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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 原文新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1349145
審判番号 不服2017-6752  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-10 
確定日 2019-02-13 
事件の表示 特願2014-531894「呼フォールバックユーザエクスペリエンスを改善するための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月28日国際公開、WO2013/043546、平成26年11月17日国内公表、特表2014-530566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2012年(平成24年)9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年9月21日 米国、2012年9月14日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年5月28日に手続補正書が提出され、平成27年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月20日付けで拒絶査定されたところ、平成29年5月10日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 平成29年5月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年5月10日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。(以下、「本件補正発明」という。)

「 ユーザ機器(UE)において、第1の無線アクセスネットワーク(RAN)中の呼が終了したという指示を受信することと、
前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)が、前記UEによって維持されるPLMNのリスト中に含まれることを検出することと、
前記検出することに応答して、
前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断することと、
前記受信すること、および前記判断に応答して、前記UEが、前記第2のRANに自律的に戻るために1つまたは複数のアクションをとることとを備え、
ここにおいて、前記第1のRAN中の前記呼が終了したことを検出すること、および前記UEが前記第1のRAN中の前記呼を確立するために前記第2のRAN中のサービスを離れたことを検出することの組合せは、前記UEによる前記1つまたは複数のアクションをトリガし、
ここにおいて、前記1つまたは複数のアクションをとることは、前記UEとの接続を解放するようにとの要求を前記第1のRANに送ることを備える、ワイヤレス通信のための方法。」(当審注:下線は補正箇所を示す。)

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成28年7月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1は次のとおりである。

「 ユーザ機器(UE)において、第1の無線アクセスネットワーク(RAN)中の呼が終了したという指示を受信することと、
前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断することと、
前記受信すること、および前記判断に応答して、前記UEが、前記第2のRANに自律的に戻るために1つまたは複数のアクションをとることとを備え、
ここにおいて、前記第1のRAN中の前記呼が終了したことを検出すること、および前記UEが前記第1のRAN中の前記呼を確立するために前記第2のRAN中のサービスを離れたことを検出することの組合せは、前記UEによる前記1つまたは複数のアクションをトリガし、
ここにおいて、前記1つまたは複数のアクションをとることは、前記UEとの接続を解放するようにとの要求を前記第1のRANに送ることを備える、ワイヤレス通信のための方法。」


2.補正の適否
(1)新規事項の有無、補正の目的要件
上記補正により、「前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)が、前記UEによって維持されるPLMNのリスト中に含まれることを検出すること・・・に応答して、前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断すること」が、新たに発明特定事項となった。
しかしながら、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の発明の詳細な説明【0054】には「いくつかの態様では、上記で説明したモビリティプロシージャは、UEが、モビリティプロシージャをサポートするいくつかのPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)中にあるときのみ実装され得る。UEはPLMNのリストを維持し得、モビリティプロシージャは、サービングPLMNがUEのリスト中にある場合のみ実行され得る。」と記載され、PLMLに応じてモビリティプロシージャの実行の有無が規定されていると解されるところ、【0032】及び【0036】によれば、モビリティプロシージャとは、再選択、リダイレクション、ハンドオーバ、またはネットワーク支援セル変更であり、「前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断すること」はモビリティプロシージャに含まれていない。また、【0048】に「解放された呼がCSFB呼であったという判断を伴うCS RAB解放の検出」が、「UEをLTEに戻すためのモビリティ機構をトリガし得る」と記載されていることによれば、「解放された呼がCSFB呼であったという判断」、すなわち、「前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことの判断」に応じてモビリティプロシージャが実行されるのであるから、「前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことの判断」が「モビリティプロシージャ」であるとはいえない。
したがって、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文の発明の詳細な説明の記載では「前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)が、前記UEによって維持されるPLMNのリスト中に含まれることを検出すること・・・に応答して、前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断する」とはいえず、上記補正は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項を追加するものである。

また、上記補正は、「ワイヤレス通信のための方法」である本件補正後の発明を構成する工程として、「前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)が、前記UEによって維持されるPLMNのリスト中に含まれることを検出する」工程を新たに付加するものであり、既にある工程をさらに限定しようとするものでもない。したがって、上記補正の目的は特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである場合に限る。)」に該当しない。そうしてみると、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正ということはできず、また、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明に該当するものではないことも明らかである。
したがって、上記補正は補正の目的要件を満たしていない。

(2)独立特許要件について
上記(1)のとおり、本件補正は特許法第17条の2第3項(新規事項)及び同条第5項(目的要件)の規定に違反するので却下すべきものであるが、更に進めて、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。

[補正後の発明]
上記1.(1)の項の、「本件補正発明」のとおりのものと認める。

[記載の不備に関する検討]
本件補正発明において、「前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)が、前記UEによって維持されるPLMNのリスト中に含まれること」との記載における「前記UEをサービスするPLMN(パブリックランドモバイルネットワーク)」とは第1の無線アクセスネットワーク及び第2の無線アクセスネットワークとどのような関係があるのか明らかではない。したがって、UEが維持するPLMLのリスト中に何が含まれることを特定しているのか明確とはいえない。

よって、本件補正発明は、特許請求の範囲の記載が明確ではなく、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないから、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。


3.結語
上記のとおり本件補正は特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第5項(目的要件)の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の事項を目的とするものであったとしても、本件補正は、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合せず、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1.本願発明
平成29年5月10日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年7月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし52に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものと認める。


2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、本願発明に対応する補正前の請求項1に係る発明に対して、次の引用文献1?3が引用されている。
引用文献1 特開2011-91587号公報
引用文献2 特開2010-147576号公報
引用文献3 特開2004-112097号公報


3.引用発明及び公知技術
(1)引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2011-91587号公報(平成23年5月6日公開。以下、「引用例1」という。)には以下の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、二つ以上の無線通信方式に対応した無線通信端末、無線通信システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
・・・略・・・
【0004】
このような問題を解決するために、LTEシステムではCS(Circuit Switched) Fallbackという機能が考えられている。CS Fallbackでは、W-CDMAやcdma2000 1xといった音声通信用無線通信システムからの音声着信通知を、LTEシステム上にトンネリングして無線通信端末に伝送し、音声着信通知を受信した無線通信端末は、LTEシステムに対して一時離脱(中断;Suspend)処理を行い、音声通信用無線通信システムに対して回線接続処理を行って音声通信を実行する。音声通信が終了したら、音声通信用無線通信システムに対して回線解放処理を行い、LTEシステムに対して一時離脱解除(再開;Resume)処理を行い、LTEシステムでの待受状態に戻る。CS Fallbackの動作は、音声着信処理に限らず、音声発信処理の場合も同様な処理となる。」(4?5ページ)

(イ)「【0041】
第一無線通信部101は、通信システムAをサポートしており、無線通信基地局200を介して、各種のデータを送受信する。また第1無線通信部101は、LTE、HSPA、EV-DO、WiMAX等の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。
【0042】
第二無線通信部102は、通信システムBをサポートしており、無線通信基地局500を介して、音声通話、各種のデータの送受信を行う。また第2無線通信部102は、W-CDMA、cdma2000 1x、PHS等の無線通信方式に基づいて無線通信を行う。
・・・略・・・
【0068】
実施形態1に係る無線通信端末100処理の流れ.
次に、図4を参照して、実施形態1に係る無線通信端末100の処理を説明する。
なお、図4に示す各ステップは、制御部112が記憶部107に記憶されている動作制御プログラムを実行することにより、制御部112による制御により実行される。
【0069】
無線通信端末100の電源がONされると(S200)、制御部112は、第一無線通信部101を制御して、通信システムAを捕捉させる。第一無線通信部101は、通信システムAにて待受状態となる(S201)。この時、第二無線通信部102による通信システムBの捕捉処理や受信状態測定は行わない。この状態で、音声通信開始指示を受信した場合には(S202;Yes)、制御部112は、通信システムAに対して(即ち、無線通信基地局200に)、第一無線通信部101を介してCSFB開始通知を送信する(S203)。一方、音声通信開始指示を受信しない場合には(S202;No)、制御部112は、音声通信開始指示を受信するまで待つ(S202)。なお、音声通信開始指示とは、図3のステップS103と同様の他の端末装置からの音声着信通知や、ユーザが操作部103を操作して発信操作がなされ、制御部112が出す音声発信処理開始指示のことである。また、ステップS203のCSFB開始通知は、図3のステップS104のCSFB開始通知と同じである。
【0070】
ステップS203でCSFB開始通知を送信した後、制御部112は、通信システムAの基地局200から、第一無線通信部101を介して、通信システムBへの移行指示を受信するのを待つ(S204)。これは、図3のステップS107のリダイレクション指示に相当する。制御部112は、第一無線通信部101が通信システムBへの移行指示を受信すると(S204;Yes)、第二無線通信部102により、通信システムBの捕捉処理を行う(S205)。即ち、基地局500を捕捉する処理を行う。これは図3のステップS110に相当する。通信システムBのセルの捕捉に成功したら(S206;Yes)、制御部112は、第二無線通信部102を介してそのセルに対して発信要求を送信する(S207)。これは図3のステップS111の処理に相当する。一方、通信システムBのセルの捕捉に失敗した場合(S206;No)、制御部112は、第一無線通信部101により、通信システムAにてセル選択を新たに行い(S208)、ステップS201の状態へと戻る。
【0071】
ステップS207を実行した後、無線通信端末100は、制御部112の制御下に、通信システムBにて通話状態となる(S209)。これは図3のステップS113に相当する。
【0072】
無線通信端末100は通信システムBでの通話を終了すると(S210;Yes)、タイマ管理部108はタイマを計測開始する(S211)。例えば、ユーザが操作部103を操作して通話終了を指示した場合、通信システムBから通信の切断が指示された場合、或いは、通信システムBの基地局500からの受信電波の強度が基準値以下となって通信を切断した場合等に、制御部112は、第二無線通信部102からの通話切断の通知等に応答して、タイマ管理部108を制御し、計時を開始させる。
【0073】
所定の時間が経過してタイマが満了すると(S212;Yes)、タイマ管理部108は、その旨を制御部112に通知する。制御部112は、通知に応答して、第一無線通信部101を制御して、通信システムAの捕捉処理を行う(S213)。これは図3のステップS116に相当する。なおここで所定の時間は、ユーザが再び発信操作を行う可能性が高いと考えられる長さに設定されており、例えば30秒に設定されている。
【0074】
通信システムAのセルの捕捉に成功したら(S216;Yes)、制御部112は、第一無線通信部101を制御して、そのセルに対してCSFB終了通知を送信する(S217)。これは図3のステップS117に相当する。以上が完了すると、第一無線通信部101による、通信システムAでの待受状態に戻る(S201)。・・・略・・・
【0075】
ステップS212においてタイマが満了していないと判断された場合(S212;No)、無線通信端末100は通信システムBでの待受状態のままでいる(S214)。ここで、制御部112は、音声通信開始指示を受信した場合には(S215;Yes)、制御をステップS207に戻し、第二無線通信部102を介して、通信システムBのセルに対して発信要求を送信する。一方、音声通信開始指示を受信しなければ(S215;No)、タイマ満了か否かの判定処理に戻る(S212)。」(9?14ページ)

(ウ)「【0107】
(実施形態3)
上記実施形態1及び2においては、音声通話終了後、一定期間が経過すると、通信システムBを開放してしまうが、ユーザが、次の音声通話を準備する所定の行為を行っている場合等には、むしろ、通信システムBを捕捉し続ける方が効率がよい。・・・略・・・」(18ページ)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、引用例1には、次の技術的事項が記載されている。

上記(ア)によれば、引用例1にはCS Fallbackの動作について記載されている。
上記(イ)によれは、無線通信端末100がCS Fallbackにより通信システムBへ移行し、その後、例えば通信システムBから通信の切断が指示された場合など、通信システムBでの通話が終了すると、所定時間経過の後、通信システムAの捕捉処理を行っている。
また、上記(ウ)によれば、通信システムBでの音声通話の終了後、一定時間の後、通信システムBを開放している。
そうしてみると、通信システムBでの音声通話が終了した後、無線通信端末100により、通信システムAの捕捉処理と、通信システムBの開放が行われるということができる。
そして、引用例1には、CS Fallbackによる通信システムBでの通話の終了時のCS Fallbackの動作方法が記載されているといえる。

したがって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 CS Fallbackによる通信システムBでの通話が終了時のCS Fallbackの動作方法であって、
無線通信端末が、通信システムBから通信の切断が指示された場合など、通信システムBでの通話が終了すると、
無線通信端末が、通信システムAの捕捉処理と、通信システムBの開放とを行う、
CS Fallbackの動作方法。」

(2)公知技術1
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2010-147576号公報(平成22年7月1日公開。以下、「引用例2」という。)には以下の記載がある。

(ア)「【0048】
図6のフローチャートを参照して、図2の移動無線端末1におけるCS FallbackフラグON設定処理について説明する。なお、このCS FallbackフラグON設定処理は、移動無線端末1がLTEシステムで待ち受けを実施している際に、他の通信処理などと並行して実行される。
【0049】
ステップS51において、移動無線端末1がLTEシステム(E-UTRANシステム)での待ち受けを開始すると、通信系制御部39aは、制御部39内のRAMの所要のメモリ領域に格納されているCS Fallbackフラグを「0」(「OFF」)に設定して初期化する。ステップS52において、制御部39は、CS Fallback発信を開始するかまたはCS Fallback着信信号を受信したか否かを判定し、CS Fallback発信を開始するかまたはCS Fallback着信信号を受信したと判定するまで待機する。なお、CS Fallback発信の場合、制御部39のUI系制御部39bは、移動通信端末1内のユーザインターフェース(UI)を介してユーザからの要求があったことを認識し、その認識結果を通信系制御部39aに伝える。通信系制御部39aは、UI系制御部39bから認識結果を取得し、認識結果に基づいてCS Fallback発信を開始すると判定する。一方、CS Fallback着信の場合は、通信系制御部39aは、信号処理部33によって処理された受信信号の中にPagingメッセージが存在し、このPagingメッセージがCS Fallbackを示す情報を有しているか否かを判定し、PagingメッセージがCS Fallbackを示す情報を有している場合にCS Fallback着信信号を受信したと判定する。
【0050】
ステップS52において制御部39が、CS Fallback発信を開始するかまたはCS Fallback着信信号を受信したと判定した場合、処理はステップS53に移行し、通信系制御部39aはステップS53で、CS Fallback動作の終了後にLTEシステムの基地局を探索する際に用いるために、CS Fallbackフラグを「1」(「ON」)に設定する。ステップS54において、通信系制御部39aは、「1」(「ON」)に設定されたCS Fallbackフラグを制御部39内のRAMの所要のメモリ領域に格納して記憶する。ステップS55において、通信家制御部39aは、アンテナ31、無線送受信部32、および信号処理部33を制御し、CS Fallback動作を開始する。このCS Fallback動作を実行する場合、移動無線端末1は、LTEシステムから回線交換通話処理を実施するためにLTEシステムから1x RTTシステムに切り替える一連動作(例えば、TS23.272によるシステム切り替え動作)を実行し、1xRTTシステムでの回線交換系サービスの接続を実施する。ステップS56において、通信系制御部39aは、CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了したか否かを判定し、CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了したと判定するまで待機する。ステップS56において通信系制御部39aが、CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了したと判定した場合、通信系制御部39aは、アンテナ31、無線送受信部32、および信号処理部33を制御し、1x RTTシステムとの接続を終了し、その後1x RTTシステムの基地局に対して待ち受け動作を実施する。」(15ページ)

(イ)「【0054】
図8のフローチャートを参照して、図2の移動無線端末1におけるCS Fallbackフラグを用いたLTEシステム探索判定処理について説明する。なお、移動無線端末1は、このLTEシステム探索判定処理開始前に、cdma2000システムのうちの1x RTTシステムで待ち受けを実施している。また、CS Fallbackフラグは、図6と図7のフローチャートに示されるように「0」または「1」に設定される。
【0055】
ステップS71において、通信系制御部39aは、1x RTTシステムの基地局で待ち受け中にLTEシステムの探索(サーチ)を開始するか否かの判定処理を開始すると、制御部39内のRAMの所要のメモリ領域に格納されているCS Fallbackフラグが「1」(ON)であるか否かを判定する。ステップS71において通信系制御部39aが、CS Fallbackフラグが「1」(ON)ではないと判定した場合(すなわち、CS Fallbackフラグが「0」(OFF)であると判定した場合)、ステップS71で待機し、移動無線端末1は、1x RTTシステムで待ち受けを継続する。一方、ステップS71において通信系制御部39aが、CS Fallbackフラグが「1」(ON)であると判定した場合、通信系制御部39aはステップS72で、cdma2000システム(この場合、1x RTTシステム)の基地局にリセレクション後LTEシステムの基地局の探索(サーチ)がまだ一度も実施されていないか、または、前回のLTEシステム探索開始からの経過時間tがLTEシステム探索開始判定値T_intervalを超えたか否かを判定する。なお、cdma2000システム(この場合、1x RTTシステム)の基地局にリセレクション後LTEシステムの基地局の探索(サーチ)がまだ一度も実施されていない場合には、CS Fallback動作により1x RTTシステムの基地局にリセレクション後に1x RTTシステム内での基地局の遷移(すなわち、1x RTTシステムの基地局から1x RTTシステムの基地局へのリセレクション)が発生したときであって、かつLTEシステムの基地局の探索(サーチ)がまだ一度も実施されていない場合も含まれる。従って、1x RTTシステム内での基地局の遷移が発生する度にステップS72の判定処理は「Yes」と判定され、処理はステップS73に進む。
・・・略・・・
【0057】
一方、ステップS72において通信系制御部39aは、cdma2000システム(1x RTTシステム)の基地局にリセレクション後LTEシステムの基地局の探索(サーチ)がまだ実施されていないか、または、前回のLTEシステム探索開始からの経過時間tがLTEシステム探索開始判定値T_intervalを超えたと判定した場合、通信系制御部39aはステップS73で、アンテナ31および無線送受信部32を制御し、LTEシステムの基地局を探索する。なお、LTEシステムの基地局の探索処理の詳細は図5のステップS33における探索処理と同様であり、その説明は繰り返しになるので省略する。
【0058】
ステップS74において、通信系制御部39aは、LTEシステムの基地局の探索が成功したか否かを判定する。ステップS74において通信系制御部39aが、LTEシステムの基地局の探索が成功したと判定した場合、通信系制御部39aはステップS75で、所定の再選択基準を用いて、探索に成功したLTEシステムの基地局のリセレクション判定(再選択判定)を行う。所定の再選択基準を満たした場合、通信系制御部39aは、アンテナ31、無線送受信部32、および信号処理部33を制御し、現在待ち受けているcdma2000システムの基地局からLTEシステムの基地局への再選択を行う。」(16?17ページ)

上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると、引用例2には、次の技術的事項が記載されている。
上記(ア)によれば、引用例2にはCS Fallback発信を開始したかCS Fallback着信信号を受信した場合にCS Fallbackフラグを「1」に設定し、RAMの所要のメモリ領域に格納して記憶する。そして、CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了した後、1x RTTシステムの基地局に対して待ち受け動作を実施する。
そして、上記(イ)によれば、1x RTTシステムの待ち受け動作状態においてRAMの所要のメモリ領域に格納されているCS Fallbackフラグが「1」であるか否かを判定し、CS Fallbackフラグが「1」、すなわち、CS Fallbackにより1x RTTシステムにより回線交換通話が行われたと判断される場合には、1x RTTシステムの基地局にリセレクション後LTEシステムの基地局の探索(サーチ)がまだ一度も実施されていないか、または、前回のLTEシステム探索開始から一定時間(T_interval)を経過しているかという制限はあるものの、LTEシステム探索を行い、1x RTTシステムの基地局からLTEシステムの基地局への再選択を行っている。
したがって、引用例2には次の技術(以下、「公知技術1」という。)が記載されているものと認める。

「CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了した後、CS Fallbackを行ったことを示すCS Fallbackフラグが「1」である場合に、1x RTTシステムの基地局からLTEシステムの基地局への再選択を行う。」

(3)公知技術2
原査定の拒絶の理由で引用された、特開2004-112097号公報(平成16年4月8日公開。以下、「引用例3」という。)には以下の記載がある。

(ア)「【0047】
図6および図7に示すように、AMR通信およびAV通信の切断時には、“DISCONNECT”“RELEASE”“RELEASE COMPLETE”“RRC CONNECTION RELEASE”“RRCCONNECTION RELEASE COMPLETE”なるメッセージが移動局と基地局との間で順次授受される。なお、“DISCONNECT”“RELEASE”“RELEASE COMPLETE”は、移動局側切断の場合と網側切断の場合とで送信方向が逆となる。」(10ページ)

(イ)図7として以下の図が記載されている。
図7

したがって、引用例3には次の技術(以下、「公知技術2」という。)が記載されているものと認める。

「通信の切断時に、基地局側から“DISCONNECT”、移動局側から“RELEASE”、基地局側から“RELEASE COMPLETE”、基地局側から“RRC CONNECTION RELEASE”、移動局側から“RRCCONNECTION RELEASE COMPLETE”なるメッセージが移動局と基地局との間で順次授受される。」


4.引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「無線通信端末」は、CS Fallbackによる通信システムBでの通話の終了により、「通信システムA」を捕捉し、「通信システムB」を開放しているから、引用発明の「無線通信端末」、「通信システムA」、及び「通信システムB」は、それぞれ、本願発明の「ユーザ機器(UE)」、「第2のRAN」、及び「第1の無線アクセスネットワーク(RAN)」に相当する。

b 引用発明において、「無線通信端末が、通信システムBから通信の切断を指示され」ることは、通信システムBにおける通話が終了したことを示しているから、本願発明の「ユーザ機器(UE)において、第1の無線アクセスネットワーク(RAN)中の呼が終了したという指示を受信すること」に相当する。

c 引用発明において、「通信システムAの捕捉処理と、通信システムBの開放とを行う」動作は、CS Fallbackによる通信システムBでの通話の終了により通信システムAに戻るための動作であるから、本願発明の「前記UEが、前記第2のRANに自律的に戻るために1つまたは複数のアクションをとる」ことに相当する。

d 引用発明はCS Fallbackの動作方法であるが、これはワイヤレス通信のための方法に包含される概念である。

したがって、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりと認める。

[一致点]
「 ユーザ機器(UE)において、第1の無線アクセスネットワーク(RAN)中の呼が終了したという指示を受信することと、
前記受信することに応答して、前記UEが、前記第2のRANに自律的に戻るために1つまたは複数のアクションをとることとを備える、ワイヤレス通信のための方法。」

[相違点1]
本願発明では、「前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断する」構成を有しているが、引用発明は当該構成を有しない点。

[相違点2]
「1つまたは複数のアクション」に関して、本願発明では「前記受信すること、および前記判断に応答して」行われるものであり、「前記第1のRAN中の前記呼が終了したことを検出すること、および前記UEが前記第1のRAN中の前記呼を確立するために前記第2のRAN中のサービスを離れたことを検出することの組合せ」が、「前記UEによる前記1つまたは複数のアクションをトリガ」するのに対して、引用発明では通信システムBからの通信の切断の指示だけに応じて行われる点。

[相違点3]
「前記1つまたは複数のアクションをとること」に関して、本願発明では「前記UEとの接続を解放するようにとの要求を前記第1のRANに送ることを備える」のに対して、引用発明では「通信システムAの捕捉処理と、通信システムBの解放とを行う」ことである点。


5.判断
上記相違点1及び2について合わせて検討する。
上記公知技術1としたように、「CS Fallback動作による回線交換通話処理が終了した後、CS Fallbackを行ったことを示すCS Fallbackフラグが「1」である場合に、1x RTTシステムの基地局からLTEシステムの基地局への再選択を行う。」技術は公知である。
そうしてみると、CS Fallback動作における通信システムBでの通話の終了により、通信システムBを解放して通信システムAを捕捉するものである引用発明においても、CS Fallbackにおける通信システムBからの再選択であることを確認するために上記公知技術1を適用し、「前記UEが、前記第1のRAN中の前記呼を確立するために第2のRAN中のサービスを離れたことを判断すること」を設け、「前記第1のRAN中の前記呼が終了したことを検出すること」に加え、「前記UEが前記第1のRAN中の前記呼を確立するために前記第2のRAN中のサービスを離れたことを検出すること」も「1つまたは複数のアクションをとる」ための条件とすることは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、相違点1及び相違点2とした本願発明の構成は当業者が容易に想到できる事項である。

上記相違点3について検討する。
上記公知技術2により、基地局側から「DISCONNECT」が送信されたのに対して端末側から「RELEASE」すなわち、接続を開放する要求を基地局側に送ることは公知である。したがって、引用発明では、通信システムBから通信の切断が指示された後、通信システムBを開放する動作を行っているが、このように通信を開放する際に、公知技術2を採用して相違点3の構成とすることは当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明及び公知技術1,2から容易に予想できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び公知技術1,2に基づき、当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び公知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-14 
結審通知日 2018-09-18 
審決日 2018-10-01 
出願番号 特願2014-531894(P2014-531894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
P 1 8・ 537- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 562- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 聡一  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 山本 章裕
松永 稔
発明の名称 呼フォールバックユーザエクスペリエンスを改善するための方法および装置  
代理人 岡田 貴志  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井関 守三  
代理人 福原 淑弘  
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