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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F25D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F25D
管理番号 1348594
審判番号 不服2017-18291  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-08 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2013-174492号「冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月 5日出願公開、特開2015- 42926号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月26日の出願であって、平成29年2月9日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月12日に意見書の提出及び手続補正がされ、平成29年9月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年12月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年2月22日付けで前置報告がされ、平成30年4月2日に前置報告に対して審判請求人から上申がされ、その後、当審で平成30年10月29日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成30年11月28日に意見書の提出及び手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1?14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献A?Hに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2006-300810号公報
B.特開2012-202575号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2013-50230号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2007-198667号公報
E.特開2012-251724号公報(周知技術を示す文献)
F.特開2002-340471号公報(周知技術を示す文献)
G.特開2003-287357号公報
H.特開2004-293906号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1 (明確性)この出願は、請求項1に係る特許請求の範囲の記載が、「密閉空間を形成する引き出し式の密閉容器」との事項、「前記撮像手段を、前記密閉容器内に設けられた収容室に収容するとともに、前記密閉空間を照らす照明手段と同じ基板に配置することで当該照明手段と対向しない位置に設置し」との事項、及び「前記撮像手段と前記密閉空間との間に位置する構造物」との事項について不明確であるため、請求項1及び請求項1を引用する請求項2?7に係る特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が不明確であり、そのため、特許請求の範囲の請求項1?7に係る発明が発明の詳細な説明に記載されたものといえず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 (進歩性)この出願の請求項1?7に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1?4に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1 :引用文献等 1
・請求項 2 :引用文献等 1?3
・請求項 3?6 :引用文献等 1、2
・請求項 7 :引用文献等 1?4
<引用文献等一覧>
1.特開2006-300810号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2012-202575号公報(周知技術を示す文献。拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2013-50230号公報(周知技術を示す文献。拒絶査定時の引用文献C)
4.特開2003-287357号公報(拒絶査定時の引用文献G)

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月28日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、本願発明は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
貯蔵室内に設けられ、密閉空間を形成し、開口部から食材が出し入れされる密閉容器と、
前記密閉空間を撮像する撮像手段と、を備え、
前記撮像手段を、前記密閉容器の壁部内に設けられ、構造物によって前記密閉空間と仕切られている収容室に収容するとともに、前記密閉空間を照らす照明手段と同じ基板に配置することで当該照明手段と対向しない位置に設置し、
前記収容室と前記密閉空間との間を仕切る前記構造物を、前記壁部の表面から密閉空間側に突出しない位置に設けるとともに、透明材料により形成したことを特徴とする冷蔵庫。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由通知に引用された本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。)。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵や野菜、肉等の食品の鮮度を識別するための鮮度識別装置及びそれを備えた冷蔵庫、鮮度識別方法に関する。」

「【0009】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、ユーザが肉眼で容易に食品の鮮度識別ができる鮮度識別装置及びそれを備えた冷蔵庫、鮮度識別方法を提供するものである。また、環境や人間に有害な紫外線ランプを使用することなく食品の鮮度識別が可能な鮮度識別装置及びそれを備えた冷蔵庫、鮮度識別方法を提供するものである。さらに、コストを低減しつつ、使い勝手の良い鮮度識別装置及びそれを備えた冷蔵庫、鮮度識別方法を提供するものである。」

「【0022】
[実施の形態1]
図2は、冷蔵室12の内部構成を示す概略構成図である。
冷蔵室12は、断熱壁41で他の貯蔵室と仕切られており、冷蔵室棚40と、スライド室42とを備えている。スライド室42は、収納ケース49と、小物ケース上44と、小物ケース下45とで構成されている。このスライド室42は、冷蔵室棚40と低面の断熱壁41との間に設置されており、断熱材を有する仕切り板右43で収納ケース49と小物ケース(小物ケース上44、小物ケース下45)とに分割されている。
【0023】
小物ケースは、仕切り板左46と仕切り板右43とで仕切られており、仕切り板左46に設けられている図示省略のレール上を前後にスライド可能になっている。小物ケース上44には、卵ケース47が設けられており、卵を収納できるようになっている。また、冷蔵室棚40には、透視窓である比色用窓48が設けられており、小物ケース上44を引き出さなくても卵ケース47に収納されている卵を目視可能になっている。なお、比色用窓48は、小物ケース上44内全体を見渡せるような大きさで構成するとよい。
【0024】
図3は、小物ケース上44の縦断面を示す断面図である。図4は、小物ケース上44の横断面を示す断面図である。
小物ケース上44内には、卵ケース47と、光源を取り付ける基板51と、基板51に取り付けられているLED52とがある。卵ケース47は、鮮度識別の対象となる卵53を収納するものである。基板51は、仕切り板左46と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置されている。この基板51は、卵ケース47全体に光源が照射されるように配置されることが望ましい。
【0025】
LED52は、基板51に取り付けられており、光源となるものである。ここでは、人体への影響が小さい紫外線(以下、UV-Aと称する)を照射可能な発光ダイオードである場合を例に示している。一方、冷蔵室棚40に設けられている比色用窓48には、フィルム54が組み込まれている。このフィルム54は、500nm前後の波長である青緑に近い色の青色フィルムであることが望ましい。また、フィルム54は、比色用窓48と一体として構成されていてもよく、着脱可能に構成してもよい。なお、比色用窓48に組み込まれるものは、500nm前後の波長である青緑に近い色を有していればよく、フィルム54に限定するものではない。たとえば、プラスチックやガラス等で構成してもよい。
【0026】
この基板51と、LED52と、フィルム54とで本発明の実施の形態1に係る鮮度識別装置50を構成している。なお、鮮度識別装置50が小物ケース上44に備えられている場合を例に示すが、これに限定するものではなく、どこに備えられていてもよい。すなわち、鮮度識別の対象となる食品が貯蔵される場所に備えられていればよいのである。また、、設置される個数も特に限定するものではない。また、光源をLED52で構成する場合を例に示すが、これに限定するものではなく、UV-Aや短波長の可視光線を照射できるものであればよい。」

「【0028】
次に、鮮度識別装置50の動作処理について説明する。
鮮度識別装置50では、扉開閉検知手段30が冷蔵室12の前面扉16の開閉を検知して、その情報を制御部32に伝達する。そして、前面扉16が閉まっているとの情報を受け取った制御部32は、庫内灯31及びLED52を消灯制御するようになっている。一方、冷蔵室12の前面扉16が開いたとの情報を受け取った制御部32は、庫内灯31及びLED52を点灯制御するようになっている。
【0029】
LED52が点灯して照射されるUV-Aは、卵53に付着したポルフィリンの自家蛍光を励起する性質がある。すなわち、LED52が点灯すると、LED52から照射されるUV-Aに卵53の卵殻表面に付着したポルフィリンが反応して赤色に発色するのである。このポルフィリンは、卵53が新鮮であるほど卵殻表面に付着している量が多く、鮮度の低下に伴い量が少なくなる。つまり、卵53が新鮮であればあるほど自家蛍光により赤色に発色するが、鮮度の低下に伴い自家蛍光が弱まり、発色も弱くなって白っぽく見えるようになるのである。」

「【0058】
[実施の形態4]
図9は、小物ケース上44cの縦断面を示す断面図である。
本発明の実施の形態4に係る鮮度識別装置50cの基本的な構成は、鮮度識別装置50及び鮮度識別装置50a、鮮度識別装置50bと同様であるので説明を省略する。この鮮度識別装置50cには、卵53の自家蛍光による発色を撮影するカメラ70が設けられている。このカメラ70は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(complementary MOS)等を撮像素子として使用する小型のデジタルカメラであることが望ましい。
【0059】
鮮度識別装置50cは、LED52から照射されるUV-Aで励起される卵53の自家蛍光による発色をカメラ70で撮影し、その撮影した画像から卵53の鮮度を識別するものである。なお、卵53の鮮度識別について説明するが、これに限定するものではなく、肉や野菜等の食品の鮮度識別に用いてもよい。また、鮮度識別の対象となる食品が貯蔵される貯蔵室に備えられればよく、個数も特に限定するものではない。
【0060】
図10は、鮮度識別装置50cの電気的な構成を示すブロック図である。
鮮度識別装置50cは、制御部32にカメラ70と、画像処理部71と、記憶部72と、表示部73と、操作パネル33とがバス等を介して接続されて構成されている。制御部32は、数値化演算部75と、鮮度識別部76とを備えた画像解析部74を有している。表示部73は、食品の鮮度識別の結果を表示するものであり、液晶ディスプレイ等で構成するとよい。なお、表示部73は操作パネル33と一緒に構成されていてもよく、別々に構成されていてもよい。また、食品の鮮度識別の結果だけを表示するものではなく、温度や殺菌等を表示してもよい。
【0061】
カメラ70は、鮮度識別の対象となる食品(ここでは、卵53)を撮影し、画像データとして出力するものである。画像処理部71は、カメラ70が出力した画像データに対して各種補正を行ったり、必要に応じて拡大や縮小したり等の画像処理を行うものである。すなわち、撮影した卵53の鮮度識別に必要な部分を拡大したり、それ以外の部分を消去したりして鮮度識別処理が円滑に実行されるように画像データを処理するのである。」

「【0064】
鮮度識別部76は、数値化演算部75からの結果に基づいて、鮮度識別の対象となる卵53の鮮度を識別するものである。たとえば、鮮度識別の対象となる卵53の数値が70であればその卵53は比較的新鮮であると判断したり、鮮度識別の対象となる卵53の数値が30であればその卵53は古いものであると判断したりすることができる。そして、画像解析部74は、その識別結果を表示部73に表示させるようになっている。
【0065】
この表示部73は、ユーザにわかり易く卵53の鮮度識別結果を表示することが望ましいために、卵ケース47に収納されている卵53ごとにH(新鮮度が高い)-L(新鮮度が低い)で表示したり、その卵53の用途別(生食用や加熱食用、廃棄)に表示したりするとよい。たとえば、鮮度識別の対象となる卵53の数値が、100?70であれば生食用表示を、70?40であれば加熱食用表示を、それ以下の数値であれば廃棄表示等を行うことができる。」

「【図1】



「【図2】



「【図9】



「【図10】



これらの記載事項及び図面を総合し、実施の形態4に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「冷蔵庫の冷蔵室12は、冷蔵室棚40と、スライド室42とを備え、
このスライド室42は、冷蔵室棚40と低面の断熱壁41との間に設置され、断熱材を有する仕切り板右43で収納ケース49と小物ケースとに分割され、
小物ケースは、仕切り板左46と仕切り板右43とで仕切られ、仕切り板左46に設けられているレール上を前後にスライド可能になっていて、小物ケース上44と、小物ケース下45とで構成され、
小物ケース上44内には、卵ケース47と、LED52を取り付ける基板51とがあり、卵ケース47は、鮮度識別の対象となる卵53を収納するものであり、基板51は、仕切り板左46と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され、
カメラ70は、仕切り壁右43と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され、カメラ70は、鮮度識別の対象となる卵53を撮影し、
鮮度識別装置50cは、制御部32にカメラ70と、画像処理部71と、記憶部72と、表示部73と、操作パネル33とがバス等を介して接続されて構成され、
表示部73は、食品の鮮度識別の結果を表示する、
冷蔵庫。」

第6 当審拒絶理由についての判断
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1) 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、引用発明の「冷蔵庫」、「冷蔵室12」、「カメラ70」、「LED52」、「基板51」及び「卵53」は、それぞれ、本願発明の「冷蔵庫」、「貯蔵室」、「撮像手段」、「照明手段」、「基板」及び「食材」に相当する。
引用発明の「スライド室42」は「冷蔵室棚40と低面の断熱壁41との間に設置され」るものであり、冷蔵庫の冷蔵室内に設けられるものである。そして、引用発明の「スライド室42」は、「断熱材を有する仕切り板右43で収納ケース49と小物ケースとに分割され」、分割された「小物ケース」は、「小物ケース上44」と「小物ケース下45」で構成されていることからすると、少なくとも「小物ケース上44」は、冷蔵庫の冷蔵室内に設けられて、空間を形成するものといえる。また、引用発明の「小物ケース上44内には、卵ケース47」があり、「卵ケース47は、鮮度識別の対象となる卵53を収納するものであ」り、「小物ケース」が「前後にスライド可能となっていて」、引用文献1の図2の態様も併せてみると、「小物ケース上44」は、開口部を有して、当該開口部から卵が出し入れされる容器と認められる。そうすると、引用発明の「小物ケース上44」は、本願発明の「貯蔵室内に設けられ、密閉空間を形成し、開口部から食材が出し入れされる密閉容器」と、「貯蔵室内に設けられ、空間を形成し、開口部から食材が出し入れされる容器」との限りで一致している。
引用発明の「カメラ70は、仕切り壁右43と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され、カメラ70は、鮮度識別の対象となる卵53を撮影」するものなので、本願発明の「前記密閉空間を撮像する撮像手段」と、「前記空間を撮像する撮像手段」との限りで一致している。
引用発明において、「LED52を取り付ける基板51」であって、「基板51は、仕切り板左46と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され」るとともに、「カメラ70は、仕切り壁右43と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され」るので、引用発明は、本願発明の「前記撮像手段を、前記密閉容器の壁部内に設けられ、構造物によって前記密閉空間と仕切られている収容室に収容するとともに、前記密閉空間を照らす照明手段と同じ基板に配置することで当該照明手段と対向しない位置に設置し」ていることと、「前記撮像手段を、前記容器に設けられ、前記空間を照らす照明手段と対向しない位置に設置し」ているとの限りで一致する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「貯蔵室内に設けられ、空間を形成し、開口部から食材が出し入れされる容器と、
前記空間を撮像する撮像手段と、を備え、
前記撮像手段を、前記容器に設けられ、前記空間を照らす照明手段と対向しない位置に設置する、
冷蔵庫。」

(相違点1)
容器が形成する空間について、本願発明は、「密閉空間」であるのに対して、引用発明は、小物ケース上44を閉じた際の空間の閉鎖程度は不明である点。

(相違点2)
冷蔵庫の貯蔵室内の容器に撮像手段を設けることについて、本願発明は、「前記撮像手段を」、前記「容器の壁部内に設けられ、構造物によって前記密閉空間と仕切られている収容室に収容するとともに」、前記「空間を照らす照明手段と同じ基板に配置することで当該照明手段と対向しない位置に設置し、前記収容室と」、前記「空間との間を仕切る前記構造物を、前記壁部の表面から」「空間側に突出しない位置に設けるとともに、透明材料により形成」するのに対して、引用発明は、「カメラ70は、仕切り壁右43と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置され」ている点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について、先ず検討する。
引用発明は、カメラ70の配置について、引用文献1の図9に記載されるように、仕切り壁右43と冷蔵室棚40とが直角に接する部分に配置されるものであり、引用文献1には、カメラ70の配置について、他に示唆する記載はない。
そして、少なくとも、冷蔵庫内に設けられた小物ケースの壁部内に設けられ、構造物によって小物ケースの空間と仕切られている収容室に、カメラを収容し、前記カメラを前記空間を照らす照明手段と同じ基板に配置することで当該照明手段と対向しない位置に設置すること、及び前記構造物を、前記壁部の表面から空間側に突出しない位置に設けるとともに、透明材料により形成することは、引用文献1に記載されておらず、上記引用文献2?4にも記載されていない。
また、相違点2に係る本願発明の特定事項が、本願出願前に周知の技術であるともいえない。
そして、本願発明は、相違点2に係る本願発明の特定事項を備えることにより、 「密閉容器を開放することなく貯蔵状態を把握することができる冷蔵庫を提供する」(【0004】)とともに、「撮像カメラ41を凹部に設置し、壁面からレンズが離れて位置していることから、食品がレンズに接触することがなく、写りにくくなることがない。」及び「透明部材であるレンズを汚れから守る防護手段も壁面から凹ませて面一にしないように構成すると、透明部材も汚れないため、より効果が高まる。」(【0022】)との効果を奏するものである。
そうすると、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の特定事項を採用することが、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たということはできない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 請求項2?7に係る発明について
請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?7に係る発明も、上記相違点2に係る本願発明の特定事項と同一の構成を備えるものであるから、本願発明と同様な理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 特許法第36条第6項第2号(明確性)、第6項第1号(サポート要件)について
上記「第3 当審拒絶理由の概要」の「1」及び「2」の理由については、平成30年11月28日の手続補正により、請求項1に係る特許請求の範囲の記載が、「開口部から食材が出し入れされる密閉容器」、「前記撮像手段を、前記密閉容器の壁部内に設けられ、構造物によって前記密閉空間と仕切られている収容室に収容する」及び「前記収容室と前記密閉空間との間を仕切る前記構造物を、前記壁部の表面から密閉空間側に突出しない位置に設ける」と補正されたことにより、解消した。

第7 原査定についての判断
平成30年11月28日の手続補正により、補正後の請求項1は、上記相違点2に係る特定事項を有するものとなった。そして、上記相違点2に係る本願発明の特定事項は、上記引用文献A?Hには記載されておらず、本願出願前に周知の技術であるともいえないので、上記第6で述べたと同様な理由により、補正後の請求項1及び請求項1を直接又は間接に引用する請求項2?7に係る発明は、当業者であっても、原査定における引用文献A?Hに基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-12 
出願番号 特願2013-174492(P2013-174492)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F25D)
P 1 8・ 537- WY (F25D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 庭月野 恭  
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 窪田 治彦
山崎 勝司
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 特許業務法人 サトー国際特許事務所  

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