• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
管理番号 1348750
異議申立番号 異議2018-700862  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-10-24 
確定日 2019-02-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6315755号発明「異物感緩和点眼剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6315755号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6315755号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年10月2日に出願され、平成30年4月6日にその特許権の設定登録がされ、平成30年4月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年10月24日に、その請求項1?5に係る発明の特許に対し、鈴木 愛子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6315755号の請求項1?5の特許に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明5」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)プラノプロフェン又はその塩と、(B)抗炎症剤及び水溶性ビタミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを含有する、異物感緩和用点眼剤であって、
前記抗炎症剤が、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、硫酸ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記水溶性ビタミンが、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み、
(A)プラノプロフェン又はその塩の含有量1質量部に対して、(B)成分としての抗炎症剤の総含有量が0.5?100質量部であるか、又は、(B)成分としての水溶性ビタミンの総含有量が0.1?4質量部であり、
前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感であり、
シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態で適用するための、異物感緩和用点眼剤(ただし、クロモグリク酸又はその塩を含有する点眼剤、トラニラスト又はその塩を含有する点眼剤、ペミロラスト又はその塩を含有する点眼剤、アシタザノラスト又はその塩を含有する点眼剤、及び、オロパタジン又はその塩を含有する点眼剤を除く。)。
【請求項2】
前記異物感がアレルギー症状としての異物感である、請求項1に記載の異物感緩和用点眼剤。
【請求項3】
(C)清涼化剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の異物感緩和用点眼剤。
【請求項4】
(C)成分として、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール及びハッカ油からなる群から選択される少なくとも1種の清涼化剤を含む、請求項3に記載の異物感緩和用点眼剤。
【請求項5】
(C)清涼化剤の総含有量が、点眼剤の総量を基準として、0.00002?0.3w/v%である、請求項3又は4に記載の異物感緩和用点眼剤。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
1 申立理由の概要
特許異議申立人は、後記2の証拠を提出した上で、以下の申立ての理由を主張している。

(1)特許法第29条第2項(以下「理由1」という。)

本件発明1?5は、本件出願日前に頒布された以下の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?5に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(2)特許法第29条第1項第3号及び第2項(以下「理由2」という。)

本件発明1?5は、本件出願日前に頒布された以下の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。また、本件出願日前に頒布された以下の甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?5に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)特許法第36条第6項第1号(以下「理由3」という。)

本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、特許請求の範囲の記載が、概略下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものでなく、本件特許は同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件特許は、同法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。



本件発明1の課題は、花粉、ハウスダスト、タンパク質および化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物の角膜への異物吸着を抑制をすることで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供することであるが、本件明細書の実施例における官能試験は「眼の異物感を自覚する被験者」に対してのみ実施しており、異物感が「花粉、ハウスダスト、タンパク質および化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感」であることは確認されていないため、本件発明1の課題が解決できるとは認識できない。

2 証拠方法

甲第1号証:特開2011-98960号公報

甲第2号証:堀 美智子監修、OTC薬ガイドブック 選ぶポイント すすめるヒント、株式会社じほう、平成19年9月10日、第144?145頁、第434?439頁

第4 申立理由についての当審の判断
1 理由1について
(1)各甲号証の記載
ア 甲第1号証
甲第1号証には以下の記載がある。

(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される少なくとも1種と、(C)サルファ剤とを含有することを特徴とする、水性組成物。
・・・
【請求項7】
眼科用組成物である、請求項1?6のいずれかに記載の水性組成物。
【請求項8】
点眼剤である、請求項1?7のいずれかに記載の水性組成物。」

(1b)「【0002】
プラノプロフェン及び/又はその塩は、優れた抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を併せ持つプロピオン酸系の非ステロイド系抗炎症剤として知られており、安全性も高いことから、点眼剤や経口剤として広く利用されている。
【0003】
また、ジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールは酸化防止剤として周知であり、食品や医薬品に配合する添加物として広く利用されている。」

(1c)「【0008】
本発明者は、プラノプロフェン及び/又はその塩とジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールとを含有する水性組成物について種々の検討を行っていたところ、各成分をそれぞれ単独で水溶液中に配合した場合には、熱に対する安定性に問題は無いものの、両成分を配合した水性組成物を高温条件下で保存した場合には、当該水性組成物の熱安定性が著しく悪化し、当該水性組成物が黄変してしまうという、全く新しい知見を得た。このように熱安定性が不十分となり、配合成分の不安定化により水性組成物の黄変が起きると、単に外観を損なうだけでなく、当該水性組成物中の各配合成分の含有量低下を招くこととなる。薬効成分として配合されるプラノプロフェンの含有量低下が、その薬効低下に影響することはさることながら、添加物として配合されるジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールの含有量低下もまた、組成物自体の酸化防止能を低下させることにより、他の配合成分の安定性に悪影響を及ぼすこととなり、ひいては、そのような水性組成物を治療等に用いても所期の効果を発揮できないおそれがある。従って、プラノプロフェン及び/又はその塩と、ジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールとを含みながら、両成分を配合した水性組成物の熱安定性が改善されており、製剤的に優れた水性組成物を得るための技術の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、プラノプロフェン及び/又はその塩と、ジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールとを含有する水性組成物に、更にサルファ剤を配合することによって、プラノプロフェン及び/又はその塩とジブチルヒドロキシトルエン及び/又はブチルヒドロキシアニソールとを組み合わせた場合に悪化する熱安定性を著しく改善することができることを見出した。また、本発明者は更に検討を進めた結果、これらの水性組成物に更に、クロルフェニラミン及び/又はその塩を配合することにより、或いはエチレンジアミン酢酸、その誘導体、及び/又はそれらの塩を配合することにより、熱安定性がより格段顕著に高められることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。」

(1d)「【0025】
更に、本発明の水性組成物は、上記(A)及び(B)成分に加えて、サルファ剤(以下、単に(C)成分と表記することもある)を含有する。このようにサルファ剤を含有することによって、上記(A)及び(B)成分を含有する水性組成物に、熱に対する安定性を備えさせることが可能になる。」

(1e)「【0060】
本発明の水性組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。かかる成分は特に制限されず、例えば、一般用医薬品製造(輸入)承認基準2000年版(薬事審査研究会監修)に記載された眼科用薬における有効成分等が例示できる。具体的には、眼科用薬において用いられる成分としては、次のような成分が挙げられる。
抗ヒスタミン剤:例えば、イプロヘプチン、塩酸ジフェンヒドラミン、フマル酸ケトチフェン等。
充血除去剤:例えば、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリン等。
殺菌剤:例えば、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド等。
ビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、酢酸トコフェロール等。
アミノ酸類:例えば、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アミノエチルスルホン酸等。
消炎剤:例えば、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレン、ε-アミノカプロン酸、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、塩化リゾチーム、甘草等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
その他:例えば、クロモグリク酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等。
【0061】
また、本発明の水性組成物には、発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択し、1種又はそれ以上を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2007(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
増粘剤:例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
糖アルコール類:例えば、キシリトール、ソルビトール、マンニトールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリヘキサメチレンビグアニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
pH調節剤:例えば、塩酸、ホウ酸、アミノエチルスルホン酸、イプシロン-アミノカプロン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、硫酸、リン酸、ポリリン酸、プロピオン酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム等。
安定化剤:例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
香料又は清涼化剤:例えば、メントール、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、リモネン、リュウノウ等。これらは、d体、l体又はdl体のいずれでもよく、また精油(ハッカ油、クールミント油、スペアミント油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油等)として配合してもよい。」

(1f)「【0065】
また、本発明の水性組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、例えば、眼科用組成物、鼻腔用組成物、経口用組成物、点耳用組成物、皮下投与用組成物、皮膚外用組成物等の様々な用途で使用することができる。ここで、眼科用組成物には、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等が含まれる。また、鼻腔用組成物には、点鼻剤、鼻洗浄液等が含まれる。経口用組成物には、内服薬(例えば、液剤、シロップ剤、エキス剤等)、口腔咽頭薬、含嗽薬等が含まれる。点耳用組成物には、点耳薬が含まれる。皮下投与用組成物としては、注射剤等が含まれる。
【0066】
上記用途の中でも、眼科用組成物は、経口用組成物等の他の用途の組成物に比べて、配合成分の濃度が非常に低いことが多く、僅かの含有量低下であっても大きな問題となりかねない。とりわけ眼科用組成物の中でも点眼剤は、1回の使用量が極微量であるため含有量低下の影響は大きい。また、洗眼剤やコンタクトレンズケア用剤等は洗面台などの室温下で保管されることが多いのに対し、点眼剤は、持ち歩かれることが多いことから、日中に車のダッシュボードの上に置かれたり、鞄に収納されて屋外で持ち歩かれたりするなどして高温下におかれる場合もあるため、非常に寒暖の差の影響を受け易い。更に、点眼剤は、一般に少量で個別包装されているという点からも、外部からの温度変化の影響を受け易い製剤形態であるといえる。本発明の水性組成物によれば、このように温度変化の影響を受け易い眼科用組成物(特に、点眼剤)についても、熱安定性改善効果を有効に奏することができる。かかる本発明の効果に鑑みれば、本発明の水性組成物の好適な一例として、眼科用組成物が挙げられ、特に好適な例として点眼剤が挙げられる。」

(1g)「【0068】
本発明の水性組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の水性組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。また、本発明の水性組成物は、上記(C)成分に基づいて静菌作用を発揮できるので、ものもらい、結膜炎等の細菌感染に起因する症状の改善剤としても有用である。」

(1h)「【0091】
製剤例
表5に記載の処方で、点眼剤(実施例10-29)が調製される。
【0092】
【表5】



イ 甲第2号証
甲第2号証には以下の記載がある。
(2a)「1(決定注:□の中に数字の1)顧客からの訴え,要望(続き)・・→ 2(決定注:□の中に数字の2)こんな成分・商品を選ぶ
・・・・・・
・目の疲れや充血,目のかすみ
1(決定注:○の中に数字の1)ビタミンB群,調節機能改善成分(・・・)などを含む点眼薬を。
・・・・・・
・目のかゆみ,充血
・・・・・・
2(決定注:○の中に数字の2)炎症がある場合はプラノプロフェン,アズレンスルホン酸ナトリウムなど消炎成分配合の点眼薬。
・・・・・・
・目の充血やかゆみ,目やに
2(決定注:○の中に数字の2)炎症がある場合はプラノプロフェン,アズレンスルホン酸ナトリウムなど配合の点眼薬。
・・・・・・
・屋外での活動(スキー,登山,海水浴など)の後,目が痛む。涙がでる
1(決定注:○の中に数字の1)紫外線による目の炎症の可能性があれば,非ステロイド性の消炎成分(プラノプロフェン)や消炎・収斂作用をもつ成分(硫酸亜鉛水和物,アズレンスルホン酸ナトリウム,グリチルレチン酸など)を配合した点眼薬を。」(第144頁?第145頁)

(2b)「ビタミンB_(6)(ピリドキシン,ピロドキサール,ピリドキサミン),ピリドキシン塩酸塩(塩酸ピリドキシン)(決定注:上付きの○の中に数字の1)
・・・・・・
ビタミンB_(12)(シアノコバラミン)(決定注:上付きの○の中に数字の1)、メコバラミン(決定注:上付きの○の中に数字の2)」(第435頁?第436頁)

(2)甲号証に記載された発明
ア 甲第1号証
甲第1号証には、特許請求の範囲に「(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される少なくとも1種と、(C)サルファ剤とを含有することを特徴とする、水性組成物。」が記載され(摘記(1a))、当該水性組成物は、「本発明の水性組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の水性組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。また、本発明の水性組成物は、上記(C)成分に基づいて静菌作用を発揮できるので、ものもらい、結膜炎等の細菌感染に起因する症状の改善剤としても有用である。」と記載されているから(摘記(1g))、甲第1号証の水性組成物は、炎症性疾患に起因する目の異物感の症状を緩和するために用いられるものといえる。
また、「本発明の水性組成物の好適な一例として、眼科用組成物が挙げられ、特に好適な例として点眼剤が挙げられる。」と記載されている(摘記(1f))。
そうすると、甲第1号証には「炎症性疾患に起因する目の異物感等の症状を緩和するために用いられ、(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される少なくとも1種と、(C)サルファ剤とを含有する点眼剤としての水性組成物。」の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明Aとの対比・判断
(ア)対比・判断
a 対比
甲1発明Aの「(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種」は、本件発明1の「(A)プラノプロフェン又はその塩」に相当し、甲1発明Aの「点眼剤としての水性組成物」は、本願発明1の「点眼剤」に相当する。

以上のことから、本件発明1と甲1発明Aは、「(A)プラノプロフェン又はその塩を含有する点眼剤」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1は、さらに「(B)抗炎症剤及び水溶性ビタミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を含有し、「前記抗炎症剤が、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、硫酸ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み、
前記水溶性ビタミンが、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含」むことを特定しているのに対して、甲1発明Aは、「(B)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される少なくとも1種と、(C)サルファ剤とを含有する」ことを特定している点。

<相違点2>
本件発明1は、「(A)プラノプロフェン又はその塩の含有量1質量部に対して、(B)成分としての抗炎症剤の総含有量が0.5?100質量部であるか、又は、(B)成分としての水溶性ビタミンの総含有量が0.1?4質量部」であることを特定しているのに対して、甲1発明Aには、含有量に関する特定がない点。

<相違点3>
点眼剤の用途について、本件発明1は、「異物感緩和用」であり、「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感であ」るのに対して、甲1発明Aは、「炎症性疾患に起因する目の異物感等の症状を緩和するために用いられる」点。

<相違点4>
点眼剤の適用について、本件発明1は「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態で適用するための」異物感緩和用点眼剤であるのに対して、甲1発明Aは、点眼剤の適用について特定していない点。

<相違点5>
点眼剤に含まれる成分について、本件発明1は、ただし書として「クロモグリク酸又はその塩を含有する点眼剤、トラニラスト又はその塩を含有する点眼剤、ペミロラスト又はその塩を含有する点眼剤、アシタザノラスト又はその塩を含有する点眼剤、及び、オロパタジン又はその塩を含有する点眼剤を除く」と特定しているのに対して、甲1発明Aは、除く成分を特定していない点。

b 判断
以下、相違点1?5について検討する。

(a)相違点1について
甲1発明Aにおける(B)及び(C)成分は、酸化防止剤及び熱安定性を改善するための成分である(摘記(1b)、(1d))。そして本件明細書の【0056】に記載されているように、発明の効果を損なわない範囲であれば、様々な添加剤を適宜選択し、併用することが記載されているから、当該(B)及び(C)成分の存在を否定していない。
加えて、甲第1号証には、水性組成物に対して、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよいことが記載され、ビタミン類として、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシン、消炎剤として、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ε-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリンが眼科用薬において用いられる成分として記載されている(摘記(1e))。
さらに、実施例10?12,14?16,18?23,25?29には、上記のビタミン類と消炎剤を用いた点眼剤が記載されている(摘記(1h))。
ここで、シアノコバラミンと塩酸ピリドキシンは、水溶性であることから、水溶性ビタミンであるといえる。また、消炎剤と抗炎症剤は、炎症を抑えるという作用効果が共通することから、両者は表現上の差異であるといえる。
そうしてみると、甲1発明Aにおいて、さらに「抗炎症剤及び水溶性ビタミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物」を含有させることは、当業者であれば容易であるといえる。
その際、各成分の具体的な成分として一般記載され、かつ実施例においても用いられている、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ε-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリンを抗炎症剤として、また、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシンを水溶性ビタミンとして用いることは、当業者であれば容易であるといえる。

(b)相違点2について
甲第1号証の明細書における実施例10?12,14?16,18?23,25?29には、点眼剤の処方として、プラノプロフェン含有量1質量部に対して、上記抗炎症剤や水溶性ビタミンを本件発明で特定する総含有量の範囲内で調製したことが具体的に記載されている(摘記(1h))。
そうしてみると、甲第1号証には、点眼剤において、甲第1号証に記載された種々の薬理活性成分等を記載された量用いる動機付けがあるといえるから、甲1発明Aにおいて、プラノプロフェン含有量1質量部に対して、抗炎症剤や水溶性ビタミンの各成分を本件発明で特定する総含有量の範囲とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(c)相違点3について
甲第1号証には、「本発明の水性組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の水性組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。」と記載されている(摘記(1g))。
しかしながら、甲第1号証には、花粉、ハウスダスト、タンパク質、化粧料等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる異物感については記載されていない。
甲1発明Aにおける「炎症性疾患に起因する目の異物感等」とは、上記記載からすると、通常の炎症であって、物理的・化学的な刺激に対する生体の防衛反応を意味すると解することができ、アレルゲンに対する免疫系の過剰反応としてのアレルギー症状等に起因する過敏症であるアレルギーによる炎症を意味することまでは記載されているとはいえない。
そうしてみると、甲第1号証に接した当業者が、通常の炎症性疾患に起因する目の異物感等に用いられている点眼剤を、アレルギー症状としての異物感の緩和用として適用する動機付けがあるとはいえない。またこれが本件出願時当時の技術常識であるという証拠も示されていない。
また、甲第2号証には、目の諸症状に対してどの成分が有効であるかが記載され、特定の成分が通常の炎症の諸症状の緩和に有効であることが記載されているにとどまり、この記載をみても相違点3が容易になし得ることであるとはいえない。

(d)相違点4について
甲第1号証には、水性組成物は、眼科用組成物として使用することができることが記載され、「眼科用組成物には、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等が含まれる。」と記載されているが(摘記(1g))、点眼剤の具体的な適用については記載されていない。
点眼剤には、コンタクトレンズを装用したまま使用できるものと、コンタクトレンズを外してから使用するものが知られている。そして、コンタクトレンズの材質によっては、点眼剤の成分を吸着する場合があり、シリコーンハイドロゲルレンズ等のソフトコンタクトレンズは、吸着しやすく、レンズ物性にも影響を及ぼす場合があることが知られている(必要であれば、社団法人 日本眼科医会監修、点眼剤の適正使用ハンドブック-Q&A-、平成23年9月、第15頁参照)。
そうしてみると、当該技術分野において、点眼剤の成分に応じて、コンタクトレンズを装用したまま適用可能か否かは、当業者であれば通常検討することといえるから、甲1発明Aの点眼剤の適用として、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態を選択することは、当業者であれば容易であるといえる。

(e)相違点5について
甲第1号証には、その他の成分として、クロモグリク酸ナトリウムが用いられることの記載はあるものの(摘記(1e))、実施例における点眼剤には、クロモグリク酸ナトリウムは具体的に用いられていない。そして、甲第1号証には、トラニラスト、ペミロラスト、アシタザノラスト、オロパタジンについては何ら記載されていない。
また、これらの成分は本件明細書【0022】に記載されているように、抗アレルギー剤として公知のものであり、上記相違点3との関係からいえば、むしろ当業者であればアレルギー症状を緩和するために添加することを考慮する成分であるにもかかわらず、積極的に除外しているのであるから、この点においても当業者であれば容易になし得ることであるとはいえない。

c 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比した結果、上記aで示した相違点1?3があるとした上で、相違点3について以下のように主張する。

(a)相違点3について
特許異議申立人は、炎症が、アレルギー症状の代表的なものであることは周知であって、アレルギー症状としての異物感とは、アレルギー反応により生じた炎症症状としての異物感と何ら区別することができないことや、アレルギー反応によらずとも花粉等が角膜に付着又は吸着することによって、目の細胞にダメージを与えて炎症を引き起こす場合もあり、この場合、炎症により目の異物感が引き起こされることから、両者は用途として区別ができない旨を主張する(特許異議申立書第13頁第8行?第18行)。

(b)効果について
特許異議申立人は、甲第2号証に記載されるように、炎症がある場合の諸症状の緩和のために、プラノプロフェンが用いられる他、目の疲れや充血、目のかすみに対してビタミンB群を含む点眼薬が用いられることや、ビタミンB6の効能・効果として、炎症症状の緩和が知られていることを考慮すると、プラノプロフェンに、シアノコバラミン、塩酸ピリドキシンのようなビタミン類や、グリチルリチン酸二カリウム、アラントイン、ε-アミノカプロン酸、硫酸ベルベリンのような消炎剤を組み合わせれば、さらに炎症の諸症状が緩和されるであろうことは、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものではない旨を主張する(特許異議申立書第14頁第2行?第11行)。

d 特許異議申立人の主張の検討
(a)相違点3について
炎症がアレルギー症状の代表的なものであることは周知であると主張しているものの、これを裏付ける証拠は提出されておらず、アレルギー症状と炎症反応による異物感とが同じであるとする証拠も何も示されていない。そして、上記b(c)で述べたように、物理的・化学的な刺激に対する生体の防衛反応である炎症性疾患と、アレルゲンに対する免疫系の過剰反応としてのアレルギー症状等に起因する過敏症であるアレルギーによる炎症は、その原因と発症機構が異なることから、それぞれの異物感が区別できないとはいえない。本件発明1では、「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感」と特定されており、当該「異物感」は「目の乾燥、コンタクトレンズの不適切な使用、花粉、ハウスダスト等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした自覚症状を意味する。」と記載されていることから(【0015】)、目の細胞へのダメージによる炎症に起因する異物感とは明確に区別されており、特許異議申立人のこの主張は、採用できない。

(b)効果について
甲第2号証には、炎症がある場合の諸症状の緩和のために、プラノプロフェンが用いられることや、ビタミンB_(6)の効能・効果として、口角炎、口唇炎、口内炎、舌炎、湿疹、皮膚炎等の諸症状の緩和が記載されているものの、角膜上皮細胞への異物吸着が抑制されることや、眼の異物感改善効果を有することまでは記載されていない。
そして、本件発明の実施例の試験例1においては、本件発明の眼科組成物を用いることにより角膜上皮細胞へ異物(FITC標識アルブミン)吸着が抑制されることが記載されている(【0064】?【0065】)。これは本件発明1でいう「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着」を示す効果であるといえる。そして、試験例3及び5においては、眼の異物感を自覚する被験者に対し官能試験を実施して、本件発明の点眼剤が異物感改善効果を示すことが記載されている(【0068】?【0070】、【0073】?【0075】」)。
そうすると、本件発明の効果は、甲第1号証及び甲第2号証からは予測できない格別顕著な効果を奏しているといえ、特許異議申立人のこの主張は採用できない。

e まとめ
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を直接又は間接に引用した発明であり、さらに本件発明2は、異物感がアレルギー症状であること、本件発明3?5は、(C)成分の清涼化剤、及びその種類並びにその含有量を特定するものである。
上記(3)で検討したとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明2?5についても本件発明1と同様に甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1?5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

2 理由2について
(1)甲第1号証の記載
上記「第4 1(1)ア」に記載したとおりである。

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、特許請求の範囲に「(A)プラノプロフェン及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される少なくとも1種と、(C)サルファ剤とを含有することを特徴とする、水性組成物。」が記載され(摘記(1a))、当該水性組成物は、「本発明の水性組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の水性組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。また、本発明の水性組成物は、上記(C)成分に基づいて静菌作用を発揮できるので、ものもらい、結膜炎等の細菌感染に起因する症状の改善剤としても有用である。」と記載されているから(摘記(1g))、甲第1号証の水性組成物は、炎症性疾患に起因する目の異物感の症状を緩和するために用いられるものといえる。
また、「本発明の水性組成物の好適な一例として、眼科用組成物が挙げられ、特に好適な例として点眼剤が挙げられる。」と記載されている(摘記(1g))。
そして、実施例11には、以下の成分を含有する点眼剤が記載されている。
「プラノプロフェン 0.1w/v%
スルファメトキサゾール 1.0w/v%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.001w/v%
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05w/v%
グリチルリチン酸二カリウム 0.1w/v%
マレイン酸クロルフェニラミン 0.01w/v%
塩酸ピリドキシン 0.1w/v%
アミノエチルスルホン酸 0.05w/v%
アスパラギン酸カリウム 1w/v%
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.2w/v%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906
0.1w/v%
ホウ酸 0.3w/v%
ホウ砂 0.3w/v%
l-メントール 0.004w/v%
ベルガモット油 0.005w/v%
トロメタモール 0.5w/v%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
0.1w/v%
塩化ベンゼルコニウム 0.005w/v%
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物
0.001w/v%
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量」
そうすると、「炎症性疾患に起因する目の異物感等の症状を緩和するために用いられる点眼剤であって、
プラノプロフェン 0.1w/v%
スルファメトキサゾール 1.0w/v%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.001w/v%
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05w/v%
グリチルリチン酸二カリウム 0.1w/v%
マレイン酸クロルフェニラミン 0.01w/v%
塩酸ピリドキシン 0.1w/v%
アミノエチルスルホン酸 0.05w/v%
アスパラギン酸カリウム 1w/v%
コンドロイチン硫酸ナトリウム 0.2w/v%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906
0.1w/v%
ホウ酸 0.3w/v%
ホウ砂 0.3w/v%
l-メントール 0.004w/v%
ベルガモット油 0.005w/v%
トロメタモール 0.5w/v%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60
0.1w/v%
塩化ベンゼルコニウム 0.005w/v%
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物
0.001w/v%
塩酸 適量
水酸化ナトリウム 適量
精製水 適量
を含む点眼剤。」の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。

(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明Bとの対比・判断
(ア)対比・判断
a 対比
甲1発明Bの「プラノプロフェン」は、本件発明1の「(A)プラノプロフェン又はその塩」に相当し、甲1発明Bの「グリチルリチン酸二カリウム」は、本件発明1の「抗炎症剤」及び「前記抗炎症剤が、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、硫酸ベルベリン、グリチルリチン酸二カリウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み」に、甲1発明Bの「塩酸ピリドキシン」は、本件発明1の「水溶性ビタミン」及び「前記水溶性ビタミンが、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含み」に、相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明Bは、「プラノプロフェンと、抗炎症剤及び水溶性ビタミンを含有する点眼剤であって、
前記抗炎症剤が、グリチルリチン酸二カリウムを含み、
前記水溶性ビタミンが、塩酸ピリドキシンを含む点眼剤」である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点6>
点眼剤の用途について、本件発明1は、「異物感緩和用」であり、「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感であ」るのに対して、甲1発明Bは、「炎症性疾患に起因する目の異物感等の症状を緩和するために用いられる」点。

<相違点7>
本件発明1は、「(A)プラノプロフェン又はその塩の含有量1質量部に対して、(B)成分としての抗炎症剤の総含有量が0.5?100質量部であるか、又は、(B)成分としての水溶性ビタミンの総含有量が0.1?4質量部」であることを特定しているのに対して、甲1発明Bは、「プラノプロフェン 0.1w/v%」、抗炎症剤である「グリチルリチン酸二カリウム 0.1w/v%」、及び水溶性ビタミンである「塩酸ピリドキシン 0.1w/v%」である点。

<相違点8>
点眼剤の適用について、本件発明1は、「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態で適用するための」異物感緩和用点眼剤であるのに対して、甲1発明Bは、点眼剤の適用については特定していない点。

<相違点9>
点眼剤に含まれる成分について、本件発明1は、ただし書として「クロモグリク酸又はその塩を含有する点眼剤、トラニラスト又はその塩を含有する点眼剤、ペミロラスト又はその塩を含有する点眼剤、アシタザノラスト又はその塩を含有する点眼剤、及び、オロパタジン又はその塩を含有する点眼剤を除く」と特定しているのに対して、甲1発明Bは、「スルファメトキサゾール、ジブチルヒドロキシトルエン、塩酸テトラヒドロゾリン、グリチルリチン酸二カリウム、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ピリドキシン、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸カリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ホウ酸、ホウ砂、l-メントール、ベルガモット油、トロメタモール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、塩化ベンゼルコニウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物、塩酸、水酸化ナトリウム、精製水」を含み、かつ、除く成分を特定していない点。

b 判断
以下、相違点6?9について検討する。

(a)相違点6について
まず、上記相違点6が実質的な相違点であるか否かを検討する。
甲第1号証には、「本発明の水性組成物は、上記(A)成分に基づいて抗炎症作用等を発揮できるので、炎症性疾患の治療乃至予防に有効であり、炎症性疾患の改善剤としても有用である。ここで、対象となる炎症性疾患の一例として、炎症性眼疾患(例えば、眼瞼炎、結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症、涙腺炎、涙嚢炎、涙小管炎等)が挙げられる。従って、本発明の水性組成物は、これらの炎症性疾患に起因する種々の症状(例えば、目の異物感、なみだ目、充血、目のかゆみ、目のかすみ等)を緩和するために用いられ得る。」と記載されている(摘記(1g))
しかしながら、甲第1号証には、花粉、ハウスダスト、タンパク質、化粧料等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる異物感については記載されていない。
甲1発明Bにおける「炎症性疾患に起因する目の異物感等」とは、上記記載からすると、通常の炎症であって、物理的・化学的な刺激に対する生体の防衛反応を意味すると解することができ、アレルゲンに対する免疫系の過剰反応としてのアレルギー症状等に起因する過敏症であるアレルギーによる炎症を意味することまでは記載されているとはいえない。
そして、物理的・化学的な刺激に対する生体の防衛反応である炎症性疾患と、アレルゲンに対する免疫系の過剰反応としてのアレルギー症状等に起因する過敏症であるアレルギーによる炎症は、その原因や発症機構が異なるものといえるから、上記相違点6は実質的な相違点である。
よって、本件発明1と甲1発明Bが同一の発明であるとはいえない。

次に相違点1が容易であるか否かを検討する。
上記第4 1(3)ア(ア)b(c)でも述べたとおり、甲第1号証に接した当業者が、通常の炎症性疾患に起因する目の異物感等に用いられている点眼剤を、アレルギー症状としての異物感の緩和用として適用する動機付けがあるとはいえない。またこれが本件出願時当時の技術常識であるという証拠も示されていない。
また、甲第2号証には、目の諸症状に対してどの成分が有効であるかが記載され、特定の成分が通常の炎症の諸症状の緩和に有効であることが記載されているにとどまり、この記載をみても相違点6が容易になし得ることであるとはいえない。

(b)相違点7について
まず、上記相違点7が実質的な相違点であるか否かを検討する。
甲1発明Bの「プラノプロフェン 0.1w/v%」、抗炎症剤である「グリチルリチン酸二カリウム 0.1w/v%」、及び水溶性ビタミンである「塩酸ピリドキシン 0.1w/v%」は、プラノプロフェンの含有量を1質量部として、抗炎症剤と水溶性ビタミンの総含有量を計算すると、プラノプロフェン含有量1質量部に対して、抗炎症剤の総含有量が1質量部であり、水溶性ビタミンの総含有量が1質量部であるといえるから、上記相違点7は実質的な相違点であるとはいえない。

(c)相違点8について
まず、上記相違点8が実質的な相違点であるか否かを検討する。
甲第1号証には、「眼科用組成物には、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)等が含まれる。」と記載されている(摘記(1f))。
しかしながら、点眼剤について、「シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態で適用するための」とまでは記載されておらず、上記相違点8は実質的な相違点である。
よって、本件発明1と甲1発明Bが同一の発明であるとはいえない。

次に相違点8が容易であるか否かを検討する。
上記第4 1(3)ア(ア)b(d)でも述べたとおり、点眼剤には、コンタクトレンズを装用したまま使用できるものと、コンタクトレンズを外してから使用するものが知られている。そして、コンタクトレンズの材質によっては、点眼剤の成分を吸着する場合があり、シリコーンハイドロゲルレンズ等のソフトコンタクトレンズは、吸着しやすく、レンズ物性にも影響を及ぼす場合があることが知られている(必要であれば、社団法人 日本眼科医会監修、点眼剤の適正使用ハンドブック-Q&A-、平成23年9月、第15頁参照)。
そうしてみると、当該技術分野において、点眼剤の成分に応じて、コンタクトレンズを装用したまま適用可能か否かは、当業者であれば通常検討することといえるから、甲1発明Bの点眼剤の適用として、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズを装用していない状態を選択することは、当業者であれば容易であるといえる。

(d)相違点9について
まず、上記相違点9が実質的な相違点であるか否かを検討する。
甲第1号証には、その他の成分として、クロモグリク酸ナトリウムが用いられることの記載はあるものの(摘記(1e))、実施例における点眼剤には、クロモグリク酸ナトリウムは具体的に用いられていない。そして、甲第1号証には、トラニラスト、ペミロラスト、アシタザノラスト、オロパタジンについては何ら記載されていない。
しかしながら、点眼剤について、「クロモグリク酸又はその塩を含有する点眼剤、トラニラスト又はその塩を含有する点眼剤、ペミロラスト又はその塩を含有する点眼剤、アシタザノラスト又はその塩を含有する点眼剤、及び、オロパタジン又はその塩を含有する点眼剤を除く」とまでは記載されておらず、上記相違点9は実質的な相違点である。
よって、本件発明1と甲1発明Bが同一の発明であるとはいえない。

次に相違点9が容易であるか否かを検討する。
上記4 1(3)ア(ア)b(e)でも述べたとおり、これらの成分は本件明細書【0022】に記載されているように、抗アレルギー剤として公知のものであり、上記相違点3との関係からいえば、むしろ当業者であればアレルギー症状を緩和するために添加することを考慮する成分であるにもかかわらず、積極的に除外しているのであるから、この点においても当業者であれば容易になし得ることであるとはいえない。

c 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、相違点6について、上記第4 1(3)b(c)で検討した相違点3と同じであり、実質的な相違点ではないことや、仮に実質的な相違点であったとしても、甲1発明Bは、目の異物感、目のかゆみ等の改善に用い得るものであるから、原因が何であれ、目のかゆみや異物感(ゴロゴロした感じ)を緩和するために用い得るものであり、花粉が原因による目のかゆみや異物感(ゴロゴロした感じ)を緩和するために用いることも、容易になし得ることであり、また、本件発明の明細書で述べられている効果は、組成の違いによる効果であって、異物感の原因が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種であることに基づく有利な効果も見出せない旨を主張する(特許異議申立書第17頁第23行?第18頁第9行)。

d 特許異議申立人の主張の検討
実質的な相違点ではない場合や、仮に実質的な相違点であった場合についての主張に対する検討は、上記(ア)b(a)及び上記第4 1(3)ア(ア)d(b)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。

e まとめ
よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。また、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を直接又は間接に引用した発明であり、さらに本件発明2は、異物感がアレルギー症状であること、本件発明3?5は、(C)成分の清涼化剤、及びその種類並びにその含有量を特定するものである。
上記(3)で検討したとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、本件発明2?5についても本件発明1と同様に甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1?5は甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとはいえない。また、本件発明1?5は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえない。

3 理由3について
(1)サポート要件の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

以下、この観点に立って検討する。

(2)本件発明の課題

本件発明の課題は、発明の詳細な説明の段落【0010】及び明細書全体の記載からみて、角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供することであると認める。

(3)特許請求の範囲の記載された発明

特許請求の範囲には、上記「第2」で示したように本件発明1?5が記載がされている。

(4)発明の詳細な説明の記載

発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。

段落【0006】には、「プラノプロフェン及び/又はその塩は、優れた抗炎症作用、鎮痛作用及び解熱作用を併せ持つプロピオン酸系の非ステロイド系抗炎症剤として知られており、安全性も高いことから、点眼剤又は経口剤として広く利用されている。」と記載されている。

段落【0007】には、「しかしながら、プラノプロフェンと、抗アレルギー剤、抗炎症剤又は水溶性ビタミンとを併用した際の眼の異物感への影響については、全く予想し得ないのが現状である。」と記載されている。

段落【0011】には、「本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、(A)プラノプロフェン又はその塩(以下、「(A)成分」ともいう。)と、(B)抗アレルギー剤、抗炎症剤及び水溶性ビタミンからなる群から選択される少なくとも1種(以下、「(B)成分」ともいう。)とを組み合わせることで、眼の異物感を緩和させることを見出した。また、本発明者らは、(C)清涼化剤を組み合わせることにより、顕著に異物感を緩和させることを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者らは本発明を完成するに至った。」と記載されている。

段落【0013】には、「本発明に係る異物感緩和点眼剤によれば、(A)プラノプロフェン又はその塩と、(B)抗アレルギー剤、抗炎症剤及び水溶性ビタミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物とを組み合わせることによって、角膜への異物吸着を抑制することで、アレルギー等を原因として生じる眼の異物感を緩和することが可能である。さらに、上記(A)及び(B)成分の組み合わせに、(C)清涼化剤をさらに含むことによって、角膜への異物吸着をより抑制することで、アレルギー等を原因として生じる眼の異物感をより緩和することが可能である。」と記載されている。

段落【0015】には、「本明細書において「異物感」とは、目の乾燥、コンタクトレンズの不適切な使用、花粉、ハウスダスト等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした自覚症状を意味する。したがって、本発明者らは、異物感を緩和させるために、異物の付着を抑制すること、及び自覚症状自体を改善することに着目した。特に、異物の付着を抑制することは、目の異物感に対して予防的効果を示す。」と記載されている。

段落【0061】には、「本実施形態に係る点眼剤は、異物感を緩和させるために、自覚症状そのものを改善するだけでなく、異物の付着を抑制することもできる。異物感としては、目の乾燥、コンタクトレンズの不適切な使用、花粉、ハウスダスト等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした自覚症状を意味する。異物感は炎症を伴うことにより、さらに増強される。本実施形態に係る点眼剤は、異物感を伴う様々な症状に対する予防又は治療を目的として適用することができ、異物の付着を抑制できるという観点から、異物の付着によるアレルギー性結膜炎等によって引き起こされる異物感に対して好適であり、花粉症又はハウスダストによるアレルギーに伴う異物感に対して特に好適である。」と記載されている。

段落【0064】には、実施例として、「試験例1.角膜上皮細胞への異物吸着量の測定(1)
(1)試験方法
下記表1に従って各眼科組成物を調製し、角膜上皮細胞への異物吸着に及ぼす影響について評価した。なお、表1中、含有量を示す「%」は、薬剤全体に対する「w/v%」を意味する。
ヒト角膜上皮細胞株HCE-T(理化学研究所バイオリソースセンター、No.RCB2280)を96ウェルマイクロプレート(コーニング社製)に1.0×10^(5)細胞/ウェルの割合となるように、各ウェル培養培地で200μLずつ播種を行い、37℃、5%CO2条件下で24時間培養した。培養後、培養培地を吸引除去し、FITCで蛍光標識したアルブミン0.05%をそれぞれ含有した各眼科組成物100μLを入れ、室温下で10分間静置した。処理後、ウェル中の液を吸引除去し、200μLのリン酸緩衝液を入れ、ウェル中の液を吸引除去して洗浄した後、100μLのリン酸緩衝液を入れ、蛍光プレートリーダー(Fluoroskan Ascent CF、MTX Labsystems社製)を用いて励起波長485nm/発光波長527nmにおける蛍光値を測定した。得られた蛍光値を、異物量と蛍光値の検量線に基づいて、異物(アルブミン)量に換算した。得られた異物量から、式(1)に基づいて、異物吸着抑制率(%)を算出した。
異物吸着抑制率(%)=[1-(各比較例又は実施例の異物量)/(比較例1の異物量)]×100 ・・・式(1)
(2)試験結果
結果を表1に示す。ホウ酸、ホウ砂のみの緩衝液からなる液剤(比較例1)に対し、(A)プラノプロフェンと各種(B)成分とを含有させた実施例1?6を用いることによって、角膜上皮細胞への異物(FITC標識アルブミン)の吸着が、顕著に抑制されることが確認された。一方、(A)プラノプロフェンのみを含有する液剤を用いた場合(比較例2)、異物の吸着は十分に抑制されなかった。」と記載されている。

段落【0068】には、「試験例3.官能試験:異物感改善効果(1)
(1)試験方法
下記表3に従って常法に準じて各点眼剤を調製し、ポリエチレンテレフタラート製容器に充てんした。眼の異物感を自覚する被験者3名に対して、(A)プラノプロフェンを含有する点眼剤(比較例3)を左眼に、(A)プラノプロフェン及び(B)グリチルリチン酸二カリウムを含有する点眼剤(実施例11)を右眼にそれぞれ単回投与、又は(A)プラノプロフェンを含有する点眼剤(比較例3)を左眼に、(A)プラノプロフェン、(B)塩酸ピリドキシン及び(C)l-メントールを含有する点眼剤(実施例12)を右眼にそれぞれ単回投与した後に、点眼後の眼の異物感の改善程度の評価を行った。眼の異物感の程度は、Visual Analog Scale法(VAS法)で評価を行い、症状が最も強い状態を100%として各群の症状の程度を表記した。なお、表3中、含有量を示す「%」は、薬剤全体に対する「w/v%」を意味する。」と記載されている。

段落【0069】には、「(2)試験結果
結果を表3に示す。(A)プラノプロフェン及び(B)グリチルリチン酸二カリウムを含有する実施例11を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。また、(C)l-メントールを更に含有する実施例12を用いた場合、より顕著に異物感改善効果を示すことが明らかとなった。」と記載されている。

段落【0073】には、「試験例5.官能試験:異物感改善効果(3)
(1)試験方法
下記表5に従って常法に準じて各点眼剤を調製し、ポリエチレンテレフタラート製容器に充てんした。眼の異物感を自覚する被験者4名に対して、(A)プラノプロフェンを含有する点眼剤(比較例5)を左眼に、(A)プラノプロフェン及び(B)シアノコバラミンを含有する点眼剤(実施例15)を右眼にそれぞれ単回投与した後に、点眼後の眼の異物感の改善程度の評価を行った。眼の異物感の程度は、Visual Analog Scale法(VAS法)で評価を行い、症状が最も強い状態を100%として各群の症状の程度を表記した。なお、表5中、含量を示す「%」は、薬剤全体に対する「w/v%」を意味する。」と記載されている。

段落【0074】には、「(2)試験結果
結果を表5に示す。(A)プラノプロフェン及び(B)シアノコバラミンを含有する実施例15を用いた場合、顕著な異物感改善効果を示すことが確認された。」と記載されている。

(5)判断
ア 判断
本件発明の詳細な説明の実施例の試験例1においては、本件発明の眼科組成物を用いることにより角膜上皮細胞へ異物(FITC標識アルブミン)吸着が抑制されることが記載されている(【0064】?【0065】)。これは本件発明1でいう「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着」を示す効果であるといえる。そして、試験例3及び5においては、眼の異物感を自覚する被験者に対し官能試験を実施して、本件発明の点眼剤が異物感改善効果を示すことが記載されている(【0068】?【0070】、【0073】?【0075】」)。
そして、【0015】には、「本明細書において「異物感」とは、目の乾燥、コンタクトレンズの不適切な使用、花粉、ハウスダスト等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした自覚症状を意味する。したがって、本発明者らは、異物感を緩和させるために、異物の付着を抑制すること、及び自覚症状自体を改善することに着目した。特に、異物の付着を抑制することは、目の異物感に対して予防的効果を示す。」と記載されている。
また、【0061】には、「本実施形態に係る点眼剤は、異物感を緩和させるために、自覚症状そのものを改善するだけでなく、異物の付着を抑制することもできる。異物感としては、目の乾燥、コンタクトレンズの不適切な使用、花粉、ハウスダスト等の異物の付着によるアレルギー性結膜炎などによって引き起こされる、コロコロ又はチクチクとした自覚症状を意味する。異物感は炎症を伴うことにより、さらに増強される。本実施形態に係る点眼剤は、異物感を伴う様々な症状に対する予防又は治療を目的として適用することができ、異物の付着を抑制できるという観点から、異物の付着によるアレルギー性結膜炎等によって引き起こされる異物感に対して好適であり、花粉症又はハウスダストによるアレルギーに伴う異物感に対して特に好適である。」と記載されている。
このように、本件明細書には、一般記載として、「異物感緩和用」であり、「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感であ」ることが記載され、実施例として、本件発明の眼科組成物を用いることにより角膜上皮細胞へ異物(FITC標識アルブミン)吸着が抑制され、眼の異物感を自覚する被験者に対し官能試験を実施して、本件発明の点眼剤が異物感改善効果を示すことが記載されているから、発明の詳細な説明には、本件発明が角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供することが記載されているのであるから、本件発明1?5の課題を解決できると認識できないとはいえない。

イ 小括
よって、本件発明1?5が発明の詳細な説明に記載された発明ではないとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供できたことが、本件明細書の記載から当業者が理解できることが必要であるとし、本件明細書においては、異物感改善効果(1)?(3)の3つの官能試験が行われているが、いずれも、被験者は「眼の異物感を自覚する被験者」であって、被験者の異物感が「花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感」であることは確認されていない。つまり、これらの官能試験結果は、単に目の異物感の緩和を見ているにすぎないのであり、本件発明の効果をならない。このように、上記官能試験における「目の異物感を自覚する被験者」が「花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感」を自覚する者を意味するとは到底言えないのであるから、本件明細書には、角膜上皮細胞へのアルブミンの吸着が、(A)成分も(B)成分も含有しない組成物に対して、どれだけ抑制されたか、という試験結果があるにすぎないのであり、「花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料」の吸着が抑制されているかどうかは不明である。また、この実験によるアルブミンの吸着抑制率が、「花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着することによる異物感」の緩和に相関しているかも不明であり、本件明細書の記載から、「角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供する」という本件発明の課題が解決できるとは認識できないと主張している(特許異議申立書第19頁第17行?第15行)。

(イ)主張の検討
被験者の異物感について、本件発明の詳細な説明の実施例の試験例1においては、本件発明の眼科組成物を用いることにより角膜上皮細胞へ異物(FITC標識アルブミン)吸着が抑制されることが記載されている(【0064】?【0065】)。これは本件発明1でいう「前記異物感が花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物が角膜に付着又は吸着」を示す効果であるといえる。そして、試験例3及び5においては、眼の異物感を自覚する被験者に対し官能試験を実施して、本件発明の点眼剤が異物感改善効果を示すことが記載されていることから(【0068】?【0070】、【0073】?【0075】」)、眼の異物感が緩和されることについては確認されているといえる。
すなわち、本件発明の課題の「角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供すること」は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求人が課題であると主張する「花粉、ハウスダスト、タンパク質及び化粧料からなる群から選択される少なくとも1種の異物角膜への異物吸着を抑制することで、眼の異物感を緩和することが可能な点眼剤を提供できた」ことは、発明の詳細な説明に記載された課題とは異なる課題であるといえ、その記載から離れて(解決すべき水準を上げて)課題を再設定するものであるといえ妥当であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(6)まとめ
以上のとおり、本件発明1?5は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、第36条第6項第1号に適合するものであり、特許法第36条第6項の規定を満たしていないとはいえない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-01-25 
出願番号 特願2013-207293(P2013-207293)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 佐藤 健史
菅原 洋平
登録日 2018-04-06 
登録番号 特許第6315755号(P6315755)
権利者 ロート製薬株式会社
発明の名称 異物感緩和点眼剤  
代理人 坂西 俊明  
代理人 阿部 寛  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ