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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1348644
審判番号 不服2017-15738  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-24 
確定日 2019-02-07 
事件の表示 特願2017- 35622号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018-139801号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成29年2月28日の出願であって、同年4月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月6日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月14日付け(発送日:同年7月25日)で拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年6月26日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月30日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願請求項1に係る発明
平成30年8月30日付け手続補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、当該補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は次のとおりのものである(以下「本願発明」という。A?Fは分説のため当審にて付与した。)。

「A 遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射することによって、遊技を行う遊技機において、
B 前記遊技領域には、
B1 前記遊技領域を流下する前記遊技球が入球可能な複数の入球口と、
B2 前記入球口の上流側に立設されて、前記遊技領域を流下する前記遊技球が衝突することによって、前記遊技球の進行方向を変更する複数の障害釘と
が設けられており、
C 前記複数の障害釘の一部は、前記遊技球が通過し得ない間隔で列状に立設されることによって障害釘列を複数形成すると共に、少なくとも1つの前記障害釘列には、少なくとも一箇所に前記遊技球が通過し得る隙間が形成されており、
D 前記遊技球が通過し得る隙間を有する前記障害釘列の下側には、前記遊技盤の盤面からの高さが前記障害釘の頂部の高さの位置に、前記障害釘列の下側を保護する前板が設けられており、
E 前記前板は、前記障害釘列の前記障害釘とは離間させた状態で設けられていると共に、前記前板からは、前記障害釘列の前記隙間を形成する2本の前記障害釘の頂部の間の位置まで、突片が延設されている
F ことを特徴とする遊技機。」

第3 当審の平成30年6月26日付け拒絶理由の概要
当審の平成30年6月26日付け拒絶理由の概要は以下のとおりである。

1)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2)本件出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引 用 文 献 等 一 覧
1.特開2015-47352号公報
2.特開2012-20076号公報
3.特開2008-188259号公報(周知技術を示す文献)
4.実願昭60-190661号(実開昭62-99283号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)
5.特開2013-31583号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1の記載
(1) 当審の平成30年6月26日付け拒絶理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2015-47352号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0007】

【発明が解決しようとする課題】

【0013】
従って、従来の非開閉式の入賞手段又は釘調整方式では、命釘の根元側が正規の適正な間隔であることが前提であり、その根元側の間隔にバラツキがある限り適正な入賞率に容易に調整することはできないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、進入部側の障害手段のバラツキ等に関係なく遊技球の入賞率を適正に容易に調整できる弾球遊技機を提供することを目的とする。」

イ 「【0022】
図1?図9は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示する。パチンコ機1は、図1、図2に示すように、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側にヒンジ3により縦軸廻りに開閉自在に枢着された前枠4とを備えている。前枠4の前側にはガラス扉5と前面板6とが上下に配置され、前枠4に対してヒンジ3と同じ側のヒンジ7により縦軸廻りに開閉自在に枢支されている。

【0027】
ガイドレール18は外レール18aと内レール18bとを有する。画像表示手段20は遊技領域19の左右方向の略中央の上部に配置され、特別図柄始動手段22と可変入賞手段23は画像表示手段20の下側に上下に配置されている。普通入賞ユニット24は後述のように非開閉式の入賞口を複数備え、可変入賞手段23の左右両側に設けられている。特別図柄始動手段22は非開閉式入賞口22aと開閉式入賞口22bとを有する。普通図柄始動手段21は画像表示手段20とガイドレール18との間に配置されている。

【0038】
左右の普通入賞ユニット24には、遊技領域19の中央側ほど低くなるように左右方向及び上下方向に位置を変えて2個又は3個の第1入賞口38?第3入賞口40が設けられている。また画像表示手段20と普通入賞ユニット24との間には、左右両側から中央側へと遊技球を誘導する誘導釘列41が普通入賞ユニット24の入賞口38?40の配列に沿って斜め下方向に設けられている。なお、左右の普通入賞ユニット24は入賞口数が同数のものでもよい。
【0039】
誘導釘列41は上下方向に略平行に複数設けられており、その各誘導釘列41は複数本の遊技釘を一列状に配置して構成された単位釘列41aを、途中の途切れ部41bを介して複数組配列したものである。単位釘列41aと途切れ部41bは全体として略千鳥状に配置され、単位釘列41aと途切れ部41bとを経て遊技球を落下させながら、順次中央側へと誘導するように構成されている。」

ウ 「【0042】
第1口部材44は、図3?図5、図7及び図8に示すように、上向きに開口する非開閉式の第1入賞口38を有し、係合爪及びネジ等により取り付け板43の前面に着脱自在に装着されている。第1入賞口38は取り付け板43の裏側に一体に形成された誘導通路51を経て、裏板47の裏側に下向きに一体に形成された排出通路52に連通され、この第1入賞口38に入賞した遊技球を誘導通路51、排出通路52を経て遊技盤17の裏側へと誘導し排出するようになっている。裏板47の裏側には排出通路52を通過する遊技球を検出するための第1検出スイッチ53が設けられている。
【0043】
第2口部材45は、図3、図4、図6?図8に示すように、上向きに開口する非開閉式の第2入賞口39と、中央上向きに開口する非開閉式の第3入賞口40と、各入賞口39,40に入賞した遊技球が合流する合流通路54とを左右に有し、係合爪及びネジ等により取り付け板43の前面に着脱自在に装着されている。合流通路54は第3入賞口40側の下方に配置され、第2入賞口39は取り付け板43の前側でL字状の通路55を介して合流通路54に接続されている。」

エ 「【0052】
補強手段66,67は、図2?図8に示すように、後側に開口する中空箱状の突出体66a,67aを有し、規制手段64,65に対して遊技領域19の中央側に配置され、その突出体66a,67aの一側が規制手段64,65の端部側に、下側が取り付け板43の上端部側に夫々一体に形成されている。突出体66a,67aは口部材44,45と同程度又は若干低い程度の突出高さを有し、その規制手段64,65側には遊技球を入賞口38,39へと案内する案内部66b,67bと、口部材44,45の側壁44b,45bとの干渉を避ける退避部66c,67cとが設けられている。
【0053】
案内部66b,67bは上下方向に平坦状に形成され、口部材44,45の側壁44b,45bの内面と略面一状に設けられている。なお、案内部66b,67bは口部材44,45の側壁44b,45bの内面から入賞口38,39側に若干突出してもよいし、側壁44b,45bの内面から若干離して設けてもよい。また案内部66b,67bは突出又は凹入方向に湾曲状又は屈曲状でもよい。案内部66b,67bは遊技球を入賞口38,39へと案内できるものであれば十分である。規制手段64,65及び補強手段66,67の上端は最下部の誘導釘列41の下側に近接し且つ誘導釘列41の傾斜に沿って傾斜状になっている。

【0055】
このパチンコ機での遊技に際して、発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込むと、その遊技球は遊技盤17の前面に沿って遊技領域19内を落下する間に普通図柄始動手段21を通過するか、普通入賞ユニット24の入賞口38,39,40、特別図柄始動手段22、可変入賞手段23の何れかに入賞する。また入賞口38,39,40等に入賞せずに落下した遊技球は、内レール18bにより案内されてアウト口27から排出されて行く。」

オ 「【0059】
画像表示手段20と内レール18bとの間を経て左側の普通入賞ユニット24の案内台68上に落下する遊技球があった場合、その遊技球は例えば最下段の誘導釘列41等に沿って遊技領域19の中央側に案内されながら、途切れ部41bから内レール18bへと落下するか、途切れ部41bから落下して第1入賞口38又は第2入賞口39へと入賞するか、何れにも入賞せずに内レール18bへと落下する。内レール18b上に落下した遊技球は、内レール18bに沿ってアウト口27へと案内される。」

カ 「【0079】
図20?図22は本発明の第7の実施形態を例示する。この実施形態では、普通入賞手段69の入賞口38に対応して、その上側の遊技盤17に2本の遊技釘62a,62bが設けられている。また口部材44には、入賞口38の前側の前側壁44cから遊技釘62a,62b間へと上向きに突出する規制手段64が設けられている。規制手段64は上部に規制部64aを、下部に傾斜案内部64bを夫々有し、その規制部64aにより、遊技盤17の前面との間の前後幅を規制するようになっている。他の構成は各実施形態と同様である。

【0082】
規制手段64,65は入賞口38,39,40、通過口72等の球入口へと遊技球が進入し始める進入路の進入部60,61側の前後幅を規制できればよく、各実施形態に例示するように進入部60,61の後側又は前側の何れに規制手段64,65を配置してもよいし、前後両側に規制手段64,65を配置してもよい。また規制手段64,65は進入部60,61側の前後幅を規制できるものであれば、各実施形態に例示する構造以外のものでもよい。」

キ 「【図3】



ク 「【図20】



ケ 「【図21】



コ 「【図22】



(2) 上記記載から、引用文献1には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)の【0027】の「可変入賞手段23は画像表示手段20の下側に上下に配置されている」、「普通入賞ユニット24は」「可変入賞手段23の左右両側に設けられている」との記載から、「普通入賞ユニット24」は「画像表示手段20の下側に」「設けられている」と認められる。さらに、上記(1)の【0038】の「画像表示手段20と普通入賞ユニット24との間には」、「誘導釘列41が」「設けられている」との記載から、「誘導釘列41」は「普通入賞ユニット24」の上側、つまり上流側に「設けられている」と認められる。

イ 上記(1)の【0059】の「遊技球は例えば最下段の誘導釘列41等に沿って遊技領域19の中央側に案内されながら」、「途切れ部41bから落下して第1入賞口38又は第2入賞口39へと入賞する」との記載から、「遊技球は」、「途切れ部41bから落下して第1入賞口38又は第2入賞口39へと入賞するようになっており」、「単位釘列41a」を構成する「障害釘」の間から落下するものではないことは明らかである。すなわち、「単位釘列41a」を構成する「遊技釘」の間隔が、「遊技球」が「落下し」得ない間隔となっていることは明らかである。

ウ 上記(1)の【0079】の「他の構成は各実施形態と同様である。」との記載から、「第7の実施の形態」は、「入賞口38」だけでなく、「第1の実施形態」が有する「入賞口39」や「入賞口40」も有しており、また、「遊技球」を各「入賞口」まで導くための構成は、「第1の実施の形態」と同様であると認められる。

エ 上記(1)の【図3】には、「中空箱状の突出体66a,67aを有」し、「その突出体66a,67aの一側が規制手段64,65の端部側に」「一体に形成され」、前記「突出体66a,67a」が「口部材44,45と同程度の突出高さを有」する「補強手段66,67」であって、「上端」が「最下部の誘導釘列41の下側に近接し且つ誘導釘列41の傾斜に沿って傾斜状になっている」「補強手段66,67」(【0052】、【0053】)が、「遊技釘列41」に近接した状態で記載されているから、当該「補強手段66,67」は、「遊技釘列41」の頂部の下側を保護する機能を有していると認められる。
ここで、上記「補強手段66,67」の「突出体66a、67a」が「一体に形成される」「規制手段64,65」は、【図3】に示されるように、「入賞口38,39」を有する「口部材44,45」(【0042】、【0043】)に対して設けられるものであるから、「補強手段66,67」は、「入賞口38,39」を有する「口部材44,45」に対して設けられていると認められる。
したがって、引用文献1には、「口部材44,45と同程度の突出高さを有する中空箱状の突出体66a,67aを有する補強手段66,67であって、上端が最下部の誘導釘列41の下側に近接し且つ誘導釘列41の傾斜に沿って傾斜状になっており、遊技釘列41の頂部の下側を保護する補強手段66,67を、入賞口38,39を有する口部材44,45に対して設けること」(以下、「引用文献1記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

オ 上記(1)の【図20】の記載から、遊技釘62aと遊技釘62bは、それらの中心軸を通る直線がほぼ水平となるように、つまり、略水平に配置されていると認められる。
また、【図20】の記載から、遊技釘62aと遊技釘62bは、それぞれ、規制手段64の左側と右側に位置するものと認められる。
そして、【発明が解決しようとする課題】の欄の【0013】の記載から、【図20】の遊技釘62aと遊技釘62bは、入賞口38の命釘になっていると認められる。

カ 上記(1)の【図21】及び【図22】の記載から、前側壁44cは、取り付け板43に、遊技盤17からの高さが遊技釘62a,62bの略頂部の高さとなるように設けられていると認められる。

キ 上記(1)の【図20】及び【図21】の記載から、前側壁44cは、遊技釘62a,62bの頂部の下側に配置されるように設けられていると認められる。

ク 上記カ、キに記載のとおり、前側壁44cは、遊技盤17からの高さが遊技釘62a,62bの頂部の高さとなり、遊技釘62a,62bの頂部の下側に配置されるようになっているから、遊技釘62a,62bの頂部の下側を保護する機能を有していると認められる。

ケ 上記(1)の【図20】の記載から、前側壁44cは、遊技釘62a,62bとは離間させた状態で設けられていると認められる。

コ 上記(1)の記載事項、及び、上記(2)ア?ウ、オ?ケの認定事項を総合すると、引用文献1には、第7の実施形態を中心に、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる(記号a?fは、本願発明の記号A?Fに対応させて付した。( )内は引用文献1の対応箇所を示している。)。

「a 遊技に際して、発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込むと、その遊技球は遊技盤17の前面に沿って遊技領域19内を落下するパチンコ機において(【0055】、上記ウ)、
b 前記遊技領域19には、
b1 前記遊技領域19内を落下する前記遊技球が入賞する普通入賞ユニット24の入賞口38?40と(【0055】、上記ウ)、
b2 遊技領域19の中央側ほど低くなるように左右方向及び上下方向に位置を変えて2個又は3個設けられた第1入賞口38?第3入賞口40の配列に沿って斜め下方向に設けられ、普通入賞ユニット24の上流側に設けられる誘導釘列と(【0038】、上記ア、ウ)、
が設けられており、
c 誘導釘列41は上下方向に略平行に複数設けられており、その各誘導釘列41は複数本の遊技釘を遊技球が落下し得ない間隔で一列状に配置して構成された単位釘列41aを、途中の途切れ部41bを介して複数組配列したものであり、単位釘列41aと途切れ部41bとを経て遊技球を落下させながら、順次中央側へと誘導するように構成されており(【0039】、上記イ、ウ)、遊技球は例えば最下段の誘導釘列41等に沿って遊技領域19の中央側に案内されながら、途切れ部41bから落下して第1入賞口38又は第2入賞口39へと入賞するようになっており(【0059】、上記ウ)、
d 取り付け板43には、遊技盤17からの高さが2本の略水平に配置された遊技釘62a,62bの略頂部の高さとなり(上記オ、カ)、前記遊技釘62a,62bの頂部の下側に配置され(上記キ)、前記遊技釘62a,62bの下側を保護するように(上記ク)、入賞口38を有する口部材44(【0042】、上記ウ)の前側壁44cが設けられており、
e 前記前側壁44cは、前記遊技釘62a,62bとは離間させた状態で設けられると共に(上記ケ)、前記遊技釘62a,62b間へと上向きに突出する規制手段64が設けられており(【0079】)、前記遊技釘62aと前記遊技釘62bは、それぞれ、前記規制手段64の左側と右側に位置し、入賞口38の命釘となっている(上記オ)、
f パチンコ機。」

2 引用文献2の記載
(1) 当審の平成30年6月26日付け拒絶理由において上記第3で示したとおり提示され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2012-20076号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0007】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術は、命釘が係合部によって隠れることになるため、盤面の装飾の構成によっては美観を損ねるおそれがあるばかりか、遊技球の入賞割合が低い場合には、遊技者は命釘が極端に狭められているのではないかといった不信感を抱くおそれがあった。
【0008】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、命釘に対する視認性を確保し、美観を損ねることなく、簡易な構成で、遊技の興趣の低下を抑止することができるぱちんこ遊技機を提供することを目的とする。」

イ 「【0082】
次に、本発明の規制部材に相当する垂直規制部530について説明する。図5-2に示すように、一方の命釘(以下「第1釘500a」という)の近傍であり且つ上方に設けられ、遊技球をゲート108またはゲート108を除く領域に導く寄せ釘540が設けられている。垂直規制部530は、ゲート108と一体化して設けられている。垂直規制部530は、具体的には、ゲート108の第1突設部522上に、上方向に向けて突設されている。なお、これに限らず、垂直規制部530は、ゲート108と一体化したものでなく、遊技盤101上に取り付けるようにしてもよい。
【0083】
また、垂直規制部530は、命釘500(第1釘500aおよび第2釘500b)が下方向へ傾倒することを規制する。垂直規制部530は、少なくとも第1釘500aに対して第1釘500aの下方から近接配置されて、第1釘500aが寄せ釘540から離れる下方向へ傾倒することを規制するものであればよい。
【0084】
垂直規制部530は、命釘500の側に配置される一方の上端側が下端側に比べて断面の領域が狭くなる形状となっており、流下する遊技球の妨げとならないようにしている。また、下端側が上端側よりも断面の領域が大きい形状であるため、垂直規制部530を高強度に保つことができるようになっている。垂直規制部530は、図示した形状他に限らず、一方の上端側が下端側に比べて断面の領域が狭くなるものであればよく、例えば、凸形状のものやや台形状のものであってもよい。
【0085】
命釘500同士の間隔は、通常、内寸で11.4mmであるが、本実施の形態では、より安定してゲート108への通過を可能にするため、内寸で12.25mmとしている。垂直規制部530は、金属製、木製、樹脂製など、いずれであってもよいが、命釘500の傾倒を規制するという観点から、一定の強度のあるものとしている。
【0086】
さらに、図7-2に示すように、垂直規制部530は、命釘500と所定量の間隙βをもって近接している。上述したように、釘の角度を変更させる場合、釘には元に戻ろうとする力が作用するため、設定しようとする所望の傾倒よりもさらに釘を傾倒させなければならない。本実施の形態において、間隙βは、遊技の興趣を損なわない程度に、すなわち、ゲート108近傍を流下する遊技球が一定の割合でゲート108を通過することが見込める程度に、命釘500に対して若干の下方向への傾倒を許容するものである。」

(2) 上記(1)の記載事項から、引用文献2には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

「ぱちんこ遊技機において、命釘500が下方へ傾倒することを規制するため、垂直規制部530をゲート108と一体化して設け、垂直規制部530を命釘500と所定の間隙βをもって近接させること」(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)

第5 周知技術
1 引用文献3の記載
(1) 本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-182501号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0030】
図2に示すように、遊技領域R1のうち表示装飾枠23の右下領域には、遊技領域R1の右側の側部領域を流下してきた遊技球を遊技球を第2始動入賞口14Bに案内するための右下端ガイド部95が設けられている。右下端ガイド部95は、樹脂製のガイド板93と、複数の釘90から構成されたガイド釘列94とからなる。ガイド板93は、ガイドレール12の右下部から遊技領域R1の左右方向の中央寄り位置まで緩やかに傾斜して真っ直ぐ延びている。なお、ガイド釘列94は、ガイド板93の下端部から第2始動入賞口14Bの側縁部までガイド板93より急な角度で傾斜して延びている。また、ガイド釘列94の途中には、遊技球が通過可能な断絶部94Dが形成され、その断絶部94Dを通過した遊技球はアウト口16に向かうようになっている。

イ 「【0037】
上記した第1及び第2の始動入賞口14A,14B、一般入賞口20A,20Bに遊技球が入賞した場合には、パチンコ遊技機の前面に備えた図示しない受け皿に例えば、3個の遊技球が賞球として払い出され、第1と第2の大入賞口15,31に遊技球が入賞した場合には、15個の遊技球が賞球として払い出される。この賞球を払い出すときの制御プログラムや払出装置が、本発明の「賞球払出手段」に相当する。遊技者は、以下説明するパチンコ遊技機の遊技内容の下で、より多くの賞球を獲得することを競って遊技を行う。」

ウ 「【図2】



(2) 上記(1)の記載事項から、引用文献3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

【0030】から、【図2】において符号「90」が付されている白丸で示される部材は釘であると認められる。そして、【図2】から、【0037】に記載される一般入賞口20Bの左上の3本の釘からなる釘列と、上方の3本の釘からなる釘列との間を遊技球が通過できるようになっていること、前記釘列の下側に一般入賞口20Bが設けられていることが見て取れる。また、一般入賞口20Bの一方の命釘は前記釘列を構成する釘であり、他方の命釘は前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平になるように配置された釘であると認められる。

2 引用文献4の記載
(1) 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-255723号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0067】
誘導釘65は、大入賞口16側に配設される複数本(本実施形態では6本)の障害釘65aで構成された第1誘導部66と、遊技領域4の一側縁側(図15中、右側縁側)に配設される複数本(本実施形態では11本)の障害釘65aで構成された第2誘導部67とを備え、第1誘導部66と第2誘導部67との間には、遊技球が誘導釘65の下方へ通過可能な誘導通過空間部68を設けて構成されている。そして、遊技領域4のうち誘導通過空間部68の下方(直下)には、入賞を発生させずに遊技球を遊技盤1の裏側へ回収するアウト穴として機能する入賞調整装置19を備えている。このような構成の誘導釘65および入賞調整装置19を備えた遊技盤1において大入賞口16が開状態であれば、誘導釘65上を転動して誘導される遊技球が途中の誘導通過空間部68に落下して入賞調整装置19に進入するのか、それとも、誘導通過空間部68に落下せずに誘導釘65の傾斜下端まで到達して大入賞口16に入賞するのかに注目して遊技者が遊技を楽しむことができる。したがって、遊技者の遊技意欲を削ぎ難くしながらも、遊技店の利益を確保することができる。
【0068】
ところで、上記実施形態では、入賞調整装置19をアウト穴として機能させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記した入賞調整装置19をアウト穴としてではなく、遊技球の進入により入賞を発生させる入賞口として機能させ、複数個の遊技球が入賞したことにより、賞球を払い出す払出条件が成立するように設定してもよい。また、賞球の払い出し単位は、1個でもよいし予め設定された複数個であってもよい。例えば、入賞調整装置19への複数個の遊技球の入賞に対して、1個の賞球の払い出しを行ってもよいし、あるいは入賞調整装置19への入賞数よりも少ない数の賞球を1組として払い出すようにしてもよい。」

イ 「【図15】



(2) 上記(1)の記載事項から、引用文献4には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

【図15】から、【0067】に記載される第1誘導部68と第2誘導部67の直線状に配置された釘列の部分の間には、遊技球が通過し得る誘導通過空間部68が設けられ、前記釘列の下側に入賞調整装置19が設けられていることが見てとれる。また、入賞調整装置19の一方の命釘は前記釘列を構成する釘であり、他方の命釘は前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平になるように配置された釘であると認められる。

3 引用文献5の記載
(1) 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-19267号公報(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0016】また、この実施の形態において、図1に示すように、減速用凸部75は、役物本体51の開口窓55の下部外側の近傍位置と、その位置から下流側に所定距離だけ隔てた位置との各2箇所において、各傾斜通路70の邪魔物としてそれぞれ存在している。以下、役物本体51の開口窓55の下部外側の近傍位置に形成された減速用凸部75を第1の減速用凸部76といい、その第1の減速用凸部76から下流側に所定距離だけ隔てた位置に形成された減速用凸部75を第2の減速用凸部77という。また、この実施の形態において、図3に示すように、傾斜誘導部71を構成している誘導釘列72上を流下する球Bを遊技盤10の前面側に誘導しながら流下案内するために、遊技盤10側が低く前端(釘頭部)側が高い傾斜状をなして誘導釘列72の各寄せ釘が打ち込まれている。そして、図2と図3に示すように、誘導釘列72上を流下する球Bは、遊技盤10の前面側に誘導されながら流下するとともに、第1の減速用凸部76と、第2の減速用凸部77にそれぞれ接触して前側に移行することで、略ジグザグ状をなして流下するようになっている。
【0017】この実施の形態に係る遊技機としてのパチンコ機は上述したように構成される。したがって、遊技の際、図示しない球発射装置から球発射通路14に発射された球B(パチンコ球)は、遊技領域15の上部に打ち出され、多数の釘17、風車器18等に案内されながら遊技領域15の下部に向けて流れる。遊技領域15に打ち出された球Bのうち、一部の球Bはゲート器20の普通図柄始動用ゲート口を通過したり、あるいは、入球装置25、一般入賞口37等の入球口に流入する。また、これら入球口に流入しなかった多くの球Bは遊技領域15の下部のアウト口33に流入し、機外に排出される。」

イ 「【図1】



(2) 上記(1)の記載から、引用文献5には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

【0016】から、【図1】において符号「72」が付されている白丸で示される部材は釘であると認められる。そして、【図1】から、【0017】に記載される一般入賞口37(左上のもの)の左上の8本の釘からなる釘列と、右上の6本の釘からなる釘列との間をパチンコ球が通過できるようになっていること、前記釘列の下側に一般入賞口37が設けられていることが見て取れる。また、一般入賞口37の一方の命釘は前記釘列を構成する釘であり、他方の命釘は前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平になるように配置された釘であると認められる。

4 引用文献6の記載
(1) 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-117109号公報(以下、「引用文献6」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0011】上記誘導釘群21は、例えば、図1に示すように、4本の釘が連設された釘群21a,21b,21cが組み合わされて連設されて成るものである。上記釘群21aと開状態におけるチューリップ羽根5aの先端位置Dとの間は、球が通過可能な間隔に設定されている。また、釘群21aと釘群21bの間も、球が通過可能な間隔に設定され、この間隔を介して球が普通図柄始動入賞装置6に誘導されることが可能となっている。また、釘群21bと釘群21cの間も、球が通過可能な間隔に設定されている。」

イ 「【図1】



(2) 上記(1)の記載から、引用文献6には、次の技術事項が記載されているものと認められる。

【0011】から、【図1】において符号「21」が付されている白丸で示される部材は釘であると認められる。そして、【図1】から、【0011】に記載される普通図柄始動入賞装置6(右側のもの)の右上の列状に形成された釘群21bと、左上の列状に形成された釘群21aとの間を球が通過できるようになっていること、前記釘列の下側に普通図柄始動入賞装置6が設けられていることが見て取れる。また、普通図柄始動入賞装置6の一方の命釘は前記釘列を構成する釘であり、他方の命釘は前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平になるように配置された釘であると認められる。

5 上記1?4からみて、「遊技機において、遊技球が通過し得る隙間を有する釘列の下側に入球口を設け、該入球口の一方の命釘を前記釘列を構成する釘とし、他方の命釘を前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平に配置された釘とすること」(以下、「周知技術」という。)は周知技術であると認められる。

第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する(対比にあたっては、本願発明の構成A?Fと引用発明の構成a?fについて、それぞれ(a)?(f)の見出しを付して行った。)。

(a) 引用発明において、「発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込む」ことは、本願発明において、「遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射すること」に相当する。
そして、引用発明では、「発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込む」ことは、「遊技に際して」行われるから、「遊技」は、「発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込む」ことによって行われるものと認められる。
したがって、引用発明の「遊技に際して、発射手段により遊技盤17の遊技領域19に遊技球を打ち込む」「パチンコ機」は、本願発明の「遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射することによって、遊技を行う遊技機」に相当する。

(b) 引用発明の「遊技領域19」は、本願発明の「遊技領域」に相当する。

(b1) 引用発明の「前記遊技領域19内を落下する前記遊技球が入賞する普通入賞ユニット24の入賞口38?40」は、本願発明の「前記遊技領域を流下する前記遊技球が入球可能な複数の入球口」に相当する。

(b2) 引用発明において、「誘導釘列41」に「遊技球」が衝突すれば、進行方向が変更されることは自明であり、また、「普通入賞ユニット24」は「入賞口38?40」を有するから、引用発明の「遊技領域19の中央側ほど低くなるように左右方向及び上下方向に位置を変えて2個又は3個設けられた第1入賞口38?第3入賞口40の配列に沿って斜め下方向に設けられ、普通入賞ユニット24の上流側に設けられる誘導釘列」を構成する複数の釘は、本願発明の「前記入球口の上流側に立設されて、前記遊技領域を流下する前記遊技球が衝突することによって、前記遊技球の進行方向を変更する複数の障害釘」に相当する。

(c) 引用発明において、「上下方向に略平行に複数設けられており、その各誘導釘列41は複数本の遊技釘を遊技球が落下し得ない間隔で一列状に配置して構成された単位釘列41a」を設けることは、本願発明において、「前記遊技球が通過し得ない間隔で列状に立設されることによって障害釘列を複数形成する」ことに相当する。
また、引用発明において、「単位釘列41a」が「途切れ部41b」を「介して」設けられていることは、本願発明において、「少なくとも1つの前記障害釘列には、少なくとも一箇所に前記遊技球が通過し得る隙間が形成されて」いることに相当する。

(d) 引用発明において、「遊技盤17からの高さが2本の略水平に配置された遊技釘62a,62bの略頂部の高さとなり、前記遊技釘62a,62bの頂部の下側に配置され、前記遊技釘62a,62bの下側を保護するように、入賞口38を有する口部材44の前側壁44cが設けられて」いることと、本願発明において、「前記遊技球が通過し得る隙間を有する前記障害釘列の下側には、前記遊技盤の盤面からの高さが前記障害釘の頂部の高さの位置に、前記障害釘列の下側を保護する前板が設けられて」いることとは、「前記障害釘の下側には、前記遊技盤の盤面からの高さが前記障害釘の頂部の高さの位置に、前記障害釘の下側を保護する前板が設けられて」いる点で共通する。

(e) 引用発明において、「前記前側壁44cは、前記遊技釘62a,62bとは離間させた状態で設けられる」ことと、本願発明において、「前記前板は、前記障害釘列の前記障害釘とは離間させた状態で設けられている」ことは、「前記前板は、前記障害釘とは離間させた状態で設けられている」点で共通する。
引用発明において、「前記遊技釘62a,62b間へと上向きに突出する規制手段64が設けられて」いることと、本願発明において、「前記前板からは、前記障害釘列の前記隙間を形成する2本の前記障害釘の頂部の間の位置まで、突片が延設されている」ことは、「前記前板からは、2本の前記障害釘の頂部の間の位置まで、突片が延設されている」点で共通する。

(f)引用発明の「パチンコ機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

上記(a)?(f)の検討により、本願発明と引用発明とは、

[一致点]
「A 遊技盤に形成された遊技領域に向けて遊技球を発射することによって、遊技を行う遊技機において、
B 前記遊技領域には、
B1 前記遊技領域を流下する前記遊技球が入球可能な複数の入球口と、
B2 前記入球口の上流側に立設されて、前記遊技領域を流下する前記遊技球が衝突することによって、前記遊技球の進行方向を変更する複数の障害釘と
が設けられており、
C 前記複数の障害釘の一部は、前記遊技球が通過し得ない間隔で列状に立設されることによって障害釘列を複数形成すると共に、少なくとも1つの前記障害釘列には、少なくとも一箇所に前記遊技球が通過し得る隙間が形成されており、
D’ 前記障害釘の下側には、前記遊技盤の盤面からの高さが前記障害釘の頂部の高さの位置に、前記障害釘の下側を保護する前板が設けられており、
E’ 前記前板は、前記障害釘とは離間させた状態で設けられていると共に、前記前板からは、2本の前記障害釘の頂部の間の位置まで、突片が延設されている
F 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点](構成D、E)
本願発明では、
「前板」は、「前記障害釘列の下側を保護」し、「前記障害釘列の下側」に「設けられ」るものであり、
「突片」は、「前記障害釘列の前記隙間を形成する2本の前記障害釘」「の間の位置まで」「延設され」るものであるのに対して、
引用発明では、
「前側壁44c」(本願発明の「前板」に相当)は、「遊技釘62a,62bの下側を保護」し、「遊技釘62a,62bの」「下側に配置される」ものであり、
「規制手段64」(本願発明の「突片」に相当)は、「遊技釘62a,62b間へと上向きに突出する」ものであるものの、
「2本の略水平に配置された遊技釘62a,62b」が「誘導釘列41」(本願発明の「障害釘列」に相当)の「途切れ部41b」(本願発明の「隙間」に相当)を形成しているか否か、また、「誘導釘列41」を「保護」しているのか否か不明であり、本願発明の上記構成を有するとはいえない点。

第7 当審における判断
1 相違点について
引用文献1には、「第4 1(2)エ」に記載のとおり、「口部材44,45と同程度の突出高さを有する中空箱状の突出体66a,67aを有する補強手段66,67であって、上端が最下部の誘導釘列41の下側に近接し且つ誘導釘列41の傾斜に沿って傾斜状になっており、遊技釘列41の頂部の下側を保護する補強手段66,67を、入賞口38,39を有する口部材44,45に対して設けること」(引用文献1記載の技術事項)が記載されている。
そして、上記「第5 5」に記載のとおり、「遊技機において、遊技球が通過し得る隙間を有する釘列の下側に入球口を設け、該入球口の一方の命釘を前記釘列を構成する釘とし、他方の命釘を前記釘列の下側に配置された釘であって、前記一方の命釘と略水平に配置された釘とすること」(周知技術)は、本願出願前に周知の技術事項である。
ここで、引用発明と上記周知技術とは、いずれも遊技釘に関する技術である点で共通するものである。
また、「第4 2(2)」に記載された引用文献2記載の技術事項のように、釘の下側に部材を設けることは、本願出願前に普通に行われていることである。
したがって、引用発明に上記周知技術を適用し、命釘となる「2本の水平に配置された遊技釘62a、62b」のうち「規制手段64」の右側にある「遊技釘62b」を、「途切れ部41b」の右側(下流側)の「誘導釘列41」を構成する障害釘のうちの最も上流に配置されている障害釘とし、「規制手段64」の左側にある「遊技釘62a」を、「途切れ部41b」の左側(上流側)の「誘導釘列41」の直線状の釘列の部分のうちの最も下流に配置された釘の略鉛直方向下側であって、上記「遊技釘62b」と略水平に配置された釘とすることで、これらの「遊技釘62a」と「遊技釘62b」とを含む釘列(本願発明の「隙間を有する」「障害釘列」に相当)の下側に、これらの「遊技釘62a」と「遊技釘62b」を命釘とする「入賞口38」を設けるようにし、その際、上記引用文献1記載の技術事項に倣って、上記「規制手段64」を補強する(もしくは、引用文献1の【0082】に記載されるように、「後」「側」にさらに設けた「規制手段64」を補強する)「補強手段66」を、引用発明における「入賞口38を有する口部材44」の「規制手段64」の右側に設けることで、「遊技釘列41」の下側を保護するようにすることにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 請求人の主張について
請求人は、平成30年8月30日付け意見書において、
「(3)これに対して、補正後の本願の遊技機では、障害釘列の少なくとも一箇所に、遊技球が通過し得る隙間を設け、その障害釘列の下側には、遊技盤の盤面からの高さが障害釘の頂部の高さとなる位置に、前板を設けることによって、障害釘列の下側を保護しています。そして、その前板から、障害釘列の隙間を形成する2本の障害釘の頂部の間の位置まで、突片を延設することによって、それらの2本の障害釘の頂部を保護することとしています。
こうすれば、遊技球が通過可能な隙間を形成する2本の障害釘の下側と、それら2本の障害釘の内側(突片が存在する側)とを保護するだけでなく、それら2本の障害釘の外側も、遊技球が通過し得ない間隔で立設された障害釘によって保護されています。このため、隙間を形成する2本の障害釘が外側から強い力で押されて、隙間が狭くなってしまうことがありません。その結果、「長期に亘って遊技機が使用された場合でも、遊技球の入球のし易さが変わらないようにする」ことが可能となります。その一方で、「障害釘列に遊技球が衝突する様子を、遊技者が十分に楽しめるようにする」ことも可能となります。
(4)こうした点については、引用文献1?引用文献5の何れにも、記載はおろか、示唆する内容もありません。従って、如何に当業者と言えども、補正後の本願の請求項1の遊技機を、引用文献1?引用文献5に基づいて容易に成し得たとは言えません。」と主張する。
しかしながら、本願発明の構成は、「1 相違点について」において検討したとおり、引用発明、引用文献1、2記載の技術事項及び周知技術により当業者が容易に想到し得たものである。そして、請求人が主張する効果も、当業者が予測し得たことにすぎない。

3 小括
本願発明により奏される効果は、引用発明、引用文献1、2記載の技術事項及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであり、格別顕著なものとは言えない。
そうすると、上記「1 相違点について」において検討したとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1、2記載の技術事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-29 
結審通知日 2018-12-04 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2017-35622(P2017-35622)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 最首 祐樹  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 濱野 隆
荒井 誠
発明の名称 遊技機  
代理人 三林 大介  

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