ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02F |
---|---|
管理番号 | 1349059 |
審判番号 | 不服2018-4853 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-09 |
確定日 | 2019-03-05 |
事件の表示 | 特願2013- 28048「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月28日出願公開、特開2014-157255、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年2月15日の出願であって、平成28年1月27日に出願審査請求がなされ、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成28年11月15日:拒絶理由通知(11月22日発送) 平成29年 1月19日:手続補正書・意見書の提出 同年 6月15日:拒絶理由通知(6月20日発送) 同年 8月16日:手続補正書・意見書の提出 同年12月15日:拒絶査定(平成30年1月9日送達) 平成30年 4月 9日:審判請求書・手続補正書の提出 同年11月14日:拒絶理由通知(11月20日発送) 平成31年 1月18日:手続補正書・意見書の提出 第2 原査定の概要 原査定(平成29年12月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1 国際公開第2011/162198号 2 特許第5051328号公報 3 国際公開第2008/047785号(周知技術を示す文献) 4 特開2005-157082号公報(周知技術を示す文献) 5 特開2008-192620号公報(周知技術を示す文献) 第3 当審拒絶理由の概要 平成30年11月14日付け拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。 【理由1】(サポート要件) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 【理由2】(進歩性) 本願請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1 国際公開第2011/162198号(拒絶査定時の引用文献1) 2 特許第5051328号公報(拒絶査定時の引用文献2) 第4 本願発明 本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成31年1月18日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし3は以下のとおりの発明である。 なお、下線は当審で付した。以下同じ。 「【請求項1】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び (5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記飛散防止フィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムのうち、リタデーションが高い方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±10度以下であり、 前記偏光子保護フィルムの配向主軸と前記飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下である、 画像表示装置(但し、前記偏光子保護フィルムの配向主軸と前記飛散防止フィルムの配向主軸が互いに平行である画像表示装置を除く)。 【請求項2】 (1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 (2)画像表示セル、 (3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、 (4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び (5)前記偏光子保護フィルムより視認側に配置される飛散防止フィルム を有し、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムは、いずれも3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり、 前記飛散防止フィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が3500nm以上であり、 前記偏光子保護フィルム及び前記飛散防止フィルムのうち、リタデーションが高い方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±10度以下である、 画像表示装置(但し、前記偏光子保護フィルムの配向主軸と前記飛散防止フィルムの配向主軸が互いに平行又は垂直である画像表示装置を除く)。 【請求項3】 前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1又は2に記載の画像表示装置。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1(国際公開第2011/162198号)について (1)引用文献1には、図とともに以下の記載がある。 ア 「請求の範囲 [請求項1] バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は白色発光ダイオードであり、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、 前記偏光子保護フィルムの少なくとも1つは3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。 [請求項2] 前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなるフィルムである、請求項1に記載の液晶表示装置。 [請求項3] …… …… [請求項4] 前記白色発光ダイオードが、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される、請求項1?3のいずれかに記載の液晶表示装置。」 イ 「[0001] 本発明は、液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。詳しくは、視認性が良好で、薄型化に適した液晶表示装置、偏光板および偏光子保護フィルムに関する。 [0002] …… [0005] ポリエステルフィルムは、TACフィルムに比べ耐久性に優れるが、TACフィルムと異なり複屈折性を有するため、これを偏光子保護フィルムとして用いた場合、光学的歪みにより画質が低下するという問題があった。すなわち、複屈折性を有するポリエステルフィルムは所定の光学異方性(リタデーション)を有することから、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察すると虹状の色斑が生じ、画質が低下する。そのため、特許文献1?3では、ポリエステルとして共重合ポリエステルを用いることで、リタデーションを小さくする対策がなされている。しかし、その場合であっても虹状の色斑を完全になくすことはできなかった。 [0006] 本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち、十分な機械的強度を有する)であり、且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない、液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。」 ウ 「[0019] これに対して、白色発光ダイオードでは、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため、複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると、ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで、光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となる。このように、光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで、虹状の色斑が発生せずに、視認性が顕著に改善すると考えられる。 [0020] 以上のように、本発明では幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを光源に用いるため、比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。 [0021] 上記効果を奏するために、偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは、3000?30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では、偏光子保護フィルムとして用いた場合、斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈するため、包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し、良好な視認性を確保することができない。好ましいリタデーションの下限値は4500nm、次に好ましい下限値は5000nm、より好ましい下限値は6000nm、更に好ましい下限値は8000nm、より更に好ましい下限値は10000nmである。 [0022] 一方、リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか、フィルムの厚みも相当に厚くなり、工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。」 エ 「[0057](4)虹斑観察 PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエステルフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け、その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製、厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置の出射光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。この液晶表示装置は、液晶セルの入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する。液晶表示装置の偏光板の正面、及び斜め方向から目視観察し、虹斑の発生有無について、以下のように判定した。 [0058] なお、比較例3では白色LEDの代わりに冷陰極管を光源とするバックライト光源を用いた。 ◎ : いずれの方向からも虹斑の発生無し。 ○ : 斜め方向から観察した時に、一部極薄い虹斑が観察できる。 × : 斜め方向から観察した時に、明確に虹斑が観察できる。」 オ 「[0079] 実施例1?10及び比較例1?3のポリエステルフィルムについて虹斑観察及び引裂き強度を測定した結果を以下の表1に示す。 」 なお、表1は、横長に表示した。 (2)引用文献1に記載された発明 ア 上記(1)ア及びイの記載からして、転用文献1には、 「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであり、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、 前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムが、3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、液晶表示装置。」(請求項1-2-4)が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)ウの記載からして、以下のことが離糧できる。 (ア)上記アの「白色発光ダイオード」は、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有すること。 (イ)上記アの「3000?30000nmのリタデーション」は、視認性の改善効果の観点から、好ましい下限値は10000nmであること。 ウ 上記(1)エの記載からして、 上記アの「ポリエステルフィルム」の配向主軸と出射光側に配される偏光板の偏光子の吸収軸とを垂直にすることが理解できる。 エ また、上記(1)イ及びエの記載からして、 上記アの「液晶表示装置」は、虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない、薄型化に適した液晶表示装置であることが理解できる。 オ 上記(1)オの表1からして、 上記アの「3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」は、視認性の改善効果や引裂き強度等の観点から、実施例2又は実施例10のリタデーションの高いポリエステルフィルム、つまり、「10200nm又は28476nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」が好ましいものと認められる。 カ 上記アないしオより、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「バックライト光源と、2つの偏光板の間に配された液晶セルとを有する薄型化に適した液晶表示装置であって、 前記バックライト光源は、青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオードであって、可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有し、 前記偏光板は偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成からなり、 前記液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムは、10200nm又は28476nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムである、 薄型化に適した液晶表示装置。」 2 引用文献2(特許第5051328号公報)について (1)引用文献2には、図とともに以下の記載がある。 ア 「【請求項2】 ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体であって、 前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有し、かつ、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.07?0.20であり、 前記プライマー層は、厚みが3?30nmであり、 前記ハードコート層の屈折率(nh)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<nh<nxなる関係を有する ことを特徴とする光学積層体。 【請求項3】 …… 【請求項9】 請求項1、2、3、4又は5記載の光学積層体を用いたタッチパネルであって、 前記光学積層体のハードコート層のプライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられている ことを特徴とするタッチパネル。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 ところが、本発明者らの研究によると、セルロースエステルフィルム代替フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルムを用いた光学積層体を、偏光素子上に配置した場合、液晶表示装置に色の異なるムラ(以下、「ニジムラ」ともいう)が、特に表示画面を斜めから観察したときに生じ、液晶表示装置の表示品質が損なわれてしまうという問題点があることが判明した。 【0007】 …… 【0008】 本発明は、上記現状に鑑みて、ポリエステル基材とハードコート層との密着性に優れ、液晶表示装置の表示画像にニジムラ及び干渉縞が生じることを高度に抑制することができる光学積層体、該光学積層体を用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。」 ウ 「【0015】 図1は、本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。 図1に示すように、本発明の光学積層体10は、ポリエステル基材11上にプライマー層12が形成され、プライマー層12上にハードコート層13が形成されている。 このような構成の本発明の光学積層体において、上記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有する。リタデーションが8000nm未満であると、本発明の光学積層体を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じてしまう。一方、上記ポリエステル基材のリタデーションの上限としては特に限定されないが、3万nm程度であることが好ましい。3万nmを超えると、これ以上の表示画像のニジムラ改善効果の向上が見られず、また、膜厚が相当に厚くなるため好ましくない。 上記ポリエステル基材のリタデーションは、ニジムラ防止性及び薄膜化の観点から、1万?2万nmであることが好ましい。」 エ 「【0086】 このような本発明の光学積層体を用いた本発明の偏光板において、上記光学積層体は、上記ポリエステル基材の遅相軸と後述する偏光素子(液晶セルの視認側に配置された偏光素子)の吸収軸とのなす角度が、0°±30°又は90°±30°となるように配設されることが好ましい。上記ポリエステル基材の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角度が上記範囲内にあることで、本発明の偏光板を用いた液晶表示装置の表示画像にニジムラが生じることを極めて高度に抑制することができる。この理由は明確ではないが、以下の理由によると考えられる。 …… 更に、液晶表示装置におけるカラーフィルターを透過したバックライトの光も連続的な幅広いスペクトルを有するものばかりではくなるため、ポリエステル基材の遅相軸と偏光素子の吸収軸とのなす角度を上述の範囲にしないと、ニジムラが生じてしまい表示品位が低下してしまうと推測している。」 オ 「【0093】 なかでも、本発明の光学積層体は、タッチパネルに好適に用いることができる。このような本発明の光学積層体を用いたタッチパネルもまた、本発明の一つである。 …… ここで、一般的に、タッチパネルには、位置検出の方法により、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などが知られている。 上記抵抗膜方式のタッチパネルは、透明導電性フィルムと透明導電体層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、透明導電性フィルムに電流を流し透明導電体層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルは、基材上に透明導電層を有するものを基本的構成とし、可動部分がないことが特徴であり、高耐久性、高透過率を有するため、液晶表示ディスプレイ、携帯電話及び車載用ディスプレイ等において適用されている。 …… 特に、静電容量方式のタッチパネルにおいては、透明導電体層が入射表面側に用いられるためその影響が強く、透明導電体層をパターン化した場合にもそのパターンが表示画面から見えないようにする不可視化させた不可視電極であることが望まれている。」 カ 「【0095】 また、…図3は、本発明のタッチパネルの一例を模式的に示す断面図である。 図3に示した本発明のタッチパネル30において、本発明の光学積層体は、ポリエステル基材31の両面にプライマー層32が形成され、このプライマー層32のそれぞれポリエステル基材31側と反対側面上にハードコート層33が形成されている。そしてこのような本発明の光学積層体は、粘着層300介して2層積層されている(以下、表示画面側の光学積層体を上層の光学積層体、他方の光学積層体を下層の光学積層体ともいう)。更に、上層の光学積層体及び下層の光学積層体は、それぞれ、表示画面側のハードコート層33の面上に不可視電極34が積層されている。この不可視電極34は、ハードコート層33側から高屈折率層35、低屈折率層36及び透明導電体層37がこの順に積層されている。 このような本発明のタッチパネル30は、粘着層300を介して、下層の光学積層体の不可視電極34と、上層の光学積層体の表示画面側と反対側のハードコート層33とが積層されている。 また、上層の光学積層体のハードコート層33のプライマー層32側と反対側に積層された不可視電極34は、粘着層38を介してカバーガラス39が設けられ、このカバーガラス39が最表面を構成している。」 キ 「【0116】 (実施例1) 溶融ポリエチレンテレフタレートを、290℃で溶融して、フィルム形成ダイを通して、シート状に押出し、水冷冷却した回転急冷ドラム上に密着させて冷却し、未延伸フィルムを作製した。 この未延伸フィルムを二軸延伸試験装置(東洋精機社製)にて、120℃にて1分間予熱した後、120℃にて、延伸倍率4.5倍に延伸した後、その両面にプライマー層用組成物1をロールコーターにて均一に塗布した。 次いで、この塗布フィルムを引続き95℃で乾燥し、その延伸方向とは90度の方向に延伸倍率1.5倍にて延伸を行い、リタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10のポリエステル基材を得た。なお、プライマー層の屈折率は1.65、膜厚は100nmであった。 【0117】 その後、形成したプライマー層上に、ハードコート層用組成物1をバーコーターにて塗布し、70℃で1分間乾燥して、溶剤を除去して塗膜を形成した。 次いで、その塗膜に紫外線照射装置〔フュージョンUVシステムジャパン社製:Hバルブ(商品名)〕を用いて、照射量150mJ/cm2で紫外線照射を行い、乾燥硬化後の膜厚6.0μmのハードコート層を形成し、光学積層体を製造した。なお、ハードコート層の屈折率は1.65であった。 【0118】 (実施例2) ハードコート層用組成物1に代えてハードコート層用組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして、光学積層体を製造した。なお、ハードコート層の屈折率は1.61であった。 【0119】 …… 【0127】 (実施例11) プライマー層用組成物1に代えて、プライマー層用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様にして光学積層体を製造した。 なお、ポリエステル基材のリタデーション=10000nm、膜厚=100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、プライマー層の屈折率は1.57、膜厚は30nmであった。また、ハードコート層の屈折率は1.65であった。」 ク 「【0136】 (ニジムラ評価) 実施例、比較例にて作製した光学積層体を、液晶モニター(FLATORON IPS226V(LG Electronics Japan社製))の観察者側の偏光素子上に配置し、液晶表示装置を作製した。なお、ポリエステル基材の遅相軸と液晶モニターの観察者側の偏光素子の吸収軸とのなす角度が0°となるように配置した。 そして、暗所及び明所(液晶モニター周辺照度400ルクス)にて、正面及び斜め方向(約50度)から目視及び偏光サングラス越しに表示画像の観察を行い、ニジムラの有無を以下の基準に従い評価した。偏光サングラス越しの観察は、目視よりも非常に厳しい評価法である。観察は10人で行い、最多数の評価を観察結果としている。 ◎:偏光サングラス越しでニジムラが観察されない。 ○:偏光サングラス越しでニジムラが観察されるが、薄く、目視ではニジムラが観察されない、実使用上問題ないレベル。 △:偏光サングラス越しでニジムラが観察され、目視ではニジムラがごく薄く観察される。 ×:偏光サングラス越しでニジムラが強く観察され、目視でもニジムラが観察される。」 ケ 図3は、以下のものである。 (2)引用文献2に記載された発明 ア 上記(1)アの記載からして、引用文献2には、 「ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体を用いたタッチパネルであって、 前記ポリエステル基材は、8000nm以上のリタデーションを有し、かつ、屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(nx-ny)が、0.07?0.20であり、 前記プライマー層は、厚みが3?30nmであり、 前記ハードコート層の屈折率(nh)と、前記ポリエステル基材の遅相軸方向の屈折率(nx)及び進相軸方向の屈折率(ny)が、ny<nh<nxなる関係を有し、 前記光学積層体のハードコート層のプライマー層側と反対側の表面上に不可視電極が設けられている、タッチパネル。」(請求項2-9)が記載されているものと認められる。 イ 上記(1)イの記載からして、 上記アの「光学積層体」は、 画像表示面にニジムラ及び干渉縞が生じることを抑制することができるものであることが理解できる。 ウ 上記(1)ウの記載からして、 上記アの「8000nm以上のリタデーション」の上限は限定されないものの、具体的には、「10000?20000nmのリタデーション」であることが好ましいことが理解できる。 エ 上記(1)エの記載からして、 上記アの「ポリエステル基材」は、 その遅相軸と液晶セルの視認側に配置された偏光素子の吸収軸とが、平行又は垂直となるように配設されることが好ましいことが理解できる。 オ 上記(1)オの記載からして、 上記アの「タッチパネル」は、具体的には、液晶表示ディスプレイや携帯電話等に適用されるものであることが理解できる。 カ 上記(1)カの記載を踏まえて、図3を見ると、以下のことが理解できる。 (ア)上記アの「不可視電極」は、ハードコート層33側から高屈折率層35、低屈折率層36及び透明導電体層37がこの順に積層されたものであること。 (イ)「透明導電体層37」の上には、粘着層38を介してカバーガラス39が設けられていること。 キ 上記(1)キの記載からして、以下のことが理解できる。 (ア)実施例1ないし実施例11における「ポリエステル基材」のリタデーションは、「8750nm」、「9000nm」、「10000nm」であり、「10000nm」が最も高いこと。 (イ)「10000?20000nmのリタデーション」が好ましいことから、実施例1の条件である、 a 「ポリエステル基材」は、リタデーション10000nm、膜厚100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、 b 「ハードコート層」は、膜厚6.0μm、屈折率1.65であり、 c 「プライマー層」は、膜厚100nm、屈折率1.65であってもよいこと。 ク 上記アないしキより、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「ポリエステル基材上にプライマー層が形成され、前記プライマー層上にハードコート層が形成された光学積層体を用いた液晶表示ディスプレイや携帯電話等に適用されるタッチパネルであって、 前記ポリエステル基材は、リタデーション10000nm、膜厚100μm、nx=1.70、ny=1.60、Δn=0.10であり、 前記プライマー層は、膜厚100nm、屈折率1.65であり、 前記ハードコート層は、膜厚6.0μm、屈折率1.65であり、 前記ハードコート層側から高屈折率層、低屈折率層、透明導電体層、粘着層及びカバーガラスが積層された、 液晶表示ディスプレイや携帯電話等に適用されるタッチパネル。」 第6 当審の判断 【理由1】(サポート要件) 当審では、請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないとの当審拒絶理由を通知したが、平成31年1月18日付け手続補正において、「偏光子の偏光軸」と「配向フィルムの配向主軸」のなす角度が特定された結果、この拒絶の理由は解消した。 【理由2】(進歩性) 1 本願発明1について (1)対比 ア 引用発明1の「『可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有』する『青色LED素子と黄色蛍光体とで構成される白色発光ダイオード』」は、本願発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に相当する。 以下、同様に、 「液晶セル」は、「画像表示セル」に、 「『液晶セルに対して出射光側に配される偏光板』の『偏光子』」は、「画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子」に、 「液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルム」は、「偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム」に、 「液晶表示装置」は、「画像表示装置」に、それぞれ、相当する。 イ 上記アを整理すると、本願発明1と引用発明1とは、 「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 画像表示セル、 前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、及び 前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム を有する、画像表示装置。」である点で一致する。 ウ 引用発明1の「液晶セルに対して出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルム」は、「10200nm又は28476nmのリタデーションを有するポリエステルフィルム」であるから、本願発明1と引用発明1とは、 「偏光子保護フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムである」点で一致する。 エ 以上のことから、本願発明1と引用発明1とは以下の点で一致する。 <一致点> 「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、 画像表示セル、 前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、及び 前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム を有し、 前記偏光子保護フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムである、画像表示装置。」 オ 一方で、両者は、以下の点で相違する。 <相違点> 本願発明1は、 A 「偏光子保護フィルムより視認側に配置される飛散防止フィルムを有し」、 B 「飛散防止フィルムは、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する配向フィルムであり」、 C 「飛散防止フィルムは、リタデーション(Re)と厚さ方向のリタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が0.2以上2.0以下であり」、 D 「偏光子保護フィルム及び飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり」、 E 「偏光子保護フィルム及び飛散防止フィルムのうち、リタデーションが高い方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±10度以下であり」、 F 「偏光子保護フィルムの配向主軸と飛散防止フィルムの配向主軸が形成する角が30度以下であり」、 G 「偏光子保護フィルムの配向主軸と飛散防止フィルムの配向主軸が互いに平行である画像表示装置を除く」のに対して、 引用発明1は、上記AないしGの構成を備えていない点。 (2)判断 ア まず、上記<相違点>のうち、Eについて検討する。 (ア)引用文献1の[0057]の記載によれば(摘記エを参照。)、引用発明1の「偏光子保護フィルム」は、偏光子の吸収軸に対して「垂直」に貼り付けられるものであり、一方、引用文献2の【0086】の記載によれば(摘記エを参照。)、引用発明2の「ポリエステル基材」は、偏光子の吸収軸に対して「略垂直又は略平行」に配設されるものである。 (イ)つまり、引用発明1に引用発明2を組合わせる(適用する)際の、両者の関係は、「略垂直又は略平行」の何れかであるところ、「略垂直」とすると、リタデーションが相滅の関係となり、引用発明1の「偏光子保護フィルム」の作用を阻害するおそれのあることから、両者を「略平行」の関係とすることがごく自然なことであって、両者の関係を「45度±10度以下」とする動機がない。 (ウ)そうすると、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明について 本願発明2も、本願発明1の「E 偏光子保護フィルム及び飛散防止フィルムのうち、リタデーションが高い方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±10度以下であり」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明3について 本願発明3は、本願発明1又は本願発明2のすべての発明特定事項を備えるもの、つまり「E 偏光子保護フィルム及び飛散防止フィルムのうち、リタデーションが高い方の配向フィルムの配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが形成する角が45度±10度以下であり」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1及び本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 原査定における、相違点3-1(偏光子保護フィルム及び飛散防止フィルムは、互いに異なるリタデーションを有し、その差が1800nm以上であり)に関する判断は、要するに、両者の配向主軸を某かの理由により「略垂直」とした場合において、その差を1800nm以上とすることは、当業者にとって格別困難であるとはいえないというものである。 しかしながら、上記「第6 1(2)」で検討したように、両者の配向主軸は「略平行」とするのが自然であり、「略垂直」とする理由は見出せない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-02-18 |
出願番号 | 特願2013-28048(P2013-28048) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G02F)
P 1 8・ 537- WY (G02F) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 右田 昌士、三笠 雄司 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | 画像表示装置 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |