるから、特許を受けることができないというものである。
しかしながら、請求項1-3に係る発明は、平成30年11月30日付け手続補正により、「前記少なくとも二つの反射型光学センサモジュールが、前記ハウジングの二つの表面に位置し、
前記ハウジングの一つの表面がウェアラブル時計の時計文字盤であり、前記ハウジングの他の表面がウェアラブル時計のケースの背面である」という構成を有するものとなっており、当該構成については上記第4 1(2)で検討したとおり、引用発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものではない。

4 したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第37条について
当審では、平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1に係る発明と、請求項9に係る発明との間に共通する特別な技術的特徴がないとの拒絶の理由を通知しているが、前記第5 1で述べたとおり、平成30年11月30日付け手続補正によりこの拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第2号について
当審では、平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1の「ハウジング」の「開口」が備えるものである(が、「反射型光学センサモジュール」の開口が備えるものではない)「カバー」が、どのような構成を示すのかが明らかでなく、請求項1は明確ではないとの拒絶の理由を通知している。また、請求項2-8も同様に明確ではないとの拒絶の理由を通知している。
これに対して、平成30年11月30日付け手続補正で、請求項1において、「前記反射型光学センサモジュールの各々が、それぞれ一つの前記透明な開口から入る光を受ける部位に位置しており」と補正するとともに、平成30年11月30日付けの意見書における「本願では、まず、2種類の開口:
・反射型光学センサモジュール(5)の開口(191)(図61B)
・ハウジング(図83B、図83Cにて符号なしで図示)の開口(153)(図87A、図87D)
があります。図87Dに示されているように、開口(191)の外側に、開口(191)と対向するようにハウジングの開口(153)が存在しています。
請求項1に記載の開口は、ハウジングの開口(153)のことです。
カバー(150)は、反射型光学センサモジュール(5)の開口(191)に備えられているのではなく、ハウジングの開口(153)に備えられています。
反射型光学センサモジュール(5)は、ハウジングの開口(153)と同じ部位にあるのではなく、ハウジングの開口(153)の奥の部位、すなわち、ハウジングの開口(153)から入る光を受ける部位にあります。」との主張を踏まえれば「ハウジング」の「開口」が備える「カバー」の構成は明確であるから、請求項1に係る発明は明確である。
同様に、平成29年4月4日付け手続補正で補正された、請求項2-4、7-8に対応する平成30年11月30日付け手続補正で補正された、請求項2-6に係る発明も明確である。
なお、平成30年11月30日付け手続補正で請求項5、6は削除されたことにより、請求項5、6に対してなされた当該拒絶理由は解消した。

3 特許法第29条第2項について
当審では、平成29年4月4日付け手続補正で補正された請求項1-5、7-8に係る発明は上記引用文献1に基づき、当業者であれば容易に想到し得ることであるという拒絶の理由を通知した。
当該拒絶理由は、上記第4 1(2)で検討したとおり、平成30年11月30日付け手続補正でされた補正により解消している。

第7 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の理由及び当審拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-05 
出願番号 特願2016-17162(P2016-17162)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 65- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 洋行  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 渡戸 正義
三木 隆
発明の名称 マルチサイト測定アクセサリー、マルチサイト測定デバイス、及びマルチサイト測定システム  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

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