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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1348752
異議申立番号 異議2018-700979  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-12-04 
確定日 2019-02-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6340395号発明「泡状水性化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6340395号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6340395号の請求項1?4に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成28年10月27日に出願されたものであって、平成30年5月18日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月6日に特許掲載公報が発行され、その後、平成30年12月4日に特許異議申立人 田中 和幸(以下、「申立人」ともいう。)から特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明
特許第6340395号の請求項1?4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりものである(以下、特許第6340395号の請求項1?4に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等という。)。

「【請求項1】
泡状に吐出して使用するための水性化粧料であって、
(A)0.005?1.5質量%のアニオン性界面活性剤、
(B)0.01?0.3質量%の両性界面活性剤、及び、
(C)水溶性高分子を含み、
前記アニオン性界面活性剤が、ココイルグルタミン酸カリウム、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルサルコシネート塩、N-ココイルタウリンナトリウム、N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリントリエタノールアミン、N-パーム油脂肪酸-N-エチルタウリントリエタノールアミン、N-ココイルタウリンマグネシウム、N-ココイル-N-メチルタウリンマグネシウム、N-ラウロイル-N-タウリンマグネシウム、N-ラウロイル-N-メチルタウリンマグネシウム、及びN-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリンマグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上であり、
前記両性界面活性剤が、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインからなる群から選択される1種または2種以上であり、
前記水溶性高分子が、平均分子量10000?20000のポリアルキレングリコール、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする水性化粧料。
【請求項2】
ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、及びトレハロースからなる群から選択される糖類を更に含有する、請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
10質量%以下の油分を更に含む、請求項1又は2に記載の水性化粧料。
【請求項4】
1質量%以下の非イオン性界面活性剤をさらに含む、請求項3に記載の水性化粧料。」

第3 申立理由の概要及び提出した証拠
1 申立理由の概要
(1)申立理由1(進歩性欠如)
本件特許発明1?4は、甲第1号証?甲第8号証及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明であるから、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(明確性違反)
本件特許の請求項1に記載の「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」に包含される化粧料の範囲が不明確であるから、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであり、同法第113条第4号に該当する。

(3)申立理由3(サポート要件違反)
本件特許発明1?4は、(C)成分の水溶性高分子の濃度範囲が規定されていないから、発明の解決すべき課題を解決できない発明を包含している。また、本件特許の請求項1では、水性化粧料が数種のアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を特定濃度で含むこと及び特定の水溶性高分子を任意の濃度で含むことのみ規定するが、わずか12種の処方の類似する実施例の開示のみでは、本件特許発明1に包含される水性化粧料の全てが本件特許発明の課題を解決できるとは理解できない。
したがって、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであり、同法第113条第4号に該当する。

2 証拠方法
(1)甲第1号証:特開2011-079765号公報
(2)甲第2号証:特開平5-132700号公報
(3)甲第3号証:特開2002-105493号公報
(4)甲第4号証:特開2014-005240号公報
(5)甲第5号証:特開2009-249343号公報
(6)甲第6号証:特開2015-113311号公報
(7)甲第7号証:特開2005-035947号公報
(8)甲第8号証:特開2013-147434号公報
(以下、「甲第1号証」?「甲第8号証」をそれぞれ「甲1」?「甲8」という。)

第4 甲1?甲8に記載された事項
1 甲1
(1)記載事項1-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
(A)高級脂肪酸塩と、(B)N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤と、(C)ベタイン系界面活性剤と、(D)保湿剤を含有する、液体洗浄料。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄剤を、泡吐出機構を備えた容器に充填してなる液体洗浄料製品。」

(2)記載事項1-2(【0005】)
「しかしながら、高級脂肪酸塩を含有する液体洗浄料は、洗いあがりのさっぱり感は良好で有るが、結晶が析出して目詰まりしやすい、泡にコシ、ボリュームがなく、均一な泡が得られない、等の問題があった。」

(3)記載事項1-3(【0008】)
「本発明の液体洗浄料及び液体洗浄料製品は、洗い流し後がさっぱりしておりかつ、泡質が均一で、きめが細かく、コクの有る使用感であり、泡持ちが良好で有るという優れた使用感を発揮する。」

(4)記載事項1-4(【0011】)
「本発明で用いる高級脂肪酸塩を構成する高級脂肪酸としては、飽和又は不飽和のいずれであってもよく、炭素数8?24、特に10?22のものが好ましい。好ましいものの具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシデセン酸、ヤシ油脂肪酸、還元ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、還元牛脂脂肪酸、パーム核脂肪酸などが上げられる。本発明においては、高級脂肪酸塩の析出防止の観点からラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの常温で固体の脂肪酸と、常温で液体の脂肪酸、例えばオレイン酸、イソステアリン酸などを併用して用いることが好ましい。これらの高級脂肪酸と塩を形成するアルカリ剤としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2-アミノ-2-メチルプロパノール、2-アミノ-2-メチルプロパンジオールなどのアルカノールアミン塩、リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。これらのうち、特にカリウム、アルギニンが好ましい。」

(5)記載事項1-5(【0012】)
「また、これらの高級脂肪酸塩は、必ずしも脂肪酸塩として洗浄料に配合する必要はなく、上記高級脂肪酸と塩基とをそれぞれ別個に添加し、組成物中で脂肪酸塩を形成せしめてもよい。」

(6)記載事項1-6(【0013】)
「これらの高級脂肪酸塩は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、液体洗浄料全量に対し3?20質量%、好ましくは3?15質量%配合される。3質量%未満では充分な洗浄力が得られず、20質量%を超えると結晶の析出などの問題を生じるので好ましくない。」

(7)記載事項1-7(【0014】)
「本発明で用いるN-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤としては、好ましくは
RCONH(CH_(2))_(n)COOM
(式中Rは炭素数8?24の直鎖若しくは分岐を有する飽和若しくは不飽和の炭化水素基を示し、Mはナトリウム、カリウム、トリエタノールアミン、アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、L-アルギニンから選択され、nは1又は2の数を示す。)で示される化合物が用いられ、具体的には、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム(ココイルグリシンカリウム)、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム(ココイルグリシンナトリウム)、ラウロイルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルアラニンナトリウム(ココイルアラニンナトリウム)、ラウロイルアラニンカリウム、パーム油脂肪酸アシルグリシンカリウム等が例示される。N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩の配合量は、液体洗浄料全量に対し0.5?20質量%、好ましくは1?15質量%配合する。0.5質量%未満の配合では泡質が悪くなる可能性が有る。また20質量%を超えて配合しても、これ以上の泡質改善効果の向上は認められない。」

(8)記載事項1-8(【0017】)
「これらのベタイン系界面活性剤は、単独又は2種以上を組み合わせて、液体洗浄料全量に対して0.1?10質量%、好ましくは0.5?10質量%の割合で配合することができる。配合量が0.1質量%を下回ると、泡質改良効果が発揮されない。逆に、添加量が10質量%を越えると、使用時のヌルツキが多くなり、使用感が悪くなる。」

(9)記載事項1-9(【0018】)
「本発明の液体洗浄料は、保湿剤を配合する。保湿剤を配合することにより、洗い上がりのきしみ感が改良され、良好な使用感を得ることができる。かかる保湿剤としては、液体洗浄料に配合し得るものであれば特に限定されないが、・・・ポリエチレングリコール、・・・が挙げられる。」

(10)記載事項1-10(【0024】?【0027】)
「本発明の液体洗浄料物品は、各種液体洗浄料として適用することができ、特に肌用液体洗浄料として適している。

以下に本発明を実施例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲はこれによってなんら限定されるものではない。

表1に示した処方にて、液体洗浄料を定法により調製し、評価を行った。



(11)記載事項1-11(【0030】?【0032】)
「使用感評価
表1に示した実施例及び比較例を吐出口側200メッシュ、吸い口側100メッシュの多孔質膜体を備えた泡吐出容器に充填し、実際に使用して評価を行った。評価は、官能評価専門者3名がそれぞれに評価を行い、評価結果を協議して決定した。結果を表2にまとめる。
[評価項目]
泡が均一である(○、△、×)
泡のきめの細かさ(○、△、×)
泡のボリュームがあるかどうか(○、△、×)
泡のコクがあるかどうか(○、△、×)
泡が長持ちするかどうか(○、△、×)
洗い流し後のさっぱり感(○、△、×)


表2に示したとおり、本発明の実施例1は、洗い流し後がさっぱりしておりかつ、泡質が均一で、きめが細かく、コクが有り、泡持ちのよい良好な使用感であった。」

2 甲2
(1)記載事項2-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】 界面活性剤5?30重量%、一価アルコール1?7重量%および多価アルコール3?20重量%を配合してなることを特徴とする起泡性洗浄剤。」

(2)記載事項2-2(【0010】)
「本発明の起泡性洗浄剤には、一価アルコールおよび多価アルコールが粘度調整剤として配合される。・・・多価アルコールとしては、・・・ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、・・・多価アルコールは3?20重量%の範囲内で配合される。アルコールの添加量が上記範囲を下回ると、洗浄剤の粘度が上昇し、発泡が阻害される。逆に、アルコールの添加量が上記範囲を上回ると、洗浄剤の粘度が低下し、起泡性も低下する。」

(3)記載事項2-3(【0014】)
「【実施例】以下に、本発明の実施例および比較例について説明する。
実施例1?22および比較例1?18
表1および表2に記載の各成分を常法に従って撹拌・混合することにより、実施例1?22の起泡性洗浄剤を調製した。・・・」

(4)記載事項2-4(【0016】?【0017】)
「【表1】


【表2】




3 甲3
(1)記載事項3-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
下記の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)下記の一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタン
一般式(1)
R^(1)-{(O-R^(2))_(k)-OCONH-R^(3)[-NHCOO-(R^(4)-O)_(n)-R^(5)]_(h)}_(m) (1)
〔式中、R^(1)、R^(2)及びR^(4)は、互いに同一でも異なっても良い炭化水素基を表し、R^(3)はウレタン結合を有しても良い炭化水素基を表し、R^(5)は直鎖、分岐鎖又は2級の炭化水素基(炭素原子数24以上)を表し、mは2以上の数であり、hは1以上の数であり、k及びnは独立に0?1000の範囲の数である〕
(B)アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤」

(2)記載事項3-2(【0025】)
「(A)一般式(1)の疎水変性ポリエーテルウレタン
本発明の洗浄剤組成物は、特定の疎水変性ポリエーテルウレタンを含むものである。本発明に用いる疎水変性ポリエーテルウレタンは、会合性増粘剤として機能し、水溶性媒体の粘度を増加させることができるため、粘性調整剤として用いられている(例えば、特開平9-71766号公報参照)。」

(3)記載事項3-3(【0052】)
「また、界面活性剤の配合量としては洗浄剤組成物全量中5?40重量%であることが好ましい。すなわち、5重量%未満の配合量では、起泡性に劣り、充分な洗浄効果が得られない。また、40重量%より多い配合量では、界面活性剤の溶解性が不十分で飽和濃度以上の析出が見られる場合があったり、洗浄効果の濃度依存性が見られなくなり、実質的にこれ以上の配合は無意味になる。」

(4)記載事項3-4(【0060】)
「下記実施例、比較例を常法により調製した。これらの各試料を用いて、以下に示す評価法に従って洗浄料の「温度安定性(粘度)」、「粘弾性(製品粘性の官能評価)」、「泡立ち」、「泡の持続性」、「洗浄時のさっぱり感」の評価を行った。」

(5)記載事項3-5(【0072】?【0073】)
「【表5】

上記検討から、本発明による洗浄剤組成物では、界面活性剤の配合量が5?40重量%で至適となることが分かる。」

(6)記載事項3-6(【0085】?【0086】)
「本発明のその他の実施例を追加する。下記の実施例において、疎水変性ポリエーテルウレタンは、全て市販品(アデカノールGT-700:旭電化工業株式会社)である。

実施例25 シャンプー


常温で精製水にカチオン化セルロースを水和させたあと80℃に加熱し、その他の原料を投入し攪拌混合した後冷却し、シャンプーを調製する。」

4 甲4
(1)記載事項4-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
親水性部分がイオン性である界面活性剤、又は親水性部分がカチオン性若しくはノニオン性であるポリマーの少なくとも一つと、ポリエーテルウレタンと、水を含む水性原液と、液化ガスとを含有し、
前記ポリエーテルウレタンを前記水性原液中に0.5?5質量%有し、
20℃における前記水性原液の粘度が3?800mPa・sであることを特徴とする発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は両性界面活性剤から選ばれる少なくともいずれか一つであり、
水性原液中に1?20量%含有されることを特徴とする請求項1記載の発泡性エアゾール組成物。」

(2)記載事項4-2(【0027】?【0028】)
「本発明に用いられるポリエーテルウレタンは、水に溶解又は分散して水性原液の粘度を向上させ、エアゾール組成物を加圧状態のエアゾール容器から大気圧下に吐出したときに発泡してぷるるんとした弾性を有するフォームを形成するために用いられる。

ポリエーテルウレタンとしては、たとえば、(ポリエチレングリコール(PEG)-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI))コポリマーなどが挙げられる。」

(3)記載事項4-3(【0067】)




(4)記載事項4-4(【0068】)




5 甲5
(1)記載事項5-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
ポリエーテルウレタンと水とを含有する原液と発泡剤からなるエアゾール組成物であって、
前記ポリエーテルウレタンの配合量が原液中0.5?5重量%であり、
前記発泡剤の配合量が前記エアゾール組成物中0.5?60重量%であるエアゾール組成物。」

(2)記載事項5-2(【0019】?【0020】)
「前記ポリエーテルウレタンは、水に配合することにより、粘度を高くすることができるとともに、油成分の分散性に優れた原液を形成することができるため、脂肪族炭化水素のような水に溶解しにくい発泡剤であっても均一に分散する目的で使用される。本願発明のエアゾール組成物は、大気中に吐出することにより、分散していた発泡剤が気化し、このときポリエーテルウレタンにより吐出物は発泡して内部に気泡を含有し、強い弾力性を示す。

前記ポリエーテルウレタンとしては、(ポリエチレングリコール(PEG)-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI))コポリマーなどがあげられる。」

(3)記載事項5-3(【0062】?【0064】)
「表1、2に示す組成の原液を調製した。



(4)記載事項5-4(【0065】?【0070】)
「実施例1
原液A90g(90重量%)をアルミニウム製耐圧容器に充填しバルブを固着した。バルブのステムから、発泡剤として液化石油ガス(20℃での蒸気圧が0.29MPa)を10g(10重量%)充填した。エアゾール容器を振とうすることにより原液に発泡剤を分散させた。結果を表3に示す。

実施例2
液化石油ガスの代わりにジメチルエーテルを用い、ジメチルエーテルを原液中に溶解させたこと以外は実施例1と同様にしてエアゾール組成物を調整した。結果を表3に示す。

実施例3
原液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアゾール組成物を調整した。結果を表3に示す。

実施例4
原液Bを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてエアゾール組成物を調整した。結果を表3に示す。

実施例5
原液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエアゾール組成物を調整した。結果を表3に示す。

実施例6
原液Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にしてエアゾール組成物を調整した。結果を表3に示す。」

(5)記載事項5-5(【0075】)




6 甲6
(1)記載事項6-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】下記の成分(A)及び(B)を含有することを特徴とする泡状酸化染毛用前処理剤。
(A)(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネ-ト)コポリマ-
(B)塩基性染料、HC染料、タ-ル色素からなる群から選択される1種又は2種以上」

(2)記載事項6-2(【0012】)
「・・・(PEG-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネ-ト)コポリマ-を含有せしめることにより界面活性剤を含有せしめることなく泡状の剤型に生成せしめることができ、一般的に使用される界面活性剤による泡に比べて弾力性があり展性に優れた泡状剤型を得ることが出来るものであって、長い毛髪に泡状酸化染毛用前処理剤をより簡単に塗付することができ、耐洗性に優れ、均一に染毛することが出来る。・・・」

(3)記載事項6-3(【0023】?【0025】)
「実施例1?3、・・・
本発明の剤型が泡状の酸化染毛用前処理剤として、下記の表1に示す配合割合に基づいて酸化染毛用前処理剤を調製した。・・・

実施例4?6、・・・
本発明の剤型が泡状の酸化染毛用前処理剤として、下記の表2に示す配合割合に基づいて泡状酸化染毛用前処理剤を調製した。・・・

実施例7、・・・
本発明の剤型が泡状の酸化染毛用前処理剤として、下記の表3に示す配合割合に基づいて泡状酸化染毛用前処理剤を調製した。・・・」

(4)記載事項6-4(【0031】)
「次に、上記表1?3の実施例1?7及び比較例1?10について、酸化染毛用前処理剤の塗付のしやすさ、酸化染毛用前処理剤の染着性試験、均染性試験並びに耐洗性試験を行い、その評価結果を表5?7に示す。」

(5)記載事項6-5(【0036】?【0038】)




7 甲7
(1)記載事項7-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
1)塩基性アミノ酸残基を構造中に有するポリマーと2)キサンタンガムとを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。」

(2)記載事項7-2(【0015】)
「・・・本発明の皮膚外用剤に於いては、前記必須成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。かかる任意成分としては、・・・特に好ましい成分は、ポリエチレングリコールの長鎖のものや、ポリオキシエチレン付加型の非イオン界面活性剤、ジメチコンコポリオール等の長鎖のポリオキシエチレン基を有する化合物、リン脂質、ヒアルロン酸或いはヒアルロン酸の塩である。・・・具体的な化合物としては、平均分子量1000以上、更に好ましくは10000以上のポリエチレングリコール、・・・などが例示出来る。・・・」

8 甲8
(1)記載事項8-1(【特許請求の範囲】)
「【請求項1】
(a)保湿剤を10?40質量%、
(b)油分を0.01?3質量%、
(c)親水性界面活性剤を0.01?5質量%、及び
(d)ポリアクリル酸又はその金属塩を0.001?0.3質量%、
含有する化粧料であって、平均乳化粒子径が500nm以下であることを特徴とする液状化粧料。」

(2)記載事項8-2(【0012】)
「本発明の液状化粧料に配合される保湿剤がポリアルキレングリコールを含有する場合、その配合量は化粧料全体に対して0.1?3質量%とするのが好ましい。ポリアルキレングリコールの配合量が3質量%を越えると、却ってべたつきを生ずる場合がある。」


第5 申立理由についての検討
1 申立理由2(明確性違反)について
申立理由2は、本件特許発明の明確性に係る事項であるため、他の申立理由に先立って、これについてまず検討する。

申立人は、本件特許発明1の「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」なる記載について、本件特許明細書には、「水性化粧料」が具体的にどの目的で使用される化粧料であるのかが記載されておらず、実施例においても、泡質の評価がなされるのみで、実施例組成物がどのような用途に使用される化粧料であるのかの説明もなされていないところ、例えば、甲4の【0056】に記載のように、「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」としては、文言上、洗顔料、パック剤、保湿剤、毛髪用のスタイリング剤、トリートメント剤、シェービングフォーム、染毛剤などが包含され、またこのような化粧料を洗浄剤として使用する場合でも、浴用、洗顔用、毛髪用など適用する場所によりそれぞれ区別されるものである(甲2の【0002】参照。)から、本件特許発明1の「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」は非常に広範な範囲の化粧料を包含するものであって、その範囲が実際にどのような化粧料までを包含するのかを技術的に把握できない旨の主張をしている。
しかしながら、「水性化粧料」とは、その文言どおり「水性を示す化粧料」であり、ここで「化粧料」は、当業者に広く使用されている、ごく一般的な用語であって、その意味内容が明確なものである。そして、本件特許明細書の【0023】には、「本明細書における「泡状に吐出して使用される化粧料」とは、噴射剤(推進剤)とともに収容されて、噴射剤の圧力によってノズルから泡沫状に噴射(スプレー)されるエアゾール形態の化粧料、及び、噴射剤を用いず、例えばポンプ等の泡吐出機構を備えた容器に収容され、該機構を介して泡沫状に吐出されるノンエアゾール形態の化粧料を包含する。」と記載されているから、本件特許発明1における「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」とは、「化粧料の中でも水性を示す化粧料であって、何らかの手段により泡状に吐出して使用するためのもの」を意味することが、その記載自体から、当業者に明確であるといえる。
以上のとおり、当業者は、本件特許発明1における「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」がいかなるものであるのかを明確に把握することができるから、本件特許明細書に「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」の具体的な用途の説明がなくとも、また、当該「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」が広い範囲の化粧料を包含するものであっても、本件特許発明1の「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」の範囲が技術的に把握できないということはない。
したがって、本件特許発明1は明確である。また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2?4についても同様である。
よって、本件特許発明1?4に係る特許が特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるとする、申立理由2には理由がない。

2 申立理由1(進歩性違反)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1に記載の発明
甲1には、記載事項1-1の記載からみて、「高級脂肪酸塩と、N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤と、ベタイン系界面活性剤と、保湿剤を含有し、泡吐出機構を備えた容器に充填された液体洗浄料」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

イ 本件特許発明1と甲1発明の対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
まず、「高級脂肪酸塩」及び「N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤」が「アニオン性界面活性剤」の一種であり、「ベタイン系界面活性剤」が「両性界面活性剤」の一種であることはいずれも技術常識であるから、甲1発明における「高級脂肪酸塩」及び「N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤」並びに「ベタイン系界面活性剤」が、それぞれ、「アニオン性界面活性剤」並びに「両性界面活性剤」であることは明らかである。
また、甲1発明における「液体洗浄料」は、肌に適用されることから(記載事項1-10)、「化粧料」であることが明らかであり、多量の精製水を含む態様で用いられること(記載事項1-10の表1)を併せると、「水性化粧料」といえるものである。さらに、当該「液体洗浄料」は、泡吐出機構を備えた容器に充填されることから、「泡状に吐出して使用される」ものといえる。そうすると、甲1発明における「液体洗浄料」は、本件特許発明1における「泡状に吐出して使用するための水性化粧料」に相当する。
したがって、両発明は、「泡状に吐出して使用するための水性化粧料であって、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤を含む水性化粧料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1は、
「アニオン性界面活性剤」が、
「(A)0.005?1.5質量%のアニオン性界面活性剤」
であって
「アニオン性界面活性剤が、ココイルグルタミン酸カリウム、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルサルコシネート塩、N-ココイルタウリンナトリウム、N-ココイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ラウロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリンナトリウム、N-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリントリエタノールアミン、N-パーム油脂肪酸-N-エチルタウリントリエタノールアミン、N-ココイルタウリンマグネシウム、N-ココイル-N-メチルタウリンマグネシウム、N-ラウロイル-N-タウリンマグネシウム、N-ラウロイル-N-メチルタウリンマグネシウム、及びN-ヤシ油脂肪酸-N-メチルタウリンマグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上」(以下、これらのアニオン性界面活性剤をまとめて「特定のアニオン性界面活性剤(A)」ということがある。)であり、
かつ、「両性界面活性剤」が
「(B)0.01?0.3質量%の両性界面活性剤」
であって
「両性界面活性剤が、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチル酢酸ベタイン、及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインからなる群から選択される1種または2種以上」(以下、これらの両性界面活性剤をまとめて「特定の両性界面活性剤(B)」ということがある。)、
であるのに対し、
甲1発明は、
「アニオン性界面活性剤」が「高級脂肪酸塩」及び「N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤」であって、それらの含有量について限定はなく、かつ、「両性界面活性剤」が「ベタイン系界面活性剤」であって、その含有量について限定はない点。

(相違点2)
本件特許発明1は、「平均分子量10000?20000のポリアルキレングリコール、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である」水溶性高分子(以下、これらの水溶性高分子をまとめて「特定の水溶性高分子(C)」ということがある。)を含む、
のに対し、
甲1発明においては水溶性高分子について規定されていない点。

(相違点3)
本件特許発明1は、保湿剤を含むことについて規定されていないのに対し、甲1発明は、保湿剤を含むことが規定されている点。

(相違点4)
本件特許発明1は、水性化粧料を充填する容器について規定されていないのに対し、甲1発明は、泡吐出機構を備えた容器に充填されたものであることが規定されている点。

ウ 相違点1についての判断
上記のとおり、本件特許発明1では、アニオン性界面活性剤が特定のアニオン性界面活性剤(A)に限定され、さらに、本件特許の請求項1の「0.005?1.5質量%のアニオン性界面活性剤・・・を含み」との記載に続く「前記アニオン性界面活性剤が、ココイルグルタミン酸カリウム・・・から選択される1種または2種以上であり」(下線は当審による。)との記載から明らかなとおり、本件特許発明1の水性化粧料に配合される「アニオン性界面活性剤」は特定のアニオン性界面活性剤(A)のみである、換言すれば、本件特許発明1の水性化粧料は特定のアニオン性界面活性剤(A)以外のアニオン性界面活性剤を含まないものである。
他方、甲1発明は、アニオン性界面活性剤である高級脂肪酸塩を必須の成分とするものであり(記載事項1-1)、甲2?8のいずれにも、甲1発明を高級脂肪酸塩を含まないものとすることを示唆する記載もないから、甲1発明において高級脂肪酸塩を含まないとすることは、甲1?8の記載から当業者が容易に想到し得ることではない。
また、甲1には、N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤の配合量として液体洗浄料全量に対して0.5?20質量%、ベタイン系界面活性剤の配合量として同じく0.1?10質量%なる範囲が記載されており(記載事項1-7、1-8)、これらの範囲には、本件特許発明1におけるアニオン性界面活性剤の配合量0.005?1.5質量%及び両性界面活性剤の配合量0.01?0.3質量%とそれぞれわずかに重複する部分がある。しかし、甲1において、泡質に優れた液体洗浄料が製造された例として具体的に記載されているのは、N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤(N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム)を6.0質量%、ベタイン系界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン)を1.4質量%といった、本件特許発明1で規定される各配合量を大きく上回ったもののみであり(記載事項1-10)、さらにN-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤やベタイン系界面活性剤の配合量や高級脂肪酸塩の有無が泡質に影響するのが技術常識であることを踏まえれば、上記のような広い範囲の配合量の記載をもって、本件特許発明1に規定する配合量でN-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤及びベタイン系界面活性剤を含む液体洗浄料が甲1に記載されているとはいえないし、泡質の改善を期待する当業者が、甲1に具体的に開示された配合量よりもはるかに少ない本件特許発明1に規定の配合量でN-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤及びベタイン系界面活性剤を配合することを容易に想到するともいえない。また、甲2?8のいずれにも、高級脂肪酸塩、N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤、及び保湿剤を含む液体洗浄料である甲1発明におけるN-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤及びベタイン系界面活性剤の配合量を、それぞれ0.005?1.5質量%及び0.01?0.3質量%の範囲内のものとすることを動機付ける記載はない。
したがって、相違点1は、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の種類など、その余の点について検討するまでもなく、甲1?8の記載から、当業者が容易に想到し得るものではない。

エ 本件特許発明1の効果について
本件特許明細書には、0.005?1.5質量%の特定のアニオン性界面活性剤(A)、0.01?0.3質量%の特定の両性界面活性剤(B)、及び特定の水溶性高分子(C)という3成分の組合せを有する本件特許発明1の水性化粧料が、それら3種のいずれかを含まない水性化粧料と比較して、泡持ち、泡の滑らかさ、泡の濃密さ、泡弾力の全ての泡質において優れていることが具体的に記載されており(実施例1?12)、本件特許発明1の水性化粧料は、「高級脂肪酸塩」を含まずとも、また、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の含量が少量であっても、特定の水溶性高分子を組み合わせることで、当該優れた泡質を達成できるという効果を奏するものである。
他方、甲1には、高級脂肪酸塩を含む液体洗浄料についての結果しか記載されておらず(記載事項1-10、1-11)、甲2及び3には、界面活性剤の配合量が少なくとも5重量%である場合において良好な泡質等を有する起泡性洗浄剤及び洗浄剤組成物の結果しか記載されておらず(記載事項2-1、2-4、3-1、3-3、3-5)、甲4には、少なくとも3質量%のアニオン性界面活性剤又は少なくとも10質量%の両性界面活性剤のいずれかのみを配合した発泡性エアゾール組成物についての結果しか記載されておらず(記載事項4-1、4-3、4-4)、甲5には、N-長鎖脂肪酸アシルアミノ酸塩系界面活性剤及びベタイン両性界面活性剤のいずれも含まない発泡性のエアゾール組成物についての結果しか記載されておらず(記載事項5-1、5-3?5-5)、甲6には、泡状酸化染毛用前処理剤について記載されるものの、泡の性質等については記載されておらず(記載事項6-1、6-3?6-5)、甲7及び8には、泡状の化粧料についての記載すらないから(記載事項7-1、8-1)、本件特許発明1が奏する上記の効果は、甲1?8の記載から当業者が予測し得えない顕著なものである。

オ まとめ
以上のとおりであるから、相違点2?4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2?8の記載及び周知技術を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 申立人の主張について
申立人の進歩性違反に係る主張は、甲1の実施例の記載(記載事項1-10)に基づき、甲1に記載された発明として下記の発明(以下「申立人主張の引用発明」という。)を認定し、本件特許発明1の進歩性を否定するものである。
「N-ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム6.0質量%、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン1.4質量%、ソルビトールを含む泡状に吐出して使用するための液体洗浄料」の発明

しかしながら、甲1の実施例に記載の液体洗浄料は、ラウリン酸、ミリスチン酸及びイソステアリン酸とともに水酸化カリウムが配合されているから(記載事項1-10)、これらの高級脂肪酸のカリウム塩を含有するものである(記載事項1-5)。
そうすると、上記甲1の実施例の記載から、上記高級脂肪酸のカリウム塩を含まない申立人主張の引用発明を認定するのは正しくない。
したがって、申立人が指摘する相違点1?3について検討するまでもなく、申立人の主張は採用できない。

(2)本件特許発明2?4について
本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4についても同様であるから、本件特許発明2?4は、甲2?8の記載及び周知技術を参酌しても、甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)小括
よって、本件特許発明1?4に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとする、申立理由1には理由がない。


3 申立理由3(サポート要件違反)について
(1)当審の判断
特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆるサポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

本件特許明細書に、
「よって本発明における課題は、べたつかず、肌への刺激が無く、濃密で滑らかで弾力性に富んだ良好な泡質を持ち、なおかつ泡持ち及び泡切れに優れた泡状に吐出して使用される水性化粧料を提供することである」(【0006】)
と記載されていることからみて、本件特許発明1の解決すべき課題は、「べたつかず、肌への刺激が無く、濃密で滑らかで弾力性に富んだ良好な泡質を持ち、なおかつ泡持ち及び泡切れに優れた泡状に吐出して使用される水性化粧料を提供すること」であると認められる。
一方、本件特許明細書の実施例には、アニオン性界面活性剤であるココイルグルタミン酸K又はN-ココイルメチルタウリンNaと、両性界面活性剤であるラウリルベタインをそれぞれ本件特許発明1に規定する範囲の配合量で併用し、さらに水溶性高分子として、PEG-400、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25)クロスポリマー、あるいは(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマーを配合した水性化粧料が、べたつかず、濃密で滑らかで、弾力に富む良好な泡質を有し、かつ、泡持ちに優れたものであることが具体的に示されている。また、本件特許明細書には、「界面活性剤としてアニオン性界面活性剤と両性界面活性剤の組み合わせを採用し、それらの配合量を所定値以下とするとともに、水溶性高分子を配合することにより、前記の課題を悉く解決した水性化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った」(【0007】)と記載され、実施例において、肌への刺激性や泡切れについて特段言及されていないことからすると、実施例に記載の水性化粧料は肌への刺激性がなく、泡切れに優れるものと理解できる。
したがって、本件特許発明1の水性化粧料は、べたつかず、肌への刺激が無く、濃密で滑らかで弾力性に富んだ良好な泡質を持ち、なおかつ泡持ち及び泡切れに優れていると当業者が認識し得る範囲にあるものといえる。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、上記本件特許発明1の解決すべき課題を解決できることが当業者に認識できるように記載されているといえる。
本件特許発明2?4についても、同様の理由から、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明2?4の解決すべき課題を解決できることが当業者に認識できるように記載されているといえる。

(2)申立人の主張について
ア 申立人は、甲2には、起泡性洗浄剤の粘度が高すぎても低すぎても良質な泡が得られないことが記載されており(甲2の【0021】)、水溶性高分子はその濃度に依存して粘度を増加させるから、本件特許発明において、特定の水溶性高分子を高濃度又は低濃度で使用した場合に、本件特許発明で規定する水性化粧料をポンプフォーマーから吐出させても、所望の泡質を有する泡を得ることはできないとし、本件出願時の技術常識に照らしても、水溶性高分子の濃度を規定していない本件特許発明1?4の範囲にまで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された内容を、拡張又は一般化できない旨の主張をしている。
しかしながら、水溶性高分子を水に配合することによって当該水溶液の粘度が増加すること、そして、粘度の増加は水溶性高分子の濃度に関係することは、本件特許の出願時の技術常識であるから、本件特許発明1において、水溶性高分子の濃度は、製造しようとする水性化粧料の種類などに応じて、上記実施例の記載や本件特許明細書の【0019】などの記載も参酌しつつ、上記した発明の課題(べたつきや泡質等)を解決し得る範囲で適宜調整すればよいものと当業者は認識する。
したがって、水溶性高分子の濃度が請求項1において具体的に規定されていないからといって、本件特許発明1が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、べたつかず、肌への刺激が無く、濃密で滑らかで弾力性に富んだ良好な泡質を持ち、なおかつ泡持ち及び泡切れに優れていると当業者が認識できる範囲を超えているというのは相当でない。本件特許発明2?4についても同様である。
よって、申立人のこの主張は採用できない。

イ 申立人は、化粧料の種類により配合される成分が異なることは周知であり、製品の粘度に影響を与える成分も添加され得ることを考慮すると、わずか12種の類似する処方についてのみの実施例の開示からは、本件特許発明1に包含される水性化粧料の全てが本件特許発明1の解決すべき課題を解決することができるとはいえない旨、更に主張する。
確かに、本件特許発明1の水性化粧料は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び水溶性高分子以外の追加の成分を含み得るものであって、それらの成分が当該化粧料の粘度に影響する場合もあり得る。しかしながら、各種の化粧料においてアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び水溶性高分子以外の様々な成分が当該化粧料の使用目的などに応じて適宜用いられるのが本件特許の出願時の技術常識であることや、本件特許明細書の【0027】の「本発明の水性化粧料は、化粧料等に配合可能な他の成分を本発明の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。」との記載からすれば、本件特許発明1において、そのような追加の成分は、各種の化粧料において周知慣用の成分の中から、上記した発明の課題を解決し得る範囲で、適切なものを選択すればよいものと当業者は認識する。
したがって、本件特許明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識を踏まえれば、本件特許明細書の実施例が具体的な用途が特定されていない処方の類似する12種のみであるからといって、本件特許発明1が、当業者が上記本件特許発明1の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えているというのは相当でない。本件特許発明2?4についても同様である。
したがって、申立人のこの主張も採用できない。

(3)小括
よって、本件特許発明1?4に係る特許が特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるとする、申立理由3には理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由(申立理由1?3)及び証拠によっては、本件請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-02-07 
出願番号 特願2016-210911(P2016-210911)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 駒木 亮一  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 井上 明子
大久保 元浩
登録日 2018-05-18 
登録番号 特許第6340395号(P6340395)
権利者 株式会社 資生堂
発明の名称 泡状水性化粧料  
代理人 内田 直人  
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