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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1348593
審判番号 不服2018-6123  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2017-192510号「食品組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日出願公開、特開2018- 61506号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判に係る出願(本願)は、平成29年10月2日(優先権主張 平成28年10月13日)の特許出願であって、平成29年12月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成30年1月23日に意見書が提出され、平成30年3月20日付けで拒絶査定(原査定。発送日:同年4月3日)がされ、これに対し、平成30年5月7日に本件拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 原査定の概要
原査定(平成30年3月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし20に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2004-51504号公報
2.“鹿角霊芝の6大効能?免疫システム正常化の秘薬?”, [online], 2016.7.23, [2017.12.11 検索], インターネット<
URL:https://web.archive.org/web/20160723095325/http://%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%AF%BF%E5%91%BD.net/kampou/rokkakureishi/>
3.特開2011-4695号公報
4.特開2015-123072号公報
5.“GDベニクスノキタケ菌糸体粉末”, [online], 2016.8.29, [2017.12.11 検索], インターネット
6.特開2009-102286号公報
7.特開2014-181233号公報
8.特開2008-260695号公報
9.特開2015-38107号公報
10.特表2015-528451号公報
11.再公表特許第2015/133483号
12.特開2011-46620号公報
13.特開2010-285353号公報
14.“生きたまま腸に届く乳酸菌[ナリネ]の登場”, [online], 2006.6.19, [2017.12.11 検索], インターネット
15.特開2011-162462号公報
16.特開2010-260859号公報
17.登録実用新案第3159091号公報
18.特表2016-520413号公報
19.特開2012-92079号公報
20.特表2013-529671号公報

3 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は次のとおりである。
「【請求項1】
ベニクスノキタケと、
ナリネ菌と、
を含む食品組成物。」
また、本願発明2ないし7は、次のとおりである。
「【請求項2】
ブロッコリーをさらに含む請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
ヘスペリジンをさらに含む請求項1又は請求項2に記載の食品組成物。
【請求項4】
用途が免疫機能の正常化である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項5】
用途が癌の諸症状の緩和である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項6】
用途が自己免疫疾患の諸症状の緩和である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項7】
用途がリウマチの諸症状の緩和である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の食品組成物。」
これらの本願発明2-7は、いずれも、本願発明1に他の発明特定事項を付加しており、本願発明1を減縮した発明といえる。

4 引用文献、引用発明及び周知の技術的事項
(1) 引用文献1について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
キノコ及び/又はその抽出物と、乳酸菌とを含有することを特徴とする健康機能組成物。
【請求項2】
キノコが、鹿角霊芝である請求項1記載の健康機能組成物。
【請求項3】
乳酸菌が、ラクトバクテリウム アシドフィリウムn.v.317/402である請求項1又は2記載の健康機能組成物。
・・・・・・・・・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、天然物由来の素材を原料に用いて、特に優れた免疫賦活作用を備えた、機能性組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、鹿角霊芝等のキノコ由来の成分と乳酸菌とを混合して配合することにより、それぞれが有している免疫賦活作用を相乗的に発揮し、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、キノコ及び/又はその抽出物と、乳酸菌とを含有することを特徴とする健康機能組成物である。
【0007】
前記キノコとしては、鹿角霊芝であることが好ましい。また、乳酸菌としては、ラクトバクテリウム アシドフィリウムn.v.317/402であるあることが好ましい。
・・・・・・・・・・・
【0011】
本発明においては、キノコ及び/又はその抽出物が配合される。キノコとしては、例えば、鹿角霊芝、チャーガ、メシマコブ、ヤマブシタケ、マイタケ、アガリクス、シイタケ等が挙げられる。本発明においては、キノコの中でも特に鹿角霊芝が好ましく用いられる。
【0012】
鹿角霊芝は茸類に属する霊芝の1種であり、鹿の角のような形状を有する、傘をもたないで枝状に伸びたものである。霊芝(万年茸)は、サルノコシカケ科に属する担子菌である。鹿角霊芝は一般の傘つき霊芝と比べ、β-D-グルカン含有量が安定的に高い上、その他の物質も常に安定した値で含まれている。鹿角霊芝は、例えば特公昭57-39605号公報、特開平2001-269164号公報に記載されている方法にしたがって、栽培することもできるが、市販されているのでそれを用いることができる。
・・・・・・・・・・・
【0018】
以下、本発明におけるキノコ抽出物の製造例について述べる。鹿角霊芝は、いずれも「王角」(商標(以下、記載省略)、株式会社坂本バイオ製)を用いた。
・・・・・・・・・・・
【0020】
製造例2
鹿角霊芝10gを刻んで、200mlの水に加え、約3時間撹拌しながら煮沸し、その後30g(30ml)になるまで濃縮した。その後、フィルターろ過し、残査を取り除き、活性物質を含有する鹿角霊芝抽出液を得た。得られた鹿角霊芝抽出液を凍結乾燥して水分を除去し、活性物質を含有する粉末(抽出物)を得た。
・・・・・・・・・・・
【0023】
本発明においては、乳酸菌が配合される。乳酸菌としては、特に限定されないが、例えば、ラクトバクテリウム アシドフィリウム(Lactobacterium acidophillum)、ストレプトコッカス ラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス クレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカス ジアセチルアクチス(Streptococcus diacetilactis)、レウコノコッカス クレモリス(Leuconococcus cremoris)、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス サーモフィルス(Streptococcus thelmophilus)、ラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)等が挙げられる。本発明においては、乳酸菌のうち、ラクトバクテリウム アシドフィリウム(Lactobacteriumacidophillum)が好ましく、特にインターフェロン生産を促進する効果が高いことが知られているラクトバクテリウム アシドフィリウムn.v.317/402(ナリネ菌)が好ましい。
・・・・・・・・・・・
【0029】
本発明の健康機能組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で通常食品等に用いられる水等の他の成分をさらに配合することができる。
【0030】
任意配合成分としては、例えば、ビタミン類、甘味料、調味料、酸味料、保存料、香料、着色剤、賦形剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、吸収促進剤、pH調整剤、界面活性剤、稀釈剤、担体等の種々の添加成分が挙げられる。
【0031】
本発明の健康機能組成物は、本発明の必須成分と上記任意配合成分の1種または2種以上とを混合して、常法により調製することができる。また、特に好適な実施形態である健康機能食品の取り得る形態としては、飲料(ドリンク)、タブレット等が挙げられる。
【0032】
本発明の健康機能組成物は、後の実験で明らかにするように、相乗的な免疫賦活作用を示し、相乗的な抗癌作用が期待される。
【0033】
【実施例】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0034】
[試験例]
(検体)
(A)鹿角霊芝抽出物
(B)乳酸菌(ナリネ菌)
(C)鹿角霊芝抽出物と乳酸菌(ナリネ菌)の混合物
(D)ピシバニール(抗悪性腫瘍剤)
(E)培地(ネガティブコントロール)
【0035】
(試料の調製)
(1)鹿角霊芝抽出物
製造例2で得られた鹿角霊芝抽出物をマクロファージ培養培地(RPMI1640+5%FBS、1%Antibiotics)にて2mg/mLに調整した。
【0036】
(2)乳酸菌
乳酸菌であるラクトバクテリウム アシドフィリウムn.v.317/402の乾燥菌体粉末を10mg/mlになるよう培地にて溶解した。
【0037】
(3)鹿角霊芝抽出物と乳酸菌(ナリネ菌)の混合物
1.5mLの蒸留水に、製造例2で得られた鹿角霊芝抽出物32.25mg、110mgの乳酸菌乾燥菌体粉末を溶かし、マクロファージ培養液で10倍に稀釈したものを使用した。
【0038】
(4)ピシバニール(抗悪性腫瘍剤)
ポジティブコントロールとしてピシバニール(抗悪性腫瘍剤)を100μg/mLに培地で調製して使用した。
【0039】
(5)培地(ネガティブコントロール)
ネガティブコントロールは培地のみとする。
【0040】
(免疫賦活作用)
前記調製した試料について、ラット(ウィスター種)由来のマクロファージを用いて免疫賦活作用を試験した。マクロファージの免疫反応の1つとして、抗癌作用を有する物質であるTNFαの生成がある。そこで、産生されるTNFαをTNFα濃度として免疫賦活作用の指標とした。
【0041】
(TNFα産生の誘導)
ラット大腿骨よりマクロファージを取り出し、2日間RPMI1640培地(5%FBS/1%Antibiotics)にて培養した後、5×105細胞/mLに調製し、96穴細胞培養用マルチプレートに100μLずつ蒔いた。2時間インキュベート(5%CO2、37℃)した後、上清を除去し、検体として試料含有培地を100μLずつ加えた。また、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールも添加した。
【0042】
(TNFα活性の測定)
検体の添加後、マクロファージを6時間培養し、それぞれの検体添加マクロファージの培養上清をサンプリングし、TNFα測定キットにて(amersham pharmacia biotech)測定した。測定方法は、添付されたプロトコールに従い行った。
【0043】
(結果)
試験結果を表1に示した。鹿角霊芝抽出物、乳酸菌はマクロファージを活性化し、TNFαの産生を誘導した。産生されたTNFα濃度は、それぞれ、108.6pg/ml(鹿角霊芝抽出物)、317.6pg/ml(乳酸菌)であった。さらに、前記2種類(鹿角霊芝抽出物と乳酸菌)混合物のTNFα濃度は934.1pg/mlであり、混合によりTNFαの産生増強が見られた。これら、TNFαの産生増強は、鹿角霊芝抽出物、乳酸菌それぞれのTNFα産生を合わせたものより高く、免疫賦活作用について相乗効果があるものと考えられる。これらTNFα産生に関して鹿角霊芝抽出物と乳酸菌が免疫賦活作用に関して相乗効果があることから、抗癌作用についても相乗効果があると考えられる。」

イ. 引用発明
引用文献1の実施例で免疫賦活作用について相乗効果があるとされた鹿角霊芝抽出物とナリネ菌との混合物に着目すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「鹿角霊芝抽出物と、ナリネ菌と、を含有する健康機能組成物。」

(2) 引用文献2ないし4について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献2は、「鹿角霊芝の効果は万病の予防薬 がん抑制効果も!?」と題されたものであり、概略、鹿角霊芝の主な効能が「がんを予防、抑制する」、「神経を調整、正常化する」、「自律神経失調症、中枢神経異常を正常化して保ちます」、「血圧異常の改善する」、「生活習慣病を予防、改善する」、「アレルギー、炎症を緩和する」であること、鹿角霊芝は、免疫機能を刺激し、がんを壊死させるTNF-a等の産出を促すβ-Dグルカンをアガリクスの3倍も含んでいること、が開示されている。

イ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
また、鹿角霊芝とは、マンネンタケ属に属する茸であり、鹿の角に似た形状を有し、傘が開かない点で一般的な霊芝と形状が異なる。
霊芝には元来より血圧上昇を抑制する効果を有する旨が報告されており、また含有成分であるβ-グルカンに抗腫瘍効果がある旨も報告されている。
しかし、γ-アミノ酪酸と同様、摂取量と有効性の発現との関連性を明示されておらず、またγ-アミノ酪酸との相乗効果についても具体的に報告されているものは無い。
・・・・・・・・・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決する課題は、通常の食事を取りながら、無理なく摂取可能であると共に、少量で高い血圧降下作用を得ることが可能な食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明にかかる食品は、米糠を発酵栄養源として生産されるγ-アミノ酪酸と、鹿角霊芝抽出物とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明におけるγ-アミノ酪酸は、米糠に所定量のグルタミン酸ナトリウムを添加した培地に乳酸菌を添加し、上記米糠を唯一の栄養源として所定期間発酵させることで、上記グルタミン酸ナトリウムが変換されて得られるものである。
本方法によれば、非常に高い変換効率で、グルタミン酸ナトリウムがγ-アミノ酪酸に変換され、容易にγ-アミノ酪酸の高含有抽出液を得ることが可能である。
従って、少量の抽出液で多量のγ-アミノ酪酸を摂取することが可能である。
また、熱水抽出液として添加される鹿角霊芝には、高濃度のβ‐グルカンが含まれ、免疫力の活性化、血液循環の改善、及び抗酸化作用を有することから、γ-アミノ酪酸の血圧降下作用に相乗的に作用し、γ-アミノ酪酸の血圧降下作用を強める働きがある。」

ウ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
「【0002】
β-グルカンは、グルコースがβ-結合により多数連結した多糖であり、植物や菌類等によって生産される。β-グルカンは免疫賦活作用を有することが知られており、臨床的にも利用されている。例えば霊芝(マンネンタケ)は、マンネンタケ科に属する担子菌の一種であり、古くから薬用として用いられており、免疫賦活作用、抗癌作用、血液降下作用等の多くの生理活性を有するとされている。これまでの研究で霊芝の示す生理作用の活性本体の一つが多糖体の一種であるβ-グルカンであることが明らかとなってきている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
一般に多糖の水に対する溶解性は低く、また、天然物に含まれるβ-グルカンは他成分と結合することにより細胞壁などの構成成分となっていることから、通常の熱水処理などでは十分な抽出効率を得ることはできない。したがって、担子菌を原料にして効率的にβ-グルカンを得るためには、適切な方法で抽出処理を実施する必要があった。
【0004】
このような問題に対して、例えば霊芝からβ-グルカンを抽出する方法として、下記特許文献1には、飽和蒸気圧以上の圧力で加圧し抽出温度まで加熱した加圧熱水を鹿角霊芝に接触させて加水分解してβ-グルカンを抽出する方法が開示されている。また、下記特許文献2には、霊芝を熱温水に浸して含水させ、アルカリ水等を使用した加圧熱水抽出と、その抽出後の含水固形分に対する飽和水蒸気による加圧熱処理と、加圧熱処理した含水固形分に対する再度の加圧熱水抽出とを組み合わせてβ-グルカンを抽出する方法が開示されている。また、下記特許文献3には、鹿角霊芝を爆砕処理し、続いて微粉砕した後、微アルカリ性緩衝液中でプロテアーゼの存在下又は非存在下で加温処理してβ-グルカンを抽出する方法が開示されている。」

エ. 上記引用文献2ないし4のいずれにも、鹿角霊芝が免疫機能を活性化する等の生理活性を呈するβ-Dグルカンを含有するものであることが開示・記載されており、このことは、当業者にとって周知の技術的事項であったといえる。

(3) 引用文献5ないし8について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献5は、「GoldenBiotech|GDベニクスノキタケ菌糸体粉末」と題されたものであり、概略、ベニクスノキタケの含有成分(栄養成分)として、アントロキノノール、β-Dグルカン等の多糖類、トリテルペン、SOD、核酸、GABAがあり、アントロキノノールの生理作用として抗腫瘍、免疫調整、炎症の抑制等があり、β-Dグルカン等の多糖類の生理作用として免疫機能向上、抗腫瘍等があること、が開示されている。

イ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【0004】
台湾の民間医学において、ベニクスノキタケは、解毒、腹下し症状軽減、消炎、肝臟関連疾病の治療、抗癌等効用があるとされている。ベニクスノキタケは、一般食用・薬用のキノコ類と同様、多くの複雑な成分を有し、生理活性成分中には、トリテルペノイド化合物(triterpenoids)、多糖体(polysaccharides、例えばβ-D-グルカン)、アデノシン(adenosine)、ビタミン(例えばビタミンB、ニコチン酸)、タンパク質(免疫球タンパクを含む)、スーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase, SOD)、微量元素(例えば:カルシウム、リン、ゲルマニウム)、核酸、ステロール、血圧安定物質(例えばアントジア酸(antodia acid)等が含まれていることは周知のとおりであり、これらの生理活性成分には、抗腫瘍、免疫力向上、抗アレルギー、抗病菌、抗高血圧、血糖低下、コレステロール低下等多種効果があるとみなされている。」

ウ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
台湾民間医学では、ベニクスノキタケは解毒、下痢、嘔吐症状の軽減、消炎、肝臓関係疾病の治療及び抗ガン等の作用を有すると考えられている。ベニクスノキタケは一般の食用、薬用の茸類と同様に、多くの複雑な成分を有しており、既知の生理活性成分には、トリテルペノイド(triterpenoides)、多糖体(polysaccharides,たとえば、β-Dグルカン)、アデノシン(adenosine)、ビタミン(たとえばビタミンB、ニコチン酸)、タンパク質(免疫グロブリンを含む)、スーパー・オキサイド・ディスムターゼ(superoxide dismutase,SOD)、微量元素(たとえば、カルシウム、リン、ゲルマニウム)、核酸、ステロール、及び血圧安定物質(たとえば、アントディア酸)等がある。これらの生理活性成分は、抗腫瘍、免疫力増強、抗アレルギー、抗病原菌、抗高血圧、血糖値を下げる及びコレステロール値を下げる等の多くの効果を有することが知られている。」

エ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献8には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
ベニクスノキタケは、古来より台湾の民間伝承薬として珍重されてきたが、その有効成分の解析が行われており、現在までに、β-グルカン、トリテルペン類、γ-アミノ酪酸、エルゴステロール等の成分が見い出されている。」

オ. 上記引用文献5ないし8のいずれにも、ベニクスノキタケがβ-Dグルカンを含有していることが開示・記載されており、このことは、当業者にとって周知の技術的事項であったといえる。

(4) 引用文献9ないし13について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献9には、次の事項が記載されている。
「【0002】
本発明の分野は、3,3’-ジインドリルメタン組成物および免疫活性剤としてのそれらの使用である。
【背景技術】
【0003】
3,3’-ジインドリルメタン(DIM)は、最も一般的にはキャベツ、芽キャベツ、カリフラワーおよびブロッコリーを含むアブラナ属の食用植物中に存在するグルコブラシシンの自己融解分解中に生成される天然産物である。DIMはさらにまた、植物中のDIMの直前駆体であるインドール-3-カルビノール(I3C)の消化後にも産生する(1)。さらに、DIMは、長時間のインキュベーション期間中にほぼ中性pH細胞培養条件下でI3Cから緩徐に産生する。
【0004】
いくつかの試験の結果は、DIMが、特に乳腺腫瘍形成に対する前途有望な癌保護活性を示すことを指示している(2?4)。抗癌治療前の単回投与でのI3Cの経口挿管法は、ラットにおけるDMBA誘導性乳腺腫瘍の発生率および多重度を70?80%減少させた(2,5)。DMBA誘導性乳腺腫瘍形成のプロモーション段階中のDIMの反復経口投与は、齧歯類において95%という高さで腫瘍増殖を阻害した(6)。本発明者らは、従来型の細胞培養条件下で、エストロゲン受容体状態とは無関係に、DIMが乳腺腫瘍細胞系の増殖を阻害できることを観察した(7)。DIMはG1細胞周期停止を誘導し、エストロゲン応答性およびエストロゲン非依存性乳癌細胞のどちらにおいてもp21細胞周期阻害剤の遺伝子発現およびプロモーター活性の強力な誘導を発生した。DIMの抗増殖作用は、ヒト乳癌細胞における細胞周期制御のための標的としてのp21のSp1/Sp3転写因子活性化を含んでいた(8)。」

イ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献10には、次の事項が記載されている。
「【0084】
栄養補助食品は、ヒトの健康に医学的な影響を与えることが特許請求された食品のエキスとして規定され得る。栄養補助食品は、通常、処方された用量で、カプセル、錠剤又は粉末などの医療形式で含有される。栄養補助食品の例は、抗酸化剤としてのブドウ製品由来のレスベラトロール、水溶性食物繊維製品、例えば、高コレステロール血症を低減するためのオオバコ種子殻、癌防止剤としてのブロッコリー(スルファン)、及び動脈の健康を改善するための大豆又はクローバー(イソフラボノイド)である。他の栄養補助食品の例は、フラボノイド、酸化防止剤、亜麻仁由来のαリノレン酸、マリーゴールドの花弁由来のベータカロチン又はベリー由来のアントシアニンである。場合により、栄養補助食品との表現は、機能性食品の同義語として使用される。」

ウ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献11には、次の事項が記載されている。
「【0002】
ビタミン類の内、ビタミンPは、生体内で、ビタミンCの生理作用、例えば、生体結合組織の主成分であるコラーゲンの合成に必要なプロリンやリジンのヒドロキシル化反応に関与しているとともに、チトクロームCのFe+++を還元してFe++にするなどの酸化還元反応に関与し、更には、白血球増加による免疫増強作用に関与していることが知られ、生体の健康維持、増進にも重要な役割を担っていることが知られている。
【0003】
ビタミンPとして知られるヘスペリジンは、ラムノースとグルコースとからなるルチノースがヘスペレチンに結合した構造を有する下記化学式1に示す化合物であり、柑橘類の果皮等に多く含まれているフラボノイドの一種であり、毛細血管の強化、出血予防、血圧調節などの生理機能を有するビタミンPとして古くから知られ、飲食品、化粧品、医薬品などに広く利用されている。
・・・・・・・・・・・
【0005】
ヘスペリジンの用途としては、単に栄養素としてのビタミンP強化剤に止まらず、その化学構造、生理作用から、それ単独又は他のビタミン類などと併用して、例えば、酸化防止剤、安定剤、品質改良剤、紫外線吸収剤などとして各種飲食品に、また、ヘスペリジンに感受性のあるウィルス性疾患、細菌性疾患、循環器疾患、悪性腫瘍などの疾患の予防剤、治療剤、すなわち、ヘスペリジン感受性疾患剤として医薬品に、更には、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、メラニン生成抑制剤などとして、美肌剤、色白剤、アンチエイジング剤などの化粧品にまで及び、その用途範囲は極めて広い。」

エ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献12には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0004】
このヘスペリジンは柑橘類の未熟な果皮等に含まれ、毛細血管の強化、出血予防、血圧調整等の生理作用を有するポリフェノールの1種であるビタミンPとして知られている。このヘスペリジンは、近年、花粉症やアトピー等のアレルギーに対する抗アレルギー剤としての効用、紫外線吸収作用、糖質の吸収阻害、活性酸素除去による抗癌作用、肌の活性化等の種々の有益な薬理作用を有することが報告されており、化粧品や医薬品だけでなく、美容健康食品として利用されている。」

オ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献13には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0035】
ヘスペレチンは、天然には、糖が結合した配糖体の形態(ヘスペリジン)として存在し、動物に摂取されると、糖が加水分解されてアグリコンであるヘスペレチンに変換される。ヘスペリジンは、ポリフェノールの一種であり、かんきつ類の果実中に多量に存在する。温州ミカンやハッサク、ダイダイなどの果皮および薄皮に特に多く含まれているフラボノイドであるヘスペリジンは、漢方の「陳皮」の主成分であることも知られており、毛細血管を強化し、血管透過性を抑える働きを有している。また、ラットのin vivo実験において、ヘスペリジンが血中コレステロール値を改善することも報告されている。さらに、ヘスペリジンは抗アレルギー作用や癌の抑制作用を有していることも報告されている。
・・・・・・・・・・・
【0037】
ヘスペリジンおよびヘスペレチンは、非常に優れた生理作用(例えば、抗酸化作用、血圧降下作用、抗アレルギー作用、血中コレステロール値を改善する作用、抗癌作用など)を有している。例えば、改善された抗酸化作用を発揮するかんきつ類の醗酵物が開示されている(例えば、特許文献4等参照)。しかし、ヘスペリジンおよびヘスペレチンは、水にはほとんど溶解しないので、その利用はかなり限定されている。特に、ヘスペレチンは、水への溶解度が低く容易に沈殿するので、飲料などに添加しても体内へは有効に取り込まれない。ヘスペレチンを有効利用するために、ヘスペレチンを水溶液中に安定して分散させる技術も提案されている(例えば、特許文献5参照)。」

カ. 上記引用文献9及び10のいずれにも、ブロッコリーが癌の抑制に有効であることが記載されており、また、上記引用文献11ないし13のいずれにも、ヘスペリジンが癌の抑制等の生理作用を呈することが記載されており、これらのことは、当業者にとって周知の技術的事項であったといえる。

(5) 引用文献14ないし16について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献14は、「生きたまま腸に届く乳酸菌[ナリネ]の登場」と題されたものであり、概略、乳酸菌の一種であるナリネ菌は、インターフェロンの産生能があり、免疫力を高めることができて、腸内バランスの正常化、アレルギー等に効果があること、が開示されている。

イ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献15には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0003】
炎症的刺激として知られる腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、一酸化窒素(NO)と前立腺素E2(prostaglandin-E2,PGE2は、アラキドン酸がシクロオキシゲナーゼ(COX)ルートの代謝)で生成されたもので、それは免疫反応の重要な部分であり、例えば、敗血症または敗血症ショック(septic and hemorrhagic shock)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)や粥状動脈硬化(arthrosclerosis)の発症は、上述の媒介物が大量に検出された。従って、新薬の開発は、一酸化窒素合成酵素(iNOS)とシクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の遺伝子を抑制し、リポ多糖(LPS)が誘導する情報伝達の主なレセプターまたは酵素活性を阻害して、一酸化窒素(NO)と前立腺素E2の生成を低減させることに重点が置かれている。
【0004】
ベニクスノキタケ(Antrodia cinnamomea)は真菌の一種で、非常に珍貴な漢方生薬として見られており、多くの科学的研究結果により、ベニクスノキタケ菌糸体からのメチルアルコール抽出物と熱水抽出物、その子実体のメチルアルコール抽出物、エタノール抽出物と無水プロピオン酸抽出物は、優れた抗ガン活性があることが分かった。そして、一部の研究によると、ベニクスノキタケの菌糸体と子実体は、幾らかのトリテルぺノイド化合物が含まれている、抗炎症の潜在力を持つ化合物であると指摘された。しかし、ベニクスノキタケ及びその含まれたトリテルぺノイド化合物が、炎症反応を制御する作用メカリズムと生理的活性を更に解明する必要がある。
・・・・・・・・・・・
【0007】
本発明は、また、乾燥ベニクスノキタケの子実体が提供されており、該乾燥ベニクスノキタケの子実体を一定の温度でエタノールを抽出して、エタノール抽出物が得られるが、該エタノール抽出物を濃縮して、濃縮産物が得られ、該濃縮産物を無水プロピオン酸と水でパーティション(partition)するという手順で得られた該無水プロピオン酸抽出物というベニクスノキタケ子実体の抽出物を提供することを特徴とする。
・・・・・・・・・・・
【0010】
本発明は更に、炎症誘発性分子の生成を抑制することを特徴とする該抽出物の用途を提供する。
該抽出物は、一酸化窒素(NO)または前立腺素E2(PGE2)という該炎症誘発性分子を抑制することを特徴とする。該抽出物は、一酸化窒素合成酵素とシクロオキシゲナーゼ2を減少させて、それぞれ該一酸化窒素(NO)と該前立腺素E2(PGE2)の生成を抑制することを特徴とする。」

これらの記載事項から、ベニクスノキタケに抗炎症の潜在力を持つトリテルぺノイド化合物を含むことが把握できる。

ウ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献16には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0050】
本発明において、消耗性疾患は、悪液質であることが好ましく、肺癌、胃癌、膵臓癌、大腸癌、乳癌、口腔癌または鼻咽腔癌などの癌によって引き起こされる悪液質(癌悪液質)であることがより好ましい。または、消耗性疾患は、癌、拒食症、老化(aging)、体の損傷(body injury)もしくは火傷(body burn)によって引き起こされる消耗性疾患であることもまた好ましい。なお、悪液質に関連する疾患としては、癌に加えて、AIDS、老化リウマチ性関節炎、肺結核、線維性嚢胞、クローン病、感染症などによって引き起こされる悪液質などがある。手術後または化学療法もしくは放射線治療を受けた癌患者の消耗状態(wasting state)を改善するために、栄養素補給(アミノ酸、グルコース、ビタミンなど)が摂取される必要がある場合がある。本発明の有効成分(活性成分)は、栄養補給のために粉乳、飲料または食物に添加されることができる。また、医療用途のため、錠剤、カプセル、顆粒、液体、注射などの形態にすることもできる。
・・・・・・・・・・・
【0052】
悪液質に関連する疾患は、癌、感染症(肺結核、AIDSなど)、自己免疫疾患(リウマチ性関節炎)、老化、線維性嚢胞およびクローン病を含む。
・・・・・・・・・・・
【0070】
本発明の薬剤または薬剤組成物は、有効成分(活性成分)として、ラノスタン化合物(I)を含む。適当なラノスタン化合物(I)源としては、ポリア抽出物がある。または、当該ラノスタン化合物(I)は、冬虫夏草(Cordyceps sinensis)、樟芝(Antrodia cinnamomea)またはマンネンタケ(Granodema lucidum)から得てもよい。」

これらの記載事項から、癌、自己免疫疾患(リウマチ性関節炎)等に対する薬剤に樟芝(Antrodia cinnamomea)から得られるラノスタン化合物(I)を含ませることが把握できる。

(6) 引用文献17について
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献17には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】
生物体の免疫システムを調節可能であるとともに、
担体と、
前記担体の外側に配置され、免疫増強剤または免疫抑制剤である免疫調節粉層と、
前記免疫調節粉層を被覆するコーティング層と、を含む免疫調節製剤の構造。
・・・・・・・・・・・
【請求項5】
前記免疫調節粉層の成分には、化合物、タンパク質、多糖体、プロバイオティクスまたは真菌材料が含まれる、請求項1に記載の免疫調節製剤の構造。
・・・・・・・・・・・
【請求項9】
前記プロバイオティクスには、乳酸菌属、ビフィズス菌属、バシラス属、枯草菌または酵母菌が含まれる、請求項5に記載の免疫調節製剤の構造。
・・・・・・・・・・・
【請求項12】
前記真菌材料には、牛樟芝、冬虫夏草、霊芝、蛹虫草、雲芝またはスエヒロタケが含まれる、請求項5に記載の免疫調節製剤の構造。
・・・・・・・・・・・
【0002】
食薬用真菌の栄養および医療価値については古くから記されているが、現代の健康食品において食薬用真菌は相当な比重を占めており、その多くは、例えば牛樟芝(ベニクスノキタケ)、冬虫夏草、霊芝、蛹虫草、雲芝、スエヒロタケ等の子嚢菌類および単子菌類の真菌が主であり、多方面から益々重視されるようになっている。
関連の研究により、例えばトリテルペン化合物、スーパーオキシドディスムターゼ、アデノシン、多糖体(β-D-グルカン等)、タンパク質(免疫タンパク質を含む)、ビタミン(ビタミンB、ニコチン酸、エルゴステロール等)、微量元素(カルシウム、リン、ゲルマニウム等)、核酸、凝集素、アミノ酸、ステロール類、リグニン、血圧安定物質等、多種にわたる生理活性成分を含むことが発見されている。生理活性機能には、抗腫瘍、免疫力増加、抗ウイルス、抗アレルギー、抗高血圧、血小板凝集抑制、降血糖、降コレステロール、抗細菌、肝臓保護等が含まれる。
・・・・・・・・・・・
【0004】
ペプチド多糖体は樹状細胞のToll様レセプター2によって認識され、樹状細胞およびマクロファージの賦活を含む先天性免疫反応の賦活を刺激することができ、これらの免疫細胞がINF-γやIL-12等のサイトカインを分泌することを促し、Th1免疫反応の進行を強化し、Th2免疫反応の進展を抑制するため、アレルギー炎症反応を低下させることができる。乳酸菌のペプチド多糖体が免疫反応に対して調節作用を有する以外に、多くの研究によりβ-glucanも良好な免疫調節剤(immunomodulator)であり、特に癌の補助治療に一定の効果があることが証明されている。また二重盲検臨床試験で得られた研究結果から、アレルギー免疫反応にも調節作用を有することが示されており、β-glucanを12週間経口投与後、アレルギー性鼻炎患者の鼻腔洗浄液中のIL-4、IL-5といったTh2のサイトカインが比較グループより明らかに低下し、Th1に属するサイトカインIL-12が明らかに上昇した。また、鼻腔洗浄液中の好酸球も顕著に減少しており、β-glucanの経口投与はアレルギー性鼻炎患者の病巣部位のアレルギー性炎症反応を改変できることを示している。」

これらの記載事項から、牛樟芝(ベニクスノキタケ)等の子嚢菌類及び単子菌類の真菌にはβ-D-グルカン等が含まれ、また、β-glucanをアレルギー性鼻炎患者に投与してIL-12が明らかに上昇したことが把握される。

(7) 引用文献18ないし20について
ア. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献18には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0256】
前記被験体は、ある種の抜け毛、例えば脱毛症を患っていてもよい。前記被験体は、相当な、一時的な、または永久的な抜け毛を有してもよい。抜け毛は、栄養不足、情緒的ストレス、ホルモン不均衡、または医薬品、例えば癌化学療法薬によって引き起こされることがある。」

イ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献19には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0002】
近年、ストレスの増加や食生活の変化など様々な社会環境の変化によって、薄毛や抜け毛で悩む男女の数は増加しているといわれている。このため、育毛剤への期待や社会的要求が高まってきている。これまでにも、薄毛や抜け毛の原因を取り除くため、あるいは、薄毛や抜け毛の原因の影響を軽減するために、各種薬剤を配合した育毛剤が検討されてきた。例えば、毛根への血流量を改善するためのセンブリエキス又は酢酸トコフェロールや、頭皮代謝改善のためのヒノキチオールなどの薬剤を配合した育毛剤が、脱毛症の予防および治療のために用いられている。しかし、薄毛や抜け毛は、遺伝的素因、ストレス、食生活の変化や老化などの様々な要因が複雑に絡まって生じると考えられている。このため、従来の育毛剤のように、血行促進や頭皮代謝改善のための薬剤を配合するだけでは満足のいく脱毛防止効果や発毛効果は得られない(例えば、非特許文献1を参照)。」

ウ. 原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献20には、次の事項が記載されている。
「【0003】
これらの問題に取り組む様々な対策が試行されてきた。たとえば、ストレスを減らすことは抜け毛の抑制を助ける(ストレスはしばしば抜け毛期間に関連付けできる)。全く違った方法で作用する数多くの薬剤が広く使用されてきた。たとえば、頭皮に塗布された免疫抑制剤は円形脱毛症を一時的に逆行させることを示したが、この治療法からは重大な副作用が生じ得る。フィナステリドのようなジヒドロテストステロン阻害剤の使用(経口形態)は認可されており、ケトコナゾールのような5-αレダクターゼ阻害剤も推奨されている。他の薬剤としてはカリウムチャンネル開放化合物および血管拡張化合物、たとえばミノキシジル(2%w/w外用溶液の形態)およびジアゾキシドがある。」

エ. 上記引用文献18ないし20のいずれにも、ストレスにより抜け毛が引き起こされることが記載されており、このことは、当業者にとって周知の技術的事項であったといえる。

5.対比・判断
(1) 本願発明1について
ア. 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「健康機能組成物」は本願発明の「食品組成物」に含まれるものであり、本願発明1の「ベニクスノキタケ」と引用発明の「鹿角霊芝抽出物」とは、食品組成物に含まれる「菌類に由来する成分」の観点で一致しているから、両者の間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
<一致点>
「菌類に由来する成分と、ナリネ菌と、を含む食品組成物。」
<相違点>
菌類に由来する成分が、本願発明1では「ベニクスノキタケ」であるのに対して、引用発明では「鹿角霊芝抽出物」である点。

イ. 相違点についての判断
(ア) 本願発明1は、食品組成物として、ベニクスノキタケとナリネ菌とを併せて含有することにより、免疫機能に働きかけるようにしたものである(本願の明細書の段落【0008】、【0010】参照。)。
これに対し、引用発明は、ベニクスノキタケとは別異の菌類である鹿角霊芝からの抽出物とナリネ菌とを併せ持たせることによって免疫賦活作用を向上させたものといえる(引用文献1の段落【0004】、【0005】参照。)ところ、これにおいて、当業者が積極的にベニクスノキタケを採用するには、十分な動機を欠いているというべきである。
すなわち、上記引用文献5ないし8、さらには、引用文献15、17においても、ベニクスノキタケの免疫機能に対する有用性が指摘されているからといって、引用発明において、鹿角霊芝をベニクスノキタケに置き換えようとすること、あるいは、既に鹿角霊芝(抽出物)が存在しているところにさらにベニクスノキタケを加えようとすることについて、当業者にとって契機となる事項は見あたらない。

(イ) 既に、上記引用文献2ないし4をふまえて、鹿角霊芝がβ-Dグルカンを含有していて、免疫機能を活性化する等の生理活性を呈することが周知の技術的事項であること、及び、上記引用文献5ないし8をふまえて、ベニクスノキタケがβ-Dグルカンを含有していることが周知の技術的事項であるといえるが、鹿角霊芝、ベニクスノキタケの双方がβ-Dグルカンを含有していることだけをもって、鹿角霊芝(抽出物)をベニクスノキタケに置き換えること、あるいは、鹿角霊芝に加えてベニクスノキタケも用いることが、当業者にとって直ちに容易であると結論づけられるものではない。
すなわち、引用文献1の段落【0011】、【0012】に「本発明においては、キノコ及び/又はその抽出物が配合される。キノコとしては、例えば、鹿角霊芝、チャーガ、メシマコブ、ヤマブシタケ、マイタケ、アガリクス、シイタケ等が挙げられる。本発明においては、キノコの中でも特に鹿角霊芝が好ましく用いられる。鹿角霊芝は茸類に属する霊芝の1種であり、鹿の角のような形状を有する、傘をもたないで枝状に伸びたものである。霊芝(万年茸)は、サルノコシカケ科に属する担子菌である。鹿角霊芝は一般の傘つき霊芝と比べ、β-D-グルカン含有量が安定的に高い上、その他の物質も常に安定した値で含まれている。鹿角霊芝は、例えば特公昭57-39605号公報、特開平2001-269164号公報に記載されている方法にしたがって、栽培することもできるが、市販されているのでそれを用いることができる。」と記載されている上に、β-Dグルカンに富む食材自体は、鹿角霊芝、ベニクスノキタケ以外にも種々のものが存在しており、引用発明において、たとえβ-Dグルカンの観点から食材の変更あるいは追加を試みるとしても、ベニクスノキタケの選定に至るまでにはさらなる創意工夫を要するとみるべきである。

(ウ) したがって、本願発明1は、当業者が引用発明及び引用文献2ないし20に開示・記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、いずれも、本願発明1の発明特定事項をすべて備えたものであるから、本願発明1と同様に、当業者が引用発明及び引用文献2ないし20に開示・記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明1ないし7は、当業者が引用発明及び周知の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべきとする理由は見あたらない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2017-192510(P2017-192510)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 市島 洋介  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 莊司 英史
田村 嘉章
発明の名称 食品組成物  
代理人 樋口 盛之助  
代理人 村上 博  

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