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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1348588
審判番号 不服2017-19546  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2013-257041「パッシベーション層付半導体基板の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 5月29日出願公開、特開2014- 99622、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年7月12日(優先権主張2012年7月12日、日本国)を国際出願日として出願した特願2013-554733号(以下「原出願」という。)の一部を平成25年12月12日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月16日付けで拒絶理由通知が通知され、同年4月24日に意見書が提出され、同年9月28日付け(同年10月3日送達)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求された。
その後、当審において、平成30年9月25日付けで拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

A.(進歩性)この出願の請求項1?9に係る発明は、その原出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された、以下の引用文献A?Eに記載された発明に基いて、その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2011-216845号公報
B.国際公開第2007/046432号
C.特開昭55-068637号公報
D.特開昭51-033567号公報
E.国際公開第2008/149748号

第3 当審拒絶理由の概要
当審において平成30年9月25日付けで通知した拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

●理由1(新規性)
本件出願の請求項5に係る発明は、その原出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1、2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2(進歩性)
本件出願の請求項1?9に係る発明は、その原出願の優先日前に日本国内または外国において頒布された以下の引用文献1?4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由3(明確性)
本件出願は、請求項5、7及び請求項7を引用する請求項9に係る発明は明確でない点で、特許請求の範囲の記載が不備のため特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
●理由4(先願)
本件出願の請求項4?9に係る発明は、同日出願された以下の同日出願1に係る発明と同一と認められ、かつ、以下の同日出願1に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.引用文献1:特開昭55-68637号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献C)
2.引用文献2:特開昭51-33567号公報(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献D)
3.引用文献3:特許第4767110号公報
4.引用文献4:国際公開第2008/149748号(原査定の拒絶の理由で引用された引用文献E)
5.同日出願1:特願2013-554733号(特許第5522328号公報)

第4 本願発明
本願の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年12月3日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1及び5に係る発明は、その請求項1及び5に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
半導体基板上の一部に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物と、を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付半導体基板の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]
【化2】


「【請求項5】
p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板の、前記電極を有する面の一部に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物と、を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、
を有する太陽電池素子の製造方法。
【化3】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]
【化4】



なお、本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6?8は、本願発明5を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「特許請求の範囲
1.半導体基板表面に直接又は酸化硅素を主体とする保護膜を介して有機アルミニウム化合物の溶液を付着し、それを熱酸化又は熱分解することによってアルミニウム酸化物膜を半導体表面に形成することを特徴とする半導体装置の製法。
2.上記半導体基板はその表面に終端するPN接合を有し、該PN接合端部を覆うように上記有機アルミニウム化合物の溶液を付着することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の半導体装置の製法。」(第1ページ左下欄第3?13行)

イ「本発明による表面安定化技術の特徴とするところは、半導体表面に有機アルミニウム化合物溶液を塗布し、その后熱酸化又は熱分解することにより、マイナスの電荷をもつ単分子層のAl_(2)O_(3)層をウエハ表面に形成するところにある。ここで、上記有機アルミニウム化合物としては、種々のアルミニウムキレート、例えばアルミニウム-モノエチルアセトアセテートやアルミニウムアルコキシド、例えばアルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムイソブトキシド等を用いることができる。またこれら化合物の塗布に当ってはそれらを揮発性の溶剤で適宜の濃度および粘度とし、回転塗布機を用いてSi基板表面に薄く、均一に塗布してやることが好適である。」(第2ページ左上欄第14行?右上欄第7行)

ウ 「第1図(a)乃至(e)は本発明の一実施例を示す工程図である。
第1図(a)は通常の工程により形成されたNPNトランジスタの要部断面図を示したもので、比抵抗約20Ω-cmのN型Si基板l上に選択拡散法によりP型ベース領域2およびN^(+ )型エミッタ領域3が形成されている。…(略)…マスクに使用されたSiO_(2 )膜5にはホトエッチングによりベース2およびエミッタ3の一部を露出せしめるようにコンタクト用開孔が形成されている。
次に、第1図(a)の基板上に電子ビーム蒸着法等でAl膜を8?4μmの厚さで形成し、ホトエッチングを施して第1図(b)に示すようにベース2およびエミッタ3上にそれぞれ電極6B及び6Eを取付ける。
次に第1図(c)に示すようにコレクタ-ベース間接合上のSiO_(2 )膜5をホトエッチングにより選択的に除去し、接合表面を露呈せしめる。
次いで第1図(d)に示す工程では、前述の有機アルミニウム化合物のワニス状溶液(例えばアルミニウムモノエチルアセトアセテートの1%トルエン溶液)を上記露呈された接合部に回転塗布機等を用いて均一に薄く塗布し、乾燥する。そして、上記塗膜形成後基板を空気中で800℃、1時間程度ベークすると、有機アルミニウム化合物は酸化され、上記接合部上に実質的に単分子膜程度の極めて薄いAl_(2)O_(3)膜7を形成せしめることができる。
さらに必要に応じて第1図(e)の工程では、例えばポリイミド・イソインドロ・キナゾリンディオン溶液を上記基板上に回転塗布…(略)…膜8を形成せしめ、220℃程度でベークして溶媒をとばし、硬化後ホトエッチングによりコレクタ-ベース接合部上の膜8を残して他を除去し、最終パッシベーションを完了する。」(第2ページ右上欄第10行?右下欄第13行)

エ 「ここで、本発明の実施にあたって、予めSiO_(2 )膜その他によるパッシベーション膜を形成した上に上述のAl_(2)O_(3)膜を形成したり、前記実施例のポリイミド・イソインドロ・キナゾリンディオン膜形成の代りにCVDによるSiO_(2 )膜あるいはプラズマ気相反応法によるシリコンナイトライド膜を上述のAl_(2)O_(3)膜上に設けてパッシベーションを行なうことなどによっても前記実施例と同様の効果を得ることができる。さらに、前記実施例におけるAl_(2)O_(3)膜形成工程とAl電極形成工程との前後を逆にすることなど、工程上のさまざまな変更も可能である。
以上述べた如く、本発明によれば、基板表面に対して負電荷を作用させることが工程的に極めて容易であり、かつSiO_(2 )パッシベーション膜を用いた時においても、SiO_(2 )膜の正電荷チャージを中和せしめることができ、表面特性の安定化に極めて大きな効果を得ることができる。」(第3ページ左上欄第2?19行)

(2)引用発明1に記載された発明
したがって、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「半導体基板表面に直接又は酸化硅素を主体とする保護膜を介して有機アルミニウム化合物の溶液を付着し、それを熱酸化又は熱分解することによってアルミニウム酸化物膜(Al_(2)O_(3)膜)を半導体表面に形成する半導体装置の製法であって、
半導体表面に有機アルミニウム化合物溶液を塗布し、その后熱酸化又は熱分解することにより、マイナスの電荷をもつ単分子層のAl_(2)O_(3)層をウエハ表面に形成するものであり、
上記有機アルミニウム化合物としては、例えばアルミニウムイソプロポキシドを用いることができ、
選択拡散法によりP型ベース領域2およびN^(+ )型エミッタ領域3が形成されているN型Si基板lのベース2およびエミッタ3上にそれぞれ電極6B及び6Eを取付け、
コレクタ-ベース間接合表面を露呈せしめ、
前述の有機アルミニウム化合物のワニス状溶液(例えばアルミニウムモノエチルアセトアセテートの1%トルエン溶液)を上記露呈された接合部に回転塗布機等を用いて均一に薄く塗布し、乾燥し、上記塗膜形成後基板をベークして、Al_(2)O_(3)膜7を形成する工程を有する、半導体装置の製法。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載
ア 「特許請求の範囲
半導体基体もしくは半導体装置表面の上部に酸化アルミニウム膜を有する半導体素子もしくは半導体装置を製造する製造方法において、有機アルミニウムキレート化合物をふくむ溶液を塗布する工程と、加熱する工程とにより酸化アルミニウム膜を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。」(第1ページ左下欄第4?11行)

イ 「発明の詳細な説明
本発明は、酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)、アルミナ)膜の製造方法に関する。特に半導体もしくは半導体装置表面上に酸化アルミニウム膜を形成する方法に関する。
…(略)…
上記の目的を達成するために、本発明では、比較的低温で熱分解するアルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解し、これを半導体表面に塗布し、しかるのち熱処理を加えてアルミニウムキレート化合物を熱分解することにより酸化アルミニウム膜を得た。熱分解温度は少なくとも300℃以上であればよいため、化学気相成長法ならびに直接酸化法にくらべてきわめて簡便であり、作業性にも優れている。また、本発明によって形成した酸化アルミニウムは、ピンホールがほとんどない、均一な膜が形成できるため、陽極酸化法で得られる酸化アルミニウムにくらべて絶縁性に優れている。さらに、塗布して低温加熱するだけの工程であるため、グロー放電あるいは反応性スパッタなどの方法でみられる半導体素子特性の劣化という問題は全く発生しないという長所を有している。
酸化アルミニウムの被膜を形成し得るアルミニウムキレート化合物は、次の化学構造
…(化学構造A略)…
もしくは、
…(化学構造B略)…
もしくは、
…(化学構造C略)…
を有するものが供される。ここに、…(略)…
上記のアルミニウムキレート化合物は、空気中の湿度に対して比較的安定であって、下記の溶媒
n-ヘキサン
シクロヘキサン
ベンゼン
トルエン
キシレン
イソプロピルアルコール
n-ブチルアルコール
トリクロルエチレン
四塩化炭素
に溶解する。
…(略)…
これに対してアルミニウムキレート化合物は、溶媒に対する溶解性にすぐれ、また塗布した場合の成膜性にもすぐれている。本発明の目的に供し得るアルミニウムキレート化合物の具体例を示すと、例えば、
アルミニウムモノメチルアセトアセテートジイソプロピラート
アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピラート
…(略)…
アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)
…(略)…
などがあげられる。なお上記の化合物は、キレート配位子が2配位及び1配位の場合、他の結合基をイソプロピラートを例に上げて示したが、次の結合基に置きかえた化合物でも勿論有効である。
…(略)…
これらのアルミニウムキレート化合物の加熱減量特性を調べたところ、300℃30分の加熱によって減量はほぼ飽和に達することがわかった。したがって、300℃、30分の熱処理によって、アルミニウムキレート化合物は、Al_(2)O_(3)に変化したと考えられる。」(第1ページ左下欄第12行?第3ページ右下欄第15行)

ウ 「実施例1
第1図によって説明する。第1図はシリコン半導体基板11の表面に形成された二酸化シリコン膜12の上に、半導体基板11の表面内に形成されている半導体素子(第1図には示していない)と電気的に接続しかつ二酸化シリコン膜12上に延在するアルミニウム導体層13が形成されている半導体装置の一部の断面を示す図である。この半導体装置表面上にアルミニウムキレート化合物を含む溶液を塗布し、加熱処理してAl_(2)O_(3)膜14を形成した。本実施例で用いたアルミキレート化合物と、Al_(2)O_(3)膜14の膜厚は次のとうりである。
本実施例では先に例示したアルミニウム・キレート化合物のうち、有用な化合物を選んだ。
アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピラート、 膜厚1800Å
アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)膜厚1500Å
アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)膜厚1550Å
アルミニウムトリス(マロン酸エチラート)膜厚1430Å
本実施例では、アルミニウムキレート化合物の塗布膜に対する加熱処理を350℃30分で行なった。アルミニウム導体層13は、550℃以上の温度に対しては不安定であるので、本実施例での加熱処理のために好適な温度範囲は300℃?550℃が推奨される。
…(略)…
実施例5
第5図によって説明する。第5図は、半導体基板51の中に、基板51とは反対の導電性を有する半導性領域52があり、その表面をAl_(2)O_(3)膜53によって被覆した構造の半導体素子の断面図を示している。Al_(2)O_(3)膜53は、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用い、熱処理を350℃30分行なって厚さ2400Åに形成した(800Åづつ3回形成した)。これによって得られる表面安定化の効果は、化学気相成長法で形成したAl_(2)O_(3)膜によって得られる効果と全く同様であった。
したがって、本発明は、化学気相成長法で必要な高価な装置や原料を全く用いず、安価に、容易に表面安定化膜としてのAl_(2)O_(3)が形成できるという利点がある。
実施例6
第6図によって説明する。第6図は、半導体基板61の上に、基板61とは反対の導電性を有する半導性領域62と、半導性領域62の中にあって、半導性領域62とは反対の導電性を有する半導性領域63とからなる半導体素子であって、半導体基板61と半導性領域62との間に存在するp-nジャンクションが、半導体基板の側面にいわゆるメサエッチによって露出されており、かつこの半導体素子表面をAl_(2)O_(3)膜64で被覆保護したような半導体素子の一断面図である。したがって本実施例はAl_(2)O_(3)膜64をジャンクション保護被覆として用いた場合の例である。このようにメサエッチによって露出したジャンクションを、化学気相成長去によるAl_(2)O_(3)で保護しようとすると、ジャンクション面はほゞ垂直に近い面であるために、Al_(2)O_(3)膜の堆積は困難であって、完全な保護効果を期待することはできない。これに対して、本実施例では、溶液の塗布によって被膜を形成するため、垂直に近い面に対しても十分に被膜を形成させることができる。
Al_(2)O_(3)膜はアルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用い、熱処理を300℃、30分行なって、厚さ2400Åを形成した。これによって得られる表面安定効果は、十分満足できるものであった。」(第4ページ右上欄第9行?第7ページ右上欄第10行)

(2)引用文献2に記載された発明
したがって、引用文献2には、第5図、第6図に示された実施例5及び実施例6の半導体装置についての説明も参酌すると、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「半導体基体もしくは半導体装置表面の上部に酸化アルミニウム膜を有する半導体素子もしくは半導体装置を製造する製造方法において、有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液を半導体表面に塗布する工程と、加熱する工程とにより酸化アルミニウム膜を形成する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体素子は、半導体基板51の中に、基板51とは反対の導電性を有する半導性領域52があり、その表面をAl_(2)O_(3)膜53によって被覆した構造の半導体素子、または、半導体基板61の上に、基板61とは反対の導電性を有する半導性領域62と、半導性領域62の中にあって、半導性領域62とは反対の導電性を有する半導性領域63とからなる半導体素子であって、かつこの半導体素子表面をAl_(2)O_(3)膜64で被覆保護したような半導体素子であり、
Al_(2)O_(3)膜53、64は、アルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートを用いる、半導体装置の製造方法。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3の記載
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシベーション膜を不純物拡散層の種類によって選択的に成膜することにより、高い太陽電池特性が得られる太陽電池およびその製造方法に関する。」

イ 「【0023】
≪パッシベーション膜≫
本発明の太陽電池は、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜の化学組成が異なる。第1パッシベーション膜は、シリコン基板の外部表面の第1導電型不純物拡散層に接する面の形状に合わせて形成する。第1パッシベーション膜は、酸化珪素や酸化アルミニウムを含む膜であることが好ましい。そして、第1パッシベーション膜は、1つの化学組成物からなる単層膜でもよいし、酸化珪素や酸化アルミニウムなどの膜を含む多数の化学組成物の膜からなる積層膜であってもよい。積層膜であるときは、酸化珪素あるいは酸化アルミニウムが、第1導電型不純物拡散層上に接していることが好ましい。第1パッシベーション膜の厚さは膜質にもよるが、後工程での作業性を考慮し、10?200nmが好ましい。また、CVD法によって成膜されたものでも良いし、塗布剤やペースト印刷などによって形成されたものでも良い。」

ウ 「【0028】
<太陽電池の製造方法>
≪製造方法1≫
以下、図4に基づいて本発明の太陽電池の製造方法について説明する。…(略)…
【0042】
次に、図4(g)に示すように、シリコン基板401についてドライ酸化(熱酸化)を行ない、シリコン基板401の裏面の全面に酸化珪素膜からなる第1パッシベーション膜403を形成する。なお、このとき同時に受光面の全面にも酸化珪素膜403aを形成することとなる。ここで、酸化珪素膜からなる第1パッシベーション膜403はドライ酸化の他、たとえばスチーム酸化、常圧CVD法などによって形成することができる。また、酸化珪素膜の他、第1パッシベーション膜403として負の固定電荷を有する酸化アルミニウム膜を蒸着法などにより成膜することも可能である。なお、第1パッシベーション膜403は、酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜などからなる積層膜であってもよい。
…(略)…
【0050】
≪製造方法2≫
以下、図5に基づいて本発明の太陽電池の他の製造方法について説明する。…(略)…
【0064】
次に、図5(g)において、ドライ酸化(熱酸化)を行なうことによって、第1パッシベーション膜503を、p+層506上に形成する。そして、受光面上には、窒化珪素膜からなる反射防止膜509を形成する。また、第1拡散マスク511として使用する窒化珪素膜は、裏面側に用いる場合にはよりパッシベーション性の高い屈折率2.6から3.6の間に調整した膜を用いることができる。この第1拡散マスク511は、第2パッシベーション膜として機能する。
【0065】
なお、第1パッシベーション膜503はドライ酸化の他、たとえばスチーム酸化、常圧CVD法などによって形成することができる。さらに、酸化珪素膜の他、第1パッシベーション膜として負の固定電荷を有する酸化アルミニウムを蒸着法などにより成膜することも可能である。」

4 引用文献4について
(1)引用文献4の記載
ア 「背景技術
[0002] 平板ディスプレイの1つとして、プラズマ放電により発光する蛍光体の層を設けることによって多色表示を可能にしたプラズマディスプレイパネル(以下PDPと記す)が知られている。PDPは、ガラスからなる平板状の前面板と背面板とが互いに平行かつ対向して配設され、両者はその間に設けられたバリアリブにより一定の間隔に保持されており、前面板、背面板及びバリアリブに囲まれた空間で放電する構造になっている。このような空間には、表示のための電極、誘電体層、蛍光体層等が付設され、放電によって封入ガスから発生する紫外線によって蛍光体が発光させられ、この光を観察者が視認できるようになっている。
[0003] ところで、上述の電極、誘電体層、蛍光体層の作製は従来、以下のように行われている。まず、電極、誘電体又は蛍光体の材料として、金属若しくは金属酸化物の粒子、誘電体用ガラスフリット等のガラス粒子又は蛍光体粒子を有機高分子バインダと溶剤との混合物に分散させたスラリー液又はペーストをそれぞれ用意し、これをスクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布し、その後塗膜を焼成することにより樹脂成分などの有機物を除去して電極、誘電体層又は蛍光体層が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1:特開平11-349349号公報
発明の開示
発明が解決しようとする課題
[0004] 上記方法で用いられる有機高分子バインダは、良好な塗膜形成のためには有効であるが、以下の問題点を有している。すなわち、有機高分子バインダを分解させるためには、高温が必要であり、多大なエネルギーを要する。また、有機高分子バインダを使用すると、分解生成物が電気炉内の壁に堆積する問題がある。更に、有機高分子バインダが分解中に炭化するなどして残存すると、気泡や膨れが発生したり、放電中に徐々に気化して放電特性に悪影響を及ぼしたりするなどの問題が生じることがある。
[0005] 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、所望の無機体或いは無機物層を従来よりも低エネルギーで形成できるとともに有機化合物に起因する悪影響を低減することが可能な無機粒子含有組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、かかる無機粒子含有組成物を用いる無機物層の形成方法、及び、かかる無機物層の形成方法によって形成された無機物層を備えるプラズマディスプレイを提供することも目的とする。
課題を解決するための手段
[0006] 上記課題を解決する本発明の第1の無機粒子含有組成物は、テルペン骨格を有し、且つ、25℃における粘度が10,000?1,000,000mPa・sである有機化合物(A1)と、無機粒子とを含む無機粒子含有組成物であって、有機化合物(A1)の含有量が、上記無機粒子含有組成物中に含まれる有機化合物全量に対して50質量%?95質量%であることを特徴とする。
[0007] なお、本発明において、テルペン骨格を有するとは、イソプレン単位の倍数である構造を有することを意味する。
[0008] 本発明における有機化合物の粘度は、例えば、JIS Z 8803、JIS K7117に準拠した方法により25℃で測定することができる。
[0009] 本発明の無機粒子含有組成物によれば、上記構成を有することにより、良好な塗膜を形成できるとともに、テルペン骨格を有する上記有機化合物(A1)が比較的低温で除去可能であることから、塗膜を焼成するに際して有機化合物の含有量を従来よりも小さくすることができる。よって、本発明の無機粒子含有組成物によれば、従来よりも低エネルギーで所望の無機体或いは無機物層を形成でき、且つ、有機化合物に起因する悪影響を低減することが可能となる。また、電気炉内の壁に堆積する分解生成物の量を低減することも可能となる。なお、有機化合物(A1)の含有量が、上記無機粒子含有組成物中に含まれる有機化合物全量に対して50質量%未満であると、良好な塗膜を形成することが困難となり、95質量%を超えると、塗工が困難となる。
[0010] 本発明の第1の無機粒子含有組成物においては、組成物の粘度を好適な範囲に設定しやすい点で、上記有機化合物が、下記構造式(1)で表わされるイソボルニルシクロヘキサノールであることが好ましい。
[化1]



イ 「[0027] <無機粒子含有組成物>
本発明の第1の実施形態に係る無機粒子含有組成物は、テルペン骨格を有し、且つ、25℃における粘度が10,000?1,000,000mPa・sである有機化合物(A1)(以下、有機化合物(A1)と略称する場合もある)と、無機粒子とを含む。また、本実施形態の無機粒子含有組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記有機化合物(A1)以外の有機化合物からなる溶剤を含有してもよい。
[0028] 本実施形態においては、有機化合物(A1)として、下記構造式(1)で表わされるイソボルニルシクロヘキサノールを用いることが好ましい。
[化3]

[0029] 上記式(1)で表わされるイソボルニルシクロヘキサノールとしては、「テルソルブMTPH」(日本テルペン化学社製、商品名)が商業的に入手可能である。
[0030] また、有機化合物(A1)は、300℃で10分間加熱したときの加熱残分が1質量%以下であるものが好ましい。なお、加熱環境は、大気中である。このような有機化合物(A1)を用いた場合、焼成して得られる無機体において、有機化合物に起因する悪影響を更に低減することができる。上記条件を満足する有機化合物(A1)としては、上記式(1)で表わされるイソボルニルシクロヘキサノールが挙げられる。」

ウ 「実施例
[0099] 以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[0100] <無機粒子含有組成物の作製>
(実施例1)
先ず、撹拌機、還流冷却機、不活性ガス導入口及び温度計を備えたフラスコに、イソボルニルシクロヘキサノール「テルソルブMTPH」(日本テルペン化学社製、商品名)を77質量部、及び、「ターピネオールC」(日本テルペン化学社製、商品名、沸点217℃)を23質量部仕込み、撹拌しながら、これを窒素ガス雰囲気下で80℃に昇温し、80℃±2℃に保ちながら3時間撹拌を続け、均一な溶液とした。その後、室温まで冷却し溶液を取り出した。得られた溶液の25℃における粘度は5700mPa・sであった。
[0101] なお、テルソルブMTPHの25℃における粘度は、678,000mPaであり、300℃における10分間の加熱残分は0.028質量%であった。また、ターピネオールCの25℃における粘度は、35mPaであり、300℃における10分間の加熱残分は0.020質量%であった。
[0101] 次に、上記で得られた溶液57.7質量部に、ZnO-B_(2 )O_(3 )-SiO_(2 )-Al_(2 )O_(3 )系ガラスフリット42.3質量部を加え、ビーズミルを用いて15分間混合、分散した。続いて、この分散液を、30μm角の開口部を有する濾布に通過させて濾過し、実施例1の無機粒子含有組成物の溶液を調製した。得られた無機粒子含有組成物溶液の25℃における粘度は、17000mPa・sであった。
…(略)…
[0116] 上記で得られた実施例1?5及び比較例1?2の無機粒子含有組成物溶液について、以下に示す方法に基づいて塗膜状態及び熱重量分析による重量変化を評価した。得られた結果を表2に示す。」

(2)引用文献4に記載の技術
「誘電体層の作製において、金属酸化物粒子、誘電体用ガラスフリット等のガラス粒子又は蛍光体粒子を有機高分子バインダと溶剤との混合物に混合させたスラリー液又はペーストをスクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布し、その後塗膜を焼成することにより樹脂成分などの有機物を除去して誘電体層などを形成すると、有機高分子バインダが分解中に炭化して残存すると悪影響を及ぼしたりするなどの問題が生じることに鑑みて、有機化合物に起因する悪影響を低減することが可能な無機粒子含有組成物を提供することを目的とし、該組成物は、テルペン骨格を有する有機化合物(A1)と、無機粒子とを含む無機粒子含有組成物であって、テルペン骨格を有する有機化合物(A1)が比較的低温で除去可能である。」

5 引用文献Aについて
(1)引用文献Aの記載
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用インク、絶縁膜の製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。」

イ 「【0045】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0046】
一般に、High-k絶縁膜として検討されている材料としては、Ta_(2)O_(5)、TiO_(2)、ZrO_(2)、HfO_(2)、Al_(2)O_(3)、La_(2)O_(3)、Pr_(2)O_(3)等の単純酸化物とその混合物、或いはHfSiO_(x)等のシリケートが挙げられる。
…(略)…
【0048】
本発明は、発明者らの鋭意検討により、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の中から選ばれた1または2種類以上の元素と、Ga、Sc、Y、及びCeを除くランタノイド(La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の中から選ばれた1または2種類以上の元素を主成分とする複合金属酸化物膜は、安定的にアモルファス相を示すものであること、また、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)の中から選ばれた1または2種類以上の元素と、Ga、Sc、Y、及びCeを除くランタノイド(La、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)の中から選ばれた1または2種類以上の元素と、Al、Ti、Zr、Hf、Ce、Nb、Taの中から選ばれた1または2種類以上の元素を主成分とする複合金属酸化物膜は、安定的にアモルファス相を示すものであること、を見出したことに基づくものである。」

ウ 「【0051】
〔第1の実施の形態〕
本実施の形態は、溶液プロセスにより酸化物絶縁膜を形成するために用いられる溶液となる絶縁膜形成用インクである。本実施の形態における絶縁膜形成用インクは、第一に、1または2以上のアルカリ土類金属元素と、Ga、Sc、Y、及びランタノイド(Ceを除く)のうち1または2以上の金属元素と、が溶液に含まれることを特徴とする絶縁膜形成用インクである。
【0052】
また、第二には、前記絶縁膜形成用インクが、更に、Al、Ti、Zr、Hf、Ce、Nb、Taのうち1または2以上の金属元素を含むことを特徴とする絶縁膜形成用インクである。
【0053】
前記絶縁膜形成用インクは、前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体の少なくとも一つを、含むことを特徴とする。尚、本願において、「有機金属錯体」とは、金属-炭素結合を有する有機金属化合物と、配位結合を有する金属錯体との、両者を含んでいる。
【0054】
また、前記金属有機酸塩は、置換若しくは無置換のカルボン酸塩であることを特徴とする。一例として、酢酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸バリウム、2-エチルヘキサン酸ランタン、等を用いることが出来るが、これに限定されるものではない。
【0055】
また、前記有機金属錯体は、アセチルアセトナート誘導体、置換若しくは無置換のフェニル基、或いは置換若しくは無置換のアルコキシ基を含むことを特徴とする。一例として、ストロンチウムアセチルアセトナート水和物、トリス(2,2,6,6?テトラメチルー3,5?ヘプタネディオネート)ネオジウム、テトラエトキシアセチルアセトナトタンタル、チタニウムブトキシド、アルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート、等を用いることが出来るが、これに限定されるものではない。
…(略)…
【0058】
本実施の形態における絶縁膜形成用インクに使用される溶媒は、前記金属原料化合物を安定に溶解若しくは分散することが可能な溶媒を適切に選択して使用することが出来る。一例として、トルエン、イソプロパノール、安息香酸エチル、N,N-ジメチルホルムアミド、炭酸プロピレン、2-エチルヘキサン酸、ミネラルスピリッツ、ジメチルプロピレンウレア、4-ブチロラクトン、2-メトキシエタノール、水、等を用いることが出来るが、これに限定されるものではない。
【0059】
また、塗布する方法や下地に合わせて、粘度調整用の増粘剤や界面活性剤などを添加しても良い。
【0060】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における絶縁膜形成用インクを用いた絶縁膜の製造方法である。図1に基づき本実施の形態について説明する。
【0061】
最初に、ステップ102(S102)において、絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する。絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する方法としては、スピンコート、インクジェットプリンティング、スリットコート、ノズルプリンティング、グラビア印刷、マイクロコンタクトプリントなどの既存の方法を利用することが出来る。この時、前記絶縁膜形成用インクの溶液の粘度などの物性値を塗布手段に適合するように調整することが望ましい。例えば、粘度を調整する手段として、エチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを増粘剤として添加することが出来る。
【0062】
次に、ステップ104(S104)において、基板上に塗布された絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、酸化物絶縁膜に転換する。加熱方法としては、抵抗加熱、赤外線加熱、レーザー光照射、などの既存の方法を利用することが出来る。前記金属原料化合物が酸化物に転化する為には、少なくとも前記金属原料化合物中の金属-炭素結合、または金属-酸素-炭素結合における酸素-炭素結合を切断し、酸化物に転換しなければならない。これを実現するためには、分解反応が必要とするエネルギーを熱や光等の形態で付与することが適当である。この際、酸化物絶縁膜への転換を促進するために、紫外光(UV光)を照射して、有機金属錯体の化学結合を切断する方法や、オゾン雰囲気とすることにより酸化を促進する等の方法をあわせて行うことが可能である。また、緻密な膜を得るためには、反応中間体と炭素、水素、酸素、窒素等から成る余剰の反応生成物との流動性が確保されるように、前記金属原料化合物の反応条件と溶媒の沸点等を適切に選択することが望ましい。
【0063】
以上の工程により、本実施の形態における絶縁膜を作製することができる。本実施の形態における絶縁膜の構造はアモルファスであり、電界を印加した場合におけるリーク電流は極めて低い。
【0064】
本実施の形態において作製される絶縁膜の用途としては、電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor;FET)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のメモリ素子、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor、相補型金属酸化物半導体素子)、光電変換素子(Photovoltaic devices)、OLED(Organic light-emitting diode)等の有機発光素子、絶縁膜を有する各種センサまたはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路等が挙げられ、具体的には、これらの素子におけるゲート絶縁膜、キャパシタ絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる。」

エ 「【0065】
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第2の実施の形態における絶縁膜の製造方法を用いた半導体装置の製造方法である。図2は、本実施の形態において製造される半導体装置の構成図であり、図3は、本実施の形態における半導体装置の製造方法のフローチャートである。ここでは典型的なトップコンタクトボトムゲート型電界効果型トランジスタ(FET)の製造方法について述べるが、この構造に限定されるものではない。その他の構造の例として図4に示すトップゲート型FET等の別構造であっても良い。以下、図2、図3に基づき本実施の形態について説明する。
【0066】
最初に、ステップ202(S202)において、前記絶縁膜形成用インクを基板11上に塗布する。尚、基板11は、導電性の基板であり、一例として、電気伝導度0.02Ωcm以下程度のリンドープシリコン基板である。絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する方法としては、スピンコート、インクジェットプリンティング、スリットコート、ノズルプリンティング、グラビア印刷、マイクロコンタクトプリントなどの既存の方法を利用することが出来る。この時、前記絶縁膜形成用インクの溶液の粘度などの物性値を塗布手段に適合するように調整することが望ましい。例えば、粘度を調整する手段として、エチレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを増粘剤として添加することが出来る。
【0067】
次に、ステップ204(S204)において、基板上に塗布された絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、酸化物絶縁膜に転換し、ゲート絶縁膜12とする。加熱方法としては、抵抗加熱、赤外線加熱、レーザー光照射、などの既存の方法を利用することが出来る。…(略)…また、緻密な膜を得るためには、反応中間体と炭素、水素、酸素、窒素等から成る余剰の反応生成物との流動性が確保されるように、前記金属原料化合物の反応条件と溶媒の沸点等を適切に選択することが望ましい。
【0068】
次に、ステップ206(S206)において、ゲート絶縁膜12上の所定の領域に半導体層13を形成する。形成される半導体層13は、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の半導体、GaAs(ガリウム砒素)等の化合物半導体、ペンタセン等の有機半導体、IGZO(In-Ga-Zn-O)等の酸化物半導体のいずれでもよい。…(略)…尚、本実施の形態では、ゲート絶縁膜12は酸化物により構成されていることから、半導体層13についても酸化物半導体材料により形成することにより、隣接するゲート絶縁膜12と半導体層13とは同じ酸化物同士であるため密着性が高くなり、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0069】
次に、ステップ208(S208)において、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。具体的には、半導体層13にチャネルが形成されるように、ソース電極14及びドレイン電極15を形成する。パターン形成方法は、半導体層の場合と同様に行うことができる。
【0070】
次に、ステップ210(S210)において、必要に応じて半導体層13の熱処理を行う。尚、本ステップは半導体層13において熱処理が必要な場合にのみ行われる。以上の工程により、本実施の形態における半導体装置として、基板11をゲート電極とした電界効果型トランジスタが形成される。
【0071】
本実施の形態における電界効果型トランジスタは、ゲート絶縁膜12がアモルファスであることから、リーク電流が低く、高い比誘電率を示すものである。よって、低電圧による駆動が可能な信頼性の高い電界効果型トランジスタを製造することができる。」

オ 「【0073】
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第3の実施の形態とは異なる構成の半導体装置の製造方法である。図5は、本実施の形態において製造される半導体装置の構成図であり、図6は、本実施の形態における半導体装置の製造方法のフローチャートである。ここでは典型的なボトムコンタクトボトムゲート型電界効果型トランジスタ(FET)の製造方法について述べるが、この構造に限定されるものではない。その他の構造例として図7に示すトップコンタクトトップゲート型FETなどの別構造であっても良い。以下、図5、図6に基づき本実施の形態について説明する。
【0074】
最初に、ステップ302(S302)において、基板21上の所定の領域にゲート電極22を形成する。ここで基板21は絶縁性基板であり、例としてディスプレイ用の無アルカリガラス基板やポリイミド基板などが利用できる。
【0075】
次に、ステップ304(S304)において、ゲート電極22を覆うようにゲート絶縁膜23を形成する。ゲート絶縁膜23の製造方法は、第2及び第3の実施の形態における絶縁膜の製造方法により形成する。
【0076】
次に、ステップ306(S306)において、ゲート絶縁膜23を介したゲート電極22上に、後述する半導体層が形成された場合にチャネルが形成されるように、所定の領域にソース電極24及びドレイン電極25を形成する。
【0077】
次に、ステップ308(S308)において、半導体層26を形成する。具体的には、ソース電極24とドレイン電極25との間の領域であって、ゲート絶縁膜23を介したゲート電極22上に半導体層26を形成する。尚、半導体層26は、ソース電極24とドレイン電極25との間にチャネルが形成されるように所定の領域に形成される。尚、本実施の形態では、ゲート絶縁膜23は酸化物により構成されていることから、半導体層26についても酸化物半導体材料により形成することにより、隣接するゲート絶縁膜23と半導体層26とは同じ酸化物同士であるため密着性が高くなり、信頼性の高い半導体装置を得ることができる。
【0078】
次に、ステップ310(S310)において、半導体層26の全面を覆うように保護膜27を形成する。保護膜27は絶縁膜により構成されるものであり、パッシベーション膜としての機能を有するものである。
【0079】
以上の工程により、本実施の形態における半導体装置として、電界効果型トランジスタが形成される。」

カ 「【0094】
(実施例11)
酸化物絶縁膜形成用インクの製造(11)
トルエン20mLにアルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート(Al含量8.4wt%、Alfa89349)0.94mLと、2-エチルヘキサン酸マグネシウムトルエン溶液(Mg含量3wt%、STREM12-1260)5mLと2-エチルヘキサン酸イットリウムトルエン溶液(Y含量8wt%、和光純薬工業258-00301)11mLとを混合し、淡黄色透明なマグネシウムアルミニウムイットリウム酸化物絶縁膜形成用インクを得た。」

(2)引用文献Aに記載された発明
引用文献Aには、第3の実施の形態においては、基板11は、導電性基板であり、リンドープシリコン基板が開示されているものの、絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、ゲート絶縁膜12としており、第4の実施の形態においては、基板21は絶縁性基板であり、第2及び第3の実施の形態における絶縁膜の製造方法により形成するのはゲート絶縁膜23である。
したがって、引用文献Aには、第2の実施の形態について説明を参酌すると、以下の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

「絶縁膜形成用インクを用いた絶縁膜の製造方法であって、
前記絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する工程と、
基板上に塗布された絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、酸化物絶縁膜に転換する工程と、を有し、
前記絶縁膜形成用インクは、1または2以上のアルカリ土類金属元素と、Ga、Sc、Y、及びランタノイド(Ceを除く)のうち1または2以上の金属元素と、が溶液に含まれ、更に、Al、Ti、Zr、Hf、Ce、Nb、Taのうち1または2以上の金属元素を含むものであり、
前記絶縁膜形成用インクは、前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体の少なくとも一つを、含み、前記有機金属錯体は、一例として、アルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート、等を用いることが出来、
前記絶縁膜形成用インクに使用される溶媒は、前記金属原料化合物を安定に溶解若しくは分散することが可能な溶媒の一例として、トルエン、等を用いることが出来、
絶縁膜の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる、絶縁膜の製造方法。」

6 引用文献Bについて
(1)引用文献Bの記載
ア 「技術分野
[0001] この発明は、金属酸化膜とその形成方法及び金属酸化膜を用いた光学電子デバイスに関するものである。」

イ 「[0086] 以下、このような金属酸化膜 2, 2Aの一例としてのガラス膜、中でもSiO_(2)膜の形成方法について説明する。
まず、常温(15?35℃)で液体である有機金属化合物の一例として TEOSを用い、 有機溶剤の一例としてのイソボルニルシクロへキサノールとエタノールを体積比で約1:1の割合で混合したものを用い、前記 TEOSと前記有機溶剤を体積比で約4:1の割合で混合してペースト化したものを用意する。なお、混合したペーストは、真空脱泡により、極力、気泡の含まれていないペーストとすることができる。
次に、前記ペーストを基材に塗布する工程を行なう。…(略)…
[0087] …(略)…必要な厚みにコント ロールしてペースト 48を塗布してペースト膜 48Aを基材 1上に形成する。
[0088] 次いで、前記ペースト膜 48A中の有機物を気化させつつ金属元素を酸化させる工程を行なう。ペースト膜 48A中の有機物を気化させつつ金属元素を酸化させる工法の一例として、大気圧プラズマを用いることができる。…(略)…
[0093] 次いで、ペーストを基材に塗布する工程と、ペースト中の有機物を気化させつつ金属元素を酸化させる工程を複数回交互に繰り返すことで、金属酸化膜 2, 2Aの厚さを任意の厚さに調整できる。…(略)…、合計厚さ約15μmのSiO_(2)膜の金属酸化膜2を形成することができる。」

ウ 「[0111] なお、本発明における実施形態では、 SiO_(2)膜に関してのみ記述したが、本発明を他の金属酸化膜に適用することが可能である。他の金属酸化膜としては、例えば、…(略)…、 A1O_(X)、…(略)…などである 。特に絶縁膜としての用途が望ましくその中でもガラス膜もしくは透明度の高い膜において格別の効果を奏する。
[0112] なお、本発明における実施形態では、有機金属化合物が有機シリコン化合物を用いた場合、特にTEOSを用いた場合に関してのみ記述したが常温で液体のもの、例えばHMDSO(へキサメチルジシロキサン)、…(略)…、アルミニウムイソプロポキシド、…(略)…などを用いてもよく所望の金属酸化膜を形成することができる。」

第6 当審の判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると次のことがいえる。

(ア)上記「第5」「1(1)イ」の摘記箇所には、「本発明による表面安定化技術…」と記載されていることから、引用発明1の「アルミニウム酸化物膜(Al_(2)O_(3)膜)」及び「有機アルミニウム化合物の溶液」の組成物は、それぞれ本願発明1の「パッシベーション層」及び「パッシベーション層形成用組成物」に相当する。
したがって、引用発明1の「半導体装置」は、本願発明1の「パッシベーション層付半導体基板」に相当する。
また、引用発明1は、「有機アルミニウム化合物の溶液を付着し」、「それを熱酸化又は熱分解することによってアルミニウム酸化物膜(Al_(2)O_(3)膜)を半導体表面に形成する」から、当該工程は、それぞれ本願発明1の「組成物層を形成する工程」、「前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程」に相当する。

(イ)引用発明1の「アルミニウムイソプロポキシド」は、別名「トリイソプロポキシアルミニウム」であるから、本願発明1の一般式(I)のnが0の場合の有機アルミニウム化合物に相当する(本願明細書の段落【0045】、【0055】参照。)。

(ウ)以上をまとめると、本願発明1と引用発明1との、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
半導体基板上に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付半導体基板の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]

<相違点1-1>
半導体基板上に組成物層を形成する工程について、本願発明1は、「半導体基板上」の「一部」に付与して形成するのに対し、引用発明1では、「半導体基板表面」に「有機アルミニウム化合物の溶液を付着し」について、そのような特定はなされていない点。

<相違点1-2>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明1は、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むのに対し、引用発明1の「有機アルミニウム化合物の溶液」はそのような有機化合物を含むものではない点。
【化2】


イ 本願発明1と引用発明1との相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明1と引用発明1との相違点1-2について検討する。

a 引用発明1において、「有機アルミニウム化合物の溶液」は、「ワニス状溶液(例えばアルミニウムモノエチルアセトアセテートの1%トルエン溶液)」であり、有機アルミニウム化合物と溶媒(トルエン)からなり、他の有機化合物を含むことは特定されていない。
また、前記「有機アルミニウム化合物の溶液」は、「回転塗布機等を用いて均一に薄く塗布」されるものである。

b 一方、上記「第5」「4(2)」のとおり、「引用文献4に記載の技術」は、「誘電体層の作製において、金属酸化物の粒子、誘電体用ガラスフリット等のガラス粒子又は蛍光体粒子を有機高分子バインダと溶剤との混合物に混合させたスラリー液又はペーストをスクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布し、その後塗膜を焼成することにより樹脂成分などの有機物を除去して誘電体層などを形成すると、有機高分子バインダが分解中に炭化して残存すると悪影響を及ぼしたりするなどの問題が生じることに鑑みて、有機化合物に起因する悪影響を低減することが可能な無機粒子含有組成物を提供することを目的とし、該組成物は、テルペン骨格を有する有機化合物(A1)と、無機粒子とを含む無機粒子含有組成物であって、テルペン骨格を有する有機化合物(A1)が比較的低温で除去可能である。」ことである。
また、上記「第5」「4(1)」のとおり、引用文献4の段落[0010]、[0028]、[0029]、[0100]には、ガラス基板上に塗布される無機粒子含有組成物が含む、テルペン骨格を有する有機化合物(A1)として、「構造式(1)で表されるイソボルニルシクロヘキサノール」(本願の請求項1に記載の一般式(II)で表される有機化合物に相当。)やその市販品「テルソルブMTPH」が記載されている。
また、上記「第5」「4(1)ウ」のとおり、引用文献4には、<無機粒子含有組成物溶液の作成>について、実施例1?3において、イソボルニルシクロヘキサノール「テルソルブMTPH」及び「ターピネオールC」(上記「第5」「4(1)ウ」の記載から「溶剤」であることは明らか。)を仕込み、均一な溶液とし、この溶液に、ZnO-B_(2 )O_(3 )-SiO_(2 )-Al_(2 )O_(3 )系ガラスフリット4を加え、混合、分散し、この分散液を、濾過し、無機粒子含有組成物の溶液を調製すること、並びに、その組成物溶液を塗布し、乾燥し、塗膜状態を評価する旨が記載されている。
したがって、引用文献4に開示された無機粒子含有組成物溶液は、「構造式(1)で表されるイソボルニルシクロヘキサノール」や「テルソルブMTPH」と、溶剤と、誘電体用ガラスフリット(ZnO-B_(2 )O_(3 )-SiO_(2 )-Al_(2 )O_(3 )系ガラスフリット)とを含む溶液であり、有機アルミニウム化合物を含まない。

c 上記aで検討したように、引用発明1において、「回転塗布機等を用いて均一に薄く塗布」する「有機アルミニウム化合物の溶液」が他の有機化合物を含むことは特定されていないから、上記bで検討したような、「引用文献4に記載の技術」における、スクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布した有機高分子バインダが分解中に炭化して残存するなどの問題を生じさせるものではなく、当該「有機アルミニウム化合物の溶液」を、引用文献4に記載の技術的事項に基づき、「テルペン骨格を有する有機化合物(A1)」を含むものとする動機付けはない。
したがって、引用発明1において、引用文献4に記載の技術的事項に基づき、当該「有機アルミニウム化合物の溶液」を、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むものとすることが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

d また、上記「第5」「3(1)」のとおり、引用文献3には、太陽電池およびその製造方法に関し、第1パッシベーション膜として酸化アルミニウム膜を成膜することが可能である旨が記載されているが、本願発明1の「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含む組成物は記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献3、4を参照したとしても、引用発明1において、相違点1-2に係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 本願発明1と引用発明2との対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると次のことがいえる。

(ア)本願発明1の「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物と、を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付半導体基板の製造方法」と、引用発明2の「半導体基体もしくは半導体装置表面の上部に酸化アルミニウム膜を有する半導体素子もしくは半導体装置を製造する製造方法において、有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液を半導体表面に塗布する工程と、加熱する工程とにより酸化アルミニウム膜を形成する半導体装置の製造方法」とを対比する。

本願明細書の段落【0035】には、「有機アルミニウム化合物は熱処理(焼成)により酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))となる。」と記載されており、段落【0087】には、「パッシベーション層形成用組成物によって形成された組成物層を熱処理(焼成)して、組成物層に由来する熱処理物層(焼成物層)を形成することで、半導体基板上にパッシベーション層を形成することができる。
組成物層の熱処理(焼成)条件は、組成物層に含まれる特定の有機アルミニウム化合物をその熱処理物(焼成物)である酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))に変換可能であれば特に制限されない。」と記載されている。

一方、引用発明2は、「半導体基体もしくは半導体装置表面の上部に酸化アルミニウム膜を有する半導体素子もしくは半導体装置を製造する製造方法において、『有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液を半導体表面に塗布する工程』と、『加熱する工程』とにより『酸化アルミニウム膜』を形成する半導体装置の製造方法」であるから、当該「塗布する工程」は、本願発明1の「半導体基板上に組成物層を形成する工程」に相当し、本願発明1の「パッシベーション層」と引用発明2の「酸化アルミニウム膜」は、「酸化アルミニウム層」である点で共通し、また、本願発明1の「前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程」と引用発明2の「加熱する工程」は、「前記組成物層を熱処理して、酸化アルミニウム層を形成する工程」である点で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明2は、「酸化アルミニウム層付半導体基板の製造方法」である点でも共通する。

(イ)引用発明2のアルミニウムモノエチルアセトアセテートジイソプロピレートは、本願発明1の一般式(I)のnが1?3の場合の有機アルミニウム化合物に相当する(本願明細書の段落【0046】参照。)。

(ウ)以上をまとめると、本願発明1と引用発明2との、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「半導体基板上に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含む酸化物膜形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、酸化アルミニウム層を形成する工程と、を有する酸化アルミニウム層付半導体基板の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは1?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]」

<相違点2-1>
半導体基板上に組成物層を形成する工程について、本願発明1は、「半導体基板上」の「一部」に付与して形成するのに対し、引用発明2では、「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液を半導体表面に塗布する工程」について、そのような特定はなされていない点。

<相違点2-2>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明1は、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むのに対し、引用発明2の「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」はそのような有機化合物を含むものではない点。
【化2】


イ 本願発明1と引用発明2との相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明1と引用発明2との相違点2-2について検討する。

a 引用発明2において、「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」について、他の有機化合物を含むことは特定されていない。

b 一方、「引用文献4に記載の技術」は、上記「第5」「4(2)」に記載したとおりであり、また、上記「(1)イ(ア)b」で検討したように、引用文献4に開示の無機粒子含有組成物溶液は、「構造式(1)で表されるイソボルニルシクロヘキサノール」や「テルソルブMTPH」と、溶剤と、誘電体用ガラスフリット(ZnO-B_(2 )O_(3 )-SiO_(2 )-Al_(2 )O_(3 )系ガラスフリット)とを含む溶液であり、有機アルミニウム化合物を含まない。

c 上記aで検討したように、引用発明2において、「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」が他の有機化合物を含むことは特定されていないから、上記「(1)イ(ア)b」で検討したような、「引用文献4に記載の技術」における、スクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布した有機高分子バインダが分解中に炭化して残存するなどの問題を生じさせるものではなく、当該「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」を、引用文献4に記載の技術的事項に基づき、「テルペン骨格を有する有機化合物(A1)」を含むものとする動機付けはない。
したがって、引用発明1において、引用文献4に記載の技術的事項に基づき、当該「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」を、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むものとすることが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

d また、上記「第5」「3(1)」のとおり、引用文献3には、太陽電池およびその製造方法に関し、第1パッシベーション膜として酸化アルミニウム膜を成膜することが可能である旨が記載されているが、本願発明1の「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含む組成物は記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献3、4を参照したとしても、引用発明2において、相違点2-2に係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点2-1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明2及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1について検討したのと同じ理由により、引用発明1または引用発明2及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明5について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 本願発明5と引用発明1との対比
(ア)本願発明5と引用発明1とを対比すると、上記「1(1)ア(ア)、(イ)」と同じことがいえる。

(イ)また、引用発明1は、「選択拡散法によりP型ベース領域2およびN^(+ )型エミッタ領域3が形成されているN型Si基板lのベース2およびエミッタ3上にそれぞれ電極6B及び6Eを取付け」たものであるから、引用発明1において、「溶液を付着」する際の「半導体基板」は、「p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板」であるといえる。

(ウ)本願発明5の「太陽電池素子」と引用発明1の「半導体装置」とは、「半導体装置」である点で共通する。

(エ)したがって、本願発明5と引用発明1との、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板の、前記電極を有する面に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは0を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]」

<相違点1-A>
半導体基板の、前記電極を有する面に組成物層を形成する工程について、本願発明5は、「半導体基板の、前記電極を有する面」の「一部」に付与して形成するのに対し、引用発明1では、「半導体基板表面」に「有機アルミニウム化合物の溶液を付着し」について、「半導体基板表面」の「一部」に付与するとの特定はなされていない点。

<相違点1-B>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明5は、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むのに対し、引用発明1の「有機アルミニウム化合物の溶液」はそのような有機化合物を含むものではない点。
【化2】


<相違点1-C>
本願発明5は、「太陽電池素子の製造方法」であるのに対し、引用発明1は、「半導体装置の製造方法」である点。

イ 本願発明5と引用発明1との相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明5と引用発明1との相違点1-Bについて検討する。
相違点1-Bは上記「1(1)ア(ウ)」の相違点1-2と同じであるから、上記「1(1)イ(ア)」で相違点1-2について検討したのと同じ理由により、引用文献3、4を参照したとしても、引用発明1において、相違点1-Bに係る本願発明5の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点1-A、1-Cについて検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明1及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 本願発明5と引用発明2との対比
(ア)本願発明5と引用発明2とを対比すると、上記「1(2)ア(ア)、(イ)」と同じことがいえる。

(イ)また、引用発明2は、「前記半導体素子は、半導体基板51の中に、基板51とは反対の導電性を有する半導性領域52があり、その表面をAl_(2)O_(3)膜53によって被覆した構造の半導体素子、または、半導体基板61の上に、基板61とは反対の導電性を有する半導性領域62と、半導性領域62の中にあって、半導性領域62とは反対の導電性を有する半導性領域63とからなる半導体素子であって、かつこの半導体素子表面をAl_(2)O_(3)膜64で被覆保護したような半導体素子」であるから、引用発明2において、「溶液」を「塗布する」際の「半導体基板51、61」は、「p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板」であるといえる。

(ウ)本願発明5の「太陽電池素子」と引用発明1の「半導体装置」とは、「半導体装置」である点で共通する。

(エ)したがって、本願発明5と引用発明2との、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板の、前記電極を有する面に、下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物を含むパッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【化1】

[一般式(I)中、R^(1)はそれぞれ独立して炭素数1?8のアルキル基を表す。nは1?3の整数を表す。X^(2)及びX^(3)はそれぞれ独立して酸素原子又はメチレン基を表す。R^(2)、R^(3)及びR^(4)はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1?8のアルキル基を表す。]」

<相違点2-A>
半導体基板の、前記電極を有する面に組成物層を形成する工程について、本願発明5は、「半導体基板の、前記電極を有する面」の「一部」に付与して形成するのに対し、引用発明2では、「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液を半導体表面に塗布する工程」について、「半導体基板表面」の「一部」に付与するとの特定はなされていない点。

<相違点2-B>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明5は、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むのに対し、引用発明2の「有機アルミニウムキレート化合物を溶媒に溶解した溶液」はそのような有機化合物を含むものではない点。
【化2】


<相違点2-C>
本願発明5は、「太陽電池素子の製造方法」であるのに対し、引用発明2は、「半導体装置の製造方法」である点。

イ 本願発明5と引用発明2との相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明5と引用発明2との相違点2-Bについて検討する。
相違点2-Bは上記「1(2)ア(ウ)」の相違点2-2と同じであるから、上記「1(2)イ(ア)」で相違点2-2について検討したのと同じ理由により、引用文献3、4を参照したとしても、引用発明2において、相違点2-Bに係る本願発明5の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点2-A、2-Cについて検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明2及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明6?8について
本願発明6?8は、本願発明5を減縮した発明であるから、本願発明5について検討したのと同じ理由により、引用発明1または引用発明2及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定についての判断
1 原査定の概要は、上記「第2」のとおりのものである。

2 本願発明1について
(1)引用発明Aとの対比・判断
ア 本願発明1と引用発明Aとの対比
(ア)本願発明1の「『半導体基板上の一部に』、『パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付半導体基板の製造方法』」と、引用発明Aの「『絶縁膜形成用インクを用いた絶縁膜の製造方法であって、前記絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する工程と、基板上に塗布された絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、酸化物絶縁膜に転換する工程と、を有し』、『絶縁膜の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる、絶縁膜の製造方法』」とを対比する。

(イ)引用発明Aにおいて、「絶縁膜の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる」から、引用発明Aの「絶縁膜形成用インク」の組成物は、本願発明1の「パッシベーション層形成用組成物」に相当する。
したがって、本願発明1の「『半導体基板上の一部に』、『パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程』」と、引用発明Aの「前記絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する工程」とは、「基板上に、パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程」である点で共通する。

(ウ)上記「第5」「5(1)ウ」のとおり、引用文献Aの段落【0063】には、「以上の工程により、本実施の形態における絶縁膜を作製する」と記載されているところ、引用発明Aの「酸化物絶縁膜」は、当該作製された「絶縁膜」であり、引用発明Aにおいて、当該「絶縁膜」の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができるものである。
したがって、本願発明1の「前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付半導体基板の製造方法」と、引用発明Aの「『基板上に塗布された絶縁膜形成用インクを熱処理することにより、酸化物絶縁膜に転換する工程』と、を有し、『絶縁膜の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる、絶縁膜の製造方法』は、「前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付基板の製造方法」である点で共通する。

(エ)以上をまとめると、本願発明1と引用発明Aとの、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「基板上に、パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、を有するパッシベーション層付基板の製造方法。」

<相違点A-1>
組成物層を形成する工程について、本願発明1は、「半導体基板上の一部」に付与して形成する「パッシベーション層付半導体基板の製造方法」であるのに対し、引用発明Aでは、絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する工程について、基板が「半導体基板」であること及びその上の「一部」に付与して形成することは特定されていない点。

<相違点A-2>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明1は、「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物」(審決注:一般式(I)及び一般式(II)は略)と、を含むのに対し、引用発明Aでは、絶縁膜形成用インクについて、「前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体の少なくとも一つを、含み、前記有機金属錯体は、一例として、アルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート、等を用いることが出来」るものの、そのような特定はなされていない点。

イ 本願発明1と引用発明Aとの相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明1と引用発明Aとの相違点A-2について検討する。

a 引用発明Aにおいて、「前記絶縁膜形成用インクに使用される溶媒は、前記金属原料化合物を安定に溶解若しくは分散することが可能な溶媒の一例として、トルエン、等を用いることが出来」るものであり、「絶縁膜形成用インク」について、「前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体」以外の他の有機化合物を含むことは特定されていない。

b 一方、「引用文献4(当審注:原査定の引用文献E)に記載の技術」は、上記「第5」「4(2)」に記載したとおりであり、また、上記「第6」「1(1)イ(ア)b」で検討したように、引用文献4に開示の無機粒子含有組成物溶液は、「構造式(1)で表されるイソボルニルシクロヘキサノール」や「テルソルブMTPH」と、溶剤と、誘電体用ガラスフリット(ZnO-B_(2 )O_(3 )-SiO_(2 )-Al_(2 )O_(3 )系ガラスフリット)とを含む溶液であり、有機アルミニウム化合物を含まない。

c 上記aで検討したように、引用発明Aにおいて、「絶縁膜形成用インク」が他の有機化合物を含むことは特定されていないから、上記「第6」「1(1)イ(ア)b」で検討したような、「引用文献4に記載の技術」における、スクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布した有機高分子バインダが分解中に炭化して残存するなどの問題を生じさせるものではなく、当該「絶縁膜形成用インク」を、引用文献Eに記載の技術的事項に基づき、「テルペン骨格を有する有機化合物(A1)」を含むものとする動機付けはない。
したがって、引用発明Aにおいて、引用文献Eに記載の技術的事項に基づき、当該「絶縁膜形成用インク」を、「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含むものとすることが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

d また、上記「第5」「6(1)」のとおり、引用文献Bには、金属酸化膜とその形成方法及び金属酸化膜を用いた光学電子デバイスに関し、金属酸化膜 2, 2Aの一例としてのガラス膜、中でもSiO_(2)膜の形成方法についての説明で、有機金属化合物の一例として TEOSを用い、有機溶剤の一例としてのイソボルニルシクロへキサノール(本願発明1の一般式(II)で表される有機化合物に相当。)とエタノールを混合したものを用いる旨(段落[0086])、及びSiO_(2)膜に関してのみ記述したが、他の金属酸化膜、例えば、A1O_(X)、などの金属酸化膜に適用することが可能である旨(段落[0111])、並びにには、有機金属化合物は、例えば、アルミニウムイソプロポキシド(本願発明1の一般式(I)のnが0の場合の有機アルミニウム化合物に相当。)などを用いてもよい旨(段落[0112])が記載されている。
しかしながら、引用文献Bには、アルミニウムイソプロポキシドを用いた場合に、有機溶剤として、イソボルニルシクロヘキサノールを用いることは記載も示唆もされていない。

e したがって、引用発明Aにおいて、「絶縁膜の用途としては、ゲート絶縁膜、パッシベーション膜等として用いることができる、絶縁膜」として、用途を「パッシベーション膜」とし、さらに、「前記絶縁膜形成用インクは、前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体の少なくとも一つを、含み、前記有機金属錯体は、一例として、アルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート、等を用いることが出来、前記絶縁膜形成用インクに使用される溶媒は、前記金属原料化合物を安定に溶解若しくは分散することが可能な溶媒の一例として、トルエン、等を用いることが出来」る「絶縁膜形成用インク」を、引用文献Bに記載の技術的事項に基づき、アルミニウムイソプロポキシドと、イソボルニルシクロヘキサノールと、を含むものとする動機付けはない。
よって、引用発明Aにおいて、引用文献Bに記載の技術的事項に基づき、当該「絶縁膜形成用インク」を、「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物」と、を含むものとすることが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

f また、上記「第5」「1」及び「第6」「1(1)ア(ウ)」の<相違点1-2>から明らかなように、引用文献1(当審注:原査定の引用文献C)には、本願発明1の「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含む組成物は記載も示唆もされていない。
そして、上記「第5」「2」及び「第6」「1(2)ア(ウ)」の<相違点2-2>から明らかなように、引用文献2(当審注:原査定の引用文献D)には、本願発明1の「下記一般式(II)で表される有機化合物」を含む組成物は記載も示唆もされていない。
したがって、引用文献C、Dを参照したとしても、引用発明Aにおいて、「絶縁膜形成用インク」を、「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物」と、を含むものとすることが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

g 以上のとおりであるから、引用文献B?Eを参照したとしても、引用発明Aにおいて、相違点A-2に係る本願発明1の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点A-1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明A及び引用文献B?Eに記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1について検討したのと同じ理由により、引用発明A及び引用文献B?Eに記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明5について
(1)引用発明Aとの対比・判断
ア 本願発明5と引用発明Aとの対比
(ア)本願発明5と引用発明Aとを対比すると、上記「2(1)ア(ア)?(ウ)」と同じことがいえる。

(イ)本願発明5の「太陽電池素子の製造方法」と引用発明Aの「絶縁膜の製造方法」とは、「基板上に層を形成する製造方法」である点で共通する。

(ウ)したがって、本願発明5と引用発明Aとの、一致点、相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「基板に、パッシベーション層形成用組成物を付与して組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を熱処理して、パッシベーション層を形成する工程と、
を有する基板上に層を形成する製造方法。」

<相違点A-A>
基板に組成物層を形成する工程について、本願発明5は、「半導体基板の、前記電極を有する面」の「一部」に、付与して形成するのに対し、引用発明Aでは、「絶縁膜形成用インクを基板上に塗布する工程」について、基板が「半導体基板」であること及びその「一部」に付与して形成することは特定されていない点。

<相違点A-B>
パッシベーション層形成用組成物について、本願発明5は、「下記一般式(I)で表される有機アルミニウム化合物と、下記一般式(II)で表される有機化合物」審決注:一般式(I)及び一般式(II)は略)と、を含むのに対し、引用発明Aでは、絶縁膜形成用インクについて、「前記金属の金属有機酸塩および有機金属錯体の少なくとも一つを、含み、前記有機金属錯体は、一例として、アルミニウムジ(s-ブトキシド)アセト酢酸エステルキレート、等を用いることが出来」るものの、そのような特定はなされていない点。

<相違点A-C>
本願発明5は、「太陽電池素子の製造方法」であるのに対し、引用発明Aは、「絶縁膜の製造方法」である点。

<相違点A-D>
基板について、本願発明5は、「p型層及びn型層が接合されてなるpn接合を有し、前記p型層及び前記n型層からなる群より選択される1以上の層上に電極を有する半導体基板」であるのに対し、引用発明Aは、基板についてそのような特定はなされていない点。

イ 本願発明5と引用発明Aとの相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず、本願発明5と引用発明Aとの相違点A-Bについて検討する。
相違点A-Bは上記「2(1)ア(エ)」の相違点A-2と同じであるから、上記「2(1)イ(ア)」で相違点A-2について検討したのと同じ理由により、引用文献B?Eを参照したとしても、引用発明Aにおいて、相違点A-Bに係る本願発明5の構成を採用することが、当業者であれば容易になし得たということはできない。

(イ)よって、相違点A-A、A-C、A-Dについて検討するまでもなく、本願発明5は、引用発明A及び引用文献B?Eに記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明6?8について
本願発明6?8は、本願発明5を減縮した発明であるから、本願発明5について検討したのと同じ理由により、引用発明A及び引用文献B?Eに記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 原査定についてのまとめ
したがって、本願発明1?8は、原査定における引用文献A?Eに記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 理由1(新規性)について
理由1は、平成30年12月3日付け手続補正書による補正の前の請求項5についてのみ通知されているところ、当該補正により、請求項5は削除された。
したがって、当審拒絶理由の理由1は解消した。

2 理由2(進歩性)について
本願発明1?8は、上記「第6」で検討したとおり、引用発明1または引用発明2及び引用文献3、4に記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、当審拒絶理由の理由2は解消した。

3 理由3(明確性)について
理由3は、平成30年12月3日付け手続補正書による補正の前の請求項5、7、9についてのみ通知されているところ、当該補正により、請求項5、7、9は削除された。
したがって、当審拒絶理由の理由3は解消した。

4 理由4(先願)について
理由4は、平成30年12月3日付け手続補正書による補正の前の請求項4?9についてのみ通知されているところ、当該補正により、請求項4、5、7、9は削除された。
当該補正の前の請求項6及び請求項8は、当該補正により、それぞれ上記「第4」の本願発明1及び本願発明5とされた。
そして、本願発明1及び本願発明5は、いずれも、上記「同日出願1」に係る発明と同一とは認められない。
したがって、当審拒絶理由の理由4は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-13 
出願番号 特願2013-257041(P2013-257041)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 4- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河合 俊英  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 恩田 春香
梶尾 誠哉
発明の名称 パッシベーション層付半導体基板の製造方法、及び太陽電池素子の製造方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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