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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1349213
審判番号 不服2017-13243  
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-06 
確定日 2019-02-18 
事件の表示 特願2013-102229「積層体、偏光板、液晶表示パネルおよび画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開,特開2013-257550〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判事件に係る出願(以下,「本件出願」という。)は,平成25年5月14日(優先権主張平成24年5月15日)の出願であって,平成28年11月30日付けで拒絶理由が通知され,平成29年1月31日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年6月2日付けで拒絶査定がなされたものである。
本件拒絶査定不服審判は,これを不服として,同年9月6日に請求されたものであって,当審において,平成30年9月14日付けで拒絶理由が通知され,同年11月19日に意見書及び手続補正書が提出された。


2 請求項1に係る発明
本件出願の請求項1ないし14に係る発明は,平成30年11月19日提出の手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項によって特定されるものと認められるところ,請求項1の記載は次のとおりである。

「積層基材と,
前記積層基材の一方の面上に形成された機能層と,を備え,
前記積層基材は,
面内の複屈折性を有する光透過性基材と,
前記光透過性基材と積層され面内の複屈折性を有する屈折率調整層であって,前記光透過性基材と前記機能層との間に位置するようになる屈折率調整層と,を備え,
前記光透過性基材の面内における最も屈折率が大きい方向である遅相軸方向における屈折率n_(1x),前記光透過性基材の前記遅相軸方向と平行な方向における前記屈折率調整層の屈折率n_(2x),および,前記光透過性基材の前記遅相軸方向と平行となる方向における前記機能層の屈折率n_(3x)が,
n_(1x)<n_(2x)<n_(3x),又は,n_(1x)>n_(2x)>n_(3x)
なる関係を満たし,
前記光透過性基材の前記遅相軸方向に直交する進相軸方向における屈折率n_(1y),前記光透過性基材の前記進相軸方向と平行な方向における前記屈折率調整層の屈折率n_(2y),および,前記光透過性基材の前記進相軸方向と平行となる方向における前記機能層の屈折率n_(3y)が,
n_(1y)<n_(2y)<n_(3y),又は,n_(1y)>n_(2y)>n_(3y)
なる関係を満たし,
前記光透過性基材の前記遅相軸方向における前記屈折率n_(1x),前記光透過性基材の前記遅相軸方向dxと平行な方向における前記屈折率調整層の屈折率n_(2x),及び,前記光透過性基材の前記遅相軸方向と平行な方向における前記機能層の屈折率n_(3x)が,
n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ
|n_(2x)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|<|n_(2)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|
なる関係を満たし,
前記光透過性基材の前記進相軸方向における屈折率n_(1y),前記光透過性基材の前記進相軸方向と平行な方向における前記屈折率調整層の屈折率n_(2y),及び,前記光透過性基材の前記進相軸方向と平行な方向における前記機能層の屈折率n_(3y)が,
n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ
|n_(2y)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|<|n_(2)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|
なる関係を満たす,積層体。」(以下,当該請求項1に係る発明を「本件発明」という。)


3 当審において通知された拒絶理由の概要
(1) 本件発明に対応する本件補正前の請求項7に対して,平成30年9月14日付けで通知された拒絶理由は,概略次の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)を含んでいる。

請求項7に係る発明は,その優先権主張の日より前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び周知の事項(周知例:引用文献2ないし4)に基いて,その優先権主張の日より前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(2) 当審拒絶理由において引用された引用例及び周知例は次のとおりである。
引用文献1:国際公開第2011/162198号
引用文献2:特開2003-177209号公報
引用文献3:特開2007-253512号公報
引用文献4:特開2010-234675号公報


4 引用例
(1)引用文献1
ア 引用文献1の記載
当審拒絶理由で引用された引用文献1(国際公開第2011/162198号)は,本件出願の優先権主張の日(以下,「本件優先日」という。)より前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであるところ,当該引用文献1には次の記載がある。(下線部は,後述する引用発明の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「技術分野
[0001] 本発明は,液晶表示装置,偏光板および偏光子保護フィルムに関する。・・・(中略)・・・
背景技術
[0002] 液晶表示装置(LCD)に使用される偏光板は,通常ポリビニルアルコール(PVA)などにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで挟んだ構成となっていて,偏光子保護フィルムとしては通常トリアセチルセルロース(TAC)フィルムが用いられている。近年,LCDの薄型化に伴い,偏光板の薄層化が求められるようになっている。しかし,このために保護フィルムとして用いられているTACフィルムの厚みを薄くすると,充分な機械強度を得ることが出来ず,また透湿性が悪化するという問題が発生する。また,TACフィルムは非常に高価であり,安価な代替素材が強く求められている。
・・・(中略)・・・
発明が解決しようとする課題
[0005] ポリエステルフィルムは,TACフィルムに比べ耐久性に優れるが,TACフィルムと異なり複屈折性を有するため,これを偏光子保護フィルムとして用いた場合,光学的歪みにより画質が低下するという問題があった。すなわち,複屈折性を有するポリエステルフィルムは所定の光学異方性(リタデーション)を有することから,偏光子保護フィルムとして用いた場合,斜め方向から観察すると虹状の色斑が生じ,画質が低下する。・・・(中略)・・・
[0006] 本発明は,かかる課題を解決すべくなされたものであり,その目的は,液晶表示装置の薄型化に対応可能(即ち,十分な機械的強度を有する)であり,且つ虹状の色斑による視認性の悪化が発生しない,液晶表示装置および偏光子保護フィルムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0007]・・・(中略)・・・
[0009] 即ち,本発明は,以下の(1A)?(8A)及び(1B)?(9B)に係る発明である。・・・(中略)・・・
(6B)白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板用の偏光子保護フィルムであって,
3000?30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムからなる偏光子保護フィルム。
・・・(中略)・・・
(8B)前記ポリエステルフィルムが易接着層を有する,6Bまたは7Bに記載の偏光子保護フィルム。
(9B)前記ポリエステルフィルムが少なくとも3層以上からなり,
最外層以外の層に紫外線吸収剤を含有し,
380nmの光線透過率が20%以下である,6B?8Bのいずれかに記載の偏光子保護フィルム。
発明の効果
[0010]
本発明の液晶表示装置,偏光板および偏光子保護フィルムは,いずれの観察角度においても透過光のスペクトルは光源に近似したスペクトルを得ることが可能となり,虹状の色斑が無い良好な視認性を確保することができる。また,好適な一実施形態において,本発明の偏光子保護フィルムは,薄膜化に適した機械的強度を備えている。」

(イ) 「発明を実現するための形態
[0011]・・・(中略)・・・
[0016] 偏光板は,PVAなどにヨウ素を染着させた偏光子を2枚の偏光子保護フィルムで貼り合せた構成を有するが,本発明では,偏光板を構成する偏光子保護フィルムの少なくともひとつとして,特定範囲のリタデーションを有するポリエステルフィルムを偏光子保護フィルムとして用いることを特徴とする。
[0017] 上記態様により虹状の色斑の発生が抑制される機構としては,次のように考えている。
[0018] 偏光子の片側に複屈折性を有するポリエステルフィルムを配した場合,偏光子から出射した直線偏光はポリエステルフィルムを通過する際に乱れが生じる。透過した光はポリエステルフィルムの複屈折と厚さの積であるリタデーションに特有の干渉色を示す。そのため,光源として冷陰極管や熱陰極管など不連続な発光スペクトルを用いると,波長によって異なる透過光強度を示し,虹状の色斑となる(参照:第15回マイクロオプティカルカンファレンス予稿集,第30?31項)。
[0019] これに対して,白色発光ダイオードでは,可視光領域において連続的で幅広い発光スペクトルを有する。そのため,複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状に着目すると,ポリエステルフィルムのレタデーションを制御することで,光源の発光スペクトルと相似なスペクトルを得ることが可能となる。このように,光源の発光スペクトルと複屈折体を透過した透過光による干渉色スペクトルの包絡線形状とが相似形となることで,虹状の色斑が発生せずに,視認性が顕著に改善すると考えられる。
[0020] 以上のように,本発明では幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオードを光源に用いるため,比較的簡便な構成のみで透過光のスペクトルの包絡線形状を光源の発光スペクトルに近似させることが可能となる。
[0021] 上記効果を奏するために,偏光子保護フィルムに用いられるポリエステルフィルムは,3000?30000nmのリタデーションを有することが好ましい。リタデーションが3000nm未満では,偏光子保護フィルムとして用いた場合,斜め方向から観察した時に強い干渉色を呈するため,包絡線形状が光源の発光スペクトルと相違し,良好な視認性を確保することができない。・・・(中略)・・・
[0022] 一方,リタデーションの上限は30000nmである。それ以上のリタデーションを有するポリエステルフィルムを用いたとしても更なる視認性の改善効果は実質的に得られないばかりか,フィルムの厚みも相当に厚くなり,工業材料としての取り扱い性が低下するので好ましくない。
・・・(中略)・・・
[0024] 本発明では,偏光子保護フィルムの少なくとも一つが上記特定のリタデーションを有する偏光子保護フィルムであることを特徴とする。当該特定のリタデーションを有する偏光子保護フィルムの配置は特に限定されないが,・・・(中略)・・・特に好ましい態様は,出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムを当該特定のリタデーションを有するポリエステルフィルムとする態様である。・・・(中略)・・・
[0026] 本発明に用いられる偏光板には,写り込み防止やギラツキ抑制,キズ抑制などを目的として,種々のハードコートを表面に塗布することも好ましい様態である。
・・・(中略)・・・
[0028] また,ヨウ素色素などの光学機能性色素の劣化を抑制することを目的として,本発明の保護フィルムは,波長380nmの光線透過率が20%以下であることが望ましい。・・・(中略)・・・
[0029] 本発明の保護フィルムの波長380nmの透過率を20%以下にするためには,紫外線吸収剤の種類,濃度,及びフィルムの厚みを適宜調節することが望ましい。本発明で使用される紫外線吸収剤は公知の物質である。紫外線吸収剤としては,有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられるが,透明性の観点から有機系紫外線吸収剤が好ましい。・・・(中略)・・・
[0033] 本発明においては,偏光子との接着性を改良のために,本発明のフィルムの少なくとも片面に,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする易接着層を有することが好ましい。ここで,「主成分」とは易接着層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の易接着層の形成に用いる塗布液は,水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂,アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内,少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては,例えば,特許第3567927号公報,特許第3589232号公報,特許第3589233号公報,特許第3900191号公報,特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液,アクリル樹脂溶液,ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
[0034] 易接着層は,前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後,100?150℃で乾燥し,さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は,0.05?0.20g/m^(2)に管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m^(2)未満であると,得られる偏光子との接着性が不十分となる場合がある。一方,塗布量が0.20g/m^(2)を超えると,耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に易接着層を設ける場合は,両面の易接着層の塗布量は,同じであっても異なっていてもよく,それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
・・・(中略)・・・
[0042] 本発明者等は,保護フィルムの機械的強度を保持しつつ,虹斑の発生を抑制する手段として,保護フィルムのリタデーション(面内リタデーション)と厚さ方向のリタデーション(Rth)との比が特定の範囲に収まるように制御することを見出した。厚さ方向位相差は,フィルムを厚さ方向断面から見たときの2つの複屈折△Nxz,△Nyzにそれぞれフィルム厚さdを掛けて得られる位相差の平均を意味する。面内リタデーションと厚さ方向リタデーションの差が小さいほど,観察角度による複屈折の作用は等方性を増すため,観察角度によるリタデーションの変化が小さくなる。そのため,観察角度による虹状の色斑が発生し難くなると考えられる。
・・・(中略)・・・
[0052] また,本発明ではフィルムを少なくとも3層以上の多層構造とし,フィルムの中間層に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を含む3層構造のフィルムは,具体的には次のように作製することができる。外層用としてポリエステルのペレット単独,中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとポリエステルのペレットを所定の割合で混合し,乾燥したのち,公知の溶融積層用押出機に供給し,スリット状のダイからシート状に押出し,キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。」

ウ 「実施例
[0053] 以下,実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが,本発明は,下記実施例によって制限を受けるものではなく,本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり,それらは,いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお,以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
[0054](1)リタデーション(Re) リタデーションとは,フィルム上の直交する二軸の屈折率の異方性(△Nxy=|Nx-Ny|)とフィルム厚みd(nm)との積(△Nxy×d)で定義されるパラメーターであり,光学的等方性,異方性を示す尺度である。二軸の屈折率の異方性(△Nxy)は,以下の方法により求めた。二枚の偏光板を用いて,フィルムの配向軸方向を求め,配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し,測定用サンプルとした。このサンプルについて,直交する二軸の屈折率(Nx,Ny),及び厚さ方向の屈折率(Nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製,NAR-4T,測定波長589nm)によって求め,前記二軸の屈折率差の絶対値(|Nx-Ny|)を屈折率の異方性(△Nxy)とした。フィルムの厚みd(nm)は電気マイクロメータ(ファインリューフ社製,ミリトロン1245D)を用いて測定し,単位をnmに換算した。屈折率の異方性(△Nxy)とフィルムの厚みd(nm)の積(△Nxy×d)より,リタデーション(Re)を求めた。
・・・(中略)・・・
[0057](4)虹斑観察
PVAとヨウ素からなる偏光子の片側に後述する方法で作成したポリエステルフィルムを偏光子の吸収軸とフィルムの配向主軸が垂直になるように貼り付け,その反対の面にTACフィルム(富士フイルム(株)社製,厚み80μm)を貼り付けて偏光板を作成した。得られた偏光板を,青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学,NSPW500CS)とする液晶表示装置の出射光側にポリエステルフィルムが視認側になるとうに設置した。この液晶表示装置は,液晶セルの入射光側に2枚のTACフィルムを偏光子保護フィルムとする偏光板を有する。液晶表示装置の偏光板の正面,及び斜め方向から目視観察し,虹斑の発生有無について,以下のように判定した。
・・・(中略)・・・
[0060](製造例1-ポリエステルA)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で,テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み,撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部,酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部,トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで,加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa,240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後,エステル化反応缶を常圧に戻し,リン酸0.014質量部を添加した。さらに,15分かけて260℃に昇温し,リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に,高圧分散機で分散処理を行い,15分後,得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し,280℃で減圧下重縮合反応を行った。
[0061] 重縮合反応終了後,95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い,ノズルからストランド状に押出し,予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却,固化させ,ペレット状にカットした。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の固有粘度は0.62dl/gであり,不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。(以後,PET(A)と略す。)
[0062](製造例2-ポリエステルB)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部,粒子を含有しないPET(A)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し,混練押出機を用い,紫外線吸収剤含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得た。(以後,PET(B)と略す。)
[0063](製造例3-接着性改質塗布液の調整)
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って,ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%,イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%,グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製した。次いで,水51.4質量部,イソプロピルアルコール38質量部,n-ブチルセルソルブ5質量部,ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後,加熱撹拌し,77℃に達したら,上記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え,樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後,樹脂水分散液を常温まで冷却して,固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得た。さらに,凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製,サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後,上記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて,撹拌しながら水20質量部を加えて,接着性改質塗布液を得た。
[0064](実施例1)
基材フィルム中間層用原料として粒子を含有しないPET(A)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有したPET(B)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後,押出機2(中間層II層用)に供給し,また,PET(A)を常法により乾燥して押出機1(外層I層および外層III用)にそれぞれ供給し,285℃で溶解した。この2種のポリマーを,それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し,2種3層合流ブロックにて,積層し,口金よりシート状にして押し出した後,静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し,未延伸フィルムを作った。この時,I層,II層,III層の厚さの比は10:80:10となるように各押し出し機の吐出量を調整した。
[0065] 次いで,リバースロール法によりこの未延伸PETフィルムの両面に乾燥後の塗布量が0.08g/m^(2)になるように,上記接着性改質塗布液を塗布した後,80℃で20秒間乾燥した。
[0066] この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き,フィルムの端部をクリップで把持しながら,温度125℃の熱風ゾーンに導き,幅方向に4.0倍に延伸した。次に,幅方向に延伸された幅を保ったまま,温度225℃,30秒間で処理し,さらに幅方向に3%の緩和処理を行い,フィルム厚み約50μmの一軸配向PETフィルムを得た。
・・・(中略)・・・
[0071](実施例6)
実施例1と同様の方法で,中間層に紫外線吸収剤を含有するPET樹脂(B)を用いずに,フィルム厚み50μmの一軸配向PETフィルムを得た。得られたフィルムは虹状の色斑は解消されたが,380nmの光線透過率が高く,光学機能性色素を劣化させる懸念がある。
・・・(中略)・・・
[0079] 実施例1?10及び比較例1?3のポリエステルフィルムについて虹斑観察及び引裂き強度を測定した結果を以下の表1に示す。
[表1]

表1に示されるように,実施例1?10のフィルムを用いて虹斑観察を行ったところ,正面方向から観察した場合は,いずれのフィルムでも虹斑は観察されなかった。実施例3?5及び8のフィルムについては,斜めから観察した場合に部分的に虹斑が観察される場合があったが,実施例1,2,6,7,9及び10のフィルムについては,斜めから観察した場合も虹斑は全く観られなかった。一方,比較例1?3のフィルムは,斜めから観察した際に明らかな虹斑が観られた。」

イ 引用文献1に記載された発明
前記ア(ア)ないし(ウ)で摘記した記載を含む引用文献1の全記載から,引用文献1に,実施例1についての発明として,次の発明が記載されていると認められる。(なお,引用文献1の[0066]に記載された「一軸配向PETフィルム」なる文言が,3層構造の延伸PETフィルムのみを指しているのではなく,当該延伸PETフィルムと易接着層とからなるフィルム全体を指していることは文脈上明らかであるから,下記認定においても,「一軸配向PETフィルム」なる文言をそのような意味で用い,当該「一軸配向PETフィルム」から易接着層を除いた,3層構造の延伸PETフィルムのみを,便宜上「延伸PETフィルム」と表現した。)

「未延伸PETフィルムの両面に,乾燥後の塗布量が0.08g/m^(2)になるように,下記[接着性改質塗布液の調整方法]によって調整された接着性改質塗布液をリバースロール法により塗布した後,80℃で20秒間乾燥し,この塗布層を形成した未延伸PETフィルムをテンター延伸機に導き,未延伸PETフィルムの端部をクリップで把持しながら,温度125℃の熱風ゾーンに導き,幅方向に4.0倍に延伸し,次に,幅方向に延伸された幅を保ったまま,温度225℃,30秒間で処理し,さらに幅方向に3%の緩和処理を行うことによって得られた,延伸PETフィルムの両面に易接着層が形成された厚み約50μmの一軸配向PETフィルムからなる偏光子保護フィルムであって,
前記未延伸PETフィルムは,厚さの比が10:80:10である外層I層,中間層II層及び外層III層からなる3層構造のフィルムであって,基材フィルム中間層用原料として,下記[PET(A)樹脂ペレットの製造方法]によって製造されたPET(A)樹脂ペレット90質量部と下記[PET(B)樹脂ペレットの製造方法]によって製造されたPET(B)樹脂ペレット10質量部とを135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後,中間層II層用の押出機2に供給し,また,前記PET(A)樹脂ペレットを常法により乾燥して外層I層及び外層III用の押出機1にそれぞれ供給し,285℃で溶解し,この2種のポリマーを,それぞれステンレス焼結体の濾材で濾過し,2種3層合流ブロックにて,積層し,口金よりシート状にして押し出した後,静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化することによって得られたものであり,
フィルムの配向軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出して得られる測定用サンプルについて,アッベ屈折率計(アタゴ社製,NAR-4T,測定波長589nm)により測定したときの,直交する二軸の屈折率Nx,Ny,及び厚さ方向の屈折率Nzが,それぞれ,1.593,1.697,及び1.513であり,
二軸の屈折率差の絶対値|Nx-Ny|とフィルムの厚みd(nm)の積で定義されるリタデーション(Re)が,5177nmであり,
波長380nmの光線透過率が8.5%である,
白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板用の偏光子保護フィルム。

[接着性改質塗布液の調整方法]
常法によりエステル交換反応および重縮合反応を行って,ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%,イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%,グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂を調製し,次いで,水51.4質量部,イソプロピルアルコール38質量部,n-ブチルセルソルブ5質量部,ノニオン系界面活性剤0.06質量部を混合した後,加熱撹拌し,77℃に達したら,前記水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂5質量部を加え,樹脂の固まりが無くなるまで撹拌し続けた後,樹脂水分散液を常温まで冷却して,固形分濃度5.0質量%の均一な水分散性共重合ポリエステル樹脂液を得,さらに,凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製,サイリシア310)3質量部を水50質量部に分散させた後,前記水分散性共重合ポリエステル樹脂液99.46質量部にサイリシア310の水分散液0.54質量部を加えて,撹拌しながら水20質量部を加える。

[PET(A)樹脂ペレットの製造方法]
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で,テレフタル酸を86.4質量部およびエチレングリコール64.6質量部を仕込み,撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部,酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部,トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで,加圧昇温を行いゲージ圧0.34MPa,240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後,エステル化反応缶を常圧に戻し,リン酸0.014質量部を添加し,15分かけて260℃に昇温し,リン酸トリメチル0.012質量部を添加し,次いで15分後に,高圧分散機で分散処理を行い,15分後,得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し,280℃で減圧下重縮合反応を行い,重縮合反応終了後,95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い,ノズルからストランド状に押出し,予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却,固化させて,固有粘度が0.62dl/gで,不活性粒子及び内部析出粒子を実質上含有していないポリエチレンテレフタレート樹脂(A)を得,これをペレット状にカットする。

[PET(B)樹脂ペレットの製造方法]
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部,前記[PET(A)樹脂ペレットの製造方法]で得られるポリエチレンテレフタレート樹脂(A)90質量部を混合し,混練押出機を用い,紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を得,これをペレット状にカットする。」(以下,「引用発明」という。)

(2)周知の事項
ア 引用文献2の記載
当審拒絶理由で周知例として例示された引用文献2(特開2003-177209号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献2には次の記載がある。(下線部は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は干渉による外観の悪化を抑制した減反射フィルム,並びに電子画像表示装置等に貼合する際に使用する接着層と基材フィルムとの間に生じる界面反射を低減させた減反射フィルム及びそれらを用いた電子画像表示装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に,透明基材の最外層に,基材よりも低屈折率の物質からなる低屈折率層(減反射層)を可視光波長の1/4の膜厚(約100nm)で形成すると,干渉効果により表面反射が低減し,透過率が向上することが知られている。この原理を用いたフィルムは,電気製品,光学製品,建材等の透明基材部分における表面反射の低減が必要とされる分野において,減反射材として応用されている。
・・・(中略)・・・
【0004】減反射材料の中で,基材樹脂として透明樹脂フィルムを用いた,いわゆる減反射フィルムではフィルム自体の硬度が低いためにキズが付きやすいといった問題が生じる。そのため,減反射フィルムでは一般的にアクリレートや珪素化合物からなる厚さ5?20μm程度のハードコート層を形成した上に減反射層を形成して表面硬度を向上させている。
【0005】これらハードコート層は一般的に屈折率が1.5程度であり,ハードコート層に対して屈折率が大きく異なるようなポリエチレンテレフタレート(屈折率約1.65)などのフィルムに塗工した場合には,該フィルムとハードコート層との干渉により水上の油膜のような模様が生じ,外観を損なうといった問題があった。特に,ハードコート層の膜厚が10μm以下のときに重大な問題となる。
・・・(中略)・・・
【0008】
【発明が解決しようとする課題】・・・(中略)・・・
【0010】そこで本発明は,光の干渉による外観の悪化を抑制できるとともに,反射率を低下させることができる減反射フィルム及びそれを用いた電子画像表示装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,前記問題点に鑑み鋭意検討した結果,透明樹脂フィルム上に,屈折率の限定された第一の干渉層,ハードコート層を順次積層し,その上に減反射層を形成することにより,干渉ムラによる外観悪化が抑えられ,かつ反射率が低減できることを見出した。さらに,減反射層が形成されていない方の面に,屈折率の限定された第二の干渉層,接着層を順次積層することで,透明樹脂フィルムと接着層間に生じる界面反射を低減できることを見出し,本発明を完成した。
【0012】すなわち,第1の発明の減反射フィルムは,最外層から順に少なくとも低屈折率層と高屈折率層からなる減反射層,ハードコート層及び第一の干渉層からなる多層構造を透明樹脂フィルムの片面又は両面に設けるとともに,500?650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1.0%以下であることを特徴とするものである。」

(イ) 「【0021】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の減反射フィルムは,最外層から順に少なくとも低屈折率層と高屈折率層からなる減反射層,ハードコート層及び第一の干渉層からなる多層構造を透明樹脂フィルムの片面又は両面に設けたものである。さらに減反射フィルムは,500?650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1.0%以下である。
【0022】上記の透明樹脂フィルムを形成する透明樹脂基材は,屈折率が1.55?1.70の範囲内のものが好ましい。この透明樹脂基材としては,具体的には例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)・・・(中略)・・・等を好ましく挙げることができる。
【0023】これらのうち,特に表面が平滑なPETが成形の容易性,入手の容易さ及びコストの点で好ましい。・・・(中略)・・・
【0025】前記透明樹脂フィルム上に,第一の干渉層及びハードコート層を積層することにより,干渉ムラを低減させることが必要である。そのために透明樹脂フィルムに,屈折率1.50?1.65かつ光学膜厚が125?160nmである第一の干渉層,屈折率1.45?1.55かつ膜厚が2?25μmであるハードコート層を順次積層することが好ましい。ここで光学膜厚とは層の屈折率(n)と層の厚み(d)の積(n×d)である。
【0026】第一の干渉層の屈折率及び光学膜厚が上記範囲外である場合には,光の干渉ムラの低減効果が低くなるため好ましくない。また,ハードコート層の屈折率が1.45未満の場合には十分な硬度を得ることが難しくなるため好ましくない。一方,屈折率が1.55を超える場合には透明樹脂フィルムとの屈折率差が小さくなって減反射効果が弱くなり,好ましくない。ハードコート層の膜厚についても2?25μmの範囲外の場合には同様の理由で好ましくない。
・・・(中略)・・・
【0028】第一の干渉層の屈折率は,好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}^(1/2)±0.03の範囲内,さらに好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}^(1/2)±0.02の範囲内である。第一の干渉層の屈折率は,{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}^(1/2)であるときに最も干渉ムラを低減でき,さらにその±0.03の範囲内であれば,干渉ムラを効果的に低減させることができる。かつ,各層の屈折率が透明樹脂フィルムの屈折率>第一の干渉層の屈折率>ハードコート層の屈折率の関係にあると,干渉ムラをさらに低減させることができる。
・・・(中略)・・・
【0032】また,樹脂材料から透明樹脂フィルムを作製するとき,即ち延伸やキャストするとき,同時に表面に第一の干渉層を膜として形成させることが可能である。例えば,透明樹脂フィルムがPETフィルムの場合,その上に積層する層との密着性を向上させるために,PETフィルムの製造時にインラインでPETフィルム表面にポリエステル系樹脂等からなる接着剤を塗布して易接着層を形成する。この易接着層の屈折率及び膜厚を第一の干渉層の条件に合わせることにより易接着層が第一の干渉層を兼ねることができる。さらに,第一の干渉層の上に形成するハードコート層は屈折率,膜厚が前記範囲内であることが好ましく,その材料,層の形成方法は特に限定されない。」

イ 引用文献3の記載
当審拒絶理由で周知例として例示された引用文献3(特開2007-253512号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献3には次の記載がある。(下線部は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関し,詳しくはハードコート積層時の干渉色むらを低減し,ハードコートとの耐湿密着性を煮沸試験に耐えうるレベルまで向上させ,かつハードコートを設置しない状態での加熱時析出するオリゴマーの大きさを小さく抑えることのできる光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関し,更に詳しくは,ハードコートフィルムとしてタッチパネルや反射防止フィルムに好適に使用できるようにするための光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(PET,PENなど)・・・(中略)・・・などの透明プラスティックフィルムは,ガラスと比べて,軽量・割れにくい・曲げられるといった好適な性質を持つため,液晶ディスプイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用部材や,銘板,窓貼りフィルムの基材として用いられている。中でも,二軸延伸ポリエステルフィルムは,機械的性質,電気的性質,寸法安定性,耐熱性,透明性,耐薬品性などに優れた性質を有する上に,他の透明プラスティックフィルムに比べて,汎用性が高く,コストメリットに大きな優位性があるため,かかる用途に好適に用いられている。
【0003】
しかし,二軸延伸ポリエステルフィルム単体では達成できない物性を要求する用途もある。例えば,二軸延伸ポリエステルフィルムは表面硬度が低く,また,耐摩耗性も不足しているため,フラットパネルディスプレイの保護フィルムや反射防止フィルム,タッチパネル,表示板,銘板,窓貼りフィルムなど,物品の表面に貼られる用途の場合,鋭利な物体との接触や摩擦などによって表面に損傷を受けやすい。このため,二軸延伸ポリエステルフィルムの表面にハードコート層を設け,耐スクラッチ性,耐摩耗性を向上させることが知られている(例えば,特許文献1など)。このハードコート層としては,硬度や耐久性,生産性の点でアクリル系ハードコートが好適に用いられている・・・(中略)・・・
【0004】
しかし,前述した従来の技術をタッチパネル用途や反射防止フィルム用途に用いる場合には次の3点の問題点がある。
【0005】
1つ目は干渉色むらに関してである。二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向屈折率は一般的に1.66程度あり,アクリル系樹脂層の屈折率は一般的に1.5程度である。この屈折率差のため,二軸延伸ポリエステルフィルムとアクリル系樹脂層の界面で干渉が生じ,積層フィルム表面に色斑感が発生する。この色斑感は,積層フィルムが透明なほど,そして,太陽光や白熱灯より三波長蛍光灯という特殊な蛍光灯下で感知される。・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は,二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた透明積層フィルム従来の利点を有したまま,ハードコート加工時の干渉色むらの軽減と接着性の煮沸試験耐性の向上,加熱時の加熱析出オリゴマーの低減を実現する光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち,本発明は,
屈折率が1.55?1.62かつ膜厚が50?150nmの積層膜(A)を有し,
積層膜(A)上に屈折率が1.45?1.55のハードコートを積層した後の該面の450?600nmにおける分光反射率のリップルの振幅が2.0%以下,かつ1時間煮沸後のハードコート密着力が90%以上,積層膜(A)上にハードコートを積層しない状態での150℃60分加熱後の積層膜(A)上に析出するオリゴマー粒1つ当たりのサイズが面積換算で30μm2以下であることを特徴とする光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルム,
・・・(中略)・・・である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって,二軸延伸ポリエステルフィルムを用いた透明積層フィルム従来の利点を有したまま,ハードコート加工時の干渉色むらの軽減と接着性の煮沸試験耐性の向上,加熱時の加熱析出オリゴマーの低減を実現する光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができた。」

(イ) 「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における光学用積層二軸延伸ポリエステルフィルムとは,ポリエステルの基材フィルムの上に積層膜(A)が片面もしくは両面に設けられたものである。以下に本発明における積層膜(A)について述べる。
【0013】
ハードコート後の干渉色ムラを低減するためには,積層膜(A)上に屈折率が1.45?1.55のハードコートを積層した後の450?600nmにおける分光反射率のリップルの振幅が2.0%以下であることが必要であり,更に好ましくは1.5%以下である。この範囲であれば,色むらの差が小さく目立たなくなり,ディスプレイ上で人間の目で検知されないレベルとなる。二軸延伸ポリエステルフィルム上に数μm程度のアクリル系樹脂からなるハードコート層を設けた場合,ハードコート層表面の分光反射率にリップルと呼ばれるうねりが生じる(図2)。二軸延伸ポリエステルフィルムの面方向平均屈折率は1.66程度であり,アクリル系ハードコート層の屈折率は1.50程度であるため,両者の屈折率差は0.16程度と大きく,リップルの振幅が大きく,結果,反射率のムラすなわち色斑が顕著になる。特に,ある特定の狭い波長範囲で発光する三波長蛍光灯の場合,かかる狭い発光波長範囲では,ハードコート層の膜厚変動により生じるリップルの変動と発光波長領域のズレが大きくなり,色斑が助長される。そこで,かかる二軸延伸ポリエステルフィルムとハードコート層の間に,両者の屈折率の中間程度の屈折率を有する積層膜(A)を設けることでリップルの振幅を軽減することを可能とするものである。
すなわち,積層膜(A)の屈折率は1.55?1.62が好ましく,より好ましくは,1.57?1.61である。1.55より小さい場合は,アクリル系ハードコート層の屈折率に近くなり,二軸延伸ポリエステルフィルムとの屈折率差が大きくなるため,リップルの振幅は大きくなり色斑は顕著になる。逆に,1.62より大きい場合は,二軸延伸ポリエステルフィルムの屈折率に近くなり,アクリル系ハードコート層との屈折率差が大きくなるため,リップルの振幅は大きくなり色斑は顕著になる。また,かかる積層膜(A)の厚みは,リップルの大きな節を可視光領域(380?780nm)に存在せしめるために,50nm?150nmが好ましく,より好ましくは,70?120nmである。50nmより小さい場合は,リップルの大きな節が紫外領域にシフトするため,可視光領域でのリップルの振幅が大きくなり,150nmより大きい場合は,リップルの大きな節が赤外領域にシフトするため可視光領域でのリップルの振幅が大きくなり,好ましくない。なお,リップルの大きな節とは,積層膜(A)の存在により二軸延伸ポリエステルフィルムとハードコート層のリップルの振幅が波長依存性を持ち,リップルの振幅が極小となる節のことを言う(図3)。
【0014】
干渉色むら対策として,積層膜(A)の屈折率を1.55?1.62にするためには,積層膜(A)の主剤の樹脂をポリエステルにすることが好ましい。・・・(中略)・・・
【0030】
最後に積層膜(A)上に設置されるハードコートについて述べる。本発明におけるハードコート層はアクリル樹脂を主成分とし,厚みは3μm?20μmである必要があり,5μm?15μmが好ましい。3μmを下回ると,硬度が不足したり,紫外線吸収剤を添加しても優れた耐候性が発現しないという問題が生じ,20μmを越えると,積層ポリエステルフィルムがカールしたりハードコートにクラック生じる可能性が高くなるためである。ハードコートの屈折率は,主成分がアクリル系であるため,1.47?1.53程度が普通である。金属粒子などを添加することで屈折率を1.53より大きくすることは可能であるが,ハードコートがヘイジーになったり,屈折率が1程度である空気との屈折率差が大きくなるため,ハードコート表面の反射率が上昇するため好ましくない。また,基材である積層二軸延伸ポリエステルフィルムとの接着力が高い方が好ましく,更に,表面硬度は3H以上であることが好ましい。」

ウ 引用文献4の記載
当審拒絶理由で周知例として例示された引用文献4(特開2010-234675号公報)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該引用文献4には次の記載がある。(下線部は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関し,さらにフラットパネルディスプレイ(FPD)部材の基材として好適な光学特性を有する積層二軸延伸ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)・・・(中略)・・・などの透明プラスチックフィルムは,ガラスと比べて軽量,割れにくい,曲げられる,といった好適な性質を持つため,いわゆる光学フィルムと呼ばれる液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP),電子ペーパー(EP)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用部材の基材や工程紙として用いられている。中でも二軸延伸ポリエステルフィルムは,機械的性質,電気的性質,寸法安定性,耐熱性,透明性,対薬品性などに優れた性質を有する上に,他の透明プラスチックフィルムに比べて,汎用性が高く,コストメリットに大きな優位性があるため,かかる用途に好適に用いられている(たとえば特許文献1など)。」

(イ) 「【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の積層ポリエステルフィルムは,少なくとも,ポリエステル層(基材層)と,該ポリエステル層(基材層)の片側または両側に積層膜を有するものである。
・・・(中略)・・・
【0020】
また,先述したように,ポリエステルフィルムには,ハードコード層が積層されることがあるが,ポリエステルフィルム上に数μm程度のアクリル系樹脂からなるハードコート層を単に設けると,ハードコート層表面の分光反射率にリップルと呼ばれるうねりが生じる。二軸配向したポリエステルフィルムの面方向平均屈折率は1.66程度であり,アクリル系ハードコート層の屈折率は1.5程度であるため,両者の屈折率差は0.16程度と大きく,反射率のリップル振幅が大きい。その結果,反射率のムラすなわち干渉ムラが顕著になる。特にある特定の狭い波長範囲で発光する三波長蛍光灯の場合,かかる狭い発光波長範囲ではハードコート層の膜厚変動により生じるリップルの変動と発光波長領域のズレが大きくなり,干渉ムラが助長される。
【0021】
そこで,かかる二軸延伸ポリエステルフィルムとハードコート層の間に,両者の屈折率の中間程度の屈折率1.53?1.64を有する積層膜を設けることでリップルの振幅を軽減することが好ましい。そのため,本発明において,積層膜の屈折率は1.53?1.64であることが好ましい。」

エ 特開2006-163151号公報の記載
特開2006-163151号公報(以下,「周知例1」という。)は,本件優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該周知例1には次の記載がある。(下線部は,後述する周知事項の認定に特に関係する箇所を示す。)
(ア) 「【技術分野】
【0001】
本発明は,プラズマディスプレイパネル(PDP)その他のディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止フィルム及びこの反射防止フィルムを有するディスプレイ用前面フィルタに関する。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0007】
このようなウェットコーティングによる反射防止フィルムの一般的構造を,図3に例示する。これは,透明基材33に,ハードコート性を有する高屈折率層32,及びハードコート性を有する高屈折率層32よりも屈折率の低い低屈折率層31が積層されたものであり,低屈折率層31側から入射する外部の光が反射されて視認性が低下することを防ぐ役割を持つ。
【0008】
図3のような構造の反射防止フィルムにおいて,反射防止効果を向上させるためには,高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が大きい設計とすることは原理的には好ましい。しかし,低屈折率層に求められるその他の特性,すなわち高屈折率層との接着性や硬度等を満足させつつ,低屈折率層の低屈折率化を図るには実質的には限界がある。そのために高屈折率層の高屈折率化が一方で図られ,これによって透明基材と高屈折率層との屈折率差が増大する。しかしこのために,高屈折率層の厚みのごく僅かな不均一性に起因して,油染みとも呼ばれる干渉縞が観察されるようになる。この干渉縞は,ディスプレイに表示の映像とは無関係の色彩を呈し,ディスプレイの表示品質を低下させるため問題である。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
・・・(中略)・・・
【0015】
したがって,本発明の目的は,透明基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)(例えば屈折率1.65)のような屈折率が比較的高い材料を使用した場合にも良好な干渉縞低減特性を有し,ハードコート層への多量の充填剤の使用によりに製造費用の上昇をもたらすことがない,プラズマディスプレイパネル(PDP)その他のディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止フィルムを提供することにある。
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は,上記目的が,
透明基材上に,中間層,ハードコート層,ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層が順に積層された反射防止フィルムであって,
次式(1)?(4):
n_(1)>n_(2)>n_(3) (1)
| n_(2)-(n_(1)+n_(3))/2 | ≦ 0.07 (2)
1.56≦n_(1)≦1.71 (3)
1.50≦n_(2)≦1.70 (4)
(但し,n_(1)は透明基材の屈折率,n_(2)は中間層の屈折率,n_(3)はハードコート層の屈折率である)
を満たし,
中間層の厚みd(nm)が,65?103nmの範囲にあることを特徴とする反射防止フィルムによって達成されることを見いだした。
・・・(中略)・・・
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば,透明基材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)(例えば屈折率1.65)のような屈折率が比較的高い材料を使用した場合にも,反射防止効果はもとより,いわゆる油染みとも呼ばれる干渉縞を低減し,ハードコート層への多量の充填剤の使用によりに製造費用の上昇をもたらすことがない,プラズマディスプレイパネル(PDP)その他のディスプレイの前面フィルタ等に有用な反射防止フィルムを得ることができる。」

(イ) 「【0042】
また上記中間層の屈折率n_(2)の値は,上記式(2)において,次式:
| n_(2)-(n_(1)+n_(3))/2 |
で求められる値が一般に0.07以下,好ましくは0.05以下,特に0.03以下となる値であることが好ましい。この基準に従って中間層の屈折率n_(2)の値を設定して各層の屈折率の差を小さくすることで,干渉縞発生抑止効果と反射防止効果とを特に高めた反射防止フィルムを得ることができる。」

オ 引用文献2ないし4及び周知例1の記載から把握される周知の技術事項
前記アないしエで摘記した引用文献2ないし4の記載等から,次の技術事項が本件優先日より前に周知であったと認められる。

「ポリエステルフィルムのような,ハードコート層との屈折率差の大きな樹脂フィルム上にハードコート層を形成すると,干渉ムラが生じてしまうという問題があるが,
樹脂フィルムとハードコート層の間に,両者の屈折率の中間程度,具体的には相加平均又は相乗平均程度の屈折率を有する中間層を設けることによって,前記干渉ムラを抑制できること。」(以下,「周知事項」という。)

5 判断
(1)対比
ア 引用発明の「延伸PETフィルム」は,易接着層の「基材」として機能しているといえるところ,当該「延伸PETフィルム」が光透過性であることは,引用発明が「白色発光ダイオードをバックライト光源とする液晶表示装置に用いられる偏光板用の偏光子保護フィルム」であることから,当業者に自明である。したがって,引用発明の「延伸PETフィルム」は,「光透過性基材」といえる。
また,引用発明の「延伸PETフィルム」は,4.0倍にテンター延伸されたものであるから,面内の複屈折性を有していることは,当業者に自明である。
以上によれば,引用発明の「延伸PETフィルム」は,本件発明の「面内の複屈折性を有する光透過性基材」に相当し,引用発明は,本件発明と,「面内の複屈折性を有する光透過性基材を備え」る点で共通する。

イ 引用発明の「易接着層」は,「延伸PETフィルム」の両面に形成されているから,「延伸PETフィルム」(本件発明の「光透過性基材」に対応する。以下,「(1)対比」欄において,「」で囲まれた引用発明の構成に付した()中の文言は,当該引用発明の構成に対応する本件発明の発明特定事項を表す。)と積層されているといえる。
また,引用発明の「易接着層」は,概略,接着性改質塗布液を塗布し,乾燥して得られる塗布層を,4.0倍にテンター延伸したものであるところ,「塗布層」の材質は,「ジカルボン酸成分として(ジカルボン酸成分全体に対して)テレフタル酸46モル%,イソフタル酸46モル%および5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%,グリコール成分として(グリコール成分全体に対して)エチレングリコール50モル%およびネオペンチルグリコール50モル%の組成の水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」と「凝集体シリカ粒子(富士シリシア(株)社製,サイリシア310)」とを約162.7:1(=(99.46×0.05):(0.54×3/53))の重量比で混合したものに該当する。しかるに,当該材質中の「水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」が,延伸することによって面内の複屈折を生じることは,そのジカルボン酸成分及びグリコール成分をみれば,当業者に自明であるから,「塗布層」を4.0倍にテンター延伸したものである引用発明の「易接着層」は,面内の複屈折性を有していると認められる。
以上によれば,引用発明の「易接着層」は,本件発明の「光透過性基材と積層され面内の複屈折性を有する屈折率調整層であって,前記光透過性基材と前記機能層との間に位置するようになる屈折率調整層」と,「光透過性基材と積層され面内の複屈折性を有する層」(以下,便宜上,「複屈折層」と表現する。)である点で共通し,引用発明は,本件発明と,「光透過性基材と積層され面内の複屈折性を有する複屈折層を備え」る点で共通する。

ウ 前記ア及びイに照らせば,本件発明と引用発明は,
「面内の複屈折性を有する光透過性基材と,
前記光透過性基材と積層され面内の複屈折性を有する複屈折層と,を備える,積層体。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点:
本件発明は,「光透過性基材」と「複屈折層」とを積層基材として,その一方の面上に形成された「機能層」を備えており,
複屈折層が光透過性基材と機能層との間に位置する「屈折率調整層」であり,
光透過性基材の面内における最も屈折率が大きい方向である遅相軸方向における屈折率n_(1x),光透過性基材の遅相軸方向と平行な方向における屈折率調整層の屈折率n_(2x),および,光透過性基材の遅相軸方向と平行となる方向における機能層の屈折率n_(3x)が,n_(1x)<n_(2x)<n_(3x),又は,n_(1x)>n_(2x)>n_(3x)なる関係を満たし,
光透過性基材の遅相軸方向に直交する進相軸方向における屈折率n_(1y),光透過性基材の進相軸方向と平行な方向における屈折率調整層の屈折率n_(2y),および,光透過性基材の進相軸方向と平行となる方向における機能層の屈折率n_(3y)が,n_(1y)<n_(2y)<n_(3y),又は,n_(1y)>n_(2y)>n_(3y)なる関係を満たし,
光透過性基材の前記遅相軸方向における屈折率n_(1x),光透過性基材の遅相軸方向dxと平行な方向における屈折率調整層の屈折率n_(2x),及び,光透過性基材の前記遅相軸方向と平行な方向における機能層の屈折率n_(3x)が,n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ|n_(2x)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|<|n_(2)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|なる関係を満たし,
光透過性基材の前記進相軸方向における屈折率n_(1y),光透過性基材の進相軸方向と平行な方向における屈折率調整層の屈折率n_(2y),及び,光透過性基材の進相軸方向と平行な方向における機能層の屈折率n_(3y)が,n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ|n_(2y)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|<|n_(2)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|なる関係を満たす
のに対して,
引用発明は,「機能層」を有しておらず,したがって,「延伸PETフィルム」と「易接着層」とを積層基材としておらず,また,複屈折層は「易接着層」であって,「屈折率調整層」とはいえず,かつ,各屈折率が本件発明の関係を満たすともいえない点。

(2)相違点の容易想到性について
ア 引用発明では,延伸PETフィルムの両面に「易接着層」が形成されているところ,引用文献1の[0033]や[0057]の記載によれば,一方の「易接着層」は,引用発明を偏光子に貼り合わせる際に,当該偏光子と一軸配向PETフィルムの接着性を改良するための層であると理解される。
一方,引用文献1には,他方の「易接着層」が,どのような部材と一軸配向PETフィルムの接着性を改良するための層であるのかについての明記はないものの,[0024]に,出射光側に配される偏光板の射出光側の偏光子保護フィルムを引用発明とした態様が,特に好ましい態様として記載されており,[0026]に,引用発明を備える偏光板に,写り込み防止やギラツキ抑制,キズ抑制などを目的として,種々のハードコートを表面に塗布することが好ましい態様であると記載されている。しかるに,技術常識からみて,これらの記載が,最も視認側の偏光子保護フィルムに引用発明を用い,さらに,当該引用発明の視認側にハードコートを形成することを想定したものであることは,当業者に自明である。すなわち,当業者は,前述した「他方の易接着層」について,当該「他方の易接着層」上に形成するハードコートと一軸配向PETフィルムの接着性を改良するための層として機能させることが想定されたものと理解するものと認められる。
したがって,引用発明において,一方の易接着層上に,ハードコートを塗布により形成して,引用発明を,ハードコート付き偏光子保護フィルムとして構成することは,引用文献1に記載されたも同然の事項といえる。

イ ここで,前記4(2)エで「周知事項」として認定したように,
「ポリエステルフィルムのような,ハードコート層との屈折率差の大きな樹脂フィルム上にハードコート層を形成すると,干渉ムラが生じてしまうという問題があるが,
樹脂フィルムとハードコート層の間に,両者の屈折率の中間程度,具体的には相加平均又は相乗平均程度の屈折率を有する中間層を設けることによって,前記干渉ムラを抑制できること。」
は,本件優先日より前に周知であったと認められる。
また,樹脂フィルムが備える易接着層を,前記「周知事項」における中間層として用いることは,引用文献2の【0032】(前記(2)ア(イ)で摘記した記載を参照。)に記載されていることであり,また,例えば,特開2011-16982号公報の【0003】及び【0004】の「基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために,中間層として易接着の塗布層が設けられる場合が一般的である。そのため,ポリエステルフィルム,易接着の塗布層,ハードコート層の3層の屈折率を考慮しないと干渉ムラが発生し,視認性が悪化してしまう。・・・(中略)・・・近年では,干渉ムラに対して,経済性等の面から,ハードコート層を高屈折率化してその上に形成する反射防止層の構成を簡略化することや,あるいは,反射防止層を設けずにハードコート層を高屈折率化するだけで干渉ムラ対策をすることが求められている。そのため,易接着の塗布層においても屈折率を高く調整することが必要とされている。一般的には,干渉ムラを軽減させるための塗布層の屈折率は,基材のポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率の相乗平均とされており,この辺りの屈折率に調整することが求められている。」という記載や,特開2012-6985号公報の【0003】及び【0004】の同様の記載等にみられるように,本件優先日より前に周知であったと認められる。
そうすると,引用発明において,前記アで述べたハードコートを形成する際に,易接着層の屈折率が延伸PETフィルムの屈折率とハードコートの屈折率の相加平均又は相乗平均程度になるような屈折率を有するハードコートを選択することは,前述した周知の事項を熟知する当業者が容易に想到し得たことと認められる。

ウ しかるに,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明において,「ハードコート」が本件発明の「機能層」に対応し,延伸PETフィルムと易接着層からなる「一軸配向PETフィルム」を,ハードコートを積層する際の「積層基材」ということができ,屈折率が延伸PETフィルムとハードコートの相加平均又は相乗平均程度にある「易接着層」を「屈折率調整層」ということができ,かつ,次に示すとおり,延伸PETフィルムの各屈折率n_(1x),n_(1y),易接着層の各屈折率n_(2x),n_(2y)及びハードコートの各屈折率n_(3x),n_(3y)が,相違点に係る本件発明の各関係を全て満たしており,したがって,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明は,相違点に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備していると認められる。

(ア) 引用発明の易接着層は,乾燥後の塗布量が0.08g/m^(2)になるように接着性改質塗布液を塗布,乾燥し,これを幅方向に4.0倍に延伸したものであって,その厚みは一軸配向PETフィルムの約50μmという厚みと比べてきわめて薄い(易接着層の材質の比重を1と仮定すると,延伸前の易接着層の厚みは0.08μmである。)ことから,延伸PETフィルとその両面の易接着層からなる一軸配向PETフィルムの直交する二軸の屈折率Nx,Nyにおける易接着層の屈折率の影響は無視できる。
したがって,引用発明の延伸PETフィルムの直交する二軸の屈折率は,それぞれ約1.593及び約1.697である。
しかるに,延伸PETフィルムの直交する二軸とは,進相軸と遅相軸のことにほかならないから,引用発明の延伸PETフィルムの面内における遅相軸方向における屈折率n_(1x)は約1.697であり,進相軸方向における屈折率n_(1y)は約1.593であると認められる。

(イ) 引用文献1には,引用発明の延伸PETフィルムの主材料であるポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の屈折率(延伸前の屈折率)について明記されてはいないが,特開2007-178788号公報の【0079】ないし【0081】には,当該ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)と同一の製造方法によって製造されたPET樹脂(M1)が記載されており,【0082】には当該PET樹脂(M1)の屈折率が1.60であることが記載されていることから,前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(A)の屈折率は1.60であると認められる。
ここで,引用文献1の[0071]には,引用発明と同様の方法で,中間層に紫外線吸収剤を含有するPET樹脂(B)を用いずに得られた実施例6が記載され,表1に,当該実施例6のNx,Ny及びNzが,引用発明と同一の値であることが示されている(前記4(1)ア(ウ)で摘記した記載を参照。)ことからみて,引用発明において,中間層中の紫外線吸収剤の存在は,延伸PETフィルムの屈折率に影響しないことが明らかである。
したがって,引用発明を製造する際に用いた未延伸PETフィルムの屈折率は面内のいずれの方向でも1.60であると認められる。

(ウ) 引用発明の易接着層は,未延伸PETフィルムの両面に接着性改質塗布液を塗布した後,乾燥し,未延伸PETフィルムとともに幅方向に4.0倍に延伸されることによって形成されたものである。
ここで,引用文献1には,当該易接着層の屈折率について明記されてはいないが,特開2017-167331号公報の【0077】に,引用発明の易接着層を形成する際に用いる接着性改質塗布液と同一の調整方法によって得られた接着性改質塗布液が記載され,当該接着性改質塗布液を用いて得られる易接着層の屈折率が1.530であることも記載されているところ,当該記載中の「接着性改質塗布液を用いて得られる易接着層」とは,文脈上,延伸等を施していない易接着層と解されるから,引用発明の易接着層の屈折率は,延伸前の状態(接着性改質塗布液を塗布した後,乾燥した状態)では1.530であると認められる。

(エ) 引用発明の易接着層の主材料である「水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」は,ジカルボン酸成分の組成が,テレフタル酸46モル%,イソフタル酸46モル%及び5-スルホナトイソフタル酸ナトリウム8モル%で,グリコール成分の組成が,エチレングリコール50モル%及びネオペンチルグリコール50モル%の共重合体であるところ,当該「水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」が正の固有複屈折を有していること(すなわち,延伸方向が遅相軸となること)は,技術常識から明らかである。
ここで,特開2013-49784号公報の表1ないし表3には,ジカルボン酸成分の組成が,テレフタル酸ジメチルエステル100モル%で,ジオール成分の組成が,9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン85モル%及びエチレングリコール15モル%の共重合ポリエステル樹脂である比較例1の固有複屈折が0.0116であり,ジカルボン酸成分の組成を,テレフタル酸ジメチルエステル51モル%及びイソフタル酸ジメチル49モル%とした以外は比較例1と同じである比較例2の固有複屈折が0.0055であり,ジカルボン酸成分の組成を,テレフタル酸ジメチルエステル75モル%及びイソフタル酸ジメチル25モル%とした以外は比較例1と同じである比較例7の固有複屈折が0.0116であることが記載されている。当該各比較例の固有複屈折からは,ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分として,テレフタル酸とイソフタル酸とを併用しても,その固有複屈折は,テレフタル酸単独のものの固有複屈折と指して変わらないか,若干低下するものと推察される。しかるに,一軸延伸フィルムの複屈折は,無配向のときに0,完全配向のときに1となるパラメータである配向度を用いて「固有複屈折×配向度」で表すことができるから,ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸とを併用したポリエステル樹脂からなる一軸延伸フィルムの複屈折は,ジカルボン酸成分としてテレフタル酸のみを用いたポリエステル樹脂を用いたこと以外は同じ延伸等を行って得られる一軸延伸フィルムの複屈折とさして変わらないか,若干低下するものと推察される。
また,特開2016-173573号公報の表1及び表2には,PET100質量%からなる未延伸シートに延伸倍率4.0倍のTD延伸等を行ったポリエステルフィルムである比較例1の厚みが51μmでリタデーションが5236nmであり,PET90質量%とPNT(樹脂組成比率がテレフタル酸//エチレングリコール/ネオペンチルグリコール=100//70/30[モル比]からなるポリエステル樹脂)10質量%からなる未延伸シートとした以外は比較例1と同一の実施例5の厚みが41μmでリタデーションが4059nmであることが記載されている。しかるに,リタデーションは「複屈折×厚さ」で定義されるパラメータであるから,前記比較例1の複屈折が約0.103(≒5236/51000)であり,前記実施例5の複屈折が0.099(=4059/41000)である。そして,実施例5は,PET90質量%とPNT10質量%を混合したものからなるのであるから,PNT100質量%からなる未延伸シートを前記実施例5及び比較例1と同じ延伸等を行って得られるポリエステルフィルムの複屈折は,おおよそ0.063(≒(0.099-0.9×0.103)/0.1)程度と推察される。
以上を踏まえると,グリコール成分としてネオペンチルグリコールをPNTより多く含む引用発明の「水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」の固有複屈折は,PNTの固有複屈折よりも小さいことは自明であるから,当該「水分散性スルホン酸金属塩基含有共重合ポリエステル樹脂」を主成分とし,4.0倍の横延伸を行ったものである引用発明の易接着層の複屈折は,前述したPNT100質量%からなる未延伸シートを前記実施例5及び比較例1と同様の延伸(延伸倍率4.0倍のTD延伸)等を行って得られるポリエステルフィルムの複屈折と考えられる「0.063」よりも小さいと推察される。
そして,前記(ア)及び(イ)で述べたように,引用発明の未延伸PETフィルムの屈折率は面内のいずれの方向でも1.60であり,これを延伸した延伸PETフィルムの遅相軸方向における屈折率n_(1x)及び進相軸方向における屈折率n_(1y)が約1.697及び約1.593になるのであり,かつ,前記(ウ)で述べたとおり,引用発明の易接着層の屈折率は,延伸前の状態では1.530であるのだから,易接着層の延伸後の遅相軸方向における屈折率n_(2x)及び進相軸方向における屈折率n_(2y)は,
(n_(2x)-1.530)/(1.697-1.60)=(n_(2y)-1.530)/(1.593-1.60)
という関係にあり,それぞれ1.530ないし約1.589(≒1.530+(1.697-1.60)×0.063/(1.697-1.593))及び1.530ないし約1.526(≒1.530+(1.593-1.60)×0.063/(1.697-1.593))の範囲にあるものと推認される。

(オ) 前記イで述べた構成の変更を行った引用発明において,ハードコートが複屈折を有さず,したがって,n_(3x)=n_(3y)となることは,当業者に自明である。
また,当該ハードコートの屈折率(=n_(3x)=n_(3y))は,易接着層の屈折率(=n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2)が延伸PETフィルムの屈折率(=(n_(1x)+n_(1y))/2)とハードコートの屈折率の相加平均又は相乗平均程度になるような屈折率である。すなわち,n_(3x)及びn_(3y)はいずれも(2×((n_(2x)+n_(2y))/2)-((n_(1x)+n_(1y))/2))又は((n_(2x)+n_(2y))/2)^(2)/((n_(1x)+n_(1y))/2)程度の値に設定されている。
しかるに,n_(1x)が約1.697,n_(1y)が約1.593,n_(2x)が1.530ないし約1.589の範囲,n_(2y)が1.530ないし約1.526の範囲(ただし,(n_(2x)-1.530)/(1.697-1.60)=(n_(2y)-1.530)/(1.593-1.60)という関係を満たす。),n_(3x)が(2×((n_(2x)+n_(2y))/2)-((n_(1x)+n_(1y))/2))又は((n_(2x)+n_(2y))/2)^(2)/((n_(1x)+n_(1y))/2),n_(3y)が(2×((n_(2x)+n_(2y))/2)-((n_(1x)+n_(1y))/2))又は((n_(2x)+n_(2y))/2)^(2)/((n_(1x)+n_(1y))/2)である場合,数学的にみて,これらの各屈折率は,
「n_(1x)>n_(2x)>n_(3x)」なる関係,
「n_(1y)>n_(2y)>n_(3y)」なる関係,
「n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ|n_(2x)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|<|n_(2)-((n_(1x)+n_(3x))/2)|」なる関係,及び,
「n_(2)=(n_(2x)+n_(2y))/2,且つ|n_(2y)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|<|n_(2)-((n_(1y)+n_(3y))/2)|」なる関係
のいずれをも満たしている。
したがって,前記イで述べた構成の変更を行った引用発明は,相違点に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備していると強く推認される。

エ 以上のとおりであるから,引用発明を,相違点に係る本件発明の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,周知の事項に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。

(3)効果について
本件発明が有する効果は,引用文献1の記載,周知の事項及び技術常識に基づいて,当業者が予測できた程度のものであって,本件発明の進歩性の有無についての判断を左右するほどの格別のものではない。

(4)小括
前記(2)及び(3)のとおりであるから,本件発明は,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび
前記5(4)で述べたとおり,本件発明は,引用発明及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は,同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-12-20 
結審通知日 2018-12-21 
審決日 2019-01-08 
出願番号 特願2013-102229(P2013-102229)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣田 健介  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 宮澤 浩
清水 康司
発明の名称 積層体、偏光板、液晶表示パネルおよび画像表示装置  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 朝倉 悟  
代理人 永井 浩之  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
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