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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
管理番号 1348705
異議申立番号 異議2018-700059  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-25 
確定日 2018-12-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6170202号発明「光学積層体及び液晶表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6170202号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕、19、20について訂正することを認める。 特許第6170202号の請求項1?20に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6170202号(以下「本件特許」という。)の請求項1?20に係る特許についての出願は、平成28年3月31日(優先権主張平成27年3月31日 日本国)の出願であって、平成29年7月7日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:平成29年7月26日)がされたものであり、その特許について、平成30年1月25日に特許異議申立人野本玲司(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年4月25日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成30年6月20日に意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年6月25日付けで申立人に訂正の請求があった旨の通知を送付したが、申立人から意見書は提出されなかったものである。
さらに、当審において平成30年9月25日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、その指定期間内である平成30年11月13日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされた。
なお、平成30年6月20日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
また、本件訂正請求における訂正事項は、平成30年6月20日の訂正の請求における訂正事項に、実質的にすべて含まれるものであり、その平成30年6月20日の訂正の請求について、申立人に訂正の請求があった旨の通知を送付して意見書を提出する機会を既に与えており、本件訂正請求については、特許法第120条の5第5項に規定する特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないとされる特別な事情にあたると認められるため、申立人に、再度、意見書を提出する機会は与えなかった。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、「特許第6170202号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?20について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記金属層は、金属配線層であるとともに、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛及びこれらから選択される2種以上の金属を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、」と記載されているのを、
「前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2?18も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項19に
「前記金属層は金属配線層であるとともに、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛及びこれらから選択される2種以上の金属を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む、粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「前記金属層は金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む、粘着剤組成物。
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項20に
「前記金属層は、金属配線層であるとともに、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛及びこれらから選択される2種以上の金属を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、」と記載されているのを、
「前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正事項1は、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属とされていたのを、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属元素からなる金属単体と、「金属層」の材料を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ.訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ.本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)には、段落【0128】に「金属層30は、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛及びこれらから選択される2種以上の金属を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む層であることができ」と記載され、さらに段落【0129】に「金属層30は、例えばITO等の金属酸化物層であってもよいが、本発明に係る粘着剤層付光学フィルム1は、とりわけ金属単体や合金に対する耐腐食性が良好であることから、金属層30は、上記の金属元素からなる金属単体及び/又は上記の金属元素の2種以上を含有する合金を含むことが好ましい。」と記載されていることから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
エ.訂正前の請求項2?18は、訂正前の請求項1を、直接又は間接に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1?18は、特許法第120条の5第4項に規定する、一群の請求項である。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属とされていたのを、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属元素からなる金属単体と、「金属層」の材料を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項2は、訂正事項1について上記(1)で述べた理由と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属とされていたのを、「銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」の金属元素からなる金属単体と、「金属層」の材料を限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、訂正事項1について上記(1)で述べた理由と同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3.訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?18〕、19、20について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.請求項1?20に係る発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1?20に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項1、19及び20に係る本件発明1、19及び20は次のとおりのものである。
「【請求項1】
光学フィルムと、粘着剤層と、金属層とをこの順に含み、
前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、シラン化合物(C)、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を含む粘着剤組成物から構成される光学積層体。」
「【請求項19】
(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を0.01?2.5重量部、シラン化合物(C)を0.01?10重量部、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を0.2?8重量部含有する、金属層上に積層される粘着剤層の形成に用いられる、粘着剤組成物であり、
前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む、粘着剤組成物。
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛」
「【請求項20】
光学フィルムと、当該光学フィルムの少なくとも一方の面上に積層される粘着剤層とを含み、前記粘着剤層を介して金属層上に貼合するための粘着剤層付光学フィルムであり、
前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を0.01?2.5重量部、シラン化合物(C)を0.01?10重量部、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を0.2?8重量部含有する粘着剤組成物から形成される、粘着剤層付光学フィルム。」

2.取消理由の概要
本件発明1?20に対して、特許権者に通知した平成30年4月25日付けの取消理由の概要は以下のとおりであり、申立人が特許異議申立書において主張した理由は、すべて通知した。なお、平成30年9月25日付けの取消理由(決定の予告)の対象である、平成30年6月20日の訂正の請求により加えられた請求項21は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲には該当するものがなく、平成30年9月25日付けの取消理由(決定の予告)は、その対象が存在しないものとなったことにより、理由のないものとなった。

理由1)本件発明1、2、4?8、13?20は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2)本件発明1?20は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3)本件特許は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

[理由1、理由2]
《刊行物一覧》
甲1:国際公開第2014/208695号
甲2:特開2013-84026号公報
甲3:特開2013-129183号公報
本件発明1、2、4?8、13?20は、甲1発明である。
仮に甲1発明の「ITO層」が、請求項1に係る発明の「金属層」に相当しないものであるとしても、タッチパネルの金属配線層として、銀や銅などの金属層を適用することは、甲2や甲3に記載されるように周知の技術であり、本件発明1?20は、甲1発明、及び甲2、甲3に記載される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[理由3]
本件特許明細書には、銀を主成分とする銀合金を用いた金属層の腐食を抑制できるとする実施例4及び実施例5が記載されているが、銀よりも腐食されやすい銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル等の合金を用いた金属層に対しても、金属層の腐食の抑制という課題を解決できるかどうかについて、当業者が認識できるものとはいえない。
そうすると、出願時の技術常識に照らしても、請求項1?20に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1?20に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、銀よりも腐食されやすい銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル等の合金を用いた金属層の場合について、当業者が実施可能に記載されているとはいえない。

3.当審の判断
(1)理由3(特許法第36条に係る理由)について
事案に鑑み、まず理由3から検討する。
ア.本件特許明細書には、厚み約500nmの金属アルミニウム層(段落【0164】)を積層させたガラス基板に対する腐食性評価を行った実施例1?3と、厚み約500nmの銀合金層(段落【0191】)を積層させたガラス基板に対する腐食性評価を行った実施例4及び5が記載されている。また、銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛は、イオン化傾向がアルミニウムよりも低い材料であり、アルミニウムよりも孔食による腐食を起こし難いことは技術常識である。
イ.そうすると、本件特許明細書の実施例1?3の粘着剤組成物により、金属アルミニウム層が腐食し難いとの評価に接した当業者は、発明の詳細な説明に直接の記載はなくとも、アルミニウムより孔食による腐食を起こし難い材料である、銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛について、アルミニウムと同様に孔食による腐食を抑制できると認識し得るものといえる。
よって、本件発明1?20は、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
ウ.また、アルミニウムについて評価を行った実施例1?3の記載、及び、銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛が、アルミニウムよりも孔食による腐食を起こし難い材料であるとの技術常識を踏まえれば、銅、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛の金属単体もしくは合金について、発明の詳細な説明に、当業者が実施可能に記載されていないとまではいえない。
エ.以上より、本件発明1?20に係る請求項の記載及び発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号の規定に違反するものではないから、本件発明1?20に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すべきものではない。

(2)理由1及び2(特許法第29条に係る理由)について
ア.甲1には、「粘着剤層付偏光フィルムと透明導電層を有する基材とを貼り合せた積層体」([0001])に関して、
(ア)アクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30重量%)の固形分100部あたり、架橋剤として、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)を0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイドを0.3部、リン酸化合物として、フォスファノールSM-172(商品名、東邦化学工業(株)製)を0.03部と、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)を0.075部と、イオン性化合物として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(森田化学工業(株)製)0.5部、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(IRGANAOX 1010、BASFジャパン(株)製)0.3部を配合して、アクリル系粘着剤組成物を形成し([0179])、
このアクリル系粘着剤組成物から形成される粘着剤層を、ヨウ素系偏光フィルムの少なくとも一方の面に形成して、粘着剤層付偏光フィルムとすること([0114])、
(イ)透明導電層の構成材料としては、特に好ましくは酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)であり([0142])、
この透明導電層を基材上に有し([0138])、
透明導電層はタッチパネルの電極用途として使用することができるものであること([0152])、
(ウ)積層体は、前記粘着剤層付偏光フィルムと、透明導電層を有する基材とを、前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層と前記透明導電層を有する基材の透明導電層とが接触するように貼り合せたものであること([0136])、が記載されている。
イ.よって、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。
「アクリル系ポリマーを含有する溶液(固形分濃度30重量%)の固形分100部あたり、架橋剤として、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)を0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイドを0.3部、リン酸化合物として、フォスファノールSM-172(商品名、東邦化学工業(株)製)を0.03部と、シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)を0.075部と、イオン性化合物として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(森田化学工業(株)製)0.5部、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート(IRGANAOX 1010、BASFジャパン(株)製)0.3部を配合して、アクリル系粘着剤組成物を形成し、このアクリル系粘着剤組成物をヨウ素系偏光フィルムの少なくとも一方の面に形成して、粘着剤層付偏光フィルムとし、
酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)である透明導電層を基材上に有し、この透明導電層はタッチパネルの電極用途として使用することができるものであり、
前記粘着剤層付偏光フィルムと、前記透明導電層を有する基材とを、前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層と前記透明導電層を有する基材の透明導電層とが接触するように貼り合せた、
積層体。」
ウ.本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)甲1発明のa)「アクリル系ポリマー」、b)「架橋剤として、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(商品名:タケネートD110N、三井化学(株)製)」、c)「シランカップリング剤としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業(株)製)」、d)「イオン性化合物として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(森田化学工業(株)製)」は、それぞれ、本件発明1のA)「(メタ)アクリル系樹脂(A)」、B)「イソシアネート系架橋剤(B)」、C)「シラン化合物(C)」、D)「イオン性化合物(D)」に相当し、a)?d)を含む甲1発明の「粘着剤層」は、A)?D)を含む本件発明1の「粘着剤層」に相当する。
(イ)また、甲1発明の「酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)である透明導電層」と、本件発明1の銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、前記金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む「金属層」とは、金属の層であるという限りにおいて一致する。
ここで、甲1発明の「酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)である透明導電層」は、「タッチパネルの電極用途として使用する」ことができるものであるところ、本件発明1の「金属層」について、本件特許明細書(段落【0131】)に「金属層30は、例えば、タッチ入力式液晶表示装置が有するタッチ入力素子の金属配線層(すなわち電極層)であることができる。」と記載されていることからすると、甲1発明の「タッチパネルの電極用途として使用する」「透明導電層」は、本件発明1の「金属配線層」に相当するものといえる。
(ウ)さらに、甲1発明の「積層体」は、「粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層と透明導電層を有する基材の透明導電層とが接触するように貼り合せた」ものであるから、「偏光フィルム」、「粘着剤層」、「透明導電層」の順に積層されており、本件発明1の「光学フィルムと、粘着剤層と、金属層とをこの順に含」む「光学積層体」に相当する。
エ.そうすると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも、金属の層の材料について、本件発明1が、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、前記金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含むのに対し、甲1発明は、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)である点(以下「相違点」という。)で相違するから、本件発明1は甲1発明ではない。
オ.そこで、この相違点について検討する。
甲1の[0064]?[0065]に、
「金属酸化物では、一般的に知られている金属腐食とは異なる機構で腐食が起こっている。ITOのような金属酸化物の場合、偏光子由来のヨウ素が、金属酸化物層中に染み込み、金属酸化物のキャリアー移動度を低下させるため、抵抗値の上昇が生じる。
本発明においては、前述のような金属酸化物の腐食に対して優れた腐食抑制効果を発現できるものであって、特に、金属酸化物からなる透明導電層に対してよりよい効果を発揮できるものである。」
と記載されるように、甲1発明は、透明電極層がITOのような金属酸化物からなる場合に生じる「偏光子由来のヨウ素が、金属酸化物層中に染み込み、金属酸化物のキャリアー移動度を低下させるため、抵抗値の上昇が生じる」という課題に対処するものであるから、甲1発明の透明導電層の材料を、金属酸化物ではない、銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、あるいは、前記金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金に換えようとする動機付けがない。
そのため、甲2や甲3に記載されるように、銀や銅をタッチパネルの金属配線層として用いることが周知技術であるとしても、甲1発明の透明電極層の材料の金属酸化物を替えようとする動機付けがない以上、そのような周知技術を、甲1発明の透明電極層に適用することが、当業者にとって容易に想到することができたものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1発明、及び甲2、甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない
カ.また、本件発明2?18は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲1発明ではなく、また、甲1発明、及び甲2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明2、4?8、13?18も甲1発明ではなく、また、本件発明2?18は、甲1発明、及び甲2、甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
キ.さらに、本件発明19及び20は、甲1発明と対比すると、いずれも上記相違点で実質的に相違し、また、上記オ.で述べたように、上記相違点に係る構成は、甲1発明、及び甲2、甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に想到することができたとはいえないものであるから、本件発明19及び20は甲1発明ではなく、また、甲1発明、甲2、甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ク.以上より、本件発明1、2、4?8、13?18は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、あるいは、本件発明1?20は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではないから、本件発明1?20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すべきものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?20に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルムと、粘着剤層と、金属層とをこの順に含み、
前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂(A)、イソシアネート系架橋剤(B)、シラン化合物(C)、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を含む粘着剤組成物から構成される光学積層体。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、前記イソシアネート系架橋剤(B)を0.01?2.5重量部、前記シラン化合物(C)を0.01?10重量部、及び前記イオン性化合物(D)を0.2?8重量部含有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記金属配線層は、線幅が10μm以下である、請求項1または請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記無機カチオンは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンである、請求項1?請求項3のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記アルカリ金属イオンは、リチウムカチオン、カリウムカチオン又はナトリウムカチオンである、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記アルカリ金属イオンは、カリウムカチオンである、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記フッ素原子含有アニオンは、下記式(II):
[Y(SO_(2)C_(m)F_(2m+1))_(n)]^(-) (II)
(式(II)中、Yは炭素原子又は窒素原子を表し、Yが炭素原子であるときnは3であり、Yが窒素原子であるときnは2であり、mは0?10の整数を表す。)
で表されるフッ素原子含有アニオンである、請求項1?請求項6のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記フッ素原子含有アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンである、請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記フッ素原子含有アニオンは、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンである、請求項1?請求項8のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃未満であるアルキルアクリレート(a1)由来の構成単位、及びホモポリマーのガラス転移温度が0℃以上であるアルキルアクリレート(a2)由来の構成単位を含有する、請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、前記アルキルアクリレート(a2)由来の構成単位の含有量が、(メタ)アクリル系樹脂(A)を構成する全構成単位100重量部中、10重量部以上である、請求項10に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記アルキルアクリレート(a2)は、メチルアクリレートを含む、請求項10又は請求項11に記載の光学積層体。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、ヒドロキシル基を有する単量体由来の構成単位を含有する、請求項1?請求項12のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項14】
前記(メタ)アクリル系樹脂(A)は、カルボキシル基を有する単量体由来の構成単位を実質的に含まない、請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項15】
前記粘着剤組成物は、トリアゾール系化合物、チアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、キノリン系化合物、ピリジン系化合物、ピリミジン系化合物、インドール系化合物、アミン系化合物、ウレア系化合物、ナトリウムベンゾエート、ベンジルメルカプト系化合物、ジ-sec-ブチルスルフィド、及びジフェニルスルホキサイドからなる群より選択される防錆剤を実質的に含まない、請求項1?請求項14のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項16】
前記金属層は、スパッタリングにより形成された層である、請求項1?請求項15のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項17】
前記金属層は、厚みが3μm以下である、請求項1?請求項16のいずれか1項に記載の光学積層体。
【請求項18】
請求項1?請求項17のいずれか1項に記載の光学積層体を含む、液晶表示装置。
【請求項19】
(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を0.01?2.5重量部、シラン化合物(C)を0.01?10重量部、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を0.2?8重量部含有する、金属層上に積層される粘着剤層の形成に用いられる、粘着剤組成物であり、
前記金属層は金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含む、粘着剤組成物。
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛
【請求項20】
光学フィルムと、当該光学フィルムの少なくとも一方の面上に積層される粘着剤層とを含み、前記粘着剤層を介して金属層上に貼合するための粘着剤層付光学フィルムであり、
前記金属層は、金属配線層であるとともに、以下の金属元素群から選択される1種の金属元素からなる金属単体、及び、以下の金属元素群から選択される2種以上の金属元素を含む合金からなる群より選択される1種以上を含み、
金属元素群:銅、銀、鉄、スズ、亜鉛、ニッケル、モリブデン、クロム、タングステン、鉛
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(B)を0.01?2.5重量部、シラン化合物(C)を0.01?10重量部、及び下記式(I):
M^(+)X^(-) (I)
(式(I)中、M^(+)は無機カチオンを表し、X^(-)はフッ素原子含有アニオンを表す。)
で表されるイオン性化合物(D)を0.2?8重量部含有する粘着剤組成物から形成される、粘着剤層付光学フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-18 
出願番号 特願2016-72311(P2016-72311)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B32B)
P 1 651・ 536- YAA (B32B)
P 1 651・ 537- YAA (B32B)
P 1 651・ 121- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大村 博一  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 井上 茂夫
蓮井 雅之
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6170202号(P6170202)
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 光学積層体及び液晶表示装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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