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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F01D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F01D |
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管理番号 | 1348411 |
審判番号 | 不服2018-4070 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-03-23 |
確定日 | 2019-02-19 |
事件の表示 | 特願2014-84566「波力発電タービン」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月16日出願公開、特開2015-203395、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年4月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年9月28日付け :拒絶理由通知書 平成29年11月30日 :意見書の提出 平成29年12月20日付け :拒絶査定 平成30年3月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 平成30年11月2日付け :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由 通知」という。) 平成30年12月26日 :意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成29年12月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1に係る発明は、引用文献A及びBに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献A:特開昭63-85201号公報 引用文献B:米国特許出願公開第2011/0142656号明細書(本 審決における引用文献1) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1 特許法第36条第6項第2号について 本願は、請求項1の「先端に向かって漸次傾斜して」、「後方に漸次傾斜して」及び「突出部」との記載が、明りょうでないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2 特許法第29条第1項第3号について 本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 引用文献1:米国特許出願公開第2011/0142656号明細書 第4 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年12月26日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 円筒風洞内に配置され、前記円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、 前記回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する複数のタービンブレードを有するロータハブとを備え、 前記タービンブレードは、回転方向に対して前方に突出する突出部を有し、 前記突出部の先端は、前記タービンブレードの全長Lに対して、根元から長さ0.5L以上の箇所に形成され、 前記突出部が、タービンブレードの根元から前記先端にわたって、前記前方に向かって漸次傾斜して形成されるとともに、前記先端からタービンブレードの半径方向先端にわたって、回転方向に対して後方に向かって漸次傾斜して形成されていることを特徴とする波力発電タービン。」 (下線は、請求人による補正箇所を示す。) 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶理由及び当審拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された米国特許出願公開第2011/0142656号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「ウェルズタービンのためのロータブレード設計」に関して、図面(特に、Fig.1及びFig.7参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。) ア 「The invention relates to a rotor blade design for a Wells turbine, in particular for use in a wave powerplant」(明細書第1ページ左欄第3行及び第4行) (当審仮訳:本発明は、波力発電用ウェルズタービンのロータブレードの設計に関する。) イ 「FIG. 1 shows a top view in the axial direction of a Wells turbine 1 designed according to the invention. A hub 2 having an exemplary configuration of three rotor blades 3.1, 3.2, and 3.3 is outlined. 」(明細書第2ページ左欄第42行ないし第45行) (当審仮訳:Fig.1は、本発明に従って設計されたウェルズタービン1の軸線方向の上面図を示している。3枚のロータブレード3.1、3.2、及び3.3を有するハブ2が示されている。) ウ 「It accordingly follows that for the conditions shown in FIG. 2, a flow stall also exists in a second area 15. Correspondingly, the flow stall draws essentially over the entire radial extension of the rotor blade 3 and extends up to its radially outer areas, which adjoins the wall 13 of the flow duct. The efficiency will drop strongly as a result.」(明細書第3ページ左欄第3行ないし第8行) (当審仮訳:Fig.2に示されている条件では、流れ剥離は、第2エリア15に存在する。相応して、流れ剥離は、ローターブレード3の半径方向の全域となって、その半径方向外側の領域まで延在し、これは、流路の壁13に隣接している。これにより、効率は著しく低下する。) エ 「Furthermore, FIG. 7 shows an embodiment alternative having a forward-curved sickle shape of the threading line cores, the threading line 6 being returned back to the threading line 6 at the radially outer end of the rotor blade 3. 」(明細書第3ページ右欄第41行ないし第44行) (当審仮訳:また、Fig.7は、前方に湾曲した鎌形状のスレッドライン中央部位を有する代替実施形態を示し、スレッドライン6は、ロータブレード3の半径方向外側端部で戻る。) オ 流路の壁13の周方向一部分が示されたFig.7から、流路の壁13が曲面であることが看取できるから、流路の壁13は円筒形であるといえる。また、ロータブレードが回転軸に設けられ、前記回転軸と風洞とを同心軸線上に配置することは技術常識であるから、円筒形の流路の壁13内に配置され、前記円筒形の流路の壁13と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸を備えているといえる。 カ 上記イ及びFig.1の図示内容からみて、半径方向に向かって延在するローターブレード3が複数あることが分かる。また、ローターブレード3とハブ2は一体化されるものであるから、それらをまとめて、ローターブレード3を有するハブ2といえる。 キ 技術常識からみて、ハブ2が前記回転軸に固着されている(相対変位しない)ことは明らかである。 ク 上記エ及びFig.7の図示内容からみて、ローターブレード3の鎌形状の部位の先端は、径方向中央寄り、或いはそれよりやや外側の箇所に形成されているといえる。また、鎌形状の部位は、ローターブレード3の根元から前記先端にわたって、回転方向に対して外側に向かって漸次傾斜しているとともに、前記先端からローターブレード3の半径方向先端にわたって、回転方向に対して後方に向かって漸次傾斜していることが分かる。 上記アないしク並びにFig.1及びFig.7の図示内容を総合すると、引用文献1には、「波力発電用ウェルズタービン」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「円筒形の流路の壁13内に配置され、前記円筒形の流路の壁13と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、 前記回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する複数のローターブレード3を有するハブ2とを備え、 前記ローターブレード3は、前方に湾曲した鎌形状の部位を有し、 前記鎌形状の部位の先端は、径方向中央寄り、或いはそれよりやや外側の箇所に形成され、 前記鎌形状の部位が、ローターブレード3の根元から前記先端にわたって、回転方向に対して外側に向かって漸次傾斜して形成されるとともに、前記先端からローターブレード3の半径方向先端にわたって、回転方向に対して後方に向かって漸次傾斜して形成されている波力発電用ウェルズタービン。」 第6 対比・判断 (1)対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「円筒形の流路の壁13」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「円筒風洞」に相当し、以下同様に、「ローターブレード3」は「タービンブレード」に、「ハブ2」は「ロータハブ」に、「前方に湾曲した鎌形状の部位」は「回転方向に対して前方に突出する突出部」に、「径方向中央寄り、或いはそれよりやや外側」は「タービンブレードの全長Lに対して、根元から長さ0.5L以上」に、「波力発電用ウェルズタービン」は「波力発電タービン」に、それぞれ相当する。 また、引用発明における「回転方向に対して外側に向かって漸次傾斜して形成される」と、本願発明における「前方に向かって漸次傾斜して形成される」とは、「漸次傾斜して形成される」という限りで共通する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。 〔一致点〕 「円筒風洞内に配置され、前記円筒風洞と同心軸線上に回転自在に支持された回転軸と、 前記回転軸に固着され、半径方向に向かって延在する複数のタービンブレードを有するロータハブとを備え、 前記タービンブレードは、回転方向に対して前方に突出する突出部を有し、 前記突出部の先端は、前記タービンブレードの全長Lに対して、根元から長さ0.5L以上の箇所に形成され、 前記突出部が、タービンブレードの根元から前記先端にわたって、漸次傾斜して形成されるとともに、前記先端からタービンブレードの半径方向先端にわたって、回転方向に対して後方に向かって漸次傾斜して形成されている波力発電タービン。」 〔相違点〕 本願発明においては、突出部が、タービンブレードの根元から前記先端にわたって、「前記前方に向かって」漸次傾斜して形成されているのに対し、 引用発明においては、鎌形状の部位が、ローターブレード3の根元から前記先端にわたって、回転方向に対して外側に向かって漸次傾斜して形成されている点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 引用文献1には、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を示唆する記載はない。 また、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、「タービンブレード4の下流側において、タービンブレードの根元に近い領域で発生する渦流と、先端に近い領域で発生する渦流とが、互いに逆方向に渦を巻くように流れる。この2つの渦流により、タービンブレードの前方を通過した空気流が、タービンブレードの下流側表面に近い領域で流れるようになって、空気流の剥離を防止することができる。したがって、タービンブレードの失速が低減され、タービン効率を向上させることができる。」(本願明細書の段落【0015】)との効果を奏するものである。 そうすると、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲内で、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明と同一であるとはいえない。また、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第7 原査定についての判断 平成30年12月26日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1は、「前記突出部が、タービンブレードの根元から前記先端にわたって、前記前方に向かって漸次傾斜して形成される」との発明特定事項を有するものであるから、上記「第6」で検討したとおり、本願発明は、当業者であっても、引用文献B(引用文献1)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、引用文献Aも、「波力発電装置」が記載されているに留まり、上記発明特定事項を開示又は示唆するものではないから、本願発明は、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献A及びBに基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由について 1 特許法第36条第6項第2号について 平成30年12月26日の手続補正により、請求項1は、「前記突出部が、タービンブレードの根元から前記先端にわたって、前記前方に向かって漸次傾斜して形成されるとともに、前記先端からタービンブレードの半径方向先端にわたって、回転方向に対して後方に向かって漸次傾斜して形成されている」と補正された結果、この拒絶理由は解消した。 2 特許法第29条第1項第3号について 上記「第6」で検討したとおりである。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由及び当審が通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-02-04 |
出願番号 | 特願2014-84566(P2014-84566) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F01D)
P 1 8・ 113- WY (F01D) P 1 8・ 537- WY (F01D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 倉田 和博 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 粟倉 裕二 |
発明の名称 | 波力発電タービン |
代理人 | 山口 巖 |
代理人 | 山口 巖 |
代理人 | 山本 浩 |
代理人 | 山本 浩 |