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審決分類 審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する F16C
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する F16C
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する F16C
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する F16C
管理番号 1348995
審判番号 訂正2018-390170  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2018-11-02 
確定日 2019-01-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4483803号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4483803号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4483803号は、平成18年2月28日(優先権主張 平成17年3月3日)の出願であって、平成22年4月2日にその特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成30年11月2日に本件訂正審判の請求がなされた。

2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第4483803号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。

3 訂正の内容
本件訂正審判に係る訂正の内容は、次のとおりである。(下線部は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項6】を削除する。
(2)訂正事項2
明細書の段落【0027】の「請求項6に記載した様に、」との記載を削除する。
(3)訂正事項3
明細書の段落【0029】の「請求項6に記載した発明の構造によれば、」との記載を削除する。
(4)訂正事項4
明細書の【実施例5】との記載を【参考例5】とし、
同段落【0048】、【0051】、【0056】、【0057】及び【0058】の「本実施例」との記載を「本参考例」とし、
同段落【0049】の「本発明の」との記載を「本参考例の」とし、
同段落【0059】【図9】の「実施例5」との記載を「参考例5」とする。
(5)訂正事項5
明細書の段落【0048】の「請求項6に記載した発明に就いて、」との記載を削除する。

4 当審の判断
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項6を削除するというものであるので、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項6を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件について
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項6を削除するものであるから、訂正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでないとする理由は見いだせない。
したがって、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
(2)訂正事項2、3及び5
ア 訂正の目的について
訂正事項1により特許請求の範囲の請求項6が削除されたことに伴い、明細書の段落【0027】の「請求項6に記載した様に、」との記載、同段落【0029】の「請求項6に記載した発明の構造によれば、」との記載、及び、同段落【0048】の「請求項6に記載した発明に就いて、」との記載が、特許請求の範囲の記載との間で整合が取れなくなり不明瞭な記載となった。
訂正事項2、3及び5は、特許請求の範囲の記載との間で整合が取れなくなった明細書の上記の記載を削除するものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項2、3及び5は、特許請求の範囲の記載との間で整合が取れなくなった明細書の記載を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、訂正事項2、3及び5は、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正前の明細書の段落【0048】?【0058】及び【図9】?【図12】には、訂正前の請求項6に係る発明に対応する実施例5について記載されていた。
訂正事項1により特許請求の範囲の請求項6が削除されたことに伴い、明細書の上記の段落及び図面に記載されている実施例5は、本件特許に関する実施例として適当なものではなくなったため、上記の段落及び図面の説明中の「実施例」、「本発明」との記載は、特許請求の範囲の記載との間で整合せず不明瞭な記載となった。
訂正事項4は、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるために、上記の段落中の、実施例5に相当する「本実施例」との記載を「本参考例」とし、請求項6に記載した発明に相当する「本発明の」との記載を「本参考例の」とし、段落【0059】【図9】の説明の「実施例5」を「参考例5」とするとともに、段落【0048】の前に記載されている【実施例5】との記載を【参考例5】とするものであり、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものといえる。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否か
訂正事項4は、特許請求の範囲の記載との間で整合が取れなくなった明細書の「実施例」、「本発明」との記載を「参考例」、「本参考例」とそれぞれ改めるにすぎないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であるともに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。

5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スラスト円筒ころ軸受
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用変速機、カーエアコン用コンプレッサ、工作機械等、各種機械装置の回転支持部に組み込むスラスト円筒ころ軸受の改良に関する。具体的には、1枚の金属板に打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により低コストで造れる保持器を備えたスラスト円筒ころ軸受の改良に関し、この保持器の摩耗を低減して優れた耐久性を有する構造を実現するものである。尚、本発明の対象となるスラスト円筒ころ軸受には、転動体として、外径寸法に比べて軸方向寸法が大きなニードル(針状ころ)を使用した、スラストニードル軸受も含む。従って、本明細書及び特許請求の範囲に記載した円筒ころには、上記ニードルも含む。
【背景技術】
【0002】
1枚の金属板に打ち抜き加工及び曲げ加工を施す事により低コストで造れる保持器を備えたスラスト円筒ころとして、特許文献1?5に記載された技術が知られている。図13?17は、これら各特許文献に記載される等により知られている、従来構造の第1例のスラスト円筒ころ軸受1を示している。このスラスト円筒ころ軸受1は、1個の保持器2と、複数個の円筒ころ8、8とを備える。この保持器2は、鋼板等の金属板を曲げ形成する事により一体に造られたもので、円筒状の内径側リム部4と、円筒状の外径側リム部5と、中間板部6と、複数のポケット7、7とを備える。
【0003】
このうちの内径側リム部4は、上記保持器2の内周縁部に存在するもので、全周に亙って連続する円環状である。又、上記外径側リム部5は、上記保持器2の外周縁部に存在するもので、上記内径側リム部4と同心で全周に亙って連続する円環状である。又、上記中間板部6は、この内径側リム部4と上記外径側リム部5との間に存在するもので、断面形状が径方向に関して屈曲している。更に、上記各ポケット7、7は、上記中間板部6に円周方向に関して間欠的に、それぞれ放射方向に形成されたもので、それぞれの内側に円筒ころ8、8を、転動自在に保持する。
【0004】
これら各円筒ころ8、8の軸方向両端面には、図14に示す様に、これら各円筒ころ8、8の回転中心軸に対し直角方向に拡がる中央平坦面9と、この中央平坦面9の外周縁と転動面10とを全周に亙って連続させる、部分円すい凸面状若しくは断面形状が部分凸円弧状である凸曲面状の面取り部11とを形成している。従来構造の場合、この面取り部11の寸法のうち、上記各円筒ころ8の軸方向の寸法L_(8)と径方向の寸法W_(8)とをほぼ等しく(L_(8)≒W_(8))している。又、上記中間板部6のうちで、円周方向に隣り合うポケット7、7同士の間部分は、柱部12、12となっている。尚、上記中央平坦面9を含め、本明細書及び特許請求の範囲に記載した中央平坦面は、完全な平坦面とは限らない。平坦面にする事を意図して加工された面であれば良く、例えば、軸方向に10μm程度凹んでいる面も、中央平坦面である。要するに、上記中央平坦面9には、完全な平坦面とする為に厳密な加工を施す必要はない。
【0005】
又、上記中間板部6は、中央平板部13と、外径側平板部14と、内径側平板部15と、内径側連続部16と、外径側連続部17とから成る。このうちの中央平板部13は、径方向(図13、15の左右方向、図16の上下方向、図17の表裏方向)中間部で軸方向一端(図13、15の下端)寄り部分に形成されている。又、上記外径側平板部14は、上記外径側リム部5の径方向内側(図15の左側)に隣接する、軸方向他端(図13、15の上端)寄り部分に形成されている。又、上記内径側平板部15は、上記内径側リム部4の径方向外側(図15の右側)に隣接する、軸方向他端寄り部分に形成されている。上記外径側、内径側両平板部14、15は、同一平面上に位置する。又、上記内径側連続部16は、上記内径側平板部15の外周縁と、上記中央平板部13の内周縁とを連続させ、上記外径側連続部17は、この中央平板部13の外周縁と上記外径側平板部14の内周縁とを連続させる。これら内径側、外径側両連続部16、17同士の間隔は、上記中央平板部13から離れる程大きくなる。この中央平板部13の外側面と上記内径側、外径側両リム部4、5の先端縁とは、同一平面上に位置するか、或いは、上記中央平板部13の外側面の方がこの先端縁よりも軸方向に突出している。
【0006】
上述の様に構成する保持器2は、上記各ポケット7、7内に円筒ころ8、8を転動自在に保持した状態で、スラストころ軸受を構成する1対のレース面である、軸方向に対向する互いに平行な1対の平面同士の間に挟持する。上記中間板部6を構成する、上記中央、外径側、内径側各平板部13?15のうち、前記各柱部12、12の円周方向両側縁部分は、上記内径側、外径側両連続部16、17の両側縁部分に比べて、上記各ポケット7、7内に向け少し突出している。
【0007】
即ち、径方向外側位置の上記外径側平板部14、及び、径方向内側位置の上記内径側平板部15で、上記各柱部12、12の円周方向端縁部を、それぞれ外径側係止部18、18及び内径側係止部19、19としている。そして、図15、17の(A)に示す様に、これら外径側、内径側各係止部18、19と、上記各円筒ころ8の転動面10との係合により、これら各円筒ころ8の一部が上記中央平板部13及び上記内径側、外径側両リム部4、5の先端縁よりも軸方向に突出したままの状態となる様に、上記保持器2の軸方向一端側(図15、17の下側)への軸方向変位を規制している。
【0008】
又、径方向中間位置の上記中央平板部13で上記各柱部12、12の円周方向端縁部を、それぞれ中央係止部20、20としている。そして、図15、17の(B)に示す様に、これら中央係止部20、20と上記各円筒ころ8の転動面10との係合により、これら各円筒ころ8の一部が上記外径側、内径側両平板部14、15よりも軸方向に突出したままの状態となる様に、上記保持器2の軸方向他端側(図15、17の上側)への軸方向変位を規制している。
要するに、上記各ポケット7、7内に上記各円筒ころ8、8を保持した状態で、上記各係止部18?20とこれら各円筒ころ8、8の転動面10とを係合させて、これら各円筒ころ8、8に対する、上記保持器2の軸方向の変位を抑えている。即ち、この保持器2の軸方向に関する位置決めを、所謂ころ案内により図っている。
【0009】
上述の様なスラスト円筒ころ軸受1を構成する上記各円筒ころ8、8としては、前述の図14に示す様に、軸方向両端面中央部(外周縁寄りの面取り部の内側部分)を平坦面としたものが、負荷容量を確保する面から、近年多く使用される様になっている。即ち、円筒ころには、軸方向両端面を部分球面状或いは円すい面状の凸面としたものがあるが、この様な円筒ころの場合には、荷重を支承自在な転動面の軸方向長さ(有効長さ)が短くなり、その分、支承可能な負荷が小さくなる。これに対して、上記軸方向両端面中央部を平坦面とした円筒ころ8、8は、有効長さL(図14参照)を確保して、この円筒ころ8、8を組み込んだスラスト円筒ころ軸受1の負荷容量を確保し易くなる。
【0010】
ところで、上述の様なスラスト円筒ころ軸受1の使用時に上記各円筒ころ8、8には、遠心力に基づいて上記保持器2の径方向外方に向いた力が加わる。そして、この力により上記各円筒ころ8、8の軸方向両端面のうち、上記保持器2の径方向外側となる外径側端面21が、上記各ポケット7、7の周縁部のうち、この保持器2の径方向外側となる外径側周縁部22に押し付けられる。この結果、この外径側周縁部22と上記外径側端面21とが、図17の(A)の斜格子で示した部分で擦れ合う。但し、この外径側端面21は上記外径側周縁部22に対し、均等に押し付けられる訳ではない。実際の場合にこの外径側端面21は、上記各ポケット7、7内での上記各円筒ころ8、8のスキューに起因して、その外径寄り部分が上記外径側周縁部22に押し付けられた状態で、互いに摺接する。
【0011】
即ち、スラスト円筒ころ軸受1の運転時には、図18の(A)に示す様に、上記各円筒ころ8、8の自転軸の方向と上記保持器2の径方向とが互いに一致している事が理想であるが、実際の場合には、図18の(B)に鎖線で示す様に、これら両方向が互いに不一致になる、スキューが発生する事が避けられない。この様なスキューは、上記各円筒ころ8、8の転動面10とレース面との転がり接触部の摩擦係数が、転がり接触部の長さ方向に関して不均一である等により発生する。又、上記外径側端面21と上記外径側周縁部22とが片当たりする程度は、上記両方向のずれ角度(スキュー角度)が大きくなる程著しくなる。
【0012】
上記各円筒ころ8、8がスキューしつつ、上記外径側端面21のうちで、前記中央平坦面9のうちの外周縁部と前記面取り部11との境界部分と上記外径側周縁部22とが擦れ合うと、この擦れ合い部に局部的な応力集中が発生し、しかも大きな擦れ合い速度で擦れ合う。更には、この擦れ合い部に潤滑の為の油膜が形成されにくくなって、この擦れ合い部に金属接触が発生し易くなる。この結果、上記各円筒ころ8、8を構成する軸受鋼に比較して軟質の金属により造られた保持器2の一部で上記外径側周縁部22部分に、図19に示す様な、保持器2の円周方向両側程摩耗程度が著しい、凹入部23が形成される。
【0013】
この様な凹入部23が或る程度大きくなると、上記各円筒ころ8、8の一部で上記保持器2の径方向外端部外周縁に設けた面取り部11が、上記凹入部23内に入り込みつつ、本来のポケット7、7の位置よりも上記保持器2の径方向外方に変位する、所謂潜り込みが発生する。この様な潜り込みが発生すると、保持器に対するころ端面の摺動抵抗が増大し、前記スラスト円筒ころ軸受1を組み込んだ回転支持部の回転抵抗が大きくなり、この回転支持部を有する各種機械装置の性能が低下するだけでなく、著しい場合にはフレーキングや焼き付き等の故障の原因となる。この様な不都合を生じる摩耗は、近年に於ける自動車の性能向上により、トランスミッションやカーエアコンコンプレッサ等の各種機械装置の回転部分の回転速度が速くなる事に伴い、従来に比べて発生し易くなっている。
【0014】
一方、図20に示す様な、軸方向両端面を部分球状の凸面とした円筒ころ8aを、図21に示す様に、上述した従来構造の場合と同様の保持器2に組み込んだ場合には、スキューの有無に拘らず、この保持器2のポケット7の外径側周縁部22のうちの内側面端縁と上記円筒ころ8aの部分球状の凸面である外径側端面21aとが擦れ合う(エッジ当たりする)事により、この外径側周縁部22の中央部に、図22に示す様な部分円弧状の凹入部23aが形成される。そして、この凹入部23aが大きくなると、やはり上述した様な問題を生じる。
【0015】
この様な不都合を低減させる構造として従来から、特許文献5に記載された構造が知られている。図23は、この特許文献5に記載された発明に準じた従来構造を示している。この従来構造の場合には、保持器2のポケット7aを、外径側リム部5aの基部に達する部分にまで形成している。そして、このポケット7a内に、軸方向両端面を部分球状の凸面とした円筒ころ8aを保持し、この円筒ころ8aの外径側端面21aを、上記外径側リム部5aの内周面に対向させている。この様な従来構造の場合、これら両面同士が擦れ合った場合でも、擦れ合い部の直径を僅少にして擦れ合い速度Vを極く小さく抑えられるので、上記擦れ合い部の摩耗を抑えられる。但し、この様な引用文献5に記載された従来構造の場合には、軸方向端面を凸面とした円筒ころ8aを使用する事が必要となるので、この円筒ころ8aのうち、荷重を支承自在な転動面の軸方向長さL_(8a)が短くなり、その分、支承可能な負荷が小さくなる。
【0016】
【特許文献1】特開平6-94038号公報
【特許文献2】特開2000-213546号公報
【特許文献3】特開2002-206525号公報
【特許文献4】特開平11-351245号公報
【特許文献5】特開2003-83333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、負荷容量を確保する為の設計が容易で、保持器のポケット内に円筒ころを組み込む事を容易に行なえ、しかも保持器に設けたポケットの外径側周縁部の摩耗を抑えられる円筒ころ軸受を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のスラスト円筒ころ軸受は、何れも、前述した従来から知られているスラスト円筒ころ軸受と同様に、保持器と、複数個の円筒ころとを備える。
このうちの保持器は、全体を円輪状に造られて、円周方向複数個所に、それぞれが放射方向に配置された複数のポケットを備える。
又、上記保持器は、金属板を曲げ形成する事により一体に造られて、内径側リム部と、外径側リム部と、中間板部と、上記各ポケットと、複数の柱部とを備える。
このうちの内径側リム部は内周縁部に存在し、全周に亙って連続する円環状であり、上記外径側リム部は、外周縁部に存在し、上記内径側リム部と同心で全周に亙って連続する円環状である。
又、上記中間板部は、上記外径側リム部と上記内径側リム部との間に存在して、断面形状が径方向に関し屈曲しており、中央平板部と、外径側平板部と、内径側平板部と、内径側連続部と、外径側連続部とから成る。
このうちの中央平板部は、径方向中間部で軸方向一端寄り部分に形成されている。
又、上記外径側平板部は、上記外径側リム部の径方向内側に隣接する、軸方向他端寄り部分に形成されている。
又、上記内径側平板部は、上記内径側リム部の径方向外側に隣接する、軸方向他端寄り部分に形成されている。
又、上記内径側連続部は、上記内径側平板部の外周縁と上記中央平板部の内周縁とを連続させ、上記外径側連続部は、この中央平板部の外周縁と上記外径側平板部の内周縁とを連続させる。
又、上記各ポケットは、上記中間板部の径方向に長い矩形孔であって、この中間板部に円周方向に関して間欠的に、それぞれ放射方向に形成されている。
又、上記各円筒ころは、上記保持器の各ポケット内に、転動自在に保持されている。
【0019】
又、本発明の円筒ころ軸受は、前述した従来から知られているスラスト円筒ころ軸受と同様に、上記軸方向一端側への上記保持器の軸方向変位を、上記外径側平板部及び内径側平板部の一部で上記各柱部の円周方向端縁に設けられた各外径側係止部及び各内径側係止部と上記各円筒ころの転動面との係合により、これら各円筒ころの一部が上記内径側、外径側両リム部の先端縁及び上記中央平板部よりも軸方向に突出したままの状態となる様に規制している。
又、上記軸方向他端側への上記保持器の軸方向変位を、上記中央平板部の一部で上記各柱部の円周方向端縁に設けられた各中央係止部と上記各円筒ころの転動面との係合により、これら各円筒ころの一部が上記外径側平板部及び上記内径側平板部よりも軸方向に突出したままの状態となる様に規制している。
【0020】
特に、本発明のスラスト円筒ころ軸受に於いては、何れも、上記各円筒ころは、それぞれの軸方向両端面のうちの少なくとも上記保持器の外径側端面に、これら各円筒ころの回転中心軸に対し直角方向に拡がる中央平坦面と、この中央平坦面の外周縁と転動面とを全周に亙って連続させる面取り部とを備えたものである。
【0021】
そして、請求項1に記載したスラスト円筒ころ軸受の場合には、上記保持器を軸方向一端側に変位させて上記各外径側係止部及び各内径側係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側、内径側両平板部の外面から突出する量を、これら各円筒ころの径方向に関する上記面取り部の寸法未満にしている。これと共に、上記保持器を軸方向他端側に変位させて上記各中央係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側平板部の外面から突出する量とこれら各円筒ころの径方向に関する上記面取り部の寸法との差を、上記金属板の板厚よりも小さくしている。
【発明の効果】
【0022】
上述の様に構成する本発明によれば、負荷容量を確保する為の設計が容易で、しかも保持器に設けた各ポケットの外径側周縁部の摩耗を抑え、この摩耗に基づく、各円筒ころの外径側端部が保持器の外径寄り部分の片面側に潜り込む事を防止できるスラスト円筒ころ軸受を実現できる。
即ち、上記各ポケットの外径側周縁部と、これら各ポケット内に保持された各円筒ころの外径側端面との擦れ合い部を、従来に比べて狭い範囲内に収め、この擦れ合い部をより各ポケットの円周方向の中央寄り部分に位置させる事ができる。この為、スキューによる片当たりを起因として、この擦れ合い部に局部的な応力集中が発生しにくくなり、更にこの擦れ合い部の滑り速度Vを小さく抑えられる。この結果、上記外径側周縁部部分に、前述の図19に示した様な、摩耗による凹入部23が形成される事を防止できる。
又、上記各円筒ころとして、軸方向両端面のうちの少なくとも上記保持器の外径側端面に、これら各円筒ころの回転中心軸に対し直角方向に拡がる中央平坦面を備えたものを使用する為、スラスト円筒ころ軸受の負荷容量の確保を図るべく、これら各円筒ころの有効長さを大きくする設計が容易になる。
更に、上記保持器の軸方向位置を、上記各ポケットに形成した上記各係止部と上記各円筒ころの転動面との係合により図っているので、上記保持器の軸方向両側面と相手レース面とが擦れ合う事がない。この為、この保持器がこのレース面に付着した潤滑油を掻き取る事を防止して、このレース面と上記各円筒ころの転動面との転がり接触部を良好に潤滑できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、保持器を軸方向一端側に変位させて各外径側係止部及び各内径側係止部と各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの中央平坦面と各ポケットの外径側周縁部との擦れ合い面の長さを、これら各円筒ころの直径の80%以内に抑える。
この様に構成すれば、擦れ合い部に於ける局部的な応力集中をより一層発生しにくくでき、この擦れ合い部の滑り速度Vを更に小さくできる。この結果、上記外径側周縁部部分に、前述の図19に示した様な、摩耗による凹入部23が形成される事をより有効に防止できる。
【0024】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した様に、各円筒ころの面取り部の寸法のうち、これら各円筒ころの軸方向の寸法よりも同じく径方向の寸法を大きくする。
この様な構成を採用すれば、スラスト円筒ころ軸受の負荷容量の確保を図るべく、これら各円筒ころの有効長さを更に大きくする設計が可能になる。
【0025】
又、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した様に、保持器を軸方向一端側に変位させて各外径側係止部及び各内径側係止部と各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側、内径側両平板部の外面から突出する量と、この保持器を軸方向他端側に変位させて各中央係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記両平板部の外面から突出する量との差、即ち、これら各円筒ころに対する上記保持器の軸方向に関するガタ量を、50μm以上とする。
前述した、この保持器の軸方向に関する位置決めをころ案内で図る為の条件を満たしつつ、上記ガタ量を50μm以上確保すれば、上記各円筒ころの転動面と上記保持器を構成する各柱部の円周方向両側縁との隙間を十分に確保できる。この為、上記各円筒ころの転動面に付着した潤滑油がこれら各柱部の円周方向両側縁により掻き取られる事を防止して、これら各円筒ころの転動面と相手レース面との転がり接触部に十分な潤滑油を供給できる。そして、これら各転がり接触部に十分な油膜を形成して、上記各円筒ころの転動面及び相手レース面の転がり疲れ寿命の確保を図れる。
【0026】
更に、本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、上記各円筒ころの転動面とそれぞれ転がり接触するレース面を有する1対の部材を、何れも使用時に回転するものとし、保持器の中央平板部を、使用回転速度が速い部材に対向させる。
この様な構成を採用すれば、より多くの潤滑油を上記各円筒ころの外径側端面と上記保持器の外径側周縁部との擦れ合い部に送り込め、この擦れ合い部での金属接触を発生しにくくできる。
【0027】
更に、本発明を実施する場合に好ましくは、各ポケットを、金属板に打ち抜き加工を施す事により形成する。又、この打ち抜き加工は、パンチを、外径側、内径側両平板部の内面側から外面側に突き通す事により行なう。従って、上記各ポケットの内周縁のうちで上記外径側、内径側両平板部に対応する部分に、これら両平板部の内面側に上記打ち抜き加工に伴う剪断面が、同じく外側面側に破断面が、それぞれ存在する。そして、各円筒ころの軸方向両端面のうちの少なくとも上記保持器の外径側端面に設けた中央平坦面を、上記各ポケット内での上記各円筒ころの変位に拘らず、上記破断面と接触しない様にする。この為に、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側平板部の外面から突出する量とこれら各円筒ころの径方向に関する面取り部の寸法との差を、上記破断面の幅との関係で規制する。
【0028】
この様な構成を採用すれば、低コストで造れる構成で、上記各円筒ころの軸方向端面に存在する中央平坦面と、上記破断面とが擦れ合う事を防止できる。そして、この中央平坦面と、上記各ポケットの内周縁のうちで上記外径側平板部に対応する部分との擦れ合い部の摩擦を低減できる。即ち、上記各ポケットの形成作業を低コストで行なう為には、プレス加工機を使用した、パンチでの打ち抜き加工による事が好ましい。但し、打ち抜き加工により上記各ポケットを形成すると、形成後の各ポケットの内周縁に、剪断面と破断面とが形成される。このうちの剪断面が上記パンチの挿入方向入口側に、破断面が同じく出口側に、それぞれ形成される。素材となる上記金属板の厚さ方向に関する、これら剪断面と破断面との割合は、上記パンチと受型との間のクリアランスや、パンチの先端縁の形状等、打ち抜き加工の条件により変わる。具体的には、クリアランスを小さくし、先端縁を尖らせる程、剪断面の割合が多くなる。但し、スラスト円筒ころ軸受用保持器の製造作業を、低コストで能率良く行なう事を考慮した場合、剪断面と破断面との割合は、ほぼ同じ程度になる。
【0029】
上記剪断面の表面粗さと上記破断面の表面粗さとを比較した場合、剪断面の表面粗さの値が小さい(平滑面に近い、比較的良好な摩擦面である)。従って、上記各円筒ころの軸方向端面に存在する中央平坦面と、比較的良好な摩擦面である上記剪断面とのみを摺接させて(この中央平坦面と上記破断面とが擦れ合う事を防止して)、この中央平坦面と相手面との擦れ合い部の摩擦を低減できる。従って、上記各ポケットの内周縁に、製造コストの上昇に結び付く様な仕上加工を行なわなくても、スラスト円筒ころ軸受の耐久性向上を図れる。
【実施例1】
【0030】
図1?2は、請求項1に対応する、本発明の実施例1を示している。尚、本実施例の特徴は、各円筒ころ8の軸方向両端面外径寄り部分に形成した面取り部11の径方向寸法(中央部に形成した中央平坦面9の直径)との関係で、保持器2を構成する中間板部6に放射方向に設けた複数のポケット7内での各円筒ころ8の動きを規制する事により、これら各円筒ころ8として、軸方向端面の中央部に中央平坦面9を設けたものを使用しても、上記各ポケット7の外径側周縁部22に、前述の図19に示す凹入部23に結び付く様な摩耗が生じる事を防止する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図13?16に示した従来構造と同様であるから、重複する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
【0031】
本実施例の場合、図1の(A)に示す様に、上記各円筒ころ8に対し上記保持器2を軸方向一端側(図1の下側)に変位させて、各外径側係止部18、18及び各内径側係止部19、19と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態で、これら各円筒ころ8の一部が上記保持器2を構成する外径側、内径側両平板部14、15の外面から突出する量△_(A)を、上記各円筒ころ8の径方向に関する面取り部11の寸法W_(11)未満(△_(A)<W_(11))にしている。従って、上記外径側、内径側各係止部18、19と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態では、図1の(A)-(b)に斜格子で示す様に、上記各円筒ころ8の中央平坦面9と上記各ポケット7の外径側周縁部22との擦れ合い面が、上記保持器2を構成する金属板の板厚の範囲内に収まる。言い換えれば、上記各ポケット7の外径側周縁部22のうちで、上記各円筒ころ8の自転軸から離れた外径側平板部14の表面寄り部分には、上記面取り部11が対向し、これら表面寄り部分と面取り部11との間に隙間が存在する(擦れ合わない)様にしている。
【0032】
更に、本実施例の場合には、図1の(B)に示す様に、上記各円筒ころ8に対し上記保持器2を軸方向他端側(図1の上側)に変位させて、各中央係止部20、20と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態で、これら各円筒ころ8の一部が上記保持器2を構成する外径側平板部14の外面から突出する量△_(B)とこれら各円筒ころ8の径方向に関する上記面取り部の寸法W_(11)との差(W_(11)-△_(B))を、上記保持器2を構成する金属板の板厚T_(2)よりも小さく{(W_(11)-△_(B))<T_(2)}している。従って、上記各中央係止部20、20と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態でも、図1の(B)-(b)に斜格子で示す様に、上記各円筒ころ8の中央平坦面9と上記各ポケット7の外径側周縁部22とが擦れ合う。言い換えれば、この外径側周縁部22の内面側端縁と前記面取り部11とが擦れ合う(エッジ当りする)事はない。
【0033】
上記各突出量(最大突出量)△_(A)、△_(B)を上述の範囲に規制する為に、本実施例の場合には、図2に示す様に、上記各ポケット7毎に互いに対向する、1対の外径側係止部18、18同士の間隔D_(18)(=1対の内径側係止部19、19同士の間隔D_(19))と、1対の中央係止部20、20同士の間隔D_(20)を、上記各円筒ころ8の直径D_(8)(図1参照)との関係で規制している。
【0034】
本実施例の場合、上述の様な構成により、上記外径側周縁部22のうちの、各円筒ころ8の自転中心軸から離れた外径側平板部14の表面(図1の上面)寄り部分と、これら各円筒ころ8の外径側端面21とが擦れ合わない様にしている。言い換えれば、上記各ポケット7の外径側周縁部22と、これら各ポケット7内に保持された上記各円筒ころ8の外径側端面21との擦れ合い部を、図1の(A)-(b)、(B)-(b)に斜格子で示す様に、上記各ポケット7の円周方向の中央寄り部分に位置させている。この為、スキューによる片当たりを起因として、上記擦れ合い部に局部的な応力集中が発生しにくくなり、更に、この擦れ合い部の滑り速度Vを小さく抑えられる。この結果、上記外径側周縁部22部分に、前述の図19に示した様な、摩耗による凹入部23が形成される事を防止できる。又、上記外径側周縁部22の内面側端縁と上記面取り部11とがエッジ当りする事がなく、当該部分に著しい摩耗が生じる事がない。
【0035】
更に、本実施例の場合には、上記保持器2の軸方向位置を、上記各ポケット7に形成した前記各係止部18?20と、上記各円筒ころ8の転動面10との係合により図っているので、上記保持器2の軸方向両側面と相手レース面とが擦れ合う事がない。この為、この保持器2がこのレース面に付着した潤滑油を掻き取る事を防止して、このレース面と上記各円筒ころ8の転動面10との転がり接触部を良好に潤滑できる。この為、厳しい使用条件の下でも、この転動面10及び上記各相手レース面の損傷防止を図れる。
【0036】
次の表1は、本実施例の効果を確認する為に行なった第一の実験の結果を示している。この第一の実験は、スラスト円筒ころ軸受に、動定格荷重の15%のスラスト荷重を付加した状態で、このスラスト円筒ころ軸受を、許容回転速度の2倍の回転速度で100時間運転した後、各部の摩耗を観察する事で行なった。使用した潤滑油はATフルードとし、温度は室温とした。
【表1】

【0037】
この表1に記載された第一の実験の結果から明らかな通り、本実施例の構造によれば、保持器2に設けた各ポケット7の外径側周縁部22の摩耗を抑え、この摩耗による、各円筒ころ8の外径側端部が保持器2の外径寄り部分の片面側に潜り込む事を防止し、しかも転がり接触部の潤滑を良好にできる。
【0038】
又、本実施例の様に、上記各ポケット7の外径側周縁部22と、上記各円筒ころ8の外径側端面21とを、中央平坦面9部分でのみ摺接させる(この外径側周縁部22と面取り部11とを摺接させない)事の効果に就いて解析した結果を、図3により説明する。この図3のうちの(A)は、本実施例の様に、外径側周縁部22と上記中央平坦面9部分とを摺接させる場合を、同じく(B)は、この外径側周縁部22と上記面取り部11の一部とを摺接させる場合を、それぞれ示している。又、図3の(a)は、図1の(b)と同様の図であり、図3の(b)は、上記各円筒ころ8の中心からの距離(横軸)と、各位置でのqv値(荷重qと滑り速度vとの積)との関係を示すグラフである。尚、スラスト円筒ころ軸受を構成する円筒ころの数は50とし、460Nのアキシアル荷重を支承しつつ、17300min^(-1)で回転するとして解析した。
【0039】
図3の(A)-(a)に示した本実施例の構造の場合には、上記各円筒ころ8の外径側端面21と上記外径側周縁部22とは、中央平坦面9の周縁部でのみ比較的強く擦れ合うが、この周縁部でもqvは、図3の(A)-(b)に示した様に、限られた値に止まる。この結果、上記外径側周縁部22に、実用上問題となる様な偏摩耗が生じる事はない。これに対して、図3の(B)-(a)に示した比較例の構造の様に、上記各円筒ころ8の外径側端面21と上記外径側周縁部22とが、前記面取り部11の一部で擦れ合う場合には、これら外径側端面21と外径側周縁部22との擦れ合い面積が狭くなって、狭い面積に荷重qが集中して加わる状態となる。この結果、図3の(B)-(b)に示す様に、擦れ合い部のqv値が局部的に高くなり、この擦れ合い部の摩耗が著しくなる(偏摩耗を生じる)。この様な解析結果を示した図3からも、本実施例の構造により、前記保持器2に設けた上記各ポケット7の外径側周縁部22の摩耗を抑えられる事が分かる。
【実施例2】
【0040】
図4は、請求項1?2に対応する、本発明の実施例2を示している。尚、本実施例の特徴も、各円筒ころ8の軸方向両端面外径寄り部分に形成した面取り部11の径方向寸法(中央部に形成した中央平坦面9の直径)との関係で、保持器2を構成する中間板部6に放射方向に設けた複数のポケット7内での各円筒ころ8の動きを規制する事により、これら各円筒ころ8として、軸方向端面の中央部に中央平坦面9を設けたものを使用しても、上記各ポケット7の外径側周縁部22に、前述の図19に示す凹入部23に結び付く様な摩耗が生じる事を防止する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図13?16に示した従来構造と同様であるから、重複する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
【0041】
本実施例の場合には、図4の(A)に示す様に、上記円筒ころ8に対し上記保持器2を軸方向一端側{図4の(A)の下側}に変位させて、各外径側係止部18、18及び各内径側係止部19、19と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態で、これら各円筒ころ8の軸方向端面に設けた中央平坦面9と上記各ポケット7の外径側周縁部22とが、図4の(A)に斜格子で示した擦れ合い面24で摺接する。本実施例の場合には、この擦れ合い面24の上記保持器2の円周方向に関する長さL_(24)を、上記各円筒ころ8の直径D_(8)の80%以内(L_(24)≦0.8D_(8))に、好ましくは40?70%の範囲内{L_(24)=(0.4?0.7)D_(8)}に規制している。上記擦れ合い面24の長さL_(24)をこの範囲に規制する為の具体的構造は、前述の実施例1の場合と同様である。そして、本実施例の場合も、この実施例1の場合と同様に、上記外径側周縁部22に、上記円筒ころ8の潜り込みに繋がる様な摩耗が発生する事を防止できる。
【実施例3】
【0042】
図5?7は、請求項1?3に対応する、本発明の実施例3を示している。尚、本実施例の特徴は、保持器2を構成する中間板部6に放射方向に設けた複数のポケット7内での各円筒ころ8bの動きとの関係で、これら各円筒ころ8bの軸方向両端面の外径寄り部分に形成した面取り部11a、11aの形状及び寸法を規制する事により、これら各円筒ころ8bとして、軸方向端面の中央部に中央平坦面9aを設けたものを使用しても、上記各ポケット7の外径側周縁部22に、前述の図19に示す凹入部23に結び付く様な摩耗が生じる事を防止する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図13?16に示した従来構造と同様であるから、重複する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本実施例の特徴部分を中心に説明する。
【0043】
本実施例の場合、上記各円筒ころ8bは、それぞれの軸方向両端面の外径寄り部分に形成した面取り部11a、11aの寸法のうち、上記各円筒ころ8bの軸方向の寸法L_(11a)よりも径方向の寸法W_(11a)を大きく(L_(11a)<W_(11a))している。従って、本実施例に組み込む上記各円筒ころ8bの軸方向両端面中央部に形成した中央平坦面9aの直径D_(9a)は、前述した従来構造に組み込む各円筒ころ8の軸方向両端面中央部に形成した中央平坦面9の直径D_(9)(図14参照)よりも小さい(D_(9a)<D_(9))。言い換えれば、本実施例の場合、上記中央平坦面9aと上記両面取り部11a、11aとの境界部が、従来構造の場合の境界部よりも、上記各円筒ころ8bの(自転)中心軸寄り部分に存在する。尚、上記径方向の寸法W_(11a)を上記軸方向の寸法L_(11a)よりも大きくする程度は、1.1?2倍程度{W_(11a)=(1.1?2)L_(11a)}が好ましい。
【0044】
本実施例の場合、上記両面取り部11a、11aの寸法を上述の様に規制する事により、上記各円筒ころ8bの転動面10の軸方向長さL_(10)(=各円筒ころ8bの有効長さ)を確保しつつ、これら各円筒ころ8bの外径側端面21bと上記各ポケット7の外径側周縁部22との擦れ合い部の摩耗を抑え、前述した実施例1の場合と同様に、上記外径側周縁部22に、上記円筒ころ8bの潜り込みに繋がる様な摩耗が発生する事を防止できる。
【0045】
又、本実施例の場合には、上記各円筒ころ8bとして、軸方向両端面に、これら各円筒ころ8bの回転中心軸に対し直角方向に拡がる中央平坦面9aを備え、この中央平坦面9aと転動面10とを、前述した様な寸法L_(11a)、W_(11a)を有する面取り部11aにより連続させたものを使用する。この為、上記転動面10の軸方向長さL_(10)(=各円筒ころ8bの有効長さ)を大きくして、これら各円筒ころ8bを組み込んだスラスト円筒ころ軸受の負荷容量の確保を図る設計が容易になる。
【実施例4】
【0046】
請求項4に記載した発明に就いて、図8を参照しつつ説明する。先に説明した請求項1?3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、各ポケット7内での各円筒ころ8の、保持器2の軸方向に関する変位量を、或る程度確保する。この変位量を規制する為に、図8に記載した2通りの状態を考える。このうち、図8の左側に示した状態は、上記保持器2を軸方向一端側に変位させて、各外径側係止部18及び各内径側係止部19と各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態である。この状態での、これら各円筒ころ8の一部が上記保持器2を構成する外径側、内径側両平板部14、15の外面から突出する量を、△_(max)とする。これに対して、図8の右側に示した状態は、上記保持器2を軸方向他端側に変位させて、各中央係止部20と上記各円筒ころ8の転動面10とを係合させた状態である。この状態での、これら各円筒ころ8の一部が上記外径側、内径側両平板部14、15の外面から突出する量を、△_(min)とする。そして、これら両突出量△_(max)、△_(min)同士の差(△_(max)-△_(min))、即ち、上記各円筒ころ8に対する上記保持器2の軸方向に関するガタ量を、50μm以上とする。
【0047】
先に述べた実施例1?3の様に、上記保持器2の軸方向に関する位置決めをころ案内で図る為の条件を満たしつつ、上記ガタ量を50μm以上確保すれば、上記各円筒ころ8の転動面10と上記保持器2を構成する各柱部12の円周方向両側縁との隙間を十分に確保できる。この為、上記各円筒ころ8の転動面10に付着した潤滑油がこれら各柱部12の円周方向両側縁により掻き取られる事を防止して、上記各円筒ころ8の転動面10と相手レース面との転がり接触部に十分な潤滑油を供給できる。そして、これら各転がり接触部に十分な油膜を形成して、上記各円筒ころ8の転動面10及び相手レース面の転がり疲れ寿命の確保を図れる。
【参考例5】
【0048】
図9?12を参照しつつ説明する。本参考例は、前述の実施例1で規制した、図1の(A)-(b)に示した突出量(最大突出量)△_(A)を、各ポケット7の外径側周縁部22に存在する剪断面25と破断面26との寸法との関係で、上記実施例1の場合よりも更に厳密に規制する事により、各部の摩耗をより一層低減できる様にするものである。
【0049】
本参考例のスラスト円筒ころ軸受に組み込む保持器2は、金属板にプレス加工を施して造る事が、この保持器2の製造コストを抑える面からは好ましい。この場合に上記各ポケット7は、上記金属板に、プレスによる打ち抜き加工を施す事により形成する。この打ち抜き加工は、プレス加工の技術分野で広く知られている如く、図11に示す様に、上記各ポケット7に見合う形状及び大きさの端面形状を有するパンチ27により金属板28の一部を、受型29に設けた受孔30内に押し込む事により行なう。この様な打ち抜き加工に伴って、上記金属板28の一部で上記パンチ27の外周縁と上記受孔30の内周縁とに挟まれる部分に剪断力が加わり、このパンチ27の先端面が突き当てられた部分が打ち抜かれる。
【0050】
この様な打ち抜き加工の初期段階では、上記金属板28の一部で上記各ポケット7の内周縁に対応する部分に剪断面25が生じ、上記パンチ27が或る程度進行すると、このパンチ27の先端面外周縁に対応する部分が一気に破断する。この状態で、上記各ポケット7の内周縁に対応する部分に破断面26が生じる。尚、上記打ち抜き加工の極く初期段階では、上記金属板28の一部にダレが生じる。従って、打ち抜き加工後に於ける上記各ポケット7の内周縁には、図12に示す様に、上記パンチ27の入口側から順番に、ダレ31と、剪断面25と、破断面26とが生じる。何れにしても、上記保持器2の製造コストを抑える為には、この様に加工された上記各ポケット7の内周縁に、表面粗さを向上させる(平滑にする)為の仕上加工を施す事は好ましくない。
【0051】
一方、剪断面の表面粗さの値と破断面の表面粗さの値とを比較した場合、剪断面の表面粗さの値の方が小さい(平滑面に近く、擦れ合い面として良好である)。従って、上記各ポケット7の外径側周縁部22と各円筒ころ8の外径側端面21との擦れ合い部の摩耗を抑える為には、これら各円筒ころ8の外径側端面21を、上記各ポケット7の外径側周縁部22のうちで剪断面25部分に当接させる事が好ましい。そこで本参考例の場合には、上記打ち抜き加工時に於ける上記パンチ27の打ち抜き方向を規制すると共に、上記各円筒ころ8の一部が上記保持器2を構成する外径側平板部14の外面から突出する量と、これら各円筒ころ8の径方向に関する前記面取り部11の寸法との差を、上記破断面26の幅との関係で規制している。
【0052】
具体的には、上記打ち抜き加工を、パンチ27を外径側、内径側両平板部14、15の内面側から外面側に、図10の下から上に突き通す事により行なう。そして、上記外径側周縁部22を含む、上記各ポケット7の内周縁のうちの、上記外径側、内径側両平板部14、15の内面側(図9、10の下面側)に上記打ち抜き加工に伴う剪断面25を、同じく外側面側(図9、10の上面側)に破断面26を、それぞれ存在させる。
【0053】
更に、上記各ポケット7内での上記各円筒ころ8の変位量、特に、上記外径側、内径側両平板部14、15の外面からの突出量の最大値{図9の(B)-(b)に示した様に、上記各円筒ころ8がこれら両平板部14、15側に変位し切った状態での突出量}△_(max)を、前述の実施例1の場合よりも小さく規制している。又、上記各円筒ころ8の上記外径側、内径側両平板部14、15の外面からの突出量の最小値{図9の(A)-(b)に示した様に、上記各円筒ころ8が中央平板部13側に変位し切った状態での突出量}△_(min)を、上記実施例1の場合と同様に規制している。
【0054】
先ず、上記最大値△_(max)の規制に就いて、図9の(B)により説明する。この最大値△_(max)は、上記保持器2を構成する金属板28の厚さ方向に関する上記破断面26の幅W_(26)と、上記外径側端面21に存在する面取り部11の、上記各円筒ころ8の径方向に関する幅W_(11)との関係で規制する。即ち、上記破断面26の幅W_(26)と上記最大値△_(max)との和(W_(26)+△_(max))を、上記面取り部11の幅W_(11)未満{(W_(26)+△_(max))<W_(11)、(W_(26)+△_(max))/W_(11)<1}としている。この様な規制により、上記各ポケット7内での上記各円筒ころ8の変位に拘らず、これら各円筒ころ8の外径側端面21に設けた中央平坦面9が、上記破断面26と接触しない様にしている。
【0055】
次に、上記最小値△_(min)の規制に就いて、図9の(A)により説明する。この最小値△_(min)の規制に就いては、前述の実施例1の場合{図1の(B)-(b)の△_(B)の場合}と同様である。即ち、上記面取り部11の径方向に関する幅寸法W_(11)と上記最小値△_(min)との差(W_(11)-△_(min))を、上記保持器2を構成する金属板の板厚T_(2)よりも小さく{(W_(11)-△_(min))<T_(2)、(W_(11)-△_(min))/T_(2)<1}している。従って、上記各円筒ころ8が上記中央平板部13側に変位し切った状態でも、図9の(A)-(b)に斜格子で示す様に、上記各円筒ころ8の中央平坦面9と上記各ポケット7の外径側周縁部22(のうちの上記剪断面25)とが擦れ合う。言い換えれば、この外径側周縁部22の内面側端縁と上記面取り部11とが擦れ合う(エッジ当りする)事はない。
【0056】
本参考例の場合には、上述の様な構成を採用する事により、低コストで造れる構成で、前述の実施例1により得られる効果に加えて、上記各円筒ころ8の軸方向端面に存在する中央平坦面9と、上記破断面26とが擦れ合う事を防止して、より一層の耐久性向上を図れる。即ち、前記突出量の最大値△_(max)を、上記破断面26の幅W_(26)と上記面取り部11の幅W_(11)との関係で前述の様に規制している為、上記中央平坦面9と、表面粗さの値が大きい(粗い)上記破断面26とが擦れ合う事を防止できる。言い換えれば、上記中央平坦面9を、表面粗さの値が小さい(比較的滑らかな)前記剪断面25と摺接させて、擦れ合い部の摩擦を低減できる。従って、前述した様に、上記各ポケット7の内周縁に、製造コストの上昇に結び付く様な仕上加工を行なわなくても、スラスト円筒ころ軸受の耐久性向上を図れる。
【0057】
次の表2は、本参考例の効果を確認する為に行なった、第二の実験の結果を示している。この第二の実験には、内径が50mm、外径が70mm、厚さが0.5mmの保持器を組み込んだスラスト円筒ころ軸受を、スラスト荷重を付加しない状態で、許容回転速度の2倍の回転速度(12000min^(-1))で50時間運転した。その後、上記スラスト円筒ころ軸受を分解し、上記各ポケット7の外径側周縁部22のうちで、最も摩耗が進んだ部分の摩耗深さを測定した。使用した潤滑油はATフルードとし、温度は室温とした。又、各円筒ころ8の外径側端面21の表面粗さは0.35?0.4μmRaとした。又、外径側周縁部22を含め、各ポケット7の周縁部の表面粗さは、剪断面25部分に関しては0.15?0.5μmRaとし、破断面26部分に関しては1.0?2.5μmRaとした。粗さに幅があるのは、試料毎に面に差が生じる為であり、意識的に差をつけたものではない。又、剪断面25の表面粗さの値は、素材となる金属板(アンコイラから引き出したコイル材)の表面粗さの値とほぼ同じ値である。
【0058】
【表2】

この表2にその結果を示した実験から明らかな通り{特に、(W_(26)+△_(max))/W_(11)>1である左半分と、(W_(26)+△_(max))/W_(11)<1である右半分との間で比較すれば分かる様に}、本参考例の構造によれば、各円筒ころ8の外径側端面21と、各ポケット7の外径側周縁部22との擦れ合い部の摩擦環境を改善して、この擦れ合い部の摩耗を低減できる。尚、この擦れ合い部を構成する各面の表面粗さは、上記外径側端面21に関しては0.3μmRa以下とし、上記剪断面25部分に関しては0.5μmRa以下とし、破断面26部分に関しても2.5μmRaとする事が、コスト上昇を抑えつつ各擦れ合い部の摩耗を抑える面からは好ましい。尚、本例の構造を実施する限り、上記破断面26は上記各円筒ころ8の外径側端面21とは擦れ合わない。但し、(接触荷重は小さいが)転動面10と擦れ合う事がある為、表面粗さをできる限り良好な値に抑える事が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1を説明する為、円筒ころに対し保持器を(A)に示した軸方向一端側と(B)に示した軸方向他端側とに変位させた状態を示す図で、それぞれの(a)は、スラスト円筒ころ軸受を保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図、それぞれの(b)は(a)のイ-イ断面図。
【図2】保持器のポケットの形状を示す為に、このポケットを保持器の軸方向から見た状態で示す図。
【図3】実施例1の効果を確認する為に行なった解析の結果を示す、模式図及びグラフ。
【図4】本発明の実施例2を説明する為の、円筒ころの外径側端面とポケットの外径側周縁部との摩擦状態とポケットの外径側周縁部の摩耗状態とを示す、図7と同様の図。
【図5】本発明の実施例3に組み込む円筒ころの側面図。
【図6】この円筒ころを保持器に組み込んで成るスラスト円筒ころ軸受の実施例3を、保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図。
【図7】実施例3での円筒ころの外径側端面とポケットの外径側周縁部との摩擦状態とポケットの外径側周縁部の摩耗状態とを示しており、(A)は図6のロ-ロ断面図、(B)はポケットを(A)の下方から見た図。
【図8】円筒ころに対する保持器の好ましい軸方向変位量に就いて説明する為に、この保持器を軸方向両端部に移動させると共に、スラスト円筒ころ軸受を保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図。
【図9】参考例5を説明する為、保持器に対し円筒ころを(A)に示した外径側、内径側両平板部側に変位させた状態と、(B)に示した中央平板部側に変位させた状態とを示す図で、それぞれの(a)は、スラスト円筒ころ軸受を保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図、それぞれの(b)は(a)のハ-ハ断面図。
【図10】ポケットの内周縁に存在する剪断面と破断面とを説明する為の図で、(A)は保持器の中心軸を含む仮想平面に関する断面図、(B)は外径側周縁部を示す、(A)のニ矢視図。
【図11】ポケットを打ち抜く状態を示す、部分拡大断面図。
【図12】打ち抜かれた部分を示す図で、(A)は図11の拡大ホ矢視図、(B)は(A)のヘ-ヘ断面図。
【図13】従来構造の1例を示す、保持器の断面図。
【図14】円筒ころを取り出して示す側面図。
【図15】円筒ころに対し保持器を、(A)に示した軸方向一端側と(B)に示した軸方向他端側とに変位させ、スラスト円筒ころ軸受を保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図。
【図16】保持器のポケットの形状を示す為に、このポケットを保持器の中心軸方向から見た状態で示す図。
【図17】円筒ころの軸方向端面の面取り部の寸法が不適正である場合に生じる不都合を説明する為の、図1の(b)と同様の断面図。
【図18】円筒ころのスキューに就いて説明する為、円筒ころを図2と同方向から見た状態で示す図。
【図19】保持器のポケットの外径側周縁部が摩耗した状態を示す、図4の(B)と同様の図。
【図20】軸方向端面を球状凸面とした円筒ころの側面図。
【図21】この円筒ころを組み込んだスラスト円筒ころ軸受の第1例を、保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図。
【図22】軸方向端面を凸面とした円筒ころを組み込んだスラスト円筒ころ軸受で生じる、ポケットの外径側周縁部の摩耗状態を示す、図4の(B)と同様の図。
【図23】軸方向端面を凸面とした円筒ころを組み込んだスラスト円筒ころ軸受の第2例を、保持器の中心軸を含む仮想平面で切断した状態で示す部分断面図。
【符号の説明】
【0060】
1 スラスト円筒ころ軸受
2、2a 保持器
4 内径側リム部
5、5a 外径側リム部
6 中間板部
7、7a ポケット
8、8a、8b 円筒ころ
9、9a 中央平坦面
10 転動面
11、11a 面取り部
12 柱部
13 中央平板部
14 外径側平板部
15 内径側平板部
16 内径側連続部
17 外径側連続部
18 外径側係止部
19 内径側係止部
20 中央係止部
21、21a、21b 外径側端面
22 外径側周縁部
23、23a 凹入部
24 擦れ合い面
25 剪断面
26 破断面
27 パンチ
28 金属板
29 受型
30 受孔
31 ダレ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体を円輪状に造られて円周方向複数個所に、それぞれが放射方向に配置された複数のポケットを備えた保持器と、これら各ポケット内に転動自在に保持された複数個の円筒ころとを備え、この保持器は、金属板を曲げ形成する事により一体に造られて、内周縁部に存在する、全周に亙って連続する円環状の内径側リム部と、外周縁部に存在する、この内径側リム部と同心で全周に亙って連続する円環状の外径側リム部と、この外径側リム部と上記内径側リム部との間に存在する、断面形状が径方向に関して屈曲した中間板部と、この中間板部に円周方向に関して間欠的に、それぞれ放射方向に形成された上記各ポケットと、円周方向に隣り合うポケット同士の間に設けられた複数の柱部とを備え、上記中間板部は、径方向中間部で軸方向一端寄り部分に形成された中央平板部と、上記外径側リム部の径方向内側に隣接する軸方向他端寄り部分に形成された外径側平板部と、上記内径側リム部の径方向外側に隣接する軸方向他端寄り部分に形成された内径側平板部と、この内径側平板部の外周縁と上記中央平板部の内周縁とを連続させる内径側連続部と、この中央平板部の外周縁と上記外径側平板部の内周縁とを連続させる外径側連続部とから成り、上記軸方向一端側への上記保持器の軸方向変位を、上記外径側平板部及び内径側平板部の一部で上記各柱部の円周方向端縁に設けられた各外径側係止部及び各内径側係止部と上記各円筒ころの転動面との係合により、これら各円筒ころの一部が上記内径側、外径側両リム部の先端縁及び上記中央平板部よりも軸方向に突出したままの状態となる様に規制しており、上記軸方向他端側への上記保持器の軸方向変位を、上記中央平板部の一部で上記各柱部の円周方向端縁に設けられた各中央係止部と上記各円筒ころの転動面との係合により、これら各円筒ころの一部が上記外径側平板部及び上記内径側平板部よりも軸方向に突出したままの状態となる様に規制しているスラスト円筒ころ軸受に於いて、上記各円筒ころは、それぞれの軸方向両端面のうちの少なくとも上記保持器の外径側端面に、それぞれの回転中心軸に対し直角方向に拡がる中央平坦面と、この中央平坦面の外周縁と転動面とを全周に亙って連続させる面取り部とを備えたものであり、上記保持器を軸方向一端側に変位させて上記各外径側係止部及び各内径側係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側、内径側両平板部の外面から突出する量を、これら各円筒ころの径方向に関する上記面取り部の寸法未満にすると共に、上記保持器を軸方向他端側に変位させて上記各中央係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側平板部の外面から突出する量とこれら各円筒ころの径方向に関する上記面取り部の寸法との差を、上記金属板の板厚よりも小さくした事を特徴とするスラスト円筒ころ軸受。
【請求項2】
保持器を軸方向一端側に変位させて各外径側係止部及び各内径側係止部と各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの中央平坦面と各ポケットの外径側周縁部との擦れ合い面の長さを、これら各円筒ころの直径の80%以内とした、請求項1に記載したスラスト円筒ころ軸受。
【請求項3】
各円筒ころの面取り部の寸法のうち、これら各円筒ころの軸方向の寸法よりも同じく径方向の寸法を大きくしている、請求項1?2のうちの何れか1項に記載したスラスト円筒ころ軸受。
【請求項4】
保持器を軸方向一端側に変位させて各外径側係止部及び各内径側係止部と各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記保持器を構成する外径側、内径側両平板部の外面から突出する量と、この保持器を軸方向他端側に変位させて各中央係止部と上記各円筒ころの転動面とを係合させた状態で、これら各円筒ころの一部が上記両平板部の外面から突出する量との差を50μm以上とした、請求項1?3のうちの何れか1項に記載したスラスト円筒ころ軸受。
【請求項5】
各円筒ころの転動面とそれぞれ転がり接触するレース面を有する1対の部材が、何れも使用時に回転するものであり、保持器の中央平板部が、使用回転速度が速い部材に対向している、請求項1?4のうちの何れか1項に記載したスラスト円筒ころ軸受。
【請求項6】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2018-12-27 
結審通知日 2019-01-04 
審決日 2019-01-16 
出願番号 特願2006-52724(P2006-52724)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (F16C)
P 1 41・ 841- Y (F16C)
P 1 41・ 853- Y (F16C)
P 1 41・ 851- Y (F16C)
P 1 41・ 854- Y (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 芳枝  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 内田 博之
平田 信勝
登録日 2010-04-02 
登録番号 特許第4483803号(P4483803)
発明の名称 スラスト円筒ころ軸受  
代理人 松山 美奈子  
代理人 松山 美奈子  

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