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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1348424
審判番号 不服2018-7584  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-04 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 特願2016-504494「表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 2日国際公開、WO2014/154225、平成28年 6月 2日国内公表、特表2016-516221、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年(2013年)3月26日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成28年10月19日付け:拒絶理由通知
平成29年 1月20日 :意見書・手続補正書
平成29年 6月29日付け:拒絶理由通知(最初)
平成29年 9月15日 :意見書
平成30年 1月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成30年 6月 4日 :審判請求書・手続補正書
平成30年 9月25日付け:前置報告書

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1?4に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項5及び6に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願請求項7及び8に係る発明は、以下の引用文献1?4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特表2000-506998号公報
引用文献2:特開2011-75956号公報
引用文献3:特開2005-303843号公報
引用文献4:米国特許出願公開第2008/198471号明細書

第3 本願発明の認定
本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年6月4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は、以下のとおりの発明である。なお、上記補正により、補正前の請求項7が限定的に減縮されるとともに、補正前の請求項8が削除された。
「表示装置(10)であって、
シースルー部分(14)を備えるシースルー部品(12)を有し、
前記シースルー部品(12)は可視光を放射する複数の表示素子(16)を含み、該複数の表示素子(16)は前記シースルー部分(14)内に相互に間隔をあけて設けられており、
前記シースルー部品(12)は、さらに、前記シースルー部分(14)内に設けられた複数のホログラム光学素子(20)を含み、各々のホログラム光学素子(20)は各々の表示素子(16)に関連付けられており、
前記表示素子(16)が前記関連付けられたホログラム光学素子(20)の焦点面内に位置する時に、各々のホログラム光学素子(20)は前記関連付けられた表示素子(16)によって放射される可視光を平行にするように適合されたものであり、
各々の前記表示素子(16)は、複数の実質的に透明な表示画素部(18)を含み、該複数の表示画素部(18)は前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)の光軸(22)からそれぞれ異なる距離の位置に配置されるように、相互に間隔をあけて設けられており、
各々の前記表示画素部(18)はオン状態では可視光を放射し、かつ、オフ状態では可視光を放射しないように適合されたものであり、
前記表示装置は、さらに、前記表示素子(16)上に表示画像を表示するように、各々の前記表示素子(16)の前記複数の表示画素部(18)のオン及びオフ状態を制御する表示素子制御部(24)を有し、
前記表示素子制御部(24)は、第1の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第1の射出瞳(26)を通過するように、かつ、第2の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第2の射出瞳(28)を通過するように、前記第1の表示画像位置から、該第1の表示画像位置から空間的に移動された前記第2の表示画像位置に、前記表示素子の表示領域内で前記表示画像を動かすように適合され、
前記第1の射出瞳(26)の位置は、前記第2の射出瞳(28)の位置から空間的に移動されたものであることを特徴とする表示装置。」

また、本願発明2?7は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特表2000-506998号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】」、
「2.画像を見るための装置であって、観察者の目が観察中の画像を見る(ここで定義する)動的光学デバイス、該観察者の目の凝視方向を感知するように作動する感知手段、前記凝視する方向に比較的高解像度の領域を生成するように前記動的光学デバイスに作用する制御手段を含み、前記動的光学デバイスはその他の領域にはより低い解像度の画像を提供し、前記制御手段は感知手段に応答し、また前記凝視の方向が変わると、該凝視の方向に追従して前記比較的高解像度の領域を移動させるために前記動的光学デバイスの特性を変更するように作動する、画像を見るための装置。」、
「5.前記動的光学デバイスが、多数の切替可能な予め記録されているホログラフィック素子を含む、請求項2又は3に記載の装置。」、
「19.前記動的光学デバイスが、射出瞳に適した位置、領域及び/又は形を生成するように機能する、請求項2から18の何れかに記載の装置。」、
「37.更に、前記画像生成装置により生成された該画像とは別に、或いはそれと共に、前記周囲からの周囲光を見ることを可能にする手段を含む、請求項2から36の何れかに記載の装置。」、
「42.前記画像生成装置が多数の発光素子を含み、該発光素子の其々が見られるべき画像の其々の部分を表す信号を供給され、各発光素子に供給される信号は該画像の其々の部分の詳細に関する情報と時変調され、前記比較的高解像度の領域が、該観察者の目が凝視する方向の領域内の前記発光素子からの光の方向を切替える動的光学デバイスにより生成される、請求項2から41の何れかに記載の装置。」、
「48.該観察者により見られる前記画像が、ディスプレイスクリーン上に表示される、請求項2から47の何れかに記載の装置。」

イ 「本発明は、画像を見るための方法及び装置に関する。」(10頁3行)、
「頭部に着用する光学ディスプレイ(例えば、仮想現実画像(バーチャルリアリティイメージ)を見るためのレクリエーション産業で使用されるもの)において、見られる画像を、従来の屈折及び反射光学素子、即ちレンズ及びミラーを使用して、観察者の目に投影することが通例であった。しかしながら、重量及びサイズが主な問題である頭部に着用するディスプレイでは、通常、この手段では非常に狭い視野しか提供できず、これは、観察者に仮想世界に完全に浸っている感覚を提供する-ことが所望される場合に不利益となる。この問題を克服するための試みにおいて、いわゆる”パンケーキウィンドウ”、即ちレンズ及びミラーの効果をシミュレートするために偏光及び反射技術を使用する多層装置が提案されてきた。しかし、このような装置は透過率が低いという問題を有する。」(10頁4行?13行)、
「レンズの効果をシミュレートするために回折技術が使用され得ることは公知である。例えば、添付図面の図1及び2を参照すると、従来の反射レンズのプロファイルは、レンズをスライスにカットすることによってキノフォームに縮小即ち変えることができ、この各スライスは、スライスを透過する光の位相シフト2nを誘導する厚さであり、一定の厚みのそれらの領域を除去している。各スライスは、λ/n-1の(一次回折に対応する)最大深度を有するレンズのゾーンに対応し、ここでnはレンズ材料の反射率であり、λは光の波長である。キノフォームのプロファイルを、バイナリレンズを形成するために、個別のマルチレベルステッププロファイルによって概算することができる。例示される例では、8レベルが使用される。適切な材料からなる基体は、バイナリレンズのステッププロファイルに対応する回折構造を用いて、例えば、フォトリソグラフィー、ダイヤモンド旋削又はレーザ機械加工によって形成されることができる。」(10頁14行?下から4行)、
「最近の調査では、この技術が空間光変調器、例えば、液晶にも適用できることが示された。この場合、変調器の異なる部分に異なる回折構造を形成するために、及びこれらをリアルタイムで変化させるために変調器の特性を殆ど意のままに変化させてレンズのような動的光学デバイスを形成することができる。」(10頁下から3行?11頁1行)、
「本発明の目的は、上述の技術を使用する画像を見るための方法及び装置を提供することである。」(11頁2行?3行)

ウ 「上述のような実施の形態において、ディスプレイスクリーン及び動的レンズは湾曲しているものとして述べられている。しかし、図21及び21Aで描かれているように、ディスプレイスクリーン10は一連の平面パネル900から構成され、同様に動的レンズ12は一連のパネル901から構成されることが可能であり、各パネル900及び901は、ディスプレイスクリーン及び動的レンズそれぞれがほぼ曲線になるように、隣接したパネルに対してある角度に曲げられる。」(38頁8行?13行)、
「図21Aは、3次元のスクリーン10及びレンズ12の形状を示している。」(38頁14行)

エ 図3は、次のとおりである。


オ 図21は、次のとおりである。


(2)上記(1)の各記載事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「画像を見るための装置であって、観察者の目が観察中の画像を見る(ここで定義する)動的光学デバイス、該観察者の目の凝視方向を感知するように作動する感知手段、前記凝視する方向に比較的高解像度の領域を生成するように前記動的光学デバイスに作用する制御手段を含み、前記動的光学デバイスはその他の領域にはより低い解像度の画像を提供し、前記制御手段は感知手段に応答し、また前記凝視の方向が変わると、該凝視の方向に追従して前記比較的高解像度の領域を移動させるために前記動的光学デバイスの特性を変更するように作動する、画像を見るための装置であって、
前記動的光学デバイスが、多数の切替可能な予め記録されているホログラフィック素子を含み、
前記動的光学デバイスが、射出瞳に適した位置を生成するように機能し、
更に、前記画像生成装置により生成された該画像とは別に、或いはそれと共に、前記周囲からの周囲光を見ることを可能にする手段を含み、
前記画像生成装置が多数の発光素子を含み、該発光素子の其々が見られるべき画像の其々の部分を表す信号を供給され、各発光素子に供給される信号は該画像の其々の部分の詳細に関する情報と時変調され、前記比較的高解像度の領域が、該観察者の目が凝視する方向の領域内の前記発光素子からの光の方向を切替える動的光学デバイスにより生成され、
該観察者により見られる前記画像が、ディスプレイスクリーン上に表示され、
ディスプレイスクリーン10は一連の平面パネル900から構成され、同様に動的レンズ12は一連のパネル901から構成されることが可能であり、各パネル900及び901は、ディスプレイスクリーン及び動的レンズそれぞれがほぼ曲線になるように、隣接したパネルに対してある角度に曲げられる、
画像を見るための装置。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2(特開2011-75956号公報)には、次の事項が記載されていると認められる。
「画像情報に応じた画像光を観察者の眼に投射する接眼レンズと、
前記観察者の眼の瞳孔位置を検出する検出部と、
前記検出部により検出した前記瞳孔位置に応じて、前記接眼レンズの位置をその光軸に対して直交方向に移動させ、さらに、前記光軸方向に直交する画像表示位置を前記接眼レンズの移動方向に対して反対方向に移動させて、前記観察者の眼に前記画像光を入射させる制御部と、を備えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。」(【請求項1】)、
「なお、上述の実施形態では、画像光出射ユニット80を移動させることとしたが、液晶表示パネル92の表示画像の位置を変更させるようにしてもよい。すなわち、液晶表示パネル92の表示領域よりも小さい画像を表示し、この画像を表示領域内で移動させて画像表示位置を変更することで、画像光出射ユニット80の移動と同様の効果を持たせるのである。」(【0082】)

3 引用文献5について
前置報告書で引用された特開2009-288529号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の事項が記載されていると認められる。
「使用者の視する映像から、使用者の視野領域を抽出する視野領域抽出装置において、
前記使用者の眼球運動による眼電から使用者の視線位置を検出する視線位置検出手段と、
前記視線位置検出手段により得られた使用者の視線位置を基準に、予め設定された範囲からなる使用者の視野領域を、前記使用者の視する映像から抽出する視野領域抽出手段とを備える視野領域抽出装置であって、
前記使用者が視する映像に対し、視野領域抽出装置から抽出された使用者の視野領域を、前記使用者の視する映像の中心に移動させて表示する表示手段を備える映像表示装置。」(【請求項1】、【請求項5】)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 本願発明1の「表示装置(10)であって、」との特定事項について
引用発明1の「画像を見るための装置」は、本願発明1の「表示装置(10)」に相当する。
よって、引用発明1は、本願発明1の「表示装置(10)であって、」との特定事項を備える。

イ 本願発明1の「シースルー部分(14)を備えるシースルー部品(12)を有し、」との特定事項について
引用発明1が、本願発明1の「シースルー部分(14)を備えるシースルー部品(12)を有し、」との特定事項を備えるのかは不明である。

ウ 本願発明1の「前記シースルー部品(12)は可視光を放射する複数の表示素子(16)を含み、該複数の表示素子(16)は前記シースルー部分(14)内に相互に間隔をあけて設けられており、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「平面パネル900」は、本願発明1の「表示素子(16)」に相当する。
(イ)引用発明1の「平面パネル900」は、「可視光を放射する」ものであると認められる。
(ウ)引用発明1では、「ディスプレイスクリーン10は一連の平面パネル900から構成され」ているから、引用発明1の「平面パネル900」は、「複数」存在するといえる。
(エ)よって、引用発明1は、本願発明1でいう「可視光を放射する複数の表示素子(16)」を含んでいる。
しかしながら、引用発明1における複数の「平面パネル900」(本願発明1の「可視光を放射する複数の表示素子(16)」に相当。)が、「前記シースルー部品(12)」に「含」まれているのかは不明であり、また、「前記シースルー部分(14)内に相互に間隔をあけて設けられて」いるのかも不明である。

エ 本願発明1の「前記シースルー部品(12)は、さらに、前記シースルー部分(14)内に設けられた複数のホログラム光学素子(20)を含み、各々のホログラム光学素子(20)は各々の表示素子(16)に関連付けられており、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「多数の切替可能な予め記録されているホログラフィック素子を含」む「動的光学デバイス」及び「動的レンズ12」は、本願発明1の「ホログラム光学素子(20)」に相当する。
(イ)引用発明1の「動的レンズ12」(本願発明1の「ホログラム光学素子(20)」に該当する。)は、「一連のパネル901から構成される」のであるから、「複数」存在するといえる。
(ウ)引用発明1は、「ディスプレイスクリーン10は一連の平面パネル900から構成され、同様に動的レンズ12は一連のパネル901から構成され」、「各パネル900及び901は、ディスプレイスクリーン及び動的レンズそれぞれがほぼ曲線になるように、隣接したパネルに対してある角度に曲げられる」ものであるから、ディスプレイスクリーン10を構成する各「平面パネル900」と、動的レンズ12を構成する各「パネル901」とは、「関連づけられて」いると認められる。
(エ)よって、引用発明1は、本願発明1でいう「複数のホログラム光学素子(20)を含み、各々のホログラム光学素子(20)は各々の表示素子(16)に関連付けられており、」との特定事項を備える。
しかしながら、引用発明1における「動的レンズ12」(本願発明1の「ホログラム光学素子(20)」に該当する。)が、「前記シースルー部品(12)」に「含」まれているのかは不明である。

オ 本願発明1の「前記表示素子(16)が前記関連付けられたホログラム光学素子(20)の焦点面内に位置する時に、各々のホログラム光学素子(20)は前記関連付けられた表示素子(16)によって放射される可視光を平行にするように適合されたものであり、」との特定事項について
引用発明1が、本願発明1の上記特定事項を備えるのかは不明である。

カ 本願発明1の「各々の前記表示素子(16)は、複数の実質的に透明な表示画素部(18)を含み、該複数の表示画素部(18)は前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)の光軸(22)からそれぞれ異なる距離の位置に配置されるように、相互に間隔をあけて設けられており、」との特定事項について
(ア)引用発明1の「ディスプレイスクリーン10」を構成する「平面パネル900」が、「複数の」「表示画素部(18)」を備えることは、明らかである。
(イ)よって、引用発明1は、本願発明1の「各々の前記表示素子(16)は、」「複数の」「表示画素部(18)を含み」との特定事項を備える。
しかしながら、引用発明1の「平面パネル900」が備える表示画素部が、「実質的に透明」であるのかは不明であるし、また、「該複数の表示画素部(18)は前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)の光軸(22)からそれぞれ異なる距離の位置に配置されるように、相互に間隔をあけて設けられて」いるのかも不明である。

キ 本願発明1の「各々の前記表示画素部(18)はオン状態では可視光を放射し、かつ、オフ状態では可視光を放射しないように適合されたものであり、」との特定事項について
引用発明1は、「前記画像生成装置が多数の発光素子を含み、該発光素子の其々が見られるべき画像の其々の部分を表す信号を供給され」るものであるから、本願発明1の「各々の前記表示画素部(18)はオン状態では可視光を放射し、かつ、オフ状態では可視光を放射しないように適合されたものであり、」との特定事項を備えると認められる。

ク 本願発明1の「前記表示装置は、さらに、前記表示素子(16)上に表示画像を表示するように、各々の前記表示素子(16)の前記複数の表示画素部(18)のオン及びオフ状態を制御する表示素子制御部(24)を有し、」との特定事項について
上記キにも照らせば、引用発明1が、本願発明1の「前記表示装置は、さらに、前記表示素子(16)上に表示画像を表示するように、各々の前記表示素子(16)の前記複数の表示画素部(18)のオン及びオフ状態を制御する表示素子制御部(24)を有し、」との特定事項を備えることは、明らかである。

ケ 本願発明1の「前記表示素子制御部(24)は、第1の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第1の射出瞳(26)を通過するように、かつ、第2の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第2の射出瞳(28)を通過するように、前記第1の表示画像位置から、該第1の表示画像位置から空間的に移動された前記第2の表示画像位置に、前記表示素子の表示領域内で前記表示画像を動かすように適合され、
前記第1の射出瞳(26)の位置は、前記第2の射出瞳(28)の位置から空間的に移動されたものである」との特定事項について
引用発明1は、前記動的光学デバイス(本願発明1の「ホログラム光学素子(20)」に該当する。)が、射出瞳に適した位置を生成するように機能するものであるけれども、本願発明1の上記特定事項を備えるものではない。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明1と引用発明1とは、
「表示装置(10)であって、
可視光を放射する複数の表示素子(16)を含み、
複数のホログラム光学素子(20)を含み、各々のホログラム光学素子(20)は各々の表示素子(16)に関連付けられており、
各々の前記表示素子(16)は、複数の表示画素部(18)を含み、
各々の前記表示画素部(18)はオン状態では可視光を放射し、かつ、オフ状態では可視光を放射しないように適合されたものであり、
前記表示装置は、さらに、前記表示素子(16)上に表示画像を表示するように、各々の前記表示素子(16)の前記複数の表示画素部(18)のオン及びオフ状態を制御する表示素子制御部(24)を有する表示装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1は、シースルー部分(14)を備えるシースルー部品(12)を有するのに対し、引用発明1は、そうであるのか不明である点。

[相違点2]
「複数の表示素子(16)」について、本願発明1は、「前記シースルー部品(12)」に「含」まれるとともに、「前記シースルー部分(14)内に相互に間隔をあけて設けられて」いるのに対し、引用発明1は、そうであるのか不明である点。

[相違点3]
「複数のホログラム光学素子(20)」について、本願発明1は、「前記シースルー部品(12)」に「含」まれているとともに、「記表示素子(16)が前記関連付けられたホログラム光学素子(20)の焦点面内に位置する時に、各々のホログラム光学素子(20)は前記関連付けられた表示素子(16)によって放射される可視光を平行にするように適合されたものであ」るのに対し、引用発明1は、そうであるのか不明である点。

[相違点4]
「各々の表示素子(16)」に「含」まれる「複数の」「表示画素部(18)」について、本願発明1は、「実質的に透明」であるとともに、「該複数の表示画素部(18)は前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)の光軸(22)からそれぞれ異なる距離の位置に配置されるように、相互に間隔をあけて設けられて」いるのに対し、引用発明1は、そうであるのか不明である点。

[相違点5]
本願発明1は、「表示素子制御部(24)」が「第1の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第1の射出瞳(26)を通過するように、かつ、第2の表示画像位置における前記表示画像の可視光が前記表示素子(16)に関連付けられた前記ホログラム光学素子(20)によって偏向されて第2の射出瞳(28)を通過するように、前記第1の表示画像位置から、該第1の表示画像位置から空間的に移動された前記第2の表示画像位置に、前記表示素子の表示領域内で前記表示画像を動かすように適合され、
前記第1の射出瞳(26)の位置は、前記第2の射出瞳(28)の位置から空間的に移動されたものである」のに対し、
引用発明1は、前記動的光学デバイス(本願発明1の「ホログラム光学素子(20)」に該当する。)が、射出瞳に適した位置を生成するように機能するものである点。

(3)相違点の判断
ア 相違点5について
事案にかんがみ、相違点5から判断する。
(ア)まず、引用発明1において相違点5の構成に至るためには、いかなる変更を加えればよいのかについて確認する。
相違点5は、射出瞳の位置を移動させる手段が何であるのかに関係するところ、本願発明1は、これが「表示素子制御部(24)」であるのに対し、引用発明1は、これが「動的光学デバイス」である。
ここで、「表示素子制御部(24)」により射出瞳の位置を移動させることと「動的光学デバイス」の制御により射出瞳の位置を移動させることとが実質的に異なるか否かがまず問題となるけれども、両者は異なるものと認められる。なぜならば、「表示素子制御部」とは、「各々の前記表示素子(16)の前記複数の表示画素部(18)のオン及びオフ状態を制御する」ものであり、よって、これが、「動的光学デバイス」(「表示素子」ないし「表示画素部」とは異なるものである。)を制御するとはいえないからである。
そうであれば、引用発明1において相違点5の構成に至るためには、引用発明1の構成のうち、動的光学デバイスにより射出瞳を移動させるという構成を維持できない。すなわち、そのためには、動的光学デバイスにより射出瞳を移動させることに代えて、引用発明1が備えると認められる「表示素子制御部」(上記(1)キ)によってこれを行う必要があるといえる。

(イ)しかるところ、引用発明1は、動的光学デバイスに係る技術を使用する画像を見るための方法及び装置を提供することを目的とするものであるから、引用発明1において、動的光学デバイスにより射出瞳を移動しないようにすることは、困難である。
したがって、当業者が、引用発明1から出発して、相違点5の構成に至ることはないというべきである。

(ウ)これに対し、原査定は、引用発明1に引用文献2に記載された技術的事項を採用することにより相違点5が容易想到である旨判断する。
a しかしながら、まず、上記(イ)のとおりであるから、原査定を支持することができない。

b さらにいえば、次のとおり、引用発明1に引用文献2に記載された技術的事項を採用できるとはいえないから、この点からも、原査定を支持することができない。
すなわち、引用文献2に記載された技術的事項は、「前記検出部により検出した前記瞳孔位置に応じて、前記接眼レンズの位置をその光軸に対して直交方向に移動させ、さらに、前記光軸方向に直交する画像表示位置を前記接眼レンズの移動方向に対して反対方向に移動させて、前記観察者の眼に前記画像光を入射させる」ものであるから、観察者は、視線を変更しても、視野内に常に同一の像を視認することになると解される。
他方で、引用発明1は、「画像を見るための装置であって、観察者の目が観察中の画像を見る(ここで定義する)動的光学デバイス、該観察者の目の凝視方向を感知するように作動する感知手段、前記凝視する方向に比較的高解像度の領域を生成するように前記動的光学デバイスに作用する制御手段を含み、前記動的光学デバイスはその他の領域にはより低い解像度の画像を提供し、前記制御手段は感知手段に応答し、また前記凝視の方向が変わると、該凝視の方向に追従して前記比較的高解像度の領域を移動させるために前記動的光学デバイスの特性を変更するように作動する、画像を見るための装置」であるから、観察者が視線を変更すると、観察者は視野内に異なる像を視認するものと解される。
このように、引用発明1と引用文献2に記載された技術的事項とは、観察者が視線を変更したときに視野内で観察できる像が異なると解されるのである。しかるところ、当業者が、引用発明1において引用文献2に記載された技術的事項を採用して、その視認できる像を変更することができるとする動機付けを、見いだすことができない。
したがって、引用発明1に引用文献2に記載された技術的事項を採用できるとはいえない。

(エ)また、前置報告書は、引用発明1に引用文献5に記載された技術的事項を採用することにより相違点5が容易想到である旨判断する。
a しかしながら、まず、上記(ウ)aと同様の理由が成り立つから、前置報告書における審査官の判断を支持することができない。

b さらにいえば、引用文献5に記載された技術的事項は、「表示素子制御部」に相当する構成により、射出瞳の位置を移動させることを開示しないから、仮に、引用発明1に引用文献5に記載された技術的事項を採用できたとしても、相違点5の構成に至らない。
よって、この点からも、前置報告書における審査官の判断を支持することができない。

イ 上記アのとおりであるから、その余の相違点については判断するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
このように、本願発明1?7は、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-04 
出願番号 特願2016-504494(P2016-504494)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 貴一  
特許庁審判長 西村 直史
特許庁審判官 山村 浩
古田 敦浩
発明の名称 表示装置  
代理人 好宮 幹夫  
代理人 小林 俊弘  
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