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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1349027
審判番号 無効2017-800095  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-07-18 
確定日 2019-02-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第4659980号発明「二酸化炭素含有粘性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4659980号の請求項1?13に係る発明は、1998年10月5日(優先権主張1997年11月7日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成23年1月7日に特許権の設定登録がなされたものである。
請求人は平成29年7月18日に本件特許に対して無効審判を請求し、被請求人は平成29年10月11日差出しで審判事件答弁書を提出した。
そして、平成30年1月23日に第1回口頭審理が行われ、これに先立ち請求人は平成29年12月15日付けで口頭審理陳述要領書(1)、平成29年12月18日付けで口頭審理陳述要領書(2)、及び、平成29年12月26日付けで上申書を提出し、また被請求人も平成29年12月18日付けで口頭審理陳述要領書を提出した。

第2 本件発明
本件特許第4659980号(以下、単に「本件特許」という。)の請求項1?13に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のものである。
「【請求項1】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。
【請求項2】
得られる二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項1乃至3のいずれかに記載のキット。
【請求項5】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項1乃至4のいずれかに記載のキット。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を有効成分とする、水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物。
【請求項7】
請求項1?5のいずれかに記載のキットから得ることができる二酸化炭素含有粘性組成物を含む部分肥満改善用化粧料。
【請求項8】
顔、脚、腕、腹部、脇腹、背中、首、又は顎の部分肥満改善用である、請求項7に記載の化粧料。
【請求項9】
部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を調製する方法であって、
1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は
2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;
を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、
含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。
【請求項10】
調製される二酸化炭素含有粘性組成物が、二酸化炭素を5?90容量%含有するものである、請求項9に記載の調製方法。
【請求項11】
含水粘性組成物が、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させた後にメスシリンダーに入れたときの容量を100としたとき、2時間後において50以上の容量を保持できるものである、請求項9又は10に記載の調製方法。
【請求項12】
含水粘性組成物がアルギン酸ナトリウムを2重量%以上含むものである、請求項9乃至11のいずれかに記載の調製方法。
【請求項13】
含有粘性組成物が水を87重量%以上含むものである、請求項9乃至12のいずれかに記載の調製方法。」
(上記請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、以下、請求項2?13に係る発明を、順次「本件特許発明2」、……、「本件特許発明13」という。なお、これらを総称して「本件特許発明」ということがある。)

第3 請求人の主張
これに対して、請求人は、「特許第4659980号の請求項1?13に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、本件特許が無効とされるべき理由として、以下の無効理由(特許法第123条第1項第2号)を主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

<無効理由>
本件特許発明はいずれも甲第1?17号証に記載された発明および技術常識ないし周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第123条第1項第2号に該当する。

<証拠方法>
甲第1号証 特開昭63-310807号公報
甲第2号証 特開平6-179614号公報
甲第3-1号証 医薬品の開発、第12巻 製剤素材I、株式会社 廣 川書店、平成2年10月15日発行、46-47頁
甲第3-2号証 特開平7-173065号公報
甲第3-3号証 特開平8-53357号公報
甲第3-4号証 特開平8-92105号公報
甲第3-5号証 米国特許第3,164,523号
甲第3-6号証 特開平6-65048号公報
甲第3-7号証 特開平8-81351号公報
甲第3-8号証 特開平2-145505号公報
甲第3-9号証 特開平7-173032号公報
甲第4号証 特開昭60-215606号公報
甲第5号証 特開平4-217609号公報
甲第6号証 最新化粧品科学<改訂増補II>、日本化粧品技術者 会(編)、株式会社 薬事日報社、平成4年7月10 日発行、58-61頁
甲第7号証 実験報告書 検証実験10:発泡・気泡の保持試験、 ネオケミア株式会社 田中 雅也、平成29年3月23 日
甲第8号証 特開昭62-181219号公報
甲第9号証 高島巌ら、油性保湿剤配合浴用剤の使用経験、平成2 年12月、皮膚、第32巻、第6号、841-852 頁
甲第10-1号証 萬 秀憲ら、人工炭酸浴に関する研究 (第1報)炭 酸塩の有効炭酸濃度について、1984年5月、日温 気物医誌、第47巻、第3・4号、123-129頁
甲第10-2号証 特開平8-319228号公報
甲第10-3号証 特開平6-72857号公報
甲第11号証 登録実用新案第3009860号公報
甲第12号証 登録実用新案第3027349号公報
甲第13号証 特開平5-337198号公報
甲第14号証 実願平4-4497号(実開平5-56130号)の CD-ROM
甲第15号証 特開平8-141030号公報
甲第16号証 特開平9-285512号公報
甲第17号証 特開平6-287135号公報
(以上、審判請求書にいずれも写しを原本として添付)

甲第18号証 特願2010-199412号の平成23年10月2 7日付け手続補正書(方式)
甲第19号証 別冊フードケミカル-8、82-91頁
甲第20号証 実験成績証明書(3)、株式会社メディオン・リサー チ・ラボラトリーズ 日置正人、平成28年2月17 日
(以上、平成29年12月15日付けで口頭審理陳述要領書(1)にいずれも写しを原本として添付。)

第4 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、上記請求人の主張する無効理由は理由がないと主張し、証拠方法として以下の書証を提出している。

<証拠方法>
乙第1号証 無効2013-800042の審決
乙第2号証 無効2013-800106の審決
乙第3号証 大阪地方裁判所平成23年(ワ)第4836号の判決
乙第4号証 知的財産高等裁判所平成25年(ネ)第10016号の 判決
乙第5号証 田中雅也、二酸化炭素経皮吸収剤「エコツージェル」- 炭酸ガス療法の夜明け-、BIO INDUSTRY、 Vol.23、No.10、2006年発行、74-8 3頁
乙第6号証 DSP五協フード&ケミカルズ株式会社のウェブサイト の画面印刷(http://www.tatouru i.com/usage/)(印刷日:平成29年6月 13日)
乙第7号証 特開昭61-136534号公報
乙第8号証 特開平1-165515号公報
乙第9号証 西出英一ら、アルギン酸プロピレングリコールエステル の溶解方法、日本食品工業学会誌、第11巻、第12号 、1964年12月、540-543頁
乙第10号証 ネオケミア株式会社のウェブサイトの画面印刷(htt p://www.neochemir.co.jp/% e7%82%ad%e9%85%b8%e3%82%a c%e3%82%b9%e3%81%a7%e9%83 %a8%e5%88%86%e7%97%a9%e3% 81%9b.html)(印刷日:平成27年3月2 日)
乙第11号証 ウィキペディア「炭酸水素ナトリウム」のウェブサイト の画面印刷(https://ja.wikipedi a.org/wiki/%E7%82%AD%E9%8 5%B8%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E3 %83%8A%E3%83%88%E3%83%AA% E3%82%A6%E3%83%A0)(印刷日:平成 29年9月20日)
乙第12号証 実験報告書、株式会社メディオン・リサーチ・ラボラト リーズ 日置正人、平成29年9月1日
(以上、平成29年10月11日差出し審判事件答弁書にいずれも写しを原本として添付。)


第5 当審の判断

1 本件特許発明1について
(1)各甲号証及び各乙号証に記載された事項
ア 甲第1号証
本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には以下の記載がある。

<記載事項甲1-1>
「【特許請求の範囲】
(1)酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料。」

<記載事項甲1-2>
「(技術分野)
本発明は、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させる、ガス保留性、経日安定性、官能特性及び皮膚安全性に優れた発泡性化粧料に関する。」(1頁左下欄11?15行)

<記載事項甲1-3>
「(発明の開示)
そこで本発明者らは、上記の事情に鑑み鋭意研究した結果、後記特定組成の発泡性化粧料は、2剤型である為経日安定性に優れ、炭酸塩と水溶性高分子をポリエチレングリコールで被覆してなる第2剤と酸性物質である第1剤を用時混合する際に、炭酸ガスの泡が徐々に発生すると共に水溶性高分子及び/又は粘土鉱物の粘性によって安定な泡を生成し、炭酸ガスの保留性が高まる事を見出し、本発明を完成するに至った。
(発明の目的)
本発明の目的は、ガス保留性、経日安定性、官能特性等に優れた発泡性化粧料を提供することにある。
(発明の構成)
即ち、本発明は、酸性物質を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、水溶性高分子及び/又は粘土鉱物と炭酸塩とを常温固型のポリエチレングリコールで被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料である。」(1頁右下欄4行?2頁左上欄3行)

<記載事項甲1-4>
「本発明の第2剤を調製するには、種々な方法が用いられるが、例えば、融点以上で融解したポリエチレングリコールの中へ水溶性高分子と炭酸塩を加え冷却する事による練合造粒法や水溶性高分子と炭酸塩にポリエチレングリコール水溶液を噴霧し、水を蒸散さす流動造粒法などが挙げられる。」(3頁左上欄9?14行)

<記載事項甲1-5>
「(実施例)
以下実施例及び比較例の記載にて本発明を詳細に説明する。
尚、実施例に記載する、発泡性試験、経日安定性試験、ガス保留性試験、官能特性及び皮フ安全性試験の各方法は下記の如くである。
(1) 発泡性試験
試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm、高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し、1分後のあわの高さを測定する。

(2) 経日安定性試験
1剤、2剤の試料を各々密封しない状態で45℃1ケ月間保存した後、再度発泡性試験を行なう。

(3) ガス保留性試験
試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm、高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し、30分後のあわの高さを測定する。

」(3頁右上欄12行?右下欄6行)

<記載事項甲1-6>
「実施例1?11
〔発泡性エッセンス〕
第1表の組成の如く、発泡性エッセンスを調製し、前記の諸試験を実施した。
〔調製方法〕
<第1剤>
水にクエン酸を加えて撹拌し、均一に混和する。尚、クエン酸が溶け難い場合は適宜加熱する。
<第2剤>
約80℃にて、ポリエチレングリコール(分子量4000)を溶解し、熱時、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを加え、均一に混合した後室温まで冷却し、ポリエチレングリコールで被覆した粉末とした。
〔特性〕
第1表に示す如く、本発明の発泡性エッセンスは、発泡性、ガス保留性、経日安定性に優れ、また、官能特性等諸試験の総てに優れており、本発明の効果は、明らかであった。」(3頁右下欄14行?4頁左上欄12行)

<記載事項甲1-7>
「第1表

」(4頁下欄)

<記載事項甲1-8>
「比較例1?3
〔発泡性エッセンス〕
第2表の組成の如く発泡性エッセンスを調製し、前記諸試験を実施し、その特性を下段に示した。
〔調製方法〕
<第1剤>
(比較例1?3)
水にクエン酸を加えて撹拌し、均一に混合溶解する。尚、クエン酸が溶け難い場合は、適宜加温する。
<第2剤>
(比較例1)
常温でポリエチレングリコール(分子量4000)、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウムを均一に混和し、粉末とした。
(中略)
〔特性〕
第2表に示す如く、第2剤調製時、炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムをポリエチレングリコールで被覆することなく単に混和しただけの比較例1は、実施例2に比べ発泡性はまずまずであったがガス保留性に著しく劣り、経日安定性にも劣った。」(5頁左上欄1行?右上欄10行)

<記載事項甲1-9>
「第2表

」(5頁左下欄)

<記載事項甲1-10>
「比較例4?10
〔1剤式発泡エッセンス〕
第3表の組成の如く、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンスを調製し、用時に10倍量(重量)の水と混合した。前記諸試験を実施し、その特性を下段に示した。
〔調製方法〕
(中略)
(比較例10)
(1) 約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し、熱時アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末とした。
(2) 約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し、熱時クエン酸を加えて均一に混合した後、室温まで冷却し粉末とした。
(1)に(2)を加え均一に混和した。
〔特性〕
第3表に示す如く、実施例2より水を除いた組成とほぼ同一な組成である比較例4、8?10は発泡性、ガス保留性試験においては実施例2同様良好であったが、経日安定性に著しく劣った。」(5頁右下欄1行?6頁右上欄4行)

<記載事項甲1-11>
「第3表

」(6頁下欄)

イ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第2号証には以下の記載がある。
<記載事項甲2-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料。」

<記載事項甲2-2>
「【0001】
本発明はアルギン酸水溶性塩類およびこれと反応しうる二価以上の金属塩類を配合した使用性の良好な反応タイプのパック化粧料に関する。」

<記載事項甲2-3>
「【0002】
【従来の技術およびその課題】従来からパック化粧料には使用後に洗いおとすタイプおよび剥がすタイプの二つがある。(中略)剥がすタイプの基剤は、ゼリー状またはペースト状であって皮膚に塗布し乾燥させて皮膜を形成させ、その後、手で剥がされるものである。ところで、剥がすタイプに属するものの一つにアルギン酸塩類と該塩類と反応する二価以上の金属塩類とを配合した粉末を使用時に水と混合してペースト状とし、パック化粧料としたものが知られている(特開昭52-10426号公報、特開昭58-39608号公報)。このパック化粧料は、従来のように皮膚上での皮膜形成が、水分の蒸発・乾燥によるものとは異なり、配合物同士の反応によって水分を含んだまま行われるので肌に対する使用感が良く、従来のものより、乾燥時間が早いという特徴がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のアルギン酸塩類を含む粉末状のパック化粧料は、次のような問題点があった。
(1)水を加えてかきまぜる際、ダマになりやすく、顔に塗布する際、均一な膜になりにくい。これは、アルギン酸水溶性塩類が一般に水に溶けにくいためである。
(中略)
(5)反応タイプのため、保管時には水分透過の少ない外装とするなど、経時の保管に注意を必要とする。
本発明は、このような従来の課題を解決して、使用性が良好で、かつ経時的に安定な反応タイプのパック化粧料を提供することを目的とする。」

<記載事項甲2-4>
「【0004】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、水とまざりにくい原因として、アルギン酸水溶性塩類の溶解性が挙げられることから、アルギン酸塩類についてはあらかじめ水に溶解させてゲル状とさせ、また反応が進行しないように、ゲル状パーツと粉末パーツの2パーツに分けることにより、使用性が良好で、経時で安定なパック化粧料が得られることを見い出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなることを特徴とするパック化粧料である。」

<記載事項甲2-5>
「【0005】(中略)本発明のパック化粧料にあっては、使用直前にゲル状パーツと粉末パーツを混合する。この際、ゲル状パーツに含まれるアルギン酸水溶性塩類(例えばアルギン酸ナトリウム)と、粉末パーツに含まれる二価以上の金属塩(例えば硫酸カルシウム)とが水の存在下で化学式1に示すような硬化反応を起こして皮膚形成能のあるアルギン酸金属塩(例えばアルギン酸カルシウム)となり、この結果、弾力性のある凝固体が与えられる。
【0006】
【化1】硬化反応:Na・nAlg+n/2CaSO_(4)→n/2Na_(2)SO_(4)+Ca・n/2Alg」

<記載事項甲2-6>
「【0023】<経時安定性の確認法>0℃、RT、37℃、40℃-75%にゲル状パーツと粉末パーツを1か月放置後、両者を混ぜ合わせ、皮膜形成の確認を行い、その状態より判断した。」

ウ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3-1号証には以下の記載がある。
<記載事項甲3-1-1>
「2)アルギン酸ナトリウム sodium alginate
(中略)
(1)性状
(中略)アルギン酸及びそのカルシウム塩は水に溶けにくいが,ナトリウム塩は水を加えると徐々に溶け,水溶液は高粘度を示す.」(46頁8?21行)

エ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3-2号証には以下の記載がある。
<記載事項甲3-2-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルギン酸ナトリウム粉末粒子またはアルギン酸ナトリウム含有粉末粒子に対し、薬理学上経口投与可能な界面活性剤を噴霧することにより調製された界面活性剤で被覆された速溶性の医療用アルギン酸ナトリウム造粒物。」

<記載事項甲3-2-2>
「【0004】さらに、アルギン酸ナトリウム粉末粒子は、水を加えると粒子表面のみが溶け、いわゆる「ままこ」状態となり、完全に溶解するには長時間を要するという性質を有するものであるため、速溶性の医療用アルギン酸ナトリウム製剤の開発が強く望まれていた。」

<記載事項甲3-2-3>
「【0006】
【発明の開示】本発明の目的は、服用時に水に溶解させて医療用に供することが可能な剤型として、安定性がよく、かつ用時に溶解が速やかであるアルギン酸ナトリウム製剤を提供することにある。
【0007】本発明者らは、従来技術における課題を解決すべく内服用アルギン酸ナトリウム製剤の製造に関し鋭意研究した結果、アルギン酸ナトリウム粉末粒子またはアルギン酸ナトリウム含有粉末粒子に薬理学上経口投与可能な界面活性剤を噴霧することによって得られる界面活性剤で被覆されたアルギン酸ナトリウム造粒物が上記目的を達成し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
【0008】本発明の速溶性の医療用アルギン酸ナトリウム造粒物は、アルギン酸ナトリウム粉末粒子またはアルギン酸ナトリウム含有粉末粒子に薬理学上経口投与可能な界面活性剤を噴霧することにより得られるものである。」

オ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3-3号証には以下の記載がある。
<記載事項甲3-3-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびレシチン類から選択される1種または2種以上を界面活性剤として、全重量基算で0.1?5.0重量%のアルコール水溶液として用いて、アルギン酸ナトリウム粉末を攪拌造粒または押し出し造粒によって粒状物とすることを特徴とする速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤。」

<記載事項甲3-3-2>
「【0004】さらに、アルギン酸ナトリウム粉末は、水和力が強いために水を加えると、粉末表面のみが瞬時にゲル状になり、水が内部に浸透しにくく、いわゆる「継粉(ままこ)」状態になり、完全に溶解するには長時間を要するという性質を有するものである。」

<記載事項甲3-3-3>
「【0006】
【発明の開示】本発明者らは、従来技術における課題を解決すべく速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤の製造に関し鋭意研究した結果、アルギシ酸ナトリウム粉末を特定の界面活性剤を用いて撹拌造粒または押し出し造粒することによって製造された造粒物が上記目的を達成し得ることを見い出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0007】本発明は、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリシ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油およびレシチン類から選択される1種または2種以上を界面活性剤として、全重量基算で0.1?5.0重量%のアルコール水溶液として用いて、アルギン酸ナトリウム粉末を攪拌造粒または押し出し造粒によって粒状物とすることを特徴とする速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤を提供するものである。」

カ 本件特許の優先日前に頒布された刊行物である甲第3-4号証には以下の記載がある。
<記載事項甲3-4-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】低級アルコール類から選択される1種または2種以上のアルコールの水溶液を用いて、アルギン酸ナトリウム粉末を撹拌造粒することによって得られるものであって、かつ3分以内に溶解する速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤。」

<記載事項甲3-4-2>
「【0004】さらに、アルギン酸ナトリウム粉末は、水和力が強いために水を加えると、粉末表面のみが瞬時にゲル状になり、水が内部に浸透しにくく、いわゆる「継粉(ままこ)」状態になり、完全に溶解するには長時間を要するという性質を有するものである。」

<記載事項甲3-4-3>
「【0006】
【発明の開示】本発明者らは、従来技術における課題を解決すべく速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤の製造に関し鋭意研究した結果、アルギン酸ナトリウム粉末を低級アルコールを用いて撹拌造粒することによって製造された粒状物が上記目的を達成し得ることを見い出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0007】本発明は、アルギン酸ナトリウム粉末を低級アルコール類から選択される1種または2種以上のアルコールの水溶液を用いて、撹拌造粒することによって得られるものであって、かつ3分以内に溶解する速溶性の経口投与用アルギン酸ナトリウム固形製剤を提供するものである。」

キ 請求人 ネオケミア株式会社の代表取締役である田中雅也が作成した実験報告書である甲第7号証には以下の記載がある。
<記載事項甲7-1>
「2.材料
<顆粒剤>
公知文献(昭63-310807号公報)の比較例10記載の調製方法に従って、顆粒剤(第一顆粒、第二顆粒)を以下のように調製した。核剤における重量割合(wt%)を表1に示す。

・第一顆粒: 酸を含有するポリエチレングリコール(PEG)被覆顆粒剤
ポリエチレングリコール4000(1g)を約80℃で溶解し、熱時クエン酸(15g)を加えて均一に混合した後、攪拌しながら室温まで冷却し、PEG被覆した粉末(顆粒)を得た。
・第二顆粒: 炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有するPEG被覆顆粒剤
ポリエチレングリコール4000(2g)を約80℃で溶解し、熱時炭酸水素ナトリウム(8g)、アルギン酸ナトリウム(10g)を加え、均一に混合した後、攪拌しながら室温まで冷却し、PEG被覆した粉末(顆粒)を得た。
(中略)
<発泡パック化粧料>
第一顆粒と第二顆粒と水とを、表1で示した配合量にて、表2に示す試験処方(キット1?3)を調製し、発泡性パック化粧料を得た。(中略)

・キット1: 第一顆粒と第二顆粒とを混和した混和物(キット1要素1)と水(キット1要素2)とを用いて、試験処方を調製した。混和物を水(液剤)に加えて、ママコ/ダマが消失するまで30秒間混合して、発泡性パック化粧料を得た。」(1?2頁)

(2)請求人の主張する無効理由の概要

請求人が審判請求書及び平成29年12月15日付け口頭審理陳述要領書(1)において主張する無効理由、のうち、本件特許発明1に係るものは、要すれば以下のとおりである。なお、平成30年1月23日の口頭審理の調書によれば、請求人は当該口頭審理において、平成29年12月18日付け口頭審理陳述要領書(2)と平成29年12月26日付け上申書については、単なる参考資料であって、審判請求の趣旨及び理由についてのものではない旨を陳述している。

ア 甲第1号証には比較例10として以下の発明が記載されている(審判請求書12?18頁、口頭審理陳述要領書(1)3、11?14頁)。
「化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有するPEG被覆された顆粒剤、細粒剤、又は粉末剤(以下、「顆粒剤等」ともいう。)(以下「第二顆粒」ともいう。)と酸を含有するPEG被覆された顆粒剤等(以下「第一顆粒」ともいう。)との「混和物」(以下「甲1キット要素1」ともいう。)と「水」(以下「甲1キット要素2」ともいう。)との組み合わせからなり、前記混和物と水とを混合して用時に調製される含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、用時に調製される含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット」(以下「甲1発明」という。)

イ 甲1発明と本件特許発明1とを対比すると、両発明は、
「化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、水と、アルギン酸ナトリウム及び炭酸塩と、酸を含有する顆粒剤等とを含む、2つのキット要素の組合せからなり、含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。」である点で一致し、次の点で相違する(審判請求書33?36頁、口頭審理陳述要領書(1)5?6頁))。
<相違点1>
本件特許発明1では、酸と炭酸塩とがキット要素として物理的に分離されているのに対し、甲1発明では、PEG被覆された顆粒剤等(第一顆粒)に含有される「酸」とPEG被覆された顆粒剤等(第二顆粒)に含有される「炭酸塩」とは、同じキット要素中で、それぞれPEG被覆層を有する独立粒子として物理的に分離されている点。
<相違点2>
本件特許発明1では、水とアルギン酸ナトリウム及び炭酸塩とは事前に混合され、1つのキット要素中で含水粘性組成物として存在しているのに対して、甲1発明では、水と第二顆粒とは事前に混合されておらず、別個のキット要素中に液体および固体として存在している点。
<相違点3>
本件特許発明1では、炭酸塩と酸とを反応させて発生させる二酸化炭素の気泡を保持できる含水粘性組成物(アルギン酸ナトリウムおよび水を含む)が予め調製された含水粘性組成物であるのに対して、甲1発明では甲1キット要素1と水とを使用時に混合して用時に調製(用時調製)される含水粘性組成物である点。
<相違点4>
本件特許発明1はPEGを必須の構成要件として含まないのに対して、甲1発明はPEGを含む点。
<相違点5>
本件特許発明1は、キットの用途が、部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物とされているのに対して、甲1発明は単なる発泡性化粧料である点。

ウ 甲第2号証には「水に溶けにくいアルギン酸塩類と水とを予め混合してゲル/含水粘性組成物を事前調製して得られるゲル状パーツ/含水粘性組成物と、該アルギン酸塩類と反応する反応成分(二価以上の金属塩類)を含有する粉末パーツと、をそれらの反応が進行しないように2つのキット要素(2パーツ)に分け、用時混合時の難溶性の問題を解消するとともに、経時安定性のよいパック化粧料キット」という技術的事項(以下「甲2発明」という。)が記載されている(審判請求書18?20頁、口頭審理陳述要領書(1)3?5頁)。
そして、甲1発明と甲2発明はいずれもアルギン酸を含む含水組成物という共通の技術分野に属するものである。また、甲1発明においては、経日安定性の改善が課題であることは明白である一方、甲2発明も経日安定性の改善を課題とすることが明白である。加えて、甲第3-1号証から甲第3-9号証に示されているとおり、アルギン酸ナトリウムが難溶解性であることは技術常識であるところ、甲1発明と甲2発明はいずれも使用時に水と混合することによって反応(甲1発明では二酸化炭素の発生、甲2発明ではアルギン酸粘性物の固化)が開始され、アルギン酸ナトリウムの溶解を速やかに完了することが求められるから、甲1発明と甲2発明は限られた時間内でアルギン酸ナトリウムの難溶解性に対処するという共通する課題を有している(審判請求書38?40頁、口頭審理陳述要領書(1)7?8頁)。
そうすると、甲1発明と甲2発明は技術分野が共通であり、経日安定性の改善とアルギン酸ナトリウムの難溶性という共通の課題を有するから、甲1発明に甲2発明を適用する動機付けが存在するといえる(審判請求書10?41頁、口頭審理陳述要領書(1)8、14?17頁、)。
また、甲1発明と甲2発明を組み合わせることについての阻害要因も存在しない(審判請求書46?47頁、口頭審理陳述要領書(1)9、17?20頁)。
したがって、甲1発明において甲2発明のようにゲル状パーツのキットと粉末パーツのキットとに完全に分離するキット方式を採用し、甲1発明の第二顆粒のキットに水を予め加えてアルギン酸ナトリウムと炭酸塩とを含水粘性組成物することは当業者にとって容易に為し得たことであるから、相違点1?3は甲1発明と甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである(審判請求書40?41頁、口頭審理陳述要領書(1)7、8頁)。

また、本件特許明細書には、ポリエチレングリコールを保湿剤として含んでもよいことが記載されており、甲1発明は保湿剤であるポリエチレングリコールを含むことを排除するものではないから、相違点4は実質的なものではない(審判請求書42?44頁、口頭審理陳述要領書(1)8?9頁)。

また、甲第4、8?16号証によれば、二酸化炭素が部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療上の用途に利用されることは、本件特許出願時より前に広く知られていたから、甲1発明を部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物とすることは、当業者が容易に為し得たことである(審判請求書44?46頁、口頭審理陳述要領書(1)9頁)。

エ そして、本件特許発明1は「二酸化炭素を皮下組織等に十分量供給できる程度に二酸化炭素の気泡を保持できる。」という効果と、「部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創等の治療用医薬組成物としての効果がある。」という効果を奏するものであるが、甲第7号証に示された実験結果を考慮すれば、これらの効果は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第8?17号証に開示されるか、本件特許の優先日当時の技術水準から予測できたものといえるから、顕著なものではない(審判請求書47?53頁、口頭審理陳述要領書(1)21?23頁)。

オ よって、本件特許発明1は、甲第1?17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(審判請求書53頁、口頭審理陳述要領書(1)23?24頁)。

(3) 合議体の判断

ア 甲第1号証は、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料についての文献であるところ(記載事項甲1-1、甲1-2)、同号証には、「比較例4?10」と題した後に第3表に示した組成の、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンスを調製した旨が記載されており(記載事項甲1-10)、前記第3表の記載内容として「比較例10」がポリエチレングリコール(分子量4000;以下「PEG4000」という。)、炭酸水素ナトリウム、クエン酸、アルギン酸ナトリウムを含むことが記載され(記載事項甲1-11)、当該「比較例10」について「(1)約80℃にてポリエチレングリコール(分子量4000)の一部を溶解し、熱時アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末としたものと、(2)約80℃にてポリエチレングリコールの残部を溶解し、熱時クエン酸を加えて均一に混合した後、室温まで冷却し粉末としたものとを均一に混和した」旨が記載されているから(記載事項甲1-10)、甲第1号証には「比較例10」として「(1)約80℃にてPEG4000の一部を溶解し、熱時アルギン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを加え均一に混合した後、室温まで冷却し、粉末としたものと、(2)約80℃にてPG4000の残部を溶解し、熱時クエン酸を加えて均一に混合した後、室温まで冷却し粉末としたものとを均一に混和したものであって、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンス」が記載されているといえる。
そして、記載事項甲1-1?記載事項甲1-4をふまえると、上記比較例10においては、アルギン酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム、クエン酸がそれぞれPEG4000によって被覆されているといえる。
そうすると、甲第1号証には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料であって、PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンスであるもの」

ところで、(2)アに記載したとおり、請求人の主張する無効理由においては、甲第1号証には甲1発明として「化粧料として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって、第二顆粒と第一顆粒との混和物と、水との組み合わせからなるキット」が記載されていると主張されているが、甲第1号証には顆粒等と水とを組み合わせたキットとすることは記載も示唆もされていないから、当該請求人の主張は採用できない。

イ 引用発明1と本件特許発明1を対比する。
本件特許明細書の8頁2?5行(頁数、行数は、本件特許の特許掲載公報におけるもの。以下、同じ。)には、「発明に用いる炭酸塩としては、炭酸アンモニウム、(中略)炭酸水素ナトリウム、(中略)などがあげられ、これらの1種または2種以上が用いられる。」と記載されているから、引用発明1の「炭酸水素ナトリウム」は本件特許発明1の「炭酸塩」に相当する。また、本件特許明細書の8頁6?13行には、「本発明に用いる酸としては、有機酸、無機酸のいずれでもよく、これらの1種または2種以上が用いられる。有機酸としては、(中略)グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシアクリル酸、α-オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、サリチル酸、没食子酸、トロパ酸、アスコルビン酸、グルコン酸等のオキシ酸などがあげられる。」と記載されているから、引用発明1の「クエン酸」は本件特許発明1の「酸」に相当する。また、甲第1号証には、試料5gを透明ガラス製シリンダー(直径5cm、高さ50cm)に入れ常温にてタッチミキサーで30秒間振盪混和し、30分後の泡の高さを測定する試験(記載事項甲1-5)において、比較例10が良好な結果を示したこと(記載事項甲1-11)が示されており、引用発明1は、水に溶解することによって発泡し、少なくとも30分間炭酸ガスの泡が保持されるものであるといえるから、引用発明1と本件特許発明1とは、いずれも気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものであるといえる。
そうすると、引用発明1と本件特許発明1とは「化粧料或いは医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのものであって、炭酸塩とアルギン酸ナトリウム、酸を含み、気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるもの」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点A>
二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な用途が、本件特許発明1では、部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物としての使用であるのに対し、引用発明1では、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料としての使用である点。
<相違点B>
二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な構成が、本件特許発明1では、「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤の組み合わせ;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ、からなり、含水粘性組成物が、二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより、気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット」であるのに対し、引用発明1では、「PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された、用時、水に溶解して使用する1剤式発泡エッセンス」である点。

ウ 上記相違点について検討するに、以下(ア)?(エ)で説示するとおり、相違点Bは、引用発明1と甲第1?17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえず、(オ)で説示するとおり本件特許発明1の効果も甲第1?17号証の記載から当業者が予想し得たものではないから、相違点Aについて判断するまでもなく、本件特許発明1は甲第1?17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ア)甲第2号証は、アルギン酸水溶性塩類およびこれと反応しうる二価以上の金属塩類を配合した使用性の良好な反応タイプのパック化粧料に関する文献であるところ(記載事項甲2-2)、同号証には、アルギン酸塩類と該塩類と反応する二価以上の金属塩類とを配合した粉末を使用時に水と混合してペースト状とし、皮膚に塗布し乾燥させて皮膜を形成させ、その後、手で剥がされる従来のパック化粧料における技術課題として、アルギン酸水溶性塩類が一般に水に溶けにくいため、水を加えてかきまぜる際にダマになりやすい点や、反応タイプのため経時の保管に注意を必要とする点等が挙げられている(記載事項甲2-3)。また、同号証には、当該技術課題の解決手段として、アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類および前記反応の遅延剤を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなるパック化粧料(記載事項甲2-1、甲2-4)が開示されており、上記解決手段は、使用性が良好で、経時的にも安定であり、使用直前にゲル状パーツと粉末パーツを混合することにより、ゲル状パーツに含まれるアルギン酸水溶性塩類(例えばアルギン酸ナトリウム)と、粉末パーツに含まれる二価以上の金属塩(例えば硫酸カルシウム)とが水の存在下で硬化反応を起こして皮膚形成能のあるアルギン酸金属塩(例えばアルギン酸カルシウム)となり、この結果、弾力性のある凝固体が与えられるものであることも開示されている(記載事項甲2-5)。
そうすると、甲第2号証には以下の技術的事項(以下「甲2技術事項」という。)が開示されているといえる。
「アルギン酸塩類と該塩類と反応する二価以上の金属塩類とを配合した粉末を使用時に水と混合してペースト状とし、皮膚に塗布し乾燥させて皮膜を形成させ、その後、手で剥がされるパック化粧料において、水との混合に際してアルギン酸水溶性塩がダマになるのを防ぐとともに、経時的に安定とするために、アルギン酸水溶性塩類を含有するゲル状パーツからなる第一剤と、前記アルギン酸水溶性塩類と反応しうる二価以上の金属塩類を含有する粉末パーツからなる第二剤との二剤からなるパック化粧料とすること」

(イ)次に、引用発明1に甲2技術事項を組み合わせる動機付けについて検討するに、(2)ウに記載したとおり、請求人は、甲1発明と甲2発明は技術分野が共通であり、アルギン酸ナトリウムの難溶性と経日安定性の改善という共通の課題を有するから、甲1発明に甲2発明を適用する動機づけが存在すると主張している点に鑑み、まず技術分野と技術課題(アルギン酸ナトリウムの難溶性、経日安定性の改善)について検討する。

(イ)-1
引用発明1と甲2技術事項は、いずれもアルギン酸水溶性塩を含有する化粧料に関するものである。
しかしながら、(ア)で説示したとおり、引用発明1は二酸化炭素による血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料である一方、甲第2号証には二酸化炭素の発生についての記載は見あたないから、甲2技術事項は二酸化炭素による血行促進作用を利用する化粧料についてのものではない。
また、甲第1号証には、水溶性高分子の粘性によって安定な泡を生成し、二酸化炭素の保留性が高まる旨が記載されているから(記載事項甲1-3)、引用発明1において、アルギン酸ナトリウムは安定な泡を生成し、二酸化炭素の保留性を高めることを目的として配合されたものであって、二価以上の金属塩類と反応するものではないといえる一方、(ア)で説示したとおり、甲2記載事項におけるアルギン酸ナトリウムは二価以上の金属塩類との反応により皮膜を形成するものである。
そうすると、引用発明1と甲2技術事項では、化粧料の使用目的が異なる上、アルギン酸ナトリウム水溶性塩の配合の目的も異なるので、引用発明1と甲2技術事項がいずれもアルギン酸水溶性塩を含む化粧料であるといえども、技術分野が共通するとはいえない。

(イ)-2
甲第1号証には、比較例10についてダマになりやすい旨の記載は見あたらない。
他方、甲第3-1号証にはアルギン酸ナトリウムに対して水を加えると徐々に溶けることが記載され(記載事項3-1-1)、甲第3-2号証及び甲第3-3号証、甲第3-4号証には、アルギン酸ナトリウム粉末粒子は、水を加えると粒子表面のみが溶け、いわゆる「ままこ」状態となり、完全に溶解するには長時間を要するという性質を有することが記載されている(記載事項甲3-2-2、甲3-3-2、甲3-4-2)。しかしながら、これらの記載は表面にコーティング等の処理を施されていないアルギン酸ナトリウムやアルギン酸水溶性塩の粉末に対して水を加えた場合における現象について記述したものであって、何らかの処理を施されたアルギン酸ナトリウムについてのものではない。また、甲第3-5号証?甲第3-9号証にも、何らかの処理を施されたアルギン酸ナトリウムが何も処理を施されていないアルギン酸ナトリウムと同様の溶解特性を有することを示す記載は見あたらない。
むしろ、甲第3-2号証、甲第3-3号証、甲第3-4号証には、アルギン酸ナトリウム粉末の表面を界面活性剤でコーティングをしたり、同表面をアルコールで処理して造粒することによって、アルギン酸ナトリウムの溶解性が改善することが記載されており(記載事項甲3-2-1,甲3-2-3、甲3-3-1、甲3-3-3、甲3-4-1、甲3-4-3)、これらの記載は、表面にコーティング等の処理が施されたアルギン酸ナトリウムの粉末の溶解特性と、コーティング等の処理を行っていないアルギン酸ナトリウムの粉末の溶解特性は異なることを示すものといえることを考慮すると、本件特許の優先日当時において当業者は、アルギン酸ナトリウムにコーティング等の処理を行うことによって、その溶解特性が変わるという知見を有していたというべきである。
また、実際、甲第7号証には、表面をPEG4000で被覆した炭酸水素ナトリウムとアルギン酸ナトリウムの粉末に水を加えた場合にわずか30秒でママコ/ダマが消失していることが記載されており(記載事項甲7-1)、引用発明1はダマの形成等によって溶解が困難なものではない可能性が高いといえる。
そうすると、当業者は、アルギン酸ナトリウム粉末の表面がPEG4000で被覆されている引用発明1において、水を加えた際にアルギン酸ナトリウムの粉末の溶解が遅く、ダマを形成するであろうと認識したとはいえない。
したがって、甲2技術事項で解決されるアルギン酸水溶性塩のダマの形成防止という技術的な課題が引用発明1にも存在しているとはいえないから、引用発明1と甲2技術事項は、アルギン酸ナトリウムの難溶性という点について同じ課題を有しているとはいえない。

(イ)-3
甲第1号証には、引用発明1について経日安定性が悪いことが記載されている(記載事項甲1-11)。そして、甲第1号証でいうところの経日安定性とは試料を密封しない状態で45℃1ヶ月間保存した後に再度発泡性試験を行い、保存前の発泡性試験結果からの変化を評価したものであるところ(記載事項甲1-5)、引用発明1の発泡は炭酸塩と酸との反応によるものであるから、甲第1号証に接した当業者は、引用発明1が有している経日安定性の課題について、具体的には保管中に炭酸塩と酸との反応を防ぐことであると理解するといえる。
一方、甲第2号証には、皮膜の安定性の確認方法として、0℃、RT、37℃、40℃-75%にゲル状パーツと粉末パーツを1か月放置後、両者を混ぜ合わせ、皮膜形成の確認を行い、その状態より判断することが記載されていることから(記載事項甲2-6)、甲2技術事項における経時(経日)安定性とは、保管後でも皮膜形性能に変化がないことであるといえるところ、(ア)で説示したとおり、甲2技術事項における皮膜は、水と混合した際にアルギン酸水溶性塩と2価以上の金属の反応によって形成されるものであることをふまえると、甲第2号証に接した当業者は、甲2技術事項における経日安定性の課題について、具体的には保管中にアルギン酸水溶性塩と2価以上の金属との反応を抑えることであると理解するといえる。
したがって、経日安定性の向上という点について、引用発明1が有している具体的な課題と、甲2技術事項において解決される具体的な課題は異なるといえる。

(イ)-4
(イ)-1?(イ)-3で説示したとおり、請求人の主張する動機付けが存在するとは認められない。また、他に引用発明1に甲2技術事項を組み合わせる動機付けは見あたらないから、引用発明1に甲2技術事項を組み合わせる動機付けはない。

(ウ)一方、甲第1号証には、クエン酸を水に溶解して得られる水溶液を第1剤とし、アルギン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとをPEG4000で被覆した固型物を第2剤とする用時混合型発泡性化粧料である実施例2が発泡性、ガス保留性、経日安定性のいずれも優れている一方で(記載事項甲1-6、甲1-7)、前記実施例2について第2剤の調製時に炭酸水素ナトリウムとアルギン酸ナトリウムをPEG4000で被覆することなく単に混和したものである比較例1は発泡性、ガス保留性、経日安定性のいずれも不十分であること(記載事項甲1-8、甲1-9)が記載されており、これらの記載は炭酸水素ナトリウムとアルギン酸ナトリウムがPEG4000で被覆されていることが、発泡性やガス保留性の向上に寄与していること示すものといえる。そして、アルギン酸ナトリウムが水と混ざった形態は、炭酸水素ナトリウムとアルギン酸ナトリウムがPEG4000で被覆される状態とは両立し得ないものであるから、甲第1号証には、引用発明1においてアルギン酸ナトリウムが水と混ざった形態である甲2技術事項を適用することを阻害する記載があるといえる。

(エ)(イ)で説示したとおり、引用発明1に甲2技術事項を組み合わせる動機付けは見あたらない上、(ウ)で説示したとおり、むしろ甲第1号証には引用発明1において甲2技術事項を適用することを阻害する記載があるといえるから、相違点Bは引用発明1と甲第1号証、甲第2号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。

(オ)次に相違点Bにより奏される効果について検討するに、本件特許明細書の表1?7、10?12、20、21には以下の記載があり、本件特許発明1の具体的な例である実施例1?79、81、82、109?140、142、227?242、248、249が、十分な発泡性と気泡の持続性を有することが示されているから、本件特許発明1は十分な発泡性と気泡の持続性を有するという効果を奏するものといえる。


そして、(ウ)で説示したとおり、甲第1号証に炭酸水素ナトリウムとアルギン酸ナトリウムがPEG4000で被覆されていることが、発泡性やガス保留性の向上に寄与していること示す記載があることを考慮すれば、本件特許発明1の当該効果は、甲第1?17号証の記載や周知技術から当業者が予想し得たものではない。

2 本件特許発明2?8について
請求人は審判請求書において、本件特許発明1が甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの前提に立った上で、本件特許発明1をさらに特定したものである本件特許発明2?8についても、甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している(審判請求書53?56頁)。
しかしながら、1で説示したとおり、本件特許発明1は甲第1?17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明1をさらに特定したものである本件特許発明2?8も、甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本件特許発明9について
請求人は審判請求書において、本件特許発明9は、物の発明である本件特許発明1を方法の発明としただけであるから、本件特許発明1と同様に甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している(審判請求書57頁)。
そこで、本件特許発明9についての上記主張について検討する。

1(3)アで説示した事項や、甲第1号証の第8表に、比較例10が粘性を有することが記載されていること(記載事項甲1-11)を考慮すると、甲第1号証には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための粘性を有する化粧料を調製する方法であって、PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された1剤式発泡エッセンスに水を加えて、炭酸水素ナトリウムとクエン酸とを反応させることにより気泡状の炭酸ガスを含有し粘性を有する化粧料を調整する工程を含み、該粘性を有する化粧料が炭酸ガスを気泡状で保持できるものである、化粧料の調整方法。」

次に、引用発明2と本件特許発明9とを対比する。1(3)イで説示した事項を考慮すると、引用発明2の「炭酸水素ナトリウム」、「クエン酸」は本件特許発明9の「炭酸塩」、「酸」に相当するものである。また、引用発明2の「PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された1剤式発泡エッセンスに水を加えて、炭酸水素ナトリウムとクエン酸とを反応させることにより気泡状の炭酸ガスを含有し粘性を有する化粧料を調整する工程」と本件特許発明9の「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程」は、いずれも「炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程」であるといえる。
そうすると、引用発明2と本件特許発明9とは「化粧料或いは医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法であって、炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程を含み、該二酸化炭素含有粘性組成物が二酸化炭素を気泡状で保持できるものである、二酸化炭素含有粘性組成物の調製方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点C>
調製方法の目的物である二酸化炭素含有粘性組成物の具体的な用途が、本件特許発明9では、部分肥満改善用化粧料、或いは水虫、アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物としての使用であるのに対し、引用発明2では、炭酸ガスによる血行促進作用によって皮膚を賦活化させるための化粧料としての使用である点。
<相違点D>
調製方法の具体的な内容が、本件特許発明9では「炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程」において「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させ」るものであるのに対し、引用発明2では、「PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された1剤式発泡エッセンスに水を加えて、炭酸水素ナトリウムとクエン酸とを反応させ」るものである点。

そこで、まず相違点Dについて検討するに、1(3)ウ(ア)?(エ)で説示したとおり、「PEG4000により被覆された炭酸水素ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムと、PEG4000により被覆されたクエン酸とが均一に混和された1剤式発泡エッセンス」を「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物」に変更することは、甲第1、2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとはいえないから、相違点Dもまた甲第1、2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
そして、1(3)ウ(オ)で説示したとおり、本件特許発明9は、「炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する二酸化炭素含有粘性組成物を調製する工程」において「1)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と、酸を含む顆粒(細粒、粉末)剤;又は2)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒、粉末)剤と、アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物;を用いて、含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させ」ることによって、甲1?17号証に記載された事項から当業者が予想し得ない効果を奏するものといえる。
したがって、相違点Cについて検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲第1?17号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本件特許発明10?13について
請求人は審判請求書において、本件特許発明1?9が甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとの前提に立った上で、本件特許発明10は本件特許発明9に本件特許発明2と実質的に同一な技術的限定を付したものであり、本件特許発明11は本件特許発明9に本件特許発明3と実質的に同一な技術的限定を付したものであり、本件特許発明12は本件特許発明4を方法の発明に置き換えただけのものであり、本件特許発明13は本件特許発明5を方法の発明に置き換えただけのものであるから、本件特許発明10?13は、甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している(審判請求書57?58頁)。
しかしながら、本件特許発明10?13はいずれも本件特許発明9をさらに特定したものであるところ、3で説示したとおり、本件特許発明9は甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明10?13も、甲第1?17号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし13に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-02-23 
結審通知日 2018-02-27 
審決日 2018-03-12 
出願番号 特願2000-520135(P2000-520135)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 守安 智岩下 直人  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 山本 吾一
穴吹 智子
登録日 2011-01-07 
登録番号 特許第4659980号(P4659980)
発明の名称 二酸化炭素含有粘性組成物  
代理人 水谷 馨也  
代理人 伊藤 晃  
代理人 柴田 和彦  
代理人 新田 昌宏  
代理人 山田 威一郎  
代理人 迫田 恭子  
代理人 坂田 啓司  
代理人 田中 順也  
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