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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1348553
審判番号 不服2017-8358  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-08 
確定日 2019-02-06 
事件の表示 特願2015-195079「陰茎増大鍛錬システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月12日出願公開、特開2016- 25946〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2011年(平成23年)6月9日(パリ条約による優先権主張2010年(平成22年)6月18日、中国)を国際出願日とする特許出願である特願2013-514539号の一部を、平成27年4月22日に分割して新たな特許出願とした特願2015-87461号の一部を、さらに平成27年9月30日に分割して新たな特許出願としたものであって、平成28年7月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月28日に意見書とともに手続補正書が提出され特許請求の範囲について補正がなされたが、平成29年2月7日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成29年6月8日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされたものである。

第2 平成29年6月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年6月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年6月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成28年10月28日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。(下線部は、補正箇所である。)

(1)<補正前>
「【請求項1】
陰茎増大鍛錬システムにおいて、少なくとも陰茎をしっかりと挟むことの可能なパーツからなり、
陰茎周囲に置かれる、陰茎保護層を備える陰茎増大鍛錬システム。」

(2)<補正後>
「【請求項1】
陰茎増大鍛錬システムにおいて、少なくとも陰茎をしっかりと挟むことの可能なパーツからなり、
陰茎周囲に置かれる、陰茎保護層を備え、前記陰茎保護層の厚さは0.25mm以上である、陰茎増大鍛錬システム。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「陰茎保護層」について、「陰茎保護層の厚さは0.25mm以上である」限定を付加するものであって、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するところはない。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「陰茎増大鍛錬システム」であると認める。

(2)引用文献
(2-1)引用文献1
これに対して、原審の平成28年7月25日付け拒絶の理由に引用された、本件の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である登録実用新案第3129323号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の発明が記載されていると認められる。

ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「男性機能改善装置」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)実用新案登録請求の範囲
「【請求項1】
モータで回転するクランク軸と、クランク軸に連動して前後方向に動くリンク部材と、リンク部材と一体に動く従動部材と、従動部材を前後方向に案内するガイド手段と、従動部材に取り付けられたリング状の治療部材とを有し、治療部材内に男性器が挿入自在となされている、男性機能改善装置。
・・・」

(イ)「【0015】
図1に示すように、まず本実施形態に係る装置の全体構成について説明すると、本実施形態の装置は、変速機能付きのモータ1と、モータ1の駆動軸2に連結され、モータ1の駆動に伴って回転するクランク軸3と、クランク軸3に接続され、クランク軸3の回転に伴って前後方向に動くリンク部材4と、リンク部材4に連結された軸部材5を介してリンク部材4と連動する、従動部材としての略円筒状内部材6と、略円筒状内部材6が収容された、ガイド手段としての円筒状外部材7と、略円筒状内部材6の後端に収容されたリング状治療部材8とを有するものである。
【0016】
クランク軸3は軸受11A・11Bによって基台9上に回転自在に支持され、クランク軸3におけるモータ1側端にはコ字形部材13が一体に取り付けられ、コ字形部材13内にモータ1の駆動軸2が挿入され、ピン14によりコ字形部材13と駆動軸2が連結されている。」

(ウ)「【0020】
図1および図4に示すように、円筒状外部材7は、その前後両端寄り部分の各上側に架けられた帯状部材21と、帯状部材21の両端を基台9上に固定するボルト22およびナット23により基台9上の所定位置に設置されている。そして、円筒状外部材7の内周面にはその全長にわたって長さ方向に伸びる多数の溝24が形成され、その内側に前記略円筒状内部材6が収容されている。」

(エ)「【0021】
図1および図5に示すように、略円筒状内部材6は、有底円筒状の本体部6aと本体部6aの前端に一体に設けられた治療部材収容部6bとからなり、治療部材収容部6bは、正面から見て略円弧状であって、リング状治療部材8が載置可能な径となされ、横断面がチャンネル状に形成され、またその一側には、該部に設けられたヒンジ部25を介して円弧状のストッパレバー26が回動自在に取り付けられている。そして、治療部材収容部6bに治療部材8を入れた状態でストッパレバー26を降ろせば、該ストッパレバー26が治療部材8の上側に当接して治療部材8が治療部材収容部6bから脱落しない構造となされている。」

(オ)「【0022】
図6および図7に示すように、治療部材8は、C形の左右部材8A・8Bで構成され、横断面チャンネル状であって、中央のヒンジ部27には、左右部材8A・8Bの基端同士を連結するピン27aと、ピン27aの外周に装着されたバネ27bとを備えている。また、左右部材8A・8Bの先端には左右対称の掛止用切欠部28が形成され、左右部材8A・8Bの内側中央には互いに対向する凸部29が形成されている。
【0023】
なお、治療部材8は、通常、合成樹脂からなり、使用により表面に布張り等が施される。」

(カ)「【0025】
次に、本装置の使用要領について説明すると、予め男性器にコンドームを装着した上、治療部材8をバネ27bのバネ力に抗して両手の指で開けた状態にして、男性器に装着する。そして、本装置を一方の手で持って、その治療部材収容部6bに前記治療部材8を嵌め入れてストッパレバー26を降ろせば、本装置のセットが完了する。
【0026】
その後、操作部30の電源スイッチ31をONにして調整ツマミ32を回せば、モータ1が駆動すると共にクランク軸3が回転し、これに同期してリンク部材4が前後方向に動くと共にリンク部材4に連結された略円筒状内部材6も前後方向に動く。そして、略円筒状内部材6の治療部材収容部6bに収容された治療部材8も前後方向に動く結果、男性器に刺激が与えられる。・・・」

イ 引用文献1発明
(キ)上記記載事項(カ)に「治療部材8をバネ27bのバネ力に抗して両手の指で開けた状態にして、男性器に装着する。そして、本装置を一方の手で持って、その治療部材収容部6bに前記治療部材8を嵌め入れてストッパレバー26を降ろせば、本装置のセットが完了」とあるところ、「男性器」は「バネ27bのバネ力に抗して」「治療部材8」に装着され、さらに、「治療部材収容部6b」に「嵌め入れてストッパレバー26を降ろ」して「セット」されるのであるから、これらをまとめると引用文献1記載の装置は“陰茎をしっかりと挟むことの可能な治療部材8及び治療部材収容部6b等のパーツからな”るということができる。

そこで、上記記載事項(ア)ないし(カ)及び上記認定事項(キ)を、技術常識を踏まえ本件補正発明に照らして整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認める。(以下「引用文献1発明」という。)
「男性機能改善装置において、少なくとも陰茎をしっかりと挟むことの可能な治療部材8及び治療部材収容部6b等のパーツからなり、
予め男性器に装着する、コンドームを備える、男性機能改善装置。」

(2-2)引用文献2
次に、本件の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である登録実用新案第3074835号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当審で付したものである。

(ア)「【0005】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来のコンドームは非常に薄いため、性交の際、男性の亀頭部分の刺激度が高く、性交時に早漏になりやすい。故に、従来のコンドームは避妊効果及び性病予防効果しか有しないため、男性の早漏の問題を解決することはできない。
【0006】
更に、従来のコンドームは、厚さが非常に薄いため、男性の陰茎に取付け難いという問題がある。」

(イ)「【0007】
本考案は、上記の課題を解決するものであり、本体の一端におけるテラックスからなる肉厚部の長さは約5cmであると共に、その厚さは0.5mmから1mmの間で形成される。それにより、性交時における男性の亀頭と女性の陰道との間の摩擦が減少し、亀頭への刺激による早漏の問題を防ぐことができる。更に、本考案のコンドームには0.5mmから1mmの厚さを有する肉厚部が形成されるため、陰茎への取付けが簡単であると共に、亀頭部分に肉厚部がフィットし易いので、違和感がなく、破裂によって精液が陰道に流入することも防止できる。・・・」

(ウ)「【0010】
図1及び図2に示すように、本考案のコンドームの構造は、中空状の本体(10)の一端に開口(13)が形成されると共に、他端に精液を溜めるための中空状の突起袋(12)が形成され、本体(10)の突起袋(12)寄りに肉厚部(14)が形成される。また、肉厚部(14)の長さは約50mmであり、厚さは0.5mm乃至1mmである。」

上記記載事項(ア)ないし(ウ)を、図面を参照しつつ整理すると、引用文献2には以下の事項が記載されていると認める。
「コンドームにおいて、肉厚部の厚さを0.5mmから1mmとして、早漏の問題を防ぎ、また破裂を防止し取付けやすくすること。」

(3)対比
本件補正発明と引用文献1発明とを対比すると以下のとおりである。
引用文献1発明の「陰茎をしっかりと挟むことの可能な治療部材8及び治療部材収容部6b等のパーツ」が、本件補正発明の「陰茎をしっかりと挟むことの可能なパーツ」に相当することは明らかである。
次に、本件補正発明の「陰茎増大鍛錬システム」は、本件明細書を参酌するに、「本発明は・・・陰茎内部の血液に圧力を加えることによって、陰茎の海綿体を膨張させ、長期間の鍛錬によって、陰茎を永久的に増大させることができ・・・本機器を使って鍛錬することによって、陰茎部位の血液循環を改善することもでき、勃起を改善する」(明細書段落【0021】、下線は当審にて付与した。)ものである。そして、男性器の繊維状海面組織に機械的刺激を与えることでその組織強化を図ることが従来からよく知られた技術常識であること(必要であれば、実公平1-11218号公報を参照)を踏まえれば、引用文献1発明の「男性機能改善装置」は、本件補正発明の「陰茎増大鍛錬システム」に相当するといえる。
また、引用文献1発明の「コンドーム」と、本件補正発明の「陰茎保護層」とは、“陰茎に装着する部材”である点において共通する。
また、引用文献1発明の(コンドームを)「予め男性器に装着する」ことは、本件明細書に「【0027】使用の際・・・先ず、陰茎12に潤滑油を塗ってから、図6に示す陰茎保護チューブ13を嵌め、保護チューブを嵌めた陰茎12を軸5、11とスライドパーツ3、8によって形成された密閉リング(穴)に入れ」とあることを踏まえ、本件補正発明の(陰茎保護層が)「陰茎周囲に置かれる」ことに相当するといえる。

したがって、本件補正発明と引用文献1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「陰茎増大鍛錬システムにおいて、少なくとも陰茎をしっかりと挟むことの可能なパーツからなり、
陰茎周囲に置かれる、陰茎に装着する部材を備える、陰茎増大鍛錬システム。」

そして、本件補正発明と引用文献1発明とは、以下の2点で少なくとも形式的に相違している。
<相違点1>
“陰茎に装着する部材”に関し、本件補正発明は「陰茎保護層」であるのに対し、引用文献1発明はコンドームである点。
<相違点2>
本件補正発明における陰茎に装着する部材たる陰茎保護層は、その厚さは0.25mm以上であるのに対し、引用文献1発明における陰茎に装着する部材たるコンドームは、その厚さが不明である点。

(4)相違点の検討
上記各相違点につき検討する。

ア 相違点1について
引用文献1発明は、“陰茎に装着する部材”として「コンドーム」を用いているところ、該コンドームは、衛生上の保護機能のみならず、治療部材8が陰茎に直接接触しないようにする機能を有していることから、陰茎を保護する機能を併せ有するものであるといえる。よって、相違点1は実質的な相違点でない。

イ 相違点2について
上記(2)(2-2)にて示したように、引用文献2には、「コンドームにおいて、肉厚部の厚さを0.5mmから1mmとして、早漏の問題を防ぎ、また破裂を防止し取付けやすくすること。」との技術事項が記載されている。すなわち、引用文献2記載の事項は(早漏の問題のみならず)様々な目的の達成のために肉厚部の厚さを0.5mmから1mmとしているということができる。
次に、上記アにおいても説示したように引用文献1発明の治療部材8等にしっかり挟まれる陰茎を保護することは、当業者が自然に想起し得ることであるところ、そのために、予め男性器に装着するコンドームの陰茎保護機能を高めるべく、引用文献2記載の上記技術事項を適用することを試みることも、格別困難でないというべきである。
そうすると、引用文献1発明のコンドームの陰茎保護機能を高めるために、引用文献2記載の技術事項を適用して、コンドームの肉厚部の厚さを0.5mmから1mmとして、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものというべきである。

ウ 小括
したがって、本件補正発明は、引用文献1発明及び引用文献2記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成28年10月28日付けの手続補正書により補正された上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「陰茎増大鍛錬システム」であると認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、(理由1)この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、(理由2)この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は上記第2の2(2)(2-1)に記載したとおりである。

4 対比・検討
本願発明は、実質的に、上記第2の2で検討した本件補正発明から、「陰茎保護層の厚さは0.25mm以上である」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用文献1発明とは、上記第2の2(3)で示した一致点を有し、相違点1においてのみ相違する。そして、相違点1については、上記第2の2(4)で検討したとおり、実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるということになる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-10 
結審通知日 2018-09-11 
審決日 2018-09-25 
出願番号 特願2015-195079(P2015-195079)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61H)
P 1 8・ 575- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 貞雄  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 芦原 康裕
長屋 陽二郎
発明の名称 陰茎増大鍛錬システム  
代理人 SK特許業務法人  
代理人 伊藤 寛之  
代理人 奥野 彰彦  

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