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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 一部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
管理番号 1348684
異議申立番号 異議2017-700928  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-29 
確定日 2018-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6106209号発明「自然乾燥型水性塗料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6106209号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし12〕について訂正することを認める。 特許第6106209号の請求項1ないし3、6ないし12に係る特許を維持する。  
理由 第1 手続の経緯

特許第6106209号の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成27年5月26日の出願であり、平成29年3月10日にその特許権の設定登録がされ、同月29日に特許掲載公報が発行された。
これに対し、平成29年9月29日に、その特許について特許異議申立人関西ペイント株式会社(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、同年12月12日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年2月8日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり(以下、「本件訂正A」という。)、これに対し、同年3月29日付けで異議申立人より意見書が提出され、同年6月22日付けで取消理由通知書が通知され、その指定期間内である同年8月27日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり(以下、「本件訂正B」という。)、これに対し、同年9月4日に指定期間を設けて通知書を送付したところ、異議申立人より応答がなかったものである。
なお、本件訂正Aは、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。


第2 訂正の適否

1 訂正事項

上記平成30年8月27日付け訂正請求書による本件訂正Bは、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12について訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含む、自然乾燥型水性塗料組成物。」とあるのを、「第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000であり、数平均分子量が1500?10000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である、自然乾燥型水性塗料組成物。」と訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2,3及び6?12も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項3に「前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である、請求項1又は2に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。」とあるのを、「前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が1079?3800である、請求項1又は2に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。」と訂正する。(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6?12も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項4に「前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む、請求項1?3のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。」とあるのを、「第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む、自然乾燥型水性塗料組成物。」と訂正する。(請求項4の記載を引用する請求項5?12も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4

訂正前の請求項1?12に関係する明細書の段落【0090】の末尾に、「なお、下記の実施例7は参考例と読み替える。」との記載を追加する訂正を行う。


2 訂正事項の訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項について

(1)訂正事項1について

ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「水性エポキシ系アミン樹脂(A)」を、「数平均分子量が1500?10000である」と限定し、さらに、「エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、該エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である」と限定するものであるから、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0040】の「水性エポキシ系アミン樹脂(A)の数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算で、好ましくは1000?20000であり、より好ましくは1500?10000である。」、同段落【0030】の「水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、例えば、エポキシ樹脂(以下、水性エポキシ系アミン樹脂(A)を形成するエポキシ樹脂を「第1エポキシ樹脂」ともいう。)をアミン変性して得られるもの(すなわち、アミン化エポキシ樹脂)であることができる。」、同段落【0032】の「第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは700?3800であり」等の記載に基づくものであるから、上記訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項1は、訂正前の「水性エポキシ系アミン樹脂(A)」を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件については、請求項1?3及び6?12について特許異議申立がされているので、請求項1?3及び6?12に係る訂正事項1に関して、独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2について

ア 上記訂正事項2のうち、「前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、」との文言を削除する訂正は、請求項1の訂正に伴って訂正後の請求項1の記載に整合させるために行った形式的な訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
さらに、訂正事項2のうち、エポキシ当量の数値範囲の下限値を「700」から「1079」とする訂正は、該数値範囲をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 上記訂正事項2のうち、「前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、」との文言を削除する訂正は、請求項1の訂正に伴って訂正後の請求項1の記載に整合させるために行った形式的な訂正であり、上記訂正事項2のうち、エポキシ当量の数値範囲に関する訂正は、願書に添付した明細書の段落【0097】の表1における製造例2についての記載に基づくものであるから、上記訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項2は、訂正前のエポキシ当量の数値範囲を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件については、請求項1?3及び6?12について特許異議申立がされているので、請求項3及び6?12に係る訂正事項2に関して、独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3について

ア 上記訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとする訂正である。

イ 上記訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であって、実質的な内容の変更をするものではないから、上記訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。

ウ 上記訂正事項3は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 本件については、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、請求項4に係る訂正事項3に関して、独立特許要件は課されない。

(4)訂正事項4について

ア 訂正事項4は、実施例7が訂正後の請求項1に係る発明に属さないことを明確にするための形式的な訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的としたものである。

イ 訂正事項4は、実施例7が訂正後の請求項1に係る発明に属さないことを明確にするための形式的な訂正であるから、新規事項を追加するものではないし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。


3 一群の請求項

訂正前の請求項1ないし12は訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるので、訂正前の請求項1ないし12は一群の請求項である。
そして、本件訂正Bの請求は、訂正前の請求項1ないし12に対してされたものである。
したがって、本件訂正Bの請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。


4 小括

以上のとおりであるから、本件訂正Bの請求は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。

そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1?3及び6?12に対しては、特許異議申立がされているので、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。また、訂正前の請求項4,5に対しては、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする訂正であるから、訂正を認める要件として、同法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正Bの請求は適法なものであり、訂正後の請求項〔1ないし12〕について訂正することを認める。

なお、特許権者は、平成30年8月27日付け訂正請求書の11頁の「ウ 引用関係の解消の求め」において、訂正後の請求項4及びこれを引用する請求項5?12については、引用関係の解消を目的とする訂正をした請求項であるか、又は該請求項を引用する請求項であるから、これらの請求項についての訂正が認められる場合には、請求項4?12は、請求項1とは別途訂正することを求める旨述べるが、本件訂正Bによる訂正後の請求項6?12は、独立形式の請求項1と独立形式の請求項4の両者を引用しているから、依然として請求項1?12が一群の請求項をなしているものと認められる。
よって、請求項4?12を請求項1と別途訂正するように扱うことはできない。


第3 本件発明

上記「第2」のとおり、本件訂正Bは認容し得るものであるから、本件訂正B後の請求項1ないし12に係る発明(以下、各請求項に係る発明を項番に対応して「本件発明1」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000であり、数平均分子量が1500?10000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である、自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項2】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型である、請求項1に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が1079?3800である、請求項1又は2に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項4】
第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む、自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項5】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と前記水性エポキシ系アミン樹脂(A2)との質量比が8/2?2/8である、請求項4に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項6】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ系アミン樹脂のアミノ基を酸で中和して得られるものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項7】
前記中和における中和率が20?60%である、請求項6に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂エマルション(B)は、エポキシ当量が150?1200であるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエマルションである、請求項1?7のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項9】
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、非硬化性樹脂のエマルション(C)をさらに含む、請求項1?8のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項10】
前記非硬化性樹脂のエマルション(C)は、重合性不飽和結合を有する単量体の乳化重合物である、請求項9に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項11】
前記重合性不飽和結合を有する単量体は、エチレン及び酢酸ビニルを含む、請求項10に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項12】
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、アルコキシシラン化合物(D)をさらに含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。」


第4 平成30年6月22日付けで通知した取消理由の概要

標記取消理由の概要は、以下のとおりである。

「理由1.本件訂正Aの請求項1,2及び6?8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである(以下、「取消理由1」という。)。

理由2.本件訂正Aの請求項1,2及び6?8に係る発明は、引用例1を主引用例とした発明に基づいて、又は、本件訂正Aの請求項9?12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された引用例1を主引用例とした発明及び引用例2?4に記載の周知の技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、取り消すべきものである(以下、「取消理由2」という。)。

理由3.本件訂正Aの請求項1,2,6?12は、特許請求の範囲の記載が本件発明の課題を解決できるとは認められないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない(以下、「取消理由3」という。)。

引用例1:特表2014-518909号公報(甲第1号証)
引用例2:特開昭62-270669号公報(甲第4号証)
引用例3:高分子論文集、1979年7月、Vol.36、No.7、pp.473-479(甲第5号証)
引用例4:特開2002-35687号公報(甲第6号証)

(甲第1,4?6号証は、平成29年9月29日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に添付されたものである。)」

なお、上記取消理由1は、申立理由のうち、甲1による訂正前の請求項1ないし3,6ないし8に対する新規性欠如に関する理由と同趣旨である。
そして、上記取消理由2は、申立理由のうち、甲1を主引例とする訂正前の請求項1ないし3,6ないし8に対する進歩性欠如、また、甲1を主引例とし、甲4?6を副引例とする訂正前の請求項9?12に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。


第5 取消理由1及び取消理由2に関する当審の判断

1 甲号証に記載の事項

(1)甲1(特表2014-518909号公報)
甲1には、次の記載がある。なお、下線は、当審が付与したものであり、以下、同様である。

(1-1)「【0010】
本発明は、エポキシ樹脂に対する硬化剤として使用可能な、親水性に修飾された多官能アミンACを提供し、この多官能アミンACは、1分子あたり1個を超える一級アミノ基、並びに、1分子あたり少なくとも1個の、エポキシド基と、二級アミノ基>NH、水酸基-OH、メルカプタン基-SH、アミド基-CO-NHR(式中Rは水素又は1?12個の炭素原子を有するアルキル基であって良い)、ヒドロキシエステル基、及び酸性基、特にカルボキシル基-COOH、スルホン酸基-SO_(3)H及びホスホン酸基-PO_(3)H_(2)から成る群から選択される反応性基との反応に由来する基、並びに好ましくはエポキシ樹脂と相溶性の部分も有する。エポキシド基と、二級アミノ基>NH、水酸基-OH、メルカプタン基-SH、アミド基-CO-NHR(式中Rは水素又は1?12個の炭素原子を有するアルキル基であって良い)、ヒドロキシエステル基、及び酸性基、特にカルボキシル基-COOH、スルホン酸基-SO_(3)H及びホスホン酸基-PO_(3)H_(2)から成る群から選択される反応性基との反応に由来するこれらの基は、以下である。三級ヒドロキシアミン、ヒドロキシエーテル、ヒドロキシメルカプタン、ヒドロキシアミド、及びヒドロキシエステル、ここでヒドロキシ基はアミノ、メルカプタン、アミド又はエステル基に対してα-又はβ-位に在る。
【0011】
多官能アミンACは、1分子あたり1個を超える、好ましくは少なくとも2個の、一級アミノ基を有する。用語「多官能アミン」は、アミンの混合物も含み、ここで、平均1個を超える、好ましくは少なくとも2個の、1分子あたりの一級アミノ基が在る。更に好ましい態様において、多官能アミンACは、少なくとも3個の一級アミノ基、特に好ましくは少なくとも4個の一級アミノ基を有する。
【0012】
本発明の更なる目的は、第一工程において、1分子あたり少なくとも1個の一級アミノ基、並びに好ましくは二級アミノ基>NH、水酸基-OH、メルカプタン基-SH、アミド基-CO-NHR(式中Rは水素又は1?12個の炭素原子を有するアルキル基であって良い)、ヒドロキシエステル基、及び酸性基、特にカルボキシル基-COOH、スルホン酸基-SO_(3)H及びホスホン酸基-PO_(3)H_(2)から成る群から選択される更なる反応性基を有するアミンAと、前記一級アミノ基に対するブロッキング剤B、好ましくはアルデヒド又はケトンとの反応により、残留一級アミノ基を有しない化合物、好ましくはアルジミン又はケチミンであってよいシッフ塩基を形成させて、ブロックされた一級アミノ基を有するアミノ官能化合物ABを形成させる工程、及び、第二工程において、前記ブロックされた一級アミノ基及び上に詳述した更なる反応性基を有する前記アミノ官能化合物ABと、前記アミンAの更なる反応性基と反応する官能基を有し、同様に親水性であり、好ましくは同様にエポキシ樹脂と相溶性である多官能化合物Cとを反応させて、ブロックされた一級アミノ基を有するアミノ官能化合物ABCを形成させる工程、により、1分子あたり1個を超える一級アミノ基を有する、親水性に修飾された多官能アミンACを調製する多段方法である。
【0013】
本発明の一層更なる目的は、エポキシド官能樹脂E、及び、1分子あたり1個を超える一級アミノ基を有し、かつエポキシ樹脂と相溶性の、樹脂Eに対する硬化剤を含む水性塗装バインダーである。
【0014】
本発明の一層更なる目的は、多官能一級アミンACを水に分散する工程、随意に、酸の添加により多官能一級アミンACを少なくとも部分的に中和する工程、多官能一級アミンACの水性分散物にエポキシド樹脂Eを添加する工程、この様に形成された混合物ACEを均質化する工程、及び、混合物ACEを基板表面に塗布する工程、を含む多官能一級アミンACの、エポキシド樹脂Eに対する硬化剤としての使用方法である。」

(1-2)「【0019】
アミン部分をアミンACの親水性部分に連結させる好ましいやり方は、それ故、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のエポキシ官能連結基、又は下記の式IIの繰り返し単位を2?10個有するオリゴマーエポキシ樹脂を使用することである。この連結のやり方は、アミン部分の化学的付属物と親水性部分を結合させ、同時に、エポキシ樹脂との所望の相溶性を付与する。
【0020】
エポキシド官能樹脂は、本発明の状況において、少なくとも350g/molのモル質量と、1分子あたり少なくとも1個のエポキシド基
【化1】


を有する樹脂物質として定義される。
【0021】
本発明の目的に対して好ましいエポキシ樹脂Eは、グリシドールとも呼ばれ、2,3-エポキシ-1-プロパノールであるグリシジルアルコールでエーテル化された多価フェノール性化合物に基づくエポキシ樹脂である。二塩基酸又は多塩基酸とグリシドールとのエステルを使用することも可能である。有用な多価フェノール性化合物は、好ましくはレゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールAとも呼ばれる2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFとも呼ばれるビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン及び4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン等の二価フェノール、並びにまた、ノボラックに基づく多価フェノール性化合物である。特に好ましいのは、ビスフェノールA又はビスフェノールFに基づくエポキシ樹脂、及びまた、これらの混合物に基づくエポキシ樹脂である。この様なエポキシ樹脂は、通常のやり方で、エピクロロヒドリンと、1分子中あたり少なくとも2個のフェノール性水酸基を有する多価フェノール性化合物とを、構造
-[-O-CH_(2)-CH(OH)-CH_(2)-OAr-]_(n)- (式II)
(式中Arは二価の、芳香族又は芳香族-脂肪族混合ラジカルを表し、例示すると、ビスフェノールAの場合は
-C_(6)H_(4)-C(CH_(3))_(2)-C_(6)H_(4)- (式III)
である)の形成下反応させることにより、又は、例えばビスフェノールAのジエーテルとグリシドールを、更なるビスフェノールA(又は他の多価フェノール性化合物)と反応させる、いわゆる促進反応により、作られる。ここで詳述した低モル質量エポキシ樹脂は、本発明に対して好ましい成分Cである。
・・・
【0023】
多官能アミンACは親水性であり、このことは、このアミンが水溶性か水分散性であることを意味する。「水溶性」によって、化学物質が、溶質の1%?99%の質量比範囲において、水中で均一な単一相溶液を形成することを意味する。「水分散性」によって、化学物質が、被分散物質の1%から反転までの質量比範囲において、水中で安定な分散物を形成すること、及びその化学物質中で、少なくとも60%の質量比まで水の安定な分散物を形成することを意味する。反転は、当業者に周知の通り、体積比約50%で起きる。反転より下では、分散物は、連続相としての水と、被分散相としての化学物質から成り、反転より上では、水は被分散相であり、化学物質は連続相である。
・・・
【0025】
アミンACとエポキシ樹脂との良好な相溶性は、アミンAC中に、少なくとも1の、好ましくは2と5の間の、式IIの連続的な単位があれば、達成される。」

(1-3)「【0039】
本発明に係る2バックエポキシ系は、金属、特に、これらが、優れた腐食保護、高い弾性、及び良好な硬度を付与する塩基性金属の塗装に使用可能である。硬度と弾性のこの組み合わせはアミンAC中の、複数の一級アミノ基間の平均距離によって定義される架橋密度に起因する、と信じられる。
【0040】
2パックエポキシ系の水分散物は、アミン成分ACの水溶液又は水分散物中にエポキシ樹脂Eを分散させ、及び有機又は無機顔料、例えば亜鉛に基づく及びリン酸塩に基づく機能性顔料、タルク等の充填剤、展着剤、消泡剤、沈降防止剤、粘度調整剤、融合助剤及び紫外線吸収剤等の添加物を随意に添加することにより、使用できる状態にされる。」

(1-4)「【0047】
例1 ケチミンK1の調製
ジエチレントリアミン(DETA)103g(1モル)及びメチルイソブチルケトン(MIBK)300g(3モル)を、機械的撹拌機、ディーン・スターク・トラップ及び気体導入口を備えた四つ口フラスコ中に充填し、窒素流の下、加熱して8時間還流させた。水が最早回収されないとき、過剰のMIBKを除去して純粋なDETA-MIBK-ケチミンを産出させた。
【0048】
例2 エポキシ-アミン付加物A1の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)2546g、平均モル質量1500g/molであるポリエチレングリコール450g及びメトキシプロパノール941gを、機械的撹拌機を備えた四つ口フラスコ中に充填し、撹拌下、100℃に加熱した。この温度に到達したとき、三フッ化ホウ素アミン(BF_(3)-NH_(3))3gをこのフラスコ中に充填し、この混合物を130℃に加熱し、この温度に2時間保持してエポキシド基の比含量を3.24モル/kgに到達させた。反応混合物を、次いで、100℃に冷却し、ビスフェノールA776gとトリフェニルホスフィン3gを反応フラスコ中に充填した。反応混合物を、次いで、撹拌下、130℃に再度加熱し、この温度に2時間保持して反応混合物中のエポキシド基の比含量を1.27モル/kgに到達させた。次に、メトキシプロパノール380gを添加し、反応混合物を80℃に冷却した。この温度で、例1のケチミンK1を1335g添加し、混合物を20分間撹拌した。混合物を、次いで、90℃に加熱し、撹拌下、ジエタノールアミン84gを添加し、混合物を90℃で20分間保持した。次いで、ジメチルアミノプロピルアミン10.2gを添加し、反応混合物を100℃に加熱して2時間撹拌した。BADGE95gを添加して未反応の自由アミンを捕集し、混合物を、100℃で更に1時間撹拌した。室温(23℃)に冷却後、固体の質量比が80%であることが決定され、また、23℃、剪断速度25s^(-1)で測定した動的粘度は5000mPa-sであった。
【0049】
例3 アミン硬化剤分散物D1調製用エポキシ-アミン付加物A1の水分散物
例2のエポキシアミン付加物A1の6624gを95℃に加熱し、乳酸の強度50%水溶液429gで中和し、引き続き水6700gを加えた。溶媒のメトキシプロパノールとMIBKを、100hPaの減圧下、60℃で留去した。溶媒の蒸留が止まったとき、クレジルグリシジルエーテル821gを分散物に添加し、混合物を2時間撹拌した。分散物の固体の質量比を、水1500gを添加して、35%に調整した。分散物の粘度は、23℃、剪断速度100s^(-1)で20mPa-s、アミン水素元素の比含量は0.88モル/kg、そのZ-平均粒径は150nm、及びその酸価は24mg/gであった。
【0050】
例4 アミン硬化剤分散物D2?D5の調製
ケチミンK2を、例1と同様にして、ビス(6-アミノヘキシル)-アミン1モルとメチルイソブチルケトン3モルから調製した。
【0051】
更なるケチミンK3を、例1と同様にして、ビス(3-アミノプロピル)-アミン1モルとメチルイソブチルケトン3モルから調製した。
【0052】
例2及び3に記載した方法に従って、数種の更なる硬化剤分散物D2?D5を、以下の成分を使用して、上に記載したエポキシアミン付加物A2?A5から調製した。
【0053】
エポキシアミン付加物A2、A3及びA4に関しては、以下の反応物質を伴い、例2の手順を使用した:2546gのBADGE;450gの平均モル質量1500g/molを有するポリエチレングリコール;628gのビスフェノールA;1895gのケチミンK2;84gのジエタノールアミン;及び97.7gのN,N-ジエチルアミノプロピルアミン。エポキシアミン付加物A5に関しては、以下の反応物質を伴い、例2の手順を使用した:2546gのBADGE;450gの平均モル質量1500g/molを有するポリエチレングリコール;628gのビスフェノールA;1475gのケチミンK3;84gのジエタノールアミン;及び97.7gのN,N-ジエチルアミノプロピルアミン。付加物は、90%の固体の質量比で得られ、続いてメトキシプロパノール633.41gを添加した。
【0054】
これらの付加物A2、A3、A4及びA5を、強度50%の乳酸水溶液462.16g(A2、A4、A5)又は513.52g(A3)を添加して部分的に中和し、及びクレジルグリシジルエーテル492.6g(A3)、グリシジルネオデカノエート1250g(A4)、グリシジルネオデカノエート480g(A5)を添加し、(A2)には何も加えなかった。
【表1】

【0055】
例5 顔料ペーストの調製 表2の成分Aを、機械的撹拌機を備えた容器中で、与えられた順に混合した。混合物を10分間均質化した後、ビーズミル上、直径1mmを有する酸化ジルコニウムビーズで、3000/minで30分間磨り砕いた。最後に、成分Bを添加し、混合物を機械的撹拌機で均質化した。得られた顔料ペーストは75%の固体の質量比を有していた。
【表2】

【0056】
例6 塗料の調製
例3及び4に記載した分散物D1?D5を、2パックエポキシ-アミン塗料に対する硬化剤として使用した。これらの分散物を例5の顔料ペーストと混合して2バック系の成分1を得た。塗料を基板に塗布する直前に、成分2-親水性に修飾されたエポキシ樹脂-を、機械的撹拌機で成分1に混合した。エポキシド基の物質量n_(EP)に対する活性N-H基の物質量n_(NH)の比n_(NH)/n_(EP)を0.7モル/1モルに設定した。顔料ペーストの質量を、バインダーの質量に対する顔料の質量の比が塗料中で1.5/1となる様に選んだ。
【0057】
例6.1 塗料P1
分散物D1の100gを、例5の顔料ペースト70gと脱イオン水35gと混合した。混合物を、機械的撹拌機で30分間撹拌した後、ビスフェノールAジグリシジルエーテル“BADGE”618g及びビスフェノールFジグリシジルエーテル262gと、平均モル質量1kg/molのポリエチレングリコール385gとBADGE612g及び三フッ化ホウ素-ベンジルアミン錯体2gとを反応させて作製した乳化剤119g(EP0000605B1参照)との混合物として調製した、乳化したエポキシ樹脂Elの25gを、撹拌した混合物に添加した。膜形成を向上させるため、n-ブトキシプロパノール2gを添加した。得られた塗料は、固体の質量比48.5%、及び23℃、剪断速度25s^(-1)で測定した粘度300mPa-sを有していた。
【0058】
例6.2 塗料P2及びP3
上述した手順に従って、2パック塗料を、上述した乳化したエポキシ樹脂Elと共に、硬化剤分散物D2及びD3から調製した。
【0059】
例7 塗料試験
例6.1及び6.2の着色塗料P1、P2及びP3から、塗料膜を、未乾燥の層厚200μmに塗布した。膜を、いずれの場合も、室温(23℃)で6時間硬化させた。乾燥後の表面は、全ての場合において滑らかであり、エポキシ樹脂と硬化剤の良好な相溶性を示していた。
【0060】
塗布された基板について、以下の試験を行った:乾燥時間、DIN EN ISO 1522の、ケーニッヒに準じた振子硬度、光沢、及びASTM D4752に準じたMEK二重擦りとして測定した耐薬品性。
【0061】
以下の表3は、着色塗料膜(200μm)について測定した結果を載せている。
【表3】

【0062】
例8 比較試験
耐食塗料における新規製品の能力を評価するために、それぞれ、分散物中の固体の質量比53%と、エポキシ基の比含量1.92モル/kg(“エポキシ当量”520g/mol)、後者は固体樹脂の質量に基づく、とを有する固体エポキシ樹脂E2の水系エポキシ分散物と組み合わせて、これらを最先端のエポキシ硬化剤、CA2及びCA1と比較した。
【0063】
EP0000605B1の例3Bに準じて作製した硬化剤CA1は、速乾性組成物用の硬化剤であり、硬化時間は短いが最適化された耐食能は与えない。
【0064】
硬化剤CA2はEP1266920B1の例「アミンハーター1」に従って作製した。この硬化剤はエポキシ樹脂分散物に非常に良好な耐食能を提供するが、乾燥時間が長い難点を有する。
【0065】
乾燥時間、ポットライフ、及び硬度の試験のため、それぞれの硬化剤分散物CA1、CA2、D1及びD2とエポキシ樹脂分散物E2とを、硬化剤分散物中に存在するアミン水素原子の物質量n(NH)に対する分散物E2中のエポキシ基の物質量n(EP)の比n(EP)/n(NH)が0.6モル/1モルで組合せて、透明塗料混合物を作製した。
【0066】
塗料P4及びP5を、硬化剤分散物D1及びD2それぞれと例5の顔料ペーストとを混合して調製し、この後者の混合物を、基板に塗布する直前に、エポキシ樹脂分散物E2と混合した。例5の顔料ペーストを使用した比較着色塗料C1及びC2は、同じエポキシ樹脂分散物E2と上述の比較硬化剤CA1及びCA2との組合わせ物であった。エポキシド基の物質量n_(EP)に対するアミン水素原子の物質量n_(NH)の比n_(NH)/n_(EP)を0.6モル:1モルに設定し、かつ、顔料ペーストの質量を、バインダーの質量に対する顔料の質量の比が塗料中で1.5/1となる様に選んだ。
【0067】
表4は、この比較で得られた試験結果を示す。乾燥時間、ポットライフ及び硬度は、透明塗料について測定した。ポットライフを定めるために、2パック塗料の混合後、30分間隔で合計390分間まで、透明塗料をレネタ紙カードに塗布し、曇りが現れてこない最長の時間をポットライフとして提示した。
【表4】



(2)甲4(特開昭62-270669号公報)
甲4には、次の記載がある。

(2-1)「【特許請求の範囲】
(1)エポキシ樹脂エマルションと硬化剤、エチレン酢酸ビニル系共重合体エマルションと架橋添加物を一液中に混和し、必要に応じて細骨材、着色剤、塗料用添加剤を含む樹脂固型分として、エポキシ樹脂5?30%、エチレン酢酸ビニル系共重合体樹脂5?25%、さらに補強充填材、骨材塗料用添加剤が5?70%からなる保護被覆用組成物。」

(2-2)「さらにエポキシ樹脂とエチレン酢酸ビニル系樹脂の配合、組合せにより、接着力のあるもの、柔軟性のあるものが得られる。」(2頁左上欄15行?18行)

(3)甲5(高分子論文集、1979年7月、Vol.36、No.7、pp.473-479)
甲5には、次の記載がある。

(3-1)「エチレンと酢酸ビニルの乳化共重合(高温重合法)
・・・
要 旨 エチレン-酢酸ビニル共重合エマルションは塗料・接着剤などの応用分野をもち、その工業的製造法としては、半回分式高温乳化共重合法が有利と考えられる。本重合法を確立するために、重合温度70℃付近、エチレン圧20kg/cm^(2)付近で、乳化剤の選択、各種重合条件の影響について検討し、最適重合条件を決定した。また、重合反応速度と得られた共重合体の組成とから、生成エチレン-酢酸ビニル共重合体は若干の分岐をもつことを確認したが、低温レドックス重合より得られた比較的分岐の少ない、より高重合度のエチレン-酢酸ビニル共重合体と比較してもほぼ同様の皮膜強伸度をもつことが分かった。したがって、本法はエチレン-酢酸ビニル共重合エマルションの工業的製造法として応用しうるものと思われる。」(第1頁)

(4)甲6(特開2002-35687号公報)
甲6には、次の記載がある。

(4-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐候性鋼表面に、無公害防錆顔料を含有した水性エポキシ樹脂系防食塗料を乾燥膜厚30?70μm となるように塗装し、乾燥し、次いでその上に、促進耐候性試験サンシャインウェザーメーター照射300時間後の光沢保持率が80%以上の塗膜を形成する水性着色上塗塗料を乾燥膜厚20?40μm となるように塗装し、乾燥することを特徴とする耐候性鋼の防食法。
【請求項2】 前記防食塗料が、シランカップリング剤を含有する請求項1記載の防食法。」

(4-2)「【0011】本発明の防汚塗料では、無公害防錆顔料と併用して、耐候性鋼表面を不働態化し、電位を均一にする作用のある導電性ポリアニリンや、耐候性鋼と塗膜との密着性を強固にする2-ベンゾチアゾチオコハク酸や、ジフェニルチオカルバゾン、N,N?ジフェニルエチレンジアミン、S?ジフェニルカルバジド、フェノシアゾリン等の有機系防錆剤を併用することも可能である。これら防錆剤は、エポキシ樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して、例えば、0?40質量部、好ましくは、2?30質量部添加するのが適当である。更に、本発明で使用される防食塗料には、樹脂-防錆顔料-耐候性鋼素材を複合化し、密着性を向上させるために、シランカップリング剤を配合するのが好ましい。
【0012】このようなシランカップリング剤の具体例を挙げると、γ-クロロプロピルトリメトキシシランや、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチル、γ-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン等が代表的なものとして挙げられる。シランカップリング剤は、樹脂(及び硬化剤)100質量部に対して、例えば、0.1?20質量部、好ましくは、1?5質量部添加する。」


2 甲1に記載の発明

甲1には、上記1(1-4)の例1?3から、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールを反応させて得られたエポキシと、ジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとから得られたDETA-MIBK-ケチミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンとから製造されたエポキシ-アミン付加物A1を乳酸水溶液で中和及び加熱し(ブロッキング剤を取り除き)、水を加えて、アミン硬化剤分散物D1を調製することが記載され、同例6.1,7から、当該アミン硬化剤分散物D1と顔料ペーストの混合物(成分1)と、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルと乳化剤との混合物である乳化したエポキシ樹脂E1(成分2)とを混合して塗料P1を製造し、室温(23℃)で6時間硬化させる2パックエポキシ-アミン塗料の例が記載されている。
そうすると、甲1には、「成分1と成分2とからなる2パックの塗料であって、
前記成分1は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールを反応させて得られたエポキシと、ジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとから得られたDETA-MIBK-ケチミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンとから製造されたエポキシ-アミン付加物A1(からMIBKを取り除いた水分散物)を含み、
前記成分2は、乳化したエポキシ樹脂E1を含む、塗料。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。


3 本件発明と甲1発明との対比・判断

(1)本件発明1について

ア 本件発明1と甲1発明との一致点・相違点

本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「成分1」、「成分2」、「2パック」は、本件発明1の「第1剤」、「第2剤」、「2液型」にそれぞれ相当する。また、甲1発明の「塗料」は、甲1の上記1.(1-4)の例1?3より、水を加えたアミン硬化剤分散物D1を使用すること、同例6.1より、乳化したエポキシ樹脂E1を使用するという記載からみて、D1及びE1を混合した塗料P1は、水性塗料組成物であると認められるから、本件発明1の「水性塗料組成物」に、甲1発明の「乳化したエポキシ樹脂E1」は、本件発明1の「エポキシ樹脂エマルション(B)」にそれぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、「第1剤と第2剤とからなる2液型の水性塗料組成物であって、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含む、水性塗料組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

【相違点1】第1剤において、本件発明1は、「第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000であり、数平均分子量が1500?10000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含」み、「前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である」のに対して、甲1発明は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールを反応させて得られたエポキシと、ジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンとから得られたDETA-MIBK-ケチミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミンとから製造されたエポキシ-アミン付加物A1を含み、アミン当量、エポキシ当量及び数平均分子量について明示がない点。

【相違点2】水性塗料組成物が、本件発明1は、「自然乾燥型」水性塗料組成物であるのに対し、甲1発明にはそのように記載されていない点。

イ 相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、【相違点1】について検討する。

まず、甲1の上記1(1)(1-1)?(1-4)には、エポキシ-アミン付加物A1の数平均分子量が記載されていないから、上記【相違点1】は、実質的な相違点となるものであり、本件発明1は、甲1発明ではない。

さらに、上記【相違点1】のうち、甲1発明において数平均分子量の範囲を本件発明1に記載の範囲とすることが、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。

甲1の上記(1-4)の段落【0048】や、同(1-2)の段落【0020】、同段落【0019】及び同段落【0025】から、反応原料の1モル当たりの分子量は算出できるものの、実際に反応に用いられるビスフェノールAジグリシジルエーテル及びポリエチレングリコールは重合度の異なるオリゴマーの混合物であり、分子量分布を有しており、また、反応物も単一の化合物からなるものではなく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール及びビスフェノールAが様々な割合で相互に反応したエポキシ基を有する反応物にさらに例1のケチミン、ジエタノールアミン及びジメチルアミノプロピルアミンが様々な割合で反応したものであるから、化学構造や重合度の異なるオリゴマーの混合物であり、分子量分布を有していることから、一概に反応物の数平均分子量を特定できるものではなく、そうすると、本件発明1の数平均分子量の範囲と重複するとはいえないし、ましてや本件発明1に記載の範囲とすることが、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

そして、甲4?6を参酌しても、エポキシ-アミン付加物A1の数平均分子量を本件発明1の範囲とすることが記載されていない。前述のとおり、数平均分子量を1500?10000とすることについて着目していない甲1に記載の発明において、甲4?6を参酌しても、当該水性エポキシ系アミン樹脂を選択することを認識することができるとはいえない。

一方、本件明細書の段落【0040】を参酌するに、水性エポキシ系アミン樹脂の数平均分子量が上記範囲であると、水性エポキシ系アミン樹脂とエポキシ樹脂との均一混合が容易になるので、硬化度、ひいては強度が均一な塗膜を得ることができること、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性、耐水性、防食性、旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性を高めるうえでも有利であることが理解でき、水性エポキシ系アミン樹脂の数平均分子量を1500?10000とした結果として、段落【0107】の表2に記載された完全硬化前耐水性、旧塗膜に対する付着性及び耐衝撃性を奏していると解される。

そうすると、本件発明1は、【相違点1】のうち、数平均分子量の範囲において甲1発明から容易に想到しうるものではないから、【相違点1】が実質的な相違点である。ゆえに、【相違点2】を検討するまでもなく、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2について

本件発明2は、本件発明1を引用し、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型であることを特定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明2は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明3について

本件発明3は、本件発明1を引用し、アミン変性する前のエポキシ樹脂のエポキシ当量をさらに限定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明3は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明6,7について

本件発明6は、本件発明1を引用し、また、本件発明7は、本件発明6を引用し、水性エポキシ系アミン樹脂をさらに限定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明6,7は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明8について

本件発明8は、本件発明1を引用し、エポキシ樹脂エマルションをさらに限定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明8は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件発明9?11について

本件発明9は、本件発明1を引用し、また、本件発明10は、本件発明9を引用し、そして、本件発明11は、本件発明10を引用し、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に、非硬化性樹脂のエマルション(C)をさらに添加することを特定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明9?11は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)本件発明12について

本件発明12は、本件発明1を引用し、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に、アルコキシシラン化合物(D)をさらに添加することを特定するものである。

上記(1)で検討したとおり、本件発明1と同様に、本件発明12は、甲1発明、甲1に記載の事項及び甲4?6に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 取消理由で採用しなかった申立理由

異議申立人は、申立理由として、本件訂正A前の請求項1?3,6?8に対して、甲2(国際公開第2011/118790号)を主引例として甲3(特開2008-247958号公報)を副引例とする特許法第29条第2項違反について主張することから以下に検討する。

1 甲号証に記載の事項

(1)甲2(国際公開第2011/118790号)
甲2には、次の記載がある。

(1-1)「[請求項1]分子量が2000以上のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂をアミン化合物で変性して得られたアミン変性エポキシ樹脂(A)と、
沸点200℃以上で非水溶性である可塑剤(C)とを含む、
水性塗料組成物。」

(1-2)「[0014] エポキシ樹脂(変性前)の分子量は、2000以上であり、より好ましくは2000?8500、さらに好ましくは3000?8000である。分子量が2000未満であると、防食性が低下するおそれがある。分子量が8500を超えると、得られるアミン変性エポキシ樹脂(A)の水への分散または溶解が困難となり、相分離を起こすおそれがある。ここで、「分子量」とは、上記構造式を有しているものとして、エポキシ当量×2で算出される値をいう。」

(1-3)「[0033] 本発明の水性塗料組成物は、添加剤を含み得る。添加剤の具体例としては、分散剤、粘性調整剤、硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化剤等が挙げられる。なお、本発明の水性塗料組成物において硬化剤は必要ないが、塗膜にさらに高いレベルの特性が必要な場合など、適宜、用いることができる。硬化剤としては、例えば、イソシアネート化合物およびメラミン化合物の他に、アミン変性エポキシ樹脂(A)が1級または2級のアミノ基を有する場合、(メタ)アクリロイル基を複数個有する化合物、エポキシ基を複数個有する化合物が使用できる。」

(1-4)「[0055][実施例1] ビスフェノールAのジグリシジルエーテル1005部およびビスフェノールA495部を、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」と言う)500部に溶解した。ここに、ジメチルベンジルアミン2部を加えて、エポキシ当量が1500になるまで反応を続け、原料となるビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂を得た。
反応終了後、ジブチルアミン123部を加え、120℃で1時間反応させて、ビスフェノール骨格を有するアミン変性エポキシ樹脂(A)を得た。
可塑剤(C)であるジプロピレングリコールn-ブチルエーテル286部(アミン変性エポキシ樹脂(A)との合計に対して15質量%)を加えた後、酸化合物(B)の90%酢酸3部を加えて中和を行った(中和率20%)。90℃に保ったままで攪拌しながら、水2600部を徐々に加えて、均一化を行った。さらに減圧下50℃で、MIBKと水との混合物1000部を留去して、クリアタイプの水性塗料組成物(水分散体)を得た。
このクリアタイプの水性塗料組成物50部と先の製造例で得られた顔料ペースト50部とを混合し、ディスパーで10分間攪拌することによって、白色水性塗料組成物を得た。
[0056][実施例2]
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル1939部およびビスフェノールA1061部をMIBK1000部に溶解した。ここに、ジメチルベンジルアミン4部を加えて、エポキシ当量が3000になるまで反応を続け、原料となるビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂を得た。
反応終了後、ジエチレントリアミンのMIBKジケチミン化物(以下、「DETAジケチミン」と言う)249部を加え、120℃で1時間反応させて、ビスフェノール骨格を有するアミン変性エポキシ樹脂(A)を得た。
可塑剤(C)であるジプロピレングリコールn-ブチルエーテル1059部(アミン変性エポキシ樹脂(A)との合計に対して25質量%)を加えた後、酸化合物(B)の90%酢酸48部を加えて中和を行った(中和率38%)。90℃に保ったままで攪拌しながら、水4631部を徐々に加えて、均一化を行った。さらに減圧下50℃で、MIBKと水との混合物2324部を留去して、クリアタイプの水性塗料組成物(水分散体)を得た。さらに、実施例1と同様にして、白色水性塗料組成物を得た。」

(2)甲3(特開2008-247958号公報)
甲3には、次の記載がある。

(2-1)「【請求項1】
エポキシ樹脂(a1)と水性媒体(a2)とを必須成分とするエポキシ樹脂水性分散体(A)、及びアミン系硬化剤(B)を必須成分とする水性エポキシ樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂水性分散体(A)中にアクリロイル基含有芳香族化合物(a3)を含有することを特徴とする水性エポキシ樹脂組成物。
・・・
【請求項4】
前記ビスフェノ-ル型エポキシ樹脂がエポキシ当量185?600g/eqである請求項3記載の水性エポキシ樹脂組成物。」


2 甲2に記載の発明

甲2には、上記第6 1(1-4)の段落[0056]から、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールA、ジメチルベンジルアミンとにより、エポキシ当量が3000のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂を得た後、ジエチレントリアミンのMIBKジケチミン化物と反応させて、ビスフェノール骨格を有するアミン変性エポキシ樹脂(A)を作製し、酢酸で中和を行ってMIBKを取り除いて得られたクリアタイプの水性塗料組成物(水分散体)が記載されている。さらに、当該水性塗料組成物に顔料ペーストを加え、白色水性塗料組成物を作製した旨記載されている。
そうすると、甲2には、「ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールAを反応させて得られたエポキシ樹脂と、ジエチレントリアミンのMIBKジケチミン化物とから製造されたアミン変性エポキシ樹脂(A)からMIBKを取り除いた加水分解物を含む水性塗料組成物(水分散体)を含み、
前記アミン変性エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が3000である、白色水性塗料組成物。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。


3 本件発明1と甲2発明との対比・判断

(1)本件発明1と甲2発明との一致点・相違点

本件発明1と甲2発明を対比する。

甲2発明の「アミン変性エポキシ樹脂(A)からMIBKを取り除いた加水分解物」は、MIBKにより第1級アミノ基が保護されたジエチレントリアミンのMIBKジケチミン化物をエポキシ樹脂と反応させ、その後、酸加水分解により第1級アミノ基を再生させたものであるから、本件発明1の「第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有」する水性エポキシ系アミン樹脂(A)に相当するといえる。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、「第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有する水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が3000である、水性塗料組成物。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点ア)水性エポキシ系アミン樹脂(A)について、本件発明1は、「アミン当量が500?2000であり、数平均分子量が1500?10000である」と特定されているのに対して、甲2発明は、そのような特定がない点。

(相違点イ)水性塗料組成物について、本件発明1は、「第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、前記第1剤は、」水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、「前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含」むのに対して、甲2発明は、2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であること、第2剤としてエポキシ樹脂エマルション(B)を含むことが特定されていない点。

(2)相違点に関する判断

事案に鑑みて、はじめに、(相違点イ)について検討する。

甲2の上記(1-3)には、エポキシ基を複数個有する化合物を硬化剤としてアミン変性エポキシ樹脂と併用する旨示唆されており、2液型の水性塗料組成物として甲2発明を適用することが記載されておらず、当該記載は一般的な記載にとどまるものである。
一方、本件発明1は、特定の水性エポキシ系アミン樹脂(A)を第1剤、エポキシ樹脂エマルション(B)を第2剤とする水性塗料組成物を得ることによって、完全硬化前耐水性、旧塗膜に対する付着性及び耐衝撃性に優れるという効果を発揮するものであるから、甲3を参酌しても、当該効果について記載がなされていない甲2発明及び甲2,3に記載の技術的事項から、特定の水性エポキシ系アミン樹脂(A)及びエポキシ樹脂エマルション(B)とからなる2液型の水性塗料組成物が前記効果を奏することは自明なものではない。

したがって、本件発明1は、甲2発明、甲2,3に記載の技術的事項から、当業者が容易になし得たことではない。

そして、本件発明2,3,6?8についても同様である。


第7 むすび

上記「第5」及び「第6」で検討したとおり、本件特許1ないし3,6?12は、特許法第29条第1項及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当するものではなく、同法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第4号に該当するものではないから、上記取消理由1?3及び上記申立理由によっては、本件特許1ないし3,6?12を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1ないし3,6?12を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり、決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自然乾燥型水性塗料組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型の水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化型の塗料組成物は様々な用途の塗料に適用されており、その代表例は、被塗物に防食(防錆)塗膜を付与するための防食塗料である。従来、防食塗料としては、エポキシ樹脂を含む主剤とポリアミン系硬化剤とからなる2液型の有機溶剤系塗料が主に使用されてきた。しかしながら環境負荷低減の観点から、有機溶剤系塗料から水性塗料への転換が強く求められており、このような背景の下、近年では、各種の水性塗料が開発され、上市されるようになっている。
【0003】
例えば特許第5246977号明細書(特許文献1)には、エポキシ樹脂エマルジョンを含む主剤とアミン樹脂エマルジョンを含む硬化剤とからなる水性エポキシ樹脂下塗り塗料が開示されている。硬化剤に含まれるアミン樹脂エマルジョンは、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン樹脂が水性媒体中で分散してなる乳濁液である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5246977号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば水性塗料を屋外で塗装する場合、完全に硬化する前の塗膜が降雨に晒されることがある。このため、水性塗料には「完全硬化前耐水性」が求められる。「完全硬化前耐水性」とは、硬化初期段階の塗膜、具体的には完全硬化はしていないがベタツキがない程度には硬化している塗膜の耐水性をいう。完全硬化前耐水性に劣る場合、塗装後の塗膜が完全に硬化する前に降雨等に晒されると、ワレやフクレを生じることがある。塗膜にワレやフクレが生じると、塗膜形成によって被塗物に付与されるべき性能(例えば防食塗膜であれば防食性)が低下してしまう。特許文献1に記載の水性エポキシ樹脂下塗り塗料は、この完全硬化前耐水性において改善の余地があった。
【0006】
そこで本発明は、完全硬化前耐水性に優れる塗膜を形成することのできる硬化型の水性塗料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示される自然乾燥型水性塗料組成物、及びこれに用いることのできる水性エポキシ系アミン樹脂を提供する。
【0008】
〔1〕 第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含む、自然乾燥型水性塗料組成物。
【0009】
〔2〕 前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型である、〔1〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0010】
〔3〕 前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である、〔1〕又は〔2〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0011】
〔4〕 前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む、〔1〕?〔3〕のいずれかに記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0012】
〔5〕 前記水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と前記水性エポキシ系アミン樹脂(A2)との質量比が8/2?2/8である、〔4〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0013】
〔6〕 前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ系アミン樹脂のアミノ基を酸で中和して得られるものである、〔1〕?〔5〕のいずれかに記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0014】
〔7〕 前記中和における中和率が20?60%である、〔6〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0015】
〔8〕 前記エポキシ樹脂エマルション(B)は、エポキシ当量が150?1200であるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエマルションである、〔1〕?〔7〕のいずれかに記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0016】
〔9〕 前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、非硬化性樹脂のエマルション(C)をさらに含む、〔1〕?〔8〕のいずれかに記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0017】
〔10〕 前記非硬化性樹脂のエマルション(C)は、重合性不飽和結合を有する単量体の乳化重合物である、〔9〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0018】
〔11〕 前記重合性不飽和結合を有する単量体は、エチレン及び酢酸ビニルを含む、〔10〕に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0019】
〔12〕 前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、アルコキシシラン化合物(D)をさらに含む、〔1〕?〔11〕のいずれかに記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【0020】
〔13〕 第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、完全硬化前耐水性に優れる塗膜を形成することのできる硬化型の水性塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る水性塗料組成物は、水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含む第1剤と、エポキシ樹脂エマルション(B)を含む第2剤とからなる2液型の硬化性自然乾燥型塗料組成物である。本発明に係る水性塗料組成物は、第1剤と第2剤とを混合することによって生じる水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)との硬化反応によって硬化塗膜を形成することができる。本発明に係る水性塗料組成物は、防食塗料(重防食塗料を含む。)などとして好適に用いることができる。
【0023】
<水性エポキシ系アミン樹脂(A)>
第1剤に含まれる水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000の水性エポキシ系アミン樹脂である。本明細書において「水性」とは、「水溶性」又は「水分散型」を意味する。本発明に係る水性塗料組成物は、水性エポキシ系アミン樹脂(A)を2種以上含んでいてもよい。
【0024】
上記所定の水性エポキシ系アミン樹脂(A)をエポキシ樹脂エマルション(B)と組み合わせて用いる本発明に係る水性塗料組成物によれば、完全硬化前耐水性に優れる塗膜を形成することができる。本明細書において「完全硬化前耐水性」とは、硬化初期段階の塗膜、具体的には完全硬化はしていないがベタツキがない程度には硬化している塗膜の耐水性をいう。完全硬化前耐水性に劣る場合、塗装後の塗膜が完全に硬化する前に降雨等に晒されると、ワレやフクレを生じることがある。塗膜にワレやフクレが生じると、塗膜形成によって被塗物に付与されるべき性能(例えば防食塗膜であれば防食性)が低下してしまう。完全硬化前耐水性に優れる塗膜を形成し得る本発明に係る水性塗料組成物は、塗装後、塗膜が完全に硬化する前に降雨に晒される可能性のある屋外の被塗物への適用に特に有効である。
【0025】
また本発明に係る水性塗料組成物によれば、得られる完全硬化塗膜(本明細書では、完全硬化前耐水性が評価される塗膜と区別するために、完全又はほぼ完全に硬化した塗膜を指す用語として「完全硬化塗膜」を用いる。)の可撓性(靱性)、ひいては耐衝撃性を高め得る。さらに本発明に係る水性塗料組成物によれば、得られる完全硬化塗膜の旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性(密着性)を高め得る。旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性の向上は、塗膜の防食性を向上させる。本明細書において「旧塗膜」とは、被塗物に過去に形成され、使用に供された古い塗膜をいい、本発明に係る水性塗料組成物から形成された塗膜であってもよいし、これ以外の塗料組成物から形成された塗膜であってもよい。旧塗膜に対する付着性が良好な水性塗料組成物は、旧塗膜を含む被塗物の表面に新たに塗膜を形成する場合や、旧塗膜を含む被塗物の表面に補修塗装を施す場合に有用である。
【0026】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂との硬化反応により架橋構造を形成することができるよう、水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択されるアミノ基を、好ましくは2以上有する。当該アミノ基の数は、3以上、さらには4以上であってもよい。
【0027】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、完全硬化前耐水性及び完全硬化塗膜の耐水性の観点から、好ましくは水分散型である。また、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型であると、エポキシ樹脂エマルション(B)との均一混合が容易になり、かつ、水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂との急激な反応の進行が抑制されて適度な反応性を得ることができる。その結果、可使時間の長い水性塗料組成物を得ることができる。より具体的には、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型であると、塗装前の水性塗料組成物は、第1剤と第2剤との混合後においても水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂とが接触しにくいので、反応が進みにくく保存性及び塗工性が良好である。一方、塗装後は、分散媒(例えば、水)が揮発し、水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂とが接触しやすくなるので、常温(25℃若しくはその近傍)又はそれ以下の温度においても硬化反応が進行し、塗膜を形成することができる。
【0028】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量(アミノ基の当量)が500?2000であり、好ましくは600?1900、より好ましくは800?1800である。本発明に係る水性塗料組成物は、アミン当量が異なる水性エポキシ系アミン樹脂(A)を2種以上含んでいてもよい。アミン当量が上記範囲である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を用いることにより、塗膜に優れた完全硬化前耐水性を付与することができる。またアミン当量が上記範囲である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を用いることは、完全硬化塗膜の耐衝撃性及び/又は旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性を高めるうえでも有利である。アミン当量が500未満であると、得られる塗膜は完全硬化前耐水性に劣り、また、完全硬化塗膜の耐水性にも劣る傾向にある。アミン当量が2000を超える場合、エポキシ系アミン樹脂と水とが相分離を起こして水性エポキシ系アミン樹脂(A)が得られないおそれがある。水性エポキシ系アミン樹脂(A)のアミン当量の調整により、水性塗料組成物の特性や塗膜物性を制御することもできる。
【0029】
本明細書において「アミン当量」とは、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が第1級アミノ基を有する場合(エポキシ系アミン樹脂(A)が第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有する場合を含む。)、第1級アミノ基1個あたりの水性エポキシ系アミン樹脂(A)の分子量(樹脂固形分換算)を意味し、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が第1級アミノ基を有しない場合、第2級アミノ基の1個あたりの水性エポキシ系アミン樹脂(A)の分子量(樹脂固形分換算)を意味する。水性エポキシ系アミン樹脂(A)のアミン当量は、原料配合量から求めることができる。
【0030】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、例えば、エポキシ樹脂(以下、水性エポキシ系アミン樹脂(A)を形成するエポキシ樹脂を「第1エポキシ樹脂」ともいう。)をアミン変性して得られるもの(すなわち、アミン化エポキシ樹脂)であることができる。この第1エポキシ樹脂をアミン変性して得られる水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、好ましくは、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択されるアミノ基を2以上有する水性エポキシ系ポリアミン樹脂である。本明細書において「エポキシ樹脂」とは、エポキシ基(例えばグリシジル基)を分子内に1個以上有する化合物をいう。第1エポキシ樹脂が有するエポキシ基の数は、好ましくは2以上であり、より好ましくは2である。第1エポキシ樹脂の具体例は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含み、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。第1エポキシ樹脂として2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。水性エポキシ系アミン樹脂(A)のアミン当量は、その分子量や、アミン変性により導入される第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基の量の調整によって制御することができる。
【0031】
第1エポキシ樹脂は、エポキシ基と反応し得る活性水素含有化合物とエポキシ基との反応を利用した鎖延長によって分子量を増加させたり、変性させたりしたものであってもよい。活性水素含有化合物としては、例えば、ダイマー酸、ジアミン、ポリエーテルポリオールなどの2官能性の化合物が挙げられる。また、第1エポキシ樹脂は、脂肪酸を付加させたものであってもよい。脂肪酸の付加により、樹脂中に柔らかい成分を導入することが可能になるので、これにより完全硬化塗膜の可撓性、ひいては耐衝撃性を向上させ得る。また脂肪酸の付加によってアミン変性させる部位(エポキシ基の数)を減らすことにより、第1エポキシ樹脂の反応性を調整(低下)させることもできる。
【0032】
第1エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは700?3800であり、より好ましくは800?3600であり、さらに好ましくは800?3500である。第1エポキシ樹脂のエポキシ当量が上記範囲であると、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐水性、防食性を高めるうえで有利である。第1エポキシ樹脂のエポキシ当量が700未満の場合、得られる塗膜の完全硬化前耐水性が低くなる傾向がある。第1エポキシ樹脂のエポキシ当量が3800を超える場合、エポキシ系アミン樹脂と水とが相分離を起こして水性エポキシ系アミン樹脂(A)が得られないおそれがある。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236に従って求めることができる。
【0033】
第1エポキシ樹脂をアミン変性するための方法の具体例は、1)第1級アミノ基含有ポリアミンを第1エポキシ樹脂に付加させる方法、2)ケチミン化したアミノ基含有化合物を第1エポキシ樹脂に付加させる方法を含む。これらの方法によって得られるエポキシ系アミン樹脂(アミン化エポキシ樹脂)は、分子内に1以上の第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基、ならびに第2級水酸基を有するエポキシ系ポリアミン樹脂である。このエポキシ系ポリアミン樹脂が有する第1級アミノ基、第2級アミノ基及び/又は水酸基の一部にエポキシ基、酸無水物基、酸ハロゲン基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基等の官能基を有する化合物を反応させることによってさらに変性した樹脂を水性エポキシ系アミン樹脂(A)として用いてもよい。かかる水性エポキシ系アミン樹脂(A)を使用又は併用することにより、得られる塗膜の物性を調整することができる。本明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、メタクリロイル及びアクリロイルの少なくともいずれか一方を意味する。
【0034】
上記1)の方法は、より具体的には、第1級アミノ基含有ポリアミンの第1級アミノ基と第1エポキシ樹脂のエポキシ基とを反応させて第2級アミノ基を形成させ、その結果、第2級アミノ基を有する上記ポリアミン樹脂を生成させる方法である。第1級アミノ基含有ポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等が挙げられる。第1級アミノ基含有ポリアミンは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記2)の方法は、より具体的には、ケチミン化したアミノ基含有化合物と第1エポキシ樹脂とを反応させた後、ケチミン基を加水分解することにより、第1級アミノ基を形成させ、その結果、第1級アミノ基を有する上記ポリアミン樹脂を生成させる方法である。なお、ケチミン化したアミノ基含有化合物と第1エポキシ樹脂とを反応させる際には、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエチルアミン等の第2級アミンを併存させてもよい。
【0036】
ケチミン化したアミノ基含有化合物は、第1級アミノ基含有化合物とケトンとを反応させて得ることができる。第1級アミノ基含有化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジブチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の第1級アミノ基含有ポリアミン;アミノエチルエタノールアミン、メチルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン等が挙げられる。第1級アミノ基含有化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0037】
上述のように水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択されるアミノ基を、好ましくは2以上有する。水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、例えば、一方の末端に上記アミノ基を1以上(例えば2以上)有するとともに、他方の末端に上記アミノ基を1以上(例えば2以上)有する。
【0038】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られるエポキシ系アミン樹脂(好ましくはエポキシ系ポリアミン樹脂)のアミノ基を酸で中和して得られるものであってもよい。このような酸による中和は、例えば、エポキシ樹脂をアミン変性して得られるエポキシ系アミン樹脂が水性でない場合において、これを水性化する場合などに適用することができる。
【0039】
酸の種類及び中和率は、所望とする水性エポキシ系アミン樹脂(A)の状態(水溶性?水分散型)に応じて、任意の適切な酸の種類及び中和率を採用し得る。上記酸としては、例えば、酢酸、ギ酸、乳酸、リン酸等が挙げられる。「中和率」とは、エポキシ系アミン樹脂が有するアミノ基の全モル数に対する酸で中和されるアミノ基のモル数の割合を百分率で示したものである。中和率は、好ましくは20?60%であり、より好ましくは20?55%である。中和率を上記範囲とすることにより、水性、とりわけ水分散型の水性エポキシ系アミン樹脂(A)が得られやすくなる。
【0040】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)の数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算で、好ましくは1000?20000であり、より好ましくは1500?10000である。水性エポキシ系アミン樹脂(A)の数平均分子量が上記範囲であると、水性エポキシ系アミン樹脂(A)とエポキシ樹脂エマルション(B)との均一混合が容易になるので、硬化度、ひいては強度が均一な塗膜を得ることができる。また、水性エポキシ系アミン樹脂(A)の数平均分子量が上記範囲であることは、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性、耐水性、防食性、旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性を高めるうえでも有利である。水性エポキシ系アミン樹脂(A)の分子量の調整により、水性塗料組成物の特性や塗膜物性を制御することもできる。
【0041】
水性塗料組成物の硬化性や、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性、耐水性、防食性などの観点から、水性エポキシ系アミン樹脂(A)の固形分としての含有量は、水性塗料組成物の全固形分中、好ましくは5?95質量%であり、より好ましくは10?90質量%(例えば10?50質量%)である。
【0042】
水性エポキシ系アミン樹脂(A)のアミノ基とエポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂(以下、エポキシ樹脂エマルション(B)中のエポキシ樹脂を「第2エポキシ樹脂」ともいう。)のエポキシ基との当量比(エポキシ基/アミノ基)は、好ましくは0.5?2.0であり、より好ましくは0.6?1.7である。当該当量比が0.5未満の場合、水性塗料組成物の硬化性が低下するおそれがある。当該当量比が2.0を超える場合、得られる塗膜の旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性や、完全硬化前耐水性が低下するおそれがある。
【0043】
上述のように水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が異なる水性エポキシ系アミン樹脂(A)を2種以上含んでいてもよい。アミン当量が異なる水性エポキシ系アミン樹脂(A)を2種以上用いる場合の好適な一例は、水性エポキシ系アミン樹脂(A)がアミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む場合である。水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを併用することにより、塗膜の完全硬化前耐水性をより高めることが可能となる。
【0044】
塗膜の完全硬化前耐水性の観点から、水性エポキシ系アミン樹脂(A1)のアミン当量は、好ましくは600?1300、より好ましくは800?1300(例えば1000?1300)であり、水性エポキシ系アミン樹脂(A2)のアミン当量は、好ましくは1400?1800、より好ましくは1400?1700である。
【0045】
塗膜の完全硬化前耐水性の観点から、水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と水性エポキシ系アミン樹脂(A2)との含有量比は、質量比で8/2?2/8であることが好ましく、7/3?3/7であることがより好ましい。
【0046】
なお本発明は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)それ自体をも提供する。本発明に係る水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、水性エポキシ系アミン樹脂(A)に属する水性エポキシ系アミン樹脂を2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合の具体例は、例えば上記水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と上記水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む場合のように、アミン当量が異なる水性エポキシ系アミン樹脂(A)を2種以上含む場合である。
【0047】
本発明に係る水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、2液型硬化性の水性塗料組成物の一方の剤(第1剤)又はこれに含有される成分として好適に用いることができる。2液型の水性塗料組成物の他方の剤(第2剤)は、水性エポキシ系アミン樹脂(A)のアミノ基と反応し得る官能基を分子内に1以上(好ましくは2以上)有する化合物又はこれを含有するものである。第2剤は、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性及び旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性の観点から、望ましくは後述するエポキシ樹脂エマルション(B)であるが、(メタ)アクリロイル基を分子内に1以上有する化合物等の他の化合物を第2剤に用いても、本発明に係る水性エポキシ系アミン樹脂(A)を使用する場合には完全硬化前耐水性に優れる塗膜を形成し得る。
【0048】
<エポキシ樹脂エマルション(B)>
第2剤に含まれるエポキシ樹脂エマルション(B)は、水などの水性媒体中に第2エポキシ樹脂を分散させてなるエポキシ樹脂乳濁液(乳化エポキシ樹脂)である。エポキシ樹脂エマルション(B)は、強制乳化したものであってもよいし、自己乳化型であってもよい。エポキシ樹脂エマルション(B)として市販品を用いることもできる。
【0049】
第2エポキシ樹脂は、好ましくは分子内にエポキシ基を2以上有する化合物であり、このようなものとして、多価アルコール又は多価フェノールとハロヒドリンとを反応させて得られるものを挙げることができる。かかる第2エポキシ樹脂の具体例は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ化油、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含む。第2エポキシ樹脂として2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
中でも、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の防食性、耐衝撃性、旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性の観点から、第2エポキシ樹脂には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。より好ましくは、第2エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む。
【0051】
第2エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは150?1200であり、より好ましくは150?1000である。第2エポキシ樹脂のエポキシ当量が上記範囲であると、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐水性、防食性などを高めるうえで有利である。第2エポキシ樹脂のエポキシ当量の調整により、水性塗料組成物の特性や塗膜物性を制御することもできる。エポキシ樹脂エマルション(B)は、好ましくはエポキシ当量が150?1200であり、より好ましくは150?1000であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む第2エポキシ樹脂のエマルションである。
【0052】
第2エポキシ樹脂の数平均分子量は、GPCを用いた標準ポリスチレン換算で、好ましくは300?3000であり、より好ましくは300?2500である。第2エポキシ樹脂の数平均分子量が上記範囲であることは、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性、耐水性、防食性、旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性を高めるうえで有利である。第2エポキシ樹脂の分子量の調整により、水性塗料組成物の特性や塗膜物性を制御することもできる。
【0053】
強制乳化してなるエポキシ樹脂エマルション(B)は、第2エポキシ樹脂を乳化剤とともに水などの水性媒体中で撹拌し乳化させることによって得ることができる。乳化剤の具体例は、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のポリエーテル類、該ノニオン界面活性剤及び該ポリエーテル類の少なくとも一方とジイソシアネート化合物との付加物を含む。乳化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
自己乳化型の第2エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂エマルション(B)は、上述のエポキシ樹脂に親水性部位を導入してなる樹脂を水などの水性媒体中に乳化させることによって得ることができる。親水性部位としては、水酸基やカルボキシル基を有する側鎖、非イオン性のポリアルキレンオキサイド骨格等が挙げられる。
【0055】
エポキシ樹脂エマルション(B)は、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤としては無機酸や有機酸を用いることができる。無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。有機酸としては、ギ酸、酢酸等が挙げられる。pH調整剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
中でも、リン酸等を用いることが好ましい。リン酸等を用い、エポキシ樹脂エマルション(B)のpHを好ましくは5未満、より好ましくは4.5未満とすることにより、塗膜の防食性を高めることができる。これは、被塗物の表面に不動態皮膜が形成されることによるものと考えられる。
【0057】
水性塗料組成物の硬化性や、塗膜の完全硬化前耐水性、完全硬化塗膜の耐衝撃性、耐水性、防食性などの観点から、エポキシ樹脂エマルション(B)の固形分としての含有量は、水性塗料組成物の全固形分中、好ましくは3?50質量%であり、より好ましくは5?40質量%(例えば5?30質量%)である。
【0058】
<非硬化性樹脂のエマルション(C)>
本発明に係る水性塗料組成物は、非硬化性樹脂のエマルション(C)をさらに含むことができる。非硬化性樹脂のエマルション(C)は、第1剤に含まれていてもよいし、第2剤に含まれていてもよい。非硬化性樹脂のエマルション(C)は、第1剤と第2剤とを混合する前の第1剤又は第2剤に加えてもよいし、第1剤と第2剤とを混合した後に加えてもよい。非硬化性樹脂のエマルション(C)を含有させることにより、下地、とりわけ旧塗膜に対する付着性をさらに向上させることができる。下地に対する付着性の向上は、塗膜の防食性を向上させる。また、非硬化性樹脂のエマルション(C)を含有させることにより、完全硬化塗膜の可撓性、ひいては耐衝撃性を高め得る。非硬化性樹脂のエマルション(C)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本明細書において「非硬化性樹脂」とは、水性エポキシ系アミン樹脂(A)が有するアミノ基及びエポキシ樹脂エマルション(B)中の第2エポキシ樹脂が有するエポキシ基と硬化反応し得る硬化性官能基を有しない熱可塑性樹脂をいう。硬化性官能基としては、例えばアミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基等を挙げることができる。
【0060】
非硬化性樹脂のエマルション(C)は、例えば、硬化性官能基を有さず、重合性不飽和結合(不飽和二重結合)を有する単量体の1種又は2種以上を、乳化剤及びラジカル重合開始剤の存在下に乳化重合させた乳化重合物であることができる。当該単量体は通常、重合性不飽和結合を分子内に1個有するものである。当該単量体としては、例えば、次の単官能ビニル系化合物を用いることができる。
【0061】
エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン等のオレフィン系化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系化合物;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエスエル系化合物;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系化合物。乳化重合に供される単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
中でも、下地に対する付着性及び塗膜の耐衝撃性の観点から、非硬化性樹脂のエマルション(C)は、エチレン及び酢酸ビニルをモノマー単位とする共重合体、すなわちエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のエマルションであることが好ましい。下地に対する付着性及び塗膜の耐衝撃性の観点から、EVAにおけるエチレン比率は、5?50質量%であることが好ましく、5?40質量%(例えば10?30質量%)であることがより好ましい。従って、EVAにおける酢酸ビニル比率は、50?95質量%であることが好ましく、60?95質量%(例えば70?90質量%)であることがより好ましい。非硬化性樹脂のエマルション(C)における固形分濃度は、例えば20?60質量%である。
【0063】
下地に対する付着性及び塗膜の耐衝撃性の観点から、非硬化性樹脂のエマルション(C)の固形分としての含有量は、水性塗料組成物の全固形分中、好ましくは2?40質量%であり、より好ましくは3?30質量%(例えば5?20質量%)である。
【0064】
<アルコキシシラン化合物(D)>
本発明に係る水性塗料組成物は、アルコキシシラン化合物(D)をさらに含むことができる。アルコキシシラン化合物(D)は、第1剤に含まれていてもよいし、第2剤に含まれていてもよい。アルコキシシラン化合物(D)は、第1剤と第2剤とを混合する前の第1剤又は第2剤に加えてもよいし、第1剤と第2剤とを混合した後に加えてもよい。アルコキシシラン化合物(D)を含有させることにより、旧塗膜や被塗物の素地表面等の下地に対する付着性をさらに向上させることができる。下地に対する付着性の向上は、塗膜の防食性を向上させる。
【0065】
アルコキシシラン化合物(D)は、有機物に対して反応性又は親和性を示す官能基と、無機物に対して反応性又は親和性を示す官能基とを有する。有機物に対して反応性又は親和性を示す官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。一方、無機物に対して反応性又は親和性を示す官能基は、例えば、メトキシシラン基、エトキシシラン基、プロポキシシラン基等のアルコキシシラン基である。アルコキシシラン化合物(D)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
アルコキシシラン化合物(D)の具体例は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロポキシトリメトキシシラン等のγ-グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロポキシトリメトキシシラン等のγ-メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン等のγ-アミノプロピルトリアルコキシシラン;N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン等のN-フェニル-γ-アミノアルキルトリアルコキシシランを含む。中でも好ましくは、γ-グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシラン、N-フェニル-γ-アミノアルキルトリアルコキシシランであり、より好ましくはγ-グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリアルコキシシランであり、さらに好ましくはγ-グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシアルキルトリアルコキシシランである。
【0067】
アルコキシシラン化合物(D)は、上記アルコキシシラン化合物のアルコキシシラン基の一部が加水分解したもの、及び/又はアルコキシシラン基の一部が加水分解脱水縮合したものであってよい。
【0068】
アルコキシシラン化合物(D)の含有量は、水性塗料組成物の全固形分中、好ましくは0.2?10質量%であり、より好ましくは0.5?7質量%(例えば1?6質量%)である。アルコキシシラン化合物(D)の含有量が上記範囲であることにより、下地との付着性に優れ、その結果、優れた防食性を示す塗膜を形成し得る水性塗料組成物を得ることができる。アルコキシシラン化合物(D)の含有量が過度に大きいと、塗膜の硬化性が低下するおそれがある。
【0069】
<その他の配合成分(E)>
本発明に係る水性塗料組成物は、上記以外のその他の配合成分を必要に応じて含有することができる。その他の配合成分としては、顔料、添加剤、水、有機溶剤を挙げることができる。その他の配合成分は、第1剤に含まれていてもよいし、第2剤に含まれていてもよい。その他の配合成分は、第1剤と第2剤とを混合する前の第1剤又は第2剤に加えてもよいし、第1剤と第2剤とを混合した後に加えてもよい。
【0070】
顔料の具体例は、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アゾレッド、キナクリドンレッド、ベンズイミダゾロンイエロー等の着色顔料;炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、クレー、タルク、マイカ、アルミナ、ミョウバン等の体質顔料;トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム等の防錆顔料を含む。顔料は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
水性塗料組成物中の顔料体積濃度は、好ましくは20?50%であり、より好ましくは25?45%であり、さらに好ましくは30?40%である。顔料体積濃度が20%未満の場合、顔料を含有させることの効果(防食性(防錆性)、塗膜強度の向上など)、が十分に得られないおそれがあり、50%より大きい場合、塗膜外観が低下するおそれがある。なお、顔料体積濃度は、顔料の配合量及び塗料中の各成分の比重から計算により求めることができる。
【0072】
添加剤の具体例は、分散剤、粘性調整剤、硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、沈降防止剤、防腐剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤等が挙げられる。添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
溶剤の具体例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のグリコール系溶剤;キシレン、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200等の芳香族系溶剤;ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤;2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、ジエチルアジペート、ジイソブチルアジペート等のエステル系溶剤等が挙げられる。
【0074】
<水性塗料組成物の塗装>
本発明に係る水性塗料組成物は、第1剤と第2剤とを混合した後、被塗物に塗装される。塗装される被塗物表面の材質は、例えば、金属(合金を含む。)、木材、プラスチック、ゴム、石材、スレート、コンクリート、モルタル、繊維、紙、ガラス、磁器、陶器、フィルム、及びこれらの複合体等であり得る。例えば、被塗物表面がスレート、コンクリート等の無機系材料からなる場合、予めその表面にシーラーが塗装されていてもよい。また、塗装される被塗物表面は旧塗膜を有していてもよい。本発明に係る水性塗料組成物は、好ましくは、金属表面若しくは旧塗膜上、又は金属表面及び旧塗膜上の双方に適用される。金属としては、例えば、鉄、銅、錫、亜鉛、アルミニウム、ステンレス等が挙げられる。
【0075】
塗装される表面が金属又は旧塗膜である被塗物としては、例えば、建築物(例えば、土木構築物)、船舶、車両(例えば、鉄道車両、大型車両)、航空機、橋梁、海上構築物、プラント、タンク(例えば、石油タンク)、パイプ、鋼管、鋳鉄管等が挙げられる。
【0076】
水性塗料組成物を被塗装物に塗布し、乾燥させることによって塗膜を形成することができる。塗布方法は、被塗装物(基材)の種類等に応じて、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、刷毛、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、コテ等による塗布や浸漬等が挙げられる。
【0077】
水性塗料組成物の塗布量は、用途や被塗物の種類等にもよるが、例えば10?350g/m^(2)である。乾燥塗膜の膜厚は、例えば10?300μmであり、10?250μm又は15?200μmであってもよい。水性塗料組成物を複数回塗り重ねて所望の膜厚を有する乾燥塗膜を形成してもよい。この場合、ウェット塗膜を複数層塗り重ねて形成した後、乾燥を行って所望の膜厚を有する乾燥塗膜を得てもよいし、乾燥塗膜を複数層形成することによって所望の膜厚を有する乾燥塗膜を得てもよい。
【0078】
塗膜の乾燥は、自然乾燥によって行うことができる。自然乾燥は、常温(25℃若しくはその近傍)又はそれ以下の温度で行うことができる。自然乾燥の場合、完全硬化塗膜を得るための乾燥時間は、好ましくは24時間以上、より好ましくは1週間以上である。本発明に係る水性塗料組成物によれば、常温又はそれ以下の温度で自然乾燥させても、完全硬化前耐水性に優れる塗膜、並びに耐水性及び防食性に優れる完全硬化塗膜を形成することができる。
【0079】
本発明に係る水性塗料組成物を塗装して塗膜を形成する前及び/又は後に、別の塗膜を形成することができる。一つの実施形態においては、本発明に係る水性塗料組成物を塗装して塗膜を形成した後、当該塗膜上に上塗り塗料を塗装して上塗り層を形成する。上塗り層を形成することにより、外観、防食性及び耐水性をさらに向上させることができる。
【0080】
上塗り塗料としては、例えば、エポキシ/アミン系塗料、2液型ウレタン硬化系塗料、1液型ウレタン硬化系塗料、カルボジイミド硬化系塗料、アクリル樹脂系塗料、アルキド樹脂系塗料、シリコン樹脂系塗料等が挙げられる。上塗り塗料は、溶剤型であってもよく、水性であってもよいが、環境負荷低減の観点から、好ましくは水性である。上塗り塗料は、より好ましくは、水性2液型ウレタン硬化系塗料、水性1液型ウレタン硬化系塗料、水性シリコン樹脂系塗料、水性カルボジイミド硬化系塗料である。このような水性塗料であれば、優れた耐候性を有し、長期の美観保護が達成できる。
【0081】
上塗り層は、上塗り塗料を塗布し、乾燥させることにより形成できる。塗布方法は、上塗り塗料の種類等に応じて、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、刷毛、ローラー、エアスプレー、エアレススプレー、コテ等による塗布や浸漬等が挙げられる。
【0082】
上塗り塗料の塗布量は、塗料の種類及び塗装の目的等にもよるが、例えば30?400g/m^(2)である。乾燥後の上塗り層の膜厚は、例えば10?500μmであり、10?300μm又は10?150μmであってもよい。上塗り塗料からなる塗膜の乾燥は、自然乾燥、強制乾燥、焼き付け等によって行うことができる。
【0083】
本発明に係る水性塗料組成物により塗膜を形成する前に、被塗物表面に下塗り塗料を塗装して下塗り層を形成してもよい。下塗り層を形成することで防食性及び耐水性により優れ、例えば、橋梁、プラント、タンク等の高い防食性が要求される場合にも充分に対応することができる。
【0084】
下塗り塗料としては、例えば、有機又は無機のジンクリッチ塗料が挙げられる。下塗り塗料は、溶剤型であってもよく、水性であってもよいが、環境負荷低減の観点から、好ましくは水性である。
【0085】
下塗り層の形成には、上記上塗り層と同様の方法が採用され得る。下塗り塗料の塗布量は、塗料の種類及び塗装の目的等にもよるが、例えば80?1200g/m^(2)である。乾燥後の下塗り層の膜厚は、例えば20?300μmであり、20?200μmであってもよい。下塗り塗料からなる塗膜の乾燥は、自然乾燥、強制乾燥、焼き付け等によって行うことができる。
【0086】
本発明に係る水性塗料組成物を塗布して塗膜を形成した後、当該塗膜上に中塗り塗料を塗装して中塗り層を形成してもよい。中塗り層を形成することにより、防食性及び耐水性により優れる塗膜が得られ得る。好ましくは、中塗り層の上に、上記上塗り層が形成される。
【0087】
中塗り塗料としては、例えば、エポキシ/アミン系塗料、2液型ウレタン硬化系塗料、1液型ウレタン硬化系塗料等が挙げられる。中塗り塗料は、溶剤型であってもよく、水性であってもよいが、環境負荷低減の観点から、好ましくは水性である。中塗り塗料は、より好ましくは、水性エポキシ/アミン系塗料、水性2液型ウレタン硬化系塗料である。このような水性塗料であれば、上塗り層との密着性がよく、強固な複層塗膜を形成することができる。
【0088】
中塗り層の形成には、上記上塗り層と同様の方法が採用され得る。中塗り塗料の塗布量は、塗料の種類及び塗装の目的等にもよるが、例えば20?400g/m^(2)である。乾燥後の中塗り層の膜厚は、例えば10?200μmであり、10?100μmであってもよい。
【0089】
上塗り塗料、中塗り塗料及び下塗り塗料は、それぞれ独立して、顔料、添加剤等を含有し得る。顔料及び添加剤等の具体例については、本発明に係る水性塗料組成物について上で記述した内容が引用される。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部及び%は質量基準である。
なお、下記の実施例7は参考例と読み替える。
【0091】
〔1〕水性塗料組成物の製造
(製造例1:水性エポキシ系アミン樹脂(A)Iの調製)
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188g/当量の原料樹脂513部、ビスフェノールA 197部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)180部を仕込み、ベンジルジメチルアミン1部の存在下、エポキシ当量が730g/当量になるまで117℃で反応させてエポキシ樹脂を得た。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(73質量%MIBK溶液)360部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、イオン交換水27部、ネオデカン酸グリシジルエステル(ヘキシオン・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「カージュラE10-P」)190部を仕込み、100℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分75%になるまで希釈し、アミン当量が810のエポキシ系アミン樹脂を得た。次いでここに、上で定義した中和率が35%となるように酢酸を加えた後、イオン交換水を加えて希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去して、乳白色の水性(水分散型)エポキシ系アミン樹脂(A)Iを得た。水性エポキシ系アミン樹脂(A)Iのアミン当量は、原料配合量から算出した。
【0092】
(製造例2:水性エポキシ系アミン樹脂(A)IIの調製)
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188g/当量の原料樹脂742部、ビスフェノールA 336部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)190部を仕込み、ベンジルジメチルアミン1部の存在下、エポキシ当量が1079g/当量になるまで117℃で反応させてエポキシ樹脂を得た。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(73質量%MIBK溶液)360部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、イオン交換水27部、ネオデカン酸グリシジルエステル(ヘキシオン・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「カージュラE10-P」)188部を仕込み、100℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分75%になるまで希釈し、アミン当量が1095のエポキシ系アミン樹脂を得た。次いでここに、上で定義した中和率が35%となるように酢酸を加えた後、イオン交換水を加えて希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去して、乳白色の水性(水分散型)エポキシ系アミン樹脂(A)IIを得た。水性エポキシ系アミン樹脂(A)IIのアミン当量は、原料配合量から算出した。
【0093】
(製造例3:水性エポキシ系アミン樹脂(A)IIIの調製)
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188g/当量の原料樹脂1940部、ビスフェノールA 1060部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1000部を仕込み、ベンジルジメチルアミン8部の存在下、エポキシ当量が3000g/当量になるまで117℃で反応させてエポキシ樹脂を得た。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(73質量%MIBK溶液)360部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分60%になるまで希釈し、アミン当量が1550のエポキシ系アミン樹脂を得た。次いでここに、上で定義した中和率が40%となるように酢酸を加えた後、イオン交換水を加えて希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去して、乳白色の水性(水分散型)エポキシ系アミン樹脂(A)IIIを得た。水性エポキシ系アミン樹脂(A)IIIのアミン当量は、原料配合量から算出した。
【0094】
(製造例4:水性エポキシ系アミン樹脂(A)IVの調製)
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188g/当量の原料樹脂2190部、ビスフェノールA 1210部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1150部を仕込み、ベンジルジメチルアミン8部の存在下、エポキシ当量が3400g/当量になるまで117℃で反応させてエポキシ樹脂を得た。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(73質量%MIBK溶液)360部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分60%になるまで希釈し、アミン当量が1750のエポキシ系アミン樹脂を得た。次いでここに、上で定義した中和率が45%となるように酢酸を加えた後、イオン交換水を加えて希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去して、乳白色の水性(水分散型)エポキシ系アミン樹脂(A)IVを得た。水性エポキシ系アミン樹脂(A)IVのアミン当量は、原料配合量から算出した。
【0095】
(製造例5:エポキシ系アミン樹脂Vの調製)
撹拌機、冷却器、窒素導入管及び温度計を備えた反応槽に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとから合成したエポキシ当量188g/当量の原料樹脂2750部、ビスフェノールA 1550部、メチルイソブチルケトン(以下、「MIBK」という。)1800部を仕込み、ベンジルジメチルアミン10部の存在下、エポキシ当量が4300g/当量になるまで117℃で反応させてエポキシ樹脂を得た。その後、ジエチレントリアミンのケチミン化合物(73質量%MIBK溶液)360部を加え、117℃で1時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分60%になるまで希釈し、アミン当量が2200のエポキシ系アミン樹脂を得た。次いでここに、上で定義した中和率が50%となるように酢酸を加えた後、イオン交換水を加えて希釈した。その後、固形分が40質量%となるまで減圧下でMIBK及び水の混合物を除去して、エポキシ系アミン樹脂(A)Vを得た。このエポキシ系アミン樹脂は、水性化されずに水中で相分離した。エポキシ系アミン樹脂Vのアミン当量は、原料配合量から算出した。
【0096】
製造例で得られた水性エポキシ系アミン樹脂(A)及びエポキシ系アミン樹脂のアミン当量、GPCを用いた標準ポリスチレン換算による数平均分子量、及び状態、並びに水性エポキシ系アミン樹脂(A)及びエポキシ系アミン樹脂を形成するエポキシ樹脂のエポキシ当量などを表1にまとめた。
【0097】
【表1】

【0098】
(製造例6:(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有するエマルションIXの調製)
水35部、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル10部、ノニオン系乳化剤〔日本乳化剤社製、商品名「ニューコール740」〕5部、及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(PO3mol)〔粘度(25℃):85mPa・s、分子量:470、官能基数:3、アクリロイル基当量:157〕50部を混合し、ホモジナイザーで10分間撹拌して、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有するエマルションIXを得た。「PO3mol」とは、分子内にプロピレンオキサイドを3個有することを意味する。
【0099】
<実施例1?7、比較例1>
水80部、顔料分散剤(ビックケミー社製、商品名「Disperbyk-190」)25部、タルク75部、炭酸カルシウム40部、酸化チタン170部、リン酸系防錆顔料20部を混合し、ディスパーで30分間攪拌することによって、顔料分散ペーストを製造した。次に、表2に示される第1剤(主剤)の配合成分(表2に示される配合量)と、上記顔料分散ペースト410部とをディスパーを用いて混合した。その後、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルを50部、会合型増粘剤(ADEKA社製、商品名「アデカノールUH-420」を5部加えて混合し、第1剤(主剤)を調製した。
【0100】
また、表2に示される第2剤の配合成分を表2に示される配合量でディスパーを用いて混合して第2剤を調製するか、又は当該配合成分を第2剤(硬化剤)としてそのまま用いた。これにより、2液型の水性塗料組成物を得た。表2に示される配合量の単位は「質量部」である。また、表2に示される配合量は、固形分換算量ではなく、有姿量である。表2に示される配合成分の略号の詳細は下記のとおりである。
【0101】
a)水性エポキシ系アミン樹脂VI:T&K TOKA社製の「フジキュアーFXS-918-FA」(エポキシアダクトタイプの変性ポリアミン樹脂、固形分:60質量%、アミン当量:387)、
b)非硬化性樹脂のエマルション(C)VII:昭和電工(株)製の「ポリゾール AD-18」(エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のエマルション、固形分:56質量%、エチレン比率:20質量%)、
c)エポキシ樹脂エマルション(B)VIII:ADEKA社製の「アデカレジン EM-101-50」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエマルション、固形分:47質量%、エポキシ当量:500g/当量、数平均分子量:1000)、
d)アルコキシシラン化合物(D)X:EVONIK INDUSTRIES社製の「Dynasylan GLYMO」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、固形分:100質量%)。
【0102】
〔2〕水性塗料組成物の評価
得られた水性塗料組成物を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0103】
(塗膜の完全硬化前耐水性)
得られた2液型の水性塗料組成物の第1剤と第2剤とをディスパーを用いて混合した後、磨き鋼板に刷毛を用いて塗布量200g/m^(2)で塗装し、5℃の環境下で24時間乾燥させて、完全硬化していない塗膜を有する試験板を得た。得られた試験板を直ちに5℃の水中に浸漬し、24時間経過後に引き上げ、5℃で24時間静置した後、塗膜外観を目視観察し、下記基準に基づき評価した。
AA:外観の異常が認められない、
A :多少の艶・色の変化は認められるが、ワレ・フクレ跡は認められない、
C :ワレ・フクレ跡が認められる。
【0104】
(塗膜の旧塗膜に対する付着性)
基材として磨き鋼板を用い、その上に錆止め塗料として日本ペイント社製「ハイポンファインプライマーII」をエアスプレーを用いて乾燥膜厚50μmで塗装し、1日間乾燥させた。その上に日本ペイント社製「ファインウレタンU100」を刷毛を用いて乾燥膜厚60μmで塗装した。その後、JIS K 5600-7-7に従う促進耐候性(キセノンアークランプ法)により3000時間劣化させ旧塗膜を作製した。次いで、得られた2液型の水性塗料組成物の第1剤と第2剤とをディスパーを用いて混合した後、旧塗膜上に刷毛を用いて塗布量200g/m^(2)で塗装し、23℃の環境下で168時間乾燥させて、上記水性塗料組成物から形成された塗膜を有する試験板を得た。この試験板について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット法により付着性試験を行い、下記基準に基づき評価した。
【0105】
0:カットのふちが完全に滑らかで、どの格子の目にもハガレがない、
1:カットの交差点における塗膜の小さなハガレがあり、剥離部分の面積が5%未満である、
2:剥離部分の面積が、5%以上15%未満である、
3:剥離部分の面積が15%以上35%未満である、
4:剥離部分の面積が35%以上65%未満である、
5:剥離部分の面積が65%以上である。
【0106】
(塗膜の耐衝撃性(耐おもり落下性))
JIS K 5600-5-3のデュポン式に準拠し、質量300g及び500gのおもりを用いて耐おもり落下性試験を行い、下記基準に基づき評価した。おもりの落下高さは、500mmとした。
A :塗膜ワレ又はハガレを生じない、
B :塗膜ワレ又はハガレを生じる。
【0107】
【表2】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000であり、数平均分子量が1500?10000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ樹脂をアミン変性して得られ、
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が700?3800である、自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項2】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)が水分散型である、請求項1に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が1079?3800である、請求項1又は2に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項4】
第1剤と第2剤とからなる2液型の自然乾燥型水性塗料組成物であって、
前記第1剤は、第1級アミノ基及び第2級アミノ基からなる群より選択される1以上のアミノ基を分子内に有し、アミン当量が500?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A)を含み、
前記第2剤は、エポキシ樹脂エマルション(B)を含み、
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、アミン当量が500?1300である水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と、アミン当量が1400?2000である水性エポキシ系アミン樹脂(A2)とを含む、自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項5】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A1)と前記水性エポキシ系アミン樹脂(A2)との質量比が8/2?2/8である、請求項4に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項6】
前記水性エポキシ系アミン樹脂(A)は、エポキシ系アミン樹脂のアミノ基を酸で中和して得られるものである、請求項1?5のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項7】
前記中和における中和率が20?60%である、請求項6に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂エマルション(B)は、エポキシ当量が150?1200であるビスフェノールA型エポキシ樹脂のエマルションである、請求項1?7のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項9】
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、非硬化性樹脂のエマルション(C)をさらに含む、請求項1?8のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項10】
前記非硬化性樹脂のエマルション(C)は、重合性不飽和結合を有する単量体の乳化重合物である、請求項9に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項11】
前記重合性不飽和結合を有する単量体は、エチレン及び酢酸ビニルを含む、請求項10に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
【請求項12】
前記第1剤及び前記第2剤の少なくとも一方は、アルコキシシラン化合物(D)をさらに含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の自然乾燥型水性塗料組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-11-26 
出願番号 特願2015-106403(P2015-106403)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (C09D)
P 1 652・ 113- YAA (C09D)
P 1 652・ 537- YAA (C09D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 天野 宏樹
阪▲崎▼ 裕美
登録日 2017-03-10 
登録番号 特許第6106209号(P6106209)
権利者 日本ペイント株式会社
発明の名称 自然乾燥型水性塗料組成物  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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