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審決分類 審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C03B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C03B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C03B
審判 一部申し立て 2項進歩性  C03B
管理番号 1348746
異議申立番号 異議2018-700643  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-03 
確定日 2019-02-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6273997号発明「不透明石英ガラスおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6273997号の請求項1ないし8、18ないし25に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6273997号の請求項1ないし25に係る特許についての出願は、平成26年 4月30日に出願され、平成30年 1月19日にその特許権の設定登録がされ、平成30年 2月 7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年 8月 3日付けで特許異議申立人 山田 正博(以下、「特許異議申立人」という。)により、その請求項1ないし8、18ないし25を対象として特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年10月23日に取消理由を通知した(平成30年10月18日付け)。それに対し、特許権者は、平成30年12月18日付けで乙第1ないし6号証が添付された意見書を提出した。


第2 本件特許発明
本件の特許請求の範囲における請求項1ないし8、18ないし25の記載は、以下のとおりである。
(以下、請求項1ないし8、18ないし25に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」、「本件特許発明18」ないし「本件特許発明25」といい、まとめて「本件特許発明」という。)

「【請求項1】
密度が1.95g/cm^(3)以上2.15g/cm^(3)以下であり、平均気孔径が5?20μmであり、密度の変動係数が0.02以下であることを特徴とする不透明石英ガラス。
【請求項2】
試料厚さ1mmのときの波長1.5μmから5μmにおける直線透過率が1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の不透明石英ガラス。
【請求項3】
吸水率が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の不透明石英ガラス。
【請求項4】
クリストバライト含有率が2%以下であることを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の不透明石英ガラス。
【請求項5】
密度が1.97g/cm^(3)以上2.08g/cm^(3)未満であることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の不透明石英ガラス。
【請求項6】
平均気孔径が9?15μmであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の不透明石英ガラス。
【請求項7】
Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Cu,Znの各金属不純物の含有量が10ppm以下であることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の不透明石英ガラス。
【請求項8】
Na,Mg,Al,K,Ca,Cr,Fe,Cu,Znの各金属不純物の含有量が1ppm以下であることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の不透明石英ガラス。
【請求項18】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラス表面の一部または全体に透明石英ガラス層を有していることを特徴とする石英ガラス。
【請求項19】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とする熱処理装置用部材。
【請求項20】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とする半導体製造装置用部材。
【請求項21】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とするFPD製造装置用部材。
【請求項22】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成され
ていることを特徴とする太陽電池製造装置用部材。
【請求項23】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とするLED製造装置用部材。
【請求項24】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とするMEMS製造装置用部材。
【請求項25】
請求項1?8のいずれかに記載の不透明石英ガラスによって一部または全体が形成されていることを特徴とする光学部材。」


第3 異議申立理由の概要
特許異議申立人は、甲第1ないし6号証を提示するとともにその写しを提出し、次の申立理由(1)ないし(5)により、請求項1ないし8、18ないし25に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。

1.申立理由(1)
本件特許発明1、4ないし8、19ないし25は、甲第1号証に記載された発明であり、本件特許発明1ないし8、18ないし25は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。

2.申立理由(2)
本件特許発明1ないし8、18ないし25は、甲第1ないし4号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

3.申立理由(3)
本件請求項1に記載されている密度及び密度の変動係数、並びに本件請求項3に記載されている吸水率に関し、その測定方法が明りょうでないから、本件特許発明1及び本件特許発明3は明確でない。よって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定の要件を満たしていないものである。

4.申立理由(4)
本件請求項1に記載されている密度及び密度の変動係数、並びに本件請求項3に記載されている吸水率に関し、本件明細書の発明の詳細な説明は、その測定方法の記載に不備があるから、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。よって、本件特許に係る出願は、特許法第36条第4項第1号に規定の要件を満たしていないものである。

5.申立理由(5)
本件明細書の実施例4は平均密度の最小値が1.94g/cm^(3)であって、本件特許発明1の発明特定事項を満たしていないものであってサポート要件違反である。また、甲第5号証及び甲第6号証の記載を踏まえると、本件明細書の記載は甲第5号証に係るものとほぼ同一であるから、本件特許に係る出願も、甲第5号証に係る出願と同様、甲第6号証の記載で言及されたサポート要件違反の不備がある。また、本件特許発明18は対応する実施例の記載がない。よって、本件特許発明1とそれに従属する本件特許発明2ないし8、18ないし25は、特許法第36条第6項第1号に規定の要件を満たしていないものである。

<甲各号証一覧>
甲第1号証
特開平11-199252号公報
甲第2号証
特開2001-180955号公報
甲第3号証
特開平9-12325号公報
甲第4号証
東ソー株式会社、”失透”、石英ガラス使用上の注意、インターネット<URL:http://www.tosoh.co.jp/product/functionality/speciality/assets/quartz_glass_19.pdf>
甲第5号証
特開2015-151320号公報
甲第6号証
特願2014-27910(特開2015-151320号)の拒絶理由通知書


第4 取消理由の概要
当審において、平成30年10月18日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(実施可能要件)について
本件特許発明1ないし8、18ないし25の発明特定事項である密度及び密度の変動係数、並びに吸水率について、本件明細書の発明の詳細な説明は、その測定方法の記載に不備があり、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(2)理由2(明確性要件)について
本件特許発明の発明特定事項である「密度」及び「密度の変動係数」、並びに「吸水率」については、その数値を定めるための質量W3の測定方法が明確に記載されておらず、それらの技術的意義も不明であるから、本件特許発明は明確でない。


第5 当審の判断

1.取消理由について

(1)「密度」及び「密度の変動係数」、並びに「吸水率」の技術的意義について
本件特許発明に係る不透明石英ガラスは、気孔を有するものとして特定されているから、その密度については、少なくとも、見かけ密度(嵩密度)として理解すべきものであることは自明である。
本件明細書においては、請求項1に記載されている密度及び密度の変動係数、並びに請求項3に記載されている吸水率に関し、段落【0015】、【0045】、【0046】に以下のように記載されている。

「【0015】
本発明の不透明石英ガラスに含まれる気孔は閉気孔であることが好ましく、すなわち吸水率が0.1wt%以下であることが好ましい。不透明石英ガラスの吸水率が0.1wt%以下であれば、不透明石英ガラスの研削、研磨などの機械加工中に不純物を吸着することがなく、加工後に純化処理が必要ないという点で好ましい。」

「【0045】
不透明石英ガラスの密度および吸水率は次の方法で測定した。まず試料を乾燥した後、質量W1を測定する。次に試料を水中に保って2時間煮沸したのち放冷により常温に戻し、この試料の水中での質量W2を測定する。次に試料に撥水性の有機溶剤を塗布し、乾燥した後、この試料の水中での質量W3を測定する。密度および吸水率をW1、W2、W3から次式で求める。
密度=W1/((W1-W3)/ρ)
吸水率(%)=((W2-W3)/W1)×100
ここでρは測定時の水温での水の密度である。
【0046】
不透明石英ガラスの焼結体内の密度の変動係数は、焼結体を中央部から外周部、頂部から底部にかけて分割した27点の密度を測定し、(密度の標準偏差/密度の平均値)で求めた。」

これらの記載を総合すると、本件特許発明に係る吸水率は、不透明石英ガラスの気孔をなるべく閉気孔にするという技術思想に基づき定められたパラメータであって、明細書中に特に定義されたものであると解されるから、本件特許発明の発明特定事項である「吸水率」についてはこの定義を踏まえて解釈されるべきものである。また、同じく「密度」及び「密度の変動係数」については、乾燥質量W1と、吸水率を求める過程で得られ特に定められた測定値といえる水中質量W3とから求められるものとされているので、その技術的意義については吸水率の技術的意義と合わせて理解を図る必要があるといえる。

まず、段落【0015】については、閉気孔であることの必要性を吸水率を低く抑えることの必要性に置き換えて記載していることから、ここでは、不透明石英ガラス素材自身が水分を吸収することよりも、むしろ、不透明石英ガラスの表面に開気孔が存在することにより、そこへ水分が取り込まれてしまうことの問題に着目していることが読み取れる。
そこで、吸水率の定義式に関わる不透明石英ガラスの質量W1,W2及びW3について【0045】の記載を詳細にみてみると、W1は、乾燥質量であるのに対し、水中質量W2は、水中に保って2時間煮沸したのち放冷により常温に戻した水中での質量なので、表面の開気孔に水が浸入し得る状態での測定値であり、水中質量W3は、撥水性の有機溶剤を塗布しているから、表面の開気孔に水が浸入し得ない状態での測定値であると理解できる。
そうすると、この吸水率はW2とW3との差を用いて算出していることから、その技術的意義は、表面の開気孔への吸水の度合いを定めたものといえるので、明確である。

次に、密度については、水中質量W3を用いて定義されている。W3の測定において、撥水性の有機溶剤を塗布して表面の開気孔に水が浸入し得ない状態での測定値とすることは、開気孔を閉気孔(通常は水が浸入し得ない)とほぼ同視できる空隙として取り扱えるようにしたものであると理解できるから、その状態における見かけの体積V1に応じた浮力を得られるようにして測定したものであるといえる。即ち以下の式が成り立つ。
W3=W1-V1・ρ
そうすると、【0045】の式に当てはめて以下の式が導き出される。
密度=W1/((W1-W3)/ρ)
=W1/[((W1-(W1-V1・ρ))/ρ]
=W1/V1
よって、この密度は、通常の見かけ密度(嵩密度)を求める式に基づくものに他ならないから、その技術的意義は明確である。

さらに、密度の変動係数については、不透明石英ガラス焼結体を中央部から外周部、頂部から底部にかけて27分割し、27分割した各部位の測定密度と全体の平均密度の差の二乗の和を測定サンプル数の27で除した値の平方根として計算で求められる密度の標準偏差を、不透明石英ガラス焼結体全体の平均密度で除することによって得られる数値であって、その技術的意義は、不透明石英ガラス焼結体の密度分布の大小を指す指標といえるので、明確である。

以上のことから、本件特許発明の発明特定事項である「密度」及び「密度の変動係数」、並びに「吸水率」の技術的意義は明確である。

(2)水中質量W3の測定方法について
本件明細書においては、W3を測定するための条件として、特に撥水性の有機溶剤の使用に関わるもの((ア)有機溶剤の塗布前処理、(イ)有機溶剤の種類と塗布条件、(ウ)測定への影響)等が詳述されていないので、上記(1)で検討した技術的意義に則して、技術常識等に基づきその実施が可能であるかを検討する。

(ア)有機溶剤の塗布前処理
有機溶剤の塗布は、表面の開気孔に水が浸入しないようにすることにあると認められるので、その塗布前は開気孔中の水分が除かれ、十分に乾燥した状態での撥水処理が必要であることは自明である。

(イ)有機溶剤の種類と塗布条件
撥水処理のための撥水剤としては、従来からシリコーンやフッ素系有機化合物が広く知られており、様々なものが当業者において容易に入手可能であるといえる。上記(1)で検討したとおり、撥水剤塗布の目的が、不透明石英ガラス表面の開気孔に水が浸入しないようにすることにあり、塗布後の重量測定結果への影響をできる限り最小限に抑えるべきであるから、薄い膜厚で効果のある速乾性のものを選択すべきことも自明である。

(ウ)有機溶剤使用の質量測定への影響
撥水性の有機溶剤使用が質量測定に及ぼす影響について検討する。
例えば、本件明細書の実施例1において使用されている不透明石英ガラスの質量は、段落【0055】の記載より、直径145mm、厚み75mmの円柱状であるから、その体積をcm^(3)単位で計算すると、
π(14.5÷2)^(2)×7.5≒1240cm^(3)
と見積もられ、(見かけ)密度はおおよそ2.0g/cm^(3)(表2の平均密度は2.05g/cm^(3))であるから、約2500gの質量となる。
一方、この不透明石英ガラスの表面積(cm^(2))は、両端面のものと側面のものとを合わせると、
π(14.5÷2)^(2)×2+2π(14.5÷2)×7.5≒770cm^(2)
と見積もられ、この値に、塗布する有機溶剤の膜厚と密度とを掛け合わせたものが概ね有機溶剤の質量となる。
撥水性は、0.5μm以下程度の塗布厚さでも十分にその効果が発揮されるものが通常知られており(例えば、特開平11-130470号公報参照)、有機溶剤の密度は大きくても2.0g/cm^(3)を上回ることはほとんどないから、塗布される有機溶剤の質量は、多くとも0.077g程度と見積もられる。
してみれば、本件特許発明において特定されている不透明石英ガラスの密度及び密度の変動係数を定めるに際し、塗布する有機溶剤の質量の影響は相対的に無視しうる程度であるといえる。
また、本件特許発明3で特定されている吸水率は0.1wt%であるから、実施例での開気孔への吸水量は、概ね2.5g以下であることが要件となり、この数値との比較においても、多くとも0.077g程度と見積もられる有機溶剤の影響は一桁以上低く、有意なものとはならないと解される。
なお、特許権者の提出した平成30年12月18日付け意見書によれば、一般に流通しているとされる乙第5号証(”防水・防湿コーティング剤 オプトエースWP-100シリーズ”[on line]、ダイキン工業株式会社、[平成30年11月15日検索]、インターネット<http://www.daikin.co.jp/chm/products/pdf/tds/tds_wp100_J_ver01.pdf> 写し)に記載されている撥水性の有機溶剤は、膜厚0.5μmで防湿性効果が発揮され、比重(密度)は1.43g/cm^(3)であるとされているから、実際上、上記の見積もり以下の影響に過ぎないことが推認される。

以上のことから、水中質量W3の測定方法は、当業者の技術常識を踏まえれば実施可能なものであるといえる。そして、測定に使用する有機溶剤は任意であって、当業者ができる限り正しい測定値を得るために各種工夫することは当然であることからすれば、明細書の発明の詳細な説明において有機溶剤の使用条件について詳述することは必ずしも要しないものと認められる。

(3)取消理由1(実施可能要件)について
取消理由1に関し、上記(2)のとおり、水中質量W3の測定方法は、当業者の技術常識を踏まえれば実施可能なものであり、また、本件特許発明1ないし8、18ないし25の発明特定事項である「密度」及び「密度の変動係数」、並びに「吸水率」について、上記(1)を踏まえたこれらの技術的意義に則した測定が可能であるといえるから、本件明細書の記載において実施可能要件に係る不備はない。

(4)取消理由2(明確性要件)について
取消理由2に関し、上記(1)のとおり、本件特許発明において特定されている「密度」及び「密度の変動係数」、並びに「吸水率」の技術的意義は明確であり、上記(2)のとおり、水中質量W3も明確に定まるものであるから、本件特許請求の範囲の記載において明確性要件に係る不備はない。

(5)小括
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由によっては、本件請求項1ないし8、18ないし25に係る特許を取り消すことはできない。

2.異議申立理由について

(1)本件特許発明の認定
本件特許発明1ないし8、18ないし25は、それぞれ、本件特許請求の範囲の請求項1ないし8、18ないし25に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(2)申立理由(1)について
(ア)甲第1号証に記載された発明(引用発明1)
甲第1号証には、以下の記載がある。

ア「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高純度で、耐熱性および遮熱性に優れる不透明石英ガラスに関し、さらに詳しくは、このような優れた特性から、半導体製造工程の熱処理炉に用いられる遮熱性材料として好適な不透明石英ガラスに関するものである。」

イ「【0005】そこで、種々の改良を施した不透明石英ガラスおよびその製造方法が提案されている。まず、高純度の原料に予め発泡剤として窒化珪素、炭化珪素および炭素などの微粉末を添加し、それを加熱、溶融して製造される不透明石英ガラスが提案されている(例えば、特開平4-65328号公報、特開平5-254882号公報参照)。提案された不透明石英ガラスでは、高純度の発泡剤を用いることによって石英ガラスの純度を損なうことなく、内部の発泡条件は均一となるので、遮熱性、耐熱性ともに優れ、遮熱性材料として好適なものであるとされる。」

ウ「【0026】図1は、気泡の形状が石英ガラスの遮熱性に及ぼす影響を調査するため、偏平度をパラメータとして見掛け密度と光透過率との関係を示す図である。図1から明らかなように、不透明石英ガラスの遮熱性は、サンプル厚さが一定で、見掛け密度が一定の場合には、いずれも気泡の偏平度が小さいほど、透過率が低くなり良好である。これは、不透明石英ガラス中の気泡の表面で熱線などの光線の一部が反射、散乱されるが、その気泡の偏平度が小さいほど比表面積が大となり、気泡表面での反射、散乱が増えて、遮熱性が良好になるからである。」

エ「【0029】
【実施例】本発明の不透明石英ガラスの優れた特性を、実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施例の内容に限定されるものではない。
【0030】(本発明例1)高純度の石英粉に高純度の窒化珪素粉を0.15wt%添加し、ポットミルで充分に混合したものを原料として酸水素火炎溶融装置で溶融し、直径150mm、長さ1200mmの円柱状の不透明石英ガラス母材を製造した。そののち、この母材を雰囲気調整炉の中で、1700?1750℃の温度に加熱し、軟化後充分に流動変形させて、直径400mm、長さ160mmの不透明石英ガラスインゴットを製造した。
【0031】図2は、不透明石英ガラス母材に含有される気泡を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。この不透明石英ガラス母材の気泡径は0?120μmで、主として0?40μmで分布している。含有される気泡の形状は、図2に示すように、いずれも真球状であり、偏平なものは認められなかった。
【0032】図3は、不透明石英ガラスインゴットに含有される気泡を示す顕微鏡写真(倍率100倍)である。母材から軟化後流動変形された不透明石英ガラスインゴットの気泡径(気泡が偏平な場合には長径で示す)は0?140μmで、主として0?40μmで分布している。気泡の形状は、図3に示すように、殆どが偏平状であり、単純平均で求められる気泡の偏平度は0.72であった。また、表1に、このときの不透明石英ガラスインゴットの見掛け密度、波長800nmでの光透過率(サンプル厚さtは1mmと3mmにした)、温度1200℃での粘性係数および不純物含有量を示す。」

オ「【0033】
【表1】




甲第1号証に記載されている上記エ、オの不透明石英ガラスインゴットの本発明例1では、厚さ1mmの板状サンプルにおいて波長800nmの透過率が1%未満であり、見掛け密度が2.08であり、気泡径が0?140μmで、主として0?40μmで分布している不透明石英ガラスインゴットが得られている。
そうすると、甲第1号証には、
「見掛け密度が2.08g/cm^(3)であり、気泡径が0?140μmで、主として0?40μmで分布しており、波長800nmの透過率が1%未満である不透明石英ガラス。」を一例とした発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(イ)本件特許発明と甲第1号証に記載された発明(引用発明1)との対比・判断
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、両者は、密度に関し定義は異なるものの2.0g/cm^(3)以上2.15g/cm^(3)以下の点で概ね一致し、気孔もしくは気泡を有しその一部は10?20μm程度に分布しうる不透明石英ガラスの点で概ね共通するが、以下の2点で少なくとも相違している。

相違点1-1:本件特許発明1では、気孔について平均気孔径で5?20μmと特定しているのに対し、引用発明1では気泡径が0?140μmで、主として0?40μmで分布しているが平均気孔径は不明な点。

相違点1-2:本件特許発明1では、密度の変動係数が0.02以下であるのに対し、引用発明1では、密度の変動係数は不明な点。

まず、相違点1-1について検討する。
申立人は、引用発明1の気泡径は0?140μmで、主として0?40μmで分布しているものであり、このように、気泡径が主として0?40μmで分布している場合には、平均すると5?20μmの範囲に入る蓋然性が高いことから、引用発明1は、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす旨主張している。
しかしながら、引用発明1の主とする気泡径が0?40μmであって、本件特許発明1で特定する平均気孔径5?20μmと部分的に重複するとしても、それだけをもって、ただちに、引用発明1の平均気孔径が5?20μmであって本件特許発明1の発明特定事項を満たすとまではいえない。
また、本件特許発明1で平均気孔径で5?20μmと特定しているのは、本件明細書【0012】の記載によれば、遮光したい赤外光と同程度以上のサイズの気孔を有することと、気孔の含有密度が高いこととが、不透明石英ガラスの遮光性を向上するためには有効であり、遮光したい赤外光の波長が1.5?5μmであることによるものであると理解される。即ち、平均気孔径を5μm以上と設定し、気孔の数を多くできるようなバランスで平均気孔径の上限を20μmに設定したものであると認められる。これに対し、引用発明1では、0μmが下限であるから遮光したい赤外光と同程度以上のサイズの気孔を有することにはなっているが、上限140μmでどの程度大きな気孔のものをどの程度含んでいるのかが不明であるから平均気孔径も不明であるが、仮に、気泡が均一に分布しているとすれば、(0+140)μm/2=70μmで、本件特許発明1の平均気孔径よりもずっと大きく異なるものとなる。
そして、引用発明1では、気泡径が、主として0?40μmで分布していることも記載されているが、この範囲において、気泡が均一に分布しているとしても、(0+40)μm/2=20μmとなり本件特許発明1の上限値に相当し、引用発明1が40μmよりも大きい気泡径を少なからず含んでいることも考慮すると、本件特許発明1の平均気孔径よりも大きいものとなるから、相違点1-1は実質的なものである蓋然性が高い。
さらに、本件明細書【0003】には、不透明石英ガラスの製造方法として、結晶質シリカまたは非晶質シリカに窒化珪素等の発泡剤を添加して溶融する方法などが知られているが、このような製造方法で製造された不透明石英ガラスでは、発泡剤が気化して気孔を形成するため気孔の平均径が大きくなることが記載されており、これは、窒化珪素粉(発泡剤)により気泡を形成する引用発明1の態様について示すものであるといえ、上記検討と整合するものである。
次に、相違点1-2について検討すると、上記エによれば、引用発明1は、高純度の石英粉に高純度の窒化珪素粉(発泡剤)を添加し混合したものを原料としているものである。そして、上記イによれば、高純度の発泡剤を用いることによって石英ガラスの純度を損なうことなく、内部の発泡条件は均一となることが記載されているから、引用発明1においても、内部の発泡条件が均一となることによって、本件特許発明1で特定する密度の変動係数について、一致している可能性があるとはいえるものの、不明である。

したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明4ないし8、19ないし25は、請求項4ないし8、19ないし25が何れも請求項1を直接又は間接引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

(ウ)甲第2号証に記載された発明(引用発明2)
甲第2号証には、以下の記載がある。

ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】窒素元素又は炭素元素を含有する気泡材と石英粉とを混合し、加熱溶融することを特徴とする不透明石英ガラスの製造方法。
【請求項2】石英粉が天然結晶質石英粉であることを特徴とする請求項1記載の不透明石英ガラスの製造方法。
【請求項3】窒素元素又は炭素元素を含有する気泡材が石英粉に対して0.5?20重量%の範囲で混合されることを特徴とする請求項1又は2記載の不透明石英ガラスの製造方法。」

イ「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、不透明石英ガラスの製造方法、さらに詳しくは微細な気泡が均一に分散し、熱線遮断性に優れた高純度の不透明石英ガラスの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、不透明石英ガラスは、その不透明性を利用した熱線遮断材料として、例えば半導体熱処理用炉芯管などのフランジ材、または半導体熱処理治具の把持部形成材料として用いられてきた。」

ウ「【0004】
本発明は、微細な気泡が均一に分散し熱線遮断性に優れ、機械的強度が高く、かつ高純度の不透明石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、窒素元素又は炭素元素を含有する気泡材と石英粉とを混合し、加熱溶融することを特徴とする不透明石英ガラスの製造方法に係る。
【0006】
上記窒素元素又は炭素元素を含有する気泡材とは、精製した高純度のSi(CH_(3))Cl_(3)、SiCl_(4)、Si(CH_(3))H、Si(CH_(3))_(4)などの揮発性珪素化合物を酸水素火炎中で加水分解し、石英ガラス微粒子を形成し、堆積したのち窒素元素又は炭素元素を化学蒸着法(Vapor‐Phase Deposition Method)でドープし、粉砕して得た粉体をいう。・・・ドープされた窒素元素又は炭素元素は、単体或はSiC又はSi_(3)N_(4)として存在し、加熱溶融でSiO_(2)と反応し、CO_(2)、CO、N_(2)、NO、NO_(2)と、ガス化して気泡を形成し、不透明ガラスの不透明度を増大する。」

エ「【0008】
本発明の製造方法にあっては、上記気泡材を石英粉に対して0.5?20重量%の割合で混合するが、これにより原料中の窒素元素又は炭素元素の含有量は5?30,000ppmとなる。該原料を加熱溶融することで、得られた不透明石英ガラス中の窒素元素又は炭素元素の含有量は5?10,000ppmとなる。そして、気泡直径は10?180μm、密度は2.0g/cm^(3)以上と、機械的強度が高い上に、気泡が微細で、かつ均一であることから装置との接着の時の密着性や熱線遮断性が良好となる。気泡材の混合量が0.5重量%未満では気泡の形成が十分でなく熱線の遮断性に欠け、また20重量%を超えると、高い反射率が得られるが機械的強度が落ち、高温粘性も低下し、半導体治具に使用できない。」

オ「【0010】
【実施例】
実施例1
四塩化珪素を酸水素火炎中で加水分解反応させ、石英ガラス微粒子を形成し、堆積して多孔質石英ガラス体を製造した。該多孔質石英ガラス体を窒素とアンモニアの比率が1:1の混合ガスがフローする雰囲気処理炉に入れ、900℃に昇温し5時間に保持して窒素含有多孔質石英ガラス体を得た。この多孔質石英ガラス体中の窒素はN_(2)、NH_(4)、Si_(3)N_(4)として20,000ppm含有されていた。この窒素含有多孔質石英ガラス体を粒度250μm以下に粉砕して気泡材を製造した。この気泡材の1.0kgを予め用意した粒度500μm以下の水晶粉20kgとボールミルを用いて混合し、内径230mm×高さ400mmのカーボン製鋳型中に充填した。カーボン製鋳型内を1×10^(-2)Torrまで減圧し混合粉体に含まれる気体を除去し、N_(2)に置換したのち、1気圧に保って加熱溶融した。加熱温度は室温から1800℃までは10時間かけて昇温し、同温度に5時間保持し、その後10時間かけて室温まで冷却した。得られた不透明石英ガラス体は、外径230mm、高さ120mmであった。この不透明石英ガラス体を下面から60mmの高さで水平にカットし、厚さ4mmの板状サンプルを切り出し、表面をファイアポリシュしたのち、中心から、外周に向って2mm毎に、赤外線2μmの透過率を測定した。赤外線透過率は1?4%の範囲にあった。また、前記サンプルの比重を測定したところ2.05であり、気泡径は10?180μmの範囲にあった。さらに、気泡密度は200,000個/cm^(3)、含有窒素元素濃度は2000ppmであった。前記比重は、アルキメデス法により測定した値、気泡径及び気泡密度はDIN58927に準じて測定した値、窒素元素濃度は、不活性ガス融解伝導度法により測定した値である。」

甲第2号証に記載されている上記オの不透明石英ガラス製造の具体例では、厚さ4mmの板状サンプルにおいて赤外線2μmの透過率が1?4%の範囲にあり、比重が2.05、気泡径は10?180μmの範囲にあって、さらに、気泡密度は200,000個/cm^(3)、含有窒素元素濃度は2000ppmの不透明石英ガラス体が得られている。
そうすると、甲第2号証には、
「密度が2.05g/cm^(3)であり、気泡直径が10?180μmであり、厚さ4mmの板状サンプルの波長2μmにおける透過率が1?4%の範囲にある不透明石英ガラス。」を一例とした発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

(エ)本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明(引用発明2)との対比・判断
本件特許発明1と引用発明2とを対比すると、両者は、密度に関し定義は異なるものの2.0g/cm^(3)以上2.15g/cm^(3)以下の点で概ね一致し、気孔もしくは気泡を有しその一部は10?20μm程度に分布しうる不透明石英ガラスの点で概ね共通するが、以下の2点で少なくとも相違している。

相違点2-1:本件特許発明1では、気孔について平均気孔径で5?20μmと特定しているのに対し、引用発明2では気泡直径が10?180μmであるが平均気孔径は不明な点。

相違点2-2:本件特許発明1では、密度の変動係数が0.02以下であるのに対し、引用発明2では、密度の変動係数は不明な点。

まず、相違点2-1について検討する。
申立人は、引用発明2の気泡直径は10?180μmであり、気泡直径が10?180μmの中には、平均気孔径が5?20μmのものも含まれるのは自明であるから、引用発明2は、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす旨主張している。
しかしながら、引用発明2の気泡直径が10?180μmであって、本件特許発明1で特定する平均気孔径5?20μmと部分的に重複するとしても、それだけをもって、ただちに、引用発明2の平均気孔径が5?20μmであって本件特許発明1の発明特定事項を満たすとまではいえない。
また、本件特許発明1で平均気孔径で5?20μmと特定しているのは、本件明細書【0012】の記載によれば、遮光したい赤外光と同程度以上のサイズの気孔を有することと、気孔の含有密度が高いこととが、不透明石英ガラスの遮光性を向上するためには有効であり、遮光したい赤外光の波長が1.5?5μmであることによるものであると理解される。即ち、平均気孔径を5μm以上と設定し、気孔の数を多くできるようなバランスで平均気孔径の上限を20μmに設定したものであると認められる。これに対し、引用発明2では、10μmが下限であるから遮光したい赤外光と同程度以上のサイズの気孔を有することにはなっているが、上限180μmでどの程度大きな気孔のものをどの程度含んでいるのかが不明であるから平均気孔径も不明であるが、仮に、気泡が均一に分布しているとすれば、(10+180)μm/2=95μmで、本件特許発明1の平均気孔径よりもずっと大きく異なるものとなるから、相違点2-1は実質的なものである蓋然性が高い。
さらに、本件明細書【0003】には、不透明石英ガラスの製造方法として、結晶質シリカまたは非晶質シリカに窒化珪素等の発泡剤を添加して溶融する方法などが知られているが、このような製造方法で製造された不透明石英ガラスでは、発泡剤が気化して気孔を形成するため気孔の平均径が大きくなることが記載されており、これは、窒素元素又は炭素元素が、単体或はSiC又はSi_(3)N_(4)として存在するようにドープされた石英ガラスからなる気泡材(発泡剤)により気泡を形成する引用発明2の態様について示すものであるといえ、上記検討と整合するものである。
次に、相違点2-2について検討すると、上記オによれば、引用発明2は、水晶粉に窒素含有多孔質石英ガラス体からなる気泡材(発泡剤)を添加し混合したものを原料としているものである。そして、上記エによれば、得られる不透明石英ガラスは気泡が微細で、かつ均一であることが記載されているから、引用発明2においても、気泡が均一となることによって、本件特許発明1で特定する密度の変動係数について、一致している可能性があるとはいえるものの、不明である。

したがって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし8、18ないし25は、請求項2ないし8、18ないし25が何れも請求項1を直接又は間接引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明であるとはいえない。

(オ)小括
上記のとおりであるから、申立理由(1)は理由がない。

(3)申立理由(2)について
本件特許発明1と引用発明1,2との対比については、上記(2)(イ)、(エ)のとおりであり、少なくとも相違点1-1、2-1の点で相違している。
そこで、相違点1-1、2-1について検討するに、甲第1号証及び甲第2号証には、気泡の平均気孔径を5?20μmにすることについて記載や示唆は、上記(2)(ア)ア?オ、(ウ)ア?オその他明細書全体からも特に見当たらない。甲第3号証には、高純度不透明石英ガラスに係る気泡の平均径についての記載はあるが(請求項1、【0016】等)、その数値は20μm?40μmであって相違点1-1、2-1に係る「平均気孔径5?20μm」を示唆するものではない。甲第4号証には、クリストバライト発生に関する記載は認められるが、相違点1-1、2-1に関わる記載や示唆はない。
してみれば、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1ないし4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

本件特許発明2ないし5、12ないし19は、請求項2ないし5、12ないし19が何れも請求項1を直接又は間接引用するものであって、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件特許発明1と同様に、甲第1ないし4号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって、申立理由(2)は理由がない。

(4)申立理由(3)及び(4)について
当審で通知した取消理由1,2と同趣旨であり、上記1.で検討したとおりである。
よって、申立理由(3)及び(4)は理由がない。

(5)申立理由(5)について
特許異議申立人は、本件明細書の実施例4の平均密度の最小値は、1.94g/cm^(3)であって、本件特許発明1の発明特定事項を満たしていない実施例が示されていることから、請求項1に係る本件特許発明1は発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張している。
ここで、実施例4は、密度の変動係数を得るために、不透明石英ガラス焼結体を27分割したのち各部位の密度を測定したところ、そのうちの最小値が1.94g/cm^(3)であって、不透明石英ガラス焼結体全体の平均密度は2.02g/cm^(3)であったものと解されるところ、第5 1.(1)で検討したとおり、「密度」の技術的意義を考慮すると、本件特許発明1の「密度」は、不透明石英ガラス焼結体全体の密度(平均密度)を意味するものであることは明らかであり、実施例4は本件特許発明1の発明特定事項を満たしているものであるから、上記主張は採用することができない。
また、特許異議申立人は、甲第5号証及び甲第6号証の記載を引用し、本件請求項1の記載に関し、「平均気孔径が5?20μmであり」という特定事項が、本件明細書の段落【0007】の「吸水性がなく、かつ赤外光の遮光性に優れる不透明石英ガラス及びその製造方法を提供すること」という本件特許発明の課題を解決するための手段であると認められるところ、本件明細書には上記特定事項を満たしても本件特許発明の課題を解決した不透明石英ガラスが得られていない比較例1が示されているから、本件特許発明1は、明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであると主張する。
しかしながら、上記主張の前提となる、本件特許発明の課題を解決するための手段の認定に関し、本件特許発明1においては、少なくとも、「密度が1.95g/cm^(3)以上2.15g/cm^(3)以下」であること及び「密度の変動係数が0.02以下であること」についても、本件特許発明の課題を解決するための手段であることは、請求項1に加え本件明細書の【0012】、【0013】等の記載から明らかである。本件明細書【0072】?【0076】の比較例1は、密度の変動係数が0.02を超えたことで、ガラス特性が不均質となって透過率が高くなり、本件特許発明の課題を解決するに至らなかったと解されるものである。
さらに、特許異議申立人は、「吸水率が0.1wt%以下であり」という特定事項については、何をどうすることによって、吸水率が0.1wt%以下である不透明石英ガラスを得ているのか、具体的な説明がされていない旨主張する。しかしながら、吸水率を規定したことの技術的意義については、上記1.(1)で検討したとおりであって、なるべく閉気孔とすることにあること等が理解できるし、本件明細書の【0033】、【0034】の記載から、焼成時間の選定によって焼結を進ませることで閉気孔とすることが実施できる旨把握できるのであるから、本件特許発明が明細書の発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであるということはできない。
さらにまた、本件特許発明18に関し、「対応する実施例の記載がなく、サポート要件を満たしていない」旨の特許異議申立人の主張もあるが、本件明細書の【0038】【0039】には、不透明石英ガラス表面の一部又は全体に透明石英ガラス層を付与して使用する実施の形態、具体的な付与の方法等、この発明についての説明が記載されているから、対応する実施例の記載がなくとも、サポート要件は満たしている。
よって、申立理由(5)は理由がない。

(6)小括
以上のとおりであるから、申立理由(1)?(5)は何れも理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び異議申立理由の何れによっても、本件請求項1ないし8、18ないし25に係る特許を取り消すことはできない。
他に本件請求項1ないし8、18ないし25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-01-30 
出願番号 特願2014-94127(P2014-94127)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (C03B)
P 1 652・ 537- Y (C03B)
P 1 652・ 113- Y (C03B)
P 1 652・ 536- Y (C03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永田 史泰  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 金 公彦
山崎 直也
登録日 2018-01-19 
登録番号 特許第6273997号(P6273997)
権利者 東ソー株式会社
発明の名称 不透明石英ガラスおよびその製造方法  
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