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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C02F
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 C02F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1348616
審判番号 不服2017-662  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-01-17 
確定日 2019-02-26 
事件の表示 特願2012-167335号「嫌気性生物処理方法および嫌気性生物処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月6日出願公開、特開2014-24032、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月27日の出願であって、平成28年2月22日付け拒絶理由通知書に対して同年5月2日付け意見書及び手続補正書が提出され、そして、同年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年1月17日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、同年9月7日付け当審の拒絶理由通知書(1回目)に対して同年11月10日付け意見書及び手続補正書が提出され、また、平成30年3月8日付け当審の拒絶理由通知書(2回目)に対して同年5月10日付け意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年8月27日付け拒絶理由通知書(3回目)に対して同年10月16日付け意見書及び手続補正書が提出されたものであり、刊行物等提出書が平成27年8月5日、平成28年7月11日、同年10月14日、平成29年4月17日及び平成30年1月31日に提出された。

第2 本願発明
本願請求項1ないし8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年10月16日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のものであり、本願発明1?4及び本願発明5?8は、それぞれ「嫌気性生物処理方法」(方法発明)及び「嫌気性生物処理装置」(装置発明)である。
「 【請求項1】
炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上含有されている排水を嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理方法であって、
酸発酵槽を含まない一槽式の嫌気反応槽においてポリビニルアルコール製のゲル状の担体の存在下で、水温20?30℃で担体あたりのTOC負荷9kgTOC/m^(3)/d以上で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含み、
前記嫌気反応槽は、前記嫌気反応槽内を撹拌する撹拌装置を備えることを特徴とする嫌気性生物処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の嫌気性生物処理方法であって、
前記嫌気反応槽は、前記嫌気反応槽の内部に略垂直に設置され上下が開口したドラフトチューブを備え、
前記撹拌装置は、前記ドラフトチューブ内に下向流を形成し、前記ドラフトチューブと前記嫌気反応槽の内壁面との間に上向流を形成することを特徴とする嫌気性生物処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の嫌気性生物処理方法であって、
前記ゲル状の担体の沈降速度は、100?150m/hrであることを特徴とする嫌気性生物処理方法。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか1項に記載の嫌気性生物処理方法であって、
前記有機物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびメタノールのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする嫌気性生物処理方法。
【請求項5】
炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上含有されている排水を嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理装置であって、
酸発酵槽を含まない一槽式の嫌気反応槽においてポリビニルアルコール製のゲル状の担体の存在下で、水温20?30℃で担体あたりのTOC負荷9kgTOC/m^(3)/d以上で嫌気性生物処理を行う生物処理手段を備え、
前記嫌気反応槽は、前記嫌気反応槽内を撹拌する撹拌装置を備えることを特徴とする嫌気性生物処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の嫌気性生物処理装置であって、
前記嫌気反応槽は、前記嫌気反応槽の内部に略垂直に設置され上下が開口したドラフトチューブを備え、
前記撹拌装置は、前記ドラフトチューブ内に下向流を形成し、前記ドラフトチューブと前記嫌気反応槽の内壁面との間に上向流を形成することを特徴とする嫌気性生物処理装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の嫌気性生物処理装置であって、
前記ゲル状の担体の沈降速度は、100?150m/hrであることを特徴とする嫌気性生物処理装置。
【請求項8】
請求項5?7のいずれか1項に記載の嫌気性生物処理装置であって、
前記有機物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよびメタノールのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする嫌気性生物処理装置。」

第3 引用文献について
原査定及び当審の拒絶理由(1回目)において引用した文献は次のとおりである。
<引用文献等一覧>
1.特開2010-274207号公報(引用文献1)
2.特開2010-184178号公報(引用文献2)
3.Khanh Do Phuong, et al, Upflow Anaerobic Wastewater Treatment using PVA/PEG Beads as Biomass Carriers, International Journal of Earth Sciences and Engineering,2011年9月,Vol.04,No.05,pp.222-229(引用文献3)
4.特開2004-188413号公報(引用文献4)
5.特開2006-218371号公報(引用文献5)
6.特開昭63-315196号公報(引用文献6)
7.特開2012-110843号公報(引用文献7)
8.特開2001-293490号公報(引用文献8)
9.製造元株式会社クラレ 販売元クレアアクア株式会社、「クラゲール」のカタログ 微生物固定化担体PVAゲル(公知日不明)(引用文献9)
10.「株式会社クラレ/クラレアクア株式会社、微生物固体化担体による排水処理システム、月刊「産業と環境」、発行所株式会社産業と環境、2012年5月1日発行、5月号、通巻474号、95-98ページ」(引用文献10)

第4 引用文献1ないし3に記載の発明及び周知技術
(1)引用文献1に記載の発明
引用文献1には、以下(1-1)ないし(1-10)で示す記載がある。
(1-1)「【請求項1】
アルキルアンモニウム塩を含有する排水を嫌気的に生物処理する嫌気性生物処理方法であって、前記排水に糖蜜を供給することを特徴とする嫌気性生物処理方法。
【請求項2】
炭素数6以下の有機物を含有する排水を嫌気的に生物処理する嫌気性生物処理方法であって、前記排水に糖蜜を供給することを特徴とする嫌気性生物処理方法。」

(1-2)「【請求項6】
前記アルキルアンモニウム塩又は前記炭素数6以下の有機物は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)であることを特徴とする請求項1又は2記載の嫌気性生物処理方法。」

(1-3)「【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、単にTMAHと呼ぶ場合がある)、コリン等のアルキルアンモニウム塩、又は炭素数の小さい有機物等を含有する排水を嫌気的に生物処理する生物処理方法及び生物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルプ製造排水工程や化学工場から排出される炭素数4以下、具体的には酢酸、エタノール、アセトアルデヒド等の炭素数2以下の有機物を主成分とする排水を嫌気処理する場合、グラニュール汚泥が解体して小粒径化するため、汚泥量が減少し処理が不安定になるとされている。
【0003】
通常の嫌気処理では、高分子の糖質、タンパク質、脂質を低分子に分解する嫌気性加水分解菌、有機酸を生成する酸生成菌が生成するバイオポリマー等の架橋効果がグラニュールの生成、維持に重要な働きをしていると考えられている。さらに、糸状性のメタン生成細菌であるMethanosaeta属がグラニュール化の骨格となるとも言われており、グラニュール形成に重要な存在である。
【0004】
ところが、炭素数の小さい有機物を分解する場合、加水分解菌や酸生成細菌が少なくメタン生成細菌が主要な生物相となる。さらに、メタノールやTMAH等では糸状性のメタン生成細菌であるMethanosaeta属より、糸状性でないメタン生成細菌であるMethanosarcina属やMethanobacteriumu属が優占し易く、グラニュール汚泥が微細化し崩れる傾向がある。グラニュール汚泥が微細化し崩れると反応槽内の汚泥が流出し処理が不安定となる。
【0005】
従来、これらの対策の具体例としては、例えば、特許文献1?4の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4193310号公報
【特許文献2】特開2008-279383号公報
【特許文献3】特許第2563004号公報
【特許文献4】特開2008-279385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、グラニュール汚泥を投入して処理を立ち上げた後に、グラニュール汚泥の崩壊を防止するための高分子凝集剤を添加する嫌気性生物処理方法に関するものであるが、嫌気性汚泥を投入して処理を立ち上げること、及び嫌気性汚泥からグラニュール汚泥を形成する場合の適用は困難である。また、長期にわたって高分子凝集剤を添加する場合、高分子凝集剤同士の荷電が反発し、グラニュール汚泥が分散する懸念がある。また、高分子凝集剤が価格的に高いことも問題となる。
【0008】
また、特許文献2の方法は、硝酸、亜硝酸を添加する嫌気性生物処理方法であるが、本来排水処理の対象物質である硝酸、亜硝酸を積極的に添加するため、原水変動、装置トラブル、運転管理等で不具合が生じた場合、処理水と共に窒素が排出され、水質汚染を引き起こす懸念がある。また、該方法では、脱窒細菌とメタン生成細菌とを共存させる必要があり、脱窒反応が生じてから嫌気反応が始まることを考慮すると、原水変動等で処理水質が悪化すること、硝酸等が処理水にリークする可能性が懸念される。
【0009】
また、特許文献3の方法は、立ち上げ時に酢酸を処理対象物質であるメタノールの4倍添加する嫌気性処理方法であるが、対象排水よりも多い酢酸を注入するのは、実機スケールにおいて、現実的ではない。また、該方法では、立ち上げ後に酢酸注入を停止するため、酢酸注入停止から所定期間後のグラニュール安定性、処理安定性が問題となる。
【0010】
また、特許文献4の方法は、糖質を添加する嫌気性処理方法である。ここで、糖質は炭水化物のことで、単体である単糖類、数個の縮合体であるオリゴ糖、多数の単糖からなる多糖類(デンプン、セルロース、チキン等)がある。そして、単糖は、炭素数3のトリオース、炭素数4のテトロース、炭素数5のペントース、炭素数6のヘキソース等がある。このような単糖を添加する嫌気性生物処理では、逆にグラニュール汚泥の崩壊が懸念されるため、糖質の添加が必ずしもグラニュール汚泥の崩壊防止に役立つとは考えられない。また、該方法では、糖質の中でデンプンの具体例が示されているのみである。そして、デンプンを用いる場合、デンプンは水に難溶であるため、湯に一度溶解させ溶液化しなくてはならい等の運転管理面等に課題がある。
【0011】
このように、上記各方法にはいずれも各課題があるため、実用化は困難である。また、上記各方法は、パルプ製造過程で排出されるメタノール等の炭素数1の有機物含有排水を事例とするものであり、半導体製造工場等において純水、超純水を使用する工程から排出される炭素数4の使用済みTMAH含有排水等のアルキルアンモニウム塩含有排水(レジスト由来の樹脂や界面活性剤を含有する場合がある)の嫌気性生物処理についての事例はない。
【0012】
本発明の目的は、アルキルアンモニウム塩、又は炭素数6以下の有機物等を含有する排水、特に半導体製造工場等から排出されるTMAH、コリン等を含有する排水を良好に処理する嫌気性生物処理方法及び嫌気性生物処理装置を提供することにある。」

(1-4)「【0033】
反応槽16としては、主にアルキルアンモニウム塩を嫌気的に生物処理することができるものであればよく、UASB方式、EGSB方式等に代表されるグラニュールを利用した上向流汚泥床式の反応槽や、担体を使用した固定床式又は流動床式の反応槽等が利用可能である。」

(1-5)「【0035】
アルキルアンモニウム塩含有排水を原水第1ライン10から調整槽12に供給すると共に、糖蜜貯槽26内の糖蜜を糖蜜供給ライン28から調整槽12に供給する。攪拌装置38により混合された混合液(アルキルアンモニウム塩含有排水と糖蜜)を原水第2ライン14から反応槽16内へ導入し、上向流で通液する。本発明者の知見によれば、反応槽16では、アルキルアンモニウム塩(例えば、TMAH)が嫌気性生物によって、メタン、炭酸イオン、アンモニウムイオン等に分解されると考えられる。嫌気性生物処理に利用される種汚泥としては、特に制限されるものではないが、例えば、食品工場、飲料工場、製紙工場、化学工場、畜産排水処理等で使用される嫌気性汚泥、グラニュール、又は下水処理場の消化汚泥等が挙げられる。」

(1-6)「【0038】
本発明者らは、嫌気性生物処理において糖蜜を添加することにより、嫌気性汚泥からグラニュール汚泥を形成することができること、グラニュール汚泥の微細化を抑制することができることを見出し、本発明に至った。糖蜜添加によって上記効果を奏する原因としては、例えば、糖蜜は高分子有機物であることから加水分解菌や酸生成細菌の増殖を促進し、グラニュールの架橋構造を有するバイオポリマーを産出すること、及び酢酸資化性のメタン生成細菌である糸状性Methanosaeta属を増殖させることができるためであると考えられる。また、例えば、糖蜜には有機物の他に微生物の生育に必要な必須の微量元素が含まれており、この微量元素がグラニュール化の促進に寄与しているとも考えられる。半導体製造工場等の純水、超純水を使用する工場排水中には上記微量元素が不足しているが、糖蜜を添加することによって、微生物の生育に必要な必須の微量元素が補充されるため、グラニュール汚泥の微細化等が抑制され、安定した処理が可能となる。」

(1-7)「【0049】
本実施形態では、アルキルアンモニウム塩含有排水を生物処理するに当たり、反応槽16内の水温を20℃以上となるように温度調整することが好ましく、28?35℃の範囲となるように温度調整することがより好ましい。嫌気性生物処理によるアルキルアンモニウム塩の分解は、20℃未満でも可能であるが、20℃未満であると、分解反応速度が低下してしまうため、水温を上記範囲に調整することが好ましい。上記温度調整方法は、特に制限されるものではないが、例えば、蒸気を調整槽12に供給することで、反応槽16内の水温を調整してもよいし、反応槽16にヒータを設置して、ヒータの熱により反応槽16内の水温を調整しても良い。また、例えば、加温した希釈水を供給することで、反応槽16内の水温を調整してもよい。また、例えば、アルキルアンモニウム塩の分解によりメタンガスが発生するが、通常の嫌気処理同様に脱硫処理を実施後、メタンガスボイラーで熱エネルギとして回収し、該熱エネルギを反応槽16に供給し、水温を調整してもよい。ここで、上記範囲に反応槽16内の水温を調整する際には、アルキルアンモニウム塩含有排水中のアルキルアンモニウム塩濃度を20000mg/L以下、アンモニウムイオン濃度を5000mg/L以下とすることが好ましい。」

(1-8)「【0052】
本実施形態の処理対象となるアルキルアンモニウム塩は、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジエチルジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、エチルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、及びその塩類等が挙げられる。本実施形態では、特に、半導体製造工場等から排出されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)の処理に好適である。
【0053】
本実施形態の処理対象は、炭素数6以下の有機物の処理にも適用可能であり、例えば、炭素数6以下の上記アルキルアンモニウム塩、イソプロピルアルコール(IPA)、メタノール、モノエタノールアミン、酢酸、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が挙げられる。」

(1-9)「【0056】
図3は、本実施形態に係る嫌気性生物処理装置の構成の他の一例を示す模式図である。図3に示す嫌気性生物処理装置3において、図2に示す嫌気性生物処理装置2と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図3に示す嫌気性生物処理装置3の反応槽16内には担体50が充填される。生物処理の立ち上げを行う際に、反応槽16内に担体50を充填することにより、グラニュール汚泥の形成、保持、生物処理の立ち上げ期間の短縮、排水の処理安定性を向上させることができる。本実施形態で用いられる担体の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリウレタン等のスポンジ担体、ポリビニルアルコール(PVA)等のゲル担体、繊維状担体、不織布成型品、ポリプロピレン製等の成型品等が挙げられる。成型品の形態としては、特に制限されるものではなく、例えば、ハニカム型、V型等の網状骨格体、網状マット状、網様パイプ状、網様ボール状等様々な形態が可能である。また、図示はしていないが担体を充填した反応槽内上部に気固液分離装置を設置することがより好ましい。」

(1-10)「【0059】
(実施例)
半導体工場から排出されたTMAH含有の実排水を2000mgTMAH/Lになるように調整し、内容積0.8Lのカラムに種汚泥として嫌気性汚泥(汚泥濃度25148mg/L)をカラムの半量添加後、上記実排水を5kgTMAH/m^(3)/dの負荷で通水した。通水時の温度は35℃、pHは7?8となるように調整した。また、栄養剤(オルガノ(株)製のオルガミンNP-51)、微量元素(オルガノ(株)製のオルガミン10を1.2mL/L)、Ni、Co(各0.1mg/L)添加した。また、廃糖蜜(原料としてさとうきび及び甘藷)を200mg/L(57mgC/L、TOC比でTMAHに対して5.3%)となるように、立ち上げ時から連続して上記実排水に添加した。実施例で使用した廃糖蜜の成分は、糖度30?40%以上、純糖率35%以上、還元糖15%以上、純糖分55%以上である。その他の成分を表1に示す。」

上記(1-1)ないし(1-10)からして、引用文献1には、『糖蜜(加水分解菌や酸生成細菌の増殖を促進し、グラニュールの架橋構造を有するバイオポリマーを産出し、酢酸資化性のメタン生成細菌である糸状性Methanosaeta属を増殖させることができるものであり、生物処理の対象ではないもの)、および、半導体製造工場等から排出される炭素数6以下の有機物(例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)やコリン)を含有する排水(生物処理の対象であるもの)を嫌気的に生物処理する(メタン発酵させる)嫌気性生物処理方法であって、酸発酵槽を含まないと共に、ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体が充填された一槽(式)の嫌気反応槽(メタン等が発生するメタン発酵槽)(流動床槽)において、20℃以上、好ましくは28?35℃の温度で嫌気的に生物処理を行う生物処理工程を含む、嫌気性生物処理方法。』(以下、「引用文献1方法発明」という。)が記載されているということができる。

(2)引用文献2に記載の発明
引用文献2には、以下(2-1)ないし(2-7)で示す記載がある。
(2-1)「【請求項1】
アルキルアンモニウム塩含有排水を嫌気的に生物処理する嫌気性生物処理方法であって、前記生物処理する際の前記アルキルアンモニウム塩含有排水中のアルキルアンモニウム塩濃度を20000mg/L以下とすることを特徴とする嫌気性生物処理方法。」

(2-2)「【技術分野】
【0001】
本発明は、TMAH、コリン等のアルキルアンモニウム塩含有排水を嫌気的に生物処理する生物処理方法及び生物処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工場、液晶製造工場から排出される使用済みのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)含有排水等のアルキルアンモニウム塩含有排水(レジスト由来の樹脂を若干含有する場合がある)の分解処理方法や排水回収処理方法が、生物処理、イオン交換樹脂を用いた処理、膜処理等の各種方法により提案されている(例えば、特許文献1?4参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8-235号公報
【特許文献2】特開2001-276825号公報
【特許文献3】特許第2730610号公報
【特許文献4】特開平11-262765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の回収技術では、TMAH等のアルキルアンモニウム塩が比較的高濃度で含有する排水に対して、回収したTMAHを再利用する場合に有効な方法であるが、薬品純度、経済性等に問題がある。
【0005】
また、従来の物理化学的分解処理方法では、反応が速く、設備も小さくすることが可能であるが、処理コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、安価なTMAH等のアルキルアンモニウム塩含有排水の処理方法としては、生物学的分解処理方法が挙げられるが、従来は、好気性生物を利用した生物処理が主流である。そして、好気性生物処理においては、一般的に担体法や浸漬膜活性汚泥法を用いた処理が行われている。
【0007】
本発明の目的は、TMAH、コリン等のアルキルアンモニウム塩含有排水の嫌気性生物処理において、TMAH、コリン等のアルキルアンモニウム塩含有排水処理設備の設置面積を小さくすると共に、経済的及び環境的に良い生物処理方法及び生物処理装置を提供することにある。」

(2-3)「【0036】
嫌気性生物処理槽14としては、主にアルキルアンモニウム塩を嫌気的に生物処理することができるものであればよく、UASB方式、EGSB方式等に代表されるグラニュールを利用した上向流汚泥床式の嫌気性生物処理槽や、担体を使用した固定床式又は流動床式の嫌気性生物処理槽等が利用可能である。嫌気性生物処理に利用される担体の種類は、特に制限されるものではないが、例えば、ポリウレタン等のスポンジ担体、ポリビニルアルコール(PVA)等のゲル担体、繊維状担体、不織布成型品、ポリプロピレン製等の成型品等が挙げられる。また、嫌気性生物処理に利用される種汚泥としては、特に制限されるものではないが、例えば、食品工場、飲料工場、製紙工場、化学工場、畜産排水処理等で使用される嫌気処理汚泥、グラニュール、又は下水処理場の消化汚泥等が挙げられる。なお、運転時にグラニュール量が増加せず減少するような傾向の場合には、鉄やカルシウム塩、フライアッシュ等の核となる物質、または凝集剤、有機物等のグラニュールの形成を促進する物質を添加することが好ましい。
【0037】
本発明者の知見によれば、嫌気性生物処理槽14では、アルキルアンモニウム塩(例えば、TMAH)が嫌気性生物によって、メタン、炭酸イオン、アンモニウムイオン等に分解されると考えられる。」

(2-4)「【0051】
本実施形態の処理対象となるアルキルアンモニウム塩は、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルエチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)、トリエチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジエチルジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、エチルトリ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、及びその塩類等が挙げられる。本実施形態では、特に、半導体製造工場、液晶製造工場から排出されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)の処理に好適である。」

(2-5)「【0068】
(実施例5:水温と最大ガス発生速度との関係)
内容積1.6Lのカラムに充填剤(22mm角のポリウレタン担体)を80%充填した固定床方式の連続処理装置に、種汚泥として下水処理場の消化汚泥(汚泥濃度25178mg/L)をカラムの半量添加後、濃度2000mg/LのTMAH含有排水(pH7、微生物栄養剤を含む)を5kg-TMAH/m^(3)/dの負荷で通水した。実施例5では、該通水時の水温を35,28,23,20,17℃と変えた。表5に水温とTMAH含有排水中のTMAH濃度をまとめた。」

(2-6)「【符号の説明】
【0075】
1 嫌気性生物処理装置、10 原水槽、12,12a,12b 調整槽、14 嫌気性生物処理槽、16 分離槽、18 窒素処理槽、20 処理水槽、22a?22e 配管、24a,24b ポンプ、26 希釈水流入ライン、28 pH調整剤流入ライン、30 栄養剤流入ライン、32 蒸気流入ライン、34 循環ライン、36,38 撹拌装置 40 汚泥返送ライン。」

(2-7)
「【図1】





上記(2-1)ないし(2-7)からして、引用文献2には、「半導体製造工場、液晶製造工場から排出されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)を含むアルキルアンモニウム塩含有排水を20℃以上、好ましくは28?35℃の温度で嫌気的に生物処理する(メタン発酵させる)嫌気性生物処理方法であって、ポリビニルアルコール(PVA)等のゲル担体を使用すると共に、酸発酵槽を含まない一槽(式)の流動床式嫌気性生物処理槽を利用する、嫌気性生物処理方法。」(以下、「引用文献2方法発明」という。)が記載されているということができる。

(3)引用文献3に記載の発明
引用文献3には、以下(3-1)ないし(3-5)で示す記載がある。
(3-1)「Upflow Anaerobic Wastewater Treatment using PVA/PEGBeads as Biomass Carriers」(p222のTitle)
「生物を担持するPVA/PEGビーズ担体を用いた廃液の上昇流式嫌気性処理」(当審訳。以下同じ。)

(3-2)「The first experiment evaluated the performance of modified UASB reacter using PVA beads to treat low-strength wastwater with load maximization.This reactor was firstly operated at 25℃ and organic loading rates was achieved 27kg/COD/m^(3)/d,」(p222のAbstractの2?5行)
「最初の実験は、PVAビーズ担体を用いて、最大量投入される低負荷の汚水を処理する改良UASB反応槽の性能を評価するものであり、反応槽は、最初25℃で操作され、COD負荷は、27kg/COD/m^(3)/dであり」

(3-3)「PVA-gel beades」(First experiment)(p222右欄下から5行)
「ゲル状のPVAビーズ担体」

(3-4)「The synthetic wastewater characterized by COD), BOD concentrations of 420±30 mg/L and 220±10 mg/L was prepared using stock solution consisted of a peptone and bonito fish-meat (extract Ehlrich) at 40 and 60 g/L,」(First experiment)(p223左欄5-10行)
「40g/Lのレプトンと60g/Lのカツオ魚肉(エキス)を含む溶液を原料とする、CODが420±30mg/L(濃度)で、BODが220±10mg/L(濃度)である合成汚水が準備される。」

(3-5)「The substrate consisted of peptone and bonito fish-meat as well as mineral salts was mixed with tap water.」(Second experiment)(p223左欄34-37行)
「ミネラルと同じように原水に含まれるレプトンとカツオ魚肉(エキス)が処理される。」

上記(3-1)ないし(3-5)からして、引用文献3には、「生物を担持するゲル状のPVAビーズ担体を用いた、レプトンとカツオ魚肉(エキス)を含む合成汚水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)の上昇流嫌気性処理を25℃で行う反応槽のCOD負荷が27kg/COD/m^(3)/dである、廃液の上昇流式嫌気性処理(方法)」(以下、「引用文献3方法発明」という。)が記載されているということができる。

(4)引用文献4に記載の事項
引用文献4には、【特許請求の範囲】【請求項1】ないし【請求項10】、【技術分野】【0001】、【0021】、【図1】ないし【図10】等からして、「排水中に含有される窒素化合物を嫌気性の脱窒菌により脱窒処理する排水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)の脱窒方法であって、多孔性(発泡体)のセルロース、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリウレタン等の担体を用い、処理槽内の上層部に配設された撹拌翼と、底部に配設された案内翼と、撹拌翼の上方に配設されたバッフル板によって水面からの空気の混入を防止し、嫌気性を保ちつつ均一に分散、流動させた担体中の嫌気性菌にて窒素化合物を脱窒処理する、排水の脱窒方法。」が記載されているということができる。

(5)引用文献5に記載の事項
引用文献5には、【特許請求の範囲】、【0028】、【0030】、【0038】、【図1】ないし【図4】等からして、「微生物を保持し、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどからなるゲル状体の担体を用いて排水(実施例の試供排水:NO_(3)-N 100mg-N/L、PO_(4)-P 1.0mg-P/L)(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)を嫌気性条件下で浄化処理する嫌気性排水処理方法であって、担体を反応槽内に貯留するとともに、該反応槽内に上下が開口したドラフトチューブを垂直に設置し、インペラ装置により、ドラフトチューブ内に下向流を形成するとともに、ドラフトチューブと反応槽内壁面との間に上向流を形成し、かつ、該インペラ装置による上向流に伴って上昇する担体が存在する領域を実質的にドラフトチューブの上端以下に抑えるべく、インペラ装置出力を調整する、嫌気性排水処理方法」(以下、「引用文献5方法発明」という。)が記載されているということができる。

(6)引用文献6に記載の事項
引用文献6には、【特許請求の範囲】、第3頁左下欄12行?右下欄15行、第1図、第2図等からして、「縦長の気密消化槽内に内筒に囲まれた縦長の撹拌スクリューを設けてなる構成を有する嫌気性バイオリアクターを用いた廃水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)の嫌気性処理方法であって、単一の消化槽で、微生物固定化坦体(ポリビニルアルコール製であるか不明のもの)を使用する流動層方式で行う、廃水の嫌気性処理方法。」が記載されているということができる。

(7)引用文献7に記載の事項
引用文献7には、【特許請求の範囲】【請求項1】ないし【請求項8】、【0001】、【0032】、【0056】ないし【0059】、【0071】、【0070】【表2】等からして、「酸生成槽(酸発酵槽)を含まない反応槽(槽負荷が4.0?12.0kg-CODcr/m^(3)/dayの完全混合型反応槽、槽負荷が4.0?32kg-CODcr/m^(3)/dayの上向流型反応槽)内に流動性を持つ、ポリオレフィン系樹脂を主体とする樹脂成分30?95重量%と、セルロース系粉末の親水化剤5?70重量%とを含む発泡体、または、ポリオレフィン系樹脂を主体とする樹脂成分30?95重量%と、セルロース系粉末の親水化剤4?69重量%と、無機粉末1?30重量%とを含む発泡体からなる非生物担体を充填し、該非生物担体の表面に生物膜を形成させて嫌気条件下で、攪拌機等を用いて、メタノール、酢酸等のメタン生成細菌が直接利用可能な化合物のみを含む排水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であると認められるもの)を通水して処理する嫌気性排水処理方法。」が記載されているということができる。

(8)引用文献8に記載の事項
引用文献8には、【特許請求の範囲】【請求項1】ないし【請求項8】、【0008】、【0013】(実施例1)、【0014】(実施例2)、【0015】(実施例3)等からして、「生物反応タンク(嫌気槽)において、主成分がポリビニルアルコールであり、流動する担体(実施例1ではクラゲール)を用いて、合併処理槽の曝気槽内の排水、産業排水処理用の曝気槽内の排水、下水処理場の脱窒槽内の排水(いずれも、炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)の処理を行う、排水処理方法。」が記載されているということができる。

(9)引用文献9に記載の事項
引用文献9には、







等からして、「生物親和性の高いポリビニルアルコール(PVA)を原料とする微生物固定化担体としてのクラゲール(最大BOD担体負荷50kg/m^(3)/d)を用いた排水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)を用いたBOD除去方法であり、例えば、改造例1(ゲル+凝集沈殿法)では、ゲル槽(1槽のみ、120m^(3)、BOD担体負荷25kg/m^(3)/d、ゲル12m^(3))(図面からみて、水中攪拌機が設けられていると認められる。)と空槽と凝集沈殿槽を用いた排水処理フローからなる、BOD除去方法。」が記載されているということができる。

(10)引用文献10に記載の事項
引用文献10には、『「クラゲール」とは生物親和性の高いポリビニル(PVA)を含水状態で化学架橋させた(株)クラレ製の担体である(図1)。』(95頁中段の微生物固定化担体の「クラゲール」の欄の1?4行)、「表3 処理フロー」(98頁上段)等からして、『排水を嫌気性下で嫌気性生物処理方法であり、酸発酵槽を含まむゲル嫌気槽においてポリビニルアルコール製のゲル状の担体の存在下で、「酸発酵槽+ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体を用いるゲル嫌気槽」の容積負荷(ゲル充填率20%)が20kgCODcr/m^(3)・dで嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含み、ゲル嫌気槽は、槽内を撹拌する撹拌装置を備える、嫌気性生物処理方法。』が記載されているということができる。

第5 当審で通知した拒絶理由について
第5-1 平成29年9月7日付け当審の拒絶理由(1回目)について
本願発明1ないし8が、引用文献1に記載の発明及び引用文献10、5、8に記載の事項に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。
(a)本願発明1について
本願発明1と引用文献1方法発明とを対比する。
○引用文献1方法発明の「排水」は、「半導体製造工場等から排出される炭素数6以下の有機物(例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)やコリン)を含有する排水(生物処理の対象であるもの)」であり、本願発明1の「炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上含有されている排水」に相当する。

○引用文献1方法発明の「嫌気的に生物処理する(メタン発酵させる)嫌気性生物処理方法」は、本願発明1の「嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理方法」に相当する。

○引用文献1方法発明の「酸発酵槽を含まないと共に、ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体が充填された一槽(式)の嫌気反応槽(メタン等が発生するメタン発酵槽)(流動床槽)において、20℃以上、好ましくは28?35℃の温度で嫌気的に生物処理を行う生物処理工程を含む」は、本願発明1の「酸発酵槽を含まない一槽式の嫌気反応槽において流動するポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体の存在下で、水温20?30℃で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含む」に一応相当する。

上記より、本願発明1と引用文献1方法発明とは、「炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上含有されている排水を嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理方法であって、酸発酵槽を含まない一槽式の嫌気反応槽において流動するポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体の存在下で、水温20?30℃で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含む、嫌気性生物処理方法。」という点で一致し、少なくとも以下の点(以下、「相違点」という。)で相違している。
<相違点>
本願発明1は、「担体あたりのTOC負荷9kgTOC/m^(3)/d以上」という特定があるのに対して、引用文献1方法発明は、「担体あたりのTOC負荷」が不明な点。

上記<相違点>について検討する。
引用文献10に記載の事項は、「ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体」を用いるものであり、「酸発酵槽+ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体を用いるゲル嫌気槽」の容積負荷(ゲル充填率20%)が20kgCODcr/m^(3)・dであるとしても、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであり、
引用文献5に記載の事項は、「ポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体」を用いるものであり、最初25℃で操作されてCOD負荷が27kg/COD/m^(3)/dであるとしても、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであり、
引用文献8に記載の事項は、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものである。
上記からして、引用文献10、5、8に記載の事項のいずれもが、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであるので、引用文献1方法発明及び引用文献10、5、8に記載の事項より、上記<相違点>に係る本願発明1の発明特定事項を導き出すことはできない、というべきである。
したがって、本願発明1は、引用文献1方法発明及び引用文献10、5、8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(b)本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、上記<相違点>に係る本願発明1の発明特定事項を包含するものであるので、本願発明1と同じく、引用文献1方法発明及び引用文献10、5、8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(c)本願発明5ないし8について
引用文献1方法発明を装置発明に置き換えた発明を、以下、引用文献1装置発明ということとしたとき、本願発明5ないし8(装置発明)は、本願発明1ないし4(方法発明)とカテゴリーが相違するだけのものであるので、本願発明1ないし4と同様に、引用文献1装置発明及び引用文献10、5、8に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(d)したがって、本願発明1ないし8は、平成29年9月7日付け当審の拒絶理由(1回目)により拒絶されるものではない。

第5-2 平成30年3月8日付け当審の拒絶理由(2回目)について
当該拒絶理由(2回目)は、記載不備(明確性)及び新規事項追加を指摘したが、これは、手続補正により解消した。

第5-3 平成30年8月27日付け当審の拒絶理由(3回目)について
当該拒絶理由(3回目)は、新規事項追加を指摘したが、これは、手続補正により解消した。

第5-4 小括
上記「第5-1」ないし「第5-3」からして、本願発明1ないし8は、当審で通知した拒絶理由によって拒絶することはできない。

第6 原査定の拒絶理由について
本願発明1ないし8について、引用文献1ないし3に記載の発明のいずれか及び本願出願日前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである否かについて検討する。
(a)本願発明1について
本願発明1と引用文献1方法発明との一致点・相違点は、上記「第5-1」の「(a)」で示したとおりである。
<相違点>(再掲)
本願発明1は、「担体あたりのTOC負荷9kgTOC/m^(3)/d以上」という特定があるのに対して、引用文献1方法発明は、「担体あたりのTOC負荷」が不明な点。

次に、本願発明1と引用文献2方法発明とを対比する。
○引用文献2方法発明の排水は、「半導体製造工場、液晶製造工場から排出されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、トリメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド(即ち、コリン)を含むアルキルアンモニウム塩含有排水」であり、本願発明1の「炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上含有されている排水」に相当する。

○引用文献2方法発明の「嫌気的に生物処理する(メタン発酵させる)嫌気性生物処理方法」は、本願発明1の「嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理方法」に相当する。

○引用文献2方法発明の「20℃以上、好ましくは28?35℃の温度で嫌気的に生物処理する嫌気性生物処理方法であって、ポリビニルアルコール(PVA)等のゲル担体を使用すると共に、酸発酵槽を含まない一槽(式)の流動床式嫌気性生物処理槽を利用する」は、本願発明1の「酸発酵槽を含まない一槽式の嫌気反応槽において流動するポリビニルアルコール(PVA)製のゲル状の担体の存在下で、水温20?30℃で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含む」に一応相当する。

ここで、上記の対比と、「第5」の「第5-1」の「(a)」で示した本願発明1と引用文献1方法発明との対比とを対照すると、本願発明1と引用文献2方法発明との一致点・相違点は、本願発明1と引用文献1方法発明との一致点・相違点と同じになる、ということができる。

さらに、本願発明1と引用文献3方法発明とを対比する。
引用文献3方法発明は、「第4」の「(3)」で示した、「生物を担持するゲル状のPVAビーズ担体を用いた、レプトンとカツオ魚肉(エキス)を含む合成汚水(炭素数6以下の有機物が有機物全体の50重量%以上であるか不明のもの)の上昇流嫌気性処理を25℃で行う反応槽のCOD負荷が27kg/COD/m^(3)/dである、廃液の上昇流式嫌気性処理(方法)」(再掲)であり、担体あたりのTOC負荷を明らかにするものではないので、少なくとも、上記<相違点>と同じ相違があるということができる。

上記<相違点>について検討する。
引用文献5、8、10に記載の事項は、上記「第5-1」の「(a)」で示したように、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであり、
また、引用文献4、6、7、9に記載の事項も、上記「第4」で示した内容からして、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものである。
そうすると、引用文献4ないし10に記載の事項のいずれもが、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであるので、引用文献1ないし3方法発明のいずれか及び本願出願前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)より、上記<相違点>に係る本願発明1の発明特定事項を導き出すことはできない、というべきである。
したがって、本願発明1は、引用文献1ないし3方法発明のいずれか及び本願出願前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(b)本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、上記<相違点>に係る本願発明1の発明特定事項を包含するものであるので、本願発明1と同じく、引用文献1ないし3方法発明のいずれか及び本願出願前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(c)本願発明5ないし8について
引用文献1ないし3方法発明について、これらを装置発明に置き換えた発明を、以下、引用文献1ないし3装置発明ということとしたとき、本願発明5ないし8(装置発明)は、本願発明1ないし4(方法発明)とカテゴリーが相違するだけのものであるので、本願発明1ないし4と同様に、引用文献1ないし3装置発明のいずれか及び本願出願前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(d) 小括
上記「(a)」ないし「(c)」からして、本願発明1ないし8は、引用文献1ないし3に記載の発明のいずれか及び本願出願日前の周知技術(引用文献4ないし10に記載の事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、原査定の理由(進歩性欠如)により拒絶されるものではない。

第7 刊行物等提出書について
第7-1 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同法同条第2項(進歩性)について
刊行物等提出書において提示された刊行物(全て)は、以下のものである。
A.特開2010-274207号公報(引用文献1に同じ)(以下同様)B.特開2010-184178号公報(引用文献2)
C.Khanh Do Phuong, et al, Upflow Anaerobic Wastewater Treatment using PVA/PEG Beads as Biomass Carriers, International Journal of Earth Sciences and Engineering,2011年9月,Vol.04,No.05,pp.222-229(引用文献3)
D.Bioresource Technology 102(2011)11147-11154
E.特開2004-188413号公報(引用文献4)
F.特開2006-218371号公報(引用文献5)
G.特開2012-110820号公報
H.特開2001-293490号公報(引用文献8)
I.製造元株式会社クラレ 販売元クレアアクア株式会社、「クラゲール」のカタログ 微生物固定化担体PVAゲル(公知日不明)(引用文献9)
J.株式会社クラレ/クラレアクア株式会社、微生物固体化担体による排水処理システム、月刊「産業と環境」、発行所株式会社産業と環境、2012年5月1日発行、5月号、通巻474号、95-98ページ(引用文献10)
K.Du Phuong Khanh, studies on COD Removal Using Poly(Vinyl Alchol)-Gel Beads as Biom ass Carrier in UASB Reactor,熊本大学学術レポジトリ(2012-03-23)
L.栗田工業株式会社プラントグループ 北川幹夫等、高効率型嫌気性処理の開発と応用事例、紙パ技協誌、1990年6月、第44巻第6号、672-685頁
M.特開平6-142682号公報
N.神鋼フアウドラー 野中等、生物膜ろ過(BCF)による研摩排水処理、神鋼フアウドラー技報、1987/3、Vol.31 No.1、40-44頁(当審注:「ろ過」の「ろ」は、「さんずい」と「戸」からなる漢字を代用するものである。)

(1)本願発明1について
本願発明1は、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」という事項を有するものであるところ、刊行物A(引用文献1)、刊行物B(引用文献2)、刊行物C(引用文献3)、刊行物E(引用文献4)、刊行物F(引用文献5)、刊行物H(引用文献8)、刊行物I(引用文献9)、刊行物J(引用文献10)にそれぞれ記載の事項は、上記「第4」「第5」からして、いずれもが、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであり、また、刊行物D、G、K、M、Nに記載の事項についても、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であるか不明なものであり、また、刊行物Lに記載の事項は、「処理水のTOCが100ml/l以下を保つように負荷量を上昇させ、運転110日目にはTOC負荷5kg-C/m^(3)・d(約44kg-CODcr/m^(3)・d)の高負荷でも処理は有効であ」(31頁下から9行?同4行)るものであるものの、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」であることの明示はない。
そうすると、刊行物AないしNに記載の事項より、本願発明1の発明特定事項の「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」を導き出すことはできない、というべきである。
したがって、本願発明1は、刊行物AないしNに記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

(2)本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、本願発明1と同じく、「担体あたりのTOC負荷9kg/m^(3)/d以上」という事項を有するものであるので、本願発明1と同じく、刊行物AないしNに記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。

第7-2 小括
上記「第7-1」からして、本願発明1ないし8は、刊行物等提出書における拒絶すべき理由によって拒絶することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-02-13 
出願番号 特願2012-167335(P2012-167335)
審決分類 P 1 8・ 55- WY (C02F)
P 1 8・ 537- WY (C02F)
P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池田 周士郎  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 山崎 直也
中澤 登
発明の名称 嫌気性生物処理方法および嫌気性生物処理装置  
代理人 特許業務法人YKI国際特許事務所  
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