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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B02C
管理番号 1348740
異議申立番号 異議2018-700863  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-24 
確定日 2019-01-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第6315530号発明「縦型破砕機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6315530号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6315530号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年10月27日を出願日とするものであって、平成30年 4月 6日に特許権の設定登録がされ、同年 4月25日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1?4に係る特許について、同年10月24日付け(受理日 同年10月25日)で特許異議申立人綾本 寛美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板と、当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材と、当該衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える縦型破砕機。
【請求項2】
前記衝突部材の両端部の、基板回転方向に面する各側面を衝突面とした請求項1に記載の縦型破砕機。
【請求項3】
前記衝突面に取替え可能なライナー板を接合した請求項2に記載の縦型破砕機。
【請求項4】
前記第1破砕刃および第2破砕刃は、基板回転方向に面する側面が前記衝突部材の板面から直立している請求項1ないし3のいずれか一つに記載の縦型破砕機。」

第3 異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第11号証を提出し、以下の異議申立理由によって、本件発明1?4の特許を取り消すべきものである旨を主張している。
1 各甲号証
甲第1号証:特開2004-74044号公報
甲第2号証:実願昭56-138790号(実開昭58-43952号)のマイクロフィルム(当審注:申立人は、異議申立書において甲第2号証を「実開58-43952号公報」としているが、異議申立理由に鑑み、甲第2号証は、「実願昭56-138790号(実開昭58-43952号)のマイクロフィルム」であると認める。このことは、甲第9号証、甲第10号証についても同様である。)
甲第3号証:特開2003-10706号公報
甲第4号証:特開2002-143703号公報
甲第5号証:実公昭57-60839号公報
甲第6号証:特開2006-7035号公報
甲第7号証:特開2000-157881号公報
甲第8号証:特開2003-10708号公報
甲第9号証:実願昭50-130376号(実開昭52-43165号)のマイクロフィルム
甲第10号証:実願昭50-49581号(実開昭51-130977号)のマイクロフィルム
甲第11号証:特開2002-28512号公報

2 異議申立理由
(1)本件発明1について(異議申立書21頁4行?28頁24行)
(1-1)甲第1号証を主引用例とする場合について
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第6号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(異議申立書21頁4行?26頁12行)。

(1-2)甲第7号証?甲第11号証を主引用例とする場合について
本件発明1は、甲第7号証?甲第11号証のいずれかに記載された発明と、甲第2号証?甲第6号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(異議申立書26頁13行?27頁19行)。

(1-3)甲第2号証を主引用例とする場合について
本件発明1は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(異議申立書27頁20行?28頁24行。なお、異議申立書の28頁14行の「甲第6号証」は「甲第7号証」の誤記と認める。)。

(2)本件発明2?4について(異議申立書28頁25行?31頁14行)
(2-1)甲第1号証を主引用例とする場合について
本件発明2?4は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2号証?甲第6号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-2)甲第7号証?甲第11号証を主引用例とする場合について
本件発明2?4は、甲第7号証?甲第11号証のいずれかに記載された発明と、甲第2号証?甲第6号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2-3)甲第2号証を主引用例とする場合について
本件発明2?4は、甲第2号証に記載された発明と、甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証に記載される事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明2?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 異議申立理由についての判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材、合成樹脂などを素材とする産業廃棄物や粗大ゴミ等の生活廃棄物を破砕処理する竪型衝撃式破砕機に関するものであり、より詳しくは、その固定ハンマのバランス調整機構に関するものである。」

(1b)「【0003】
図1乃至図3は、この竪型破砕機を例示するもので、この破砕機1は、ベース3の上に、ケーシング2を構成する円筒状のアッパフレーム2aと、該アッパフレームの下側に結合された円筒状のメインフレーム2bとが設けられている。アッパフレーム2a及びメインフレーム2bの中心部には竪向きの回転軸である主軸4が設けられており、該主軸4にはアッパロータ5、センタロータ6、ロアロータ7が設けられている。アッパロータ5には固定ハンマ10を構成する直径方向のアーム部10a,10bが上下段違いに設けられ、該アーム部10a,10bの左右両側にはそれぞれハンマブレード11,…が取り付けられており、該アーム部10a,10bの上面部にはカバーライナ12が取り付けられている。」

(1c)「【0014】
この竪型破砕機1の基本的構造は、図1に基づいてすでに説明したとおりであり、上部に投入口を有するケーシング2として、円筒状のアッパフレーム2aと、該アッパフレームの下側に結合された円筒状のメインフレーム2bとが設けられている。アッパフレーム2a及びメインフレーム2bの中心部には竪向きの回転主軸4が設けられており、該主軸4にアッパロータ5、センタロータ6、ロアロータ7が設けられている。アッパロータ5には、図4、図5に例示するように、固定ハンマ10を構成する直径方向のアーム部10a,10bが上下段違いに設けられ、該アーム部10a,10bの先端部の左右両側にはそれぞれハンマブレード11,…が取り付けられている。アーム10a,10bの外面部は着脱可能なカバーライナ12(図4は取り外した状態)で覆われている。」

(1d)「



(ア)前記(1a)によれば、甲第1号証には竪型破砕機に係る発明が記載されており、前記(1b)?(1d)によれば、前記竪型破砕機は、具体的には、ベース3の上に、ケーシング2を構成する円筒状のアッパフレーム2aと、該アッパフレームの下側に結合された円筒状のメインフレーム2bとが設けられており、アッパフレーム2a及びメインフレーム2bの中心部には竪向きの回転軸である主軸4が設けられており、該主軸4にはアッパロータ5、センタロータ6、ロアロータ7が設けられており、アッパロータ5には固定ハンマ10を構成する直径方向のアーム部10a,10bが上下段違いに設けられ、該アーム部10a,10bの先端部の左右両側にはそれぞれハンマブレード11が取り付けられており、該アーム部10a,10bの外面部はカバーライナ12で覆われているものであり、前記カバーライナ12には、上面に突起((1d)【図3】、【図5】)が設けられるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第1号証には、
「ケーシングの中央部に縦方向の回転軸(主軸)を設け、該回転軸の上部に固定ハンマを設けた竪型破砕機であって、
前記竪型破砕機は、ベースの上に、ケーシングを構成する円筒状のアッパフレームと、該アッパフレームの下側に結合された円筒状のメインフレームとが設けられており、アッパフレーム及びメインフレームの中心部には竪向きの回転軸である主軸が設けられており、該主軸にはアッパロータが設けられており、アッパロータには固定ハンマを構成する直径方向のアーム部が上下段違いに設けられ、該アーム部の左右両側にはそれぞれハンマブレードが取り付けられており、該アーム部の外面部はカバーライナで覆われ、前記カバーライナには、上面に突起が設けられている、
竪型破砕機。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)甲第2号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a)「2 実用新案登録請求の範囲
上部を投入口としたシエル内面にシエルライナを固定し、シエルの中心に設けた回転軸には回動自在のグラインダを有するロータデイスクを設け、このロータデイスク上にはブレードを上向きに設けた分配板を取付けて、この分配板上のシエル内に、投入される塵芥の供給量に見合う空間を形成して、分配板上に投入した塵芥をブレードとシエルライナによりときほぐして分配板の外周とシエルの内周間の間隙から下部のグラインダ取付部に落下させて破砕するようにした塵芥シユレツダにおいて、分配板の外周部にかき板を外向きに設けて、分配板の外周に停滞する塵芥をかき落すようにし、かつ、このかき板は、分配板の外周に破砕困難な物が投入されたときは簡単に切損する程度の強度にした塵芥シユレツダの塵芥停滞防止装置。」

(2b)「



(ア)前記(2a)?(2b)によれば、甲第2号証には塵芥シユレツダの塵芥停滞防止装置に係る発明が記載されており、当該塵芥シユレツダは、上部を投入口としたシエル内面にシエルライナを固定し、シエルの中心に設けた回転軸には回動自在のグラインダを有するロータデイスクを設け、このロータデイスク上にはブレードを上向きに設けた分配板を取付けて、この分配板上のシエル内に、投入される塵芥の供給量に見合う空間を形成して、分配板上に投入した塵芥をブレードとシエルライナによりときほぐして分配板の外周とシエルの内周間の間隙から下部のグラインダ取付部に落下させて破砕するようにした塵芥シユレツダにおいて、分配板の外周部にかき板を外向きに設けて、分配板の外周に停滞する塵芥をかき落すようにし、かつ、このかき板は、分配板の外周に破砕困難な物が投入されたときは簡単に切損する程度の強度にしたものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第2号証には、
「上部を投入口としたシエル内面にシエルライナを固定し、シエルの中心に設けた回転軸には回動自在のグラインダを有するロータデイスクを設け、このロータデイスク上にはブレードを上向きに設けた分配板を取付けて、この分配板上のシエル内に、投入される塵芥の供給量に見合う空間を形成して、分配板上に投入した塵芥をブレードとシエルライナによりときほぐして分配板の外周とシエルの内周間の間隙から下部のグラインダ取付部に落下させて破砕するようにした塵芥シユレツダにおいて、分配板の外周部にかき板を外向きに設けた、
塵芥シユレツダ。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(3)甲第7号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第7号証には、以下の記載がある。
(7a)「【0015】まず図1と図2を参照すると、粗大ごみや資源ごみ等を破砕する竪型破砕機(1) は、基台(10)上に設置されたポッパー状のケーシング(5) 内に、複数個のノッカー刃(23)を有する粗破砕機構(2) と、円周方向に複数個および上下に複数段取り付けたグラインダ(25)を有する細破砕機構(3) と、スイーパ(4) とが、上から下に順に積層状態にかつ同じ回転軸(11)で設けられているものである。
・・・
【0017】上記ケーシング(5) は、上方に向かって漸次径大となるように開口したポッパー状のケーシング主部(5a)とこれの下端に連なる環状のケーシング基部(5b)とよりなり、ケーシング基部(5b)の一側に破砕物(20)を排出するための開口部(15)が設けられて、この開口部(15)を外側より囲むようにシュータ(14)が設けられ、このシュータ(14)の下端開口部(16)が破砕物搬出コンベヤ(17)の上面にのぞませられている。
【0018】ポッパー状のケーシング主部(5a)の内周面には、縦刃(21)が所定間隔おきに固定されている。ケーシング主部(5a)の上部内側には粗破砕機構(2) が配置されて、これのノッカー用ローターブロック(22)が回転軸(11)の上端部に取り付けられ、該ローターブロック(22)の左右両側に、2つのノッカー刃(23)(23)が左右高さ違いに取り付けられるとともに、ノッカーピン(24)(24)がそれぞれ上方突出状に設けられている。」

(7b)「【0026】竪型破砕機(1) のモータ(6) を駆動させると、駆動力伝達機構を介して回転軸(11)が回動し、ケーシング(5) 内において、ノッカー刃(23)を有する粗破砕機構(2) と、グラインダ(25)を有する細破砕機構(3) と、スイーパ(4) とが同じ回転軸(11)を中心として回転作動する。
【0027】粗大ごみや資源ごみをケーシング(5) 内に上から投入すると、これらはまずノッカー(2) と、ケーシング主部(5a)内周面の多数の縦刃(21)とによって粗破砕される。ついで粗破砕物は、ケーシング主部(5a)の下部へと落下し、所定間隔おきにかつ上下2段に水平に配置された遊星歯車状のグラインダ(25)と、ケーシング主部(5a)内周面の多数の縦刃(21)とによって細破砕される。
【0028】さらに細破砕物は、ケーシング主部(5a)よりこれの下側のケーシング基部(5b)内へと落下し、そこで、平面よりみて時計回りの方向に回動する一対のスイーパ(4)(4)により順次掻き集められる。」

(7c)「



(ア)前記(7a)?(7c)によれば、甲第7号証には竪型破砕機に係る発明が記載されており、当該竪型破砕機は、まずノッカーで粗破砕し、円周に複数列、上下に複数段取り付けたグラインダで細破砕し、スイーパで破砕機から排出するものである。
具体的には、粗大ごみや資源ごみ等を破砕する竪型破砕機(1)は、基台(10)上に設置されたホッパー状のケーシング(5)(当審注:「ポッパー状のケーシング」は「ホッパー状のケーシング」の誤記と認められるので、「ホッパー状のケーシング」と認定する。)内に、複数個のノッカー刃(23)を有する粗破砕機構(2)と、円周方向に複数個および上下に複数段取り付けたグラインダ(25)を有する細破砕機構(3)と、スイーパ(4)とが、上から下に順に積層状態にかつ同じ回転軸(11)に設けられているものであり、前記ケーシング(5)は、上方に向かって漸次径大となるように開口したホッパー状のケーシング主部(5a)とこれの下端に連なる環状のケーシング基部(5b)とよりなり、ケーシング基部(5b)の一側に破砕物(20)を排出するための開口部(15)が設けられて、この開口部(15)を外側より囲むようにシュータ(14)が設けられ、このシュータ(14)の下端開口部(16)が破砕物搬出コンベヤ(17)の上面にのぞませられているものである。
また、ホッパー状のケーシング主部(5a)の内周面には、縦刃(21)が所定間隔おきに固定されており、ケーシング主部(5a)の上部内側には粗破砕機構(2)が配置されて、これのノッカー用ローターブロック(22)が回転軸(11)の上端部に取り付けられ、該ローターブロック(22)の左右両側に、2つのノッカー刃(23)(23)が左右高さ違いに取り付けられるとともに、ノッカーピン(24)(24)がそれぞれ上方突出状に設けられているものである。

(イ)そして、前記竪型破砕機は、モータ(6)を駆動させると、駆動力伝達機構を介して回転軸(11)が回動し、ケーシング(5)内において、ノッカー刃(23)を有する粗破砕機構(2)と、グラインダ(25)を有する細破砕機構(3)と、スイーパ(4)とが同じ回転軸(11)を中心として回転作動するものであって、粗大ごみや資源ごみをケーシング(5) 内に上から投入すると、これらはまずノッカー(2)と、ケーシング主部(5a)内周面の多数の縦刃(21)とによって粗破砕され、ついで粗破砕物は、ケーシング主部(5a)の下部へと落下し、グラインダ(25)によって細破砕され、さらに細破砕物は、ケーシング主部(5a)よりこれの下側のケーシング基部(5b)内へと落下し、そこで、平面よりみて時計回りの方向に回動する一対のスイーパ(4)(4)により順次掻き集められるものである。

(ウ)前記(ア)?(イ)によれば、甲第7号証には、
「基台上に設置されたホッパー状のケーシング内に、複数個のノッカー刃を有する粗破砕機構と、円周方向に複数個および上下に複数段取り付けたグラインダを有する細破砕機構と、スイーパとが、上から下に順に積層状態にかつ同じ回転軸に設けられている竪型破砕機であって、
前記ケーシングは、上方に向かって漸次径大となるように開口したホッパー状のケーシング主部とこれの下端に連なる環状のケーシング基部とよりなり、
ケーシング主部の上部内側には粗破砕機構が配置されて、これのノッカー用ローターブロックが回転軸の上端部に取り付けられ、該ローターブロックの左右両側に、2つのノッカー刃が左右高さ違いに取り付けられるとともに、ノッカーピンがそれぞれ上方突出状に設けられている、
竪型破砕機。」の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されているといえる。

(4)甲第8号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第8号証には、以下の記載がある。
(8a)「【0013】
【発明の実施の形態】ここで、本発明に係る竪型破砕機の実施の形態を図1?図5に基づいて説明する。
【0014】この竪型破砕機は、粗大ごみや産業廃棄物を破砕するもので、図1,図4,図5に示すように、基台1上に上面が大径となるホッパー状のケーシング2が立設固定され、このケーシング2の軸心部に回転軸3が軸受3aを介して回転自在に支持されている。このケーシング2内には、前記回転軸3の上部から順に、複数のノッカーアーム4aを取り付けた粗破砕機構4と、外周部に複数のグラインダ5aが配置された細破砕機構5と、回転体21に払出し部材である複数のスイーパ22が取り付けられた払出し機構6が設けられている。
・・・
【0017】前記粗破砕機構4は、たとえば2本のノッカーアーム4aが対称位置に取り付けられ、ノッカーアーム4aの先端部で前面側にノッカー刃4bが取り付けられ、またノッカーアーム4aの上部にノッカーピン4cが立設されている。また細破砕機構5は、複数段に取り付けられた回転盤5bの間に回転軸3と平行に支軸周りに回転自在に支持された遊星ギヤ状のグラインダ5aが上下2段に配設されている。またケーシング2のテーパ部2aの内面には、ノッカー刃4bおよびグラインダ5aに対向して縦刃2cが周方向に所定間隔ごとに取り付けられている。
・・・
【0021】上記構成において、供給口11から破砕原料が投入されると、まず粗破砕機構4において、回転駆動されるノッカーアーム4aのノッカー刃4bと縦刃2cとの間で粗破砕されて、下方に送られる。次いで細破砕機構5において、回転盤5bにより回転駆動されるグラインダ5aと縦刃2cとの間で細破砕されて粒状に形成される。さらにその下方の払出し機構6では、落下された粒状の破砕物は支持ブロック21bの払出しガイド面21cにより外周側に押出され、さらに回転体21の回転による遠心力で使用位置に突出したスイーパ22により、排出口12から排出シュート13に送り出される。」

(8b)「



(8c)「



(ア)前記(8a)?(8c)によれば、甲第8号証には竪型破砕機に係る発明が記載されており、当該竪型破砕機は、具体的には、基台1上に上面が大径となるホッパー状のケーシング2が立設固定され、このケーシング2の軸心部に回転軸3が軸受3aを介して回転自在に支持され、このケーシング2内には、前記回転軸3の上部から順に、複数のノッカーアーム4aを取り付けた粗破砕機構4と、外周部に複数のグラインダ5aが配置された細破砕機構5と、回転体21に払出し部材である複数のスイーパ22が取り付けられた払出し機構6が設けられているものであり、前記粗破砕機構4は、たとえば2本のノッカーアーム4aが対称位置に取り付けられ、ノッカーアーム4aの先端部の前面側にノッカー刃4bが取り付けられ、またノッカーアーム4aの上部にノッカーピン4cが立設されているものである。
そして、前記竪型破砕機は、供給口11から破砕原料が投入されると、まず粗破砕機構4において、回転駆動されるノッカーアーム4aのノッカー刃4bと縦刃2cとの間で粗破砕されて、下方に送られ、次いで細破砕機構5において、回転盤5bにより回転駆動されるグラインダ5aと縦刃2cとの間で細破砕されて粒状に形成され、さらにその下方の払出し機構6では、落下された粒状の破砕物は支持ブロック21bの払出しガイド面21cにより外周側に押出され、さらに回転体21の回転による遠心力で使用位置に突出したスイーパ22により、排出口12から排出シュート13に送り出されるものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第8号証には、
「軸心部に回転軸が配置されたケーシングを立設し、該ケーシングの上部に供給口を形成するともに下部側面に排出口を形成し、前記ケーシングの上部に、回転軸により回転駆動されて供給口から投入された破砕原料を破砕する破砕機構を設けるとともに、ケーシングの下部に破砕物を排出口に排出する払出し機構を設けた竪型破砕機であって、
基台上に上面が大径となるホッパー状のケーシングが立設固定され、このケーシングの軸心部に回転軸が軸受を介して回転自在に支持され、このケーシング内には、前記回転軸の上部から順に、複数のノッカーアームを取り付けた粗破砕機構と、外周部に複数のグラインダが配置された細破砕機構と、回転体に払出し部材である複数のスイーパが取り付けられた払出し機構が設けられているものであり、
前記粗破砕機構は、2本のノッカーアームが対称位置に取り付けられ、ノッカーアームの先端部の前面側にノッカー刃が取り付けられ、またノッカーアームの上部にノッカーピンが立設されている、
竪型破砕機。」の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されているといえる。

(5)甲第9号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第9号証には、以下の記載がある。
(9a)「本考案は家庭ゴミ等の一般廃棄物及び産業廃棄物、特に固形廃棄物を衝撃せん断、衝撃圧縮、摩擦して破砕する竪軸型の固形廃棄物破砕機に於けるブレーカ装置の改良に関する。」(1頁14行?17行)

(9b)「固形廃棄物の中には比較的軟柔なものから鉄塊の様に非常に強固で且つ硬質なものまで含まれているので、破砕に当つては破砕しやすいものだけを選別してこれを破砕機にかけることが望ましいが、これには多くの労力き時間を要する為、応々にして混入したまま送給している場合が多い。
従来の破砕機Aに於ては第3図、第4図に示す如くロータBの最上部に配されるブレーカCはロータシヤフトDとは所謂固定状態となっているので、シエルEの凹凸状ライナFとの間で破砕する際、上述の様な強固な異物が混入しているとその位置状態に依り破砕しきれず、一時的に大きな衝撃力が働いて異常な騒音、振動を発し、最悪の場合にはモータの焼損及びブレーカ、グラインダ、ライナ等の破砕機主要部分の損傷を招来することがあり、問題であつた。」(1頁18行?2頁13行)

(9c)「第1図、第2図に於て、竪軸型の固形廃棄物破砕機1は内壁に凹凸状のライナ2を有するシエル3内に、モータ4の動力を受けて回転するロータ5が設けてあり、これは竪方向のロータシャフト6に配設されたブレーカ7並びに多数のグラインダ8を有し、これらと前記ライナ2とに依り破砕機1上部の投入口9から送給された固形廃棄物を破砕するものである。
・・・
本考案はこの様な構成であるからモーター4を駆動してロータ5をロータシヤフト6と共に第1図の矢印方向に回転させれば各ブレーカ7…は遠心力にて張出された状態を呈して同方向に回転する為、破砕機lの投入口9から送給された固形廃棄物は前記ブレーカ7…とシエル3の凹凸状ライナ2にて破砕される。」(3頁3行?4頁11行)

(9d)「



(ア)前記(9a)、(9c)、(9d)によれば、甲第9号証には竪軸型の固形廃棄物破砕機に係る発明が記載されており、当該竪軸型の固形廃棄物破砕機は、内壁に凹凸状のライナ2を有するシエル3内に、モータ4の動力を受けて回転するロータ5が設けてあり、これは竪方向のロータシャフト6に配設されたブレーカ7並びに多数のグラインダ8を有し、これらと前記ライナ2とに依り破砕機1上部の投入口9から送給された固形廃棄物を破砕するものであり、モーター4を駆動してロータ5をロータシヤフト6と共に回転させれば各ブレーカ7は遠心力にて張出された状態を呈して同方向に回転する為、破砕機lの投入口9から送給された固形廃棄物は前記ブレーカ7とシエル3の凹凸状ライナ2にて破砕されるものである。

(イ)前記(9b)によれば、前記竪型破砕機は、従来の破砕機Aに於ては、ロータBの最上部に配されるブレーカCはロータシヤフトDとは所謂固定状態となっているので、シエルEの凹凸状ライナFとの間で破砕するものであり、前記(9d)(第3図、第4図)によれば、ブレーカCは、その上面に突起を有するものである。

(ウ)前記(ア)?(イ)によれば、甲第9号証には、
「内壁に凹凸状のライナを有するシエル内に、モータの動力を受けて回転するロータが設けてあり、これは竪方向のロータシャフトに配設されたブレーカ並びに多数のグラインダを有し、これらと前記ライナとに依り破砕機上部の投入口から送給された固形廃棄物を破砕する竪軸型の固形廃棄物破砕機であって、
ロータの最上部に配されるブレーカはロータシヤフトと固定状態となっており、シエルの凹凸状ライナとの間で固形廃棄物を破砕するものであり、ブレーカは、その上面に突起を有する、
竪軸型の固形廃棄物破砕機。」の発明(以下、「甲9発明」という。)が記載されているといえる。

(6)甲第10号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第10号証には、以下の記載がある。
(10a)「本考案は家庭ゴミ等の一般廃棄物及び産業廃棄物、特に固形廃棄物を衝撃せん断、衝撃圧縮、摩擦して破砕する立軸型破砕機に於けるブレーカライナ取付装置に関するものである。」(1頁17行?20行)

(10b)「立軸型破砕機1は第1図、第2図に示す如く内壁にライナ2を有するシエル3内に、モータ4の動力を受けて回転するするロータ5があり、これはロータシヤフト6に設けられたブレーカ7並びに多数のグラインダ8を有し、これらと前記シエル3のライナ2に依り固形廃棄物を破砕するものである。而して前記ブレーカ7は第4図に示す如くブレーカライナ9をブレーカアーム10に取付ボルト11にて締結していたが、前記ブレーカライナ9は耐摩耗性を持たせる為高硬度の材料を使用している関係上高精度に加工することができず、・・・最悪の場合には取付ボルト11が折損するという問題があつた。」(2頁1行?17行)

(10c)「



(ア)前記(10a)?(10c)によれば、甲第10号証には立軸型破砕機に係る発明が記載されており、当該立軸型破砕機は、内壁にライナ2を有するシエル3内に、モータ4の動力を受けて回転するするロータ5があり、これはロータシヤフト6に設けられたブレーカ7並びに多数のグラインダ8を有し、これらと前記シエル3のライナ2に依り固形廃棄物を破砕するものであり、ブレーカ7は、その上面に突起(10c)を有するものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第10号証には、
「内壁にライナを有するシエル内に、モータの動力を受けて回転するするロータがあり、これはロータシヤフトに設けられたブレーカ並びに多数のグラインダを有し、これらと前記シエルのライナに依り固形廃棄物を破砕するものであって、
ブレーカは、その上面に突起を有する、
立軸型破砕機。」の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されているといえる。

(7)甲第11号証の記載事項
本件特許の出願日前に公知となった甲第11号証には、以下の記載がある。
(11a)「【0011】
【実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態の縦型破砕装置の主縦断面図である。図示の破砕装置は、シエル内にグラインダを含む破砕部構造が示されており、下部の排出部の大部分については図示省略している。図において、1は円筒状シエル、2は排出筒(上部のみ)であり、円筒状シエル1は上部が広くなった浅いテーパ状で、上端が投入口として開口し、下端を排出筒2に支持され、固定されている。円筒状シエル1の内側には多数のシエルライナ3が配置されている。
【0012】円筒状シエル1の中央に設けた垂直の回転軸4の上部寄りに設けたブレーカ5にブレーカライナ5aが取付けられ、中間から下部寄りには上、下2段のロータ6、6が設けられ、各ロータのロータ板6aと6a間にそれぞれグラインダピン7を介して複数のグラインダ8、8が回転自在に取付けられている。なお、ブレーカライナ5a、5aに代えてブレーカハンマを取付ける場合もあり、回転軸4に取付ける破砕部材の構造は図示のものに限らず自由に設計し得る。」

(11b)「



(ア)前記(11a)?(11b)によれば、甲第11号証には縦型破砕装置の破砕部構造に係る発明が記載されており、当該縦型破砕装置は、具体的には、円筒状シエル1、排出筒2を有し、円筒状シエル1は上部が広くなった浅いテーパ状で、上端が投入口として開口し、下端を排出筒2に支持され、固定されているものであり、円筒状シエル1の内側には多数のシエルライナ3が配置されているものであり、円筒状シエル1の中央に設けた垂直の回転軸4の上部寄りに設けたブレーカ5にブレーカライナ5aが取付けられ、前記ブレーカ5は、その上面に突起を有し(11b)、前記円筒状シエル1の中間から下部寄りには上、下2段のロータ6、6が設けられ、各ロータのロータ板6aと6a間にそれぞれグラインダピン7を介して複数のグラインダ8、8が回転自在に取付けられているものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第11号証には、
「円筒状シエル、排出筒を有し、円筒状シエルは上部が広くなった浅いテーパ状で、上端が投入口として開口し、下端を排出筒に支持され、固定されているものであり、円筒状シエルの内側には多数のシエルライナが配置され、
円筒状シエルの中央に設けた垂直の回転軸の上部寄りに設けたブレーカにブレーカライナが取付けられ、前記ブレーカは、その上面に突起を有する、
縦型破砕装置。」の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されているといえる。

2 本件発明1について
(1)甲第1号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明に係る「竪型破砕機」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲1発明における「固定ハンマ」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当し、甲1発明における「アッパロータ」は、本件発明1における、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」に相当し、甲1発明における「アーム部」及び「ハンマーブレード」を併せたものは、甲1発明における「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」に相当する。

(イ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板と、当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材とを備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲1発明は、「竪形破砕機」の「アーム部」の外面部が「カバーライナ」で覆われ、前記「カバーライナ」には、上面に「突起」が設けられている点。

イ 判断
(ア)以下、前記相違点1について検討すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0024】?【0025】には、以下の記載がある。
「【0024】
円形ボス部71の周縁711上には径方向の対称位置に一対の破砕刃81,81が突設されている。両破砕刃81,81は先端に向けて漸次狭幅となった略三角の所定厚の板体で、基板61の回転方向に面する側面81aが水平な円形ボス部71の周縁面から直立し、背面は傾斜している。また、上記各破砕刃81よりも径方向外方の脚部73,73の上面にもそれぞれ破砕刃82,82が突設されている。これら破砕刃82,82の形状は上記破砕刃81,81と同様で、基板61の回転方向に面する側面82aは水平な各脚部73,73の上面から直立し、背面は傾斜している。そして、一対の破砕刃81,81と他の一対の破砕刃82,82は周方向の位置を互いにずらして設けられている。
【0025】
このようなロータノッカー6が回転シャフト41によって回転させられると、ケーシング3の上方から投入された被破砕物は、衝突部材7の上面に突設された破砕刃81,81,82,82の、直立する側面81a,82aに衝突して切り裂かれ破砕される。このような破砕刃81,81,82,82を設けたことによって従来難破砕物とされたものでも良好に破砕することができる。・・・」
そして、前記記載によれば、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」は、その側面が被破砕物に衝突して、被破砕物を切り裂き破砕するものである。
これに対して、前記1(1)(1b)?(1d)によれば、甲1発明においてカバーライナの上面に設けられる「突起」の作用は不明であるので、前記「突起」が、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであるとはいえないから、前記「突起」が、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点1は実質的な相違点である。

(イ)一方、前記1(2)(2a)?(2b)によれば、甲第2号証には塵芥シユレツダの塵芥停滞防止装置が記載されており、前記塵芥シユレツダの塵芥停滞防止装置は、上部を投入口としたシエル内面にシエルライナを固定し、シエルの中心に設けた回転軸には回動自在のグラインダを有するロータデイスクを設け、このロータデイスク上には、傾斜面を有し、ブレードを上向きに設けた分配板を取付けて、この分配板上のシエル内に、投入される塵芥の供給量に見合う空間を形成して、分配板上に投入した塵芥をブレードとシエルライナによりときほぐして分配板の外周とシエルの内周間の間隙から下部のグラインダ取付部に落下させて破砕するようにした塵芥シユレツダにおいて、分配板の外周部にかき板を外向きに設けて、分配板の外周に停滞する塵芥をかき落すようにし、かつ、このかき板は、分配板の外周に破砕困難な物が投入されたときは簡単に切損する程度の強度にしたものである。

(ウ)ここで、甲第2号証に記載される「塵芥シユレツダ」は、「縦型破砕機」といえ、甲第2号証に記載される「分配板」は、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」といえ、甲第2号証に記載される「かき板」は、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」といえ、甲第2号証に記載される「ブレード」は、前記「基板」に立設したものといえる。
しかしながら、前記「ブレード」は、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」に立設されるものといえるが、「衝突部材の両端部の板面上」に立設したものとはいえない。
また、前記「ブレード」は、分配板上に投入した塵芥をシエルライナと協働してときほぐすものであって、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであるとはいえない。
してみれば、前記「ブレード」は、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」及び「当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃」に相当するものではないから、甲第2号証からは、「縦型破砕機」において、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ことが記載も示唆もされるものではない。

(エ)また、甲第3号証に記載される装置は、「立設軸(鉛直方向)」を備えた「回転体(ローター)」を「円筒ケース(有底容器)」の底部に設け、前記「回転体(ローター)」を回転することにより破砕や粉砕を行うものであり、甲第4号証に記載される装置は、「棒体(突起状部材)」を備えた「回転体(ローター)」を「円筒ケース(有底容器)」の底部に設け、前記「回転体(ローター)」を回転することにより破砕や粉砕を行うものであり、甲第5号証に記載される装置は、「破砕突起」を備えた「回転板」を「箱」の底部に設け、前記「回転板」を回転することにより破砕や粉砕を行うものであり、甲第6号証に記載される装置は、「反射体」を備えた「回転ロータ」を「容器」の底部に設け、前記「回転ロータ」を回転することにより破砕や粉砕を行うものであって、これらは、いずれも、「ロータ」の最上位に「ロータノッカー」を設けた「縦型破砕機」に係るものではない。
更に、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」が、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであることは、前記(ア)に記載のとおりであるが、甲第3号証?甲第6号証の記載をみても、甲第3号証?甲第6号証に記載される前記「立設軸(鉛直方向)」、「棒体(突起状部材)」、「破砕突起」又は「反射体」が、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであるとはいえないから、甲第3号証?甲第6号証に記載される前記「立設軸(鉛直方向)」、「棒体(突起状部材)」、「破砕突起」又は「反射体」は、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」及び「当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃」に相当するものではない。
このため、甲第3号証?甲第6号証からは、「縦型破砕機」において、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ことが記載も示唆もされるものではない。

(オ)そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0005】の記載によれば、本件発明1は、前記相違点1に係る発明特定事項の構成を備えることにより、近年は自動販売機等の難破砕性のスクラップ(難破砕物)から高純度の金属を分離・分別することが求められており、このために難破砕物を良好に破砕できる縦型破砕機の実現が要請されていた、との課題を解決できるものであり、このことを、甲第1号証?甲第6号証の記載事項から当業者が予測し得るものとはいえない。

(カ)前記(イ)?(オ)によれば、甲1発明において、カバーライナの上面に設けられた「突起」に代えて、あるいは前記「突起」に加えて、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、甲1発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえない。

(キ)したがって、本件発明1を、甲1発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないので、前記第3の2(1)(1-1)の異議申立理由は理由がない。

(2)甲第7号証?甲第11号証を主引用例とする場合について
(2-1)甲第7号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲7発明とを対比すると、甲7発明に係る「竪型破砕機」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲7発明における「ローターブロック」及び「ノッカー刃」を併せたものは、本件発明1に係る「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」に相当し、甲7発明における「粗破砕機構」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当するものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲7発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材を備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備え、「衝突部材」が、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」であるのに対して、甲7発明は、「竪形破砕機」が「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備えていない点。

相違点3:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲7発明は、「竪形破砕機」の「ローターブロック」の左右両側に、「ノッカーピン」がそれぞれ上方突出状に設けられている点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記相違点3から検討すると、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」は、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであることは、前記(1)イ(ア)に記載のとおりであり、このことは、本件発明1における「各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃」についても同様である。
これに対して、甲7発明における「ノッカーピン」の作用は不明であるので、前記「ノッカーピン」が、その側面が被破砕物に衝突して被破砕物を切り裂き破砕するものであるとはいえないから、前記「ノッカーピン」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点3は実質的な相違点である。

(イ)そして、甲1発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないことは、前記(1)イ(カ)に記載のとおりであるから、同様の理由により、甲7発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲7発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-2)甲第8号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明に係る「竪型破砕機」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲8発明における「ノッカーアーム」及び「ノッカー刃」を併せたものは、本件発明1に係る「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」に相当し、甲8発明における「粗破砕機構」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当するものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲8発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材を備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備え、「衝突部材」が、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」であるのに対して、甲8発明は、「竪形破砕機」が「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備えていない点。

相違点3’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲8発明は、「竪形破砕機」の「ノッカーアーム」の上部に「ノッカーピン」が立設されている点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記相違点3’から検討すると、甲8発明における「ノッカーピン」の作用は不明であるので、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記「ノッカーピン」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点3’は実質的な相違点である。

(イ)そして、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲8発明において、「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲7発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-3)甲第9号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲9発明とを対比すると、甲9発明に係る「竪軸型の固形廃棄物破砕機」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲9発明における「ブレーカ」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当し、本件発明1に係る「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」を備えるものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲9発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材を備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備え、「衝突部材」が、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」であるのに対して、甲9発明は、「竪軸型の固形廃棄物破砕機」が「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備えていない点。

相違点3’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲9発明は、「竪軸型の固形廃棄物破砕機」の「ブレーカ」の上面に「突起」を有する点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記相違点3’’から検討すると、甲9発明における「突起」の作用は不明であるので、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記「突起」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点3’’は実質的な相違点である。

(イ)そして、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲9発明において、「竪軸型の固形廃棄物破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲9発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-4)甲第10号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲10発明とを対比すると、甲10発明に係る「立軸型破砕機」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲10発明における「ブレーカ」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当し、本件発明1に係る「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」を備えるものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲10発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材を備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2’’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備え、「衝突部材」が、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」であるのに対して、甲10発明は、「立軸型破砕機」が「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備えていない点。

相違点3’’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲10発明は、「立軸型破砕機」の「ブレーカ」の上面に「突起」を有する点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記相違点3’’’から検討すると、甲10発明における「突起」の作用は不明であるので、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記「突起」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点3’’’は実質的な相違点である。

(イ)そして、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲10発明において、「立軸型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲10発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-5)甲第11号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲11発明とを対比すると、甲11発明に係る「縦型破砕装置」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲11発明における「ブレーカ」は、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当し、本件発明1に係る「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」を備えるものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲11発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材を備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点2’’’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備え、「衝突部材」が、「当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」であるのに対して、甲11発明は、「縦型破砕装置」が「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」を備えていない点。

相違点3’’’’:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲11発明は、「縦型破砕装置」の「ブレーカ」の上面に「突起」を有する点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、前記相違点3’’’’から検討すると、甲11発明における「突起」の作用は不明であるので、前記(2-1)イ(ア)に記載したのと同様の理由により、前記「突起」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえない。
したがって、前記ア(イ)の相違点3’’’’は実質的な相違点である。

(イ)そして、前記(2-1)イ(イ)に記載したのと同様の理由により、甲11発明において、「立軸型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1を、甲11発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2-6)小括
以上のとおりであるので、前記第3の2(1)(1-2)の異議申立理由は理由がない。

(3)甲第2号証を主引用例とする場合について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明に係る「塵芥シユレツダ」は、本件発明1に係る「縦型破砕機」に相当し、甲2発明における「分配板」は、本件発明1における、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」に相当し、甲2発明における「かき板」は、本件発明1における、「径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材」に相当し、前記「分配板」及び「かき板」を併せたものは、本件発明1における、「ローター」の最上位に設けた「ロータノッカー」に相当するものといえる。

(イ)そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「ローターの最上位にロータノッカーを設け、前記ロータノッカーは、筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板と、当該基板の板面から段付きに高く設けられ、前記基板を径方向に横切って延びる長板状に形成された衝突部材とを備える縦型破砕機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点4:本件発明1は、「縦型破砕機」が、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」のに対して、甲2発明は、「筒状のケーシング内に水平姿勢で配設されて回転させられる円形の基板」に「ブレード」が立設されている点。

イ 判断
(ア)以下、前記相違点4について検討すると、甲2発明における「ブレード」が、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」及び「当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃」に相当するものではないことは、前記(1)イ(ウ)に記載のとおりであるから、前記ア(イ)の相違点4は実質的な相違点である。

(イ)そして、甲1発明においてカバーライナの上面に設けられる「突起」が、本件発明1における「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃」に相当するものとはいえないことは、前記(1)イ(ア)に記載のとおりであるから、甲第1号証からは、「縦型破砕機」において、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ことが記載も示唆もされているとはいえない。

(ウ)更に、甲7発明における「ノッカーピン」が、本件発明1における「第1破砕刃」、「第2破砕刃」に相当するものとはいえないことは、前記(2)(2-1)イ(ア)に記載のとおりであり、このことは、前記(2)(2-2)イ(ア)、前記(2)(2-3)イ(ア)、前記(2)(2-4)イ(ア)、前記(2)(2-5)イ(ア)によれば、甲8発明における「ノッカーピン」、甲9発明における「ブレーカ」の上面の「突起」、甲10発明における「ブレーカ」の上面の「突起」、甲11発明における「ブレーカ」の上面の「突起」についても同様である。
してみれば、甲第7号証?甲第11号証のいずれにも、「縦型破砕機」において、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ことは記載も示唆もされているとはいえない。

(エ)そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0005】の記載によれば、本件発明1は、前記相違点4に係る発明特定事項の構成を備えることにより、近年は自動販売機等の難破砕性のスクラップ(難破砕物)から高純度の金属を分離・分別することが求められており、このために難破砕物を良好に破砕できる縦型破砕機の実現が要請されていた、との課題を解決できるものであり、このことを、甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証?甲第11号証の記載事項から当業者が予測し得るものとはいえない。

(オ)前記(ア)?(エ)によれば、甲2発明において、前記「ブレード」に代えて、あるいは前記「ブレード」に加えて、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとすることを、甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないから、甲2発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえない。

(カ)したがって、本件発明1を、甲2発明及び甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないので、前記第3の2(1)(1-3)の異議申立理由は理由がない。

3 本件発明2?4について
(1)甲第1号証を主引用例とする場合について
(ア)本件発明2は請求項1を引用するものであり、本件発明2と甲1発明とを対比した場合、本件発明2と甲1発明とは、少なくとも、前記2(1)ア(イ)の相違点1の点で相違するものである。

(イ)そして、甲1発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、本件発明1を、甲1発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記2(1)イ(カ)、(キ)に記載のとおりであるから、同様の理由により、本件発明2を、甲1発明及び甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
更に、このことは、直接的又は間接的に請求項1を引用する本件発明3?4についても同様である。

(ウ)したがって、前記第3の2(2)(2-1)の異議申立理由は理由がない。

(2)甲第7?11号証を主引用例とする場合について
(ア)本件発明2は請求項1を引用するものであり、本件発明2と甲7発明とを対比した場合、本件発明2と甲7発明は、少なくとも、前記2(2)(2-1)ア(イ)の相違点3の点で相違するものであり、本件発明2と甲8発明とを対比した場合、本件発明2と甲8発明は、少なくとも、前記2(2)(2-2)ア(イ)の相違点3’の点で相違するものであり、本件発明2と甲9発明とを対比した場合、本件発明2と甲9発明は、少なくとも、前記2(2)(2-3)ア(イ)の相違点3’’の点で相違するものであり、本件発明2と甲10発明とを対比した場合、本件発明2と甲10発明は、少なくとも、前記2(2)(2-4)ア(イ)の相違点3’’’の点で相違するものであり、本件発明2と甲11発明とを対比した場合、本件発明2と甲11発明は、少なくとも、前記2(2)(2-5)ア(イ)の相違点3’’’’の点で相違するものである。

(イ)そして、甲7発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第2号証?甲第6号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないことは、前記2(2-1)イ(イ)に記載のとおりであり、このことは、前記2(2-2)イ(イ)、前記2(2-3)イ(イ)、前記2(2-4)イ(イ)、前記2(2-5)イ(イ)によれば、前記相違点3’、相違点3’’、相違点3’’’、相違点3’’’’についても同様である。

(ウ)してみれば、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明2を、甲7発明?甲11発明のいずれかと、甲第2号証?甲第6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
更に、このことは、直接的又は間接的に請求項1を引用する本件発明3?4についても同様である。

(エ)したがって、前記第3の2(2)(2-2)の異議申立理由は理由がない。

(3)甲第2号証を主引用例とする場合について
(ア)本件発明2は、請求項1を引用するものであり、本件発明2と甲2発明とを対比した場合、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも、前記2(3)ア(イ)の相違点4の点で相違するものである。

(イ)そして、甲2発明に係る「縦型破砕機」を、「衝突部材の両端部の板面上にそれぞれ立設された第1破砕刃と、当該各第1破砕刃よりも径方向内方位置の板面上にそれぞれ立設された第2破砕刃とを備える」ものとして、前記相違点4に係る本件発明1の発明特定事項とすることを、甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載に基づいて当業者が容易になし得るものとはいえないので、本件発明1を、甲2発明及び甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記2(3)イ(オ)、(カ)に記載のとおりであるので、同様の理由により、本件発明2を、甲2発明及び甲第1号証、甲第7号証?甲第11号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
更に、このことは、直接的又は間接的に請求項1を引用する本件発明3?4についても同様である。

(ウ)したがって、前記第3の2(2)(2-3)の異議申立理由は理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、異議申立書に記載された異議申立理由によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-01-22 
出願番号 特願2017-207679(P2017-207679)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B02C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神田 和輝青木 太一  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 橋本 憲一郎
金 公彦
登録日 2018-04-06 
登録番号 特許第6315530号(P6315530)
権利者 アルメック 株式会社
発明の名称 縦型破砕機  

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