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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 一部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1348742
異議申立番号 異議2018-700980  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-04 
確定日 2019-02-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6336702号発明「吐出容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6336702号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6336702号(以下「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成23年8月5日に特許出願され、平成30年5月11日にその特許権の設定登録がされ(特許掲載公報平成30年6月6日発行)、その後、平成30年12月4日に、そのうちの請求項1及び4に係る特許に対し、特許異議申立人西郷新(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1及び4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び4にそれぞれ記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(なお、請求項4は、請求項2又は請求項3を引用するものであるから、請求項2及び請求項3についても併せて示す。)
「【請求項1】
内容物が収容されるとともに該内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、
前記内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、
外部と前記吸気孔とを連通する外気導入部と、
該外気導入部と前記吸気孔との間に配置され、前記外気導入部と前記吸気孔との連通およびその遮断を切り替える空気弁部と、を備える吐出容器であって、
前記内容器内に、前記内容物よりも圧縮されやすい気体のスペースが形成されており、
前記気体の容量が前記内容器の容量の4%以上であり、
前記気体は、前記吐出口から前記内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、前記内容器内を移動するものであり、
前記内容物が醤油含有調味料であり、
前記吐出キャップは、ヒンジ部によって接続されたオーバーキャップを有しており、
前記吐出キャップには、前記天面部の周囲に形成された、径方向に張り出した段部によって被蓋状態時の前記オーバーキャップが係合する係合部が形成されており、
前記ヒンジ部は、前記吐出口が下方を向くように前記吐出容器を傾けて吐出姿勢にした状態で前記吐出口よりも高い位置になるように配置されており、
前記内容器が前記外容器の内面に剥離可能に積層される、吐出容器。
【請求項2】
前記気体が気体袋に封入されている、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項3】
前記内容器内に形成された気体室に前記気体が封入されている、請求項1に記載の吐出容器。
【請求項4】
前記内容物が液状食品である、請求項1から3のいずれか一項に記載の吐出容器。」

3.申立理由の概要
以下、申立人が本件特許異議申立書に添付して提出した「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。
申立人は、証拠として以下の、甲1?甲5を提出し、次の理由1及び理由2により、本件発明1及び4に係る特許は、取り消すべきものであると主張している。

(理由1)本件発明1及び4の「気体の容量が前記内容器の容量の4%以上」という限定は、特定構造の吐出弁を有する200ml及び及び250mlの容器を用いた試験(本件特許明細書段落【0061】?【0063】)の結果に基いている。
本件発明1及び4は、吐出弁の構造を規定していないし、内容器の容量も規定していないので、例えば、甲4に開示された構造の吐出弁を有する1.8Lの容器についても、「4%以上」という数値が、本件特許の実施例と同様の技術的意義を有している必要がある。つまり、4%未満では残液量が多く、4%以上にして初めて残液量が少なくなる必要がある。
しかし、本発明の作用効果を考えると、甲4に開示された弁構造を有する1.8Lの容器においては、4%よりもはるかに小さい割合の気体を含有させれば、残液量が十分に小さくなることは自明である。
そうすると、本件発明1及び4の「4%以上」という限定を本件特許の実施例で示した容器以外の容器に拡張・一般化することはできないので、本件特許発明1及び4は、サポート要件違反である。
よって、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(理由2)本件発明1及び4は、甲1発明及び甲2記載事項?甲5記載事項、あるいは、甲4発明、甲1記載事項?甲3記載事項及び甲5記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(証拠一覧)
甲1:特開2011-31921号公報
甲2:特開平3-27268号公報
甲3:特開2005-350090号公報
甲4:特開2008-162666号公報
甲5:特開2011-111230号公報

4.甲1?甲5の記載事項及び引用発明
(1)甲1
甲1の図1より、内層体2内に、気体のスペースが形成されている点が看取できる。(なお、図1は、容器の寸法等を正確に表したものではなく、気体のスペースが内層体2の容量に対してどの程度であるかまでは、図1から看取できない。)

甲1には、以下の甲1発明が記載されている(【0001】?【0002】、【0019】?【0021】、【0031】?【0036】、図1及び図2)。
「内容物が収容されるとともに該内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内層体2、および該内層体2が内装されており、弾性変形して該内層体2との間に外気を吸入するための貫通孔hが形成された外層体3を有する容器本体と、
前記内容物を吐出する吐出口が水平に延びるノズルの先端に設けられており、該容器本体の口部に装着される注出キャップ10と、
外部と前記貫通孔hとを連通する外気導入口A_(2)と、
該外気導入口A_(2)と前記貫通孔hとの間に配置され、前記外気導入部と前記貫通孔hとの連通およびその遮断を切り替える弁体13eと、を備える注出キャップ10付きデラミボトル1であって、
前記内層体2内に、気体のスペースが形成されており、
前記内容物がお醤油等の液状の調味料であり、
前記内層体2が前記外層体3の内面に剥離可能に積層される、注出キャップ10付きデラミボトル1。」

(2)甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
「また、醤油は、一般に泡が立ち易く、しかも泡切れが悪く、壜等の容器に詰めて出荷しようとする際、その泡が容器のヘッドスペース内に残り正確に定量充填するとが難しい場合があり、また壜詰後の運搬等により振動を受けると壜内に泡が立ち、その泡が速やかに消えずに壜内に残り、そのまま泡立った状態で小売店等に陳列されると、見栄えが悪く、その商品価値を低下させる一因にもなっていた。」(第1頁右欄第5行?第13行)

(3)甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液体食品の熱可塑性樹脂製容器への充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、醤油、醤油含有調味料、食酢、料理酒等の液体食品は硝子壜の他にも、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと記す。)ボトル等の熱可塑性樹脂製容器に充填され市販されている。」

「【0042】
図3に示すグラフは、600ml用(充填量600ml、ヘッドスペース約30ml)のPETボトルを使用して、65℃で内容液を充填する場合について試験した結果の一例であり、内容液を充填後にキャップ5を装着した直後における内圧を横軸に、冷却工程後、室温で1日放置、その後5℃の温度で1日放置した状態の内圧を縦軸に表したグラフであり、液体窒素12の滴下量を適宜変えながら求めたデータを基にしたものである。このデータから5℃で40kPaの内圧を確保するためには、充填直後の内圧が略210kPa以上となるように液体窒素の滴下量を決める必要がある。」

(4)甲4
甲4の図5より、ヒンジ17は、吐出口12が下方を向くように吐出容器を傾けて吐出姿勢にした状態においては、吐出口12よりも高い位置になるように配置されている点が、看取できる。

甲4には、以下の甲4発明が記載されている(【0001】?【0002】、【0019】、【0029】?【0042】、図1?図7)。
「内容物が収容されるとともに該内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内層体3、および該内層体3が内装されており、弾性変形して該内層体3との間に外気を吸入するための吸気孔5が形成された外層体2を有する容器本体1と、
前記内容物を吐出する吐出口12が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着されるキャップ8と、
外部と前記吸気孔5とを連通する吸気口13と、
該吸気口13と前記吸気孔5との間に配置され、前記吸気口13と前記吸気孔と5の連通およびその遮断を切り替える吸気弁15と、を備える吐出容器であって、
前記内容物がマヨネーズとかケチャップ等の粘稠性のある内容物であり、
前記キャップ8は、ヒンジ17によって接続された蓋体16を有しており、
前記ヒンジ17は、前記吐出口12が下方を向くように前記吐出容器を傾けて吐出姿勢にした状態で前記吐出口12よりも高い位置になるように配置されており、
前記内層体3が前記外層体6の内面に剥離可能に積層される、吐出容器。」

(5)甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【0014】
図1?3において、Aは容器、Bはキャップ基体、Cはヒンジ、DはヒンジCを介してキャップ基体Bに連設された上蓋、Eは封印具である。
【0015】
容器Aの口筒部1の外周面には嵌合突条2が設けられ、キャップ基体Bの嵌合筒部3が嵌合して、容器Aにキャップ基体Bが装着されている。
キャップ基体Bは、嵌合筒部3と注出筒4とからなり、嵌合筒部3は、周縁に係合凸部5を設けた環状の上壁6と、上壁6の内周縁から垂設された内筒7と、上壁6の外周縁から垂設された外筒8とからなっている。
外筒8の内周面下端部には、容器Aの嵌合突条2と係合する係合突条9が設けられており、外筒8の外周には、ヒンジC側と反対側の下端部に連結片10と、ヒンジC側の下端部に複数の弱化連結片11とが設けられ、キャップ基体Bの外周壁を形成する外周筒部12が、間隙13を形成して連設されている。
【0016】
内筒7の下端は、環状底壁14を介して注出筒4と連設されており、注出筒4内周の所定位置には、隔壁15が設けられ、弱化溝16によって注出口を形成する除去部17が配設されている。・・・」

「【0019】
上蓋Dは、ヒンジCによってキャップ基体Bの外周筒部12の所定位置上端に取着されており、頂壁20と側周壁21を具えている。
頂壁20下面には、注出筒4の上端部に係合する密封リング22が垂設されており、側周壁21の下端部内周には、キャップ基体Bの係合凸部5と係合する係合凹部23が凹設され、その下方には環状凸部24が設けられている。」

「【図1】



5.申立理由についての判断
(1) 理由1(特許法第36条第6項第1号違反)について
ア 本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0005】
そこで、本発明は、内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができるようにした積層剥離構造の吐出容器を提供することを目的とする。
【0006】
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。上述のごとき従来の積層剥離構造の吐出容器(デラミ容器)は、例えば液状食品を吐出させた際に空気が内容器に入り込まないようにして当該液状食品等の内容物の酸化を抑えるなど、外気との接触を抑制しうる構造に大きな特徴がある。ところが、このような構造故に、使用者が容器をいくら強く握って内容物を使い切ろうとしてもある程度が容器内に残留してしまうことがあり、優れた容器でありながらも、使用を終えようとする段階でときには使用者に対して不満感を抱かせてしまうことが起こりえる。このような現象に着目し、内容物をできるだけ簡単に使い切ることについて検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く知見を得るに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくもので、内容物が収容されるとともに内容物の減少に伴いしぼみ変形する可撓性の内容器、および該内容器が内装されており、弾性変形して該内容器との間に外気を吸入するための吸気孔が形成された外容器を有する容器本体と、内容物を吐出する吐出口が天面部に形成されており、該容器本体の口部に装着される吐出キャップと、外部と吸気孔とを連通する外気導入孔と、該外気導入孔と吸気孔との連通およびその遮断を切り替える空気弁部と、を備える吐出容器であって、内容器内に気体が収容されて気体スペースが形成されており、気体の容量が内容器の容量の4%以上であるというものである。
【0008】
積層剥離容器は、内容器に外気が入り込まないようにして内容物と外気との接触を断つようにした構造に特徴の一つがある。本発明では、このような特徴を逆手にとり、敢えて当初から内容器内に気体を収容して気体スペースを形成することとしている。一般に、内容物よりも気体のほうが圧縮されやすいので、使用者が内容物を使い切ろうとして容器を握った際、当該気体は、内容物を押し出すように作用する。また、最終的には、当該気体スペースの気体が内容物の代替として内容器内に残る。したがって、内容物のすべてを吐出させやすく、残留量が従来よりも少なくなる。
【0009】
しかも、本発明においては、積層剥離容器の内容器内に自然と空気が入り込んでしまった場合とは異なり、内容器内に所定容量以上の気体スペースを意図的に形成している。したがって、当該気体スペースの気体を内容物の代替として内容器内に残留させ、内容物のすべてを吐出させやすくするという所期の作用効果を奏させることができる。
【0010】
気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を速やかに移動するものであることが好ましい。」

「【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができる。」

「【0054】
本発明の別の実施形態を図10等に示す。この実施形態では、内容器11内に予め気体を収容して気体スペースSを形成している(図10、図11参照)。この気体スペースSにおける気体は内容物Mよりも圧縮されやすいので、特に内容物Mが少なくなった段階において、使用者が内容物Mを使い切ろうとして吐出容器10を加圧した際(スクイズ変形させた際)、内容物Mをより効果的に吐出させるよう作用する。
【0055】
気体スペースSの作用について説明する。気体は内容物Mよりも比重が軽いことから、吐出キャップ15が上を向くように吐出容器10が置かれた通常状態において、気体スペースSは内容物Mよりも鉛直方向上方のヘッドスペースとして存在している(図11等参照)。ここで、吐出口14が水平面よりも下方を向くように吐出容器10を傾けて吐出姿勢にすると、気体スペースSは当該吐出容器10の底部へ向け内容器11内を移動する。このような吐出姿勢にて使用者が吐出容器10を加圧すると、吐出口14から内容物Mのみが吐出され、気体スペースSを形成する気体は内容器11内に残る。
【0056】
この吐出容器10においては、内容物Mが少なくなるにつれ、内容物Mの残量に対する気体スペースSの割合が大きくなるため、加圧時に圧縮された気体スペースSによる内容物Mの押し出し作用(吐出させる作用)が大きくなる。したがって、特に内容物Mが少なくなった段階において、加圧されて圧縮された気体スペースSは内容物Mをより効果的に押し出し吐出させるように作用する。また、最終的には、当該気体スペースSの気体が内容物Mの代替として内容器11内に残る。したがって、本願発明の吐出容器10によれば内容物Mのすべてを吐出させやすく、残留量を従来よりも少なくすることが可能である。
【0057】
気体は、吐出口14から内容物Mを吐出させるために当該吐出容器10を傾けて吐出姿勢にした際、内容器11内を速やかに移動するものであることが好ましい。この場合の気体の移動速度は、当該気体の容量、内容器11の形状等によって変わりうるが、大きくは内容物Mの粘度に影響される。内容物Mのすべてを吐出させやすくして残留量を少なくするという観点からすれば、内容物Mの粘度は、当該気体がある速やかに移動しうる範囲内のものであることが好ましい(実施例2参照)。
【0058】
なお、内容物Mの具体例は特に限定されず、乳化状液、加工澱粉混合物、液状食品、醤油含有調味料(清澄な調味料の一例であり、醤油自体を含む)など種々のものを採用しうる。また、気体の具体例も特に限定されないが、窒素ガスなど、内容物Mを酸化させる等の反応性が低いものであることが好ましい。」

「【実施例1】
【0061】
本発明者は、吐出容器(デラミ容器)10の内容器11の容量に対して何%以上の気体スペースSを設けると好適であるかの試験を行った。
【0062】
<試験方法>
200ml、250mlの2種類の吐出容器10の質量を測定し、気体スペースSの容量を変えて内容物(液)を充填し、全て排出した。大さじ(15ml)ずつ、14?17回に分けて排出を行った。内容物Mを排出できなくなった時点で質量測定し、残液量を算出した。したがって、吐出容器10内の残液と、吐出キャップ15内の残液も合わせて結果に出てくることとなった。
【0063】
<結果>
試験結果を図14に示す。この試験結果からは、気体スペースSを形成する気体の容量が内容器11の容量の4%以上(S/(M+S)が4%以上)である場合に、内容物Mの残液量を極めて少なくすることが可能であることが分かった。」

「【図14】



ウ 以上の記載によれば、本件発明は、「内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができるようにした積層剥離構造の吐出容器を提供すること」を課題とするものであって、本件発明1及び4においては、内容器内に所定容量以上の気体スペースを意図的に形成しており、当該気体スペースの気体を内容物の代替として内容器内に残留させ、内容器の気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、容器の底部に移動して、容器の加圧により、気体が内容物を押し出し内容物のすべてを吐出させやすくするという作用効果を生じせしめることで当該課題を解決しようとするものである。
そして作用機序を踏まえて、200mlと250mlの吐出容器を用いた実施例1の説明(【0061】?【0063】、及び図14)をみてみると、図14には、液量に対するヘッドスペースの割合(横軸)が4%以上では、液量に対する残液量の割合(縦軸)が、全ての点で1%以下であり、液量に対するヘッドスペースの割合(横軸)が4%未満では、液量に対する残液量の割合(縦軸)が、ほぼ2%?5%であり、液量に対するヘッドスペースの割合が4%以上であれば、内容物の残量を少なくできることが理解できる。
よって、「前記気体の容量が前記内容器の容量の4%以上であり、前記気体は、前記吐出口から前記内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、前記内容器内を移動するものであり、」との事項を備える本件発明1及び4は、本件発明1及び4の上記課題を解決し得ると当業者が認識できるものであるといえ、発明の詳細な説明に記載された発明である。

エ 申立人の主張について
申立人は、「本件発明1及び4は、吐出弁の構造を規定していないし、内容器の容量も規定していないので、例えば、甲4に開示された構造の吐出弁を有する1.8Lの容器についても、「4%以上」という数値が、本件特許の実施例と同様の技術的意義を有している必要がある。つまり、4%未満では残液量が多く、4%以上にして初めて残液量が少なくなる必要がある。しかし、本発明の作用効果を考えると、甲4に開示された弁構造を有する1.8Lの容器においては、4%よりもはるかに小さい割合の気体を含有させれば、残液量が十分に小さくなることは自明である。そうすると、本件発明1及び4の「4%以上」という限定を本件特許の実施例で示した容器以外の容器に拡張・一般化することはできないので、本件特許発明1及び4は、サポート要件違反である。」と主張している。
この点を検討すると、1.8Lの醤油容器については、特許異議申立書(以下「申立書」という。)10頁に示されるように、容器の最外壁に把手を有するものであり、容器の最外壁を押圧変形させて内容物を抽出するデラミ容器とすることは、想定されていない。そして、デラミ容器として通常用いられている200ml?450mlの容器(申立書9頁)については、本件特許明細書の実施例1(200mlと250ml)の結果から、例えば、450mlの4%は20mlであり、200mlの4%の8mlと比較して、内容物を押し出す作用をする気体は増すので、内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができることは、明らかである。
また、吐出弁の構造については、本件発明1及び4は、何ら特定していないが、本件発明1及び4が上記課題を解決するためには、内容器の気体が、容器を傾けた時に容器の底部に移動して、容器の加圧により、気体が内容物を押し出し内容物のみ吐出するとの作用・効果を生じることで十分であり、より詳細な吐出弁の構造までも特定する必要はない。よって、上記申立人の主張は失当である。
したがって、サポート要件違反に関する申立人の主張は、採用しない。

オ 小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。したがって、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

(2)理由2(特許法第29条第2項)について
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明を主たる引用発明とする理由について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「内層体2」、「外層体3」、「貫通孔h」、「注出キャップ10付きデラミボトル1」は、本件発明1の「内容器」、「外容器」、「吸気孔」、「吐出容器」にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を移動するものであるのに対して、甲1発明では、内層体2内に、気体のスペースが形成されているように見受けられるものの、気体のスペースが内層体2の容量に対してどの程度か不明であり、吐出姿勢での気体の内層体2内における挙動もはっきりしない点。

上記相違点1を検討する。

甲1の【0004】?【0005】には、「こうした従来の注出キャップ付き二重容器によれば、その注出路内に逆止弁が配置されているため、内容物の注出に伴い内層体の充填空間に負圧が生じても、この充填空間には外気が入り込まないため、内容物の品質保持という点で有効である。
本発明は、上述のような事実認識に基づきなされたものであり、その目的とするところは、外層体の口部に形成した貫通孔を通して内層体との間に効果的に空気を導入することができる新規な二重容器用注出キャップ及び、当該キャップ付き二重容器を提供することにある。」とあり、【0011】には、「本発明によれば、注出キャップの内側に形成された注出路に逆止弁が設けられているため、内層体の充填空間から内容物が注出されることで充填空間内に負圧が生じても外気が入り込む現象を抑えることできる。」とあり、甲1発明は、充填空間内に外気が入り込む現象を抑えることを課題の一つ
とするもので、甲1発明において、内層体内の気体を使って、内容物の残量を少なくすることをむしろ排除しているといえる。そうすると、甲1に接した当業者にとって、甲1発明について、気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を移動するものであるとする、動機付けがない。よって、甲1発明について、上記相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、甲2?甲5には、「気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を移動するものである」点は、記載されていないし、その点を示唆する記載もない。
そして、本件発明1は、上記相違点1に係る構成を有することにより、「内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができる」(本件特許明細書【0013】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項?甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)申立人の主張に対して
申立人は、申立書4?5頁において、甲1の図1(b)に基いて、気体の容量が、内容器の容量の6.4%であると主張する。しかしながら、特許の図面は、発明を理解するためのものであり、寸法の正確性は保証されているものではなく、申立人の主張は、前提に誤りがあり、採用できない。

(ウ)甲4発明を主たる引用発明とする理由について
本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明の「内層体3」、「外層体2」、「吸気孔5」、「吐出容器」は、本件発明1の「内容器」、「外容器」、「吸気孔」、「吐出容器」にそれぞれ相当する。
また、甲4発明の「キャップ8」、「ヒンジ17」、「蓋体16」は、本件発明1の「吐出キャップ」、「ヒンジ部」、「オーバーキャップ」にそれぞれ相当する。

そうすると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1では、気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を移動するものであり、内容物が醤油含有調味料であるのに対して、甲4発明では、内層体3内に気体のスペースが存在するか不明であり、内容物がマヨネーズとかケチャップ等の粘稠性のある内容物である点。

上記相違点2を検討する。

甲4発明の内容物は、マヨネーズとかケチャップ等の粘稠性のある内容物であり、仮に内層体3内に気体が存在しても、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内層体3内を粘稠性のある内容物内を、ただちに移動できないことは技術常識である。そうすると、甲4に接した当業者にとって、甲4発明について、気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内をただちに移動できるようにし、内容物を醤油含有調味料に変更する、動機付けがない。よって、甲4発明について、上記相違点4に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、甲1?甲3及び甲5には、「気体の容量が内容器の容量の4%以上であり、気体は、吐出口から内容物を吐出させるために当該吐出容器を傾けて吐出姿勢にした際、内容器内を移動するものであり、内容物が醤油含有調味料である」点は、記載されていないし、その点を示唆する記載もない。

そして、本件発明1は、上記相違点2に係る構成を有することにより、「内容物のすべてを吐出させやすくして残留量を少なくすることができる」(本件特許明細書【0013】)という作用効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲4発明、甲1記載事項?甲3記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2記載事項?甲5記載事項、あるいは、甲4発明、甲1記載事項?甲3記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえないから、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。

6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
 
異議決定日 2019-01-25 
出願番号 特願2011-171850(P2011-171850)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (B65D)
P 1 652・ 537- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 唯小川 悟史加藤 啓山田 裕介  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 久保 克彦
蓮井 雅之
登録日 2018-05-11 
登録番号 特許第6336702号(P6336702)
権利者 キッコーマン株式会社
発明の名称 吐出容器  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
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