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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1348648
審判番号 不服2018-1965  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-13 
確定日 2019-02-07 
事件の表示 特願2017- 92519「積層光学フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日出願公開,特開2017-149162〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成28年10月12日(優先権主張 平成28年2月25日)に出願した特願2016-200974号(以下,「原々出願」という。)の一部を平成29年2月10日に新たな特許出願(特願2017-23219号。以下,「原出願」という。)とし,当該原出願について,その一部を平成29年5月8日にさらに新たな特許出願としたものであって,同年6月22日付けで拒絶理由が通知され,同年8月16日に意見書及び手続補正書が提出され,同年8月25日付けで拒絶理由が通知され,同年10月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月10日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされた。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,平成30年2月13日に請求されたものである。


2 本件出願の請求項1に係る発明
本件出願の請求項1ないし8に係る発明は,平成29年10月30日提出の手続補正書による補正後の請求項1ないし8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,請求項1の記載は次のとおりである。

「回転する一対の貼合ロールの間に,少なくとも一層が剥離可能となるように複数の層が積層された第1の光学フィルムと,接着剤層又は粘着剤層と,第2の光学フィルムとを,前記一対の貼合ロール間を結ぶ方向にこの順に配列した状態で導入して前記第1の光学フィルムと前記第2の光学フィルムとを貼合する,積層光学フィルムの製造方法であって,
貼合時において,
前記接着剤層又は前記粘着剤層の幅は,前記第1の光学フィルムを構成している層のうち前記第2の光学フィルムに最も距離が近い層の幅未満であり,
前記接着剤層又は前記粘着剤層は,幅方向の位置が前記第1の光学フィルムを構成している層のうち前記第2の光学フィルムに最も距離が近い層の存在幅内にあり,
前記第2の光学フィルムを構成している層のうち前記第1の光学フィルムに最も距離が近い層の幅は,前記接着剤層又は前記粘着剤層の幅よりも大きく,
前記第2の光学フィルムを構成している層のうち前記第1の光学フィルムに最も距離が近い層は,前記接着剤層又は前記粘着剤層の存在幅を内包するように位置している,積層光学フィルムの製造方法。」(以下,「本件発明」という。)


3 原査定の拒絶の理由の概要
本件発明に対する原査定の拒絶の理由(以下,「査定理由」という。)は,概略,次のとおりである。
本件発明は,その優先権主張の日より前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その優先権主張の日より前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

前記査定理由において引用された引用例は次のとおりである。
引用文献8:特開2015-161782号公報
引用文献5:国際公開第2015/046471号
引用文献6:特開2004-145282号公報
引用文献9:特開平11-179871号公報


4 引用例
(1)引用文献8
ア 引用文献8の記載
査定理由で引用された引用文献8(特開2015-161782号公報)は,本件出願の優先権主張の日(以下,「本件優先日」という。)より前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献8には次の記載がある。(下線は,後述する引用発明の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光板の製造方法及び偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は,液晶表示装置等の表示装置,とりわけ近年では薄型テレビや各種モバイル機器に広く用いられている。偏光板としては,偏光子の片面又は両面に熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合した構成のものが一般的である。
【0003】
薄型テレビやモバイル機器の普及に伴い,偏光板への薄型化の要求が益々高まっている。薄膜の偏光子を有する偏光板を製造する方法としては,本明細書において「コーティング法」とも呼ぶ,基材フィルムを利用する方法が知られている(例えば,特許文献1)。
【0004】
コーティング法は通常,塗布によって基材フィルム上に樹脂層を形成する工程;延伸,染色を経てこの樹脂層を偏光子層とし,偏光性積層フィルムを得る工程;偏光性積層フィルムの偏光子層上に保護フィルムを貼合する工程;保護フィルム貼合後に基材フィルムを剥離除去する工程を含む。この方法によれば,偏光子層,ひいては偏光板の薄膜化を容易に実現できるとともに,薄膜の偏光子層及びその前駆体となる樹脂層は基材フィルム又は保護フィルムによって常に支持されていて単体で取り扱われることがないので,工程中におけるフィルムの取扱性にも優れている。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
偏光板には,表示装置等に実装したときに晒され得る急激な温度差に対する安定性を保証するために,ヒートショック試験(冷熱衝撃試験)に対する耐久性が要求される。・・・(中略)・・・
【0007】
しかしながら本発明者による検討によって,偏光子層上に保護フィルムを備える偏光板についてヒートショック試験を実施すると,とりわけその偏光板が前述のコーティング法のように基材フィルムを利用して製造されたものである場合に,温度変化による伸縮に耐え切れずに偏光子層が割れる不具合(以下,この不具合を「ワレ」という。)を生じやすいことが明らかとなった。特にこのワレの問題は,偏光板薄型化の要求に答えるために偏光子層を薄膜化した場合や,同じく偏光板薄型化の要求に答えるために偏光子層の片面又は両面に貼合される保護フィルム(特に熱可塑性樹脂フィルムのような比較的剛性の低いフィルム)を薄膜化した結果,保護フィルムによる偏光子層の補強効果が弱くなる場合に顕著である。
【0008】
本発明の目的は,ヒートショック試験においてワレを生じにくい偏光板を製造するための方法,及びヒートショック試験においてワレを生じにくく,急激な温度差に対する耐久性の高い偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は,本発明者による次のような検討成果に基づいている。すなわち,基材フィルム上に偏光子層を形成して偏光性積層フィルムとし,その偏光子層上に保護フィルムを貼合した後に基材フィルムを剥離除去する方法により製造される偏光板において偏光子層に生じるワレが,主として,基材フィルムの剥離除去により露出する偏光子層側の表面が有する微小な凹凸に起因すること,また,この凹凸が基材フィルムにおける偏光子層側の表面状態の影響を受けて生じることを見出した。
【0010】
換言すれば,上記の基材フィルムを利用した製造方法においては,基材フィルムの剥離除去により露出する偏光子層側の表面の形状が基材フィルムにおける偏光子層側表面の形状の影響を受けることは避けられず,その基材フィルムの表面形状を反映したものとなるところ,基材フィルムの表面形状を反映して,基材フィルムの剥離除去により露出する偏光子層側の表面の平滑性が損なわれ,その算術平均粗さRaが大きくなると,ヒートショック試験において,その表面凹凸を起点としたワレを起こしやすくなることが明らかとなった。
【0011】
本発明は,以上のような知見に基づきなされたものであり,次の偏光板の製造方法及び偏光板を提供するものである。
【0012】
[1]基材フィルム面にポリビニルアルコール系樹脂層を形成して積層フィルムを得る工程と,
前記積層フィルムを延伸して延伸フィルムを得る工程と,
前記延伸フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色して偏光子層を形成することにより偏光性積層フィルムを得る工程と,
前記偏光子層における前記基材フィルムとは反対側の面上に,接着剤層を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルムを貼合する工程と,
前記基材フィルムを剥離除去する工程と,
前記基材フィルムを剥離除去することによって現れた面の上に,光硬化性化合物の硬化物からなる厚み3μm以上の保護層を形成する工程と,
を含む,偏光板の製造方法。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば,ヒートショック試験においてワレを生じにくく,急激な温度差に対する耐久性の高い偏光板を提供することができる。」

(イ) 「【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る偏光板の製造方法の一例を示すフローチャートである。
・・・(中略)・・・
【図5】保護フィルム貼合工程で得られる保護フィルム付偏光性積層フィルムの層構成の一例を示す概略断面図である。」

(ウ) 「【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る偏光板の製造方法は,偏光子層の一方の面であって,算術平均粗さRaがより大きい方の面の上に,光硬化性化合物の硬化物からなる所定厚みの保護層を形成することを特徴とする。上述のように,表面の算術平均粗さRaが大きいと,その表面凹凸を起点としてワレを起こしやすくなるが,当該表面を所定厚みの保護層で被覆することにより,ヒートショック試験におけるワレを効果的に抑制することができる。偏光子層の他方の面には,接着剤層を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルムが貼合される。
・・・(中略)・・・
【0031】
本発明の範囲を制限するものではないが,偏光板における偏光子層側の面の表面凹凸が起点となってワレを生じるメカニズムは次のようなものであると推定される。偏光子層側の面に偏光子層の厚みよりも十分に小さい凹凸が存在する場合,その面に接着剤を用いて保護フィルムを貼合したり,その面に粘着剤層を介してガラス基板を貼合したりする際に人間の目や欠陥検査器等では検出できないほどの小さな空隙部を生じてしまうことがある。この空隙部のサイズは数μm程度と小さいため,空隙部を形成する偏光子層部分は,偏光子層の持つ収縮応力をそのまま維持していると考えられる。一方で,空隙部の存在する箇所は,接着剤層や粘着剤層を介した保護フィルム又はガラス基板による補強効果を享受できないので,当該箇所は偏光板の中でも特に脆弱部として存在し,ワレの起点になりやすいと考えられる。実際,ワレを起こした偏光板の断面を走査型電子顕微鏡等で解析すると,ワレの部分に数μm程度の空隙部を検出することができる。上述のように,この空隙部は,人間の目や欠陥検査器等で検出できるレベルの大きさにはないため,空隙部を有する偏光板を欠陥品として排除するといった対策を講じることは困難である。
【0032】
上述のように,例えばコーティング法により基材フィルム上に偏光子層を形成して偏光性積層フィルムとし,その偏光子層上に保護フィルムを貼合した後に基材フィルムを剥離除去する方法によって偏光板を製造する場合,基材フィルムの剥離除去によって現れる面(以下,この面を「剥離面」ともいう。)の表面状態が基材フィルムの表面状態の影響を受けることは避けられず,欠陥部位となる上述の空隙部を生じやすい。本発明によれば,算術平均粗さRaの大きい微小凹凸表面(例えば上記剥離面)に光硬化性化合物の硬化物からなる保護層を設けることで微小な凹凸を埋めることができるので,偏光子層の厚みが例えば10μm以下と薄膜であっても,ワレの発生を効果的に抑制することができる。
【0033】
次に,本発明に係る偏光板の製造方法の好ましい実施形態について説明する。・・・(中略)・・・
【0036】
(1)樹脂層形成工程S10
図2を参照して本工程は,基材フィルム30の少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得る工程である。このポリビニルアルコール系樹脂層6は,延伸工程S20及び染色工程S30を経て偏光子層5となる層である。ポリビニルアルコール系樹脂層6は,ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30の片面又は両面に塗工し,塗工層を乾燥させることにより形成することができる。
・・・(中略)・・・
【0047】
上記塗工液を基材フィルム30に塗工する方法は,ワイヤーバーコーティング法;リバースコーティング,グラビアコーティングのようなロールコーティング法;ダイコート法;カンマコート法;リップコート法;スピンコーティング法;スクリーンコーティング法;ファウンテンコーティング法;ディッピング法;スプレー法等の方法から適宜選択することができる。
・・・(中略)・・・
【0057】
(2)延伸工程S20
図3を参照して本工程は,基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6からなる積層フィルム100を延伸して,延伸された基材フィルム30’及びポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得る工程である。延伸処理は通常,一軸延伸である。
【0058】
積層フィルム100の延伸倍率は,所望する偏光特性に応じて適宜選択することができるが,好ましくは,積層フィルム100の元長に対して5倍超17倍以下であり,より好ましくは5倍超8倍以下である。延伸倍率が5倍以下であると,ポリビニルアルコール系樹脂層6’が十分に配向しないため,偏光子層5の偏光度が十分に高くならないことがある。一方,延伸倍率が17倍を超えると,延伸時にフィルムの破断が生じ易くなるとともに,延伸フィルム200の厚みが必要以上に薄くなり,後工程での加工性及び取扱性が低下するおそれがある。
・・・(中略)・・・
【0066】
(3)染色工程S30
図4を参照して本工程は,延伸フィルム200のポリビニルアルコール系樹脂層6’を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ,偏光子層5とする工程である。本工程を経て基材フィルム30’の片面又は両面に偏光子層5が積層された偏光性積層フィルム300が得られる。二色性色素としては,具体的にはヨウ素又は二色性有機染料を用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0078】
(4)保護フィルム貼合工程S40
図5を参照して本工程は,偏光性積層フィルム300の偏光子層5における基材フィルム30’とは反対側の面上に,接着剤層15を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルム10を貼合して,保護フィルム付偏光性積層フィルム400を得る工程である。・・・(中略)・・・
【0089】
保護フィルム10の偏光子層5とは反対側の表面には,ハードコート層,防眩層,反射防止層,帯電防止層,防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。保護フィルム表面に表面処理層を形成する方法は特に限定されず,公知の方法を用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0091】
接着剤層15を形成する接着剤としては,例えば水系接着剤又は光硬化性接着剤を用いることができる。・・・(中略)・・・
【0093】
水系接着剤を偏光性積層フィルム300の偏光子層5及び/又は保護フィルム10の貼合面に塗工し,これらのフィルムを接着剤層を介して貼合し,好ましくは貼合ロール等を用いて加圧し密着させることにより貼合工程が実施される。・・・(中略)・・・
【0099】
(5)剥離工程S50
図6を参照して本工程は,保護フィルム貼合工程S40の後に,基材フィルム30’を剥離除去する工程である。本工程にて片面保護フィルム付偏光板1が得られる。偏光性積層フィルム300が基材フィルム30’の両面に偏光子層5を有し,これら両方の偏光子層5に保護フィルムを貼合した場合には,この剥離工程S50により,1枚の偏光性積層フィルム300から2枚の片面保護フィルム付偏光板1が得られる。
【0100】
基材フィルム30’を剥離除去する方法は特に限定されるものでなく,通常の粘着剤付偏光板で行われるセパレータ(剥離フィルム)の剥離工程と同様の方法で剥離できる。基材フィルム30’は,保護フィルム貼合工程S40の後,そのまますぐ剥離してもよいし,保護フィルム貼合工程S40の後,一度ロール状に巻き取り,その後の工程で巻き出しながら剥離してもよい。
【0101】
基材フィルム30’を剥離除去することによって現れた面の算術平均粗さRa_(1)(上述の算術平均粗さRa_(1)’に相当する。)は,通常55nmを超える。
【0102】
(6)保護層形成工程S60
図7を参照して本工程は,基材フィルム30’を剥離除去することによって現れた剥離面の上(偏光子層5側の表面)に,光硬化性化合物の硬化物からなる厚み3μm以上の保護層25を形成して,保護フィルム10及び保護層25を有する偏光板2を得る工程である。保護層25が形成される剥離面は,樹脂層形成工程S10においてプライマー層を形成した場合には,プライマー層の表面であり得る。保護層25を形成して算術平均粗さRa_(1)の大きい剥離面の凹凸を埋めることにより,ヒートショック試験における偏光子層5のワレを効果的に抑制することができる。
・・・(中略)・・・
【0111】
保護層25の厚みは3μm以上であり,好ましくは5μm以上である。厚みが3μm未満であると,ワレを抑制する効果が顕著に低下する。偏光板の薄膜化の観点から,保護層25の厚みは30μm以下であることが好ましく,20μm以下であることがより好ましい。」

(エ) 「【実施例】
【0118】
以下,実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが,本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
【0121】
<実施例1>
(1)基材フィルムの作製
エチレンユニットを約5重量%含むプロピレン/エチレンのランダム共重合体(住友化学(株)製の「住友ノーブレン W151」,融点Tm=138℃)からなる樹脂層の両面にプロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン(住友化学(株)製の「住友ノーブレンFLX80E4」,融点Tm=163℃)からなる樹脂層を配置した3層構造の基材フィルムを,多層押出成形機を用いた共押出成形により作製した。基材フィルムの合計厚みは90μmであり,各層の厚み比(FLX80E4/W151/FLX80E4)は3/4/3であった。
【0122】
(2)プライマー層形成工程
ポリビニルアルコール粉末(日本合成化学工業(株)製の「Z-200」,平均重合度1100,ケン化度99.5モル%)を95℃の熱水に溶解し,濃度3重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に架橋剤(田岡化学工業(株)製の「スミレーズレジン650」)をポリビニルアルコール粉末6重量部に対して5重量部の割合で混合して,プライマー層形成用塗工液を得た。
【0123】
次に,上記(1)で作製した基材フィルムの片面にコロナ処理を施した後,そのコロナ処理面にマイクログラビアコーターを用いて上記プライマー層形成用塗工液を塗工し,80℃で10分間乾燥させることにより,厚み0.2μmのプライマー層を形成した。
【0124】
(3)積層フィルムの作製(樹脂層形成工程)
ポリビニルアルコール粉末((株)クラレ製の「PVA124」,平均重合度2400,ケン化度98.0?99.0モル%)を95℃の熱水に溶解し,濃度8重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製し,これをポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液とした。
【0125】
上記(2)で作製したプライマー層を有する基材フィルムのプライマー層表面にリップコーターを用いて上記ポリビニルアルコール系樹脂層形成用塗工液を塗工した後,80℃で20分間乾燥させることにより,プライマー層上にポリビニルアルコール系樹脂層を形成し,基材フィルム/プライマー層/ポリビニルアルコール系樹脂層からなる積層フィルムを得た。
【0126】
(4)延伸フィルムの作製(延伸工程)
上記(3)で作製した積層フィルムに対して,フローティングの縦一軸延伸装置を用いて160℃で5.8倍の自由端一軸延伸を実施し,延伸フィルムを得た。延伸後のポリビニルアルコール系樹脂層の厚みは6.2μmであった。
【0127】
(5)偏光性積層フィルムの作製(染色工程)
上記(4)で作製した延伸フィルムを,ヨウ素とヨウ化カリウムとを含む30℃の染色水溶液(水100重量部あたりヨウ素を0.6重量部,ヨウ化カリウムを10重量部含む。)に約180秒間浸漬してポリビニルアルコール系樹脂層の染色処理を行った後,10℃の純水で余分な染色水溶液を洗い流した。
【0128】
次に,ホウ酸を含む78℃の第1架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部含む。)に120秒間浸漬し,次いで,ホウ酸及びヨウ化カリウムを含む70℃の第2架橋水溶液(水100重量部あたりホウ酸を9.5重量部,ヨウ化カリウムを4重量部含む。)に60秒間浸漬して架橋処理を行った。その後,10℃の純水で10秒間洗浄し,最後に40℃で300秒間乾燥させることにより,基材フィルム/プライマー層/偏光子層からなる偏光性積層フィルムを得た。
【0129】
得られた偏光性積層フィルムにおいて,偏光子層における基材フィルムとは反対側の面の算術平均粗さRa_(2)を測定したところ,38.5nmであった。
【0130】
(6)片面保護フィルム付偏光板の作製(保護フィルム貼合工程及び剥離工程)
カチオン重合性のエポキシ系化合物である硬化性化合物と光カチオン重合開始剤とを含む紫外線硬化性接着剤である(株)ADEKA製の「KR-70T」を用意した。
【0131】
次に,保護フィルム〔トリアセチルセルロース(TAC)からなる透明保護フィルム(コニカミノルタオプト(株)製の「KC2UAW」),厚み25μm〕の貼合面に,マイクログラビアコーターを用いて上記紫外線硬化性接着剤を塗工した後,貼合ロールを用いて,これを上記(5)で作製した偏光性積層フィルムの偏光子層における基材フィルムとは反対側の面に貼合した。その後,高圧水銀ランプを用いて,基材フィルム側から200mJ/cm^(2)の積算光量で紫外線を照射することにより接着剤層を硬化させ,保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/基材フィルムの層構成からなる保護フィルム付偏光性積層フィルムを得た。硬化後の接着剤層の厚みは約1μmであった。
【0132】
次いで,保護フィルム付偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離除去した。基材フィルムは容易に剥離され,片面保護フィルム付偏光板を得た。偏光子層の厚みは6.7μmであった。得られた片面保護フィルム付偏光板において,基材フィルムの剥離除去によって現れた剥離面の算術平均粗さRa_(1)を測定したところ,64.1nmであった。
【0133】
(7)保護層の形成(保護層形成工程)
上記(6)で作製した片面保護フィルム付偏光板の偏光子層側の面にコロナ処理を施した後,そのコロナ処理面にマイクログラビアコーターを用いて,カチオン重合性のエポキシ系化合物である硬化性化合物と光カチオン重合開始剤とを含む紫外線硬化性組成物である(株)ADEKA製の「KR-25T」を塗工した。その後,高圧水銀ランプを用いて,塗工層側から200mJ/cm^(2)の積算光量で紫外線を照射することにより塗工層を硬化させ,保護フィルム/接着剤層/偏光子層/プライマー層/保護層の層構成からなる偏光板を得た。保護層の厚みは10.5μmであった。また,この保護層の80℃における引張弾性率は2000MPaであった。」

(オ) 「【図5】



イ 引用文献8に記載された発明
引用文献8の【0033】ないし【0111】(前記ア(ウ))には,樹脂層形成工程S10,延伸工程S20,染色工程S30,保護フィルム貼合工程S40,剥離工程S50,保護層形成工程S60を含む,偏光板2の製造方法が記載されている。ここで,【0078】ないし【0093】の記載からみて,前記保護フィルム貼合工程S40は,「保護フィルム付偏光性積層フィルム400を製造する方法」を含む工程と理解される。しかるに,当該「保護フィルム付偏光性積層フィルム400を製造する方法」に係る発明の構成は次のとおりである。(なお,基材フィルム30及びポリビニルアルコール系樹脂層6との混同を避けるため,「基材フィルム30’」及び「ポリビニルアルコール系樹脂層6’」をそれぞれ「延伸基材フィルム30’」及び「延伸ポリビニルアルコール系樹脂層6’」と表現した。)

「延伸基材フィルム30’の片面に偏光子層5が積層された偏光性積層フィルム300の一方の面であって,前記偏光子層5における前記延伸基材フィルム30’とは反対側の面上に,接着剤層15を介して熱可塑性樹脂からなる保護フィルム10を貼合することによって,偏光板2の製造に用いられる保護フィルム付偏光性積層フィルム400を製造する方法であって,
前記偏光性積層フィルム300の前記偏光子層5における前記延伸基材フィルム30’とは反対側の面及び/又は前記保護フィルム10の貼合面に,接着剤を塗工して前記接着剤層15を形成する工程と,
前記偏光性積層フィルム300及び前記保護フィルム10を,貼合ロールを用いて加圧し密着させることにより貼合する工程と,
を有し,
前記偏光性積層フィルム300は,ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30に塗工し,塗工層を乾燥させることにより,前記基材フィルム30の一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成した積層フィルム100を得,前記積層フィルム100を延伸することにより,前記延伸基材フィルム30’と延伸ポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得,前記延伸フィルム200の前記延伸ポリビニルアルコール系樹脂層6’を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ,偏光子層とするという工程によって,製造されたものであり,
前記保護フィルム付偏光性積層フィルム400は,その後,前記延伸基材フィルム30’を剥離除去し,それによって現れた剥離面の上に,光硬化性化合物の硬化物からなる厚み3μm以上の保護層25を形成することで,ヒートショック試験においてワレを生じにくく,急激な温度差に対する耐久性の高い偏光板を製造することができる,
保護フィルム付偏光性積層フィルム400を製造する方法。」(以下,「引用発明」という。)

(2)周知の技術事項
ア 引用文献5の記載
査定理由で引用された引用文献5(国際公開第2015/046471号。以下,「周知例1」という。)に記載された発明が電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったのは,本件優先日より前であるところ,当該周知例1には次の記載がある。(下線は,後述する周知慣用技術の認定に特に関連する箇所を示す。)

(ア) 「技術分野
[0001] 本発明は,二枚以上の硬質基板同士が接着剤で貼り合わせられた積層体およびその製造方法に関する。
背景技術
[0002] テレビ,ノートパソコン,カーナビゲーション,電卓,携帯電話,電子手帳,及びPDA(Personal Digital Assistant)といった各種電子機器の表示装置には,液晶ディスプレイ(LCD),有機ELディスプレイ(OELD),電界発光ディスプレイ(ELD),電界放出ディスプレイ(FED),及びプラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子が使用されている。そして,表示素子を保護するため,表示素子と対向させて保護用の板ガラス製品を設置するのが一般である。最近では,保護用の板ガラス製品の表面に所定のパターンが施された導電膜を設けてタッチパネルとしての役割をもたせることも多い。
[0003] この板ガラス製品は板ガラスを各表示装置に適した大きさ及び形状に加工したものであるが,市場で要求される価格レベルに対応するために,大量の板ガラス製品を高い生産効率で加工することが求められる。
[0004] 高い生産効率を実現しようとすると,製品加工の際に割れが生じることがあるが,特許文献1には,透光性硬質基板の積層に際して,各基板間に光硬化性の固着剤を用いて予備的に貼り合わせてロールプレス後,固着剤を光硬化させて硬化体として製品加工することで,製品加工時の割れを低減する技術が提案されている。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0006] ところで,特許文献1に記載された積層体の製造方法において,固着剤としての接着剤組成物の透光性硬質基板への塗布後のロールプレスに際して,透光性硬質基板間の隙間から接着剤組成物がランダムな方向からはみ出すことがあり,さらなる透光性硬質基板の積層に際して望ましくない影響を及ぼすことがあるため,はみ出した接着剤組成物を拭き取る作業が必要となる。また,この作業に際して,透光性硬質基板の主面側に接着剤組成物が回り込むことがあり,このこともさらなる透光性硬質基板の積層に際して望ましくない影響を及ぼすことがあるため,より慎重な作業が必要となる。
[0007] そこで本発明は,製品が占める領域の外側に一定範囲の接着剤が存在しない空隙を設けて,例えば,積層体の硬質基板間の隙間から接着剤組成物がランダムな方向からはみ出さないようにした取扱い性の良好な積層体を提供する。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明は以下のとおりである。
(1)二枚以上の硬質基板同士が接着剤で貼り合わせられた積層体であって,
主面に対して平面視したときに,製品が占める領域の外側であって,当該製品が占める領域を挟んで少なくとも一対の互いに対向する二辺に沿った方向の全体にわたって接着剤が存在しない空隙が設けられた積層体。・・・(中略)・・・
発明の効果
[0009] 本発明は,製品が占める領域の外側に一定範囲の接着剤が存在しない空隙を設けるため,例えば,積層体の硬質基板間の隙間から接着剤組成物がはみ出すことがなくなり,積層体の取扱い性が向上する。」

(イ) 「図面の簡単な説明
[0010][図1]本発明の積層体の一例の平面図である。
・・・(中略)・・・
[図3]本発明の積層体の製造方法について説明する図である。」

(ウ) 「発明を実施するための形態
[0011] 以下,本発明について説明する。
本発明は,一つの側面から積層体を提供する。
図1にこの積層体の一例の平面図を示し,図2にこの積層体のA-A’面の断面図を示す。なお,ここでは,硬質基板として透光性硬質基板を用いた例を挙げて説明するが,透光性のものではなく,光を通さない硬質基板であっても差し支えない。
この積層体は,二枚以上の透光性硬質基板14同士が接着剤13で貼り合わせられた積層体10であって,主面に対して平面視したときに,製品が占める領域(製品領域11)の外側であって,当該製品が占める領域(製品領域11)を挟んで少なくとも一対の互いに対向する二辺に沿った方向の全体にわたって接着剤が存在しない空隙12が設けられている。
・・・(中略)・・・
[0038] 本発明は,別の側面から上述した積層体を製造する方法を提供する。
この製造方法は,二枚以上の硬質基板同士を接着剤で貼り合わせる積層体の製造方法において,貼り合わせる前の硬質基板に接着剤を塗布する塗布工程と,塗布後の硬質基板の接着剤塗布面を,第2の硬質基板に重ねて貼り合わせる積層工程と,重ね合わせた積層物をロールプレスするプレス工程とを有する。なお,ここでは,硬質基板として透光性硬質基板を用いた例を挙げて説明するが,透光性のものではなく,光を通さない硬質基板であっても差し支えない。
[0039] まず,塗布工程では,図3に示すように,透光性硬質基板14上でロールプレスを行う方向D_(R)に略直交する方向に接着剤を吹き付けて塗布ラインL1?L6を形成させる。このように,塗布ラインを,ロールプレスを行う方向D_(R)にわたって複数本設ける。・・・(中略)・・・
[0040] また,塗布工程では,図3に示すように,各塗布ラインの長手方向の長さは,限定的ではないが,ロールプレスが進行する方法に向かって,各塗布ラインの長さがL1≧L2≧L3≧L4≧L5≧L6となるように,すなわち図3においては塗布ラインL1からL6に向かって短くなるように,接着剤を塗布してもよく,また図示はしないが,各塗布ライン長さは同程度にしてもよい。・・・(中略)・・・
[0046] 続いて,積層工程では,接着剤を塗布した透光性硬質基板を,第2の透光性硬質基板に重ねて貼り合わせる。・・・(中略)・・・
[0047] このように塗布ラインを形成し,塗布後の透光性硬質基板を貼り合わせることにより,後述するロールプレスを行ったときに,接着剤を透光性硬質基板14の製品領域11の全体に拡げることができるとともに,透光性硬質基板14同士を貼り合わせたときに,接着剤を積層体10の側面からはみ出させることなく,前述した空隙12を形成することができる。
[0048] プレス工程では,積層工程で得られた積層体にロールプレスを行うことにより,製品領域を含む,空隙12が占める部分以外の前記透光性硬質基板で挟まれた空間の全体に接着剤組成物を充填する。」

(エ) 「[図1]

・・・(中略)・・・
[図3]



イ 引用文献6の記載
査定理由で引用された引用文献6(特開2004-145282号公報。以下,「周知例2」という。)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知例2には次の記載がある。(下線は,後述する周知慣用技術の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【0030】
<第1の態様における位相差板の製造方法等>
本発明における位相差板の製造方法のうち,第1の態様における位相差板の製造方法では,固有複屈折値が正で異なる2種以上の材料のうち材料Aを,搬送しつつ搬送方向と同方向に延伸して縦延伸フィルムを形成し(縦延伸フィルム形成工程),前記2種以上の材料のうち材料Bを,搬送しつつ搬送方向と直交する方向に延伸して横延伸フィルムを形成する(横延伸フィルム形成工程)。
・・・(中略)・・・
【0033】
前記延伸の後,形成された縦延伸フィルムと横延伸フィルムとを積層させる(積層工程)のが好ましい。該積層工程においては,効率及び省スペース化の点で,延伸フィルムを共に同方向に搬送しつつ積層させるのが好ましい。該積層の方法としては,各延伸フィルムを貼り合わせるのが好ましく,各延伸フィルムの遅相軸を互いに直交させて貼り合わせるのが特に好ましい。このようにして位相差板を製造することにより,可視光全域の入射光に対して均一な位相差特性を与える広帯域の位相差板を,固有複屈折値が正同士の原材料を用いて,簡易な工程により効率的に,連続的に,且つ低コストで製造可能である。
【0034】
前記貼り合わせの方法としては,特に制限はないが,接着剤を塗布して貼り合わせる方法,接着フィルムを各層間に挟んで貼り合わせる方法,接着剤を利用してドライラミネート法により貼り合わせる方法,などが挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0036】
前記ドライラミネート法は,一般的に,接着剤を一方の接着対象物に均一に塗布し,乾燥させた後,他方の接着対象物に加圧条件で圧着して行われる。該ドライラミネート法においては,接着剤が貼り合わせ用のロール等に付着しないよう,接着対象物の両側に接着剤を塗布しない部分を残して貼合せたり,ロール間の押圧の解除が自動的に行われるのが好ましい。該ドライラミネート法に用いる接着剤としては,例えば,ウレタン樹脂系の接着剤が好ましく,特に,主剤(OH基含有化合物)及び硬化剤(NCO基含有化合物)を混合して反応させる二液硬化型の接着剤が好ましい。該接着剤は,溶剤に溶解して接着剤溶液として使用してもよく,溶剤を使用しない無溶剤型の接着剤であってもよいが,省エネルギー化,残留溶剤量の低減,及び高速化の観点からは,無溶剤型が好ましい。・・・(中略)・・・
【0037】
ここで,前記ドライラミネート法の一例を,図1を用いて具体的に説明する。図1に示すドライラミネート機200は,第一の延伸フィルム供給手段と,第二の延伸フィルム供給手段と,接着剤塗布手段と,搬送手段と,加熱乾燥手段と,貼り合わせ手段と,巻き取り手段とを有する。
【0038】
第一の延伸フィルム供給手段は,第一の延伸フィルム208aを供給する第一フィルム送り出し機203を有する。
第二の延伸フィルム供給手段は,第二の延伸フィルム208bを供給する第二フィルム送り出し機204を有する。
接着剤塗布手段は,接着剤を収容する接着剤収容器202と,接着剤塗布ローラ206a,206bと,ドクターブレード209とを有する。該接着剤塗布手段において,接着剤塗布ローラ206aは,その表面が,前記接着剤及び第一の延伸フィルム208aと当接するように配され,接着剤塗布ローラ206bは,その表面が,第一の延伸フィルム208aと当接するように配されている。該接着剤塗布手段においては,接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が,ローラの矢印方向への回転に伴い,ドクターブレード209によって適宜掻き落とされて均一な厚みに調整され,第一の延伸フィルム208aに均一に塗布される。
前記搬送手段は,回転により第一の延伸フィルム208aを搬送可能な搬送ローラ207a,搬送ローラ207bを有する。
前記加熱乾燥手段は,第一の延伸フィルム208aに塗布された接着剤を乾燥可能な加熱乾燥器201を有する。
前記貼り合わせ手段は,第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bを貼り合わせ可能な貼り合わせ・ニップローラ210a,210bを有する。
【0039】
ドライラミネート機200においては,先ず,矢印方向に回転する第一フィルム送り出し機203から,第一の延伸フィルム208aが供給され矢印方向に搬送される。接着剤塗布ローラ206a,206bまで搬送された第一の延伸フィルム208aは,接着剤塗布ローラ206a,206b間を,ロールに当接しつつ搬送される際に,接着剤塗布ローラ206a表面に付着した接着剤が均一に塗布される。その後,更に矢印方向に搬送されて搬送ローラ207a上を通って加熱乾燥器201まで搬送される。加熱乾燥器201まで搬送された第一の延伸フィルム208aにおいては,表面に均一に塗布された接着剤が加熱により乾燥される。更に,第一の延伸フィルム208aは矢印方向に搬送され,搬送ローラ207b上を通って,貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。一方,矢印方向に回転する第二フィルム送り出し機204からは,第二の延伸フィルム208bが供給され,矢印方向に,貼り合わせ・ニップローラ210a,210bまで搬送される。貼り合わせ・ニップローラ210a,210bにおいては,ニップ部での加圧により,第一の延伸フィルム208a及び第二の延伸フィルム208bが貼り合わせられ,これらが積層された位相差板が製造される。製造された位相差板は,巻き取り機205まで搬送され,巻き取られる。」

(イ) 「【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,ドライラミネート法を具体的に説明するための説明図である。
・・・(中略)・・・
【図1】



ウ 実願平4-58524号(実開平6-21923号)のCD-ROMの記載
実願平4-58524号(実開平6-21923号)のCD-ROM(以下,「周知例3」という。)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知例3には次の記載がある。(下線は,後述する周知慣用技術の認定に特に関連する箇所を示す。)
(ア) 「【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のベース基材とラミネート基材の貼合部分の構成説明図である。
・・・(中略)・・・
【図5】従来から一般に使用されているドライラミネート装置の要部構成図である。
・・・(中略)・・・
【図1】

・・・(中略)・・・
【図5】



(イ) 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案はドライラミネート装置に関し,特に両基材の位置ずれによる不良貼合防止可能なドライラミネート装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図5は従来から一般に使用されているドライラミネート装置の要部構成図である。ベース基材1は両端に一定幅だけ残して片面に接着剤3を塗布する。この接着剤3は例えばトルオール酢酸エチレン等の芳香族の溶剤で希釈した固形分約30%の接着剤溶液で,ベース基材1の片面に塗布後乾燥工程で一応溶剤を蒸発させてある。
【0003】
このベース基材1と,同じ幅のラミネート基材2とを貼合ロール6と加圧ロール7との間を重ね合わせて通過させ接着剤3でベース基材1とラミネート基材2とを接着して複合基材5とし,巻取り装置9で巻き取る。
【0004】
上述のベース基材1の両側に接着剤3を塗布しない部分を残しておく理由は,貼合ロール6と加圧ロール7で加圧接着する場合,接着剤3がベース基材1の端からはみ出さないようにするためである。
【0005】
若し,はみ出した場合には,貼合ロール6と加圧ロール7に接着剤3が付着してしまい,装置を停止して清掃する必要があり,作業効率を著しく低下させてしまう。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
上述のように接着剤3のはみ出しを防止するためにベース側基剤1の両端に接着剤3を塗布しない部分を設けても,図6に示すようにベース基材1とラミネート基材2の位置がずれてしまうと,接着剤3の層が加圧ロール7に付着してしまうので,装置を停止して清掃する必要がある。
【0007】
本考案は上述の問題を解決して,ベース基材1とラミネート基材2の位置ずれが発生した場合には加圧ロール7を後退させて貼合ロール6から離すと共に,装置を停止させ,直ちに位置修正が可能な状態とすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
両側を一定幅残して接着剤3を塗布したベース基材1と,接着剤3を塗布しないラミネート基材2とを貼合ロール6と加圧ロール7間で貼り合わせるドライラミネートにおいて,貼合ロール6の直前の供給側のベース基材1の両端,及び加圧ロール7の直前の供給側のラミネート基材2の両端にそれぞれ端部検出器4を配置し,各端部検出器4の検出出力が規制範囲内で一致した時のみ加圧ロール7で貼合ロール6を押圧してベース基材1とラミネート基材2を加圧接着するように構成したものである。
・・・(中略)・・・
【0010】
【作用】
上述のように,ベース基材1とラミネート基材2との位置が規定値以上にずれた場合,ラミネート装置を停止すると共に,加圧ロール7を貼合ロール6から離し,接着剤3が加圧ロール7,貼合ロール6へ付着することを防止すると共に,基材の位置調節を容易とする。」

エ 特開2004-151461号公報の記載
特開2004-151461号公報(以下,「周知例4」という。)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知例4には次の記載がある。(下線は,後述する周知慣用技術の認定に特に関連する箇所を示す。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,感圧接着剤付き機能性フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
機能性フィルム,例えば,偏光フィルムや位相差フィルムのような光学機能性フィルムは,感圧接着剤を積層した状態で,多く用いられている。これは,感圧接着剤付き機能性フィルムとすることで,他の部材や他の機能性フィルムに容易に接着積層できるようにするためである。例えば,感圧接着剤付き偏光板を液晶セルに貼り合わせて液晶ディスプレイとすることは,広く行われている。また,偏光フィルムと位相差フィルムを積層して楕円偏光板ないし円偏光板とする場合や,反射防止フィルムを偏光フィルムに積層して反射防止偏光フィルムとする場合,反射フィルムを偏光フィルムに積層して反射型偏光フィルムとする場合などにも,一方のフィルムに感圧接着剤層が設けられたものを他方のフィルムに貼り付けるのが一般的である。
【0003】
かかる感圧接着剤付き機能性フィルムあるいはそのための感圧性粘着フィルムについては,従来から各種の提案がなされている。例えば,特公平 4-50352号公報(特許文献1)には,熱可塑性樹脂からなる支持体層,感圧接着剤層及び剥離層から構成される感圧性粘着フィルムの積層体を製造するにあたって,支持体層をフィルム状に押出し,一方で,感圧接着剤層と剥離層とをダイ内で合流積層化し,これを感圧接着剤層が上記支持体層側となるように共押出しし,さらに押出し直後にロールで三層を圧着して,感圧性粘着フィルムを製造することが開示されている。また,特開平 9-243824 号公報(特許文献2)には,基材フィルムの片面に粘着剤層が設けられ,液晶ディスプレイ用の偏光フィルム又は位相差フィルムに貼り合わせて用いられる表面保護粘着テープにおいて,粘着剤層と基材フィルムとの接着力を,その粘着剤層と偏光板又は位相差板との接着力より小さくすることが開示されている。さらに,特開 2000-111731号公報(特許文献3)には,偏光フィルムの被着面に貼付された保護フィルムを偏光板の周縁部近傍で額縁状にハーフカットし,周縁部を残して保護フィルムを剥離し,露出した偏光フィルムの被着面に別の粘着シートを貼り合わせることによって偏光板積層体を製造することが開示されている。
【0004】
そして,偏光フィルムや位相差フィルムのような光学機能性フィルムに感圧接着剤を積層する加工には,プレス貼合やロール貼合が採用されるが,機能性フィルムの幅より感圧接着剤の幅が大きいと,はみ出した感圧接着剤がプレス機やロールを汚す原因となり,連続生産には適さない。そこで一般には,機能性フィルムの幅より感圧接着剤の幅を小さくして積層する。」

オ 各周知例の記載から把握される周知の技術事項
前記アないしエで摘記した周知例1ないし4の記載等から,本件優先日より前に,次の技術事項が周知,慣用であったと認められる。

「2枚の部材を接着剤又は感圧接着剤を介して貼合ロールにより貼り合わせて積層体を製造する際に,接着剤又は感圧接着剤がはみ出すと,当該接着剤又は感圧接着剤が貼合ロールに付着してしまい,これを清掃する必要が生じることから,
貼り合わせる部材の幅方向における両端部には,接着剤又は感圧接着剤を設けないようにすることによって,接着剤又は感圧接着剤がはみ出さないようにする技術。」(以下,「周知慣用技術」という。)


5 判断
(1)対比
ア 引用発明の「貼合ロール」,「偏光性積層フィルム300」,「接着剤層15」,「保護フィルム10」及び「保護フィルム付偏光性積層フィルム400」は,技術的にみて,本件発明の「貼合ロール」,「第1の光学フィルム」,「接着剤層又は粘着剤層」,「第2の光学フィルム」及び「積層光学フィルム」にそれぞれ対応する。

イ(ア) 引用発明の「前記偏光性積層フィルム300及び前記保護フィルム10を,貼合ロールを用いて加圧し密着させることにより貼合する工程」において,「貼合ロール」(本件発明の「貼合ロール」に対応する。以下,「(1)対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を指す。)が回転していること,また,当該「貼合ロール」が一対のロールとして構成されていることは,技術常識から当業者に自明である。
(イ) また,引用発明における「偏光性積層フィルム300」(第1の光学フィルム)は,延伸基材フィルム30’の片面に偏光子層5が積層されたものであり,引用発明によって製造された保護フィルム付偏光性積層フィルム400を用いて偏光板2を製造する際には,前記延伸基材フィルム30’が前記偏光子層5から剥離されるのであるから,「少なくとも一層が剥離可能となるように複数の層が積層された」ものといえる。
(ウ) また,引用発明は,「偏光性積層フィルム300」(第1の光学フィルム)の偏光子層5における延伸基材フィルム30’とは反対側の面上に,「接着剤層15」(接着剤層又は粘着剤層)を介して熱可塑性樹脂からなる「保護フィルム10」(第2の光学フィルム)を貼合して,「保護フィルム付偏光性積層フィルム400」(積層光学フィルム)を製造する方法である。そして,引用発明では,「偏光性積層フィルム300」の偏光子層5における延伸基材フィルム30’とは反対側の面及び/又は「保護フィルム10」の貼合面に,接着剤を塗工し,「偏光性積層フィルム300」及び「保護フィルム10」を,「貼合ロール」(貼合ロール)を用いて加圧し密着させることにより貼合するものである。そうすると,引用発明は,一対の「貼合ロール」の間に,「偏光性積層フィルム300」と,「接着剤層15」と,「保護フィルム10」とを,一対の「貼合ロール」間を結ぶ方向にこの順に配列した状態で導入して「偏光性積層フィルム300」と「保護フィルム10」とを貼合する,「保護フィルム付偏光性積層フィルム400」の製造方法といえる。
(エ) 前記(ア)ないし(ウ)によれば,引用発明は,「回転する一対の貼合ロールの間に,少なくとも一層が剥離可能となるように複数の層が積層された第1の光学フィルムと,接着剤層又は粘着剤層と,第2の光学フィルムとを,前記一対の貼合ロール間を結ぶ方向にこの順に配列した状態で導入して前記第1の光学フィルムと前記第2の光学フィルムとを貼合する,積層光学フィルムの製造方法」である点で,本件発明と一致する。

ウ 以上によれば,本件発明と引用発明は,
「回転する一対の貼合ロールの間に,少なくとも一層が剥離可能となるように複数の層が積層された第1の光学フィルムと,接着剤層又は粘着剤層と,第2の光学フィルムとを,
前記一対の貼合ロール間を結ぶ方向にこの順に配列した状態で導入して前記第1の光学フィルムと前記第2の光学フィルムとを貼合する,積層光学フィルムの製造方法。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本件発明では,貼合時において,接着剤層又は粘着剤層の幅が,第1の光学フィルムを構成している層のうち第2の光学フィルムに最も距離が近い層の幅未満であり,接着剤層又は粘着剤層が,幅方向の位置が第1の光学フィルムを構成している層のうち第2学フィルムに最も距離が近い層の存在幅内にあり,第2の光学フィルムを構成している層のうち第1の光学フィルムに最も距離が近い層の幅が,接着剤層又は粘着剤層の幅よりも大きく,第2の光学フィルムを構成している層のうち第1の光学フィルムに最も距離が近い層が,接着剤層又は粘着剤層の存在幅を内包するように位置しているという構成を具備しているのに対して,
引用発明では,そのような構成を具備するとは特定されていない点。

(2)相違点の容易想到性について
ア 以下では,貼合時における搬送方向と直交する方向,すなわち貼合ロールの軸方向に対応する方向を「幅方向」と表現し,当該幅方向における各フィルムや各層の大きさを,各フィルムや各層の「幅」と表現する。

イ 引用発明において,偏光性積層フィルム300は,ポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を基材フィルム30に塗工し,塗工層を乾燥させることにより,基材フィルム30の一方の面にポリビニルアルコール系樹脂層6を形成して積層フィルム100を得,前記積層フィルム100を延伸して,延伸基材フィルム30’及び延伸ポリビニルアルコール系樹脂層6’からなる延伸フィルム200を得,前記延伸フィルム200の前記延伸ポリビニルアルコール系樹脂層6’を二色性色素で染色してこれを吸着配向させ,偏光子層5とするという方法によって,製造されたものであるから,技術的にみて,偏光子層5が延伸基材フィルム30’の存在幅内に形成されている(延伸基材フィルム30’の幅方向全面に形成されているものを含む。)ことは明らかである。

ウ しかるに,引用発明において,偏光性積層フィルム300の偏光子層5における延伸基材フィルム30’とは反対側の面及び/又は保護フィルム10の貼合面に,接着剤を塗工して接着剤層15を形成し,偏光性積層フィルム300及び保護フィルム10を,貼合ロールを用いて加圧し密着させることにより貼合する際に,接着剤が保護フィルム10の幅方向端部からはみ出すと,当該接着剤が,少なくとも保護フィルム10側の貼合ロールに付着してしまい,これを清掃する必要が生じてしまうことは,前記4(2)オで認定した周知慣用技術を熟知する当業者が当然に予測することである。
また,接着剤が偏光子層5の幅方向端部からはみ出した場合には,偏光子層5が延伸基材フィルム30’の幅方向全面に形成されている偏光性積層フィルム300では,前述したのと同様に,はみ出した接着剤が,少なくとも偏光性積層フィルム300側の貼合ロールに付着してしまい,これを清掃する必要が生じてしまう。また,偏光子層5の幅が延伸基材フィルム30’の幅よりも小さく形成されている偏光性積層フィルム300では,偏光子層5の幅方向端部からはみ出した接着剤が,仮に,延伸基材フィルム30’の幅方向端部を越えるまではみ出すことがなかったとしても,偏光子層5の幅方向端部からはみ出した接着剤によって偏光子層5及び保護フィルム10と延伸基材フィルム30’とが固定されてしまい,偏光板2を製造する際に,保護フィルム付偏光性積層フィルム400から延伸基材フィルム30’を剥離除去できなくなるという不都合が生じてしまうことは,当業者に自明である。
そうすると,引用発明における偏光子層5及び保護フィルム10の貼合について,前記周知慣用技術における「貼り合わせる部材の幅方向における両端部には,接着剤又は感圧接着剤を設けない」という技術手段を採用して,貼合時に,偏光子層5及び保護フィルム10の幅方向端部から接着剤がはみ出さないようにすることは,当業者が容易に想到し得たことというほかない。

エ 前記ウで述べた構成の変更を行った引用発明において,「接着剤層15」の幅は,「偏光子層5」及び「保護フィルム10」の幅未満であり,「接着剤層15」の幅方向の位置が「偏光子層5」の存在幅内にあり,「保護フィルム10」が,「接着剤層15」の存在幅を内包するように位置している。
そして,「偏光子層5」は,「偏光性積層フィルム300」(本件発明の「第1の光学フィルム」に対応する。)を構成する層のうち「保護フィルム10」(本件発明の「第2の光学フィルム」に対応する。)に最も距離が近い層に該当し,「保護フィルム10」は単層からなるものであるから,「保護フィルム10」(本件発明の「第2の光学フィルム」に対応する。)を構成している層のうち「偏光性積層フィルム300」(本件発明の「第1の光学フィルム」に対応する。)に最も距離が近い層は「保護フィルム10」自身である。
したがって,前記ウで述べた構成の変更を行った引用発明は,「接着剤層又は粘着剤層」の幅が,「第1の光学フィルム」を構成している層のうち「第2の光学フィルム」に最も距離が近い層の幅未満であり,「接着剤層又は粘着剤層」が,幅方向の位置が「第1の光学フィルム」を構成している層のうち「第2学フィルム」に最も距離が近い層の存在幅内にあり,「第2の光学フィルム」を構成している層のうち「第1の光学フィルム」に最も距離が近い層の幅が,「接着剤層又は粘着剤層」の幅よりも大きく,「第2の光学フィルム」を構成している層のうち「第1の光学フィルム」に最も距離が近い層が,「接着剤層又は粘着剤層」の存在幅を内包するように位置しているという相違点に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備している。

オ 以上のとおりであるから,引用発明に周知慣用技術を適用して,相違点に係る本件発明の発明特定事項を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

カ なお,請求項1においては,「第1の光学フィルム」については,「複数の層が積層された」との限定が付されているのに対して,「第2の光学フィルム」については,同様の限定が付されていないことから,本件発明における「第2の光学フィルム」は複数の層が積層されたものばかりでなく,単層からなるものも包含されると解するのが相当であるが,仮に,「前記第2の光学フィルムを構成している層のうち前記第1の光学フィルムに最も距離が近い層」という発明特定事項によって,引用発明の「第2の光学層」からは,単層からなるものが除外されており,複数の層が積層されたものに限定されていると解したとしても,次のとおり結論に変わりはない。

引用文献8の【0089】(前記4(1)ア(ウ)を参照。)には,「保護フィルム10の偏光子層5とは反対側の表面には,ハードコート層,防眩層,反射防止層,帯電防止層,防汚層のような表面処理層(コーティング層)を形成することもできる。」と記載されていて,引用文献8の記載からは,引用発明において,「保護フィルム10」として,偏光子層5が形成されているのとは反対側の表面にコーティング層を形成した保護フィルム10を用いた発明(以下,「引用第2発明」という。)をも把握することができる。
しかるに,このような引用第2発明において,保護フィルム10における「偏光性積層フィルム300」に最も近い層は「保護フィルム10」であり,かつ,技術的にみて,コーティング層が保護フィルム10の存在幅内に形成されている(保護フィルム10の幅方向全面に形成されているものを含む。)ことは明らかであるから,結局,本件発明との間の相違点は,前記(1)ウで認定した相違点のみであって,新たな相違点はない。
そして,前記イないしエで述べたのと同様の理由で,引用第2発明に周知慣用技術を適用して,相違点に係る本件発明の発明特定事項を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

キ 請求人は,審判請求書において,
「引用文献8において,解決すべき課題は『ヒートショック試験においてワレを生じにくい偏光板を製造するための方法』(段落[0008])を提供することとされているのに対し,引用文献5,6,9において解決すべき課題は・・・(中略)・・・引用文献8における課題とは無関係なものです。・・・(中略)・・・こうした引用文献8の思想部分の開示では,偏光子層の表面凹凸の影響と,その影響を排除するための処理について言及されているのであって,接着剤の存在幅については何らの考察もされていません。このような開示を出発点とした当業者は,ヒートショック試験においてワレが生じにくい偏光板を見出そうとする場合,上記思想に従って偏光板の表面凹凸に対して何らかの処置をすることが動機づけられるのが通常であるというべきです。他方,引用文献8の記載から,その課題解決のために接着剤層の幅について何らかの設計変更をしようと考える動機は生じません。」
などと主張する。
引用文献8に記載された偏光板(引用発明により製造された保護フィルム付偏光性積層フィルム400を用いて製造される偏光板)が,保護フィルム付偏光性積層フィルム400から延伸基材フィルム30’を剥離除去し,それによって現れた剥離面の上に,光硬化性化合物の硬化物からなる厚み3μm以上の保護層25を形成することで,ヒートショック試験においてワレを生じにくく,急激な温度差に対する耐久性の高いものとされていることは,請求人が主張するとおりである。
しかしながら,引用発明が,偏光子層5における延伸基材フィルム30’とは反対側の面及び/又は保護フィルム10の貼合面に,接着剤を塗工して接着剤層15を形成する工程と,偏光性積層フィルム300及び保護フィルム10を,貼合ロールを用いて加圧し密着させることにより貼合する工程とを有する,保護フィルム付偏光性積層フィルム400を製造する方法である以上,引用発明を具体化するに際し,接着剤の塗布量や塗布幅について検討することは必然である。
そして,偏光性積層フィルム300及び保護フィルム10を貼合する際に,接着剤が偏光性積層フィルム300や保護フィルム10の幅方向端部からはみ出すと,当該接着剤が,貼合ロールに付着してしまい,これを清掃する必要が生じてしまったり,はみ出した接着剤によって偏光子層5及び保護フィルム10と延伸基材フィルム30’とが固定されてしまい,偏光板2を製造する際に,保護フィルム付偏光性積層フィルム400から延伸基材フィルム30’を剥離除去できなくなるという不都合が生じてしまうことが,当業者に自明であることは,前記ウで述べたとおりである。
そうすると,たとえ,引用文献8に,接着剤層15の存在幅についての記載がないとしても,引用発明には,接着剤が,偏光子層5及び保護フィルム10の幅方向端部からはみ出すことによって生じる課題が内在していることは当業者に自明であって,引用発明において,偏光子層5及び保護フィルム10の幅方向における両端部に,接着剤を設けないよう構成することには動機付けが存在するというべきである。
また,引用発明において,偏光子層5及び保護フィルム10の幅方向における両端部に,接着剤を設けないよう構成しても,保護フィルム付偏光性積層フィルム400から延伸基材フィルム30’を剥離除去し,それによって現れた剥離面の上に,光硬化性化合物の硬化物からなる厚み3μm以上の保護層25を形成することの障害となることはないから,当該構成の変更に,阻害要因が存在するというわけでもない。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。

(3)効果について
本件発明の効果は,引用文献8の記載や周知慣用技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。

(4)まとめ
以上のとおりであるから,本件発明は,引用発明及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
本件発明は,引用発明及び周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-11-22 
結審通知日 2018-11-27 
審決日 2018-12-11 
出願番号 特願2017-92519(P2017-92519)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣田 健介  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 清水 康司
河原 正
発明の名称 積層光学フィルムの製造方法  
代理人 清水 義憲  
代理人 阿部 寛  
代理人 吉住 和之  
代理人 福山 尚志  
代理人 三上 敬史  
代理人 長谷川 芳樹  
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