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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01S 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01S |
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管理番号 | 1348480 |
審判番号 | 不服2018-1546 |
総通号数 | 231 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-03-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-05 |
確定日 | 2019-02-19 |
事件の表示 | 特願2016-540635「半導体レーザ・ダイオード、半導体レーザ・ダイオードを製造するための方法および半導体レーザ・ダイオード装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日国際公開、WO2015/091060、平成29年 1月19日国内公表、特表2017-502512、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)12月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)12月17日、独国)を国際出願日とする出願であって、その経緯は次のとおりである。 平成28年 8月10日 :手続補正書の提出 平成29年 6月30日付け:拒絶理由通知 平成29年 8月22日 :意見書・手続補正書の提出 平成29年11月 7日付け:拒絶査定(謄本送達平成29年11月14日) 平成30年 2月 5日 :審判請求書 平成30年10月17日付け:当審拒絶理由通知 平成30年12月 5日 :意見書・手続補正書の提出 第2 本願発明 本願請求項1?19に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明19」という。)は、平成30年12月5日の手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「活性層(11)と互いに上下に設けられた半導体層を有し、動作中に放射出力表面を介してレーザ放射を放出する半導体層積層体(1)であって、前記放射出力表面が、前記半導体層積層体(1)の側面によって形成される半導体層積層体(1)と、 前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上で相互に横方向に隣接する熱障壁層(2)および金属コンタクト層(5)と、 を備え、 前記熱障壁層(2)が電気絶縁性多孔質材料(9)によって形成され、 前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の前記主表面(12)上でストリップ形状を呈するように具現化され、かつ少なくとも2つの側面において前記熱障壁層(2)と隣接し、 前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する、 半導体レーザ・ダイオード。」 なお、本願発明2?5,19は、本願発明1を減縮した発明である。本願発明6?18は、本願発明1?5のいずれか一項に記載の半導体レーザ・ダイオードを製造するための方法に係る発明である。 第3 原査定の概要 原査定(平成29年11月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1?19に係る発明は、以下の引用文献1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2013/079346号 引用文献2:米国特許出願公開第2002/0176459号明細書(周知例) 引用文献3:特開2007-220830号公報(周知例) 引用文献4:特開2003-69131号公報(周知例) 引用文献5:国際公開第2006/104061号(周知例) 第4 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本件出願は、特許請求の範囲の記載に不備があるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 (1)原査定が引用した引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、引用文献1はドイツ語文献であるので、以下、日本語対応文献である特表2015-502051号公報の記載に基づき、その日本語訳を摘記する。 ア 「図9Cの例示的な実施形態においては、半導体レーザダイオードは、前の図9Bの例示的な実施形態におけるように構造化された放熱層4として設計されているメタライゼーション層3の上に内部ヒートシンク7を有し、内部ヒートシンク7はメタライゼーション層3の上に直接接触した状態で直接的に形成されている。このような内部ヒートシンク7によって、半導体レーザダイオードの全体的な熱抵抗を下げる一方で、差の大きい局所的な熱抵抗の構造化を達成することが可能である。半導体積層体2とは反対側の内部ヒートシンク7の面は、半導体レーザダイオードを外部ヒートシンク6の上にはんだ層5によって実装するためのはんだ面として設計されている。」(44頁18行?31行、日本語対応文献の【0097】)、 「内部ヒートシンク7は、特定の材料の個々の層からなる、またはいくつかの層からなることができる。さらには、以降の例示的な実施形態に関連して示すように、内部ヒートシンク7が横方向もしくは縦方向またはその両方の構造化部を有することも可能である。」(45頁1行?6行、日本語対応文献の【0098】)、 「内部ヒートシンク7は、発明の概要のセクションで説明したように、例えば、1種類または複数種類の金属、合金、誘電体材料、ポリマー、結晶性半導体、アモルファス半導体、ダイアモンド、セラミック材料、空気、真空、またはこれらの組合せを備えていることができる。内部ヒートシンク7は、特に、蒸着、スパッタリング、ガルバニック堆積、プラズマ蒸着、スピンコーティング、または接合によって、形成することができる。必要な場合、発明の概要のセクションで説明したように、内部ヒートシンクの1種類または複数種類の材料、あるいは1層または複数の層を、例えば反応性のあまり高くない金属によって、または発明の概要のセクションで説明したように薄層封止部によって、周囲に対して封止することができる。」(45頁8行?20行、日本語対応文献の【0099】)、 「以降の例示的な実施形態においては、追加の構造化された内部ヒートシンク7を有する半導体レーザダイオードを示しており、このヒートシンクは、構造化された放熱層4の一部として形成されている。半導体積層体2およびメタライゼーション層3は、ここまでの例示的な実施形態のうちの1つにおけるように設計することができる。以降の例示的な実施形態に示した、2次元または3次元における内部ヒートシンク7の構造化によって、3次元すべてにおいて熱伝導率を目的に応じて追加的に調整し、したがって局所的な熱抵抗の構造化を達成することが可能になる。特に、以下に示す内部ヒートシンク7は、異なる熱伝導率を有する異なる材料71,72,73からなる複数の異なる領域を有する。」(45頁22行?46頁3行、日本語対応文献の【0100】)、 「一般には、いくつかの金属層を垂直方向に有する、または、金属、半導体、セラミック材料のうちの少なくとも2種類の組合せ(例えば、銅およびアルミニウム窒化物からなり垂直方向に構造化されたいわゆるDCB(直接銅接合:direct copper bonded))を垂直方向に有する従来のヒートシンクと比較して、この場合に示した内部ヒートシンク7は、横方向もしくは縦方向またはその両方向に構造化されている。材料71,72,73の選択は、公知の垂直方向に構造化されたヒートシンクにおけるように、製造効率、または半導体材料に適合化される熱膨張係数の調整に基づくのみならず、半導体材料における基本的な温度分布の均一化に関連する。」(46頁15行?18行、日本語対応文献の【0101】)、 「図10Aの例示的な実施形態においては、半導体レーザダイオードの内部ヒートシンク7は、第2の材料72を有する領域の間に横方向に配置されている第1の材料71を有する。図10Aの例示的な実施形態と、図10B?図10Hの以降の例示的な実施形態においては、第1の材料71は第2の材料72よりも高い熱伝導率を有し、したがって、活性領域の近傍において熱を放散させることができる。」(46頁20行?28行、日本語対応文献の【0102】) イ 「【特許請求の範囲】」、 「半導体レーザダイオードであって、 垂直方向に上下に重ねて形成されている半導体層(21,22,23,25,26)を有する半導体積層体(2)であって、動作時に放射取り出し面(11)を介してレーザ放射を放出する、30μm以上の幅を有する活性領域(24)を備えている活性層(23)を有し、前記放射取り出し面(11)が、前記半導体積層体(2)の側面によって形成されており、対向する裏面(12)とともに、横方向の利得導波を有する縦方向における共振器を形成し、前記半導体積層体(2)が、動作に起因して熱影響領域(29)において加熱される、半導体積層体(2)と、 前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)であって、前記上面(20)が半導体カバー層(25)によって形成されている、メタライゼーション層(3)と、 前記半導体積層体(2)の前記上面(20)の上の構造化された放熱層(4)であって、少なくとも前記メタライゼーション層(3)を備えている、構造化された放熱層(4)と、 を備えており、 前記メタライゼーション層(3)が累積幅(B1)を有し、前記熱影響領域(29)の幅(B2)に対する前記累積幅(B1)の比が、前記放射取り出し面(11)までの距離に依存して変化し、前記構造化された放熱層(4)によって、縦方向もしくは横方向またはその両方向に変化する、前記活性領域(24)からの放熱が可能である、 半導体レーザダイオード。」(請求項1)、 「前記メタライゼーション層(3)の上に内部ヒートシンク(7)が直接接触した状態で形成されている、 請求項1から請求項11のいずれかに記載の半導体レーザダイオード。」(請求項12)、 「前記構造化された放熱層(4)が前記内部ヒートシンク(7)を備えており、前記内部ヒートシンク(7)が、少なくとも横方向もしくは縦方向またはその両方向における構造化部を有する、 請求項12または請求項13に記載の半導体レーザダイオード。」(請求項14)、 「前記内部ヒートシンク(7)の前記構造化部が、異なる熱伝導率を有する材料(71,72)によって形成されている、 請求項14に記載の半導体レーザダイオード。」(請求項15) (2)上記(1)の各事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに、引用発明1の認定に直接活用した引用文献1の日本語対応文献の段落番号等を括弧内に付記してある。 「(【請求項1】)半導体レーザダイオードであって、 垂直方向に上下に重ねて形成されている半導体層(21,22,23,25,26)を有する半導体積層体(2)であって、動作時に放射取り出し面(11)を介してレーザ放射を放出する、30μm以上の幅を有する活性領域(24)を備えている活性層(23)を有し、前記放射取り出し面(11)が、前記半導体積層体(2)の側面によって形成されており、対向する裏面(12)とともに、横方向の利得導波を有する縦方向における共振器を形成し、前記半導体積層体(2)が、動作に起因して熱影響領域(29)において加熱される、半導体積層体(2)と、 前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)であって、前記上面(20)が半導体カバー層(25)によって形成されている、メタライゼーション層(3)と、 前記半導体積層体(2)の前記上面(20)の上の構造化された放熱層(4)であって、少なくとも前記メタライゼーション層(3)を備えている、構造化された放熱層(4)と、 を備えており、 前記メタライゼーション層(3)が累積幅(B1)を有し、前記熱影響領域(29)の幅(B2)に対する前記累積幅(B1)の比が、前記放射取り出し面(11)までの距離に依存して変化し、前記構造化された放熱層(4)によって、縦方向もしくは横方向またはその両方向に変化する、前記活性領域(24)からの放熱が可能である、 半導体レーザダイオードであって、 (【請求項12】)前記メタライゼーション層(3)の上に内部ヒートシンク(7)が直接接触した状態で形成されており、 (【請求項14】、【0102】)前記構造化された放熱層(4)が前記内部ヒートシンク(7)を備えており、前記内部ヒートシンク(7)が、横方向における構造化部を有し、すなわち、半導体レーザダイオードの内部ヒートシンク7は、第2の材料72を有する領域の間に横方向に配置されている第1の材料71を有し、 (【請求項15】、【0102】)前記内部ヒートシンク(7)の前記構造化部が、異なる熱伝導率を有する材料(71,72)によって形成されており、具体的には、第1の材料71は第2の材料72よりも高い熱伝導率を有し、したがって、活性領域の近傍において熱を放散させることができる、 半導体レーザダイオード。」 2 引用文献2 原査定が引用した引用文献2([0019])には、VCSELデバイスにおいて、アルミニウムや銅を用いたヒートシンク23を用いることが開示されている。 3 引用文献3 原査定が引用した引用文献3(【0017】・【0018】)には、発光モジュールのヒートシンクとして銅やアルミニウム等のセラミックが使用できることが開示されている。 4 引用文献4 原査定が引用した引用文献4(【0069】)には、レーザモジュールの技術分野において、絶縁機能および断熱機能を有する材料として、焼結度が低く多孔質のアルミナを用いることが記載されている。 5 引用文献5 原査定が引用した引用文献5([0078])には、発光装置の技術分野において、多孔質かつ断熱材として作用する反射部材を用いることが記載されている。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1の「活性層(11)と互いに上下に設けられた半導体層を有し、動作中に放射出力表面を介してレーザ放射を放出する半導体層積層体(1)であって、前記放射出力表面が、前記半導体層積層体(1)の側面によって形成される半導体層積層体(1)と、」との特定事項について 引用発明1の「垂直方向に上下に重ねて形成されている半導体層(21,22,23,25,26)を有する半導体積層体(2)であって、動作時に放射取り出し面(11)を介してレーザ放射を放出する、30μm以上の幅を有する活性領域(24)を備えている活性層(23)を有し、前記放射取り出し面(11)が、前記半導体積層体(2)の側面によって形成されており、対向する裏面(12)とともに、横方向の利得導波を有する縦方向における共振器を形成し、前記半導体積層体(2)が、動作に起因して熱影響領域(29)において加熱される、半導体積層体(2)」は、本願発明1の「活性層(11)と互いに上下に設けられた半導体層を有し、動作中に放射出力表面を介してレーザ放射を放出する半導体層積層体(1)であって、前記放射出力表面が、前記半導体層積層体(1)の側面によって形成される半導体層積層体(1)」に相当する。 よって、引用発明1は、上記特定事項を備える。 イ 本願発明1の「前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上で相互に横方向に隣接する熱障壁層(2)および金属コンタクト層(5)と、」及び「前記熱障壁層(2)が電気絶縁性多孔質材料(9)によって形成され、 前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の前記主表面(12)上でストリップ形状を呈するように具現化され、かつ少なくとも2つの側面において前記熱障壁層(2)と隣接し、 前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する、」との特定事項について (ア)引用発明1の「半導体積層体(2)の上面(20)」は、本願発明1の「半導体層積層体(1)の主表面(12)」に相当する。 (イ)本願発明1の「金属コンタクト層(5)」は、「前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する、」ものであるから、引用発明1でいえば、「前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)」が、これに相当する。 そして、引用発明1の「前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)」は、本願発明1でいう「前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上」に存在する。 (ウ)よって、本願発明1と引用発明1とは、「前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上」に存在する「金属コンタクト層(5)」であって、「前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する」点で一致する。 しかしながら、引用発明1は、「前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上」に存在し、「金属コンタクト層(5)」と「相互に横方向に隣接する」「熱障壁層(2)」を備えておらず、しかも、「前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の前記主表面(12)上でストリップ形状を呈するように具現化され、かつ少なくとも2つの側面において前記熱障壁層(2)と隣接し、」との特定事項も備えない。 ウ 本願発明1の「半導体レーザ・ダイオード」との特定事項について 引用発明1の「半導体レーザダイオード」は、本願発明1の「半導体レーザ・ダイオード」に相当する。 よって、引用発明1は、本願発明1の「半導体レーザ・ダイオード」との特定事項を備える。 (2)一致点及び相違点の認定 上記(1)によれば、本願発明1と引用発明1とは、 「活性性層(11)と互いに上下に設けられた半導体層を有し、動作中に放射出力表面を介してレーザ放射を放出する半導体層積層体(1)であって、前記放射出力表面が、前記半導体層積層体(1)の側面によって形成される半導体層積層体(1)と、 前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上に存在する金属コンタクト層(5)と、 を備え、 前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する、 半導体レーザ・ダイオード。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 「前記半導体層積層体(1)の主表面(12)上」に存在する「金属コンタクト層(5)」に関連して、 本願発明1は、それに「横方向に隣接」した「熱障壁層(2)」を有し、「前記熱障壁層(2)が電気絶縁性多孔質材料(9)によって形成され」るとともに、「前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の前記主表面(12)上でストリップ形状を呈するように具現化され、かつ少なくとも2つの側面において前記熱障壁層(2)と隣接し」ているのに対し、 引用発明1は、「前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)」を備えるにとどまり、それに「横方向に隣接」した「熱障壁層(2)」を備えない点。 (3)相違点の判断 相違点に係る構成は、引用文献1?5のいずれにも開示されていないし、技術常識であるともいえない。 したがって、当業者といえども引用発明1及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて相違点1の構成に至ることはない。 (4)本願発明1についての小括 以上のとおりであるから、本願発明1は、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 2 本願発明2?19について 本願発明2?19は、いずれも、相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 第7 原査定に対する判断 原査定がした判断は、本願発明1の「金属コンタクト層」と引用発明1の「第1の材料71」とが、「コンタクト層」である点で一致し、「金属」で形成されているか否かで相違するとの認定を前提としたものである。 しかしながら、本件補正により、本願請求項1に「前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する」との特定事項が追加されたため、引用発明1における本願発明1の「コンタクト層(5)」に対応する構成が、上記第6の1(1)イ(イ)のとおり、引用発明1の「前記半導体積層体(2)の上面(20)に、少なくとも部分領域において直接接触しているメタライゼーション層(3)」であることが、明確となった。 したがって、原査定の上記認定はもはや成り立たないから、原査定を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由に対する判断 1 請求項1の「金属コンタクト層」の「コンタクト」が、いかなる意味における「コンタクト」であるのかが、当該請求項の記載では不明であるとの明確性要件違反の拒絶理由は、本件補正により、請求項1に「前記コンタクト層(5)は、前記半導体層積層体(1)の一方の側から前記活性層(11)への電気的接触を可能にし、当該コンタクト層(5)の形状および幅は、前記活性層(11)内の活性領域のサイズおよび形状を決定する」との特定事項が追加されたため、解消した。 2 請求項7の「ゾル-ゲル法で堆積され」との記載は、技術的に正確ではないと考えられるとの明確性要件違反の拒絶理由は、本件補正により、請求項7に「ゾル-ゲル法を使用して前記熱障壁層(2)を生成するために、前駆体物質(2’)が堆積され、」と記載されたため、解消した。 第9 むすび 以上のとおり、本願発明1?19は、当業者が引用発明1及び引用文献1?5に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-02-01 |
出願番号 | 特願2016-540635(P2016-540635) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01S)
P 1 8・ 537- WY (H01S) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大和田 有軌 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
山村 浩 星野 浩一 |
発明の名称 | 半導体レーザ・ダイオード、半導体レーザ・ダイオードを製造するための方法および半導体レーザ・ダイオード装置 |
代理人 | 鷲田 公一 |