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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02F
管理番号 1348723
異議申立番号 異議2018-700141  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-22 
確定日 2019-01-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6182891号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6182891号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6182891号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6182891号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成25年2月15日の出願であって、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、同年8月23日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成30年2月22日に特許異議申立人鈴木美香により特許異議の申立てがされたものである。
以後の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年 4月 4日:取消理由通知(4月6日発送)
同年 6月 5日:訂正請求書・意見書
同年 6月14日:通知書(6月19日発送)
同年 7月19日:意見書(特許異議申立人)
同年 8月13日:取消理由通知(8月16日発送)
同年10月15日:訂正請求書・意見書
同年10月26日:通知書(10月30日発送)
同年11月29日:意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨
平成30年10月15日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6182891号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものである。

2 訂正請求の内容
本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項について請求されたものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸は、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸と略平行又は略垂直である、」と記載されているのを

「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、」に訂正する(なお、下線は、当審で付した。以下、同じ。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である、請求項1に記載の画像表示装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、

「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度?80度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、

「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、項番を請求項4に改め、

「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上である、
請求項2に記載の画像表示装置。」に訂正する。

(5)訂正事項5
本件特許明細書の【0013】に、
「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載したが、タッチパネルに限定されるものではなく、フィルムを有する層であればどのような層であってもよい。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルム及び/又は飛散防止フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよいし、又は両側に飛散防止フィルムを配置しない構成でもよい。飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」と記載されているのを、

「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載した。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよい。」に訂正する。

3 訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、下記(ア)ないし(カ)の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(ア)偏光子保護フィルムと視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であること。
(イ)光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであること。
(ウ)偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であること。
(エ)光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度?30度であること。
(オ)光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されていること。
(カ)視認側飛散防止フィルムは、(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであること。

イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記ア(ア)に関連する記載
「【0007】
……
項2.
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である、項1に記載の画像表示装置。
項3.
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、項1又は2に記載の画像表示装置。」

(イ)上記ア(イ)に関連する記載
「【0028】
低リタデーション配向フィルムのリタデーションは、3000nm未満であれば特に制限されない。低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、好ましくは50nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは400nm以上、又は好ましくは500nm以上である。…。」

(ウ)上記ア(ウ)に関連する記載
「【0022】
2枚の高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸の向きと視認側偏光子の偏光軸の向きとの関係は任意であるが、虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)が、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角は、45度±30度以下であり、…好ましくは45度である。」

(エ)上記ア(エ)に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと高リタデーション配向フィルムとが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下であることを意味する。…。」

(オ)上記ア(オ)及び(カ)に関連する記載
「【0012】
…透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。また、タッチパネル(6)の光源側及び視認側には、接着層を介して、透明基体である飛散防止フィルム(14,15)が設けられている。」

「【0057】
…基材フィルムには、高リタデーション配向フィルム、低リタデーション配向フィルム、又は従来から基材フィルムとして用いられる他のフィルム若しくはガラス板等の剛性板を用いることができる。」

「【0069】
配向フィルムを画像表示装置の表面カバー板の飛散防止フィルムとして使用する場合、配向フィルムの配置は表面カバー板の光源側であっても視認側であっても良い。…。」

「【0095】
<画像表示装置の構成>
……
(6)タッチパネル:ガラス基材の上にITOからなる透明導電層を設けたITOガラスを用いて作製した抵抗膜方式タッチパネル
(7)視認側飛散防止フィルム:後述する配向フィルム1又は2」

(カ)上記(ア)ないし(オ)からして、
上記訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用するものであったところ、その請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ また、訂正前の請求項2に係る発明は、「偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)の事項に加えて、下記の事項を特定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

「光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度?80度であること。」(以下「追加事項1」という。)

ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)に関連する記載
上記「(1)訂正事項1 イ」で検討したとおり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められる。

(イ)上記「追加事項1」に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。…略垂直であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角が、好ましくは90度±30度以下、好ましくは90度±20度以下、好ましくは90度±15度以下、好ましくは90度±10度以下、好ましくは90度±7度以下、好ましくは90度±5度以下、好ましくは90度±3度以下であることを意味する。」

(ウ)上記(ア)及び(イ)からして、
上記訂正事項2は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項2の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ また、訂正前の請求項3に係る発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)の事項に加えて、下記の事項を特定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

「偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであること。」(以下「追加事項2」という。)

「偏光子保護フィルムと視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であること。」(以下「追加事項3」という。)

「光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度?30度であること。」(以下「追加事項4」という。)

ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した、(イ)、(ウ)、(オ)及び(カ)に関連する記載
上記「(1)訂正事項1 イ」で検討したとおり、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められる。

(イ)上記「追加事項2」に関連する記載
「【0025】
高リタデーション配向フィルムのリタデーションは、虹斑を低減するという観点から、3000nm以上150000nm以下であることが好ましい。高リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、好ましくは6000nm以上、好ましくは8000nm以上、好ましくは10000nm以上である。…。」

(ウ)上記「追加事項3」に関連する記載
「【0019】
…2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションが異なる場合、その差は、例えば、1800nm以上、好ましくは2000nm以上、好ましくは3000nm以上、好ましくは4000nm以上である。」

(エ)上記「追加事項4」に関連する記載
「【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと高リタデーション配向フィルムとが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下であることを意味する。…。」

(オ)上記(ア)ないし(エ)からして、
上記訂正事項3は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項1の記載を引用しないものとした訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

イ また、訂正前の請求項3に係る発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項4は、訂正前の請求項3に係る発明に、上記「(3)訂正事項3 イ」で検討した、「追加事項2」及び「追加事項3」を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(3)訂正事項3 イ」で検討した、「追加事項2」及び「追加事項3」に関連する記載
上記「(3)訂正事項3 ウ」を参照。

(イ)上記(ア)からして、
上記訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5
ア 訂正事項5は、記載の一部を削除することにより、「飛散防止フィルム」の意味を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

4 訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正は、上記「第2 訂正の適否についての判断」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項2】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度?80度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項3】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項4】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上である、
請求項2に記載の画像表示装置。」

第4 取消理由通知の取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1ないし3に係る発明の特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

「【理由1】(進歩性欠如)
本件の請求項1ないし請求項3に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

文献
(1)甲第1号証:国際公開第2011/162198号
(2)甲第2号証:特開2005-157082号公報
(3)甲第3号証:特開2008-192620号公報
(4)甲第4号証:オリンパス株式会社のホームページ
「[第2回]偏光解析の基礎」
液晶表示装置等の表示装置において、表示装置に含まれるガラス等が飛散することを抑制するために飛散防止フィルムを用いることは、当業者に周知の事項であることを証明するための文献(特許異議申立書第27ないし29頁)
周知文献1:特開2013-20130号公報
周知文献2:特開2011-168652号公報
周知文献3:特開2010-85453号公報
周知文献4:特開2008-216913号公報
周知文献5:特開2000-263702号公報
周知文献6:国際公開第2008/047785号
周知文献7:国際公開第2012/049977号
周知文献8:韓国公開特許公報10-2010-0048187号
なお、甲第5号証は、上記周知文献8(韓国公開特許公報10-2010-0048187号)の日本語訳である。

【理由2】(進歩性欠如)
本件発明1ないし本件発明3は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

文献
甲第1号証:国際公開第2011/162198号
周知文献A:特開2013-20135号公報(【0010】)
周知文献B:特開2010-132526号公報(【要約】)
周知文献C:特開2008-276729号公報(【0037】及び
図6)
周知文献D:特開平4-18628号公報(「作用」の欄及び第3図)
周知文献E:国際公開第2012/161078号(【0113】及び
図15)

【理由3】(明確性要件違反)
本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」

2 当審の判断
(1)【理由1】及び【理由2】について
ア 甲第1号証(国際公開第2011/162198号)には、以下の記載がある。

(ア)「請求の範囲
[請求項1] バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は白色発光ダイオードであり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つは3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。
[請求項2] 前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなるフィルムである、請求項1に記載の液晶表示装置。
[請求項3] ……
……
[請求項4] 前記白色発光ダイオードが、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。」

(イ)「[0001] 本発明は、液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。詳しくは、視認性が良好で、薄型化に適した液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。
[0002]
……
[0005] ポリエステルフィルムは、TACフィルムに比べ耐久性に優れるが、TACフィルムと異なり複屈折性を有するため、これを偏光子保護フィルムとして用いた場合、光学的歪みにより画質が低下するという問題があった。すなわち、複屈折性を有するポリエステルフィルムは所定の光学異方性(リタデーション)を有することから、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察すると虹状の色斑が生じ、画質が低下する。そのため、特許文献1?3では、ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いることで、リタデーションを小さくする対策がなされている。しかし、その場合であっても虹状の色斑を完全になくすことはできなかった。
[0006] 本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち、十分な機械的強度を有する)であり、且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない、液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。」

(ウ)「[0019] これに対して、白色発光ダイオードでは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となる。このように、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで、虹状の色斑が発生せずに、視認性が顕著に改善すると考えられる。
[0020] 以上のように、本発明では幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを光源に用いるため、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。
[0021] 上記効果を奏するために、偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。
[0022] 一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。」
(エ)「[0057](4)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエステルフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置の出射光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。この液晶表示装置は、液晶セルの入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。」

イ 甲第1号証に記載された発明
(ア)上記ア(ア)及び(イ)の記載からして、甲1号証には、
「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであり、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」(請求項1-2-4)が記載されているものと認められる。

(イ)上記ア(ウ)の記載からして、
上記(ア)の「白色発光ダイオード」は、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有するものと認められる。

(ウ)また、上記ア(ウ)の記載からして、
上記(ア)の「3000?30000nmのリタデーション」における、より更に好ましい下限値は10000nmであることから、「10000?30000nmのリタデーション」であってもよいものと認められる。

(エ)さらに、上記ア(エ)の記載からして、
上記(ア)の「(射出光側の)偏光子保護フィルムの配向主軸」と「(出射光側に配される偏光板の)偏光子の吸収軸」とは、垂直になるように貼り付けられていることが理解できる。

(オ)上記(ア)ないし(エ)より、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであって、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有し、
前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、
前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、10000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」

ウ 本件訂正発明1について
(ア)対比
a 本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件訂正発明1は、
(a)「偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び 光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、を有し」、
(b)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり」、
(c)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であ」るのに対して、
引用発明は、上記(a)ないし(c)に係る構成を備えていない点。

(イ)判断
a 上記<相違点1>のうち、(c)について検討する。
まず、引用発明において、「偏光子保護フィルム」の配向主軸と「偏光子」の偏光軸とが形成する角を「45度±30度以下」とすることが容易になし得ることであるか否かについて検討する。

(a)甲第1号証の記載によれば、引用発明は、液晶表示装置の斜め方向から目視観察した際の虹斑の解消を目的とするものであって、その効果は、[0057]の「虹斑の評価」に関する記載からして、「偏光子保護フィルム」の配向主軸を「偏光子」の吸収軸に対して「垂直」となるように配置することで得られるものと認められる。
そして、甲第1号証には、上記「垂直」以外の配置関係については特段記載されておらず、甲第1号証の記載に接した当業者は、虹斑の解消のためには、両者を「垂直」となるように配置する必要があると理解する。

(b)一方、特許異議申立人の提出した甲第2号証ないし甲第4号証及び平成30年11月29日付け意見書において提出した甲第6号証ないし甲第8号証(特開2011-59488号公報、特開2010-107892号公報、特開2011-107198号公報)には、液晶表示装置を斜め方向から目視観察した際の色ムラ(干渉ムラ)を低減するために、偏光子保護フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角を45度±30度以下とすることは記載されていない。
また、周知文献1ないし8及び周知文献AないしEにも、上記の点は記載されていない。

(c)そうすると、引用発明において、「偏光子保護フィルム」の配向主軸と「偏光子」の偏光軸とのなす角を「45度±30度以下」に設定する動機が生じるものでもない(なお、甲第5号証は、周知文献8(韓国公報)の日本語訳である。)。

(d)よって、引用発明において、上記<相違点1>のうち、(c)の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

b 以上のことから、本件訂正発明1は、上記<相違点1>の、(a)及び(b)について検討するまでもなく、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)まとめ
本件訂正発明1は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件訂正発明2ないし本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明2ないし本件訂正発明4と引用発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点2>
本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、
(a)「偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び 光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、を有し」、
(b)「前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であ」るのに対して、
引用発明は、上記(a)及び(b)に係る構成を備えていない点。

(イ)判断
a 上記<相違点2>について検討する。
上記「ウ 本件訂正発明1について(イ)判断」を参照。

b 上記<相違点2>は、上記<相違点1>の(a)及び(c)と同じであることから、本件訂正発明1と同様の理由により、本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)まとめ
本件訂正発明2ないし本件訂正発明4は、当業者が甲第1ないし4、6ないし8号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 【理由1】及び【理由2】についてのまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、【理由1】及び【理由2】によっては取り消すことはできない。

(2)【理由3】について
ア 特許異議申立人が主張する理由は、おおよそ、以下のものである。
(ア)理由3-1
訂正前の明細書の【0013】には「……飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」と記載されており、接着層を介さない場合に、如何なる構成を有することにより、飛散防止効果が発揮されるのか理解できない。

(イ)理由3-2
本件発明1における、リタデーションが如何なる波長のリタデーションを意味するのか不明である。

イ 判断
(ア)理由3-1について
a 本件訂正(訂正事項5)により、訂正前の明細書の【0013】の記載から、「が、タッチパネルに限定されるものではなく、フィルムを有する層であればどのような層であってもよい」及び「し、又は両側に飛散防止フィルムを配置しない構成でもよい。飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」との記載が削除された。
また、本件訂正(訂正事項1ないし4)により、本件訂正発明1ないし4における「光源側飛散防止フィルム」及び「視認側飛散防止フィルム」は、接着層を介して「透明導電層を有するガラス基材」に積層されることが特定された。

b 上記訂正により、本件訂正発明1ないし本件訂正発明4の「飛散防止フィルム」の意味が明確になったものと認められる。

(イ)理由3-2について
特許権者が提出した乙第1号証ないし乙第3号証によれば、リタデーションは、ナトリウムD線(589.3nm)の波長で測定することが技術常識であると認められる。

ウ 【理由3】についてのまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、【理由3】によっては、取り消すことはできない。

3 平成30年11月29日提出の意見書について
特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。

「偏光フィルタを介した観察と、目視観察とは、虹斑の程度が異なるのみで、その原理は同じであり、課題としては同一であるため、当業者は、甲第1号証に記載された発明(引用発明)に対して、甲第2号証及び甲第8号証に記載された課題解決手段(偏光子の吸収軸に対して、配向フィルムの遅相軸を略45度に配置)を適用する動機付けがある。」(第5頁中段)

(1)甲第1号証に記載された発明は、液晶表示装置の斜め方向から目視観察した際の、虹斑の発生に着目したものであり、【0057】の記載からして、配向フィルムは、直線偏光に対して無作用である。
一方、甲第2号証(特開2005-157082号公報)及び甲第8号証(特開2011-107198号公報)に記載された発明は、偏光サングラスを介して観察した際の虹斑の発生に着目したものであり、配向フィルムは、直線偏光を解消するものであって、液晶表示装置を斜め方向から目視観察した際に虹斑の発生を解消できることまでは記載されていない。

(2)そうすると、甲第1号証に記載された発明において、敢えて、配向フィルムを直線偏光を解消するように配置を変更する動機がない。

(3)よって、特許異議申立人の主張は、上記「2 当審の判断」の判断を左右するものではない。

4 当審の判断のまとめ
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4の特許は、【理由1】ないし【理由3】によっては、取り消すことはできない。

第5 むすび
本件訂正発明1ないし本件訂正発明4に係る特許は、取消理由通知書に記載された理由、つまり、特許異議申立書に記載された理由によっては取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、携帯電話、タブレット端末、パーソナルコンピューター、テレビ、PDA、電子辞書、カーナビゲーション、音楽プレーヤー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等において幅広く実用化されている。画像表示装置の小型化、軽量化が進むについて、その利用はもはやオフィスや屋内に限られず、屋外及び車や電車等での移動中の利用も拡大している。
【0003】
そのような中、画像表示装置をサングラス等の偏光フィルタを介して視認する機会が増加している。この点に関連して、特許文献1には、液晶表示装置の視認側の偏光板より視認側にリタデーションが3000nm未満の高分子フィルムを用いた場合に、偏光板を通して画面を観察すると強い干渉色が現れるという問題が報告されている。そして、特許文献1には、前記の問題を解決する手段として、視認側の偏光板より視認側に用いる高分子フィルムのリタデーションを3000?30000nmにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/058774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、特許文献1には、液晶表示装置の視認側の偏光板より視認側に用いられる高分子フィルムのリタデーションを3000?30000nmに制御することによって、偏光サングラス等の偏光フィルタを介して液晶表示装置を観た場合の干渉色の出現を解消することが記載される。即ち、特許文献1には、当該視認側の偏光板より視認側の配向フィルムを特定のリタデーションを有する配向フィルムに置き換えることで、干渉色の出現が解消されることが記載される。しかしながら、現在流通しているフィルムの多くは、リタデーションの値が3000nm未満のフィルムであり、前記方法では、そのようなフィルムを画像表示装置に使用することができないという問題がある。また、本発明者等は、リタデーションの値を制御した配向フィルムとリタデーションの値を制御していない配向フィルムとを組み合わせて使用することについて検討を重ねたところ、組合せ方によって、虹斑の生じ方に違いがあることを見出した。そこで、本発明の1つの目的は、リタデーションの値が3000nm未満であるような汎用される配向フィルムの使用を可能にしながら、サングラス等の偏光フィルムを介して視認した際の干渉色(即ち、虹斑)による視認性の低下を改善すること、及び/又は、リタデーションの値を制御した配向フィルムとリタデーションの値を制御していない配向フィルムとを組み合わせた場合の虹斑による視認性の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記問題を解決すべく日夜研究を重ねたところ、上記の問題の一部は、配向フィルムの製造時のボーイング現象等により、配向フィルムの中央部と端部等で配向主軸を揃えることが容易ではないことに起因していることを見出した。また、本発明者等は、リタデーションが3000nm以上である2枚の配向フィルムを、それらの配向主軸が互いに略平行となるように配置した場合は、虹斑が抑制されることを見出したが、それらの間にリタデーションが3000nm未満の配向フィルムを配置した場合は、虹斑が発生するという新たな知見を得た。そこで、本発明者等は、試行錯誤を繰り返し、リタデーションを3000nm以上30000nm以下に制御した2枚の配向フィルムの間にリタデーションを制御していないフィルムを設け、これらの配向主軸の方向を制御することにより、虹斑等の色調の乱れによる視認性の低下を抑制することが可能であることを見出した。また、本発明者等は、斯かる知見に基づいて更なる検討を重ねたところ、リタデーションが3000nm以上30000nm以下に制御された2枚の配向フィルムのリタデーションの値を互いに相違させることにより、更に効果的に視認性を改善することが可能であることを見出した。以上の知見及び更なると改良の末、本発明者等は、視認側偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムとして、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムを採用し、光源側飛散防止フィルムとしてリタデーションが制御されていない配向フィルムを採用し、これらの配向フィルムの配向主軸を互いに略平行とするという発想に至り、本発明を完成するに至った。
【0007】
代表的な本発明は、以下の通りである。
項1.
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸は、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸と略平行又は略垂直である、画像表示装置。
項2.
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上である、項1に記載の画像表示装置。
項3.
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、項1又は2に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像表示装置の視認性が改善される。特に、偏光フィルタを介して視認した場合に生じる虹斑等の色調の乱れによる画質の低下が軽減される。尚、本書において、「虹斑」とは、「色斑」、「色ずれ」及び「干渉色」を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】タッチパネルを備えた画像表示装置の代表的な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
画像表示装置は、典型的に、画像表示セル及び偏光板を有する。画像表示セルには、典型的に、液晶セル又は有機ELセルが用いられる。画像表示セルとして液晶セルを用いた画像表示装置の代表的な模式図を図1に示す。
【0011】
液晶表示装置(1)は、光源(2)、液晶セル(4)、及び機能層としてタッチパネル(6)を有する。ここで、本書において、液晶表示装置の画像が表示される側(ヒトが画像を視認する側)を「視認側」と呼び、視認側と反対側(即ち、液晶表示装置において、通常、バックライト光源と呼ばれる光源が設定される側)を「光源側」と称する。なお、図1では、右側が視認側であり、左側が光源側である。
【0012】
液晶セル(4)の光源側及び視認側の両方にはそれぞれ偏光板(光源側偏光板(3)及び視認側偏光板(5))が設けられている。各偏光板(3,5)は、典型的に、偏光子(7,8)と呼ばれるフィルムの両側に偏光子保護フィルム(9a,9b,10a,10b)が積層された構造を有する。図1の画像表示装置(1)には、視認側偏光板(5)より視認側に、機能層としてタッチパネル(6)が設けられている。図1に示すタッチパネルは、抵抗膜式のタッチパネルである。タッチパネル(6)は、2枚の透明導電性フィルム(11,12)がスペーサー(13)を介して配置された構造を有する。透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。また、タッチパネル(6)の光源側及び視認側には、接着層を介して、透明基体である飛散防止フィルム(14,15)が設けられている。
【0013】
なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載した。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよい。
【0014】
<配向フィルムの位置関係>
画像表示装置には、種々の目的で配向フィルムが使用され得る。尚、本書において、配向フィルムとは、複屈折性を有する高分子フィルムのことを意味する。図1の液晶表示装置において、配向フィルムは、典型的に、液晶セル(4)より視認側にある偏光子(8)(以下、「視認側偏光子」と称する)の視認側にあるフィルム、すなわち視認側偏光子(8)より視認側にある偏光子保護フィルム(10b)(以下、「視認側偏光子保護フィルム」と称する)、スペーサー(13)より光源側にある透明導電性フィルム(11)の基材フィルム(11a)(以下、「光源側基材フィルム」と称する)、スペーサー(13)より視認側にある透明導電性フィルム(12)の基材フィルム(12a)(以下、「視認側基材フィルム」と称する)、視認側偏光子保護フィルム(10b)と光源側基材フィルム(11a)との間にある飛散防止フィルム(14)(以下、「光源側飛散防止フィルム」と称する)及び視認側基材フィルム12aより視認側にある飛散防止フィルム(15)(以下、「視認側飛散防止フィルム」と称する)に使用され得る。
【0015】
画像表示装置は、視認側偏光子保護フィルム(10b)及び視認側飛散防止フィルム(15)として、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムを備え、光源側飛散防止フィルム(14)として配向フィルムを備えることが好ましい。本書において、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムを「高リタデーション配向フィルム」と称する。前記光源側飛散防止フィルム(14)として用いる配向フィルムのリタデーションは、特に制限されないが、3000nm未満であることが好ましい。本書において、3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムを「低リタデーション配向フィルム」と称する。
【0016】
画像表示装置において、2枚の高リタデーション配向フィルム(即ち、視認側偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルム)の間に配置される低リタデーション配向フィルムの数は1枚に限定されず、2枚以上であってもよい。よって、画像表示装置は、光源側飛散防止フィルムとして低リタデーション配向フィルムを備える限り、光源側及び/又は視認側の基材フィルムとして、更なる低リタデーション配向フィルムを有していてもよい。また、画像表示装置は、2枚の高リタデーション配向フィルムの外側(視認側又は光源側に)に更なる高リタデーション配向フィルム及び/又は低リタデーション配向フィルムが配置されていても良い。よって、例えば、画像表示装置は、視認側飛散防止フィルムの視認側に更なる高リタデーション配向フィルム又は低リタデーション配向フィルムを備えていても良い。
【0017】
本書において、単一の部材に複数の配向フィルム(フィルム群)が使用される場合、それらは1枚のフィルムとみなす。ここで、部材とは、例えば、偏光子保護フィルム、光源側飛散防止フィルム、光源側基材フィルム、視認側基材フィルム、視認側飛散防止フィルム等の機能的及び/又は目的の観点から別個の部材と判断されるものを意味する。
【0018】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸は略平行であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸同士が形成する角(2枚の高リタデーション配向フィルムが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下、好ましくは0度±2度以下、好ましくは0度±1度以下、好ましくは0度であることを意味する。尚、本書において、「以下」という用語は、「±」の次の数値にのみかかることを意味する。従って、前記「0度±30度以下」とは、0度を中心に上下30度の範囲の変動を許容することを意味する。
【0019】
上記の通り、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸は、互いに平行に近い方が好ましいが、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合、その差をより大きくすることで、2枚の高リタデーション配向フィルムの配向主軸の平行状態からのずれが大きくなることを許容することができる。このような観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションは同一であっても異なっていても良いが、異なっていることが好ましい。2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションが異なる場合、その差は、例えば、1800nm以上、好ましくは2000nm以上、好ましくは3000nm以上、好ましくは4000nm以上である。
【0020】
虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、低リタデーション配向フィルムは、その配向主軸が高リタデーション配向フィルム(2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合は、より高いリタデーションを有する方)の配向主軸と略平行又は略垂直であることが好ましい。ここで、略平行であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと高リタデーション配向フィルムとが同一平面上にあると仮定する)が、好ましくは0度±30度以下、好ましくは0度±20度以下、好ましくは0度±15度以下、好ましくは0度±10度以下、好ましくは0度±7度以下、好ましくは0度±5度以下、好ましくは0度±3度以下であることを意味する。略垂直であるとは、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが形成する角が、好ましくは90度±30度以下、好ましくは90度±20度以下、好ましくは90度±15度以下、好ましくは90度±10度以下、好ましくは90度±7度以下、好ましくは90度±5度以下、好ましくは90度±3度以下であることを意味する。
【0021】
このように、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とは、互いに平行又は垂直に近い方が好ましいが、上述するように、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションに差がある場合、その差をより大きくすることで、低リタデーション配向フィルムの高リタデーション配向フィルムに対する平行状態からのずれが大きくなることを許容することができる。即ち、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションの差が大きければ、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と高リタデーション配向フィルムの配向主軸とが、平行又は垂直ではない状態であっても、優れた虹斑抑制効果が得られる。このような観点からも、2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションの差は、比較的大きいことが好ましい。
【0022】
2枚の高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムの配向主軸の向きと視認側偏光子の偏光軸の向きとの関係は任意であるが、虹斑等の色調の乱れによる画質の低下を抑制するという観点から、2枚の高リタデーション配向フィルムは、その配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)が、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角は、45度±30度以下であり、好ましくは45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10度以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、好ましくは45度±2度以下、好ましくは45度±1度以下、好ましくは45度である。
【0023】
上記のような条件を満たすように高リタデーション配向フィルムを配置することは、例えば、切断された高リタデーション配向フィルムをその配向主軸が偏光子の偏光軸と特定の角度になるように配置する方法や、高リタデーション配向フィルムを斜め延伸することで偏光子の偏光軸と特定角度になるように配置する方法により行うことができる。
【0024】
偏光サングラス等の偏光フィルタを介して画像を視認する際に、より優れた視認性を確保するという観点から、視認側偏光子(及び光源側偏光子)の偏光軸は、偏光フィルタの偏光軸と45度の関係にあることが好ましい。より具体的には、画像表示装置に使用される偏光子の偏光軸と偏光フィルタの偏光軸とが形成する角は、例えば、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10度以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、好ましくは45度±2度以下、好ましくは45度±1度以下、好ましくは45度である。偏光サングラス等の偏光フィルタは、通常、装着した際の偏光軸が水平に対して垂直方向となるように設計されている。この点を考慮すると、一実施形態において、画像表示装置に備えられる視認側偏光子(及び光源側偏光子)は、その偏光軸が略長方形のディスプレイの縦又は横の辺に対して45度の関係で配置されることが好ましい。
【0025】
高リタデーション配向フィルムのリタデーションは、虹斑を低減するという観点から、3000nm以上150000nm以下であることが好ましい。高リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、好ましくは6000nm以上、好ましくは8000nm以上、好ましくは10000nm以上である。一方、高リタデーション配向フィルムのリタデーションの上限は、それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られず、またリタデーションの高さに応じては配向フィルムの厚みも上昇する傾向があるため、薄型化への要請に反し兼ねないという観点から、150000nmと設定されるが、更に高い値とすることもできる。
【0026】
虹斑をより効果的に抑制するという観点から、高リタデーション配向フィルムは、そのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、好ましくは0.2以上であり、好ましくは0.5以上、好ましくは0.6以上である。厚さ方向リタデーションは、フィルム厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz及び△Nyzにそれぞれフィルム厚みdを掛けて得られるリタデーションの平均値を意味する。Re/Rthが大きいほど、複屈折の作用は等方性を増し、画面への虹斑の発生をより効果的に抑制することができる。尚、本書において、単に「リタデーション」と記載する場合は、面内リタデーションを意味する。
【0027】
Re/Rthの最大値は2.0(即ち、完全な1軸対称性フィルム)であるが、完全な1軸対称性フィルムに近づくにつれて配向方向と直交する方向の機械的強度が低下する傾向がある。よって、ポリエステルフィルムのRe/Rthの上限は、好ましくは1.2以下、好ましくは1.0以下である。上記比率が1.0以下であっても、画像表示装置に求められる視野角特性(左右180度、上下120度程度)を満足することが可能である。
【0028】
低リタデーション配向フィルムのリタデーションは、3000nm未満であれば特に制限されない。低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、好ましくは50nm以上、好ましくは100nm以上、好ましくは200nm以上、好ましくは300nm以上、好ましくは400nm以上、又は好ましくは500nm以上である。また、低リタデーション配向フィルムのリタデーションの上限は、高リタデーション配向フィルムとの組合せで虹斑の抑制が可能であるという観点から、好ましくは3000nm未満、好ましくは2500nm未満、又は好ましくは2300nm未満である。画像表示装置が低リタデーション配向フィルムを2枚以上有する場合、それらのリタデーションは同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
低リタデーション配向フィルムは、一軸延伸配向フィルムであっても、二軸延伸配向フィルムであってもよいが、フィルムの裂け易さを低減するという観点から、二軸延伸配向フィルムであることが好ましい。
【0030】
配向フィルムのリタデーションは、公知の手法に従って測定することができる。具体的には、2軸方向の屈折率と厚みを測定して求めることができる。また、商業的に入手可能な自動複屈折測定装置(例えば、KOBRA-21ADH:王子計測機器株式会社製)を用いて求めることもできる。
【0031】
高リタデーション配向フィルムは、公知の手法を適宜選択して製造することができる。例えば、高リタデーション配向フィルムは、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、シクロオレフィン樹脂、液晶性ポリマー樹脂、及びセルロース系樹脂に液晶化合物を添加した樹脂から成る群より選択される一種以上を用いて製造することができる。従って、高リタデーション配向フィルムは、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、シンジオタクチックポリスチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、シクロオレフィンフィルム、液晶性フィルム、セルロース系樹脂に液晶化合物が添加されたフィルムであり得る。
【0032】
高リタデーション配向フィルムの好ましい原料樹脂は、ポリカーボネート及び/又はポリエステル、シンジオタクチックポリスチレンである。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れており、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルは固有複屈折が大きく、フィルムの厚みが薄くても比較的容易に大きなリタデーションが得られるので好ましい。特に、ポリエチレンナフタレートは、ポリエステルの中でも固有複屈折率が大きいことから、リタデーションを特に高くしたい場合や、リタデーションを高く保ちながらフィルム厚みを薄くしたい場合に好適である。ポリエステル樹脂を代表例として、より具体的な高リタデーション配向フィルムの製造方法を後述する。
【0033】
低リタデーション配向フィルムは、公知の手法を適宜選択して製造することができる。例えば、低リタデーション配向フィルムは、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、環状ポリオレフィン等)、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアリレート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂、酢酸セルロース樹脂(トリアセチルセルロース等)等からなる群から選択される樹脂を原料として得ることができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂及びポリオレフィン樹脂が好ましく、好ましくはポリエステル樹脂であり、好ましくはポリエチレンテレフタレート及び/又はポリプロピレン樹脂である。
【0034】
<配向フィルムの製造方法>
以下に、ポリエステルフィルムを例に、高リタデーション配向フィルム及び低リタデーション配向フィルムを含む配向フィルムの製造方法を説明する。ポリエステルフィルムは、任意のジカルボン酸とジオールとを縮合させて得ることができる。ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカジカルボン酸等を挙げることができる。
【0035】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン等を挙げることができる。
【0036】
ポリエステルフィルムを構成するジカルボン酸成分とジオール成分はそれぞれ1種又は2種以上を用いても良い。ポリエステルフィルムを構成する具体的なポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートであり、好ましくはポリエチレンテレフタレートである。ポリエステル樹脂は他の共重合成分を含んでも良く、機械強度の点からは共重合成分の割合は3モル%以下が好ましく、好ましくは2モル%以下、更に好ましくは1.5モル%以下である。これらの樹脂は透明性に優れるとともに、熱的、機械的特性にも優れる。また、これらの樹脂は、延伸加工によって容易にリタデーションを制御することができる。
【0037】
ポリエステルフィルムは、一般的な製造方法に従って得ることができる。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施すことにより配向ポリエステルフィルムが挙げられる。ポリエステルフィルムは、一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであっても良い。上記高リタデーション配向フィルムは斜め45度に延伸されたものであってもよい。
【0038】
ポリエステルフィルムを得るための製造条件は、公知の手法に従って適宜設定することが出来る。例えば、縦延伸温度及び横延伸温度は、通常80?130℃であり、好ましくは90?120℃である。縦延伸倍率は、通常1.0?3.5倍であり、好ましくは1.0倍?3.0倍である。また、横延伸倍率は、通常2.5?6.0倍であり、好ましくは3.0?5.5倍である。
【0039】
リタデーションを特定範囲に制御することは、延伸倍率や延伸温度、フィルムの厚みを適宜設定することにより行うことができる。例えば、縦延伸と横延伸の延伸倍率差が高いほど、延伸温度が低いほど、フィルムの厚みが厚いほど高いリタデーションを得やすくなる。逆に、縦延伸と横延伸の延伸倍率差が低いほど、延伸温度が高いほど、フィルムの厚みが薄いほど低いリタデーションを得やすくなる。また、延伸温度が高いほど、トータル延伸倍率が低いほど、リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が低いフィルムが得やすくなる。逆に、延伸温度が低いほど、トータル延伸倍率が高いほど、リタデーションと厚さ方向リタデーションの比(Re/Rth)が高いフィルムが得られる。更に、熱処理温度は、通常140?240℃が好ましく、好ましくは180?240℃である。
【0040】
ポリエステルフィルムにおけるリタデーションの変動を抑制する為には、フィルムの厚み斑が小さいことが好ましい。リタデーション差をつけるために縦延伸倍率を低くすると、縦厚み斑の値が高くなる場合がある。縦厚み斑の値は延伸倍率のある特定の範囲で非常に高くなる領域があるため、そのような範囲を外すように製膜条件を設定することが望ましい。
【0041】
配向ポリエステルフィルムの厚み斑は5.0%以下であることが好ましく、4.5%以下であることがさらに好ましく、4.0%以下であることがよりさらに好ましく、3.0%以下であることが特に好ましい。フィルムの厚み斑は、任意の手段で測定することができる。例えば、フィルムの流れ方向に連続したテープ状サンプル(長さ3m)を採取し、市販される測定器(例えば、(株)セイコー・イーエム製電子マイクロメータ ミリトロン1240)を用いて、1cmピッチで100点の厚みを測定し、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出することができる。
厚み斑(%)=((dmax-dmin)/d)×100
【0042】
<画像表示セル及び光源>
画像表示装置は、典型的に画像表示セルとして液晶セル又は有機ELセルを備え得る。また、画像表示装置は、虹斑を抑制するという観点から、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源を有することが好ましい。画像表示装置が液晶セルを備える場合、画像表示装置は、そのような光源を画像表示セルとは独立した光源として備えることが好ましい。一方、有機ELセルの場合は、それ自体が光源の機能を有するため、有機ELセル自体が、連続的で幅広い発光スペクトルを有する光を放つことが好ましい。連続的で幅広い発光スペクトルを有する光源の方式及び構造は特に制限されず、例えば、エッジライト方式又は直下型方式であり得る。「連続的で幅広い発光スペクトル」とは、少なくとも450?650nmの波長領域、好ましくは可視光の領域において光の強度がゼロになる波長領域が存在しない発光スペクトルを意味する。可視光領域とは、例えば、400?760nmの波長領域であり、360?760nm、400?830nm、又は360?830nmであり得る。
【0043】
連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色光源としては、例えば、白色発光ダイオード(白色LED)を挙げることができる。白色LEDには、蛍光体方式のもの(即ち、化合物半導体を使用した青色光、もしくは紫外光を発する発光ダイオードと蛍光体を組み合わせることにより白色を発する素子)及び有機発光ダイオード(Organic light-emitting diode:OLED)等を挙げることができる。連続的で幅広い発光スペクトルを有し、且つ、発光効率にも優れているという観点から、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色発光ダイオードが好ましい。
【0044】
液晶セルは、液晶表示装置において使用され得る任意の液晶セルを適宜選択して使用することができ、その方式や構造は特に制限されない。例えば、VAモード、IPSモード、TNモード、STNモードやベンド配向(π型)等の液晶セルを適宜選択して使用できる。よって、液晶セルは、公知の液晶材料及び今後開発され得る液晶材料で作製された液晶を適宜選択して使用することができる。一実施形態において好ましい液晶セルは、透過型の液晶セルである。
【0045】
有機ELセルは、当該技術分野において知られる有機ELセルを適宜選択して使用することができる。有機ELセルは、発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)であり、典型的に透明基材上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層した構造を有する。有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体、及び、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体等を挙げることができる。このように、有機ELセルは、画像表示セルとしての機能と光源としての機能を兼ね備えるため、画像表示装置が有機ELセルを備える場合、独立した光源は不要である。即ち、画像表示装置における光源と画像表示装置は、それらの機能が発揮される限り、互いに独立した存在であっても、一体の形態であってもよい。
【0046】
画像表示セルとして有機ELセルを用いる場合、画像表示装置における偏光板は必須ではない。しかし、有機発光層の厚みが10nm程度ときわめて薄いために、外光が金属電極で反射して再び視認側へ出射され、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える場合がある。このような外光の鏡面反射を遮蔽するために、有機ELセルの視認側に、偏光板及び1/4波長板を設けることが好ましい。よって、画像表示装置が、有機ELセル及び偏光板を有する場合には、図1における液晶セル(4)を有機ELセルと考え、視認側偏光板(5)を偏光板として考えれば、液晶表示装置(1)における配向フィルムの位置関係をそのまま適用することができる。
【0047】
<偏光板及び偏光子保護フィルム>
偏光板は、フィルム状の偏光子の両側を2枚の保護フィルム(「偏光子保護フィルム」と称する場合もある)で挟んだ構造を有する。偏光子は、当該技術分野において使用される任意の偏光子(又は偏光フィルム)を適宜選択して使用することができる。代表的な偏光子としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等にヨウ素等の二色性材料を染着させたものを挙げることができるが、これに限定されるものではなく、公知及び今後開発され得る偏光子を適宜選択して用いることができる。
【0048】
PVAフィルムは、市販品を用いることができ、例えば、「クラレビニロン((株)クラレ製)」、「トーセロビニロン(東セロ(株)製)]、「日合ビニロン(日本合成化学(株)製)]等を用いることができる。二色性材料としてはヨウ素、ジアゾ化合物、ポリメチン染料等を挙げることができる。
【0049】
偏光子は、任意の手法で得ることができ、例えば、PVAフィルムを二色性材料で染着させたものをホウ酸水溶液中で一軸延伸し、延伸状態を保ったまま洗浄及び乾燥を行うことにより得ることができる。一軸延伸の延伸倍率は、通常4?8倍程度であるが特に制限されない。他の製造条件等は公知の手法に従って適宜設定することができる。
【0050】
視認側偏光子の視認側の保護フィルム(視認側偏光子保護フィルム)は、高リタデーション配向フィルムであることが好ましい。
【0051】
視認側偏光子の光源側の保護フィルム及び光源側偏光子の保護フィルムの種類は任意であり、従来から保護フィルムとして使用されるフィルムを適宜選択して使用することができる。取り扱い性及び入手の容易性といった観点から、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アクリルフィルム、及び環状オレフィン系フィルム(例えば、ノルボルネン系フィルム)、ポリプロピレンフィルム、及びポリオレフィン系フィルム(例えば、TPX)等から成る群より選択される一種以上の複屈折性を有さないフィルムを用いることが好ましい。
【0052】
一実施形態において、視認側偏光子の光源側保護フィルム及び光源側偏光子の視認側保護フィルムは、光学補償機能を有する光学補償フィルムであることが好ましい。そのような光学補償フィルムは液晶の各方式に合わせて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース中に液晶化合物(例えば、ディスコティック液晶化合物及び/又は複屈折性化合物)を分散させた樹脂、環状オレフィン樹脂(例えば、ノルボルネン樹脂)、プロピオニルアセテート樹脂、ポリカーボネートフィルム樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリロニトリル共重合体樹脂、ラクトン環含有樹脂、及びイミド基含有ポリオレフィン樹脂等なら成る群より選択される1種以上から得られるものを挙げることができる。
【0053】
光学補償フィルムは、商業的に入手可能であるため、それらを適宜選択して使用することも可能である。例えば、TN方式用の「ワイドビュー-EA」及び「ワイドビュー-T」(富士フイルム社製)、VA方式用の「ワイドビュー-B」(富士フイルム社製)、VA-TAC(コニカミノルタ社製)、「ゼオノアフィルム」(日本ゼオン社製)、「アートン」(JSR社製)、「X-plate」(日東電工社製)、並びにIPS方式用の「Z-TAC」(富士フイルム社製)、「CIG」(日東電工社製)、「P-TAC」(大倉工業社製)等が挙げられる。
【0054】
偏光子保護フィルムは偏光子上に直接又は接着剤層を介して積層することができる。接着性向上の点から、接着剤を介して積層することが好ましい。接着剤としては、特に制限されず任意のものを使用できる。接着剤層を薄くする観点から、水系のもの(即ち、接着剤成分を水に溶解したもの又は水に分散させたもの)が好ましい。例えば、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合は、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂などを用い、接着性を向上させるために、必要に応じてイソシアネート系化合物、エポキシ化合物などを配合した組成物を接着剤として用いることができる。接着剤層の厚みは10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。
【0055】
偏光子保護フィルムとしてTACフィルムを用いる場合、ポリビニルアルコール系の接着剤を用いて張り合わせることができる。偏光子保護フィルムとして、アクリルフィルム、環状オレフィン系フィルム、ポリプロピレフィルム、又はTPX等の透湿性の低いフィルムを用いる場合は、接着剤として光硬化性接着剤を用いることが好ましい。光硬化性樹脂としては、例えば、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。
【0056】
偏光子保護フィルムの厚みは任意であり、例えば、15?300μmの範囲、好ましくは30?200μmの範囲で適宜設定できる。
【0057】
<タッチパネル、透明導電性フィルム、基材フィルム、飛散防止フィルム>
画像表示装置は、タッチパネルを備え得る。タッチパネルの種類及び方式は特に制限されないが、例えば、抵抗膜方式タッチパネル及び静電容量方式タッチパネルを挙げることができる。タッチパネルは、その方式に関係なく、通常、1枚又は2枚以上の透明導電性フィルムを有する。透明導電性フィルムは、基材フィルム上に透明導電層が積層された構造を有する。基材フィルムには、高リタデーション配向フィルム、低リタデーション配向フィルム、又は従来から基材フィルムとして用いられる他のフィルム若しくはガラス板等の剛性板を用いることができる。
【0058】
基材フィルムとして従来から用いられる他のフィルムとしては、透明性を有する各種の樹脂フィルムを挙げることができる。例えば、ポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアリレート樹脂、及びポリフェニレンサルファイド樹脂等から成る群から選択される1種以上の樹脂から得られるフィルムを使用することができる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリオレフィン樹脂が好ましく、好ましくはポリエステル樹脂である。
【0059】
基材フィルムの厚みは任意であるが、15?500μmの範囲が好ましい。
【0060】
基材フィルムは、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理を施してもよい。これにより、基材フィルム上に設けられる透明導電層等との密着性を向上させることができる。また、透明導電層等を設ける前に、必要に応じて基材フィルムの表面を溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0061】
透明導電層は、直接基材フィルムに積層されても良いが、易接着層及び/又は種々の他の層を介して積層することが出来る。他の層としては、例えば、ハードコート層、インデックスマッチング(IM)層、及び低屈折率層等を挙げることができる。代表的な透明導電性フィルムの積層構造としては、次の6パターンを挙げることが出来るが、これらに限定されるわけではない。
(1)基材フィルム/易接着層/透明導電層
(2)基材フィルム/易接着層/ハードコート層/透明導電層
(3)基材フィルム/易接着層/IM(インデックスマッチング)層/透明導電層
(4)基材フィルム/易接着層/ハードコート層/IM(インデックスマッチング)層/透明導電層
(5)基材フィルム/易接着層/ハードコート層(高屈折率でIMを兼ねる)/透明導電層
(6)基材フィルム/易接着層/ハードコート層(高屈折率)/低屈折率層/透明導電性薄膜
【0062】
IM層は、それ自体が高屈折率層/低屈折率層の積層構成(透明導電性薄膜側が低屈折率層)であるため、これを用いることにより、液晶表示画面を見た際にITOパターンを見え難くすることができる。上記(6)のように、IM層の高屈折率層とハードコート層を一体化させることもでき、薄型化の観点から好ましい。
【0063】
上記(3)?(6)の構成は、静電容量式のタッチパネルにおける使用に特に適している。また、上記(2)?(6)の構成は、基材フィルムの表面にオリゴマーが析出することが防止できるという観点で好ましく、基材フィルムのもう一方の片面にもハードコート層を設けることが好ましい。
【0064】
基材フィルム上の透明導電層は、導電性金属酸化物により形成される。透明導電層を構成する導電性金属酸化物は特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の導電性金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。好ましい透明導電層は、例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)層及びアンチモンドープ酸化スズ(ATO)層であり、好ましくはITO層である。また、透明導電層は、Agナノワイヤー、Agインク、Agインクの自己組織化導電膜、網目状電極、CNTインク、導電性高分子であってもよい。
【0065】
透明導電層の厚みは特に制限されないが、10nm以上であることが好ましく、15?40nmであることがより好ましく、20?30nmであることがさらに好ましい。透明導電層の厚みが15nm以上であると、表面抵抗が例えば1×10^(3)Ω/□以下の良好な連続被膜が得られ易い。また、透明導電層の厚みが40nm以下であると、より透明性の高い層とすることができる。
【0066】
透明導電層は、公知の手順に従って形成することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。透明導電層は、アモルファスであってもよく、結晶性のものであってもよい。結晶性の透明導電層を形成する方法としては、一旦基材上にアモルファス膜を形成した後、該アモルファス膜を可撓性透明基材とともに加熱・結晶化することによって形成することが好ましい。
【0067】
本発明の透明導電性フィルムは、透明導電層の面内の一部が除去されてパターン化されたものであってもよい。透明導電層がパターン化された透明導電性フィルムは、基材フィルム上に透明導電層が形成されているパターン形成部と、基材フィルム上に透明導電層を有していないパターン開口部とを有する。パターン形成部の形状は、例えば、ストライプ状の他、スクエア状等が挙げられる。
【0068】
画像表示装置は、2枚の飛散防止フィルムを有することが好ましく、光源側飛散防止フィルムが低リタデーション配向フィルムであり、視認側飛散防止フィルムが高リタデーション配向フィルムであることが好ましい。画像表示装置が3枚以上の飛散防止フィルムを備える場合、前記2枚の飛散防止フィルム以外のものは、高リタデーション配向フィルム、低リタデーション配向フィルム、又は従来から飛散防止フィルムとして用いられる各種のフィルム(例えば、上記基材フィルムについて記載した透明樹脂フィルム)であり得る。飛散防止フィルムが2枚以上設けられる場合、それらは同一の材料から形成されていてもよく、異なっていても良い。
【0069】
配向フィルムを画像表示装置の表面カバー板の飛散防止フィルムとして使用する場合、配向フィルムの配置は表面カバー板の光源側であっても視認側であっても良い。また、配向フィルムの両側にガラスを積層させた合わせガラス構造であっても良い。配向フィルムが表面カバー板の光源側である場合には、配向フィルムの表面カバー板とは反対側に反射防止層を設けることが好ましい。反射防止層を設けることによって明るくクリアな画像が得られる。
【0070】
配向フィルムを飛散防止フィルムとして用いる場合には、配向フィルムに紫外線吸収機能を付与することが好ましい。紫外線吸収機能の付与は、配向フィルムに紫外線吸収剤を添加すること、又は配向フィルムの視認側に紫外線吸収コートを施すこと等によって行うことができる。配向フィルムが表面カバー板の視認側にある場合には、配向フィルムの表面カバー板とは反対側に反射防止層、防眩層、帯電防止層、防汚層等を設けることが好ましい。この場合、最表面の表面カバー板の光源側に反射防止層を設けても良いし、視認側の他の部材と接着材で貼り合わせても良い。
【0071】
偏光子保護フィルム、基材フィルム、及び飛散防止フィルムは、本発明の効果を妨げない範囲で、各種の添加剤を含有させることができる。例えば、紫外線吸収剤、無機粒子、耐熱性高分子粒子、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン化合物、帯電防止剤、耐光剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、ゲル化防止剤、界面活性剤等が挙げられる。また、高い透明性を奏するためにはポリエステルフィルムに実質的に粒子を含有しないことも好ましい。「粒子を実質的に含有させない」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に重量で50ppm以下、好ましくは10ppm以下、特に好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。
【0072】
配向フィルムは、種々の機能層を有していても良い。そのような機能層としては、例えば、ハードコート層、防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層、帯電防止層、シリコーン層、粘着層、防汚層、撥水層、及びブルーカット層等からなる群より選択される1種以上を用いることができる。防眩層、反射防止層、低反射層、低反射防眩層、反射防止防眩層を設けることにより、斜め方向から観察したときの色斑が改善されるという効果も期待できる。
【0073】
種々の機能層を設けるに際して、配向フィルムの表面に易接着層を有することが好ましい。その際、反射光による干渉を抑える観点から、易接着層の屈折率を、機能層の屈折率と配向フィルムの屈折率の相乗平均近傍になるように調整することが好ましい。易接着層の屈折率の調整は、公知の方法を採用することができ、例えば、バインダー樹脂に、チタンやジルコニウム、その他の金属種を含有させることで容易に調整することができる。
【0074】
(ハードコート層)
ハードコート層は、硬度及び透明性を有する層であれば良く、通常、紫外線又は電子線で代表的には硬化させる電離放射線硬化性樹脂、熱で硬化させる熱硬化性樹脂等の各種の硬化性樹脂の硬化樹脂層として形成されたものが利用される。これら硬化性樹脂に、適宜柔軟性、その他物性等を付加する為に、熱可塑性樹脂等も適宜添加してもよい。硬化性樹脂のなかでも、代表的であり且つ優れた硬質塗膜が得られる点で好ましいのが電離放射線硬化性樹脂である。
【0075】
上記電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の樹脂を適宜採用すれば良い。なお、電離放射線硬化性樹脂としては、エチレン性二重結合を有するラジカル重合性化合物、エポキシ化合物等の様なカチオン重合性化合物等が代表的に用いられ、これら化合物はモノマー、オリゴマー、プレポリマー等としてこれらを単独で、或いは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。代表的な化合物は、ラジカル重合性化合物である各種(メタ)アクリレート系化合物である。(メタ)アクリレート系化合物の中で、比較的低分子量で用いる化合物としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0076】
モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の単官能モノマー;或いは、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等も適宜用いられる。(メタ)アクリレートとは、アクリレート或いはメタクリレートを意味する。
【0077】
電離放射線硬化性樹脂を電子線で硬化させる場合、光重合開始剤は不要であるが、紫外線で硬化させる場合は、公知の光重合開始剤を用いる。例えば、ラジカル重合系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることができる。カチオン重合系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合して用いることができる。
【0078】
ハードコート層の厚みは、適宜の厚さとすればよく、例えば0.1?100μmであるが、通常は1?30μmとする。また、ハードコート層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。
【0079】
電離放射線硬化性樹脂には、適宜物性調整等の為に、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂等も適宜添加することができる。熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、各々、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0080】
ハードコート層に耐光性を付与し、日光等に含まれる紫外線による変色、強度劣化、亀裂発生等を防止する為には、電離放射線硬化性樹脂中に紫外線吸収剤を添加することも好ましい。紫外線吸収剤を添加する場合、該紫外線吸収剤によってハードコート層の硬化が阻害されることを確実に防ぐ為、電離放射線硬化性樹脂は電子線で硬化させることが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等の有機系紫外線吸収剤、或いは粒径0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤等、公知の物の中から選択して用いれば良い。紫外線吸収剤の添加量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中に0.01?5質量%程度である。耐光性をより向上させる為に、紫外線吸収剤と併用して、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を添加するのが好ましい。なお、電子線照射は加速電圧70kV?1MV、照射線量5?100kGy(0.5?10Mrad)程度である。
【0081】
(防眩層)
防眩層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に防眩剤を分散した層として形成される。防眩剤としては、無機系又は有機系の微粒子が用いられる。これら微粒子の形状は、真球状、楕円状等である。微粒子は、好ましくは透明性のものが良い。この様な微粒子は、例えば、無機系微粒子としてはシリカビーズ、有機系微粒子としては樹脂ビーズが挙げられる。樹脂ビーズとしては、例えば、スチレンビーズ、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル-スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒドビーズなどが挙げられる。微粒子は、通常、樹脂分100質量部に対し、2?30質量部、好ましくは10?25質量部程度添加することができる。
【0082】
防眩剤を分散保持する上記樹脂は、ハードコート層と同じ様に、なるべく硬度が高い方が好ましい。よって、上記樹脂として、例えば、上記ハードコート層で述べた電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等を用いることができる。
【0083】
防眩層の厚みは、適宜の厚さとすればよく、通常は1?20μm程度とする。防眩層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。なお、防眩層を形成する為の塗液中には、防眩剤の沈殿を防ぐ為に、シリカ等の公知の沈降防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0084】
(反射防止層)
反射防止層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良い。一般に、反射防止層は少なくとも低屈折率層からなり、更に低屈折率層と(該低屈折率層より屈折率が高い)高屈折率層とを交互に隣接積層し且つ表面側を低屈折率層とした多層の層からなる。低屈折率層及び高屈折率層の各厚みは、用途に応じた適宜厚みとすれば良く、隣接積層時は各々0.1μm前後、低屈折率層単独時は0.1?1μm程度であることが好ましい。
【0085】
低屈折率層としては、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質を樹脂中に含有させた層、フッ素系樹脂等の低屈折率樹脂の層、低屈折率物質を低屈折率樹脂中に含有させた層、シリカ、フッ化マグネシウム等の低屈折率物質からなる層を薄膜形成法(例えば、蒸着、スパッタ、CVD、等の物理的又は化学的気相成長法)で形成した薄膜、酸化ケイ素のゾル液から酸化ケイ素ゲル膜を形成するゾルゲル法で形成した膜、或いは、低屈折率物質として空隙含有微粒子を樹脂中に含有させた層等が挙げられる。
【0086】
上記空隙含有微粒子とは、内部に気体を含む微粒子、気体を含む多孔質構造の微粒子等のことであり、微粒子固体部分の本来の屈折率に対して、該気体による空隙によって微粒子全体としては、見かけ上屈折率が低下した微粒子を意味する。この様な空隙含有微粒子としては、特開2001-233611号公報に開示のシリカ微粒子等が挙げられる。また、空隙含有微粒子としては、シリカの様な無機物以外に、特開2002-805031号公報等に開示の中空ポリマー微粒子も挙げられる。空隙含有微粒子の粒径は、例えば5?300nm程度である。
【0087】
高屈折率層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の高屈折率物質を樹脂中に含有させた層、フッ素非含有樹脂等の高屈折率樹脂の層、高屈折率物質を高屈折率樹脂中に含有させた層、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛等の高屈折率物質からなる層を薄膜形成法(例えば、蒸着、スパッタ、CVD、等の物理的乃至は化学的気相成長法)で形成した薄膜等が挙げられる。
【0088】
(帯電防止層)
帯電防止層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に帯電防止層を含有させた層として形成される。帯電防止層としては、有機系や無機系の化合物が用いられる。例えば、有機系化合物の帯電防止層としては、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、有機金属系帯電防止剤等が挙げられ、またこれら帯電防止剤は低分子化合物として用いられるほか、高分子化合物としても用いられる。また、帯電防止剤としては、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性ポリマー等も用いられる。また、帯電防止剤として例えば金属酸化物からなる導電性微粒子等も用いられる。導電性微粒子の粒径は透明性の点で、例えば平均粒径0.1nm?0.1μm程度である。なお、該金属酸化物としては、例えば、ZnO、CeO_(2)、Sb_(2)O_(2)、SnO_(2)、ITO(インジウムドープ酸化錫)、In_(2)O_(3)、Al_(2)O_(3)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0089】
帯電防止層を含有させる上記樹脂としては、例えば、上記ハードコート層で述べた様な、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂等が使用される他、帯電防止層を中間層として形成して帯電防止層自体の表面強度が不要な場合には、熱可塑性樹脂等も使用される。帯電防止層の厚みは、適宜厚さとすればよく、通常は0.01?5μm程度とする。帯電防止層は公知の各種塗工法を適宜採用して形成することができる。
【0090】
配向フィルムを偏光子保護フィルムとして使用する場合には、その表層に帯電防止層を積層することが好ましい。帯電防止層を積層する場合、帯電防止層と防眩層とを重ねて積層すること、又は防眩層に帯電防止剤を加え、両層を兼ね備えるような層を積層することが好ましい。尚、画像表示装置を組み立てる際、偏光板表面にはプロセス部材として偏光板保護フィルム(偏光子保護フィルムとは異なり、液晶表示装置内には最終的に組み入られず、液晶表示装置の製造工程途中で捨てられる部材)が使用されることが通常であるが、この偏光板保護フィルムが偏光板に接する側又はその反対側に帯電防止層を設けることが好ましい。
【0091】
(防汚層)
防汚層としては、従来公知のものを適宜採用すれば良く、一般的に、樹脂中に、シリコーンオイル、シリコーン樹脂等の珪素系化合物;フッ素系界面活性剤、フッ素系樹脂等のフッ素系化合物;ワックス等の防汚染剤を含む塗料を用いて公知の塗工法で形成することができる。防汚層の厚みは、適宜厚さとすればよく、通常は1?10μm程度とすることが出来る。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって制限されるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
下記「画像表示装置の構成」の項に示す構成のタッチパネルを備えた画像表示装置を作製し、視認側表面に、視認側表面と平行になるように偏光フィルムを配置して白画像を表示させた。前記平行状態を維持したまま偏光フィルムの偏光軸と画像表示装置の視認側偏光子の偏光軸とが形成する角が0°、45°、又は90°となるように偏光フィルムの位置を変え、各点において偏光フィルムを介して正面から白画像を眺めて虹斑発生の有無及び程度を確認し、下記の基準に従って評価した。
【0094】
<評価基準>
◎: 正面から観察したときに、虹斑が観察されない。
○: 正面から観察したときに、極薄く虹斑が観察される。
×: 正面から観察したときに、虹斑が観察される。
【0095】
<画像表示装置の構成>
(1)バックライト光源:白色LED又は冷陰極管
(2)画像表示セル:液晶セル
(3)光源側偏光板:PVAとヨウ素からなる偏光子の両側にTACフィルムを貼り合わせた偏光板
(4)視認側偏光板:PVAとヨウ素からなる偏光子の光源側保護フィルムとしてTACフィルムを張り合わせ、視認側保護フィルムとして、後述する配向フィルム1又は2を貼り合わせた偏光板
(5)光源側飛散防止フィルム:後述する配向フィルムA
(6)タッチパネル:ガラス基材の上にITOからなる透明導電層を設けたITOガラスを用いて作製した抵抗膜方式タッチパネル
(7)視認側飛散防止フィルム:後述する配向フィルム1又は2
視認側偏光子の視認側保護フィルムとして用いた配向フィルム及び視認側飛散防止フィルムとして使用した配向フィルムは、いずれもその配向主軸が視認側偏光子の偏光軸と45度となるように配置された。また、光源側飛散防止フィルムとして用いた配向フィルムは、その配向主軸と、視認側保護フィルムの配向主軸とが形成する角が0度、10度、20度、45度、80度、又は90度となるように配置した。
【0096】
配向フィルム1
固有粘度0.62dl/gのPET樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給し、285℃で溶解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
【0097】
上記未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約100μmの一軸配向の配向フィルム1を得た。リタデーション値は10200nmであった。Rthは13233nmであり、Re/Rth比は、0.771であった。
【0098】
配向フィルム2
未延伸フィルムの厚みを変更することにより、フィルムの厚みを約50μmとする以外は、配向フィルム1と同様にして一軸配向の配向フィルム2を得た。リタデーション値は5200nmであった。Rthは6600nmであり、Re/Rth比は、0.788であった。
【0099】
配向フィルムA
固有粘度0.62dl/gのPET樹脂ペレットを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機に供給し、285℃で溶解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。
【0100】
上記未延伸フィルムを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.6倍延伸して一軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。一軸延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に3.8倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度225℃、30秒間で処理し、さらに幅方向に3%の緩和処理を行い、フィルム厚み約65μmの配向フィルムAを得た。リタデーション値は1500nmであった。
【0101】
なお、リタデーション(Re)は、次の通り測定した。即ち、二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向主軸方向を求め、配向主軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(Nx,Ny)、及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T)によって求め、前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)として求めた。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定し、単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より、リタデーション(Re)を求めた。また、リタデーションの測定と同様の方法でNx、Ny、Nzとフィルム厚みd(nm)を求め、(△Nxz×d)、(△Nyz×d)の平均値を算出して厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。
【0102】
評価結果を下記の表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
上記表1に示される通り、視認側偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムとして高リタデーション配向フィルムを採用し、光源側飛散防止フィルムとして低リタデーション配向フィルムを採用し、これらすべての配向主軸を互いに略平行又は略垂直の関係にすることにより、虹斑等の色調の乱れによる画質の低下が抑制できることが確認された。また、視認側偏光子保護フィルム及び視認側飛散防止フィルムとして採用した2枚の高リタデーション配向フィルムのリタデーションの値に差を設けることによっても、虹斑等の色調の乱れによる画質の低下が抑制されることが確認された。
【符号の説明】
【0105】
1 液晶表示装置
2 光源
3 光源側偏光板
4 液晶セル
5 視認側偏光板
6 タッチパネル
7 光源側偏光子
8 視認側偏光子
9a 偏光子保護フィルム
9b 偏光子保護フィルム
10a 偏光子保護フィルム
10b 視認側偏光子保護フィルム
11 光源側透明導電性フィルム
11a 光源側基材フィルム
11b 透明導電層
12 視認側透明導電性フィルム
12a 視認側基材フィルム
12b 透明導電層
13 スペーサー
14 光源側飛散防止フィルム
15 視認側飛散防止フィルム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が15度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項2】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は1800nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が60度?80度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項3】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルより視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子より視認側に積層される偏光子保護フィルム、
(5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される光源側飛散防止フィルム、及び
(6)前記光源側飛散防止フィルムより視認側に配置される視認側飛散防止フィルム、
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±30度以下であり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムの配向主軸は、互いに略平行であり、
前記光源側飛散防止フィルムの配向主軸と、前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムのうちリタデーションの値が高い方の配向主軸とが形成する角が20度?30度であり、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されており、
前記視認側飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものである、
画像表示装置。
【請求項4】
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、
前記偏光子保護フィルム及び前記視認側飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差は3000nm以上である、
請求項2に記載の画像表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-18 
出願番号 特願2013-28257(P2013-28257)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02F)
P 1 651・ 537- YAA (G02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三笠 雄司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
近藤 幸浩
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6182891号(P6182891)
権利者 東洋紡株式会社
発明の名称 画像表示装置  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  

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