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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  H04W
管理番号 1348441
審判番号 無効2015-800129  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-05-29 
確定日 2019-02-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第4021622号発明「ディジタル有効データの伝送方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
第1.本件特許の経緯

1.本件特許第4021622号(以下「本件特許」という。)は、平成11年7月23日(優先権主張外国庁受理1998年7月24日、ドイツ)に、ROBERT BOSCH GMBH(ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング)を出願人として国際出願(特願2000-563094号)され、平成19年10月5日に同出願人により設定登録がなされた。

2.本件特許は、平成20年5月14日に、特定承継により、特許権者をアイピーコム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフトとする特許権の移転の登録がなされた。

3.平成25年7月22日に特許無効審判(無効2013-800127号)が請求され、平成27年2月16日に審決がなされた。

(1)平成25年7月22日に、本件特許のうち請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に記載された発明についての特許に対し、特許無効審判(第1回(無効2013-800127号))の請求(以下「第1無効審判請求」という。)がエリクソン・ジャパン 株式会社(請求人(以下「第1無効審判請求人」という。))によりなされた。

(2)特許権者(被請求人)は、平成25年11月11日付けで答弁書を提出すると共に訂正の請求(1)をした。

(3)第1無効審判請求人は、平成26年1月6日付けで、弁駁書(1)を提出した。

(4)第1無効審判請求人及び特許権者は平成26年3月17日付けで口頭審理における審理事項を通知され、両者は、平成26年4月30日付けで口頭審理陳述要領書をそれぞれ提出した。

(5)平成26年5月14日に口頭審理を行い、その後、平成26年5月21日付けで第1無効審判請求人は上申書を提出し、平成26年6月4日付けで特許権者は上申書を提出した。

(6)第1無効審判請求人及び特許権者は平成26年8月5日に審決の予告をされた。

(7)特許権者は、平成26年11月6日付けで訂正の請求(2)をした。

(8)第1無効審判請求人は、平成26年12月26日付けで、弁駁書(2)を提出した。

(9)第1無効審判請求に対して、平成27年2月16日付けで、訂正の請求(2)による訂正を認めない、本件審判の請求(第1無効審判請求)は、成り立たない、との審決がなされ、その後確定した。

4.本件無効審判は、平成27年5月29日に、テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル)を請求人(以下単に「請求人」という。)として、「特許第4021622号発明の明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めるものである。

5.特許権者(以下「被請求人」という。)は、平成27年9月10日付けで答弁書を提出した。

6.請求人及び被請求人は平成27年10月16日付けで口頭審理における審理事項を通知され、両者は、平成28年1月14日付けで口頭審理陳述要領書をそれぞれ提出した。

7.平成28年1月28日に口頭審理を行った。


第2.本件特許発明に対する判断

1.本件特許発明の内容

上記のとおり、本件特許第4021622号の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る特許発明については、特許第4021622号公報の特許請求の範囲の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。
【請求項2】
前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する、請求項1記載の方法。」

「【請求項7】
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。
【請求項8】
前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局(15)へ伝送する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する、
請求項7記載の方法。
【請求項10】
第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する、請求項7記載の方法。」

「【請求項13】
前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する、請求項1または7記載の方法。
【請求項14】
前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する、請求項1、3、7または9記載の方法。
【請求項15】
前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する、請求項1または7記載の方法。」

2.請求人の主張の概要

(1)請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(後記「(4)証拠方法」参照。)を提出し、各甲号証に関して次の主張をするとともに無効理由1及び2を主張している。

甲第1号証には、移動機1Aから移動機1Bに音声を符号化したディジタルデータを伝送する方法において、移動機1Aから基地局2Aへの伝送のため、移動機1Aが第1段階で音声符号化し、第2段階で音声符号化されたディジタルデータの畳み込み符号化を行って無線チャネル信号(ディジタルデータ)を生成することと、移動機1Aが、この無線チャネル信号を基地局2Aに無線チャネルを介して伝送することと、基地局2Aは、受信した無線チャネル信号(第2段階で符号化されたディジタルデータ)を畳み込み復号してマルチレート信号に変換することと、このマルチレート信号は、交換局3をスルーで通過して基地局2Bにそのまま伝送されることと、基地局2Bから移動機1Bへの伝送のため、基地局2Bが、基地局2Aから受信するマルチレート信号(ディジタルデータ)を畳み込み符号化して無線チャネル信号に変換し、この無線チャネル信号を、無線チャネルを介して移動機1Bに送信することと、移動機1Bは、基地局2Bから受信する無線チャネル信号に対して畳み込み復号を行うことと、移動機1Bは、畳み込み復号後のディジタルデータの音声復号を行うことが記載されている。(審判請求書21-22頁)
基地局と交換局の間でシグナリングが必要である。(第1回口頭審理調書)

甲第2号証には、発信側の無線端末(無線端末3-1又は2-1)から着信側の無線端末(無線端末3-2又は3-1)へ無線符号化音声信号(B又はA)を伝送する方法において、発信側の無線端末と交換局5との間の通信ネットワーク内での伝送のため、発信側の無線端末により第1段階で無線符号化音声信号に符号化し、前記の第1段階で符号化された無線符号化音声信号を発信側の無線端末と交換局5との間の通信ネットワーク内の伝送チャネルを介して交換局5へ伝送し、交換局5と着信側の無線端末との間の通信ネットワーク内での伝送のため、前記交換局5により、前記交換局5と着信側の無線端末との間の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、無線符号化音声信号を着信側の無線端末へ伝送し、該着信側の無線端末へ前記交換局5から呼設定信号を伝送し、該呼設定信号は、前記第1段階での無線符号化音声信号の符号化形式(B又はA)に関する情報を含み、前記着信側の無線端末が受信した前記呼設定信号に依存して、前記着信側の無線端末により無線符号化音声信号の復号を行うことが記載されている。(審判請求書23頁)

甲第3号証は、発側の移動機が使用する情報源符号化の形式を着側の移動機に通知して、着側の移動機がこの通知に基づく情報源復号を行うこと、つまり、コーデック・スルー通信を開示している。(審判請求書25頁)

甲第4号証には、無線チャネルには、情報チャネル(TCH)と、制御チャネル(CCH)とが存在し、制御チャネルは、さらに、報知チャネル(BCCH)、一斉呼出しチャネル(PCH)、個別セル用チャネル(SCCH)、低速ACCH(SACCH)及び高速ACCH(FACCH)に分類されることが記載され、各チャネルが転送する情報の内容について記載されると共に、特に情報チャネル(TCH)は、ユーザ情報を転送するものであり、各制御チャネルはそれぞれ誤り訂正符号化されることが記載されており、さらに発信及び着信時におけるユーザと網との間のシーケンスが記載され、着信時の制御シーケンスには、通信の開始前に、網から着呼側の移動局に対して呼設定メッセージが送信され、呼設定メッセージがSCCHで伝送され、発番号を情報要素として含み、発番号とは、呼の発信元を識別する番号であることが記載されている。(審判請求書25頁)

甲第5号証は、移動通信システムに関し、無線基地局と移動局との通信においては、無線回線上でのビット誤りを回復しやすいような誤り訂正符号を付与することが開示されている。(審判請求書26頁)

甲第6号証は、移動体通信に関し、無線回線の平均ビット誤り率は有線回線と比べて4桁以上劣化すること、このため、無線通信チャネル用の誤り制御にBCH符号等の誤り訂正符号を使用することが開示されている。(審判請求書26頁)

甲第7号証は、デジタル移動通信の伝送方法に関し、基地局-交換局間では伝送路誤りが無線区間よりも十分低いこと、このため、移動局11と基地局14との間では畳み込み符号を使用するが、基地局-交換局間では畳み込み符号を使用しなくとも問題はないことが開示されている。(審判請求書26頁)

甲第8号証は、無線通信システムに関し、無線伝送路は、有線の伝送路に比較して低品質であり、エラーがバースト的に起こる傾向があること、このため誤り訂正符号に加えて周波数ホッピングを使用することで効果的であることが記載されている。

甲第9号証には、音声コーデック35が音声信号の符号化および復号を行うこと、TDMA処理装置31が誤り訂正や、誤り訂正符号の付加等を行うことが記載されているから、音声コーデックは、情報源符号化及び復号処理のみを行う。(口頭審理陳述要領書7頁)

甲第10号証には、移動無線通信装置が、SPEECH-CODEC(音声コーデック)9と、CHANNEL-CODEC(チャネル・コーデック)8と、を有することが記載されている。(口頭審理陳述要領書7頁)

甲第11号証には、基地局にも適用できる基地局シミュレータが開示され、CH-COD(チャネル・コーデック)41と、SP-COD(音声コーデック)3が、それぞれ、記載されている。(口頭審理陳述要領書7頁)

甲第12号証には、電話会議の回線を設定するためのシグナリング方式のシーケンスにおいて、呼設定信号が送信されることが開示されている。(口頭審理陳述要領書2頁)

甲第13号証は、甲第1号証の出願時点におけるPDCの規格書であって、VSELP及びPSI-CELPの両方のコーデックが規定されている。(口頭審理陳述要領書3頁)

甲第14号証には、誤り訂正によって情報を高い信頼性で伝達でき、移動通信は誤り訂正符号の応用を前提として設計されるようになってきたことが記載されている。(口頭審理陳述要領書8頁)

甲第15号証には、通信路符号とは、情報源符号とリンクするものではなく、独立した符号化であることが記載され、通信路符号とは誤り訂正のための符号、つまりチャネル符号であることが記載されている。(口頭審理陳述要領書6-7頁)

甲第16号証には、異なる速度の音声信号を混在して伝送することをマルチレートと称することが開示されている。(口頭審理陳述要領書5頁)

甲第17号証には、フルレートのマルチレートデータ伝送として、基地局24と交換局23との間では、誤り訂正符号を除いたVSELP信号を伝送すること、ハーフレートのマルチレートデータ伝送として、基地局24と交換局23との間では、誤り訂正符号を除いたPSI-CELP信号を伝送することが開示されている。(口頭審理陳述要領書4頁)

(2)無効理由1

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて(甲第1号証を主引用例とする)、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書15頁、26頁)

「中間局」とは、「第1移動局と第2移動局の間」に存在する局であれば良い。(口頭審理陳述要領書2頁)
甲第2号証の「呼設定」信号が、請求項1に記載された発明1の「シグナリングデータ」である。(口頭審理陳述要領書2頁)
「ネットワーク」について、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である。(第1回口頭審理調書)

請求項1に記載された発明と甲第1号証の相違点は、請求項1に記載された発明では、中間局から第2の移動局に、第1の移動局での第1段階におけるディジタルデータの符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータを送信し、第2の移動局は、中間局から受信するシグナリングデータに依存して、情報源復号を行うが、甲第1号証においては、符号化形式に関する情報を含むシグナリングに関する記載が無い点である。(審判請求書29頁)

甲第2号証は、無線端末2-1と無線端末2-2との間の通信の場合には、交換局5において無線符号化音声信号を変換しない構成、つまり、コーデック・スルー通信とすることを開示しており、無線端末が2つの無線符号化音声信号A、Bを有する場合においても、交換局5において無線符号化音声信号を変換することによる接続遅延や、符号化歪みによる通話品質の劣化を防ぐため、交換局5が、呼設定信号において発信側の無線端末での無線符号化音声信号形式を着信側の無線端末に通知して、コーデック・スルー通信とする構成を開示している。(審判請求書29-30頁)

甲第1号証にも、甲第2号証と同様に、無線端末間での通信においては、コーデック・スルー通信とすることが記載され、無線端末間におけるコーデック・スルー通信時の回線構成を開示している。つまり、甲第2号証は、コーデック・スルー通信とするための回線設定時のシーケンスを示し、甲第1号証は、その結果として設定された回線構成を示している。(審判請求書30頁)

甲第2号証は、無線端末で利用可能な無線符号化音声信号が複数になると、コーデック・スルー通信を実現するためには、発信側の無線端末での無線符号化音声信号の形式を着信側の無線端末に伝えなければならないことを開示しており、本件特許の出願当時、甲第2号証、甲第3号証に記載されているように複数の符号化方式有する端末でコーデック・スルー通信を行うことは知られていた。
また、甲第1号証によれば、通信システムの一例としてPDCシステムが挙げられているが、甲第3号証に記載されるように、本件特許の優先日においてPDCシステムでは音声符号化方式としてVSELP方式とPSI-CELP方式の両方が採用されており、何らかの手段を通じて着信側の無線端末は使用すべき音声符号化方式を知る必要があった。
よって、甲第1号証に記載の発明は、着信側の無線端末が使用すべき音声符号化方式のシグナリングを必要としているため、同じコーデック・スルーを採用する甲第2号証に記載のシグナリングを採用する動機付けが存在する。
したがって、甲第1号証に記載されたコーデック・スルー通信を実現するため、甲第2号証のシーケンスに示されるように、中間局が、呼設定信号において発信側の移動機での符号化形式を着信側の移動機に通知する構成を適用すること、つまり、中間局から着信側の移動機に、発信側の移動機での第1段階におけるディジタルデータの符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータを送信し、着信側の移動機は、中間局から受信するシグナリングデータに依存して、情報源復号を行う様にすることは、当業者にとっては容易に想到しうることである。(審判請求書30-31頁)

したがって、請求項1に記載された発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書31頁)

請求項2に記載された発明も、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書31頁)

請求項3に記載された発明も、甲第4号証に記載された様に、移動機と網との無線通信において、シグナリングデータを誤り訂正符号化することは周知技術であるから、甲第1号証の記載の構成に、甲第2号証に記載されたシグナリングデータを適用するに当たり、当該シグナリングデータをチャネル符号化することは当業者が容易に想到し得たものである。
また、「ビット流を生成する」とは、ディジタルデータと、シグナリングをそれぞれ第2の移動局に送信するとの意味にしか解されないから、甲第1号証に記載の構成に甲第2号証に記載のシグナリングを適用し、ディジタルデータと、シグナリングからビット流を生成して、それぞれを第2の移動局に送信する構成とすることは当業者が容易に想到することができたことである。(審判請求書32-33頁)

請求項4に記載された発明は、シグナリングデータとチャネル符号化されたディジタルデータをいっしょに伝送することの技術的意義について本件明細書に何ら記載されておらず、符号化形式の通知を先に行い、その後、ディジタルデータを送信する構成とするか、符号化形式の通知といっしょにディジタルデータを送信する構成とするかは単なる設計事項であるから、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書34-35頁)

請求項7に記載された発明と甲第1号証の相違点も、請求項1に記載された発明と甲第1号証の相違点と同じであるから、同様の理由により、請求項7に記載された発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書36頁)

請求項8、9、10に記載された発明は、請求項2、3、4に記載された理由と同じ理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書36-38頁)

請求項13に記載された発明は、シグナリングデータの送信回数を変化させることの技術的意義について何ら記載されておらず、回数を1回とするか複数回とするかは、単なる、設定事項であるから、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書38頁)

請求項14に記載された発明は、甲第4号証に記載されている様に、呼設定時に発番号を含む制御信号を着側の移動機に送信することは周知技術であり、甲第2号証に記載の呼設定信号に第1の移動局の発番号を含めることは、当業者には容易に想到しうることであるから、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書38-39頁)

請求項15に記載された発明も、甲第2号証に、音声のみならず、任意の情報源の符号化に適用できることが記載されているから、音声伝送のみならず、種々の情報源符号化形式が規定されている他の情報源の伝送を行う構成とすることも、当業者には容易に想到しうることであるから、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書39頁)

(3)無効理由2

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて(甲第2号証を主引用例とする)、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。(審判請求書15頁、39頁)

請求項1に記載された発明と甲第2号証の相違点は、請求項1に記載された発明では、第1の移動局において第2段階でディジタルデータをチャネル符号化し、中間局においてはチャネル復号後、再度、チャネル符号化し、さらに、第2の移動局においてチャネル復号するが、甲第2号証においては、チャネル符号に関する記載が無い点である。(審判請求書41頁)

移動通信において、中間局と移動機との間の無線チャネルの品質は、移動機の移動により絶えず変化することから、通信の信頼性を保つために中間局と移動機との間の無線区間の信号にチャネル符号を適用することは常套手段であり、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証、甲第8号証に記載されている様に慣用技術または周知技術である。
したがって、甲第2号証に記載の構成により設定されたコーデック・スルー通信のための回線において、甲第1号証に記載されたコーデック・スルーのための回線構成の様に、中間局において一旦チャネル符号を終端して、再度、チャネル符号化する構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことであるから、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書42頁)

請求項2、3、4に記載された発明も、無効理由1と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書42-43頁)

請求項7に記載された発明と甲第2号証の相違点も、請求項1に記載された発明と甲第2号証の相違点と同じであるから、同様の理由により、請求項7に記載された発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書44頁)

請求項8、9、10、13、14、15に記載された発明も、無効理由1と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(審判請求書45-46頁)

(4)証拠方法

甲第1号証 特開平8-331644号公報
甲第2号証 特開平6-6295号公報
甲第3号証 NTT DoCoMoテクニカルジャーナル Vol.3 No.3(Oct.1995) 6-21頁
甲第4号証 デジタル方式自動車電話システム 標準規格 RCR STD-27G 第1分冊(平成10年5月29日) 33-35、48-65、380-381、400-401、454-461頁
甲第5号証 特開平6-245250号公報
甲第6号証 特開平7-123043号公報
甲第7号証 特開平7-131400号公報
甲第8号証 特開平8-298682号公報
甲第9号証 特開平5-30055号公報
甲第10号証 特開平6-311078号公報
甲第11号証 特開平7-231480号公報
甲第12号証 特開平6-311243号公報
甲第13号証 デジタル方式自動車電話システム 標準規格 RCR STD-27C 第1分冊(平成6年11月10日) 589、643頁
甲第14号証 今井秀樹著 符号理論 電子情報通信学会編著(平成2年3月15日) 4-11頁
甲第15号証 今井秀樹著 情報理論 昭晃堂発行(昭和59年7月15日) 12-17、238頁
甲第16号証 1994年電子情報通信学会春季大会 B-322 中村吉伸他著 デジタル移動通信方式基地局伝送路におけるマルチレートデータ伝送方法の検討
甲第17号証 特開平8-307926号公報

3.被請求人の主張の概要

(1)被請求人は、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証(後記「(5)証拠方法」参照。)を提出し、各乙号証に関して次の主張をしている。

乙第1号証には、「コーデック」は、音声符号化だけでなく、誤り訂正(符号化)を実施する装置であることが記載されている。(答弁書16頁)

乙第2号証には、甲第3号証には、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを送信することは記載されていないこと、が記載されている。(答弁書10頁)

乙第3号証には、VSELP信号やPSI-CELP信号がそれぞれ誤り訂正符号を含むものであることが記載されている。(口頭審理陳述要領書7頁)

乙第4号証には、VSELP及びPSI-CELPが、音声符号化だけでなくチャネル符号化を含む概念であることが記載されている。(口頭審理陳述要領書7頁)

乙第5号証には、公知文献には、それぞれの課題と、その課題に対する技術的な解決手段が示されているのであり、周知技術といえども、技術的課題を捨象し、本件特許発明の構成を得るために都合よく特定の技術を抽出して、主引例に適用しようとすることは許されないことが記載されている。(口頭審理陳述要領書9頁)

乙第6号証には、移動端末間の接続の場合に発生するタンデム接続が生じると、音声データの符復号が2回以上発生するため、コーデックの量子化歪に起因する品質劣化が避けられないことが記載されている。(口頭審理陳述要領書10頁)

乙第7号証には、一般に、「ビット流」とは、「データが授受される時、時間の経過に従って一つの伝送路上を一連のビットが伝送される状態。」をいうことが記載されている。(口頭審理陳述要領書12頁)

(2)本件発明について

本件発明は、発信側の移動局の情報符号化形式(ディジタルデータの符号化形式)に関する情報を、チャネル符号化形式に関する情報とは独立して着信側の移動局に伝送する発明であり、かかる構成を採用することにより、着信側の情報源符号化形式を、発信側の移動局の情報源符号化形式に合わせて調整することができるもので、本件発明においては、複数の情報源符号化形式が存在しうることを前提としている。
本件明細書の開示内容から明らかな様に、第1段階でのディジタルデータの符号化に関する構成と、第2段階での該ディジタルデータをチャネル符号化する構成とは別途の構成である。
ディジタルデータの符号化とは、音声データ等のディジタル符号化、すなわち情報源符号化を指し、チャネル符号化とは、誤り訂正のための畳み込み符号化やブロック符号化を指す。(答弁書5-6頁)

「中間局」は、第1の通信ネットワークと第2の通信ネットワークの存在を前提に、その2つのネットワークの中間に位置する局である。(口頭審理陳述要領書3頁)
「ネットワーク」について、「GSM」「UMTS」のようなものが「ネットワーク」であり、本件は音声符号化が異なるネットワークが前提である。(第1回口頭審理調書)

(3)無効理由1について

甲第1号証記載の発明は、本件発明と技術思想を異にする上、それ自体で自己完結しており、当業者が、甲第1号証記載の発明に、甲第2号証記載の発明を組み合わせて本件発明を想到しようと動機づけられることはない。
本件発明は、複数の情報源符号化形式が存在しうることを前提に、着側の移動局が発側の情報源符号化形式に対応する情報源復号器を選択できるようにするため、発側の情報源符号化形式に関する情報を含むシグナリングデータを着側の移動局に伝送し、着側の移動局はシグナリングデータに依存して情報源復号化を行うようにしているものであるのに対し、甲第1号証記載の発明は、発明の構成だけでなく、その前提自体も本件発明とは異なっている。
甲第1号証記載の発明は、発側の移動機と発側の基地局との間でVSELP符号という符号化方式を用いたフルレート方式による伝送を行い、基地局と交換局の間ではマルチレート信号による伝送を行い、着側の基地局と着側の移動機の間でVSELP符号という符号化形式を用いたフルレート方式による伝送を行う、と言う通信方式において、両移動機が同じ交換局の配下にある場合に、交換局内の音声処理装置が基地局からのマルチレート信号について何ら処理を行うことなく通過させるという点に特徴を有する発明であるから、発側の移動機の「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」を中間局に伝える必要もないし、中間局が発側の移動機の「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」を着側の移動機に伝える必要もない。
甲第1号証について、基地局と交換局の間でシグナリングは不要であり(第1回口頭審理調書)、甲第1号証記載の発明は、本件発明のシグナリングデータにかかる構成を欠いているのみならず、本件発明と異なる前提を置いているため、本件発明のシグナリングデータにかかる構成を採用する必要性が全くなく、当業者がわざわざ甲第2号証記載の発明と組み合わせて本件発明を想到しようと動機付けられることはない。(答弁書3-4頁)

甲第1号証記載の発明は、両移動機が同一の交換局の配下にある場合に、交換局内の音声処理装置が基地局からのマルチレート信号について何ら処理を行うことなく通過させるとい点に特徴を有する発明であるから、発側の移動機の「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」を中間局に伝える必要も無いし、中間局が発側の移動機の「第1段階でのディジタルデータの符号化形式」を着側の移動機に伝える必要も無く、根本的な相違点を有する。
請求項1記載の発明の「中間局」は、第1の通信ネットワークと第2の通信ネットワークという2つの別のネットワークの間に存在する局であるのに対し、甲第1号証記載の発明における「中間局」は、同一のネットワーク内に存在する局である点において相違している。(口頭審理陳述要領書4頁)

甲第2号証に記載の「呼設定信号」が、本件発明の「シグナリングデータ」の一態様であることは認める。(口頭審理陳述要領書4頁)

(4)無効理由2について

甲第2号証記載の発明は、中間局においてチャネル符号化を行う構成を開示していない。甲第2号証記載の発明は、中間局においてコーデックによる符号変換を行わないことに積極的な意義を持たせており、中間局においてチャネル符号化を含む符号化方式の変換を行わないことを必須の構成としているから、中間局における誤り訂正に係る技術のみを取り出して、甲第1号証と前提を異にする甲第2号証に記載された発明に適用しようと当業者が動機付けられることは無い。また、甲第2号証記載の発明が、中間局においてコーデックによる符号変換を行わないことに積極的な意義を持たせていることからして、甲第2号証記載の発明に甲第1号証の基地局における誤り訂正に係る技術を組み合わせることには、阻害要因が存在するというべきである。
さらに、甲第2号証記載の発明に甲第1号証記載の発明の誤り訂正技術を組み合わせることに想到したとしても、甲第1号証記載の発明における当該技術は、基地局においてVSELP信号とマルチレート信号との変換を行うものであるから、甲第2号証記載の発明と甲第1号証記載の発明の誤り訂正に係る技術を組み合わせても、両移動機と両基地局の間はVSELP信号による伝送を行い、基地局-交換局-基地局の間はマルチレート信号による伝送を行うものとなり、結局甲第1号証記載の発明に帰着するだけである。(答弁書4-5頁)

甲第2号証記載の発明の「コーデック」は「音声符号化」のみならず、「チャネル符号化」にも対応している。(口頭審理陳述要領書5頁)

(5)証拠方法

乙第1号証 桑原守二監修 ディジタル移動通信 科学新聞社発行(1994年8月) 88-89頁
乙第2号証 審決(無効2013-800127号)
乙第3号証 NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol.8 No.4(Jan.2001) 25-33頁
乙第4号証 特開平8-166800号公報
乙第5号証 平成22年(行ケ)第10351号 判決
乙第6号証 立川敬二監修 W-CDMA移動通信方式 丸善発行(平成16年4月10日) 408-409頁
乙第7号証 山口開生監修 最新データ通信用語辞典 ラテイス発行(昭和59年1月15日) 222-223頁

4.当審の判断

(1)「ネットワーク」について

本件特許における「通信ネットワーク」の「ネットワーク」に関し、請求人と被請求人とで「ネットワーク」について主張するところが顕著に異なっているから、本件特許における「通信ネットワーク」について、検討を行う。

一般に「ネットワーク」とは、「広義には電気通信網全体を指すが、狭義には加入者、および各種トランクの相互間の通話路及び信号路を構成する通話路網のことをいい、加入者を収容するラインリンクネットワークと中継線を収容するトランクリンクネットワークから構成される。」(電子通信学会「交換専門用語集」1983年3月31日発行、60頁参照)である。


よって、広義として「電気通信網全体」を指す場合と、狭義としていわゆる「加入者網」や「コア網」を指す場合、のどちらを指すかは「ネットワーク」という用語のみからでは、その意味するところを軽易に特定することはできない。
そこで、本件特許の「通信ネットワーク」についてみると、明細書には、「第1の送受信アンテナ45から無線信号を第1の移動無線規格に従い、この実施例ではGSMネットワークとして構成されている第1の通信ネットワーク10を介して、中間局15の第2の送受信アンテナ45へ伝送することができる。」(【0009】参照)、「第3の送受信アンテナ80からは無線信号が、第2の無線規格に従い第2の通信ネットワーク20を介して第2の移動局5へ伝送される。この場合、第2の移動無線規格をたとえばUMTS規格(Universal Mobile Telecommunications System)とすることができる。」(【0010】参照)、「そしてこのようにして情報源符号化ならびにチャネル符号化された音声データは、第1の送受信ユニット40によって第1の送受信アンテナから第1のビット流として、GSMネットワークとして構成された通信ネットワーク10の伝送チャネルを介して中間局15へ伝送される。」(【0012】参照)、「第3の送受信ユニット75において、このようにしてチャネル符号化された第2のビット流の音声データおよびシグナリングデータは、この実施例ではUMTSネットワークとして構成されている第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、第2の移動局5へ伝送される。」(【0016】参照)と記載されている。
そうすると、明細書においては、「第1の移動無線規格であるGSMに従って構成され」ているものが「第1の通信ネットワーク」であり、「第2の移動無線規格であるUMTS規格に従って構成され」ているものが「第2の通信ネットワーク」であるから、本件特許の「通信ネットワーク」とは、被請求人が主張するように、「GSM」、「UMTS」のように「所定の移動無線規格に従って構成されている」ものである。

(2)無効理由1について

ア.本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1

本件特許発明1は、特許第4021622号公報の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(上記「第2」の1.を再掲。)

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

(イ)甲第1号証

甲第1号証には、次の記載(下線は当審が付与。)がある。

(あ)「【0003】このようなPDCシステムにおいて、移動機1は送信機10に対して音声符号化部(復号化部)11とCRC演算部(チェック部)12と畳み込み符号化部(復号化部)13とスロットインタリーブ部(デインタリーブ部)14とが順に接続されており、この構成は図5に詳しく示されている。
【0004】すなわち、送信機10からの送信信号は音声符号化部11で符号化され、この内の音声処理に重要なクラス1の75ビット中の聴覚的に最も重要な44ビットをCRC演算部12に送ってCRC(Cyclic Redundancy Check) 演算を行い、これを7ビットの形で音声符号化部からのクラス1の75ビットとともに畳み込み符号化部13に与える。
【0005】畳み込み符号化部13では5つのテールビットを加えて7+75+5=87ビット入力とし、これをレート1/2畳み込み符号で得られる174ビットに9ビットの穴あけをすることによりレート9/17畳み込み符号を実現し、174-9=165ビットの畳み込み符号化されたクラス1のビットに変換してスロットインタリーブ部14に送る。
【0006】このスロットインタリーブ部14では音声符号化部11からの音声処理における重要度が比較的低いクラス2の59ビットを合わせて入力し、これらの入力ビットにより224ビットの3チャネル分多重化されたV.SELP符号の無線チャネル信号が出力されるようになる。
【0007】なお、この図5の構成は音声処理装置31においても同様のコーデックとなっている。」

(い)「【0014】
【発明が解決しようとする課題】上記の図6に示したマルチレート伝送を導入した従来の移動通信システムにおいては、移動機1をデジタル移動網5を介してデジタル移動機と接続する場合、図7に示すように、移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成する。
【0015】そして、発呼側の基地局2Aにおいてスロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行い、発呼側の音声処理装置31において畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って224ビット/20msの無線チャネル信号に変換する。
【0016】この無線チャネル信号を交換機32を介して着呼側の音声処理装置33に送り、ここでスロットデインタリーブ部314でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部313で畳み込み復号化を行って141ビット/20msのマルチレート信号に変換してから着呼側の基地局2Bに送出する。
【0017】そして、この着呼側の基地局2Bにおいて畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行い、無線チャネル信号(224ビット/20ms)に変換して移動機1Bへ送出している。」

上記によれば、甲第1号証には次の発明(以下「引用発明1」という)が記載されているといえる。

「移動通信システムにおけるマルチレートデータ伝送時において、移動機1をデジタル移動網5を介してデジタル移動機と接続する場合、
移動機1Aと基地局2Aと交換局3の音声処理装置31とで発呼側のシステムを構成し、移動機1Bと基地局2Bと交換局3の音声処理装置33とで着呼側のシステムを構成し、
移動機1は、送信機10に対して音声符号化部(復号化部)11とCRC演算部(チェック部)12と畳み込み符号化部(復号化部)13とスロットインタリーブ部(デインタリーブ部)14とが順に接続されており、
送信機10からの送信信号は音声符号化部11で符号化され、この内の音声処理に重要なクラス1の75ビット中の聴覚的に最も重要な44ビットをCRC演算部12に送ってCRC(Cyclic Redundancy Check) 演算を行い、これを7ビットの形で音声符号化部からのクラス1の75ビットとともに畳み込み符号化部13に与え、
畳み込み符号化部13では5つのテールビットを加えて7+75+5=87ビット入力とし、これをレート1/2畳み込み符号で得られる174ビットに9ビットの穴あけをすることによりレート9/17畳み込み符号を実現し、174-9=165ビットの畳み込み符号化されたクラス1のビットに変換してスロットインタリーブ部14に送り、
スロットインタリーブ部14では音声符号化部11からの音声処理における重要度が比較的低いクラス2の59ビットを合わせて入力し、これらの入力ビットにより224ビットの3チャネル分多重化されたV.SELP符号の無線チャネル信号が出力され、
発呼側の基地局2Aにおいてスロットデインタリーブ部21でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部22で畳み込み復号化を行い、発呼側の音声処理装置31において畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って224ビット/20msの無線チャネル信号に変換し、
無線チャネル信号を交換機32を介して着呼側の音声処理装置33に送り、ここでスロットデインタリーブ部314でスロットデインタリーブを行い、畳み込み復号化部313で畳み込み復号化を行って141ビット/20msのマルチレート信号に変換してから着呼側の基地局2Bに送出し、
着呼側の基地局2Bにおいて畳み込み符号化部22で畳み込み符号化を行い、スロットインタリーブ部21でスロットインタリーブを行い、無線チャネル信号に変換して移動機1Bへ送出する
方法」

(ウ)比較

本件特許発明1と引用発明1を比較する。

引用発明1の「移動機1A」、「移動機1B」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の移動局」、「第2の移動局」に相当する。

ここで、引用発明1の「音声符号化部11」「CRC演算/チェック部12」「畳み込み符号化/復号化部13」「スロット(デ)インタリーブ部14」と、本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」「第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」がどのように対応するかを検討する。

まず、乙第4号証(下線部は当審が付与。)には、

「【0002】
【従来の技術】現在のディジタル方法の自動車電話システムでは、伝送周波数帯域の有効利用を行うために高度な音声符号化技術を取り入れている。この音声符号化方法としては、例えば、ベクトル和励起線形予測符号化方法(以下、VSELP(Vector-Sum Excited Linear Predictive Coding)方法とする)がある。
【0003】VSELP方法の概要は、「VECTOR SUM EXCITED LINEAR PREDICTION(VSELP)SPEECH CODING FOR JAPAN DIGITAL CELLULAR 」(電子情報通信学会無線通信システム研究会信学技報RCS90-26)に記載されている。
【0004】この符号化方法は、2つの基本処理から構成される。一方は音声符号化処理、他方は伝送路符号化処理である。この符号化方法では、まず、入力された音声信号を音声符号化処理で6.7kbpsの音声符号を生成し、さらに、電波伝送区間の誤り耐性を持たせるために伝送路符号化処理として畳み込み符号化を施して11.2kbpsの伝送符号を生成し出力する。」

の記載がある。

そして、甲第1号証(下線部は当審が付与。)における、

「【0002】
【従来の技術】図4は従来より知られているPDCシステム(フルレート)が示されており、移動機1は基地局2と無線1チャネル当たり224ビット/20msが割り当てられており、このフルレートの無線チャネル信号はV.SELP符号を使用して基地局2から交換局3へそのままスルーで送られ、交換局側の1タイムスロットイメージに3チャネル多重化されて送受されるようになっており、交換局3内の音声処理装置31と交換機32とを経て公衆網4またはデジタル移動網5に接続される。
【0003】このようなPDCシステムにおいて、移動機1は送信機10に対して音声符号化部(復号化部)11とCRC演算部(チェック部)12と畳み込み符号化部(復号化部)13とスロットインタリーブ部(デインタリーブ部)14とが順に接続されており、この構成は図5に詳しく示されている。
【0004】すなわち、送信機10からの送信信号は音声符号化部11で符号化され、この内の音声処理に重要なクラス1の75ビット中の聴覚的に最も重要な44ビットをCRC演算部12に送ってCRC(Cyclic Redundancy Check) 演算を行い、これを7ビットの形で音声符号化部からのクラス1の75ビットとともに畳み込み符号化部13に与える。
【0005】畳み込み符号化部13では5つのテールビットを加えて7+75+5=87ビット入力とし、これをレート1/2畳み込み符号で得られる174ビットに9ビットの穴あけをすることによりレート9/17畳み込み符号を実現し、174-9=165ビットの畳み込み符号化されたクラス1のビットに変換してスロットインタリーブ部14に送る。
【0006】このスロットインタリーブ部14では音声符号化部11からの音声処理における重要度が比較的低いクラス2の59ビットを合わせて入力し、これらの入力ビットにより224ビットの3チャネル分多重化されたV.SELP符号の無線チャネル信号が出力されるようになる。」

と、下記図5

の記載によれば、甲第1号証のスロットインタリーブ部14は、20ms毎に224ビットを出力するから、1秒当たりにすると11200ビットであるので、11.2kbpsであることは明らかであり、音声符号化部11は、20ms毎にクラス1の75ビットとクラス2の59ビットの合計134ビットを出力するから、1秒当たりにすると、6700ビットであるので、6.7kbpsであることは明らかである。

そうすると、乙第4号証を参照すれば、甲第1号証における「音声符号化部11」が「音声符号化処理」であり、「7ビットCRC演算器12」と「畳み込み符号化部13」と「スロットインタリーブ部14」で「伝送路符号化処理」を構成していると認められる。

一方、甲第7号証(下線部は当審が付与。)にも、

「【0002】
【従来の技術】図5Aはデジタル移動通信方式における基地局-交換局間の音声伝送系の構成を示す。日本標準規格(財団法人電波システム開発センター「デジタル方式自動車電話システム標準規格」)における伝送路符号化方式を以下で説明する。移動局11で入力された音声は、移動局11内の音声符号化器12において音声符号化され、引き続き伝送路符号化されて無線伝送路13を通じて基地局14へ送信され、更に基地局14から局間伝送路15を通じて交換局内の音声復号化器16へ送信され、音声復号化器16において伝送路復号化され、引き続き音声復号化されて公衆網17へ送信される。
【0003】逆に、公衆網17から交換局に入力された音声は、その交換局内の音声符号化器18において音声符号化され、引き続き伝送路符号化されて局間伝送路15を通じて基地局14へ送信され、更に基地局14から無線伝送路13を通じて移動局11へ送信され、移動局11内の音声復号化器19において伝送路復号化され、引き続き音声復号化されて出力される。
【0004】伝送路符号化には3つの手法が用いられ、第1に、聴覚上最も重要なビットをCRC(cyclic redundancy check : 巡回冗長検査)を用いて保護する。受信側では誤り訂正が行われた後、これらのCRCビットを用いて最重要ビットが正しく受信されたかどうかをチェックする。第2に、音声符号化データ列中の誤りに弱いビットを保護するために畳み込み符号化する。第3に、各々の音声符号化フレームの送信したデータを2タイムスロットにわたりインタリーブし、レイリーフェージングの影響を低減する。」

の記載があるから、「CRCビットを用いたチェック」と、「畳み込み符号化」と「インタリーブ」の3つの手法で「伝送路符号化」を構成することが記載されている。

上記のように、乙第4号証及び甲第7号証を参照すれば、引用発明1における「音声符号化部11」が、本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」に対応し、引用発明1における「CRC演算/チェック部12」と「畳み込み符号化/復号化部13」と「スロット(デ)インタリーブ部14」が、本件特許発明1の「第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」に対応しているといえる。

引用発明1の「送信機10からの送信信号」は「音声符号化部」に入力されるデータである。
一方、本件特許発明1の「ディジタルデータ」は「この場合、第1の移動局1は、第1段階の符号化のために情報源符号化器として構成された符号化器25を有しており、これは第1の移動無線規格この実施例ではGSM規格に従って構成されている。」(本件明細書【0009】参照)及び「情報源符号化器25にはディジタル有効データが供給され、そのようなデータはビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データおよび/またはその他の任意のデータとすることができる。以下では、第1の移動局1と第2の移動局5との間の有効データの伝送について、音声データの伝送に基づき説明する。この場合、情報源符号化器は第1の移動無線規格による音声符号化器として構成されており、この実施例ではGSM規格による音声符号化器として構成されている。」(本件明細書【0012】参照)と記載されるように、音声符号化器として構成されている符号化器に入力される信号である。
よって、引用発明1の「送信機10からの送信信号」は本件特許発明1の「ディジタルデータ」に相当する。

本件特許発明1は、符号化されたディジタルデータを「第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」中間局へ伝送することと、中間局により「第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」チャネル符号化されたディジタルデータを伝送するから、本件特許発明1の「中間局」は、「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する局であるといえる。
一方、引用発明1は、移動局1A、基地局2A、交換局3、基地局2B、移動局2Bで「1つの通信ネットワーク」を構成しているから、引用発明1の「基地局2A」、「基地局2B」、「交換局3」は、「移動局1A」と「移動局1B」の「中間にある局」ではあるが、本件特許発明1の「中間局」に相当するということはできない。

引用発明1における「スロットインタリーブ部14」から出力される「無線チャネル信号」は移動機1Aと基地局2Aとの間の「無線チャネル」上で送信されるから、引用発明1におけるスロットインタリーブ部14から出力される「無線チャネル」は、本件特許発明1の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。
同様に、引用発明1における「基地局2B」から送出する「無線チャネル信号」は基地局2Bと移動機1Bとの間の「無線チャネル」上で送信されるから、引用発明1における基地局2Bから送出する「無線チャネル」は、本件特許発明1の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。

したがって、本件特許発明1と引用発明1は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して局へ伝送し、
該局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
通信ネットワーク内での伝送のため、局により前記ディジタルデータを符号化し、前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して、符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

通信ネットワークについて、本件特許発明1は「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」が存在するのに対し、引用発明1は1つの「通信ネットワーク」である点。

相違点2

「局」について、本件特許発明1は「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する「中間局」であるのに対し、引用発明1は1つのネットワーク内の「基地局」であり、該局が行う処理として、本件特許発明1は「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明1は、「チャネル符号化」したデータのうちの「スロットデインタリーブ」と「畳み込み復号化」の処理を行うとともに、別の基地局が「チャネル符号化」の一部である「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」を行う点。

相違点3

本件特許発明1は、第2の移動局へ中間局からシグナリングデータを伝送しており、該シグナリングデータが、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むのに対し、引用発明1は、シグナリングデータの伝送に関する記載が無い点。

(エ)相違点の判断

相違点1について

甲第2号証には下記の記載(下線は当審が付与。)がある。

「【0002】
【従来の技術】図2に従来の音声通信制御方式を用いた無線通信システム構成を示す。図2における1は固定網に接続された固定端末、2-1, 2-2 はある無線符号化音声信号Aを用いて固定端末1及び無線端末間で音声通信を行う無線端末、5は各端末1、2-1,2-2間の音声通信を行うために各端末との通話路の接続をおこなう交換局である。また、交換局5における7-1, 7-2は無線符号化音声信号Aと有線符号化音声信号の変換を行うコーディック、8-3, 8-4は各々のコーディックの選択接続を行うセレクタであり、9はセレクタ8-3, 8-4の接続制御を行う制御回路である。無線端末2-1, 2-2における12-3, 12-4は無線符号化音声信号Aから音声の生成及びその反対の処理を行うコーディック、14は交換局5内及び固定端末1への通話回線であり、15-3, 15-4は無線符号化音声信号Aを送受する無線通話回線、16-3, 16-4は無線制御信号を送受する無線制御回線である。又、図4に従来の音声通信制御方法を用いた無線通信システムにおける、無線端末2-1と2-2間での通信シーケンスを示す。このような従来のシステムでは、無線端末が1種類の無線符号化音声信号しか使用しないため、交換局5内には複数の種類のコーディックは存在しない。従って、交換局5において制御回路9は無線端末2-1、2-2と固定端末1との間の通信か、或いは無線端末2-1と2-2との間の通信かに応じてセレクタ8-3、8-4を制御し、無線端末2-1、2-2と固定端末1との通信の場合は、コーディック7-1、7-2を接続し無線符号化音声信号Aを有線符号化音声信号に変換する。又、無線端末2-1と無線端末2-2との間の通信の場合は、コーディック8-3、8-4を切離して無線符号化音声信号Aを変換せずに中継し、音声通信を行う。」

「【0008】
【実施例】図1に本発明の符号整合方法の1応用システム例である無線通信システム構成を示す。 図1における各装置、回線1、2-1、2-2、5、11-1、11-2、12-1、12-2、12-3、12-4、13-1、13-2、14、15-1, 15-2、15-3、15-4、16-1、16-2、16-3、16-4は図2と同等のものである。3-1、3-2は2種類の無線音声符号化信号A,Bのうちいずれかの無線符号化音声信号を用いて固定端末1及び無線端末間で音声通信を行う無線端末、17-1、17-2は無線端末3-1、3-2で使用する無線符号化音声信号の選択制御を行うためにセレクタ13-1、13-2の制御を行うコーディック選択制御回路であり、交換局5における10は各々の無線端末が使用可能な音声符号化方式の判断を行い、各々の無線端末に対して音声符号化方式の指定をする音声符号化整合回路である。本無線通信システムにおいて無線端末2-1又は2-2、無線端末3-1又は3-2と固定端末1とが音声通信を行う場合は、交換局5において制御回路9により発信無線端末に応じ、セレクタ8-1、8-2、8-3、8-4を制御し、それぞれコーディック6-1又は6-2、7-1又は7を接続し、無線符号化音声信号A及びBと有線符号化音声信号の変換を行う。又、無線端末2-1と無線端末2-2及び無線端末3-1と無線端末3-2が音声通信する場合は、交換局5において制御回路9によりセレクタ8-1、8-2、8-3、8-4を制御してコーディック6-1又は6-2、7-1又は7-2を切り離し、各々の無線符号化音声信号AまたはBを変換せずに中継を行う。一方、無線端末2-1と無線端末3-1とが音声通信を行う場合は、発信無線端末3-1が無線符号化音声信号Bを指定してくると、交換局5において音声符号化整合回路10により両無線端末が使用可能な無線符号化音声信号A及びA,Bに応じて、両端末が同じ無線符号化音声信号Aを用いるように無線端末3-1に対し、使用する無線符号化音声信号の変更させる要求を送出する。無線端末3-1においては、コーディック選択制御回路17-1が動作し、無線端末3-1におけるコーディックは11-1から12-1へ接続変更される。更に、交換局5において制御回路9によりセレクタ8-1、8-3を制御しコーディック6-1、コーディック7-1を切り離し、両無線端末との通話路14のみを接続する。こうして、無線端末2-1と無線端末3-1との間では、無線符号化音声信号を変換しないで同一の無線符号化音声信号により音声通信を行う事ができる。」

したがって、甲第2号証には次の事項が記載されているといえる。

「1は固定網に接続された固定端末、2-1, 2-2 はある無線符号化音声信号Aを用いて固定端末1及び無線端末間で音声通信を行う無線端末、5は各端末1、2-1,2-2間の音声通信を行うために各端末との通話路の接続をおこなう交換局であり、15-3, 15-4は無線符号化音声信号Aを送受する無線通話回線、16-3, 16-4は無線制御信号を送受する無線制御回線であり、
3-1、3-2は2種類の無線音声符号化信号A,Bのうちいずれかの無線符号化音声信号を用いて固定端末1及び無線端末間で音声通信を行う無線端末、17-1、17-2は無線端末3-1、3-2で使用する無線符号化音声信号の選択制御を行うためにセレクタ13-1、13-2の制御を行うコーディック選択制御回路であり、交換局5における10は各々の無線端末が使用可能な音声符号化方式の判断を行い、各々の無線端末に対して音声符号化方式の指定をする音声符号化整合回路である、
無線通信システム。」

結局、甲第2号証は、無線端末は、いずれも交換局5に接続する移動端末であって、1つの「通信ネットワーク」を構成するから、「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」は存在しない。

相違点2について

甲第2号証には、「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」は存在しないから、甲第2号証には「中間局」は存在しない。また、甲第2号証に「チャネル符号化」「チャネル復号化」に関する記載は無く、局で「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」を行う際に、あわせて「CRC演算/チェック」を行うようにすることも記載されていない。

相違点3について

甲第2号証(下線部は当審が付与。)には、

「【0012】(2)無線端末3-1が発信し、無線端末3-2に着信する場合
まず、無線端末3-1からの音声符号化方式:無線符号化音声信号B、着信端末:無線端末3-2で設定された”呼設定”信号を交換局5における制御回路9が無線制御回線16-1を通じて受信すると、”呼設定”信号情報を音声符号化整合回路10における音声符号化方式制御回路20に引き渡す。音声符号化方式制御回路20は”呼設定”信号内に含まれる発信情報を分析し、発信端末は無線符号化音声信Bを使用要求し、着信端末が無線端末3-2であることを認識する。次に、音声符号化方式制御回路20は無線端末3-1、無線端末3-2間の音声通信に使用する音声符号化方式を決定するため、音声符号化方式判定回路19を起動する。音声符号化方式判定回路19は、無線端末情報蓄積メモリ18内の無線端末情報を検索し、無線端末3-1、3-2の使用可能な音声符号化方式が両無線端末とも無線符号化音声信号A,Bであることを音声符号化方式制御回路20に通知する。音声符号化方式制御回路20は、両無線端末が使用可能な音声符号化方式を比較し、無線端末3-1、無線端末3-2間通信で同一の無線符号化音声信号であり、且つ、高能率な音声符号化方式である無線符号化音声信号Bを使用することに決定する。音声符号化方式制御回路20は、先の音声符号化方式の決定結果に基づき、制御回路9を起動する。制御回路9は無線端末3-2に対して無線制御回線16-2を通じ、無線符号化音声信号Bの”呼設定”信号を送出する。又、交換局5において制御回路9は無線制御回線16-2を通じ、無線端末2-1からの”応答”信号を受信するとセレクタ8-1、8-2を制御して、今まで、コーディック6-1、6-2に接続していた状態からコーディックを切り離す。この後、制御回路9は無線端末3-1に対して無線制御回線16-2を通じ、”応答”信号を送出し、無線端末3-1と無線端末3-2の間で無線符号化音声信号Bによる音声通信が開始される。」

の記載があり、ここで甲第2号証の「呼設定」信号は本件特許発明1の「シグナリングデータ」に相当するから、甲第2号証には、

「交換局5が無線符号化音声方式Bのシグナリングデータを着信端末に対して送信する」ことが記載されている。(以下「甲2記載技術」という。)

ここで、請求人は、「甲第2号証は、コーデック・スルー通信とするための回線設定時のシーケンスを示し、甲第1号証は、その結果として設定された回線構成を示している。」と主張しているから、甲第1号証に記載されている引用発明1に甲2記載技術を適用できるかどうかについて検討する。

甲第1号証(下線は当審が付与。)には、

「【0002】
【従来の技術】図4は従来より知られているPDCシステム(フルレート)が示されており、移動機1は基地局2と無線1チャネル当たり224ビット/20msが割り当てられており、このフルレートの無線チャネル信号はV.SELP符号を使用して基地局2から交換局3へそのままスルーで送られ、交換局側の1タイムスロットイメージに3チャネル多重化されて送受されるようになっており、交換局3内の音声処理装置31と交換機32とを経て公衆網4またはデジタル移動網5に接続される。」

「【0008】そして、基地局2においてはこの無線チャネル信号は何らの処理も受けずにスルーで通過して交換局3に与えられ、交換局3の音声処理装置31においては、通常の音声の場合、音声処理装置31におけるCRCチェック部(演算部)311と音声復号化部(符号化部)312と畳み込み復号化部(符号化部)313とスロットデインタリーブ部(インタリーブ部)314とを介して移動機1と丁度逆の処理が行われ、V.SELP符号からPCM符号に変換され、交換機32を通して公衆網4に送られるようになる。
【0009】また、デジタル移動機-デジタル移動機間の接続の場合には交換局3の音声処理装置31においては多重分離(この部分は図示せず)のみが行われ、相手のデジタル移動機に対してV.SELP符号のまま送るため、音声処理装置31における各部311?314はスルーで通過し、交換機32から無線チャネル信号としてデジタル移動網5に送られるようになっている。
【0010】しかしながら、このようなPDCシステムでは伝送路において224ビットが占有されており有効利用できないため、図6に示すようにマルチレート(141ビット/20ms)のデータ伝送方式が採用されるようになっている。
【0011】すなわち、図4に示したPDCシステムにおいては交換局3における音声処理装置31において行われていた機能の内、畳み込み復号化部(符号化部)313とスロットデインタリーブ部(インタリーブ部)314の処理が基地局2で行うようにスロットデインタリーブ部(インタリーブ部)21と畳み込み復号化部(符号化部)22とが設けられている。
【0012】したがって、移動機1からの無線チャネル信号は基地局2においてスロットデインタリーブ部21と畳み込み復号化部22とによりマルチレート信号(141ビット/20ms)に戻され、このマルチレート信号は交換局3の音声処理装置31において公衆網4との接続には、CRCチェック部311と音声復号化部312と畳み込み符号化部313とスロットインタリーブ部314とを介してPCM信号とし、交換機32から送られるが、デジタル移動網5との接続においては、CRCチェック部311と音声復号化部312とをスルーで通過し、畳み込み符号化部313で畳み込み符号化を行いスロットインタリーブ部314でスロットインタリーブを行って無線チャネル信号(224ビット/20ms)に変換して交換機32からデジタル移動網5に送出するようにしている。
【0013】尚、基地局2から交換局3へのマルチレート信号は図5で言えばA点に示す141ビットが音声符号化とCRC演算が施された信号に対応している。」

と記載されているように、従来から「デジタル移動機-デジタル移動機間の接続の場合」には、交換局3で多重分離のみが行われる一方、「CRC演算/チェック」、「音声符号化/復号化」、「畳み込み符号化/復号化」、「スロット(デ)インタリーブ」を行なわずに、デジタル移動網5に送信していたが、基地局2と交換局3の伝送路を有効活用するために、畳み込み復号化とスロットデインタリーブを基地局2で行うように構成した発明が、甲第1号証の図7に記載される引用発明1であるといえる。

そうすると、引用発明1は、基地局2と交換局3の間の伝送路の有効活用のために、基地局で畳み込み復号化とスロットデインタリーブを行うようにしたものであって、「同じ音声符号化方式のデジタル移動機が接続される場合を前提」として、「基地局と交換局の間の伝送路の有効活用を行う」ことを目的とした発明である。

請求人は、甲第1号証の【0008】-【0009】に無線端末間の通信においてコーデック・スルー通信とすることが記載されており、「甲第2号証は、コーデック・スルー通信とするための回線設定時のシーケンスを示し、甲第1号証は、その結果として設定された回線構成を示している」と主張している(審判請求書30頁)。
しかし、甲第1号証には、交換機が多重分離のみが行われて、V.SELP符号のまま相手のデジタル移動機に対して送信することが記載されているだけであって、異なる音声符号化方式のデジタル移動機が接続される場合の動作について何ら記載されていないから、引用発明1における交換機の動作が「コーデック・スルー」であるとしても、引用発明1において接続されている無線端末は、甲第2号証において接続されている無線端末とは異なる。
また、請求人は、本件特許の優先権主張の日において、甲第1号証の通信システムであるPDCシステムでは、音声符号化方式としてSVELP方式とPSI-CELP方式の両方が採用されており、着信側の無線端末は使用すべき音声符号化方式を知る必要があった旨主張(審判請求書30頁)している。
しかし、引用発明1に、PSI-CELP(ハーフレート)端末を接続する場合の動作は記載されていない。
そして、甲第3号証の20頁に「ハーフレート方式の通信チャネルの伝送速度は5.6kb/sである」の記載があるように、ハーフレート端末の符号化速度は5.6kbpsであって、引用発明1における基地局と交換局間の「マルチレート信号」よりも低い伝送速度であるから、引用発明1の基地局においてスロットデインタリーブや畳み込み復号化を行って伝送速度を下げる必要が無い。
つまり、引用発明1において、ハーフレート方式の端末を接続する場合には、必ずしも基地局や交換局において同様の処理を行う必要が無いから、引用発明1においてハーフレート端末を接続した場合の動作が記載されているとはいえない。
上記によれば、「甲第2号証が、コーデック・スルー通信とするための回線設定時のシーケンスを示し、甲第1号証が、その結果として設定された回線構成を示している」とはいえない。

したがって、引用発明1に甲2記載技術を適用することはできない。

また、相違点1で記載したように、引用発明1は1つの通信ネットワークで構成されているから、「中間局」が存在しないので、そもそも「中間局」からシグナリングデータを送信することはできない。

したがって、本件特許発明1は、引用発明1及び甲2記載技術より容易に発明をすることができたとはいえない。

(オ)予備的な検討

なお、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、とした場合について、予備的に検討する。
この場合、移動機1Aと基地局2Aで第1の通信ネットワークを構成し、移動機1Bと基地局2Bで第2の通信ネットワークを構成している。

乙第4号証及び甲第7号証を参照すれば、引用発明1における「音声符号化部11」が、本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」に対応し、引用発明1における「CRC演算/チェック部12」と「畳み込み符号化/復号化部13」と「スロット(デ)インタリーブ部14」が、本件特許発明1の「第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」に対応しているといえる。

引用発明1における「スロットインタリーブ部14」から出力される移動機1Aと基地局2Aとの間の「無線チャネル信号」は、本件特許発明1の「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当し、
引用発明1における「基地局2B」から送出される基地局2Bと移動機1Bとの間の「無線チャネル」は、本件特許発明1の「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当する。

引用発明1の「基地局2A」、「交換局3」、「基地局2B」は、「移動機1A」と「基地局2A」で構成される「第1の通信ネットワーク」と「基地局2B」と「移動機1B」で構成される「第2の通信ネットワーク」の間にある局であるから、いずれも「中間局」といえる。

したがって、本件特許発明1と引用発明1は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータを符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第2の移動局により復号されたディジタルデータチャネルを、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

本件特許発明1は、「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを中間局から第2の移動局へ伝送して、第2の移動局が受信したシグナリングデータに依存して情報源復号するのに対し、引用発明1は、「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して情報源復号を行っている記載も無い点。

相違点2

中間局が行う符号化について、本件特許発明1は「チャネル符号化」であるのに対し、引用発明1は、「チャネル符号化」の一部である「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」を行う点。

相違点1について

「中間局」の点を除き、上記(エ)の相違点3において記載したとおり、引用発明1に甲2記載技術を適用することはできない。

相違点2について

「チャネル符号化」を構成する「CRC演算/チェック」について、基地局に代えて交換局で行うことで、交換局で「チャネル符号化」を行うようにすることは甲第2号証に記載されていない。

上記のように、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、としても、本件特許発明1は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

イ.本件特許発明2について

本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法である(上記「第2」の1.を参照。)。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含む。
したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明2は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

ウ.本件特許発明3について

本件特許発明3は、本件特許発明1において、さらに「前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加」する相違点を含む。

そして、甲第2号証に記載されている「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、送信するディジタルデータに対して「付加」することはできない。

したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明3は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

エ.本件特許発明4について

本件特許発明4は、本件特許発明1において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送」する相違点を含む。

そして、甲第2号証に記載されている「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、シグナリングデータをディジタルデータと「いっしょ」に伝送することはできない。

したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明4は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

オ.本件特許発明7について

(ア)本件特許発明7

本件特許発明7は、特許第4021622号公報の特許請求の範囲の請求項7に記載された次のとおりのものである。(上記「第2」の1.を再掲。)

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータをチャネル符号化し、次に前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

(イ)甲第1号証

上記ア.(イ)に記載したとおりである。

(ウ)比較

引用発明1の「移動機1A」、「移動機1B」は、それぞれ本件特許発明7の「第1の移動局」、「第2の移動局」に相当する。
上記ア.(ウ)に記載したように、乙第4号証及び甲第7号証を参照すれば、引用発明1における「音声符号化部11」が、本件特許発明7の「第1段階でディジタルデータを符号化」に対応し、引用発明1における「CRC演算/チェック部12」と「畳み込み符号化/復号化部13」と「スロット(デ)インタリーブ部14」が、本件特許発明7の「第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」に対応しているといえる。
さらに、引用発明1の「送信機10からの送信信号」は本件特許発明7の「ディジタルデータ」に相当する。

本件特許発明7は、符号化されたディジタルデータを「第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」中間局へ伝送することと、中間局により「第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」チャネル符号化されたディジタルデータを伝送するから、本件特許発明7の「中間局」は、「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する局であるといえる。
一方、引用発明1は、移動局1A、基地局2A、交換局3、基地局2B、移動局2Bで「1つの通信ネットワーク」を構成しているから、引用発明1の「基地局2A」、「基地局2B」、「交換局3」は、「移動局1A」と「移動局1B」の「中間にある局」ではあるが、本件特許発明7の「中間局」に相当するということはできない。

引用発明1における「スロットインタリーブ部14」から出力される「無線チャネル信号」は移動機1Aと基地局2Aとの間の「無線チャネル」上で送信されるから、引用発明1におけるスロットインタリーブ部14から出力される「無線チャネル」は、本件特許発明7の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。
同様に、引用発明1における「基地局2B」から送出する「無線チャネル信号」は基地局2Bと移動機1Bとの間の「無線チャネル」上で送信されるから、引用発明1における基地局2Bから送出する「無線チャネル」は、本件特許発明7の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。

したがって、本件特許発明7と引用発明1は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して局へ伝送し、
該局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
通信ネットワーク内での伝送のため、局により前記ディジタルデータを符号化し、前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して、符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

通信ネットワークについて、本件特許発明7は「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」が存在するのに対し、引用発明1は1つの「通信ネットワーク」である点。

相違点2

「局」について、本件特許発明7は「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する「中間局」であるのに対し、引用発明1は1つのネットワーク内の「基地局」であり、該局が行う処理として、本件特許発明7は「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明1は、「チャネル符号化」したデータのうちの「スロットデインタリーブ」と「畳み込み復号化」の処理を行うとともに、別の基地局が「チャネル符号化」の一部である「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」を行う点。

相違点3

本件特許発明7は、第2の移動局へシグナリングデータを伝送しており、該シグナリングデータが、「前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むのに対し、引用発明1は、シグナリングデータの伝送に関する記載が無い点。

(エ)相違点の判断

相違点1について、

上記ア.(エ)の相違点1に記載したとおりである。

相違点2について

上記ア.(エ)の相違点2に記載したとおりである。

相違点3について

上記ア.(エ)の相違点3に記載したとおりである。

したがって、本件特許発明7は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

(オ)予備的な検討

なお、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、とした場合について、予備的に検討する。

上記ア.(ウ)に記載したように、乙第4号証及び甲第7号証を参照すれば、引用発明1における「音声符号化部11」が、本件特許発明7の「第1段階でディジタルデータを符号化」に対応し、引用発明1における「CRC演算/チェック部12」と「畳み込み符号化/復号化部13」と「スロット(デ)インタリーブ部14」が、本件特許発明7の「第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化」に対応しているといえる。

引用発明1における「スロットインタリーブ部14」から出力される移動機1Aと基地局2Aとの間の「無線チャネル信号」は、本件特許発明7の「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当し、
引用発明1における「基地局2B」から送出される基地局2Bと移動機1Bとの間の「無線チャネル」は、本件特許発明7の「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」に相当する。

引用発明1の「基地局2A」、「交換局3」、「基地局2B」は、「移動機1A」と「基地局2A」で構成される「第1の通信ネットワーク」と「基地局2B」と「移動機1B」で構成される「第2の通信ネットワーク」の間にある局であるから、いずれも「中間局」といえる。

したがって、本件特許発明7と引用発明1は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、次に第2段階で該ディジタルデータをチャネル符号化し、
前記の第1段階および第2段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
該中間局により、前記第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記中間局により前記ディジタルデータを符号化し、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、チャネル符号化された前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
前記第2の移動局により、前記中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号し、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

本件特許発明7は、「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを中間局から第2の移動局へ伝送して、第2の移動局が、受信したシグナリングデータに依存して、第1段階で符号化されたディジタルデータを復号するのに対し、引用発明1は、「第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含」むシグナリングデータを伝送する記載が無く、第2の移動局で該シグナリングデータに依存して情報源復号を行っている記載も無い点。

相違点2

中間局が行う符号化について、本件特許発明7は「チャネル符号化」であるのに対し、引用発明1は、「チャネル符号化」の一部である「畳み込み符号化」と「スロットインタリーブ」を行う点。

相違点1について

甲第2号証には、上記ア.(エ)で記載したとおり、甲2記載技術が記載されている。

ここで、請求人は、「甲第2号証は、コーデック・スルー通信とするための回線設定時のシーケンスを示し、甲第1号証は、その結果として設定された回線構成を示している。」と主張しているから、引用発明1に甲2記載技術を適用できるかどうかについて検討すると、上記ア.(エ)の相違点3で記載したように、引用発明1に甲2記載技術を適用することはできない。

相違点2について

「チャネル符号化」を構成する「CRC演算/チェック」について、基地局に代えて交換局で行うことで、交換局で「チャネル符号化」を行うようにすることは甲第2号証に記載されていない。

上記のように、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、としても、本件特許発明7は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

カ.本件特許発明8について

本件特許発明8は、本件特許発明7において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。
したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明8は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

キ.本件特許発明9について

本件特許発明9は、本件特許発明7において、さらに「第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加」する相違点を含む。

そして、甲第2号証に記載されている「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、送信するディジタルデータに対して「付加」することはできない。

したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明9は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

ク.本件特許発明10について

本件特許発明10は、本件特許発明7において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送」する相違点を含む。

そして、甲第2号証に記載されている「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、シグナリングデータをディジタルデータと「いっしょ」に伝送することはできない。

したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明10は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

ケ.本件特許発明13について

本件特許発明13は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。
したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明13は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

コ.本件特許発明14について

本件特許発明14は、本件特許発明1または本件特許発明3または本件特許発明7または本件特許発明9において、さらに「前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。
したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明14は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

サ.本件特許発明15について

本件特許発明15は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する」ことを含む方法(上記「第2」の1.を参照。)である。
よって、上記ア.(ウ)に記載した相違点、または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。
したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明15は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできない。

シ.小括(無効理由1について)

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、引用発明1及び甲2記載技術により容易に発明をすることができたということはできないから、特許法第29条第2項には該当しない。

したがって、無効理由1を理由として、本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を無効とすることはできない。

(3)無効理由2について

ア.本件特許発明1について

(ア)本件特許発明1

上記(2)ア.(ア)に記載したとおりである。

(イ)甲第2号証

甲第2号証(下線部は当審が付与。)には、

「【0007】
【作用】本発明では、異なる無線符号化音声信号を用いる無線端末間通信時に、網側で両無線端末の使用可能な音声符号化方式に応じて両無線端末が同一の無線符号化音声信号を用いるように、発着両無線端末のコーディックの種類を整合させ、更に網内のコーディックを切り離して通話路の設定をし、無線符号化音声信号を変換せずに中継を行い、通信を行うことにより、符号化歪み・接続遅延による通信品質の劣化を防ぐことが可能であるという利点を有する。
【0008】
【実施例】図1に本発明の符号整合方法の1応用システム例である無線通信システム構成を示す。 図1における各装置、回線1、2-1、2-2、5、11-1、11-2、12-1、12-2、12-3、12-4、13-1、13-2、14、15-1, 15-2、15-3、15-4、16-1、16-2、16-3、16-4は図2と同等のものである。3-1、3-2は2種類の無線音声符号化信号A,Bのうちいずれかの無線符号化音声信号を用いて固定端末1及び無線端末間で音声通信を行う無線端末、17-1、17-2は無線端末3-1、3-2で使用する無線符号化音声信号の選択制御を行うためにセレクタ13-1、13-2の制御を行うコーディック選択制御回路であり、交換局5における10は各々の無線端末が使用可能な音声符号化方式の判断を行い、各々の無線端末に対して音声符号化方式の指定をする音声符号化整合回路である。本無線通信システムにおいて無線端末2-1又は2-2、無線端末3-1又は3-2と固定端末1とが音声通信を行う場合は、交換局5において制御回路9により発信無線端末に応じ、セレクタ8-1、8-2、8-3、8-4を制御し、それぞれコーディック6-1又は6-2、7-1又は7を接続し、無線符号化音声信号A及びBと有線符号化音声信号の変換を行う。又、無線端末2-1と無線端末2-2及び無線端末3-1と無線端末3-2が音声通信する場合は、交換局5において制御回路9によりセレクタ8-1、8-2、8-3、8-4を制御してコーディック6-1又は6-2、7-1又は7-2を切り離し、各々の無線符号化音声信号AまたはBを変換せずに中継を行う。一方、無線端末2-1と無線端末3-1とが音声通信を行う場合は、発信無線端末3-1が無線符号化音声信号Bを指定してくると、交換局5において音声符号化整合回路10により両無線端末が使用可能な無線符号化音声信号A及びA,Bに応じて、両端末が同じ無線符号化音声信号Aを用いるように無線端末3-1に対し、使用する無線符号化音声信号の変更させる要求を送出する。無線端末3-1においては、コーディック選択制御回路17-1が動作し、無線端末3-1におけるコーディックは11-1から12-1へ接続変更される。更に、交換局5において制御回路9によりセレクタ8-1、8-3を制御しコーディック6-1、コーディック7-1を切り離し、両無線端末との通話路14のみを接続する。こうして、無線端末2-1と無線端末3-1との間では、無線符号化音声信号を変換しないで同一の無線符号化音声信号により音声通信を行う事ができる。」

「【0012】(2)無線端末3-1が発信し、無線端末3-2に着信する場合
まず、無線端末3-1からの音声符号化方式:無線符号化音声信号B、着信端末:無線端末3-2で設定された”呼設定”信号を交換局5における制御回路9が無線制御回線16-1を通じて受信すると、”呼設定”信号情報を音声符号化整合回路10における音声符号化方式制御回路20に引き渡す。音声符号化方式制御回路20は”呼設定”信号内に含まれる発信情報を分析し、発信端末は無線符号化音声信Bを使用要求し、着信端末が無線端末3-2であることを認識する。次に、音声符号化方式制御回路20は無線端末3-1、無線端末3-2間の音声通信に使用する音声符号化方式を決定するため、音声符号化方式判定回路19を起動する。音声符号化方式判定回路19は、無線端末情報蓄積メモリ18内の無線端末情報を検索し、無線端末3-1、3-2の使用可能な音声符号化方式が両無線端末とも無線符号化音声信号A,Bであることを音声符号化方式制御回路20に通知する。音声符号化方式制御回路20は、両無線端末が使用可能な音声符号化方式を比較し、無線端末3-1、無線端末3-2間通信で同一の無線符号化音声信号であり、且つ、高能率な音声符号化方式である無線符号化音声信号Bを使用することに決定する。音声符号化方式制御回路20は、先の音声符号化方式の決定結果に基づき、制御回路9を起動する。制御回路9は無線端末3-2に対して無線制御回線16-2を通じ、無線符号化音声信号Bの”呼設定”信号を送出する。又、交換局5において制御回路9は無線制御回線16-2を通じ、無線端末2-1からの”応答”信号を受信するとセレクタ8-1、8-2を制御して、今まで、コーディック6-1、6-2に接続していた状態からコーディックを切り離す。この後、制御回路9は無線端末3-1に対して無線制御回線16-2を通じ、”応答”信号を送出し、無線端末3-1と無線端末3-2の間で無線符号化音声信号Bによる音声通信が開始される。」

そして図1には、


の記載があるから、甲第2号証には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「網側で両無線端末の使用可能な音声符号化方式に応じて両無線端末が同一の無線符号化音声信号を用いるように、発着両無線端末のコーディックの種類を整合させ、更に網内のコーディックを切り離して通話路の設定をし、無線符号化音声信号を変換せずに中継を行い、通信を行う方法であって、
本無線通信システムにおいて、無線端末3-1と無線端末3-2が音声通信する場合は、交換局5において制御回路9によりセレクタ8-1、8-2を制御してコーディック6-1又は6-2を切り離し、各々の無線符号化音声信号AまたはBを変換せずに中継を行うものであり、
無線端末3-1が発信し、無線端末3-2に着信する場合は、
無線端末3-1からの音声符号化方式:無線符号化音声信号B、着信端末:無線端末3-2で設定された”呼設定”信号を交換局5における制御回路9が無線制御回線16-1を通じて受信すると、”呼設定”信号情報を音声符号化方式制御回路20に引き渡し、
音声符号化方式制御回路20は”呼設定”信号内に含まれる発信情報を分析し、発信端末は無線符号化音声信Bを使用要求し、着信端末が無線端末3-2であることを認識して、無線端末3-1、無線端末3-2間の音声通信に使用する音声符号化方式を決定するため、音声符号化方式判定回路19を起動し、
音声符号化方式判定回路19は、無線端末情報蓄積メモリ18内の無線端末情報を検索し、無線端末3-1、3-2の使用可能な音声符号化方式が両無線端末とも無線符号化音声信号A,Bであることを音声符号化方式制御回路20に通知し、
音声符号化方式制御回路20は、両無線端末が使用可能な音声符号化方式を比較し、無線端末3-1、無線端末3-2間通信で同一の無線符号化音声信号であり、且つ、高能率な音声符号化方式である無線符号化音声信号Bを使用することに決定して、先の音声符号化方式の決定結果に基づき、制御回路9を起動して、無線端末3-2に対して無線制御回線16-2を通じ、無線符号化音声信号Bの”呼設定”信号を送出し、
交換局5において制御回路9は無線制御回線16-2を通じ、無線端末2-1からの”応答”信号を受信するとセレクタ8-1、8-2を制御して、今まで、コーディック6-1、6-2に接続していた状態からコーディックを切り離した後、制御回路9は無線端末3-1に対して無線制御回線16-2を通じ、”応答”信号を送出し、無線端末3-1と無線端末3-2の間で無線通話回線15-1と無線通話回線15-2を通じて無線符号化音声信号Bによる音声通信が開始される、
方法。」

(ウ)比較

本件特許発明1と引用発明2を比較する。

引用発明2の「無線端末3-1」は、本件特許発明1の「第1の移動局」に相当し、
引用発明2の「無線端末3-2」は、本件特許発明1の「第2の移動局」に相当する。

「通信ネットワーク」は、上記(1)に記載したように「所定の移動無線規格に従って構成されている」ものであるから、引用発明2は、無線端末3-1、交換局5、無線端末3-2で構成される「1つの通信ネットワーク」に関する発明である。
また、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも「無線チャネル」上で送信され、該「無線チャネル」は無線端末と交換局との間の「無線チャネル」であるから、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも本件特許発明1の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。

ここで、本件特許発明1は、符号化されたディジタルデータを「第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」中間局へ伝送することと、中間局により「第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」チャネル符号化されたディジタルデータを伝送するから、「中間局」は、「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する局であるといえる。
一方、引用発明2は、上記のように「1つの通信ネットワーク」に関する発明であって、2つの通信ネットワークは存在しない。
よって、引用発明2の「交換局5」は、本件特許発明1の「中間局」に該当しない。

引用発明2においては、「発着両無線端末のコーディックの種類を整合させ」るから、無線端末内にコーデックを有し、該コーデックが「無線符号化音声信号B」を生成することが明らかである。
ここで、甲第2号証の【0002】に、「無線端末2-1, 2-2における12-3, 12-4は無線符号化音声信号Aから音声の生成及びその反対の処理を行うコーディック」の記載があるから、引用発明2における「コーディック」は、「音声」から「無線符号化音声信号」の生成の処理、あるいはその反対の処理を行う装置であるといえる。
よって、引用発明2における「コーディック」が「第1段階でディジタルデータを符号化」の処理を含むことは明らかである。
引用発明2における「コーディック」が「第2段階でディジタルデータをチャネル符号化」の処理を含むかどうかについてみると、甲第2号証において、「コーディック」が生成した「無線符号化音声信号」が、「音声符号化」されて「チャネル符号化」された信号であるのか、「音声符号化」された信号であるのかは明記されていないが、甲第2号証において、誤り訂正符号を用いることや、誤り訂正を行うことは記載されていないから、甲第2号証の「コーディック」は、誤り訂正符号を考慮しない符号化であると認められる。
上記によれば、引用発明2における「コーディック」は「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当する。

引用発明2の「呼設定」信号は、シグナリングデータである。
そして、該「呼設定」信号に設定されている「音声符号化方式:無線符号化音声信号B」は無線端末3-1が使用した無線音声符号化方式であるから、「第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化」しているといえる。
また、無線端末3-2は、無線符号化音声信号Bを受信し、「”応答”信号」の送信を行って、無線符号化音声信号Bを使用し、音声通信を行っているから、「第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号」しているといえる。

したがって、本件特許発明1と引用発明2は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、
前記の第1段階で符号化されたディジタルデータを前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して局へ伝送し、
通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局によりディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

通信ネットワークについて、本件特許発明1は「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」が存在するのに対し、引用発明2は1つの「通信ネットワーク」である点。

相違点2

「局」について、本件特許発明1は「中間局」であるのに対し、引用発明2は「交換局」であり、該局が行う処理として、本件特許発明1は「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明2は、チャネル符号化処理を行わない点。

相違点3

移動局の処理に関し、本件特許発明1は、移動局において、ディジタルデータを第2段階でチャネル符号化し、中間局において符号化されたディジタルデータチャネルを復号するのに対し、引用発明2はチャネル符号に関する記載は無い点。

(エ)相違点の判断

相違点1及び相違点2及び相違点3について

甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証のいずれにも、2つの通信ネットワークが存在することは記載されていないから、中間局は存在しない。
また、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証のいずれにも、中継を行う局において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することは記載されていない。
したがって、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証を参照しても、「中間局」において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することが周知であるとはいえない。
上記によれば、中間局において、「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」することが容易に想到しうるとはいえない。

上記のように、本件特許発明1は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

(オ)予備的な検討

なお、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、とした場合について、予備的に検討する。

引用発明2の「無線端末3-1」と「交換局5」で構成される通信ネットワークが本件特許発明1の「第1の通信ネットワーク」に相当し、
引用発明2の「無線端末3-2」と「交換局5」で構成される通信ネットワークが本件特許発明1の「第2の通信ネットワーク」に相当する。
また、引用発明2の「交換局5」は、「無線端末3-1」と「交換局5」で構成される通信ネットワークと、「無線端末3-2」と「交換局5」で構成される通信ネットワークの間にある局であるから、「中間局」であるといえる。

引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも、無線端末と交換局との間の「伝送チャネル」に相当するから、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、それぞれ本件特許発明1の「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」、「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。
また、上記ア.(ウ)に記載したように、引用発明2における「コーディック」は、本件特許発明1の「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当し、
引用発明2の「無線符号化音声信号B」は、本件特許発明1の「符号化されたディジタルデータ」に相当する。

引用発明2の「呼設定」信号は、シグナリングデータである。
そして、該「呼設定」信号に設定されている「音声符号化方式:無線符号化音声信号B」を無線端末3-1が使用し、無線端末3-2が、「”応答”信号」の送信を行って、無線符号化音声信号Bを使用し、音声通信を行っている。
音声通信を行うためには、無線端末3-1で、「音声から無線符号化音声信号Bへの符号化」が行われ、無線端末3-2で、ディジタルデータをチャネルで受信して「受信した無線符号化音声信号Bから音声への復号化」が行われることは明らかである。
つまり、引用発明2は、「第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化」し、「前記第2の移動局によりディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号」しているといえる。
また、引用発明2の無線端末と交換局間の「無線通話回線」では、無線符号化音声信号Bが送信されているから、引用発明2は「第1段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送」するとともに、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送」しているといえる。

したがって、本件特許発明1と引用発明2は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、
前記の第1段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2の移動局によりディジタルデータチャネルを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

本件特許発明1では、第1の無線端末において「第2段階で該ディジタルデータを符号化」し、第2の無線端末において「中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号」するのに対し、引用発明2は、「第2段階」の符号化及び復号化に関して記載が無い点。

相違点2

中間局において、本件特許発明1では、「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号」するとともに、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため」に「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明2は、処理を行わない点。

相違点1について

甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証によれば、無線伝送路において誤り訂正符号を用いることは周知であるから、第1の無線端末において誤り訂正符号化を行い、第2の無線端末において誤り訂正復号化を行うことは一般的なことにすぎない。

相違点2について

上記(エ)に記載したように、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証のいずれにも、中継を行う局において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することは記載されていない。
よって、端末の間にある中間局において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することが周知であるとはいえない。
したがって、2つの通信ネットワークの中間に位置する中間局において、「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」することは容易に想到しうるとはいえない。

上記のように、本件特許発明1は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

上記のように、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、としても、本件特許発明1は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

イ.本件特許発明2について

本件特許発明2は、上記(2)イ.に記載したとおりである。

本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)で記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)で記載したのと同様の理由により、本件特許発明2は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

ウ.本件特許発明3について

本件特許発明3は、上記(2)ウ.に記載したとおりである。

本件特許発明3は、本件特許発明1において、さらに「前記中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局によりチャネル符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータをチャネル復号し、
該第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により情報源復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「中間局において、復号されたディジタルデータチャネルに対し前記シグナリングデータを付加」する相違点を含む。

そして、引用発明2の「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、送信するディジタルデータに対して「付加」することはできない。

したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明3は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

エ.本件特許発明4について

本件特許発明4は、上記(2)エ.に記載したとおりである。

本件特許発明4は、本件特許発明1において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータをそれぞれ第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階で符号化され前記第2の移動局により復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い復号する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに、「第2の通信ネットワークにおけるディジタルデータをチャネル符号化し、第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送」する相違点を含む。

そして、引用発明2の「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、シグナリングデータをディジタルデータと「いっしょ」に伝送することはできない。

したがって、上記ア.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明4は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

オ.本件特許発明7について

(ア)本件特許発明7

上記(2)オ.に記載したとおりである。

(イ)甲第2号証

上記ア.(イ)に記載したとおりである。

(ウ)比較

本件特許発明7と引用発明2を比較する。

引用発明2の「無線端末3-1」は、本件特許発明7の「第1の移動局」に相当し、
引用発明2の「無線端末3-2」は、本件特許発明7の「第2の移動局」に相当する。

「通信ネットワーク」は、上記(1)に記載したように「所定の移動無線規格に従って構成されている」ものであるから、引用発明2は、無線端末3-1、交換局5、無線端末3-2で構成される「1つの通信ネットワーク」に関する発明である。
また、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも「無線チャネル」上で送信され、該「無線チャネル」は無線端末と交換局との間の「無線チャネル」であるから、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも本件特許発明7の「通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。

ここで、本件特許発明7は、符号化されたディジタルデータを「第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」中間局へ伝送することと、中間局により「第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して」チャネル符号化されたディジタルデータを伝送するから、「中間局」は、「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」から受信して「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」へ送信する局であるといえる。
一方、引用発明2は、上記のように「1つの通信ネットワーク」に関する発明であって、2つの通信ネットワークは存在しない。
よって、引用発明2の「交換局5」は、本件特許発明7の「中間局」に該当しない。

引用発明2においては、「発着両無線端末のコーディックの種類を整合させ」るから、無線端末内にコーデックを有し、該コーデックが「無線符号化音声信号B」を生成することが明らかである。
ここで、甲第2号証の【0002】に、「無線端末2-1, 2-2における12-3, 12-4は無線符号化音声信号Aから音声の生成及びその反対の処理を行うコーディック」の記載があるから、引用発明2における「コーディック」は、「音声」から「無線符号化音声信号」の生成の処理、あるいはその反対の処理を行う装置であるといえる。
よって、引用発明2における「コーディック」が「第1段階でディジタルデータを符号化」の処理を含むことは明らかである。
引用発明2における「コーディック」が「第2段階でディジタルデータをチャネル符号化」の処理を含むかどうかについてみると、甲第2号証において、「コーディック」が生成した「無線符号化音声信号」が、「音声符号化」されて「チャネル符号化」された信号であるのか、「音声符号化」された信号であるのかは明記されていないが、甲第2号証において、誤り訂正符号を用いることや、誤り訂正を行うことは記載されていないから、甲第2号証の「コーディック」は、誤り訂正符号を考慮しない符号化であると認められる。
上記によれば、引用発明2における「コーディック」は「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当する。

引用発明2の「呼設定」信号は、シグナリングデータである。
そして、引用発明2の、「呼設定」信号に設定されている「音声符号化方式:無線符号化音声信号B」は無線端末3-1が使用した無線音声符号化方式であるから、「第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化」しているといえる。
また、無線端末3-2は、無線符号化音声信号Bを受信し、「”応答”信号」の送信を行って、無線符号化音声信号Bを使用し、音声通信を行っているから、「前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号」しているといえる。

したがって、本件特許発明7と引用発明2は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、
前記の第1段階で符号化されたディジタルデータを前記通信ネットワークの伝送チャネルを介して局へ伝送し、
通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

通信ネットワークについて、本件特許発明7は「第1の通信ネットワーク」と「第2の通信ネットワーク」が存在するのに対し、引用発明2は1つの「通信ネットワーク」である点。

相違点2

「局」について、本件特許発明7は「中間局」であるのに対し、引用発明2は「交換局」であり、該局が行う処理として、本件特許発明7は「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明2は、チャネル符号化処理は行わない点。

相違点3

移動局の処理に関し、本件特許発明7は、移動局において、ディジタルデータを第2段階でチャネル符号化し、中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号するのに対し、引用発明2はチャネル符号に関する記載は無い点。

(エ)相違点の判断

相違点1及び相違点2及び相違点3について

甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証のいずれにも、2つの通信ネットワークが存在することは記載されていないから、中間局は存在しない。
また、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証のいずれにも、中継を行う局において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することは記載されていない。
したがって、甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証を参照しても、「中間局」において、誤り訂正符号を一度復号化し、再度符号化して送信することが周知であるとはいえない。
上記によれば、中間局において、「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」することが容易に想到しうるとはいえない。

上記のように、本件特許発明7は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

(オ)予備的な検討

なお、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、とした場合について、予備的に検討する。

引用発明2の「無線端末3-1」と「交換局5」で構成される通信ネットワークが本件特許発明7の「第1の通信ネットワーク」に相当し、
引用発明2の「無線端末3-2」と「交換局5」で構成される通信ネットワークが本件特許発明7の「第2の通信ネットワーク」に相当する。
また、引用発明2の「交換局5」は、「無線端末3-1」と「交換局5」で構成される通信ネットワークと、「無線端末3-2」と「交換局5」で構成される通信ネットワークの間にある局であるから、「中間局」であるといえる。

引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、いずれも、無線端末と交換局との間の「伝送チャネル」に相当するから、引用発明2における「無線通話回線15-1」、「無線通話回線15-2」は、それぞれ本件特許発明7の「第1の通信ネットワークの伝送チャネル」、「第2の通信ネットワークの伝送チャネル」といえる。
また、上記ア.(ウ)に記載したように、引用発明2における「コーディック」は、本件特許発明7の「第1段階でディジタルデータを符号化」に相当し、
引用発明2の「無線符号化音声信号B」は、本件特許発明7の「符号化されたディジタルデータ」に相当する。

引用発明2の「呼設定」信号は、シグナリングデータである。
そして、該「呼設定」信号に設定されている「音声符号化方式:無線符号化音声信号B」を無線端末3-1が使用し、無線端末3-2が、「”応答”信号」の送信を行って、無線符号化音声信号Bを使用し、音声通信を行っている。
音声通信を行うためには、無線端末3-1で、「音声から無線符号化音声信号Bへの符号化」が行われ、無線端末3-2で、ディジタルデータをチャネルで受信して「受信した無線符号化音声信号Bから音声への復号化」が行われることは明らかである。
つまり、引用発明2は、「第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化」し、「前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号」しているといえる。
また、引用発明2の無線端末と交換局間の「無線通話回線」では、無線符号化音声信号Bが送信されているから、引用発明2は「第1段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送」するとともに、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送」しているといえる。

したがって、本件特許発明7と引用発明2は、

「第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法において、
第1の通信ネットワーク内での伝送のため、第1の移動局により第1段階でディジタルデータを符号化し、
前記の第1段階で符号化されたディジタルデータを前記第1の通信ネットワークの伝送チャネルを介して中間局へ伝送し、
第2の通信ネットワーク内での伝送のため、前記第2の通信ネットワークの伝送チャネルを介して、前記ディジタルデータを第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局へ前記中間局からシグナリングデータを伝送し、該シグナリングデータは、前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第1段階で符号化されたディジタルデータを、該第2の移動局が受信した前記シグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号することを特徴とする、
第1の移動局から第2の移動局へディジタルデータを伝送する方法。」

で一致し、下記の点で相違する。

相違点1

本件特許発明7では、第1の無線端末において「第2段階で該ディジタルデータを符号化」し、第2の無線端末において「中間局において符号化されたディジタルデータチャネルをチャネル復号」するのに対し、引用発明2は、「第2段階」の符号化及び復号化に関して記載が無い点。

相違点2

中間局において、本件特許発明7では、「第2段階で符号化されたディジタルデータチャネルを復号」するとともに、「第2の通信ネットワーク内での伝送のため」に「ディジタルデータをチャネル符号化」するのに対し、引用発明2は、処理を行わない点。

相違点1について

甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証によれば、無線伝送路において誤り訂正符号を用いることは周知であるから、第1の無線端末において誤り訂正符号化を行い、第2の無線端末において誤り訂正復号化を行うことは一般的なことにすぎない。

相違点2について

甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証から甲第8号証を参照しても、端末の間にある中間局において、誤り訂正符号を一度復号化し、チャネル符号化して送信することが周知であるとはいえない。
よって、2つの通信ネットワークの中間に位置する中間局において、「第2段階で符号化されたディジタルデータを復号」するとともに、「ディジタルデータをチャネル符号化」することは容易に想到しうるとはいえない。

上記のように、本件特許発明7は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

上記のように、「ネットワーク」について、請求人が主張するように、移動局から基地局、基地局から移動局がそれぞれ「ネットワーク」である、としても、本件特許発明7は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

カ.本件特許発明8について

本件特許発明8は、上記(2)カ.に記載したとおりである。

本件特許発明8は、本件特許発明7において、さらに「前記の第1段階および第2段階において符号化されたディジタルデータを前記中間局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明8は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

キ.本件特許発明9について

本件特許発明9は、上記(2)キ.に記載したとおりである。

本件特許発明9は、本件特許発明7において、さらに「第2段階でチャネル符号化され前記中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加して、前記第2の通信ネットワークにおける伝送のためにビット流を生成し、
前記ビット流におけるディジタルデータとシグナリングデータを、前記中間局により符号化し、
前記ビット流におけるディジタルデータおよびシグナリングデータを、前記第2の通信ネットワークにおける伝送チャネルを介して前記第2の移動局へ伝送し、
該第2の移動局により、前記ビット流における第2段階で符号化されたディジタルデータおよびシグナリングデータを復号し、
第1段階で符号化され前記第2の移動局により第2段階でチャネル復号されたディジタルデータを、該第2の移動局が復号したシグナリングデータに依存して、該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに「中間局において復号されたディジタルデータに対し前記シグナリングデータを付加」する相違点を含む。

そして、引用発明2の「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、送信するディジタルデータに対して「付加」することはできない。

したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明9は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

ク.本件特許発明10について

本件特許発明10は、上記(2)ク.に記載したとおりである。

本件特許発明10は、本件特許発明7において、さらに「第1の通信ネットワークにおけるディジタルデータを第1の移動無線規格に従い伝送し、該ディジタルデータを第1段階および第2段階で情報源符号化およびチャネル符号化し、
第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送し、該シグナリングデータは、前記第1の移動無線規格による前記第1段階でのディジタルデータの符号化形式に関する情報を含み、
前記第2段階でチャネル符号化され前記第2の移動局によりチャネル復号されたディジタルデータを、前記シグナリングデータの評価に応じて前記第1の移動無線規格に従い該第2の移動局により復号する」ことを含む方法であるから、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含み、さらに「第2の通信ネットワークにおいて符号化されたディジタルデータをチャネル符号化し第2の移動無線規格に従いシグナリングデータといっしょに伝送」する相違点を含む。

そして、引用発明2の「呼設定」信号は、呼設定後のデータ転送において使用するコーデックの選択に使用されるのであるから、「データ転送の前」に伝送する必要がある。つまり、シグナリングデータをディジタルデータと「いっしょ」に伝送することはできない。

したがって、上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由、及び上記の理由により、本件特許発明10は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

ケ.本件特許発明13について

本件特許発明13は、上記(2)ケ.に記載したとおりである。

本件特許発明13は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記シグナリングデータを1回または複数回、別個のコントロールチャネルを介して中間局から第2の移動局へ伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明13は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

コ.本件特許発明14について

本件特許発明14は、上記(2)コ.に記載したとおりである。

本件特許発明14は、本件特許発明1または本件特許発明3または本件特許発明7または本件特許発明9において、さらに「前記第1段階におけるディジタルデータ符号化形式に関する情報を含む前記シグナリングデータとともに、前記第1の移動局の呼出番号を伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明14は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

サ.本件特許発明15について

本件特許発明15は、上記(2)サ.に記載したとおりである。

本件特許発明15は、本件特許発明1または本件特許発明7において、さらに「前記ディジタルデータとしてビデオデータ、オーディオデータ、テキストデータ、音声データのうち少なくとも1つのデータを伝送する」ことを含む方法であるから、上記ア.(ウ)に記載した相違点または、上記オ.(ウ)に記載した相違点を含む。したがって、上記ア.(エ)または上記オ.(エ)に記載したのと同様の理由により、本件特許発明15は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはできない。

シ.小括(無効理由2について)

本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明は、引用発明2及び甲第1号証、甲第3号証、甲第5号証乃至甲第8号証に記載された発明により容易に発明をすることができたということはいえないから、特許法第29条第2項には該当しない。

したがって、無効理由2を理由として本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を無効とすることはできない。


第3.むすび

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。
したがって、本件特許の請求項1、2、3、4、7、8、9、10、13、14及び15に係る発明を、無効理由1、2を理由として特許法第123条第1項第2号に該当するということはできない。
また、その他に無効理由を発見しない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-03-15 
結審通知日 2016-03-17 
審決日 2016-03-30 
出願番号 特願2000-563094(P2000-563094)
審決分類 P 1 123・ 121- Y (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松野 吉宏  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 梅本 章子
吉田 隆之
登録日 2007-10-05 
登録番号 特許第4021622号(P4021622)
発明の名称 ディジタル有効データの伝送方法  
代理人 大塚 康弘  
代理人 服部 誠  
代理人 高柳 司郎  
代理人 片山 英二  
代理人 坂本 隆志  
代理人 黒川 恵  
代理人 江嶋 清仁  
代理人 岩間 智女  
代理人 大塚 康徳  
代理人 小林 浩  
代理人 蟹田 昌之  
代理人 相田 義明  
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