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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1349153
審判番号 不服2017-12182  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-16 
確定日 2019-02-13 
事件の表示 特願2015-504746「改善された貯蔵寿命を有するパッケージ化抗菌性医療機器及びその調製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日国際公開、WO2013/152271、平成27年 5月28日国内公表、特表2015-515324〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2013(平成25)年4月5日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理2012(平成24)年4月6日 米国(US))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月13日付け:拒絶理由通知書
平成29年 3月13日 :意見書,手続補正書の提出
平成29年 5月26日付け:拒絶査定
平成29年 8月16日 :審判請求書,手続補正書の提出


第2 平成29年8月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月16日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線は,補正箇所を示す。)
「パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法であって、
抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって、前記抗菌剤の源は、それぞれが一対の抗菌性材料リザーバを有する複数のパッチを含む、内側パッケージを提供する工程と、
1つ又は2つ以上の表面を含む少なくとも1つの縫合糸を前記内側パッケージ内に配置する工程と、
前記内側パッケージを内面を有する外側パッケージで覆う工程と、
前記少なくとも1つの縫合糸と、前記内側パッケージと、前記外側パッケージの前記内面とを、有効な量の前記抗菌剤を前記抗菌剤源から前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間、温度、及び圧力条件にさらし、それによって前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージ上でのバクテリアコロニー化を実質的に抑制する工程と、を含み、
前記内側パッケージが、封じ込め区画と外側カバーとを含み、
前記複数のパッチの各々は、細長い形状を有し、前記外側カバーの内面の外周に沿って延在しており、前記一対の抗菌性材料リザーバの各々は、細長い形状を有する前記パッチにおける長手方向の両端部の各々に位置しており、
前記複数のパッチが、前記外側カバーの前記内面の中心部に対して、互いに反対側の位置に配置されており、
前記外側カバーの前記内面が、略正方形の形状を有し、前記複数のパッチは、前記外側カバーの前記内面の前記外周である4つの辺に沿って延在している、パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の,平成29年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法であって、
抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって、前記抗菌剤の源は、それぞれが一対の抗菌性材料リザーバを有する複数のパッチを含む、内側パッケージを提供する工程と、
1つ又は2つ以上の表面を含む少なくとも1つの縫合糸を前記内側パッケージ内に配置する工程と、
前記内側パッケージを内面を有する外側パッケージで覆う工程と、
前記少なくとも1つの縫合糸と、前記内側パッケージと、前記外側パッケージの前記内面とを、有効な量の前記抗菌剤を前記抗菌剤源から前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間、温度、及び圧力条件にさらし、それによって前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージ上でのバクテリアコロニー化を実質的に抑制する工程と、を含み、
前記内側パッケージが、封じ込め区画と外側カバーとを含み、
前記複数のパッチの各々は、細長い形状を有し、前記外側カバーの内面の外周に沿って延在しており、前記一対の抗菌性材料リザーバの各々は、細長い形状を有する前記パッチにおける長手方向の両端部の各々に位置しており、
前記複数のパッチが、前記外側カバーの前記内面の中心部に対して、互いに反対側の位置に配置されている、パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法。」

2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「外側カバー」および「複数のパッチ」について,それぞれ,「略正方形の形状を有し」(以下,「限定1」という。)および「前記外側カバーの前記内面の前記外周である4つの辺に沿って延在している」(以下,「限定2」という。)との限定を付加することを含むものである。
まず,限定1について検討する。本願明細書には「略正方形」とは記載されていないものの,本願明細書の段落【0017】には「パッケージ化抗菌性医療機器10の封じ込め区画12は、基板部材26と、チャネルカバー部材28と、を含む。基板部材26は、上側部と、下側部と、外周30と、を含む。図示されるように、外側カバー22は、医療機器14を少なくとも部分的に封入するように、チャネルカバー部材28の上でかつ外周30の内側に配置されてもよい。基板部材26は、丸コーナーを有する実質的に平坦で実質的に正方形の部材であってよい。パッケージ化縫合糸の場合、パッケージ化抗菌性医療機器10の基板部材26は丸コーナーを有する実質的に正方形であることが望ましいが、楕円形、丸コーナーを有する多角形、矩形など、及びそれらの組み合わせ、並びにそれらの等価物であってよい。チャネルカバー28は、上側部と、下側部と、外周縁部32と、を含む。」と記載されている。「略正方形の形状」には「丸コーナーを有する実質的に平坦で実質的に正方形」が含まれていることは明らかであり,図3も考慮すると,両者は,技術的意義において同一であるといえる。
そうすると,限定1は本願明細書および図面に記載された事項の範囲内のものであって,限定1により新たな技術的事項が導入されているとまではいえない。
次に,限定2について検討する。本願明細書には「4つの辺に沿って延在」とは記載されていないものの,本願明細書の段落【0012】には,「【図3】封じ込め区画の外部カバーの下側の平面図であり、外部カバーの周辺に配置された複数の抗菌剤リザーバを示す。」と,段落【0015】には,「1つの形態において、複数のパッチ54は、外部カバー22の内面24の外周に配置される。」と記載されており,図3も考慮すると,上記「周辺に配置」および「外周に配置」とは,「4つの辺に沿って延在」を意味することは明らかである。
そうすると,限定2は,本願明細書に記載された事項の範囲内であって,限定2により新たな技術的事項が導入されているとまではいえない。
してみると,本件補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであって,特許法17条の2第3項の要件を満たし,また,同条第4項の規定に違反するものであるとはいえず,そして,本件補正は,同条第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下,「本件補正発明」という。)が,同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許出願公開第2010/0163435号明細書(2010(平成22)年7月1日出願公開。以下,「引用文献1」という。)には,「PACKAGED ANTIMICROBIAL MEDICAL DEVICE HAVING IMPROVED SHELF LIFE AND METHOD OF PREPARING SAME(日本語訳:改善された貯蔵寿命を有するパッケージ化抗菌性医療用具及びその調製方法)」について,図面とともに次の記載がある。(日本語訳として,対応する特表2012-531969号に記載された箇所を付記する。また,下線は当審が付与したものである。)
ア 「[0002] The present invention relates to an antimicrobial medical device and an antimicrobial packaged medical device and their methods of making.」(日本語訳:【0001】本発明は、抗菌性医療用具及び抗菌性パッケージ化医療用具及びその製造方法に関する。)
イ 「[0042] Referring now to FIGS.2-5, another embodiment of the packaged antimicrobial medical device 100 is shown. Packaged antimicrobial medical device 10 includes an inner package 111 having a source of antimicrobial agent. A medical device 114, which may be a needle 116 and suture 118 having one or more surfaces 120 is positioned within the inner package 111. In one embodiment, inner package 111 comprises a containment compartment 112 and an outer cover 122, the outer cover 122 having one surface 124 coated with an adsorbent material. In one embodiment, the adsorbent material is effective to adsorb a portion of the antimicrobial agent over time. An outer package 150 having an inner surface 152 is provided to seal the inner package 111 positioned within.
[0043] The containment compartment 112 of packaged antimicrobial medical device 100 includes a base member 126 and a plurality of channel cover tab members 128. Base member 126 includes a top side, bottom side, and an outer periphery 130. In one embodiment, an outer cover 122 may be positioned upon containment compartment 112 and within outer periphery 130, to at least partially enclose medical device 114.
[0044] The base member 126 may be a substantially flat substantially oval shaped member having a longitudinal axis. While in the case of packaged sutures, it may be desired that the base member 126 of packaged antimicrobial medical device 100 be oval shaped, although other configurations can be used including circular, polygonal, square with rounded corners, and the like and combinations thereof and equivalents thereof.
[0045] Referring in particular to FIGS. 2-4, the packaged antimicrobial medical device 100 of the present invention may be assembled in the following manner. Base member 126 may be provided with a plurality of locking pins 140. Channel cover tab members 128 may be provided with a plurality of locking pin receiving holes 142 for receiving corresponding locking pins 140 upon folding channel cover tab members 128 over locking pins 140. Then, channel cover tab members 128 become affixed to locking pins 140 of base member 126. Advantageously, the use of heating or ultrasonic treatments to firmly affixed channel cover tab members 128 to base member 126 may be avoided. In this embodiment, when containment compartment 112 is so formed, a channel 134 is formed, which may advantageously house a wound suture 118.」(日本語訳:【0027】図2?5を参照すると、パッケージ化抗菌性医療用具100の別の実施形態が図示されている。パッケージ化抗菌性医療用具10は、抗菌剤の源を有する内側パッケージ111を含む。医療用具114は、針116及び1つ又は2つ以上の表面120を有する縫合糸118であってもよく、内側パッケージ111の中に配置されている。1つの実施形態では、内側パッケージ111は、封じ込め区画112及び外側カバー122を含み、外側カバー122は吸着材でコーティングされている1つの表面124を有する。1つの実施形態では、吸着材は、経時的に抗菌剤の一部を吸着するのに有効である。内側表面152を有する外側パッケージ150は、内部に配置された内側パッケージ111を密封するために設けられる。
【0028】パッケージ化抗菌性医療用具100の封じ込め区画112は、基板部材126及び複数のチャネルカバータブ部材128を含む。基板部材126は、上側部と、下側部と、外周縁部130と、を含む。1つの実施形態では、外側カバー122は、医療用具114を少なくとも部分的に封入するように、封じ込め区画112の上にかつ外周縁部130の中に配置されてもよい。
【0029】基板部材126は、長手軸を有する、実質的に平坦で実質的に卵形の形状をした部材であってもよい。パッケージ化縫合糸の場合、パッケージ化抗菌性医療用具100の基板部材126は卵形の形状であることが望ましい場合があるが、円形、多角形、丸みを帯びた角部を有する四角形など、並びにこれらの組み合わせ及びこれらの等価物を含む他の形状が使用され得る。
【0030】特に図2?4を参照すると、本発明のパッケージ化抗菌性医療用具100は、以下の方法で組み立てることができる。基板部材126は、複数の止めピン140を備えてもよい。チャネルカバータブ部材128は、止めピン140にチャネルカバータブ部材128が折り重なるとき、対応する止めピン140を受容するための複数の止めピン受容穴142を備えてもよい。次いで、チャネルカバータブ部材128は、基板部材126の止めピン140に固定される。有利なことに、チャネルカバータブ部材128を基板部材126にしっかりと固定するための、加熱又は超音波処理の使用を避けることができる。この実施形態において、封じ込め区画112がこのように形成されると、チャネル134が形成され、チャネル134は有利にも創傷縫合糸118を収容することができる。)
ウ 「[0061]The antimicrobial agent may be delivered to the medical device from an antimicrobial agent source that is positioned within or attached to the inner surface of a package. Specifically, the antimicrobial agent is transferred from the antimicrobial agent source to the medical device when the package, the antimicrobial agent source and the medical device are subjected to time, temperature and pressure conditions, as described below. For example, the antimicrobial agent source may be an antimicrobial agent-loaded paper reservoir, an antimicrobial agent-loaded porous pouch reservoir, an antimicrobial agent-loaded plastic reservoir, an antimicrobial agent-loaded sponge or foam reservoir, an antimicrobial agent-loaded tape (see element, or an antimicrobial agent-loaded tablet. Alternatively, the antimicrobial agent source may be integral with the package itself, i.e., antimicrobial agent incorporated into or on the package itself, such as but not limited to, applied directly on the inner surface of the package. Where the antimicrobial agent source is in a paper or plastic reservoir, such reservoir may be integral with one or more packaging component in the package.」(日本語訳:【0046】抗菌剤は、内部に配置された又はパッケージの内側表面に固定された抗菌剤の源から医療用具に送達され得る。具体的には、抗菌剤は、パッケージが抗菌剤の源及び医療用具が下記の時間、温度及び圧力の条件に供されたとき、抗菌剤の源から医療用具に移動する。例えば、抗菌剤の源は、抗菌剤を含む紙製のリザーバ、抗菌剤を含む多孔質パウチリザーバ、抗菌剤を含むプラスチック製のリザーバ、抗菌剤を含むスポンジ若しくは発泡体のリザーバ、抗菌剤を含むテープ(要素を参照のこと)、又は抗菌剤を含む錠剤であってもよい。あるいは、抗菌剤の源は、パッケージ自体と一体化していてもよい、すなわち、抗菌剤は、パッケージの内側表面上に直接塗布する等であるが、これに限定されない方法でパッケージ自体内又はパッケージ自体上に組み込まれる。抗菌剤の源が紙製又はプラスチック製のリザーバである場合、このようなリザーバは、パッケージ内の1つ又は2つ以上のパッケージング部品と一体化していてもよい。)
エ 「[0072] In accordance with various methods of the present invention, method of making a packaged antimicrobial suture having improved shelf life. Is provided. The method includes the steps of providing an inner package having a source of antimicrobial agent, providing an adsorbent material effective to adsorb a portion of the antimicrobial agent over time, positioning a suture within the inner package, the suture comprising one or more surfaces, covering the inner package with an outer package having an inner surface and subjecting the suture, the inner package and the inner surface of the outer package to time, temperature and pressure conditions sufficient to vapor transfer an effective amount of the antimicrobial agent from the antimicrobial agent source to the suture and the inner package, thereby substantially inhibiting bacterial colonization on the suture and the inner package. Advantageously, the packaged antimicrobial suture so produced exhibit improved shelf life over a packaged antimicrobial suture without an adsorbent material so provided.」(日本語訳:【0057】本発明の様々な方法に従って、改善された貯蔵寿命を有するパッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法が提供される。方法は、抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程と、経時的に抗菌剤の一部を吸着するのに有効な吸着材を提供する工程と、内側パッケージ内に縫合糸を配置する工程であって、縫合糸が1つ又は2つ以上の表面を含む、工程と、内側表面を有する外側パッケージで内側パッケージを覆う工程と、縫合糸、内側パッケージ、及び外側パッケージの内側表面を、抗菌剤の源から有効な量の抗菌剤を縫合糸及び内側パッケージに蒸気移動させるのに十分な時間、温度及び圧力の条件に供して、縫合糸及び内側パッケージ上における細菌定着を実質的に阻害する工程と、を含む。有利なことに、このように製造されたパッケージ化抗菌性縫合糸は、このように提供された吸着材を含まないパッケージ化抗菌性縫合糸よりも改善された貯蔵寿命を呈する。)
オ 上記エに記載された「本発明の様々な方法に従って、改善された貯蔵寿命を有するパッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法が提供される。」からみて,引用文献1には「パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法」が記載されているといえる。
カ 上記エに記載された「抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程」および上記ウに記載された「例えば、抗菌剤の源は、抗菌剤を含む紙製のリザーバ、抗菌剤を含む多孔質パウチリザーバ、抗菌剤を含むプラスチック製のリザーバ、抗菌剤を含むスポンジ若しくは発泡体のリザーバ、抗菌剤を含むテープ(要素を参照のこと)、又は抗菌剤を含む錠剤であってもよい。」からみて,引用文献1には「抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって,前記抗菌剤の源は,抗菌剤を含むリザーバを含む,内側パッケージを提供する工程」が記載されているといえる。
キ 上記エに記載された「内側パッケージ内に縫合糸を配置する工程であって、縫合糸が1つ又は2つ以上の表面を含む、工程」,上記イの「【0027】・・・・・医療用具114は、針116及び1つ又は2つ以上の表面120を有する縫合糸118であってもよく、内側パッケージ111の中に配置されている。」および図2からみて,引用文献1には「1つ又は2つ以上の表面を含む1つの縫合糸を内側パッケージ内に配置する工程」が記載されているといえる。
ク 上記エに記載された「内側表面を有する外側パッケージで内側パッケージを覆う工程」からみて,引用文献1には「内側パッケージを内側表面を有する外側パッケージで覆う工程」が記載されているといえる。
ケ 上記ウに記載された「抗菌剤は、パッケージが抗菌剤の源及び医療用具が下記の時間、温度及び圧力の条件に供されたとき、抗菌剤の源から医療用具に移動する。」および上記エに記載された「縫合糸、内側パッケージ、及び外側パッケージの内側表面を、抗菌剤の源から有効な量の抗菌剤を縫合糸及び内側パッケージに蒸気移動させるのに十分な時間、温度及び圧力の条件に供して、縫合糸及び内側パッケージ上における細菌定着を実質的に阻害する工程」からみて,引用文献1には「1つの縫合糸と,内側パッケージと,外側パッケージの内側表面とを,有効な量の抗菌剤を抗菌剤の源から前記1つの縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間,温度,及び圧力条件にさらし,それによって前記1つの縫合糸と前記内側パッケージ上での細菌定着を実質的に阻害する工程」が記載されているといえる。
コ 上記イに記載された「【0027】・・・・・内側パッケージ111は、封じ込め区画112及び外側カバー122を含み」および図2?3からみて,引用文献1には「内側パッケージが,封じ込め区画と外側カバーとを含む」ことが記載されているといえる。
サ 図3からみて,「外側カバー122の内側表面」と「基板部材126」とは,一部分を除いて外周形状が略同一であり,上記イに記載された「【0028】・・・・・基板部材126は、上側部と、下側部と、外周縁部130と、を含む。1つの実施形態では、外側カバー122は、医療用具114を少なくとも部分的に封入するように、封じ込め区画112の上にかつ外周縁部130の中に配置されてもよい。」,上記イに記載された「【0029】・・・・・パッケージ化抗菌性医療用具100の基板部材126は卵形の形状であることが望ましい場合があるが、円形、多角形、丸みを帯びた角部を有する四角形など、並びにこれらの組み合わせ及びこれらの等価物を含む他の形状が使用され得る。」,同イのに記載された「【0027】・・・・・パッケージ化抗菌性医療用具10は、抗菌剤の源を有する内側パッケージ111を含む。」および上記ウに記載された「抗菌剤は、内部に配置された又はパッケージの内側表面に固定された抗菌剤の源から医療用具に送達され得る。」からみて,引用文献1には「外側カバーの内側表面が,丸みを帯びた角部を有する四角形の形状を有し,抗菌剤の源は,内側パッケージの内側表面に固定される」ことが記載されているといえる。
シ そして,上記ア?サを総合すると,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法であって,
抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって,前記抗菌剤の源は,抗菌剤を含むリザーバを含む,内側パッケージを提供する工程と,
1つ又は2つ以上の表面を含む1つの縫合糸を内側パッケージ内に配置する工程と,
前記内側パッケージを内側表面を有する外側パッケージで覆う工程と,
前記1つの縫合糸と,前記内側パッケージと,前記外側パッケージの前記内側表面とを,有効な量の前記抗菌剤を前記抗菌剤の源から前記1つの縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間,温度,及び圧力条件にさらし,それによって前記1つの縫合糸と前記内側パッケージ上での細菌定着を実質的に阻害する工程と,を含み,
前記内側パッケージが,封じ込め区画と外側カバーとを含み,
前記外側カバーの前記内側表面が,丸みを帯びた角部を有する四角形の形状を有し,前記抗菌剤の源は,前記内側パッケージの前記内側表面に固定されている,パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)「抗菌剤の源」について,引用発明の「抗菌剤を含むリザーバ」は,その機能・構造からみて,本件補正発明の「抗菌性材料リザーバ」に相当するといえることから,引用発明と本件補正発明とは「抗菌性材料リザーバを含む」点で共通するといえる。
(イ)「1つの縫合糸」が「少なくとも1つの縫合糸」の一部であるといえるから,引用発明の「1つの縫合糸」は,本件補正発明の「少なくとも1つの縫合糸」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「前記外側カバーの前記内側表面」は,その機能・構造からみて,本件補正発明の「外側カバーの前記内面」に相当することは,明らかである。
(エ)引用発明の「細菌定着を実質的に阻害する」は,本件補正発明の「バクテリアコロニー化を実質的に抑制する」に相当するといえる。
(オ)「正方形」は「四角形」の一種であることから,引用発明の「丸みを帯びた角部を有する四角形の形状」と本件補正発明の「略正方形の形状」とは,「略四角形」である点で共通するといえる。

イ 以上のことから,本件発明と引用発明との一致点および相違点は,次のとおりである。

(一致点)
「パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法であって,
抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって,前記抗菌剤の源は,抗菌性材料リザーバを含む,内側パッケージを提供する工程と,
1つ又は2つ以上の表面を含む少なくとも1つの縫合糸を前記内側パッケージ内に配置する工程と,
前記内側パッケージを内面を有する外側パッケージで覆う工程と,
前記少なくとも1つの縫合糸と,前記内側パッケージと,前記外側パッケージの前記内面とを,有効な量の前記抗菌剤を前記抗菌剤源から前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間,温度,及び圧力条件にさらし,それによって前記少なくとも1つの縫合糸と前記内側パッケージ上でのバクテリアコロニー化を実質的に抑制する工程と,を含み,
前記内側パッケージが,封じ込め区画と外側カバーとを含み,
前記外側カバーの前記内面が,略四角形の形状を有している,パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法。」

(相違点1)
「抗菌剤の源」について,本件補正発明においては,「それぞれが一対の抗菌性材料リザーバを有する複数のパッチを含」み,「前記複数のパッチの各々は、細長い形状を有し、前記外側カバーの内面の外周に沿って延在しており、前記一対の抗菌性材料リザーバの各々は、細長い形状を有する前記パッチにおける長手方向の両端部の各々に位置しており、前記複数のパッチが、前記外側カバーの前記内面の中心部に対して、互いに反対側の位置に配置されて」いるのに対して,引用発明においては,そのような構成を有するか明らかでない点。

(相違点2)
「外側カバーの内面」について,本件補正発明においては,「略正方形の形状を有し、前記複数のパッチは、前記外側カバーの前記内面の前記外周である4つの辺に沿って延在している」のに対して,引用発明においては,「丸みを帯びた角部を有する四角形の形状を有し,前記抗菌剤の源は,前記内側パッケージの前記内側表面に固定されている」点。

(4)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1について
まず,引用発明の「抗菌剤の源は,前記内側パッケージの前記内側表面に固定されている」について,上記(2)イに記載されたように,「外側カバー122は吸着材でコーティングされている1つの表面124を有する。1つの実施形態では、吸着材は、経時的に抗菌剤の一部を吸着するのに有効である」ことから,内側パッケージを構成する外側カバーに抗菌剤を含むリザーバ(吸着材)をコーティングする態様を含むことは明らかである。また,上記(2)ウに記載されたように,「抗菌剤は、パッケージの内側表面上に直接塗布する等であるが、これに限定されない方法でパッケージ自体内又はパッケージ自体上に組み込まれ」てもよいことから,上記コーティングする態様だけでなく,同ウに記載されたように,「抗菌剤を含む紙製のリザーバ、抗菌剤を含む多孔質パウチリザーバ、抗菌剤を含むプラスチック製のリザーバ、抗菌剤を含むスポンジ若しくは発泡体のリザーバ、抗菌剤を含むテープ(要素を参照のこと)、又は抗菌剤を含む錠剤」などを上記パッケージ自体内またはパッケージ自体上に組み込む,すなわち,例えば,外側カバー上に吸着材をコーティングするのに倣って,外側カバー上に抗菌剤の源(リザーバ)を配置する態様も含むことも明らかである。また,「パッチ」とは,継ぎ布,継ぎはぎを指す用語(新村出編,広辞苑第三版,日本国,株式会社岩波書店,昭和59年11月20日第三版第二刷発行)であり,例えば,布状や紙片状,テープ状のものであればそれを「パッチ」と呼び得ることから,引用発明の抗菌剤の源(リザーバ)の形状としてパッチとすることも含んでいることは明らかである。
そして,外側カバー上にリザーバを配置する当たっては,その外側カバー自体の形状だけでなく,外側カバーの構造,つまり,外側カバーとチャネル134およびチャネルカバータブ128で形成されるリザーバを配置し得る空間の大きさ,抗菌対象である縫合糸118を収容するチャネル134に対応する位置関係や,外側カバーを基板部材126に固定するための「タブ146」の存在などを考慮した上で,リザーバの形状や配置場所を設計すべきことは技術常識からみて当然のことといえる。
してみれば,引用発明において,「抗菌剤の源」として「複数のパッチを含む」よう構成するとともに,「複数のパッチの各々」は,「一対の抗菌性材料リザーバを有」し,「細長い形状を有し,外側カバーの内面の外周に沿って延在しており,前記一対の抗菌性材料リザーバの各々は,細長い形状を有する前記パッチにおける長手方向の両端部の各々に位置しており,前記外側カバーの内面の中心部に対して、互いに反対側の位置に配置され」るよう構成することは,当業者が必要に応じて設定することのできる単なる設計事項に過ぎないといわざるを得ず,本件補正発明の相違点1に係る構成による作用効果も十分予測し得る範囲のものに過ぎない。

イ 相違点2について
引用発明の「丸みを帯びた角部を有する四角形の形状」を略正方形とする程度ことは,当業者が必要に応じて設定することのできる単なる設計事項に過ぎない。
また,複数のニードル付き縫合糸を格納するためのトレイの形状が略正方形のものは,本願の優先日前に周知である(本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特許第3390845号公報(1995(平成7)年1月6日出願公開。)の図1に「丸みを帯びた角部を有する略正方形のカバー50」が図示されている。)ので参照のこと。)ことを踏まえると,引用発明に当該周知の技術的事項を適用することに何ら困難性はない。
そして,その設計変更に当たって,引用発明の「抗菌剤の源」について「外側カバーの内面の外周である4つの辺に沿って延在している」ように構成することは,上記アでも検討したように,外側カバー上にリザーバを配置する際の考慮事項を踏まえれば,当業者とって何ら困難性はなく,阻害要因もないといえる。
してみると,引用発明,または,引用発明および周知の技術的事項に基づいて本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることであり,その作用効果も当業者が十分予測し得る範囲のものに過ぎない。

ウ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明,または,引用発明及び周知の技術的事項から予測される範囲内のものに過ぎず,格別顕著なものということはできない。

エ したがって,本件補正発明は,引用発明,または,引用発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法第159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年8月16日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成29年3月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1ないし20に係る発明は,本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1およびその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「外側カバー」および「複数のパッチ」について,それぞれ,「略正方形の形状を有し」および「前記外側カバーの前記内面の前記外周である4つの辺に沿って延在している」との限定を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項をふかしたものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。


第4 請求人の補正案について
平成29年12月11日に提出した上申書において,請求人は,請求項1について,以下の補正案を提示している。(下線は、補正箇所を示す。)
「[請求項1]
パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法であって、
抗菌剤の源を有する内側パッケージを提供する工程であって、前記抗菌剤の源は、それぞれが一対の抗菌性材料リザーバを有する複数のパッチを含む、内側パッケージを提供する工程と、
1つ又は2つ以上の表面を含む各々の縫合糸からなる複数の縫合糸を前記内側パッケージ内に少なくとも部分的に並べて配置する工程と、
前記内側パッケージを内面を有する外側パッケージで覆う工程と、
前記複数の縫合糸と、前記内側パッケージと、前記外側パッケージの前記内面とを、有効な量の前記抗菌剤を前記抗菌剤源から前記複数の縫合糸と前記内側パッケージに移動させるのに十分な時間、温度、及び圧力条件にさらし、それによって前記複数の縫合糸と前記内側パッケージ上でのバクテリアコロニー化を実質的に抑制する工程と、を含み、
前記内側パッケージが、封じ込め区画と外側カバーとを含み、
前記複数のパッチの各々は、細長い形状を有し、前記外側カバーの内面の外周に沿って延在しており、前記一対の抗菌性材料リザーバの各々は、細長い形状を有する前記パッチにおける長手方向の両端部の各々に位置しており、
前記複数のパッチが、前記外側カバーの前記内面の中心部に対して、互いに反対側の位置に配置されており、
前記外側カバーの前記内面が、略正方形の形状を有し、前記複数のパッチは、前記外側カバーの前記内面の前記外周である4つの辺に沿って延在している、パッケージ化抗菌性縫合糸を製造する方法。」

しかしながら,「複数の縫合糸」を内側パッケージ内に「少なくとも部分的に並べて」配置する」ことについては,前記第2の[理由]2(4)イで提示した文献(特許3390845号公報)に記載されているように,本願の優先日前に周知の技術的事項であるといえる。そして,当該補正案における請求項1に係る発明も,引用発明および周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。
してみると,当該補正案も採用できない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-09-14 
結審通知日 2018-09-18 
審決日 2018-10-02 
出願番号 特願2015-504746(P2015-504746)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 一雄  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 芦原 康裕
瀬戸 康平
発明の名称 改善された貯蔵寿命を有するパッケージ化抗菌性医療機器及びその調製方法  
代理人 大島 孝文  
代理人 加藤 公延  
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