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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01M
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1348759
異議申立番号 異議2018-700968  
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-03-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-30 
確定日 2019-02-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第6331720号発明「電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6331720号の請求項1?6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6331720号(以下「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願(特願2014-115500)は、平成26年 6月 4日に出願したものであって、平成30年 5月11日にその特許権の設定登録がされ、同年 5月30日付け特許掲載公報が発行されたものである。
その後、同年11月30日に、本件特許について、特許異議申立人藤江桂子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
多段重合により得られる、下記(a1)?(a4)の条件を満たすプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含むプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とする電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(A);
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0?2重量%のプロピレン単独重合体または共重合体であること。
(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が1.0?10g/10分であること。
(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10?40重量%であること。
(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5?5g/10分であること。
【請求項2】
プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)におけるプロピレン系重合体成分(A1)の重量比率W(A1)が60?95重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)の重量比率W(A2)が5?40重量%であることを特徴とする請求項1に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、脂肪酸アマイド系の滑剤を、プロピレン-エチレンブロック共重合体(A)100重量部に対して、0.03?0.5重量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1?3のいずれか一項に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を溶融押出製膜して得られることを特徴とする単層シーラントフィルム。
【請求項5】
請求項1?3のいずれか一項に記載の電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物を両外層の少なくとも片面層に用い、溶融押出製膜して得られることを特徴とする多層シーラントフィルム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の単層又は多層シーラントフィルムが電池包装材料のシーラントとして用いられることを特徴とするフィルム。」

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証?甲第3号証及び参考文献1、参考文献2を提出し、以下の理由により、請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

(1)申立理由1
請求項1、2、4、5、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1、2、4、5、6に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
また、請求項1、2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(2)申立理由2
請求項1?6に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2004-27217号公報
甲第2号証:特開2008-277274号公報
甲第3号証:特開2013-149397号公報
参考文献1:高木謙行、佐々木平三編著、プラスチック材料講座〔7〕ポリプロピレン樹脂、日刊工業新聞社、昭和44年11月30日、57頁?58頁
参考文献2:社団法人日本分析化学会高分子分析研究懇談会編集、新版高分子分析ハンドブック、株式会社紀伊國屋書店発行、1724頁?1726頁
以下、それぞれ「甲1」?「甲3」、「参1」?「参2」ということがある。

第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証について
甲第1号証(特開2004-27217号公報)には、「ポリプロピレン樹脂組成物」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(当審注:下線は、当審が付した。以下、同様。)。
「【請求項1】
(A)ポリプロピレン成分50?80質量%と、(B)プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4?12のα-オレフィンとの共重合体エラストマー成分50?20質量%とを含有した組成物であって、
メルトフローレートが0.1?15.0g/10分の範囲、
前記(B)共重合体エラストマー成分におけるプロピレンに由来する単位が50?85質量%、かつ、
キシレン可溶分Xsが下記(I)?(V)の要件を満たすことを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
(I)プロピレン含量Fpが50?80質量%。
(II)キシレン可溶分Xsの極限粘度[η]Xsが1.4?5dL/g。
(III)極限粘度[η]Xsとキシレン不溶分Xiの極限粘度[η]Xiの比が、0.7?1.5。
(IV)2サイトモデルにより定義される高プロピレン含量成分のプロピレン含量(P_(p))が60質量%以上95質量%未満、低プロピレン含量成分のプロピレン含量(P’_(p))が20質量%以上60質量%未満。
(V)2サイトモデルにより定義される高プロピレン含量成分のプロピレン含量(P_(p))と低プロピレン含量成分のプロピレン含量(P’_(p))、高プロピレン含量成分の前記Fpに占める割合(P_(f1))、および低プロピレン含量成分の前記Fpに占める割合(1-P_(f1))が下記式(1)および(2)を満たす。
P_(p)/P’_(p)≧1.90 ・・・(1)
2.00<P_(f1)/(1-P_(f1))<6.00 ・・・(2)」

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物に関する。詳しくは特定の組成分布を有するキシレン可溶分を含有するポリプロピレン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、透明性に優れ、かつ低温での耐衝撃性および耐熱性・剛性に優れたポリプロピレン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンを用いた成形品は経済性に優れ、多岐の分野にわたり使用されている。
しかし、一般にプロピレン単独重合体を用いた成形品は高い剛性を有する反面、耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性に劣るという欠点がある。
そのため、耐衝撃性を向上させるために多くの提案がなされてきた。例えば、最初にプロピレンホモポリマーを製造した後にエチレン-プロピレン共重合体エラストマーを製造したプロピレンブロック共重合体が挙げられる。このプロピレン系ブロック共重合体を用いた成形品は耐衝撃性が優れるために、自動車、家電分野などの各産業分野で広く用いられている。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、低温での耐衝撃性と剛性のバランスおよび透明性に優れ、さらにフィルムにした場合のヒートシール強度に優れるポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記従来技術の課題を解決すべくキシレン可溶分の組成分布に着目し鋭意検討した結果、特定の組成分布のキシレン可溶分を有するプロピレンブロック共重合体が、低温での耐衝撃性と剛性のバランスおよび透明性に優れるのみならず、フィルムにした場合のヒートシール強度に優れる事を見出し本発明を完成するに至った。」

「【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン成分と(B)共重合体エラストマー成分とを含有した組成物である。
本発明における(A)ポリプロピレン成分は、プロピレン単独重合体、または、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4?12のα-オレフィンとの共重合体、およびこれらの混合物の中から選ばれる。ここで、炭素数4?12のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなど任意のものが使用可能である。これらの重合体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
但し、本発明における(A)ポリプロピレン成分とは、プロピレンに由来する単位が95質量%以上あるものをいい、これら共重合成分の含有量は5.0質量%以下である。さらに好ましくは、共重合成分は0.1?3.5質量%である。エチレン及び/又は炭素数4?12のα-オレフィンの含量が5質量%より多いと成形品における剛性および耐熱性が顕著に低下するので好ましくない。
これらの重合体は、例えば、公知のチーグラー・ナッタ系触媒やメタロセン触媒を用い、公知の重合方法によって製造されるものである。
(A)ポリプロピレン成分は、剛性と耐熱性が特に要求される場合にはプロピレン単独重合体であることが好ましく、また、耐衝撃性と透明性が特に要求される場合にはプロピレンとエチレンおよび/またはα-オレフィンの共重合体であることが好ましい。
【0008】
(A)ポリプロピレン成分は、その極限粘度[η]が、2.0?4.8dL/gであることが望ましい。より好ましくは、2.5?4.5dL/g、さらに好ましくは、2.8?4.0dL/gの範囲である。極限粘度[η]が4.8dL/gを超える場合、成形時の押出し不良や成形品の透明性の低下が起こることがある。また、極限粘度[η]が2.0dL/g未満である場合、成形時の押出し不良や透明性の低下は起こりにくくなるものの、製品の剛性および耐衝撃性が低下することがある。
【0009】
本発明における(B)共重合体エラストマー成分は、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4?12のα-オレフィンとの共重合体エラストマー成分である。共重合体エラストマー成分を構成する炭素数4?12のα-オレフィンとしては任意のものが使用でき、具体的に1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン等が例示される。
本発明において(B)共重合体エラストマー成分とは、プロピレンに由来する単位が50?85質量%のものをいう。好ましくは55?85質量%、さらに好ましくは55?80質量%である。85質量%を超えると低温での耐衝撃性が不十分となり、50質量%未満では、透明性が低下したりヒートシール強度が低下したりすることがある。
【0010】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、前記(A)ポリプロピレン成分50?80質量%および前記(B)共重合体エラストマー成分50?20質量%を含有する。本発明の組成物において(B)共重合体エラストマー成分の含有量が20質量%未満では耐衝撃性に劣り、50質量%を超えると剛性や耐熱性に劣ることとなる。(B)共重合体エラストマー成分の含有量は好ましくは45?20質量%の範囲であり、更に好ましくは40?23質量%の範囲である。
【0011】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、そのメルトフローレート(以下、MFRと記すことがある。)が0.1?15.0g/10分の範囲であり、成形品の透明性、剛性および耐衝撃性の観点から好ましくは、0.5?10.0g/10分の範囲、さらに好ましくは0.7?7.0g/10分の範囲である。MFRが0.1g/10分未満である場合、押出機による混練時あるいは成形時に各成分の分散不良や吐出不良を起こすことがあり、その結果として成形品の耐衝撃性、剛性あるいは透明性を低下させることがある。また、MFRが15.0g/10分を超える場合、耐衝撃性や透明性を低下させることがある。なおMFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した値である。」

「【0022】
また、本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分とを多段重合方法により一つの重合系内で製造したものであってもよい。さらには(A)成分と(B)成分とを多段重合方法により一つの重合系内で製造したのち、(A)成分および/または(B)をさらに添加したものであってもよい。」

「【0026】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、他の樹脂や添加剤などを本発明の目的を損なわない範囲で配合できる。これら他の添加剤としては酸化防止剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、染料、顔料、オイル、ワックス等が例示される。
【0027】
本発明の樹脂組成物は公知の成形方法により、フィルム、シート、チューブ、ボトルなどに成形することができる。また、単体で使用することもできるし、他の材料と積層して用いることもできる。フィルムおよびシートの製造方法としては公知の方法が可能であり、水冷式、又は空冷式押出しインフレーション法、Tダイ法などが挙げられる。他の材料と積層する場合も上記方法の共押出し法及びドライラミネーション法、押出しラミネーション法が挙げられる。チューブの製造法としては、通常の押出し中空成形法が挙げられる。チューブは、使用分野によって適当な厚さ、直径に成形される。」

「【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、諸物性の測定方法は次の通りである。
メルトフローレート(MFR)の測定:
JIS-K7210に準拠し、温度230℃、荷重2160gの条件で測定した。
^(13)C-NMRの測定(P_(p)、P’_(p)およびP_(f1)の算出):
日本電子製のJNM-GSX400により測定し(測定モード:プロトンデカップリング法、パルス幅:8.0μs、パルス繰り返し時間:3.0s、積算回数:10000回、測定温度:120℃、内部標準:ヘキサメチルジシロキサン、溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン/ベンゼン-d6(容量比 3/1)、試料濃度:0.1g/ml)、その統計解析により、前述に従いP_(p)、P’_(p)およびP_(f1)を求めた。
キシレン可溶分量Xsの測定:
オルトキシレン250mlにサンプル2.5gを入れ、加熱しながら攪拌して沸騰温度まで昇温し、30分以上かけて完全溶解させる。完全溶解を確認した後、攪拌を行いながら100℃以下になるまで放冷し、さらに25℃に保った恒温槽にて2時間保持する。その後析出した成分(キシレン不溶分Xi)をろ紙によりろ別した。ついでこのろ液を加熱しながら窒素気流下でキシレンを溜去、乾燥することでキシレン可溶分Xsを得た。
プロピレン含量の測定:
前記^(13)C-NMRの結果をもとに算出した。
極限粘度の測定:
デカリン中、135℃において測定した。
屈折率の測定:
キシレン可溶分Xsおよびキシレン不溶分Xiについて、それぞれ厚さ50?80μmのフィルムをプレス成形(230℃で5分予熱、30秒脱気、6MPaで1分間加圧、30℃のプレスで3分間冷却)により製造した。得られたフィルムを常温にて24時間状態調整を行った後、中間液としてサリチル酸エチルを用いアタゴ社製アッベ屈折計で測定を行
った。
【0029】
(A)成分および(B)成分の製造
以下に従い多段重合の第1段目で(A)成分を製造し、引き続き第2段目で(B)共重合体エラストマー成分を製造した。これら各成分の物性値を表2、3に示す。
[PP-1の製造]
固体触媒の調製
無水塩化マグネシウム56.8gを、無水エタノール100g、出光興産(株)製のワセリンオイル「CP15N」500mlおよび信越シリコーン(株)製のシリコーン油「KF96」500ml中、窒素雰囲気下、120℃で完全に溶解させた。この混合物を、特殊機化工業(株)製のTKホモミキサーを用いて120℃、5000回転/分で2分間攪拌した。攪拌を保持しながら、2リットルの無水ヘプタン中に0℃を越えないように移送した。得られた白色固体は無水ヘプタンで十分に洗浄し室温下で真空乾燥し、さらに窒素気流下で部分的に脱エタノール化した。得られたMgCl_(2)・1.2C_(2)H_(5)OHの球状固体30gを無水ヘプタン200ml中に懸濁させた。0℃で攪拌しながら、四塩化チタン500mlを1時間かけて滴下した。次に、加熱を始めて40℃になったところで、フタル酸ジイソブチル4.96gを加えて、100℃まで約1時間で昇温させた。100℃で2時間反応させた後、熱時ろ過にて固体部分を採取した。その後、この反応物に四塩化チタン500mlを加え攪拌させた後、120℃で1時間反応させた。反応終了後、再度、熱時ろ過にて固体部分を採取し、60℃のヘキサン1.0リットルで7回、室温のヘキサン1.0リットルで3回洗浄して固体触媒を得た。得られた固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.36質量%であった。
【0030】
1)予備重合
窒素雰囲気下、3リットルのオートクレーブ中に、n-ヘプタン500ml、トリエチルアルミニウム6.0g、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.99gおよび、上記得られた重合触媒10gを投入し、0?5℃の温度範囲で5分間攪拌した。次に、重合触媒1g当たり10gのプロピレンが重合するようにプロピレンをオートクレーブ中に供給し、0?5℃の温度範囲で1時間予備重合した。得られた予備重合触媒はn-ヘプタン500mlで3回洗浄を行い、以下の重合に使用した。
【0031】
2)本重合
第1段目:(A)ポリプロピレン成分の製造
窒素雰囲気下、内容積60リットルの攪拌機付きオートクレーブに上記の方法で調製された予備重合固体触媒2.0g、トリエチルアルミニウム11.4g、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン1.88gを入れ、次いでプロピレン18kg、プロピレンに対して5000molppmになるように水素を装入し、70℃まで昇温させ1時間の重合を行った。1時間後、未反応のプロピレンを除去し、重合を終結させた。
第2段目:(B)プロピレン-エチレン共重合体エラストマーの製造
上記のごとく、第1段目の重合が終結した後、液体プロピレンを除去し、温度75℃でエチレン/プロピレン=26/74(質量比)の混合ガス2.2Nm^(3)/時間、水素を、エチレン、プロピレン及び水素の合計量に対して40,000molppmになるように供給し、60分間重合した。40分後未反応ガスを除去し、重合を終結させた。その結果、6.6kgの重合体が得られた。」

「【0036】
ポリプロピレン樹脂組成物およびフィルムの製造
[実施例1]
上記で得られたPP-1の100質量部に、フェノール系酸化防止剤0.30質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより室温下で3分間混合した。この混合物をスクリュー口径40mmの押出機(中谷VSK型40mm押出機)によりシリンダー設定温度210℃で混練することで組成物のペレットを得た。
ついで、このペレットをTダイを取り付けた押出機(東芝機械社製押出機、ダブルフライトスクリュー、スクリュー径65mm、L/D26.2、ダイス温度260℃、シリンダー温度260℃)を用い、スクリュー回転数80rpm、引取り速度12m/秒、チルロール温度50℃の条件で製膜し厚さ約70μmのフィルムを成形した。」

「【0039】
【表2】



2 甲第2号証について
甲第2号証(特開2008-277274号公報)には、「扁平型電気化学セル用包装材料」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材層と、少なくとも片面に化成処理層を備えた金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とが、少なくとも順次積層された扁平型電気化学セル用包装材料において、
前記酸変性ポリオレフィン層は酸変性ポリオレフィン系樹脂で構成される樹脂層であり、前記熱接着性樹脂層はプロピレン系樹脂で構成される樹脂層を有し、
少なくとも前記酸変性ポリオレフィン系樹脂または前記プロピレン系樹脂の一方にプロピレン系エラストマー樹脂が混合され、
該プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2?20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、
前記プロピレン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、前記プロピレン由来の構成単位が50モル%以上であり、
(a)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65?90であり、
(b)融点が130?170℃であり、
(c)密度(ASTM D1505)が860?875kg/m^(3)であり、
(d)DSC測定によるガラス転移温度が-25℃?-35℃
であることを特徴とする扁平型電気化学セル用包装材料。
【請求項2】
前記プロピレン系樹脂に対し前記プロピレン系エラストマー樹脂が3重量%以上30重量%以下混合されていることを特徴とする請求項1に記載の扁平型電気化学セル用包装材料。」

「【0001】
本発明は、安定した密封性、絶縁性、成形性を示す扁平型電気化学セル用包装材料に関するものである。」

「【0004】
しかし、金属製缶は、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が限定されてしまい、ハード側を電池に合わせて設計する必要から形状の自由度がないため、近年、金属製缶に替わって多層フィルムが包装材料として用いられる傾向にある。この包装材料は、少なくとも基材層、金属箔、熱接着性樹脂層で構成され、包装材料を袋状に形成し電池本体を収納するパウチタイプ、または、包装材料をプレス加工して凹部を形成し、凹部に電池本体を収納するエンボスタイプの外装体が形成される。例えば、電池用包装材料として特許文献1では、厚さ10μm超え60μm以下の無延伸ポリプロピレン層、金属箔と熱接着性樹脂層とを接着するための厚さ1?5μmの酸変性ポリプロピレン層、皮膜付着量が5?30mg/m2の第1化成皮膜層が表面に形成された厚さ10?100μmのアルミニウム箔層、合成樹脂よりなる層、とを順次積層してなる包装材料が提案されていた。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の扁平型電気化学セルを密封収納する外装体の扁平型電気化学セル用包装材料において、柔軟性、耐熱性、密封シール性、絶縁性、成形性に優れる扁平型電気化学セル用包装材料を提供することを目的とする。」

「【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の構成によると、扁平型電気化学セル用包装材料を構成する酸変性ポリオレフィン層および/または熱接着性樹脂層は、プロピレン系エラストマー樹脂を混合した樹脂で構成される樹脂層を有することにより酸変性ポリオレフィン層および/または熱接着性樹脂層の柔軟性、耐熱性、耐衝撃性が飛躍的に向上する。これにより、この扁平型電気化学セル用包装材料をリチウムイオン電池の外装体として用いた場合、熱接着性樹脂層がヒートシールにより結晶化した後でも一定の柔軟性、耐久性を維持するため、プラスチックケースへの収納時、外装体周縁のシール部内縁を折り曲げても、折り曲げ部におけるクラックの発生を防ぐことができる。したがって、外装体内部の電解質がクラックした箇所から金属箔層と接触することを防ぎ、外装体の絶縁性を確保することができる。
【0018】
また、酸変性ポリオレフィン層および/または熱接着性樹脂層が一定の柔軟性、耐久性を有しているため、外装体をプレスしてエンボス加工する際、金属箔層と熱接着性樹脂層が剥離したり、クラッキングが生じることを防ぐことができる。
【0019】
本発明の第2の構成によると、上記扁平型電気化学セル用包装材料において、プロピレン系樹脂に対するプロピレン系エラストマー樹脂の混合量を3重量%以上30重量%以下にすることで、ヒートシール後の酸変性ポリオレフィン層および/または熱接着性樹脂層の物性をより安定して向上させることができる。」

「【0029】
なお、熱接着性樹脂層8としてはプロピレン系樹脂(以下の説明では、プロピレン系樹脂を単にポリプロピレンと略称する場合がある)が好適に用いられるが、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンの単層または多層、または、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのブレンド樹脂からなる単層または多層からなるフィルムも使用できる。
【0030】
また、ポリプロピレンには、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等各タイプに分けることができ、これら各タイプのポリプロピレンからなる多層ポリプロピレンフィルムにおいて、プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンフィルムを積層中に含めることで、熱接着性樹脂層8の耐久性、柔軟性、耐白化性等の物性を高めることができる。
【0031】
プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンとは、エチレン・プロピレンランダムコポリマのように非晶部を海とし、結晶部を島とした海島状に樹脂が分散した構造をとるのではなく、10nm?50nmレベルのらせん状の結晶部である「島」が互いに連結して網状の構造をとり非晶部全体を覆っている。この「網」の構造によりプロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンは優れたシール強度、耐久性、耐熱性、柔軟性を持つことになる。
【0032】
これにより、プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンを含む包装材料の成形限界を高めることができ、プレス成形により、金属箔層7と熱接着性樹脂層8が剥離したり、熱接着性樹脂層8にクラッキングが生じることを防ぐことができる。
【0033】
これは、プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレンの結晶部が「網」の構造であるため、ヒートシール時に一旦溶融し固形化する際も「網」の構造が残り均一に固形化すると考えられる。」

「【0037】
なお、プロピレン系エラストマー樹脂はポリプロピレンに対して3重量%以上30重量%以下混合したとき、ポリプロピレン層の物性機能を最も向上させることができる。
【0038】
ここで、本発明に係るプロピレン系エラストマー樹脂は、プロピレン由来の構成単位と炭素数2?20のα-オレフィン(プロピレンを除く)由来の構成単位とからなる共重合体であり、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上(ここでプロピレン由来の構成単位と炭素数2?20のα-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%とする)含んでおり、
(a)ショアーA硬度(ASTM D2240)が65?90であり、
(b)融点が130?170℃であり、
(c)密度(ASTM D1505)が860?875kg/m^(3)であり、
(d)DSC測定によるガラス転移温度が-25℃?-35℃の物性を満たすものである。
【0039】
具体的に本発明に係るプロピレン系エラストマー樹脂を構成する炭素数2?20のα-オレフィン(プロピレンを除く)としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
【0040】
また、本発明に係るプロピレン系エラストマー樹脂は、プロピレン由来の構成単位と炭素数2?20のα-オレフィン(プロピレンを除く)由来の構成単位とからなる共重合体であるが、このとき、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位と炭素数4?10のα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体である場合さらに好ましい。
【0041】
また、プロピレン由来の構成単位はプロピレン由来の構成単位と炭素数2?20のα-オレフィン(プロピレンを除く)由来の構成単位との合計を100モル%とした場合に、50モル%以上99モル%以下となるものであり、好ましくは60モル%以上99モル%以下である。」

「【0043】
また、本発明に係るプロピレン系エラストマー樹脂は、上記(a)、(b)、(c)、(d)を満たすとともに、下記(e)又は(f)の一方を満たすものが好ましく、(e)及び(f)の両方を満たすものが更に好ましい。
(e)ヘイズ(内部ヘイズ)が、15%未満であり、好ましくは10%未満である。
(f)メルトフローレート(MFR、ASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3?15g/10分であり、好ましくは5?10g/10分の範囲である。」

「【0054】
また、外装体10の最内層表面に溶融押出しされたポリプロピレン層を追加工して熱接着性樹脂層8を形成することもできる。溶融押出しされたポリプロピレン層を追加工することにより、所定のシール強度を確保しながらヒートシール温度を下げることができる。これは、溶融押出しされたポリプロピレン層は、熱接着性樹脂層8を構成する溶融押出しされていないその他のポリプロピレン層と比較して融点が低く、流動性が高いことによると考えられる。
【0055】
通常、ポリプロピレン層をヒートシールする場合、ポリプロピレン層の融点(約190℃)付近の熱と圧力をシール部にかける必要がある。しかし、ポリプロピレン層表面に融点が120?150℃の溶融押出しされたポリプロピレン層を設けることにより、未延伸ポリプロピレン層の融点より低温でヒートシールすることができる。
【0056】
また、このとき溶融押出しされたポリプロピレン層にメルトインデックスが5g/10min以上30g/10min以下のものを用いれば、上記シール温度において十分なシール強度を確保することができることがわかっている。
【0057】
また、例えば、図12(a)、図12(b)で示したように、リチウムイオン電池本体2を外装体10に封入し電池本体の金属端子4を外側に突出した状態で挟持して密封シールする際、溶融押出しされたポリプロピレン層の流動性が高いため金属端子4の挟持部分全体を覆うようにして外装体10の開口部を密封シールする。そのため、金属端子4の挟持部から浸透する外部の水蒸気を遮断し、電解質と水蒸気の反応によるフッ化水素酸の生成を抑制することができる。
【0058】
ここで、上記溶融押出しされたポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合してなる樹脂を用いることにより、上記溶融押出しされたポリプロピレン層の特性を活かしつつ、プロピレン系エラストマー樹脂を混合したポリプロピレン層の特性を併せ持つ熱接着性樹脂層を構成することができる。
【0059】
また、上記各タイプのポリプロピレン、すなわち、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレンには、低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズ等のアンチブロッキング剤(AB剤)、脂肪酸アマイド系のスリップ剤等を添加してもよい。」

「【実施例1】
【0085】
以下、本発明の作用及び効果について、実施例を用いて具体的に説明する。実施例1は、熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した場合の、ヒートシール後のシール部における絶縁性について評価したものである。
【0086】
なお、本実施例で用いるプロピレン系エラストマー樹脂は、三井化学株式会社製のノティオ(登録商標)PN‐2070である。このプロピレン系エラストマー樹脂はプロピレン由来の構成単位の含量量が71モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位を含有するものである。また、その物性はショアーA硬度(ASTM D2240)が75、融点が138℃、密度(ASTM D1505)が867kg/m^(3)、ガラス転移温度(Tg)が-29℃、ヘイズが7%、メルトフローレート(MFR、ASTM D1238)が7.0g/10分である。
【0087】
次に本実施例で用いる電気化学セル用包装材料の製造方法について説明する。まず、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、他の化成処理面に酸変性ポリプロピレン(以下酸変性PPと略す)をロールコート法により塗布、焼付けし、酸変性PP面に、2層のランダムポリプロピレンフィルム(以下ランダムPPと略す)(厚さ5μm)でブロックポリプロピレンフィルム(以下ブロックPPと略す)(厚さ20μm)を挟んで成る3層共押出しフィルムを熱ラミネート法により、積層して比較例1の電気化学セル用包装材料を得た。
【0088】
なお、本実施例において、基材層は延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)、金属箔層はアルミニウム(厚さ40μm)を用い、化成処理層には、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる処理液をロールコート法により塗布し、皮膜温度が90℃以上となる条件において焼付けた。ここで、クロムの塗布量は10mg/m^(2)(乾燥重量)であり、酸変性PPは、アルミニウム温度が140℃以上となる条件において焼付け、酸変性PPの塗布量は、3g/m^(2)(乾燥重量)とした。
【0089】
次に、上記比較例1で得られた包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムの代わりに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)が10重量%混合したブロックPPフィルムを用いて本発明1に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0090】
次に、上記比較例1で得られた包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムの代わりに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用いて本発明2に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0091】
次に、上記比較例1で得られた包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムの代わりに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用い、2層のランダムPPの代わりにプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を10重量%混合したランダムPPフィルムを用いて本発明3に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0092】
次に、上記比較例1で得られた包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムの代わりに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用い、2層のランダムPPの代わりにプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合したランダムPPフィルムを用いて本発明4に係る電気化学セル用包装材料を得た。」

「【0120】
実施例6は、酸変性ポリプロピレン層及び熱接着性樹脂層を構成する溶融押出しされたポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した場合のシール強度について評価したものである。
【0121】
アルミニウム箔(厚さ100μm)の両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)を2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせ、他の化成処理面に酸変性PPに対しプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合した酸変性PP(厚さ15μm)を溶融押出しするとともに、ランダムPPを厚さ30μmになるよう溶融押出しして本発明9に係る積層体を得た。
【0122】
このとき、化成処理は、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる水溶液を用い、ロールコート法により塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼付けた。また、クロムの塗布量は10mg/m^(2)(乾燥重量)とした。酸変性PPは、ロールコート法により塗布し、アルミニウム温度が180℃以上となる条件において焼付けた。酸変性PPの塗布量は、3g/m^(2)(乾燥重量)とした。
【0123】
次に本発明9と同様の積層方法により、ランダムPPの代わりにポリプロピレン樹脂に対しプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合したランダムPPを厚さ30μmになるよう溶融押出しして得られた積層体を本発明10とし、前記ランダムPPの代わりにホモPPを厚さ30μmになるよう溶融押出しして得られた積層体を本発明11とし、前記ランダムPPの代わりにポリプロピレン樹脂に対しプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合したホモPPを厚さ30μmになるよう溶融押出しして得られた積層体を本発明12とした。
【0124】
また、ランダムPPの代わりにポリプロピレン樹脂に対しプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合したホモPPとポリプロピレン樹脂に対しプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070)を20重量%混合したランダムPPを厚さ30μmになるよう溶融押出しして得られた積層体を本発明13とした。」

「【実施例8】
【0137】
実施例8は、熱接着性樹脂層を構成するポリプロピレン層にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した場合の、ヒートシール後のシール部における絶縁性について評価したものである。
【0138】
なお、本実施例で用いるプロピレン系エラストマー樹脂は、三井化学株式会社製のノティオ(登録商標)PN‐2060である。このプロピレン系エラストマー樹脂はプロピレン由来の構成単位の含量量が79モル%であり、プロピレン由来の構成単位以外の構成単位としてエチレン由来の構成単位及び1-ブテン由来の構成単位を含有するものである。また、その物性はショアーA硬度(ASTM D2240)が82、融点が155℃、密度(ASTM D1505)が868kg/m^(3)、ガラス転移温度(Tg)が-28℃、ヘイズが4%、メルトフローレート(MFR、ASTM D1238)が6.0g/10分である。
【0139】
次に本実施例で用いる電気化学セル用包装材料の製造方法について説明する。まず、アルミニウムの両面に化成処理を施し、一方の化成処理面に、延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせる。次に、他の化成処理面に酸変性PPをロールコート法により塗布、焼付けし、酸変性PP面に、2層のランダムPP(厚さ5μm)でブロックPP(厚さ20μm)を挟んで成る3層共押出しフィルムを熱ラミネート法により、積層して電気化学セル用包装材料を得る。
【0140】
なお、本実施例において、基材層は延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)、金属箔層はアルミニウム(厚さ40μm)を用い、化成処理層には、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる処理液をロールコート法により塗布し、皮膜温度が90℃以上となる条件において焼付ける。ここで、クロムの塗布量は10mg/m^(2)(乾燥重量)であり、酸変性PPは、アルミニウム温度が140℃以上となる条件において焼付け、酸変性PPの塗布量は、3g/m2(乾燥重量)とする。
【0141】
次に、上記包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)が10重量%混合したブロックPPフィルムを用いて本発明16に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0142】
次に、上記包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用いて本発明17に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0143】
次に、上記包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用い、2層のランダムPPにプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)を10重量%混合したランダムPPフィルムを用いて本発明18に係る電気化学セル用包装材料を得た。
【0144】
次に、上記包装材料の積層方法において、3層共押出しフィルムを構成するブロックPPフィルムに、プロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)が20重量%混合したブロックPPフィルムを用い、2層のランダムPPにプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2060)を20重量%混合したランダムPPフィルムを用いて本発明19に係る電気化学セル用包装材料を得た。」

「【0150】
以上の実施例よりプロピレン系エラストマー樹脂(三井化学株式会社製ノティオ(登録商標)PN‐2070、PN‐2060)を混合することにより、酸変性ポリオレフィン層及び熱接着性樹脂層の物性が向上することが確認された。」

3 甲第3号証について
甲第3号証(特開2013-149397号公報)には、「電池用外装材、電池用外装材の成形方法及びリチウム二次電池」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、電池用外装材、電池用外装材の成形方法及びリチウム二次電池に関する。」

「【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 耐熱性樹脂フィルムを含む外層と、金属箔層と、滑剤が添加された熱可塑性樹脂フィルムを含む内層とが積層されてなり、前記外層の表面に前記滑剤が付着されていることを特徴とする電池用外装材。
[2] 前記熱可塑性樹脂フィルムにおける前記滑剤の含有量が500ppm以上5000ppm以下の範囲である[1]に記載の電池用外装材。
[3] 前記熱可塑性樹脂フィルムに、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリカからなる群から選ばれる1種又は2種以上の粒子が含有されている[1]または[2]に記載の電池用外装材。
[4] 前記熱可塑性樹脂フィルムがポリオレフィンからなる[1]乃至[3]の何れか一項に記載の電池用外装材。」

「【0029】
(滑剤)
内層53を構成する熱可塑性樹脂フィルムには、所定量の滑剤が添加される。ここで、滑剤は、絞り成形時に金型と電池用外装材との密着を防止するとともに両者の摺動性を高めて、絞り成形時の成形性を向上させる目的で添加するものである。また、滑剤は、電池用外装材5aの成形加工前のエージング工程において、外層51の表面に転写される。滑剤としては、例えば、流動パラフィンなどの炭化水素系、ステアリン酸などの脂肪酸系、ステアリルアミドなどの脂肪酸アミド類、金属石鹸、天然ワックス、シリコーンなどが好ましく、特に脂肪酸アミド類が好ましい。脂肪酸アミド類の具体例としては、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等を例示できる。
熱可塑性樹脂フィルムへの滑剤の添加方法は限定されるわけではなく、滑剤の必要量を直接樹脂に添加してフィルム製膜機でフィルム化する。予め高濃度の添加剤を含有した樹脂とフィルム化する樹脂とをブレンドしてフィルム化する。或いは滑剤を適切な溶媒に溶かして溶液化した後に熱可塑性樹脂フィルム表面に塗布する。といった方法を用いる。なお、滑剤は、外層51ではなく内層53に添加することが、外層51の強度を維持できる点で好ましい。
【0030】
滑剤の添加量は、特に限定されるものではないが、500?5000ppmの範囲が好ましい。滑剤の添加量が500ppm以上であれば、成形加工時に、電池用外装材5aと金型との密着を防止するとともに摺動性を高めて、電池用外装材5aの成形性を向上できる。また、外層51への滑剤の転写量を十分に確保できる。更に、滑剤の添加量が5000ppm以下であれば、内層53の機械的強度を低下させることがなく、また、ヒートシール性を高めることができる。滑剤の添加量は、より好ましくは800ppm?3000ppmの範囲であり、更に好ましくは1000ppm?2000ppmの範囲である。」

第5 当審の判断
1 申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)(いずれも甲1が主引例の場合について)
(1)甲1に記載された発明
甲1の【0029】?【0031】に記載される、PP-1として最終的に得られた「重合体」は、多段重合で得られており、そのモノマー成分が、プロピレンとエチレンであること、及び【0005】、【0006】の記載から、「ポリプロピレン樹脂組成物」であり、「プロピレン-エチレンブロック共重合体」であるといえる。
また、【0005】の記載から、甲1の「ポリプロピレン樹脂組成物」すなわち「プロピレン-エチレンブロック共重合体」は、フィルム用途に用いられるものであるといえる。
また、【0036】によれば、実施例1は重合体PP-1を用いて形成されたフィルムを意味するものと認められるところ、表2の実施例1の「(B)プロピレン含量 質量%」の項が「70.0」との記載から、実施例1の「(B)プロピレン-エチレン共重合体エラストマー」における「プロピレン」以外の割合は、30質量%であり、【0031】の記載から、「プロピレン」以外とはエチレンであるから、「(B)プロピレン-エチレン共重合体エラストマー」は、エチレン含量が30質量%であるといえる。

そうすると、甲1の【0028】?【0031】、【0036】、表2の記載から、実施例1のフィルムに用いられた重合体PP-1に着目すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「多段重合により得られる、(A)ポリプロピレン成分70質量%と、(B)プロピレンとエチレンとの共重合体エラストマー成分30質量%とを含有したプロピレン-エチレンブロック共重合体であって、
(A)ポリプロピレン成分は、エチレン含量が0質量%、
(B)プロピレンとエチレンとの共重合体エラストマー成分は、エチレン含量が30質量%、
である、フィルム用プロピレン-エチレンブロック共重合体。」

(2)本件発明1と甲1発明との対比・判断について
ア 甲1発明の「(A)ポリプロピレン成分」は、本件発明1の「プロピレン系重合体成分(A1)」に相当する。
甲1発明の「(B)プロピレンとエチレンとの共重合体エラストマー成分」は、【0031】の製造方法の記載から、ブロック共重合体ではなく、ランダム共重合体であるといえるから、本件発明1の「プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)」に相当する。
甲1発明の「(A)ポリプロピレン成分は、エチレン含量が0質量%」であることは、本件発明1の「(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0?2重量%のプロピレン単独重合体または共重合体であること。」との事項のうち、「(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0重量%のプロピレン単独重合体であること。」との点で一致している。
甲1発明の「(B)プロピレンとエチレンとの共重合体エラストマー成分は、エチレン含量が30質量%」であることは、本件発明1の「(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10?40重量%であること。」との事項のうち、「(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が30重量%であること。」との点で一致している。
甲1発明の「フィルム用プロピレン-エチレンブロック共重合体」は、「フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物」であるといえるから、本件発明1の「電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物」との事項のうち、「フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物」との点で一致している。

イ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

(一致点)
「多段重合により得られる、下記(a1)、(a3)の条件を満たす、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含むプロピレン-エチレンブロック共重合体(A)からなることを特徴とするフィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
・プロピレン-エチレンブロック共重合体(A);
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0重量%のプロピレン単独重合体であること。
(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が30重量%であること。」

(相違点1)
「フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物」は、本件発明1では「電池包装フィルム用」であるのに対し、甲1発明では「フィルム用」であるものの、「電池包装」用途と特定されていない点。

(相違点2)
本件発明1は、「(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が1.0?10g/10分であること。」との特定事項を有するのに対し、甲1発明は、「(A)ポリプロピレン成分」のMFRが不明な点。

(相違点3)
本件発明1は、「(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5?5g/10分であること。」との特定事項を有するのに対し、甲1発明は、「(B)プロピレンとエチレンとの共重合体エラストマー成分」のMFRが不明な点。

ウ 事案に鑑み、相違点2について検討する。

エ 甲1には、「(A)ポリプロピレン成分」のMFRについて記載も示唆もない。
また、甲2?甲3にも、多段重合で重合された「プロピレン-エチレンブロック共重合体」において、その「ポリプロピレン成分」のMFRを、「1.0?10g/10分」とすることは記載も示唆もされていない。

オ そして、甲1の【0008】には、「(A)ポリプロピレン成分は、その極限粘度[η]が、2.0?4.8dL/gであることが望ましい。より好ましくは、2.5?4.5dL/g、さらに好ましくは、2.8?4.0dL/gの範囲である。」と記載されているが、MFRとの関係は不明である。

カ そこで、参考文献1を参照すると、極限粘度[η]とMFRの関係について、以下の記載がある。
「MFIの場合も、したがって分子量依存性が多くlog(MFI)と極限粘度」[η]の間には図3・26のような直線関係がえられる。
しかしこの関係は分子量分布が異なるとずれて、分布が広いと同じ平均分子量でもMFIが大きくなる。分子量分布が広いときには、見かけ上低分子量分が希釈剤的な役割を果たすためと考えられる。」(第58頁第4行?8行)




ここで、MFIが、MFRと同義であることは、技術常識である。

キ 上記カのとおり、log(MFR)と極限粘度との間には、ある直線関係があるとはいえるが、当該直線関係は、ポリプロピレンの分子量分布が異なるとずれるものであり、分子量分布が異なれば、MFRの値は異なるものであるから、甲1発明の「(A)ポリプロピレン成分」について、その分子量分布が不明であり、log(MFR)と[η]の直線関係を特定することができないので、甲1【0008】の上記望ましいとされる極限粘度の値から、直ちにMFRの値を計算で求めることはできない。

ク よって相違点2は、実質的な相違点であるし、甲1発明において相違点2に係る本件発明1の特定事項とすることが容易になし得ることであるともいえない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ケ 本件発明2?6は、請求項1を引用するものであり、相違点2に係る事項を有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明ではないし、甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 申立理由1 特許法第29条第1項第3号(新規性)、申立理由2 特許法第29条第2項(進歩性)(いずれも甲2が主引例の場合について)
(1)甲2に記載された発明
甲2の請求項1には、
「基材層と、少なくとも片面に化成処理層を備えた金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とが、少なくとも順次積層された扁平型電気化学セル用包装材料において、
前記熱接着性樹脂層はプロピレン系樹脂で構成される樹脂層を有し、
前記プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合され、
該プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2?20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、
前記プロピレン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、前記プロピレン由来の構成単位が50モル%以上である、扁平型電気化学セル用包装材料。」が記載されており、
【0029】、【0030】には、熱接着性樹脂層に用いられる「プロピレン系樹脂(ポリプロピレンと略称される)」として、ホモポリプロピレンが記載されており、
【0043】には、「プロピレン系エラストマー樹脂」は、「メルトフローレート(MFR、ASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3?15g/10分」が好ましい旨が記載されており、
【0056】には、「ポリプロピレン層にメルトインデックスが5g/10min以上30g/10min以下のものを用いれば」好ましい旨が記載されている。
ここで、【0004】によれば、電気化学セル用包装材料は、フィルムとして用いられるものであるといえる。

以上の記載事項において、電気化学セル用包装材料を構成する熱接着性樹脂層に注目し、本件発明1に則して整理すると、甲2には、以下の甲2発明が記載されていると認められる。

(甲2発明)
「フィルム用の電気化学セル用包装材料の熱接着性樹脂層として用いられる、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合された樹脂であって、
前記プロピレン系エラストマー樹脂がプロピレン由来の構成単位と炭素数が2?20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体であり、
前記プロピレン由来の構成単位と前記α-オレフィン由来の構成単位の合計を100モル%としたとき、前記プロピレン由来の構成単位が50モル%以上であり、
前記プロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンであり、
前記プロピレン系樹脂のメルトインデックスが5g/10min以上30g/10min以下であり、
前記プロピレン系エラストマー樹脂のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3?15g/10分である、
樹脂。」

(2)本件発明1と甲2発明との対比・判断について
ア 甲2発明の「フィルム用の電気化学セル用包装材料の熱接着性樹脂層として用いられる、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合された樹脂」は、本件発明1の「電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物」に相当する。
甲2発明の「プロピレン系樹脂」は、本件発明1の「プロピレン系重合体成分(A1)」に相当する。
甲2発明の「プロピレン系エラストマー樹脂」は、「プロピレン由来の構成単位と炭素数が2?20でプロピレンを除くα-オレフィン由来の構成単位とからなる共重合体」であり、【0039】、【0040】によれば、「炭素数が2?20でプロピレンを除くα-オレフィン」として、エチレンが記載されており、「プロピレン系エラストマー樹脂」についてブロック共重合体であるとも多段重合で形成するとも記載されていないから、ランダム共重合体であるといえるので、本件発明1の「プロピレン-エチレンランダム共重合体」に相当する。
甲2発明の「プロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンであり」との事項は、本件発明1の「(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0?2重量%のプロピレン単独重合体または共重合体であること。」との事項と、「(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0重量%のプロピレン単独重合体」である点で重複する。
甲2発明の「プロピレン系樹脂のメルトインデックスが5g/10min以上30g/10min以下」との事項は、本件発明1の「(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が1.0?10g/10分であること。」との事項と、「(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が5?10g/10分であること。」の範囲で重複する。
甲2発明の「プロピレン系エラストマー樹脂のメルトフローレート(MFR、ASTM D1238に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3?15g/10分である」との事項は、本件発明1の「(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.5?5g/10分であること。」との事項と、「(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が3?5g/10分であること。」の範囲で重複する。

イ そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。

(一致点)
「下記(a1)?(a4)の条件を満たすプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含む、電池包装フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
(a1)プロピレン系重合体成分(A1)は、エチレン含量が0重量%のプロピレン単独重合体であること。
(a2)プロピレン系重合体成分(A1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が5?10g/10分であること。
(a4)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)が3?5g/10分であること。」

(相違点1)
プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)とを含む樹脂組成物が、本件発明1では、「多段重合により得られる」「プロピレン-エチレンブロック共重合体」であるのに対し、甲2発明は、「プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合された」「樹脂」であり、「多段重合により得られる」「プロピレン-エチレンブロック共重合体」ではない点。

(相違点2)
本件発明1は、「(a3)プロピレン-エチレンランダム共重合体成分(A2)は、エチレン含量が10?40重量%であること。」との特定事項を有するのに対し、甲2発明の「プロピレン系エラストマー樹脂」は、その「エチレン含量」が不明である点。

ウ 相違点1について検討する。

エ 甲2には、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂を混合することが記載されているにとどまり、多段重合により得られるプロピレン-エチレンブロック共重合体とすることについては記載も示唆もない。
また、甲2の【0017】、【0031】?【0033】を参酌すると、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した樹脂を熱接着性樹脂層とすることにより、熱接着性樹脂層の柔軟性、耐熱性、耐衝撃性が向上すること、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した樹脂は、10nm?50nmレベルのらせん状の結晶部である「島」が互いに連結して網状の構造をとり非晶部全体を覆っており、この「網」の構造により、優れたシール強度、耐久性、耐熱性、柔軟性を持つことが記載されている。
さらに、甲2の実施例を参酌しても、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した樹脂を熱接着性樹脂層に用いることが記載されている。
よって、甲2発明の「電気化学セル用包装材料の熱接着性樹脂層として用いられる、プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂が混合された樹脂」を、「プロピレン系樹脂にプロピレン系エラストマー樹脂を混合した樹脂」に代えて、「多段重合により得られるプロピレン-エチレンブロック共重合体」とする動機付けはない。
甲1?甲3を参酌しても、甲2発明において、相違点1に係る本件発明1の特定事項を備えるものとする動機付けを見出すことはできない。

オ よって、甲2発明において、相違点1に係る事項を備えるものとすることは、当業者にとって容易とはいえない。

カ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2発明及び甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

キ 本件発明2?6は、請求項1を引用するものであり、相違点1に係る特定事項を有するものであるから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明ではないし、甲1?甲3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-02-14 
出願番号 特願2014-115500(P2014-115500)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01M)
P 1 651・ 113- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高木 康晴  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
結城 佐織
登録日 2018-05-11 
登録番号 特許第6331720号(P6331720)
権利者 日本ポリプロ株式会社
発明の名称 電池包装用ポリプロピレン系樹脂組成物及びフィルム  
代理人 小野 誠  
代理人 青木 孝博  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 金山 賢教  
代理人 重森 一輝  
代理人 安藤 健司  
代理人 櫻田 芳恵  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 坪倉 道明  
代理人 市川 英彦  
代理人 今藤 敏和  
代理人 城山 康文  
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